カートリッジを使用する検出装置
【課題】濃度が極めて低い被検体であっても検出できる携帯に便利なカートリッジ式検出装置の提供。
【解決手段】被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなる。検出用カートリッジは、被検出物質の貯留部と、貯留部を通る液体流路と、液体流路に通じる複数のポートと、送液ポンプとを備え、貯留部の下流側に、検出機構の少なくとも一部が設けられる。検出用カートリッジに設けられた複数のポートの選択した1つに切換接続する配管切換バルブ機構とを備え、バルブ機構は、検出用カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過してカートリッジ外に出るようにする流路接続と、試薬が送液ポンプにより貯留部に供給され、貯留部を通過した試薬が他のポートからカートリッジ外に送り出されるようにする流路接続との間で切換える。
【解決手段】被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなる。検出用カートリッジは、被検出物質の貯留部と、貯留部を通る液体流路と、液体流路に通じる複数のポートと、送液ポンプとを備え、貯留部の下流側に、検出機構の少なくとも一部が設けられる。検出用カートリッジに設けられた複数のポートの選択した1つに切換接続する配管切換バルブ機構とを備え、バルブ機構は、検出用カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過してカートリッジ外に出るようにする流路接続と、試薬が送液ポンプにより貯留部に供給され、貯留部を通過した試薬が他のポートからカートリッジ外に送り出されるようにする流路接続との間で切換える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状被検体に含まれる目標物質の検出に使用される検出装置に関する。特に本発明は、カートリッジと該カートリッジに組み合わされる処理ユニットとからなる検出装置に関する。さらに詳細に述べると、本発明は、被検出物質を含む液状被検体における被検出物質の有無、濃度、組成その他の性質に関連する情報を発生するためのもので、液状被検体を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジが接続可能であり、該カートリッジに通される液状被検体に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−311829号公報は、カード式の携帯型使い捨て分析システムを開示する。この分析システムは、人又は動物の体液における少なくとも一つの検査値を検出してそれに相応した出力信号を発生するセンサーを備えたカード式使い捨て検査具と、該検査具からの信号を受けて演算処理する演算処理部及び表示部を含む携帯型分析ユニットとからなる。
【0003】
カード式使い捨て検査具は、間に薄い仕切り板を挟んで互いに液密に重畳される二枚の基板から構成される。基板の一方は、内面に、検査対象となる人又は動物の体液を通す通路と、この通路の一端に連通するように体液貯蔵部が設けられる。通路の他端には基板を厚さ方向に貫通する体液注入孔が設けられる。センサーは、他方の基板の内面に設けられる。さらに、該他方の基板内面には、センサー校正用の試薬容器を受ける凹部と、仕切り板の開口部を介して上記一方の基板に設けた体液貯蔵部に連通する第2の体液貯蔵部が設けられる。
【0004】
携帯型分析ユニットは、検査具を差し込むための挿入口を有し、検査具が差し込まれたとき、試薬容器受け凹部に位置する試薬容器が破られてセンサーまで流れ、実際の分析に先立って該センサーの校正が行われる。その後、体液注入口から人又は動物の体液が注入され、基板内面に形成された通路を通ってセンサーまで流れ、測定が行われる。測定により発生する電気信号は、分析ユニットに送られて、演算処理部により処理され、分析の結果が表示部に表示される。
【0005】
この分析システムは、軽便で、現場での検査が可能であり、検査すべき体液を注射器等の注入器で直接注入できるので、検査すべき体液が雰囲気に触れるのを避けることができるという利点がある。しかし、検査対象は、人又は動物の体液といった高濃度の液体であり、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定又はクロマトグラフ分析には使用できない。
【0006】
米国特許第6,110,354号明細書は、飲用水や廃水、及び血液や尿のような生物学的流体などの分析に使用される微小バンド電極アレイを備えた分析装置を開示する。分析の原理は、分析対象の電解質液体が電極に接触することによって発生する電流のファラデー成分を検出することである。この分析装置の一例として示される構造は、平坦な基板からなる平板状のセンサーを備えるもので、微小バンド電極アレイを用いることにより非ファラデ−成分の発生を抑制して検出感度を高めることができ、水溶液に微小量含まれる有害金属の検出が可能になると考えられる。しかし、土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質を対象とする場合には、この装置を用いて濃度測定を行うのは、検出感度が十分でないため困難である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、検出対象及び使用場所についての制約が少なく、簡便に使用することができるカートリッジと該カートリッジに組み合わせて使用される処理ユニットとからなる検出装置を提供することを主要な目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、濃度検出装置、液体クロマトグラフ分析、免疫学的検定法(イムノアッセイ)、その他の被検出物質を含む液状被検体を検出するための方法に使用することができる検出装置を提供することである。
【0009】
特定的には、本発明の別の目的は、カートリッジを使用する携帯に便利な簡易検出装置を提供することである。
【0010】
本発明は、検出に必要な液体流通のための流路配管を極めてコンパクトに収めることができる構造を備えた、携帯に便利なカートリッジ式検出装置を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明の別の目的は、被検体に含まれる被検出物質の濃度が極めて微量であっても支障なく濃度検出を行うことができる濃度検出装置を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、液状被検体のクロマトグラフ分析などの分析を試料採取現場でも簡易に行うことができるような、カートリッジ式携帯型簡易検出装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、検査場所に制限がなく、どんな場所ででも容易に濃度検出、液体クロマトグラフ分析、免疫学的検定法による分析、その他の検出を行うことができる携帯容易な分析装置を提供することである。
【0014】
さらに本発明の追加的な目的は、上述のカートリッジ式検出装置及び/又は分析装置に使用される検出用カートリッジ及び/又は処理ユニットを提供することである。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、最も広義の側面においては、被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジに接続可能であり、該カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置を提供する。検出用カートリッジは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、検出機構の少なくとも一部と、該貯留部及び検出機構の少なくとも一部の一方又は両方を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。本発明に関連して使用する場合、「検出」という用語は、被検出物質の有無、濃度、組成その他の性質に関連する情報を発生することを意味し、定量及び/又は定性分析のような分析も含む。
【0016】
処理ユニットは、試薬タンクと送液ポンプとを備える。本発明のこの側面においては、検出用カートリッジと処理ユニットの組合せによって、カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過して検出用カートリッジ外に排出される液体流路と、試薬が層液ポンプにより検出用カートリッジの一つのポートから貯留部に供給され、該貯留部と検出機構の上記少なくとも一部とを連続して通過する液体流路とが切り換え可能になる。
【0017】
本発明の一態様においては、被検液は、処理ユニットとは無関係に検出用カートリッジに供給することができる。検出用カートリッジに供給された被検液は、貯留部に到達し、ここで被検液に含まれる被検出物質が貯留部に一時的に貯留される。貯留部は、多孔質セラミック等の多孔質物質、或いは繊維又は微粒子などの表面積の大きな材料により形成することができ、その表面に、被検出物質に対して化学反応又は吸着作用を行う官能基を修飾した構成とすればよい。この構成により、被検出物質が貯留部を形成する材料に付着されて保持されることになる。貯留部を通過した残りの被検液は、検出用カートリッジの上述したポートからカートリッジ外に送り出される。或いは、検出用カートリッジ内に廃液溜を形成し、貯留部からの被検液をこの廃液溜に導くこともできる。
