説明

カーテン芯材とカーテン

【課題】 ヒダや折り目の形成に好適で、しかも目崩れを生じないカーテン芯材と、そのカーテン芯材を用いたカーテンを提供するものである。
【解決手段】 本発明のカーテン芯材は、横糸3と縦糸4とから成る適宜幅Hのテープ状織物Tを熱加工したものであり、横糸は芯糸8Aの外周に溶融層9Aを備え芯鞘型複合繊維7Aと、該複合繊維と共に編成するモノフイラメント6とから成り、この横糸に縦糸として偏平糸5と縦糸芯鞘型複合繊維7Bとを交互に編成し、両芯鞘型複合繊維7A,7Bの溶融層9A,9Bが加熱により溶融し、横芯糸8Aとモノフイラメント6とを固着すると共に、縦芯糸8B及び偏平糸とも固着していることを特徴とする。
本発明のカーテンは、カーテン生地の少なくとも上端部に本発明のカーテン芯材を縫着した芯地部を備え、芯地部をカーテン幅方向に折り重ねてヒダや折り目を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒダと折り目の形成に適し、目崩れを生じないカーテン芯材と、そのカーテン芯材を用いたカーテンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカーテン芯材は、特許文献1の如く複数の複合フイラメントを縦糸として、モノフイラメントを横糸として編成し、複合フイラメントは、芯材を低融点の鞘素材で被覆しており、鞘素材の溶融により芯材が1本化し、且つ横糸のモノフイラメントとも着接するものと、特許文献2の如くマルチフイラメントを縦糸として、芯鞘型複合繊維とモノフイラメントとを横糸として編成し、芯鞘型複合繊維は、芯糸を低融点の溶融層で被覆しており、溶融層の溶融により芯糸とモノフイラメントとが1本化し、且つ縦糸のマルチフイラメントとも着接するものである。
【0003】
従来カーテンは、カーテンレールに吊り下げる関係上、特許文献3の図10と図11の如くカーテン生地の上端部を下向きに折返し、その折返部とカーテン生地との間に前記カーテン芯材を差込み、即ち、カーテン芯材をサンドイッチ状態に縫着するか、或いは折返部の先端部をカーテン生地に縫着して袋部を形成し、該袋部にカーテン芯材を入れ、カーテンの上端部に芯地部を形成した後、特許文献4の如く芯地部を表裏方向に折り返して縫着し、芯地部にヒダを所要間隔で設けると共に、ヒダ間に特許文献5,6の如く折り目を形成していた。
【特許文献1】特開平8−299161号公報
【特許文献2】特開2003−27364号公報
【特許文献3】特開2002−17557号公報
【特許文献4】特開平8−317853号公報
【特許文献5】特開平8−299160号公報
【特許文献6】特開2000−34779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーテン芯材は、長手方向に柔らかく幅方向に高い剛性が求められているが、特許文献1のカーテン芯材にあっては、縦糸を芯鞘型複合繊維100%で、横糸をモノフイラメント100%で編成しているため、カーテン芯材を斜めに引っ張ると、横糸と縦糸の接点が剥がれていまう。
何れにしても、目崩れによる美観の損失、機能の減少、商品価値の下落等を生じないカーテン芯材が望まれていた。
【0005】
カーテン生地の芯地部にのみヒダを形成した場合、ヒダ間の折り畳部が図6及び特許文献5,6の如く部屋側に張り出すので、カーテンの見栄えが悪く、しかも部屋空間が狭くなる問題点もあった。この問題点を解消するために、予めカーテンに窓側向きの折り目を付ける場合、折り畳んだカーテンを真空釜に入れて折り目を付けるか、カーテン生地に熱スチームを直接当てて折り目を付けていたが、折り目の形成に手間がかかり、量産性に乏しく高価になる問題点があった。
そこでこの発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヒダや折り目の形成に好適で、しかも目崩れを生じないカーテン芯材と、そのカーテン芯材を用いたカーテンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のカーテン芯材は、請求項1として、横糸と縦糸とから成る適宜幅のテープ状織物を熱加工したものであり、横糸はモノフイラメントと、該モノフイラメントと共に編成する芯糸の外周に溶融層を備え芯鞘型複合繊維とから成り、この横糸に縦糸として偏平糸と、横糸芯鞘型複合繊維と同様の縦糸芯鞘型複合繊維とを交互に編成し、両芯鞘型複合繊維の溶融層が加熱により溶融し、芯糸とモノフイラメントとを固着すると共に、芯糸及び偏平糸とも固着していることを特徴とする。
請求項2として、請求項1のカーテン芯材において、加熱処理された横糸は、モノフイラメントと芯鞘型複合繊維の芯糸とが溶融した溶融層にて一体的に固着していることを特徴とする。
【0007】
