説明

カーテン用経編地

【課題】 縦方向の剛性が大きく横方向には柔軟性が大きく、装飾性も高いカーテン用経編地を提供する。
【解決手段】 一枚の筬により形成され相対的に細い経糸11により編成された基本組織15と、他の一枚の筬により形成され基本組織15に重ねられて相対的に太い経糸12により編成された装飾用組織17とから成る。装飾用組織17は、各太い経糸12を1コース毎に、複数ウェールずつ振って編成するとともに、編組織の太い経糸12は、複数ウェール数毎に、1本または前記複数ウェール数より少ない複数本分抜いた状態で編組織を形成し、所定ウェール数毎に空間の多い疎部16と、剛性の高い剛性部18を形成する。基本組織15に用いられる経糸11は、10〜20デニールの太さのモノフィラメント糸などを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、比較的薄地のレースのカーテンに用いられるカーテン用経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばレースのカーテンは機能として透光性があるとともに、外からは室内が見えない程度の遮光性が求められている。さらに、外観上タックを多く取った豪華な感じのカーテンが望まれている。また、特許文献1〜3に開示されているように、カーテンに用いられるレース編地において、経編により形成されるものがあった。
【特許文献1】特開平5−111423号公報
【特許文献2】特開2001−355164号公報
【特許文献3】特開2002−119412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の場合、レース編地は、比較的重量が軽く、面方向の剛性に異方性を有する素材がないので、カーテンとしての重量感や装飾性に劣るものであった。また、重量感や装飾性を高めると、透光性や通気性が落ち、レースのカーテンとしての機能も落ちてしまい、レースのカーテンとしての装飾性と透光性や通気性は相反するものであった。また、装飾性や豪華さを出すためにカーテンのタックを多く取ると透光性が落ち、これらを十分にバランスさせることが難しいものであった。
【0004】
さらに、レースのカーテンは柔軟性が求められるが、縦方向にはある程度の重量感と剛性があった方がカーテンとして安定するものである。しかし、従来のレース編地の場合、縦横に同様の柔軟性を備えた編組織の構造となり、特にタックを多く取ると、剛性が高く柔軟性の低い編地は下方の部分で膨れあがるような形状となり、安定感が無くなる。また、柔軟性の高い編地の場合は下方でタックの波が崩れてしまい、見栄えが良くないという問題があった。
【0005】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて成されたものであり、縦方向の剛性が大きく横方向には柔軟性が大きく、装飾性も高いカーテン用経編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、一枚の筬により形成され相対的に細い経糸により編成された基本組織と、他の一枚の筬により形成され前記基本組織に重ねられて相対的に太い経糸により編成された装飾用組織とから成り、前記装飾用組織は、前記各太い経糸を1コース毎に、複数ウェールずつ振って編成されるとともに、編組織の前記太い経糸は、複数ウェール数毎に、1本または前記複数ウェール数より少ない複数本分抜いた状態で編組織が形成され、所定ウェール数毎に空間の多い疎部と剛性の高い剛性部を形成したカーテン用経編地である。
【0007】
前記基本組織に用いられる経糸は、10〜20デニールの太さのモノフィラメント糸やその他の糸である。また、前記装飾用組織に用いられる経糸は、例えば前記基本組織の経糸の2〜3倍の太さで30〜50デニールの通常糸を用いる。
【0008】
前記各経糸は、3ウェール分振って2ウェール分往復し、再び3ウェール分振って戻すパターンを繰り返して成るものである。または、前記各経糸は、2ウェール分振って編み目を作り更に2ウェール分同方向に振り、編み目を作って2ウェール分戻り、編み目を作り更に2ウェール分同方向に振り、これを繰り返して成るものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のカーテン用経編地は、所定間隔で編目を抜いて編成したことにより、空間が多く柔らかい疎部が細い経糸の基本組織に重なって形成され、さらに、太い経糸で編目が連なった剛性の高い剛性部が横方向に繰り返して形成され、編成方向である縦方向に剛性が高く、横方向には柔らかい編地を形成することができる。これにより、カーテンに利用して多くのタックを付けても、経編の縦方向に上下に取り付けられたカーテンの下方で、カーテン生地が不安定に広がることがなく、綺麗に波打つ状態で垂下され、しかも透光性も高く外観上も良好なものとなる。