【0018】
次いで、処理ユニットの送液ポンプから検出用カートリッジに試薬が送り込まれ、貯留部を通過させられる。この試薬は、化学反応又は吸着により貯留部に保持されている被検出物質を溶離させる作用を有するものである。試薬を貯留部に通すことによって、貯留部に保持されていた被検出物質は、該貯留部から溶離され、試薬に含まれる形で該試薬とともにカートリッジ内を下流側へ流れる。被検出物質を含む試薬は、一時的にカートリッジ外の流路に出て再びカートリッジ内に入るか、カートリッジ外に出ることなく、該カートリッジ内の内部流路を経て、下流側に設けられた検出機構に向けて流れる。
【0019】
処理ユニットに配置された試薬タンクは、該試薬タンクを送液ポンプに接続することができる。この場合において、複数個の試薬タンクを処理ユニット内に配置し、これら複数個の試薬タンクのうちの所望の1つを該送液ポンプに接続するために、タンク切換バルブ機構を設けることができる。処理ユニットには、廃液タンクを配置して、検出用カートリッジから輩出された液をこの廃液タンクに導くようにすることができる。
【0020】
さらに、本発明の他の一態様においては、検出用カートリッジが処理ユニットに設置されない状態で、該カートリッジ内に供給された被検液が貯留部を通過して検出カートリッジ外に排出される液体流路と、該検出用カートリッジが該処理ユニットに設置された状態で、試薬が、送液ポンプにより検出用カートリッジの1つのポートから貯留部に供給され、該貯留部と検出機構の少なくとも一部とを連続して通過するようになる液体流路とがそれぞれ形成される。この場合において、これら液体流路の切換えのためのバルブ機構を設けることができ、また、このバルブ機構は、処理ユニット内に配置することができる。
【0021】
本発明による検出装置は、種々異なる物質の検出に応用することができる。1つの側面においては、検出装置は、被検液に含まれる被検出物質の濃度に関する情報を提供する濃度検出装置である。この場合には、検出用カートリッジは、被検出物質の濃度に関する電気信号を生成する。一例として、被検液は、微量の被検出物質を含む土壌又は泥濘のような被検体を水その他の液体に溶解して形成される。
【0022】
本発明を濃度検出装置に適用した場合の一態様による検出用カートリッジは、被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、該被検液導入部からの液体流路とを備える。貯留部は、該液体流路内に配置される。この態様においては、貯留部は、被検液内の被検出物質を濃縮して保持する濃縮部として構成される。この濃縮部は、被検出物質を吸着する能力をもったフィルタの形態に構成することができる。検出用カートリッジ内に設けられる検出機構は、検出用電極構成である。フィルタに吸着された被検出物質は、試薬として供給される溶離液に溶出して検出機構を構成する検出用電極構成に送られる。被検出物質が溶離した溶離液が検出用電極構成に達すると、電極には検出電気信号が生成される。
【0023】
この態様における本発明の検出装置は、処理ユニットが、カートリッジからの電気信号を読み取って被検出物質の濃度に関する情報を生成する読取部を含む。この態様における検出用カートリッジは、廃液溜を有する形態とすることができ、この場合には、被検液導入部から廃液溜に至る液体流路が設けられる。
【0024】
読取部は、電気信号をカートリッジから受け取って処理し、被検体における被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理手段を備える。処理ユニットには、任意に、検出結果を表示するための表示部を設けることができる。
【0025】
本発明のこの態様によるカートリッジ式濃度検出装置は、土壌や泥濘などに含まれる重金属の検出に使用できる。この場合には、検出用カートリッジは、電極構成において、重金属を含む被検液における重金属の濃度に関連する電気信号を生成し、該カートリッジからの電気信号が読取部によりを読み取られて被検出物質の濃度に関する情報が生成されるように構成される。
【0026】
重金属の濃度を検出するためのカートリッジ式濃度検出装置においては、カートリッジには、上述したように、被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連通する液体流路と、被検液導入部からの液体流路に配置された被検液濃縮のための濃縮部として機能する貯留部と、検出用電極構成とが設けられる。ここで、貯留部すなわち濃縮部は、流路内に配置されて重金属を吸着するように作用する吸着担体を含み、該濃縮部には、該吸着担体に吸着された重金属を溶離させる溶離液を吸着担体に通して検出用電極構成に向けて流す溶離液供給部が組み合わされ、吸着担体に吸着された重金属が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極において生成される。
【0027】
本発明の別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、カートリッジの貯留部すなわち濃縮部は、被検液導入部からの被検液を受けて該被検液に含まれる被検出物質を吸着するように作用する吸着担体を含み、該濃縮部には、該吸着担体に吸着された被検出物質を溶離させる溶離液を前記吸着担体に通して前記検出用電極構成に向けて流す溶離液供給部が組み合わされ、吸着担体に吸着された被検出物質が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成されるようになっている。
【0028】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジには、被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に導入された被検液を濃縮するための濃縮部と、検出用電極構成と、被検液導入部と濃縮部と検出用電極構成とを接続する流路が設けられる。濃縮部は、被検液導入部からの被検液を受けて該被検液に含まれる被検出物質を吸着するように作用する吸着担体を含む。さらに、濃縮部には、該吸着担体に吸着された被検出物質を溶離させる溶離液を該吸着担体に通して検出用電極に向けて流す溶離液供給部が組み合わされる。バルブ機構が設けられ、該バルブ機構は、被検液導入部から濃縮部に至る被検液導入流路を開き、溶離液供給部から濃縮部に至る溶離液供給流路を閉じる被検液導入用位置と、被検液導入部から濃縮部に至る被検液導入流路を閉じ、溶離液供給部から濃縮部に至る溶離液供給流路を開く溶離液供給用位置との間で流路切り替えを行うことができる。また、溶離液供給用位置において溶離液供給部から濃縮部に溶離液を送るために、送液ポンプ手段が設けられる。
【0029】
この態様においては、吸着担体に吸着された被検出物質が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより、被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成される。この構成においては、溶離液供給部、バルブ機構及び送液ポンプ手段は、処理ユニットのケーシング内に設けることができる。
【0030】
カートリッジには、吸着担体を通った後の被検液をカートリッジ外に排出するための排出流路と、電極構成を通った後の溶離液を収容する廃液溜とが形成され、被検液の導入段階では、排出流路が開かれ、電極構成と廃液溜との間の流路が閉じられ、溶離液の供給段階では、排出流路が閉じられ、電極構成と廃液溜との間の流路が開かれるようにすることができる。吸着担体は、膜、微粒子、又は多孔質体のいずれの形態であってもよい。
【0031】
吸着担体は、カチオン性物質吸着担体とすることができる。この場合において、該吸着担体は、該担体を構成する材料をスルホン酸基で処理して形成することができる。また、吸着担体は、アニオン性物質吸着担体とすることができる。この場合には、該吸着担体は、該担体を構成する材料を4級アミン基で処理して形成することができる。さらに、吸着担体は、該担体を構成する材料を重金属受容性物質で処理して形成することができる。この重金属受容性物質は、キレート物質、包接体及び重金属吸着性物質のいずれかとすることができる。キレート物質は、イミノ2酢酸又はエチレンジアミン基のいずれかとすることができる。包接体は、ポルフィリン及びカリックスアレンのいずれかとすることができる。また、重金属吸着性物質は、アポ酵素及び重金属吸着抗体のいずれかとすることができる。
【0032】
カートリッジは、カード状に形成することができ、この場合の処理ユニットは、ケーシングにカード状のカートリッジを挿入する挿入部を形成することが好ましい。
【0033】
電極構成は、寸法が10μmより大きくない少なくとも1個の微小電極要素を含むものとすることが好ましい。この場合、電極要素の上面に絶縁体シートを配置し、該絶縁体シートに寸法が10μmより大きくない孔を形成することにより、該微小電極要素とすることが好ましい。
【0034】
電極構成は、複数の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含むものとし、複数の作用電極要素は、互いに異なる面積であって異なる濃度範囲の測定のために働くようにすることができる。
【0035】