ここでカーテン芯材とは、一定幅を有して長尺を成すテープ状のものを言い、カーテン生地の上縁部、又は上縁部と下縁部に取付けるものを言う。
ここで縦糸とは、カーテン芯材の長さ方向に平行する糸を言い、横糸とは、芯材幅方向に編成する糸を言い、芯鞘型複合繊維とは、芯糸を、芯糸より低融点の溶融層で被覆するものを言い、加熱により溶融層を溶融し、芯糸を他の糸と着接する。
ここで偏平糸とは、厚さに対して幅が大なるもので、断面が略矩形状を成すものを言い、モノフィラメントとは、単独で使用できるフイラメントであり、釣り糸(テグス)の如きものを言う。
【0008】
本発明のカーテンは、請求項3として、カーテン生地の少なくとも上端部に、請求項1〜4のカーテン芯材を利用した芯地部を備え、芯地部にカーテン芯材の長手方向に対するヒダと折り目を形成していることを特徴とする。
ここでカーテン生地とは、カーテンレールに吊り下げる布製品の総てを言い、薄地、中厚地、厚地の何れでもよく、また文字や図柄等の装飾を施していても良い。
ここで芯地部とは、カーテン生地の上端部に設ける吊下げ部を言い、カーテン生地の下端部に芯地部に類似した構造の垂下部を設ける場合もある。
ヒダとは、カーテン生地を幅方向に折り重ねて縫製した装飾部であり、タック(tuck)とも称され、折り目とはカーテンの上下方向に連続し、折り畳みを容易にする部位を言い、プリーツ(pleats)とも称される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカーテン芯材は上記構造のとおりであるから、次に記載する効果を奏する。
請求項1のカーテン芯材は、縦糸芯鞘型複合繊維と横糸鞘型複合繊維との溶融層を熱処理にて溶融し、横糸のモノフイラメントと芯糸とを固着すると共に、縦糸の芯糸及び偏平糸とも固着するので、織物の組織が非常に安定し、しかも長手方向のしなやかさを保持したまま布目の崩れを阻止することができる。特に、加熱処理後の縦糸として、芯材と偏平糸とを交互に編成したことによって、芯材は長手方向に対する折り曲げが容易となり、即ち、折り目が付きやすく、しかも折れ目の戻りが少なくなった。その結果、カーテン生地に対する取付けが著しく簡単容易になるし、取り付け後、見栄えの良いヒダや折り目の形成に貢献する。
請求項2のカーテン芯材は、請求項1の特徴に加えて、横糸のモノフィラメントと芯材とが溶融層の溶融により強力に固着しているので、たやすく剥がれない。
【0010】
本発明のカーテンは請求項5のとおりであるから、次に記載する効果を奏する。
カーテン生地の芯地部に本発明カーテン芯材を縫製しているので、芯地部の一部をカーテン幅方向に折り重ねてヒダや折り目を形成する時、ヒダや折り目の形成が容易で、且つ形成されたヒダや折り目の消失も少ない。
また、ヒダに連続する折り目や、ヒダ間の折り目も奇麗に出る。特に、ヒダ間の折り目を窓側に形成することで、ヒダ間の折り目を部屋側に張り出す場合より美観を呈し、装飾性も向上する。更に、真空釜や熱スチームによる折り目形成に比較して、折り目の形成が実に簡単容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によるカーテン芯材の実施形態を図1と図2に基づき説明すれば、横糸3と縦糸4とによって編成した適宜幅Hのテープ状織物Tを熱加工したものであり、横糸3としてモノフイラメント6と、横芯糸8Aの外周に溶融層9Aを備えた芯鞘型複合繊維7Aとを1組として2組用い、縦糸4として偏平糸5と、横糸用芯鞘型複合繊維7Aと同様の縦糸用芯鞘型複合繊維7Bとを交互に織り込み、両芯鞘型複合繊維7A,7Bの溶融層9A,9Bを加熱により溶融し、横芯糸8Aとモノフイラメント6とを固着すると共に、縦芯糸8Bとの交差部、及び偏平糸5との交差部も固着している。
【0012】
本発明のカーテン芯材は上記構造であるから、先ず2組のモノフイラメント6と芯鞘型複合繊維7Aとを横糸3とし、その横糸3に対して縦糸4として芯鞘型複合繊維7Bと偏平糸5とを交互に編成して芯材幅Hのテープ状織物Tを編成し、次いで織物Tを溶融層9A,9Bの融点よりも高く、且つモノフイラメント6と両芯糸8A,8B、及び偏平糸5の融点より低い温度で熱処理し、芯鞘型複合繊維7A,7Bの溶融層9A,9Bのみを溶融し、その溶融によりモノフイラメント6と横芯糸8Aとを固着し、モノフイラメント6と横芯糸8Aとを一体化すると共に、縦芯糸8B及び偏平糸5をも固着する。
モノフイラメント6と偏平糸5とは否固着状態にあるが、横芯糸8Aとモノフイラメント6との固着力>横芯糸8Aと縦芯糸8Bとの固着力>縦芯糸8Bとモノフイラメント6との固着力>横芯糸8Aと偏平糸5との固着力の関係にある。
熱加工後の横糸3は、モノフイラメント6と横芯糸8Aとから成るので、長さ方向にはしなやかさを有しながら、張力が比較的大きく確保され、腰が強くなる。
熱加工後の縦糸4は、縦芯糸8Bと柔軟性に富む偏平糸5とを交互に編成しているので、長手方向に対する折り返しや折り畳みが容易となる。