また、薄くて重量感のあるカーテン用生地を形成することができ、透光性や通気性が高く、しかも安定した形状であり、装飾性も高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態のカーテン用経編地について、図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の第一実施形態のカーテン用経編地を示すもので、この実施形態のカーテン用経編地10は、一枚の筬により形成され相対的に細い経糸11により編成された基本組織15と、他の一枚の筬により形成され基本組織15に重ねられて相対的に太い経糸12により編成された装飾用組織17とから成る。基本組織15の細い経糸11は、例えば10〜20デニール、好ましくは15〜20デニールのモノフィラメント糸である。また、装飾用組織17に用いられる太い経糸12は、30〜50デニール、好ましくは30〜40デニールの通常糸である。
【0011】
この実施形態のカーテン用経編地10は、例えばバック側の一枚の筬による装飾用組織17の太い経糸12を、1コース毎に3ウェール分振って2ウェール分戻し、再び2ウェール分振って、再び3ウェール分だけ元の方に振って一つの編成パターンを形成し、これを繰り返して成る。
【0012】
また、基本組織15を形成する例えばフロント側の細い経糸11は、基本的なシングルトリコット編により、編幅全部について筬の導糸針に経糸11が挿通され、全幅で編成される。
【0013】
さらに、この実施形態のカーテン用経編地10は、装飾用組織17の各経糸12を、複数ウェール毎に、例えば図1(a)のパターンの場合、5ウェール毎に1本抜いた状態で編成したものである。即ち、この装飾用組織17は、経糸12を4本通して1本抜いた編成を繰り返すものである。同様に、図1(b)のパターンのように、5本通して1本抜いた編成を繰り返すものでも良く、図1(c)のパターンのように、6本通して1本抜いた編成を繰り返すもの、図1(d)のパターンのように、7本通して1本抜いた編成を繰り返すものでも良い。
【0014】
これにより、抜いたウェールの図左側の編目の縦ラインが、経糸12の編目を抜いた部分pのない編組織が連続した縦ラインとなり、縦方向に剛性の高いウェールである剛性部18となる。例えば図1(a)のパターンの場合、5ウェール毎に1ウェールの剛性部18が形成され、剛性部18以外の4ウェールには、バック側の装飾用組織17において経糸12の編目を抜いた部分pができ、細い経糸11による基本組織15の多い疎部16となる。即ち、所定ウェール数、ここでは5ウェール毎に空間の多い疎部16と剛性の高い剛性部18が繰り返した編組織となる。
【0015】
同様に、図1(b)のパターンの場合、6ウェール毎に4ウェールの疎部16と2ウェールの剛性部18が形成され、図1(c)のパターンの場合、7ウェール毎に4ウェールの疎部16と3ウェールの剛性部18が形成され、図1(d)のパターンの場合、8ウェール毎に4ウェールの疎部16と4ウェールの剛性部18が形成される。そして、図1(b)〜(d)の場合も、剛性部18以外の4ウェールの疎部16は、フロント側の細い経糸11による基本組織15に、バック側の装飾用組織17の編目を抜いた部分pができた柔軟な組織となる。
【0016】
なお、図1では、4種類の剛性部18を連続して示しているが、実際の編成においては、図1(a)〜(d)のうちの一つのパターン、またはその他任意のパターンを選択して、カーテン用経編地10を形成する。
【0017】
この実施形態のカーテン用経編地10は、経糸12を抜いた部分による疎部16と編目が連なった剛性部18とが横方向に繰り返し、縦方向には平行に剛性部18が繋がり、縦方向に剛性が高く、横方向には柔らかい編地を形成することができる。これにより、例えば、カーテンに利用して、剛性部18と平行にカーテンに多くのタックを付けても、綺麗に波打った状態となり重量感やボリューム感のあるカーテンを形成することができ、しかも透光性や通気性も高く、外観上も良好なものとなる。
【0018】
次にこの発明の第二実施形態のカーテン用経編地について、図3、図4を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のカーテン用経編地20は、相対的に太い各経糸12を、複数ウェール毎に2本抜いた状態で編成したものである。即ち、図3(a)の装飾用組織17は、4本通して2本抜いた編成を繰り返すものである。同様に、図3(b)のパターンのように、5本通して2本抜いた編成を繰り返すものでも良く、図3(c)のパターンのように、6本通して2本抜いた編成を繰り返すもの、図3(d)のパターンのように、7本通して2本抜いた編成を繰り返すものでも良い。
【0019】