さらに、該電極構成は、少なくとも1個の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含むものとすることができる。
【0036】
また、貯留部を構成する濃縮部は、カチオン性物質を吸着するカチオン吸着担体とアニオン性物質を吸着するアニオン吸着担体とが並列配置された構成とし、検出機構となる電極構成は、2組の電極組を含み、各々の電極組を、それぞれカチオン吸着担体とアニオン吸着担体に対応させることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジは、濃度検出対象となる被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連なる液体流路と、該液体流路に配置された濃度検出用電極構成とを内部に備え、被検液を液体流路において濃度検出用電極構成に接触させることにより被検液に含まれる特定物質の濃度に関連する電気信号が濃度検出用電極構成により生成されるようになっている。電極構成は、複数の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含み、複数の作用電極要素は、互いに異なる面積であって異なる濃度範囲の測定のために働くようにされる。
【0038】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジは、平坦なカード状であり、ケーシングには、該カード状のカートリッジを挿入する挿入部が設けられる。このカートリッジは、濃度検出対象となる被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連なる液体流路と、該液体流路に配置された濃度検出用電極構成とを内部に備え、被検液を液体流路において濃度検出用電極構成上に流すことにより被検液に含まれる特定物質の濃度に関連する電気信号が前記濃度検出用電極構成により生成されるようになっている。
【0039】
このカートリッジは、液体流路の少なくとも一部を構成する凹部が一面に形成された樹脂製の第1シート材と、被検液導入部を構成する貫通孔及び検出用電極構成を収容する凹部が形成された樹脂製の第2シート材と、被検液導入部を構成する貫通孔が形成された樹脂製の第3シートとを含み、該第1、第2、第3シートは、それぞれの間に絶縁材シートを挟んで順に積層される。第2シートの電極収容用凹部には検出用電極構成の電極要素が配置され、該電極要素が第3シートに面するように第2シートと第3シートとが積層される。第2シートと第3シートの間の絶縁材シートは、電極要素に対応する部分において該電極の所要面積を露出させる孔が形成され、第3シートの第2シートに向いた側には、被検液を電極要素に導くための液体流路が形成される。
【0040】
この場合、カートリッジの第1シートには、第2シートに面する側に、電極要素からの廃液を収容する廃液溜を構成する凹部を形成することができる。
【0041】
本発明の上記の態様によれば、検出用カートリッジの流体流路に、被検出物質を濃縮して貯留するための濃縮部が備えられるので、含有濃度が極めて低い被検出物質の場合であっても、支障なく濃度検出を行うことができる。土壌が有害な重金属等により汚染されている場合には、その濃度は極めて低い場合であっても、規制対象となる。従来は、このような極低濃度の物質の現場での検出は不可能であると考えられていたが、本発明のこの態様によるカートリッジ式濃度検出装置を使用すれば、検査対象の土壌が採取される場所において、汚染物質の検出を簡単に行うことができるようになる。この場合には、供試被検液は、被検体土壌を溶解して形成すればよい。被検出物質を濃縮する濃縮部は、該被検出物質を吸着する吸着担体を含む構成とすることが好ましいが、他の濃縮原理に基づくものであってもよい。例えば、加熱により液体成分を蒸発させることによる濃縮法や、逆浸透膜を用いる方法などがある。
【0042】
本発明の上記態様による濃度検出装置は、該被検出物質を含む液体が検出用電極に接触したとき、該電極に被検出物質の濃度に関する電気的情報が生成される物質であれば、どのような物質の濃度検出にも適用することができる。使用される電極構成としては、典型的には、作用極、対極及び参照電極からなるものが通常は用いられる。作用極は、被検出物質を吸着し、溶離液に接触したときに該被検出物質を溶離液中に放出する電極である。作用電極に望まれる条件としては、印加できる電位の範囲が広いこと、すなわち電位窓が広いこと、腐食や酸化に耐性があることである。電位窓とは、電気化学上好ましくない水素イオンの発生又は酸化皮膜の生じない電位領域を指し、この領域は、電極の材質及び測定対象溶液のpH値によって異なる範囲となる。
【0043】
作用電極として使用するのに好ましい材料は、白金、金、水銀、銀、ビスマス、カーボンなどである。作用電極を形成するにあたっては、これらの材料から適宜選択すればよいが、測定対象である被検出物質を吸着し易い材料であることが好ましい。被検出物質がカドミウム、鉛及び水銀である場合には、作用極としてはカーボン表面を有する電極を使用し、砒素及び水銀測定用の作用極としては金表面を有する電極を使用することが適切である。六価クロムの検出のためには、カーボン表面を有する電極を使用すればよい。その理由は、カーボン表面を有する電極は、六価クロムとジフェニルカルバジドの会合体を良く吸着する性質を有するからである。
【0044】
カーボン表面を有する電極としては、黒鉛/ガラス状炭素比が70/30の黒鉛のカーボン焼結体からなるカーボン電極が好ましい。一般に、黒鉛は、鉛やカドミウム、水銀などを吸着し易いが、その結晶の配向方向を揃え難いために、物質の吸着にばらつきを生じたり、接触する液体により膨潤したりするという問題がある。しかし、黒鉛にガラス状カーボンを一部混入して焼結することにより、焼結体を緻密化し、液体の浸透を抑制することができる。また、ガラス状カーボンにより黒鉛の配向方向をランダム化して、吸着のばらつきを極めて小さくすることができる。上述した黒鉛/ガラス状カーボン比が約70/30の焼結体は、高感度で再現性のよい作用電極を構成するのに好都合である。
【0045】
金表面を有する電極としては、特に材質に制限はない。本発明においては、ガラス基板上にクロム層を介して金を被覆した構成を用いることにより、良好に作動する作用電極を得ることができる。この場合、クロム及び金の成膜はスパッタリングにより行うことができる。膜の厚さに特に制限はないが、クロム層は約40nm、金層は約400nmとすればよい。
【0046】
対極は、作用電極との間で電流を流すためのものである。導電性の材料であれば、どのような材料であっても対極として使用できる。
【0047】
参照電極は、既知の安定した電位を示すことにより電位の基準とすることができる電極である。この場合の代表的な参照電極として、水素電極、飽和カロメル電極(水銀/塩化水銀電極)、銀ハロゲン化銀電極などを挙げることができる。銀/ハロゲン化銀電極としては、銀表面が塩素を含む溶液との平衡反応により塩化銀を形成している銀・塩化銀電極がある。この電極においては、電圧が印加された場合にも、銀と塩化銀との平衡状態が常時保たれるため、発現する電位は常時一定となり、参照電極として用いることができる。銀・臭化銀電極及び銀・ヨウ化銀電極も使用できるが、材料の汎用性及び加工コストの観点からは、銀・塩化銀電極が好ましい。
【0048】
電極のサイズは特に限定はされないが、一例を挙げると、3x8.4mmの長方形平面形状を有し、厚さが0.5mmの薄板状の電極に、直径1ないし2.5mm程度の小孔をあけた両面粘着テープのようなシートを貼付して所定面積の電極表面を露出させるようにすることができる。電極は、薄板状の予め成形した電極素材をカートリッジ基板に貼り付ける構成とすることが、成形及び取り付けの容易さの観点から好ましいが、カートリッジ基板に直接形成することもできる。
【0049】
検出は、電気化学的測定によることが最も一般的である。水溶液中の電気化学反応においては、電極上の反応の方が溶液中の物質移動よりも速いため、溶液抵抗と呼ばれる物質移動速度に由来する応答の遅れがあり、ピークが不明瞭になる。電極サイズがμmオーダーの微小電極を用いると、問題となる物質移動が面拡散から点拡散に変わり、単位面積あたりの応答の遅れが緩和される。従って、より小さいスケールのピークが判別可能となり、感度が向上する。この効果を期待出来るようにするには、電極の短径寸法を10μm以下とすることが好ましい。また、このような電極をアレイ状に多数配置することにより、高い電流総量を得ることができる。このような大きさの微小電極を作成するには、半導体の微細加工技術を用いることができる。例えば、電極とする材質のうえに絶縁層を形成し、この絶縁層に10μmより小さい孔を設けることで微小円電極を得ることができる。また、10μmより小さい作用極と対極を交互に並べた形状の櫛型電極としても、同様の効果を発揮することができる。
【0050】
電気化学測定による重金属検出を行う場合には、作用電極を所定の電位に高めるための充電電流をできる限り小さくすることが望ましい。このためには、重金属を含む溶液中を電子がより移動しやすくなるようにする必要があり、その目的で適当な電解質を添加することができる。溶液中で塩を形成する物質であればどんな物質でもよいが、塩化カリウム、硫酸、硝酸、硝酸カリウム、水酸化ナトリウム等が価格の観点から好ましい。また、作用極の電位窓は、pHに応じて負側もしくは正側にずれる性質を有するため、電解質によってpHの調整をしておくことで、測定対象電位範囲における作用極からの水素発生や作用極上の酸素皮膜形成などの不具合を防ぐことが出来る。