【0013】
芯鞘型複合繊維7A,7Bの芯糸8A,8Bとしてポリエステル繊維から成るマルチフイラメントを用い、溶融層9A,9Bとして芯糸8A,8Bやモノフイラメント6、或いは偏平糸5より低融点(130〜210℃)のポリエステルを用いる。
横糸3を構成する2組のモノフイラメント6と芯鞘型複合繊維7Aとの配列は一定することが好ましいが、モノフイラメント6を内側にして外側に芯鞘型複合繊維7Aを配列したり、鞘型複合繊維7Aを内側にして外側にモノフイラメント6を配列したりすることもある。
偏平糸5の厚さと幅の比率は、カーテン芯地2に求める柔軟度に応じて適宜選択されるが、好ましくは1:1.3〜1:6、特に1:2〜4とすれば、カーテン芯地2の縦方向への折り曲げ時の剛性を低下させ、反発力を小さくすることができる。
【0014】
本発明によるカーテンの実施例を図3〜図5について説明すると、本発明のカーテン10はカーテン生地1の上端部1aに請求項1〜4のカーテン芯材2を縫着した芯地部11を、下端部1bに同様のカーテン芯材2を縫着した垂下部12を備え、芯地部11にカーテン芯材2の縦糸4に沿ったヒダ13を一定間隔で形成すると共に、カーテン生地1と垂下部12に、ヒダ13に連続する折り目14を形成し、且つ、ヒダ13,13間より垂下部12まで達する折り目14を形成している。
芯地部11と垂下部12に本発明のカーテン芯材2を備えているので、折り目14が付けやすく、しかも一度付けた折り目14は消滅しにくい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
芯鞘型複合繊維7A,7Bとして、溶融層9A,9Bに低融点ポリエステル系ポリマーを用いた例えば鐘紡の商品名「ベルカップル」や「ベルカップルα」、或いは「ベルカップルNP」を用いる。
尚、溶融層9A,9Bと他の糸偏平糸5、モノフイラメント6、芯糸8A,8Bとの融点温度差は、30℃以上が好ましい。
偏平糸5は矩形に限定されるものではなく、楕円形でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明カーテン芯材の最良形態を示す熱加工前の要部正面図である。
【図2】熱加工後の要部正面図である。
【図3】本発明カーテンの加工例を示す要部斜視図である。
【図4】ヒダと折り目の関係を示す要部斜視図である。
【図5】本発明カーテンの使用例を示す斜視図である。
【図6】従来カーテンの使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
10 カーテン
1 カーテン生地、1a 上端部、1b 下端部
2 カーテン芯材(テープ状織物)
3 横糸
4 縦糸
5 偏平糸
6 モノフイラメント
7A,7B 芯鞘型複合繊維
8A,8B 芯糸
9A,9B 溶融層
11 芯地部、12 垂下部
13 ヒダ(タック)
14 折り目
T テープ状織物
H 芯材幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横糸(3)と縦糸(4)とから成る適宜幅(H)のテープ状織物(T)を熱加工したものであり、横糸(3)はモノフイラメント(6)と、該モノフイラメント(6)と共に編成する芯糸(8A)の外周に溶融層(9A)を備え芯鞘型複合繊維(7A)とから成り、この横糸(3)に縦糸(4)として偏平糸(5)と、横糸芯鞘型複合繊維(7A)と同様の縦糸芯鞘型複合繊維(7B)とを交互に編成し、両芯鞘型複合繊維(7A,7B)の溶融層(9A,9B)が加熱により溶融し、横芯糸(8A)とモノフイラメント(6)とを固着すると共に、縦芯糸(8B)及び偏平糸(5)とも固着していることを特徴とするカーテン芯材。
【請求項2】
加熱処理された横糸(3)は、モノフイラメント(6)と芯鞘型複合繊維(7A)の芯糸(8A)とが溶融した溶融層(9A)にて一体的に固着していることを特徴とする請求項1記載のカーテン芯材。
【請求項3】
カーテン生地(1)の少なくとも上端部(1a)に、請求項1〜2のカーテン芯材(2)を利用した芯地部(11)を備え、芯地部(11)にカーテン芯材(2)の長手方向に対するヒダ(13)と折り目(14)を形成していることを特徴とするカーテン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−68692(P2007−68692A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257445(P2005−257445)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(301042860)フジテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】