これにより、縦方向に剛性のある剛性部18が所定ウェール毎に形成され、例えば図3(a)のパターンの場合、6ウェール毎に5ウェールの疎部16と1ウェールの剛性部18が形成され、剛性部18以外の5ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。同様に、図3(b)のパターンの場合、7ウェール毎に5ウェールの疎部16と2ウェールの剛性部18が形成され、図3(c)のパターンの場合、8ウェール毎に5ウェールの疎部16と3ウェールの剛性部18が形成され、図3(d)のパターンの場合、9ウェール毎に5ウェールの疎部16と4ウェールの剛性部18が形成される。そして、図3(b)〜(d)の場合も、剛性部18以外の5ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。図3も、図3(a)〜(d)のうちの一つのパターンの剛性部18を選択して、カーテン用経編地20を形成する。
【0020】
この実施形態のカーテン用経編地20においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、さらに横方向にやや柔らかい編地とすることができる。
【0021】
次にこの発明の第三実施形態のカーテン用経編地について、図5、図6を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のカーテン用経編地30は、バック側の一枚の筬による相対的に太い経糸12を1コース毎に、2ウェール分振って開き目を作り、更に2ウェール分同方向に振り、閉じ目を作って2ウェール分戻り、開き目を作り更に2ウェール分同方向に振り、これを繰り返して成るカーテン用経編地30である。
【0022】
このカーテン用経編地30は、各経糸12を、複数ウェール毎に1本抜いた状態で編成したものである。即ち、図5(a)の装飾用組織17は、5本通して1本抜いた編成を繰り返すものである。同様に、図5(b)のパターンのように、6本通して1本抜いた編成を繰り返すものでも良く、図5(c)のパターンのように、7本通して1本抜いた編成を繰り返すもの、図5(d)のパターンのように、8本通して1本抜いた編成を繰り返すものでも良い。
【0023】
また、フロント側の相対的に細い経糸11は、1コースおきに左右に1ウェール振って編成したもので、編幅全部について筬の導糸針に経糸11が挿通され、全幅で編成される。
【0024】
この実施形態の場合も、縦方向に剛性のある剛性部18が所定ウェール毎に形成され、例えば図5(a)のパターンの場合、6ウェール毎に5ウェールの疎部16と1ウェールの剛性部18が形成され、剛性部18以外の5ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。同様に、図5(b)のパターンの場合、7ウェール毎に5ウェールの疎部16と2ウェールの剛性部18が形成され、図5(c)のパターンの場合、8ウェール毎に5ウェールの疎部16と3ウェールの剛性部18が形成され、図5(d)のパターンの場合、9ウェール毎に5ウェールの疎部16と4ウェールの剛性部18が形成される。そして、図5(b)〜(d)の場合も、剛性部18以外の5ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。図5も、図5(a)〜(d)のうちの一つのパターンの剛性部18を選択して、カーテン用経編地30を形成する。
【0025】
この実施形態のカーテン用経編地30においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、さらに横方向にやや柔らかい編地とすることができる。
【0026】
次にこの発明の第四実施形態のカーテン用経編地について、図7、図8を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のカーテン用経編地40も図5の場合と同様に、バック側の一枚の筬による経編の経糸12を1コース毎に、2ウェール分振って開き目を作り、更に2ウェール分同方向に振り、閉じ目を作って2ウェール分戻り、開き目を作り更に2ウェール分同方向に振り、これを繰り返して成るカーテン用経編地である。
【0027】
このカーテン用経編地40は、各経糸12を、複数ウェール毎に2本抜いた状態で編成したものである。即ち、図7(a)の装飾用組織17は、5本通して2本抜いた編成を繰り返すものである。同様に、図7(b)のパターンのように、6本通して2本抜いた編成を繰り返すものでも良く、図7(c)のパターンのように、7本通して2本抜いた編成を繰り返すもの、図7(d)のパターンのように、8本通して2本抜いた編成を繰り返すものでも良い。
【0028】
この実施形態の場合も、縦方向に剛性のある剛性部18が所定ウェール毎に形成され、例えば図7(a)のパターンの場合、7ウェール毎に6ウェールの疎部16と1ウェールの剛性部18が形成され、剛性部18以外の6ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。同様に、図7(b)のパターンの場合、8ウェール毎に6ウェールの疎部16と2ウェールの剛性部18が形成され、図7(c)のパターンの場合、9ウェール毎に6ウェールの疎部16と3ウェールの剛性部18が形成され、図7(d)のパターンの場合、10ウェール毎に6ウェールの疎部16と4ウェールの剛性部18が形成される。そして、図7(b)〜(d)の場合も、剛性部18以外の6ウェールの疎部16には、バック側の装飾用組織17において編目を抜いた部分pができ、柔軟な組織となる。図7も、図7(a)〜(d)のうちの一つのパターンの剛性部18を選択して、カーテン用経編地40を形成する。