【0051】
後述する溶離液は、典型的には、電解質を含有する溶液である。電解質が含まれている溶離液を一定流量で送液することにより、溶離から検出までを連続して行うことができる。このように構成することにより、配管及び操作を簡易化でき、溶液の混合比や混合スピードを管理する必要がなくなる。溶離液と電解質溶液を別途用意する場合には、それぞれの溶液の絶対量の管理が必要になるが、本発明の濃度検出装置のように、流路や電極を設けるスペースが極少量である場合には、溶液の絶対量の管理は困難であり、1種類の溶液のみにより溶離と電気化学測定を行えるようにすることは、極めて重要である。
【0052】
また、前述のように、参照電極においては、印刷した銀の上に塩化銀を生成させるために、塩素を含む溶液を参照電極活性化液として印刷した銀に対し接触させ、極微弱な電流を参照電極に流す。従って、溶離液に塩素を含有させておけば、参照電極を活性化させるために用いる活性化液を別に用いる必要がなくなり、簡便な構造とすることが出来る。ただし、セレンの測定の場合には、電気化学的測定を行う際に塩素が妨害物として作用するため、溶離液に塩素を含有させておくことはできない。このため、以下に述べる参照電極活性化液を用いることが必要になる。
【0053】
参照電極活性化液は、印刷した銀に対し接触させて、極微弱な電流を参照電極に流すことにより、印刷した銀の上に塩化銀を生成して参照電極としての作用を行わせるためのものである。参照電極活性化液は、一般的には、適量の塩素を含有する。好ましい塩素含有量は0.05M〜3Mであり、含有量が小さすぎると塩化銀の形成が不安定となり、大きすぎると固形物を析出するために取扱いにくくなる。該活性化液は、水に塩化カリウム、塩化ナトリウムなどを所定量溶解することにより、調製することが出来る。
【0054】
参照電極は、作用極、対極との間で電気的相互作用を有することが必要であるため、参照電極活性化液は、溶離液と接触している必要がある。しかしながら、電気参照電極活性化液を溶離液と別に用いる目的の一つは、電気化学的測定の際に塩素が妨害物となることを避けるためである。すなわち、作用極部に参照電極活性化液が流入することを防ぐことが必要であるため、参照電極室を別途設けておき、参照電極室と溶離液が液路により接続される構造を形成しておく。液路は、容易に分子拡散を生じないように微細流路としておくことが好ましい。多孔質膜で参照電極室と溶離液が隔てられている構造としてもよいが、この際には多孔質膜に参照電極活性化液が浸透するまでに或る程度長い時間が掛かることから、本発明のように短時間で被検出物質の検出を行う目的の場合には、微細流路の方がより好ましい。参照電極室中には参照電極が設置され、この参照電極質に参照電極活性化液が予め含まれた状態とするか、若しくは参照電極活性化液が必要に応じて供給される構成にしておくことが望ましい。検出用カートリッジに予め参照電極活性化液を搭載しておく場合には、液体の蒸発による固体物質の析出を防ぐために、参照電極活性化液をアルミニウム製パックなどに封入しておくことが有用である。
【0055】
吸着担体によっては、サンプル液を通過させる前に吸着担体を活性化する液体を通過させる必要があるものがある。例えば、砒素、セレン、六価クロムを吸着する4級アミンは、OH-イオンと接触することにより吸着性能を発揮するようになるが、これは、目的とする陰イオンがOH-イオンと置換する反応を利用するものである。この場合には、吸着担体活性化液が使用される。吸着担体活性化液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
【0056】
吸着担体は、電極構成の上流側で流路中に設けられる。既に述べたように、吸着担体は、膜、微粒子、多孔質体のいずれの形態であってもよく、また、それらの組み合わせであってもよい。本発明は又、クロマトグラフィー分析、イムノアッセイ、その他の検出に適用でき、吸着担体は、それぞれの目的に応じて適切な構造を選定すればよい。以下に、それぞれの形態を具体的に説明する。
【0057】
〔膜構造〕
主として繊維によりフィルター状に形成される。高分子膜、金属膜に適当な孔を開けたものとすることもできる。膜構造の例としては、表面の形態により被測定対象物質に対する吸着機能を持つもの、表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つもの、繊維に特定機能を有する粒子を担持させたものが挙げられる。
微粒子:この構造には、微粒子表面の形態により被測定対象物質吸着機能を持つもの、微粒子表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つものがある。微粒子を、流路の長手方向に約10mm以上にわたって延びるカラム状に充填すれば、クロマトグラフィーを行うことが出来る。充填の形状は、直方体状、円筒状のいずれでもよい。
【0058】
〔多孔質体〕
多数の連通孔を有する担体である。例としては、多孔質セラミック、多孔質ガラス等のモノリス型多孔質無機材料、或いは、ポリアクリルアミドゲル、スチレンジビニルベンゼン共重合体等を多孔質化したものなどが挙げられる。連通孔表面の形態により被測定対象物質吸着機能を持つもの、連通孔表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つものがある。連通孔を有する担体が一体構造を有する場合には、以下にこれをモノリスと呼ぶ。クロマトグラフィーができる長さより小さい場合には、これをモノリスディスクと呼び、クロマトグラフィーができる長さのものは、これをモノリスカラムと呼び、いずれも用語は目的に応じて使い分けることができる。モノリスカラムは、樹脂充填カラムに比べて相対的に低圧力で通液することが可能であるため、低圧送液ポンプを用いることができ、同じ分析性能を有する機器でも、より小型化、低消費電力化が可能になる。モノリスディスクについても、同様の理由で低圧力での送液が可能であるため機器の小型化が容易となる。モノリスカラム及びモノリスディスクとも、一体化された構造を有するので、カートリッジ式マイクロリアクタ内に設置する際の取り扱いが容易である。
【0059】
吸着担体を構成する材料の例としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンープロピレン共重合体等に代表されるポリオレフィン、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体に代表されるオレフィン−ハロゲン化オレフィン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等に代表されるハロゲン化ポリオレフィン及びポリスルホン、シリカ、アルミナなどが挙げられる。繊維状の吸着担体の場合には、セルロース系材料、綿や麻などの植物性繊維、絹や羊毛などの動物性繊維に代表される各種の天然繊維あるいは再生繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の各種合成繊維等の繊維状材料が用いられる。
【0060】
また上記構造をとらない場合でも、流路の壁面が被測定対象物質に対する吸着機能を有する場合には、同様に濃縮機能を生じることができる。
【0061】
吸着担体の表面に被測定対象物質に対する吸着機能を持たせるためには、表面が被測定対象物質に対する相補的な構造を有するか、又はイオン結合、配位結合、キレート結合、疎水性相互作用、分子内極性による相互作用等を起こす機能性分子が固定化されるようにすればよい。
【0062】
相互作用を有する機能性分子としては、例えば、スルホ基、第4級アンモニウム基、オクタデシル基、オクチル基、ブチル基、アミノ基、トリメチル基、シアノプロピル基、アミノプロピル基、ニトロフェニルエチル基、ピレニルエチル基、ジエチルアミノエチル基、スルホプロピル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、スルホキシエチル基、オルトリン酸基、ジエチル(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル基、フェニル基、イミノジ酢酸基、エチレンジアミン、硫黄原子を含むキレート形成基、例えば、各種メルカプト基、ジチオカルバミン酸基、チオ尿素基などの官能基や、アビジン、ビオチン、ゼラチン、ヘパリン、リジン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、プロテインA、プロテインG、フェニルアラニン、ヒママメレクチン、デキストラン硫酸、アデノシン5'リン酸、グルタチオン、エチレンジアミン二酢酸、プロシオンレッド、アミノフェニルホウ酸、牛血清アルブミン、ポリヌクレオチド(例えばDNA)、タンパク質(例えば抗体)等の原子団が挙げられる。これらの物質は単独で用いてもよいし、2種類以上を同時に用いてもよい。
【0063】
溶離液は、吸着担体に吸着している被検出物質を、吸着担体から離脱させるためのものである。吸着の形態に応じて有効な溶離液は異なるので、吸着の化学的特性から判断して、溶離液を選定する。例えば、吸着担体表面に吸着しやすいイオンを含有する溶液であって、この溶液が吸着担体を通過するときに、該吸着担体に既に吸着しているイオンの形態の測定対象成分が溶離液中のイオンと交換することによって、測定対象成分を吸着担体から離脱させることができる。本発明においては、被検出物質に応じて下記に示すような組成を有する溶離液を用いることができる。
【0064】
カドミウム、鉛、水銀測定の場合には、吸着担体として、3M社からCation-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として0.4M 塩化カリウム、 10mM クエン酸、3.5mM エチレンジアミンを含む液体(pH=約4)を使用する。この吸着担体は、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子10%、繊維状テフロン(登録商標)90%の構成である。微粒子表面はスルホン酸基が形成されている。
【0065】
砒素、セレン、六価クロムの測定の場合には、吸着担体として、3M社からAnion-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として、1M−硫酸(pH=約2)を用いる。この吸着担体も、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子表面は4級アミン基が形成されている。
【0066】
吸着担体によっては、サンプル液を通過させる前に吸着担体を活性化する液体を通過される必要があるものがある。例えば、砒素、セレン、六価クロムを吸着する4級アミンは、OH-イオンと接触することにより吸着性能を発揮するようになるが、これは、目的とする陰イオンがOH-イオンと置換する反応を利用するものである。この場合には、吸着担体活性化液が使用される。吸着担体活性化液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
【0067】
吸着担体の大きさは、吸着担体の吸着容量が、目的とする成分を吸着するにあたって飽和とならない範囲で、自由に決定できる。測定対象物質を含む溶液中に、吸着担体に吸着しうる物質がどの程度含まれているかを予め想定し、吸着担体の大きさを決定する。吸着担体の吸着容量が小さい場合には、濃縮倍率を上げやすいが、飽和吸着となり易いため、所望の吸着容量が得られる大きさの吸着担体とすることが必要である。また、吸着部にクロマトグラフィ作用を期待する場合には、少なくとも流路方向に10mm以上の長さを有するカラム形状とすることが必要である。
【0068】
吸着担体の空隙率、連通孔の大きさ等は、溶液との接触を確実に行うことができ、目詰まりが問題とならない範囲で決定する。膜構造の場合には、その目の粗さは0.3μm程度以上、微粒子を用いる場合には、その粒子径は2〜50μm程度、モノリスカラムの場合の連通孔は1〜50μm程度が好ましい。
【0069】
本発明のこの態様においては、前述した3M社のエムポア(TM)ディスクカードリッジを用いることにより、好適な結果が得られる。このディスクカートリッジは、厚みが非常に薄いため、吸着した重金属を離脱させるときに用いられる溶離液の量が、具体的には9ないし15μlというように極少量で済み、従って溶離液中の重金属濃度が高くなり、結果として高感度の分析を実現出来る。吸着担体の形態の如何を問わず、その容積が極少であることは、微量成分の分析の場合には重要である。
【0070】
また、このように薄い膜構造を用いることにより、液体を通過させるために必要な送液圧力が殆どかからなくなる。装置を小型化するためには、ポンプの小型化が必須であり、送液圧力を低減することが有効である。この観点でも薄い膜構造の形態をとるのは好ましいことである。
【0071】
検出用カートリッジ内で各種の液体を移送・貯蔵するために、微小流路が形成される。液体を移送する流路は、数百μm〜数mmのオーダーの幅を有し、数百μm深さを有する溝により形成され、流路の断面積は100μm2〜1mm2程度であることが好ましい。流路が大きすぎると、流路中で乱流が生じやすくなり、目的とする物質の輸送が均一でなくなる。流路が小さすぎると、流路中に存在する微粒子などにより流路が詰まったり、気泡が抜けにくいなどの不具合が生じる場合がある。液体の移送を確実に行うために、流路の内部を親水化処理してもよい。親水化処理は、気泡の滞留を生じにくくする作用も併せて有する。
【0072】
カートリッジを処理ユニットの読取部に接続するには、カートリッジを、該読取部のケーシングに機械的に結合することが好ましい。カートリッジ内の電極や開口部に相当する位置と、読取部の端子、バルブ機構、各種溶液の注入口が正しく接続されるのを確実にする配置を得るために、処理ユニットのケーシングには、該カートリッジを所定位置に保持するホルダ部を設けることが好ましい。カートリッジとケーシングには、互いの形状に合わせて嵌合するように、凹部及び突起が設けられ、これらが相互に係合して、カートリッジを処理ユニットのケーシングに確実に保持する。
【0073】
電気化学的検出は、ホルダ部に固定されたピン状の端子を介して行われる。これらの端子と処理ユニットは予め結線される。この端子は、処理ユニット内にカートリッジが設置されたときに電極が位置するところに設けられ、その内部にバネを設けて伸縮可能とし、接続が確実になるような構成とすることが好ましい。ホルダ部にカートリッジを設置した状態で、予め電極上方に位置するようホルダーに固定された端子が、バネの力で電極と確実に接触する。これらの電極には、予め設定した測定プロファイルに従って電圧が印加され、電極に流れた電流を検出して、記録や表示部に信号が送られる。
【0074】
送液機能部は、送液用ポンプ、送液時に開口を開閉するバルブ機構、及びこれらポンプ及びバルブ機構を制御するための電子基板により構成することができる。バルブ機構は、対応する溶離液、電解質溶液、吸着担体用の前処理液、洗浄水等が収められる容器に接続される。
【0075】
送液用ポンプは、少量の液体を安定して送液でき、脈動がなく、流速が一定であるものが好ましい。5〜100μl/min程度の流速が安定して実現できることが好ましく、ポンプが送液可能な圧力は0.01〜10Mpaであることが好ましい。また、本体が小型かつ軽量で消費電力が少ないものであることが好ましい。これらの条件に適合するポンプとしては、シリンジポンプが挙げられる。好適なシリンジポンプとしては、ユニフロー社製ペンシルポンプがある。
【0076】
本発明の一態様である濃度検出装置においては、測定中に、被検出物質を含む被検液を一定の流速で流しながら測定を行うことが好ましい。このためには、流量検出手段を採用することが好ましい。溶液を流すことにより、単位時間当たりに電極表面近傍を通過する重金属イオンの数が多くなり、その結果、析出する被検出物質の量が多くなるので、測定を高感度で行うことが可能になる。また、一定の流速で常に溶液を更新し続けることができるので、吸着担体活性化液や洗浄液等の液残り分の影響を考慮したり、溶液の全容積を管理したりする必要がなくなり、流速のみを管理するだけで精度の高い分析をすることができるようになる。さらに、分析対象や濃度に応じて流速を変えることにより、的確な条件で測定を行うことができ、共通のチップを様々な分析対象に使用することができるようになる。
【0077】
また、本発明の上述した態様においては、被検液の流れの線速度を制御することによって、同時に高濃度/低濃度の分析を行い、測定精度を上げることができるが、流れの線速度の制御によってこのような効果を期待できるのは、流量検出手段を採用することの結果である。
【0078】
前述した流量制御を行う本発明の態様においては、電極毎に電極面積もしくは電極が収納される流路の幅及び深さなどを変えることにより、電極表面に吸着する被測定対象物質の量を電極毎に変化させ、低濃度範囲、高濃度範囲の分析を同時に行うことが可能となる。例えば、直径1mmと2.5mmの電極面積を併用すれば、約19倍の感度を使い分けることが可能になる。この場合には、流路の上流側に低濃度検出用の電極を、下流側に高濃度検出用の電極を配置することが好ましい。
【0079】
本発明はまた、液体クロマトグラフィー分析のための分析装置として構成することができる。すなわち、本発明の別の態様においては、カートリッジ式検出装置は、液体クロマトグラフィー分析のための検出用カートリッジを用いるものとすることができる。この場合において、検出用カートリッジは、被検液調整用のカラムと吸光度測定セルとを備えるものとすることができ、処理ユニットは、光源と、該光源からの光をカートリッジの吸光度測定セルに向ける入射光学系と、吸光度測定セルを通過した光を受けて被検出物質に関する情報を生成する分光器とを備えることができる。この態様においても、濃度検出装置の場合と同様に、測定中に、被検出物質を含む被検液を一定の流速で流しながら測定を行うことが好ましい。
【0080】
液体クロマトグラフィー分析の対象としては、タンパク質、核酸オリゴマー、DNA、RNA、ペプチド、農薬、有機酸合成分子オリゴマー、ポリマー、添加剤、単糖類、二糖類、小糖類、多糖類、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、グリセリド、リン脂質、ステロイド、アニオン、カチオン等を挙げることができる。測定原理は良く知られており、本発明においては、公知の原理に基づく方法を採用することができる。液体クロマトグラフィー分析の場合の貯留部は、濃度検出装置の場合と同様に構成すればよい。
【0081】