【0029】
この実施形態のカーテン用経編地40においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができ、さらに横方向にやや柔らかい編地とすることができる。
【0030】
なお、この発明のカーテン用経編地は上記実施形態に限定されるものではなく、相対的に細い糸は、透明性があるものであれば、より目立たず好ましい。また、太い糸は、光沢のあるものを用いることにより、剛性部を強調することができ、装飾性を高めることもできる。さらに、糸の材料や太さ、経糸編成方法等も自由に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第一実施形態のカーテン用経編地のフロント側編成パターン(F)とバック側編成パターン(B)、及び4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す概略図である。
【図2】この発明の第一実施形態のカーテン用経編地の4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す平面図である。
【図3】この発明の第二実施形態のカーテン用経編地のフロント側編成パターン(F)とバック側編成パターン(B)、及び4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す概略図である。
【図4】この発明の第二実施形態のカーテン用経編地の4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す平面図である。
【図5】この発明の第三実施形態のカーテン用経編地のフロント側編成パターン(F)とバック側編成パターン(B)、及び4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す概略図である。
【図6】この発明の第三実施形態のカーテン用経編地の4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す平面図である。
【図7】この発明の第四実施形態のカーテン用経編地のフロント側編成パターン(F)とバック側編成パターン(B)、及び4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す概略図である。
【図8】この発明の第四実施形態のカーテン用経編地の4種類の編成パターン(a)(b)(c)(d)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 カーテン用経編地
11,12 経糸
15 基本組織
16 疎部
17 装飾用組織
18 剛性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の筬により形成され相対的に細い経糸により編成された基本組織と、他の一枚の筬により形成され前記基本組織に重ねられて相対的に太い経糸により編成された装飾用組織とから成り、前記装飾用組織は、前記各太い経糸を1コース毎に、複数ウェールずつ振って編成されるとともに、編組織の前記太い経糸は、複数ウェール数毎に、1本または前記複数ウェール数より少ない複数本分抜いた状態で編組織が形成され、所定ウェール数毎に空間の多い疎部と剛性の高い剛性部を形成したことを特徴とするカーテン用経編地。
【請求項2】
前記基本組織に用いられる経糸は、10〜20デニールの太さである請求項1記載のカーテン用経編地。
【請求項3】
前記各経糸は、3ウェール分振って2ウェール分往復し、再び3ウェール分振って戻すパターンを繰り返して成ることを特徴とする請求項1または2記載のカーテン用経編地。
【請求項4】
前記各経糸は、2ウェール分振って編み目を作り更に2ウェール分同方向に振り、編み目を作って2ウェール分戻り、編み目を作り更に2ウェール分同方向に振り、これを繰り返して成ることを特徴とする請求項1,2または3記載のカーテン用経編地。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283219(P2006−283219A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103179(P2005−103179)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(594030340)福井編織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】