さらに、本発明においては、処理ユニットは、検出用カートリッジを取外し自在に取り付けることができるカートリッジ取付部と試薬タンクを取外し自在に取り付けることができる試薬タンク取付部とを備えることができる。また、カートリッジは、廃液ポートを備えることができ、処理ユニット内にはカートリッジからの廃液を受ける廃液タンクを設けることができる。この場合、配管切換バルブ機構は、カートリッジの廃液ポートを廃液タンクに選択的に切換接続するように構成される。
【0082】
配管切換バルブ機構及びタンク切換バルブ機構は、それぞれ配管切換バルブプレート及びタンク切換バルブプレート上に配置することができる。配管切換バルブプレート及びタンク切換バルブプレートの少なくとも一方は、プラスチック材料の射出成形又はプレート材料の切削加工により形成したプレート要素を複数枚積層し固定した構造にすることができる。この場合、少なくとも1つのプレート要素には、液体流通のために必要とされる孔及び流路溝を所要のパターンで予め形成する。他方のプレート要素は、孔及び溝を有するものであっても有しないものであってもよい。複数枚のプレート要素を積層し固定することにより、内部に所要の流路を有するプレートが形成され、該バルブプレートに取り付けられるバルブは、上記の孔を介してこれらの流路に適宜接続される。
【0083】
このようにバルブプレートを構成することにより、必要な流路のための配管をコンパクトに収めることが可能になる。また、この構成は、配管の間違いを防止し、流路の詰りや液漏れを発見するのに便利で、かつ、部品点数を減少でき、製造の観点からも、保守点検の観点からも有利であり、しかも、交換が容易であるという利点をもたらす。さらに、プレート要素を透明プラスチック材料により構成すると、プレート内部の視認性が良くなるという利点も得られる。実際の設計では、バルブプレートは数立方センチメートルといった小さな体積とすることができ、この僅かなスペースに所要の配管の大部分を収めることができるという利点が得られる。
【0084】
プレート要素の積層固定の方法としては、接着剤又は粘着剤による方法、高温又は超音波による接合、拡散接合などを挙げることができる。拡散接合は、接合する材料を高温高圧雰囲気に曝し、材料原子に拡散を生じさせ、接合面に一体的な融合を生じさせるものであり、主として金属に適用される技術であるが、プラスチック材料にも適用することができる。拡散接合を適用できるプラスチック材料としては、アクリル樹脂、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)がある。
【0085】
本発明においては、処理ユニットのハウジング内に、電源と情報処理手段を含む電子処理手段を内蔵することができる。複数の試薬タンクは、洗浄液タンク、活性化液タンク、及び溶離液タンクとすることができる。溶離液は、カートリッジ内の液体流路に通されたとき、カートリッジの貯留部に一時的に貯留された被検出物質を溶離させ、所望の分析のためにカートリッジ内の流路に送り出すように作用する。
【0086】
上述したように、貯留部は、例えば被検出物質を吸着する性質の吸着担体として構成することができる。また、試薬タンクの少なくとも1つは、溶離液用のタンクとすることができる。ここで、溶離液は、例えば被検出物質を吸着する性質の吸着担体として構成することができる貯留部に貯留されている被検出物質を、該吸着担体から離脱させるためのものである。吸着の形態に応じて有効な溶離液は異なるので、吸着の化学的特性から判断して、溶離液を選定する。例えば、吸着担体表面に吸着しやすいイオンを含有する溶液であって、この溶液が吸着担体を通過するときに、該吸着担体に既に吸着しているイオンの形態の測定対象成分が溶離液中のイオンと交換することによって、測定対象成分を吸着担体から離脱させることができる。本発明においては、被検出物質に応じて様々な組成を有する溶離液を用いることができる。
【0087】
本発明はまた、免疫学的検定法(イムノアッセイ)による検出のための装置としても実施できる。この場合の測定対象は、各種のアレルゲン、例えば、卵黄、卵白、牛乳、落花生、エビ、カニ、魚、貝、大豆、マンゴー、その他のアレルゲンとして知られている食品や、塵ダニ、羽毛、花粉、真菌、細菌、ゴキブリ、犬又は猫の毛が挙げられる。この他にも、内分泌撹乱物質、農薬、IgE又はIgG等の免疫グロブリン、ヒスタミン、遺伝子(RNA)、ストレスマーカー、各種タンパク質、人又は動物の血液、血液成分、尿、唾液、体液に含まれる抗原又は抗体、特定疾患を示す成分等を挙げることができる。
【0088】
イムノアッセイは、用いる標識の種類や反応済の抗原、抗体を分離する方法などによって、標識法と非標識法、競合法と非競合法(サンドイッチ法)、均一法と不均一法等に分類される。具体的な分析例は、これらの組合せによって構築される。種々の組合せが可能であるが、本発明に適用するのに好適な組合せについては後述する。
【0089】
検出法としては、免疫比濁法、ラテックス凝集比濁法、抗原電極及び抗体電極からなるイムノセンサ等による非標識法と、酵素イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、スピンイムノアッセイ、メタロイムイムノアッセイ、粒子イムノアッセイ、バイロイムノアッセイ等の標識法があり、本発明においては、いずれをも使用することができる。
【0090】
この実施形態においては、検出用カートリッジの貯留部は、フィルタとして構成することができ、該フィルタの表面に被検物質、例えば抗原及び/又は抗体を固定化する。この固定はフィルタ表面に直接行うことができ、適当なリガンドを介して行っても良い。例えば、プラスチック素材又は炭素繊維を抗原及び/又は抗体溶液に浸漬することにより、この固定を行うことができる。用いる抗原及び/又は抗体によっては、例えば、金−メルカプト結合を利用する場合のように、固定化に際し金属を介在させた方が良いものがある。このような場合には、例えば炭素繊維にメッキを施すとか、スパッタ処理又はプラズマ処理を行うとかの方法で、容易に金属被覆を形成できる。
【0091】
抗体及び/又は抗原は、測定対象に応じたものを用いる。また、ビオチンに対するアビジン、免疫グロブリンGに対するタンパク質A、ホルモンに対するホルモンレセプタ、DNAに対するDNAレセプタ、RNAに対するRNAレセプタ、薬物に対する薬物レセプタなどの組合せが考えられる。
【0092】
イムノアッセイは、抗原抗体反応を行わせる第1段階と、抗原又は抗体と反応した標識を検出する第2段階に大別される。貯留部では、第1段階の抗原抗体反応を利用して検出対象成分とそうでない成分の分離を行い、貯留部より下流側に設けられる電極構成又はセルからなる検出機構において、分離した成分の定性及び/又は定量分析を行う。第2段階における検出機構は、電気化学分析又は光学分析によるものとすることができる。電気化学分析による場合には、上述の濃度検出装置と同様な電極構成を採用することができる。光学分析による場合には、液体クロマトグラフィー分析の場合と同様な光学セルを採用することができる。
【0093】
イムノアッセイにおける標識物質としては、酵素標識、科学発光体標識、金属イオン等を用いることができる。酵素標識を用いる場合には、貯留部に標識が固定化された状態で貯留部に基質を流して、生成する反応物を下流側の検出機構で検出する。例えば、酸化還元酵素によって生成される過酸化水素を電気化学分析によって検出する。このような標識と基質の組合せとしては、グルコールオキシダーゼに対するグルコース、キサンチンオキシダーゼに対するキサンチン、アミノ酸オキシダーゼに対するアミノ酸、アスコルビン酸オキシダーゼに対するアスコルビン酸、アシルCoAオキシダーゼに対するアシルCoA、コレステロールオキシダーゼに対するコレステロール、ガラクトースオキシダーゼに対するガラクトース、シュウ酸オキシダーゼに対するシュウ酸、ザルコシンオキシダーゼに対するザルコシなどがある。
【0094】
また、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素標識を用いて、光学分析を行うこともできる。光学分析としては、比色法又は蛍光法を用いることができる。
【0095】
またさらに、他の原理を利用した分析、例えば特異的結合反応を利用した分析に本発明の検出装置を応用することもできる。この場合、貯留部を特異的結合反応を行う物質で構成することによって、例えば、IMAC(固定化金属イオン・アフィニティ クロマトグラフィ)、相補DNAのハイブリダイゼーション、その他の各種タンパク質の分析にも応用することが可能である。
【0096】
上述した態様のいずれの場合においても、本発明によるカートリッジ式検出装置は、測定ごとの交換、煩雑な洗浄や更新処理などを必要とする部分を検出用カートリッジに搭載することができる。例えば、電気化学分析のための電極、液体クロマトグラフィーにおけるクロマトカラム、イムノアッセイにおける抗原又は抗体の固定相がこれに該当し、検出用カートリッジに搭載される。
【0097】
光学セルは、検出用カートリッジに容易に組み込むことができ、測定者の労力を軽減する観点からは、検出用カートリッジに搭載することが好ましいが、光学セルの洗浄は単純な水洗ですむので、処理ユニット側に搭載してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(検出用カートリッジによる各種重金属の測定)
図1に、重金属の濃度分析に使用するのに適した本発明の一実施形態による検出用カートリッジの一例を分解図で示す。図示実施形態においては、検出用カートリッジ1は、4枚の樹脂製のベース基板11、12、13、14を、下からこの順で重ね、組み合わせて構成されている。典型的な例を挙げると、各基板の大きさは、平面形状が35mm×50mmであり、一枚の基板の厚さは1mmであり、重ね合わせた状態で約4mmとなる。
【0099】
基板12、13の間には、アニオン性物質を吸着する吸着担体22a、アニオン性物質を検出するための作用極31、32、該作用極31、32に対応する対極33及び参照極34と、カチオン性物質を吸着する吸着担体22b、カチオン性物質を検出するための作用極35、36、参照極37及び対極38が配置される。基板12には、これら電極を所定位置に収めるために凹部が形成される。図1において、基板12の凹部31a、32aが作用極31、32を収める作用電極室であり、凹部33aが対極33を収める対極室、凹部34aが参照電極34を収めるための参照電極室である。同様に、凹部35a、36aが作用電極室を、凹部37aが参照電極室を、凹部38aが対極室をそれぞれ構成する。吸着担体22a、22bは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部を構成する。
【0100】
砒素及びセレン測定用の作用極としては、ガラス基材上にクロム層を介して金層が形成された金電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用い、カドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の作用極としては板状カーボン電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用いる。この実施形態においては、作用極31を砒素及びセレン測定用の金電極とし、作用極32、35、36を、それぞれカドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の板状カーボン電極とすることができる。対極33、38には、作用極32と同様の板状カーボン電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用し、参照極34、37には、アルミナ基材上に銀ペースト(日本アチソン社製6022)が塗布された電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用すればよい。もちろん、他の電極構成を採用することも可能である。
【0101】
電極の大きさは全て統一されており、電極表面と基板12の表面が同一面になるように、それぞれの電極31、32、33、34、35、36、37、38が基板12の凹部31a、32a、33a、34a、35a、36a、37a、38aにそれぞれ収められている。基板11と基板12の間、基板12と基板13の間、基板13と基板14の間は、粘着テープによって液密に固定される。図1には、基板12、13間に配置される粘着テープ24の例が示されている。他の基板の間に配置される粘着テープも同様な形状であり、各粘着テープは、必要な個所に開口又は孔が形成される。
【0102】
作用極31、32、35、36その他の電極の表面は、粘着テープ24によってマスクされる。図1に示すように、マスク24の電極に対応する8ヶ所の位置に所定の面積の孔を開口することにより、各電極が露出される。図1において、孔241、242が、アニオン性物質を検出するための作用極31、32にそれぞれ対応するものであり、カチオン性物質を検出するための電極列に対応する位置にも同様な孔が形成されている。図示実施形態では、作用極31に対応する孔241及び作用極35に対応する孔を直径1mmの円形孔とし、作用極32、36に対応する孔及び残りの電極に対応する孔を直径2mmの円形孔としている。これらの孔は、電極31〜38が液体と接するようにするためのものである。さらに、粘着テープ24には、吸着担体22a、22bに対応する位置にも該吸着担体22a、22と同じ大きさの孔243、244が形成されている。個々に説明はしないが、粘着テープ24及び他の粘着テープには、それぞれ基板に形成される凹部等に対応する位置に必要な孔又は開口が形成される。
【0103】
図1に示すように、基板11には、廃液溜110を形成する凹部と、液体流路の一部を形成する一対の流路溝111及び一対の流路溝112が形成されている。基板12には、被検液導入のための一対の貫通孔201が形成されており、この貫通孔201の各々は、基板12が基板11に重ねられたとき、該基板11の一対の流路溝111の各々の一端部に連通する位置に配置される。各流路溝111の他端部は、基板12及び基板13に形成された孔を通して後述する基板14の流路溝に連通する。各流路溝112の一端部は、吸着担体22a、22bの収容凹部にそれぞれ連通させられている。基板12は、さらに、基板11の廃液溜110に重なる開口202を有する。
【0104】
基板13は、該基板13が基板12に重ねられたとき、基板12の一対の貫通孔201に重なる一対の貫通孔301と、吸着担体22a、22bの上部を受ける一対の凹部302を有する。さらに、基板13は、電極31、32、33、34の列に重なる流路溝303と、電極35、36、37、38の列に重なる流路溝304を有する。また、基板13には、参照電極活性化液としての電解質溶液を入れた電解質溶液パックを収める電解質溶液室305と基板12の孔202に連通する孔306が形成されている。基板12には、基板13の電解質溶液室305内に延びる針状体203が設けられる。基板14には、基板13の一対の貫通孔301にそれぞれ重なる一対の貫通孔401と、基板13の電解質溶液室305に連通する貫通孔402が形成されている。基板14の外側表面には、貫通孔402を塞ぐように、可撓性の薄板部402aが、該基板14と一体に形成されている(図2(a)(c)参照)。参照電極活性化液として機能する電解質溶液は、予めアルミニウム製のパックに入れられた状態で供給され、この電解質溶液パックが電解質溶液室305に収められる。電解質溶液室305は参照電極室に連通している。
【0105】
基板14には、一対の流路溝403が形成されており、この流路溝403の各々の一端は、前述したように、基板12、13の孔を介して基板11の流路溝111の他端に連通している。図1から分かるように、電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列は、基板12の側縁に露出されている。貫通孔201、301、401は、全体として、被検液導入部1aを構成する。
【0106】
図2(a)に、図1の基板11、12、13、14を重ねて検出用カートリッジを組み立てた状態を示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図で、吸着担体を通る断面を示し、図2(c)は、図2(a)のB−B断面図で、電極34、38と参照電極用の電解質溶液室305を通る断面を示す。
【0107】
図3に、検出用カートリッジ内における液体流路を、上流側を左に、下流側を右に配置した状態で模式的に示す。図3における符号は、それぞれ図1に示す符号に対応する。ここでは、アニオン吸着担体22aを含む砒素、セレン測定用流路を例に説明する。吸着担体22aは、直径5mm×厚さ600μmの円形の膜で、その周縁を基板12、13の吸着担体収容用凹部21aの縁が押し挟んで保持している。吸着担体収容用凹部21aの縁部は、吸着担体22aの周縁方向からの液体の漏れを生じないように形成されている。また、この凹部は、流路方向の流れに沿って流路壁に急激な段差を生じないようにテーパ状に形成されており、これにより流路方向の流れがスムーズとなり、気泡の混入なども生じ難くなる。図3に示すように、基板11の外面には、流路溝111に通じる外部ポート113と、流路溝112の吸着担体収容用凹部21aに隣接する位置に通じる外部ポート114、及び流路溝112の下流側端部に隣接する位置に通じる外部ポート115が形成されている。さらに、基板11の外面には、基板12の貫通孔を介して基板13の流路溝304に通じる外部ポート116が形成されている。ポート113、114、115、116は、それぞれのポートを所望のように切り換えるバルブ機構51により制御される。図3には、そのための5方向バルブの一部を示す。バルブ機構51については、図4を参照して後で説明する。
【0108】
この実施形態による検出用カートリッジを用いて被検出物質を検出するに際しては、外部ポート113、114、116、117を閉じ、外部ポート115を開いた状態にする。そして、最初に被検出物質を含む被検液、及び必要に応じてアニオン吸着担体活性化液を、シリンジホルダを用いて、検出用カートリッジの被検液導入部1aを構成する貫通孔401、301、201に注液する。被検液の送液形態を、図3(a)に示す。被検液導入部1aの貫通孔401、301、201からシリンジにより注入された被検液は、溝111の液体流路を通り、基板12、13の孔を垂直方向上方に抜けて基板14の溝403からなる液体流路を流れて吸着担体22aに達する。ここで、被検液に含まれる被検出物質は吸着担体22aに吸着される。吸着担体22aを通過した被検液は、バルブ機構により開かれている外部ポート115から排出される。図3(b)は、シリンジを操作するのに使用されるシリンジホルダの一例を示す図である。ホルダは、クランプ15、16を有し、該クランプ15、16により検出用カートリッジ1を強く挟む構造となっている。クランプ16は、使用されない方の被検液導入部1aの貫通孔401を液密に塞ぐ構造を有する。また、クランプ16には、シリンジ17を嵌合させる開口を有する。
【0109】
電解質溶液室305には、外部ポート117から参照電極34を活性化するための電解質溶液が注入される。次いでバルブ機構51が切り換えられ、外部ポート115が閉じられ、外部ポート113が後述する溶離液供給部に対して開かれる。
【0110】
図3(c)に、溶離液の流れ径路を示す。溶離液供給部から送られる溶離液は、ポート113から溝403の液体流路を経て吸着担体22aに達し、該吸着担体22aを通過して溝112の液体流路に流れる。この間に、吸着担体22aに吸着されていた被検出物質が溶離液に溶出する。被検出物質を含む溶離液は、溝112の液体流路から基板13の溝303による液体流路に沿って、アニオン検出用電極31、32、33、34の上を流れる。被検出物質を含む溶離液が連続して電極上を流れることにより、電極には、被検出物質の濃度情報に関連する電気信号が発生する。
【0111】
図4に処理ユニット2の構成を示す。処理ユニット2は、ケーシング20内に収められた演算処理装置21と、溶離液供給部22とを備える。溶離液供給部22は、溶離液タンク54、55、56を収めた溶離液カセット50と、基板11の外部ポート113、114、115、116を切り換えるためのバルブ機構51と、ポンプ52とを備える。溶離液カセット50は、ケーシング20に嵌め込まれる構造であり、バルブ機構51とポンプ52は、図4では図示の便宜上ケーシング20の外に示してあるが、ケーシング20内に配置される。バルブ機構51は5方向バルブ53aと4方向バルブ53bとを含み、5方向バルブ53aは、ポンプ52及び4方向バルブ53bを介して溶液タンク54、55、56に接続されている。5方向バルブ53aは、図3に示す流出側の外部ポート115、116、117に接続されている。図3は、アニオン性物質検出用の流路を示すものであるが、カチオン性物質の検出のために、基板11には同様な3個の外部ポートが形成されており、5方向バルブ53aは、これらのポートの切り換えも行う。溶離液流入側のポート113は、アニオン性物質の検出用流路及びカチオン性物質の検出流路に共通にすることができる。
【0112】
4方向バルブ53bは、溶離液タンク54、55、56とポンプ52との間の接続を切り換えるためのものである。溶離液タンク54、55、56にはアニオン性物質吸着担体用の溶離液、カチオン性物質吸着担体用の溶離液(電解質溶液と兼用)、及び洗浄水がそれぞれ収められており、4方向バルブ53bによって、ポンプ52に送液される溶液が切り換えられる。
【0113】
溶離液タンクを収める溶離液カセット50は、処理ユニット2のケーシング20に対し着脱できる構造となっており、各タンクに貯蔵する溶液が不足した際には、溶液タンクを取り外し、溶液を補充することができる。溶離液タンク56について図に示すように、溶離液タンクと蓋57は着脱可能であり、ゴムリングにより溶液の漏れを完全にシールできる構造となっている。また蓋57の上部は、コネクタ構造により、カセット50の蓋58にワンタッチで結合できる構造となっている。
【0114】
さらに、処理ユニット2のケーシング20内に配置される演算処理装置21は、マイクロプロセッサ及び各種ドライバを搭載した電子基板66を備えており、処理ユニット2の上面67には、表示部と操作ボタンなどのユーザインタフェースが設けられている。処理ユニットの外面には、さらに検出用カートリッジ挿入ケース62が設けられる。この挿入ケース62は、開閉可能なヒンジ型の蓋として構成され、カートリッジが嵌め込まれるカートリッジホルダ61に対して開閉可能である。カートリッジホルダ61は、開閉可能な構造を有する。
【0115】
図4(a)は、カートリッジホルダ61が開いた状態で示す概略図、図4(b)はカートリッジホルダ61が閉じた状態を示す概略図である。カートリッジホルダ61は、図4(c)に示す構造を有する。カートリッジホルダ61は、上板613と、5方向バルブ53a及び各種送液チューブが接続される下板612とからなる下部構造と、該下部構造にフランジ部611によって可動的に結合された押さえ板614とからなる。図4(c)では、押さえ板614を裏向きにして示しており、押さえ板614の裏面には電極ピン615が設けられ、押さえ板614の表面の配線616を通じて、処理ユニットのマイクロプロセッサと電気信号の授受が行われる。電極ピン615は、検出用カートリッジ1の電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列に対応する配列である。
【0116】
また、押さえ板614の裏面には、検出用カートリッジ1の被検液導入部1aの貫通孔401に係合して液体の逆流を防ぐための弾性シール部材411と、電解質溶液室305に挿入されて参照電極活性化液を参照電極に向けて流入させるための突起141と、検出用カートリッジ1を上板613に押し付けて各種液体の漏れを防ぐための弾性突起412がそれぞれ設けられている。検出用カートリッジ1は、図4(a)に示すように、カートリッジホルダ61に挿入される。
【0117】
図3に示される例において、電極に面する溝304の深さは200μm、幅は3mmである。電極33と電極34の間の区間では、溝304は浅くなり、液絡133が形成されている。この液絡133の深さは100μm、幅は約100μmである。それ以外の流路の深さは500μm、幅は500μmである。被検液導入部1aの貫通孔401は、被検液注入時には注入に用いるシリンジの先端がちょうど収まる大きさであり、処理ユニットにセットした状態では塞がれるようになっているので、流路は構成しない。検出用カートリッジ1内の被検液導入部の貫通孔401及び廃液溜110、貫通孔202を除く流路の容積は、約1mlである。廃液タンク123を除いた流路1系統あたりの容積は45μlである。
【0118】
図5に示すカートリッジ挿入ケース62を開いて、想像線で示すように処理ユニットの側面から検出用カートリッジ1を取り付け又は取り外しすることができる。溶液タンク54、55、56が収められた溶離液タンクカセット50は、処理ユニット2のケーシング20に着脱可能であって、溶液の補充及び交換を容易に行うことができる。処理ユニット2は、電源コードを繋ぐ接続部64と、電源コードを繋がなくとも動作することができるバッテリー63と、外部と無線通信することができる通信機器65とを有する。
【0119】
処理ユニット2は、図6(a)に示すようにPDA機器500に接続したり、或いは、図6(b)に示すようにコンピュータ501に接続したりして、データの記録や転送等が容易に行えるようにすることができる。また、処理ユニット2は、モバイル用途に適するように、バッテリー駆動とすることができ、また、据え置きで測定する場合に適したAC電源による駆動とする両方に対応できる構成とすることができる。図7に、処理ユニット内の演算処理ユニットの構成をブロック図で示す。図に示すように、処理ユニット2は、マイクロコントローラから構成される制御部のほか、A/Dコンバータや各種のブロックに示される構成コンポーネントを含む。これらのコンポーネントは、いずれも周知のものであり、その詳細はこれ以上説明しない。
【0120】
図1ないし図7に示すケーシング用カートリッジ1及び処理ユニット2により、被検出物質の検出を行う場合の作動の流れを図8に示す。以下、図8に基づいて、例を挙げながら操作手順に従って説明する。
【0121】
第1の操作手順においては、検出用カートリッジ1は処理ユニット2に挿入されていず、シリンジホルダのクランプ15、16により保持されている。シリンジホルダは、検出用カートリッジ1が保持されたときに、被検液導入部1aの貫通孔401を塞ぐことができるように構成される。図3(b)に示す構成のシリンジホルダの代わりに、図2(a)に示す閉塞用の栓41又はバルブなどを利用してもよい。貫通孔401を塞ぐのは、ポート113から注入した溶離液が吸着担体22aを通過してポート115から流出するのを円滑にするためである。
【0122】
まず、アニオン性物質吸着担体22aの吸着能力を活性化するために、被検液導入部1aの貫通孔401からアニオン性物質吸着担体22a用の活性化液を注入する。活性化液の量はアニオン性物質吸着担体を濡らせばよく、50μlあれば充分である。次に、被検液導入部の貫通孔401から被検液10mlが注入され、アニオン性物質吸着担体22aを通過して外部ポート115から排出される。このとき、測定対象の砒素およびセレンは、アニオン性物質吸着担体22aに吸着により補足され、排出される溶液中には含まれない。続いて、参照電極34用の塩化銀形成のための塩化カリウム溶液を参照電極室に満たすため、該溶液が入ったパックを基板13の電解質溶液室305内に配置し、基板14に設けられた押下部すなわち可撓性薄板部402a(図1、図2)を押す。基板12には該容器に対応する位置に針状体203が設けられており、この針状体203によって溶液の入ったパックが破れ、ここから漏れ出た塩化カリウムは、参照電極34が位置する参照電極室に流れ込む。塩化カリウムは、参照電極の表面に銀/塩化銀電極を形成する。
【0123】
第2の操作手順においては、検出用カートリッジ1が処理ユニット2に挿入される。検出用カートリッジ1が処理ユニット2に挿入されると、バルブ機構51が操作されて、ポート117からアニオン用参照電極質に塩化カリウムを注入する。その後、溶離液注入用のポート113が開かれ、溶離液が注入される。同時に、被検液導入部1aの貫通孔401が塞がれ、作用極31、32、対極33、参照電極34に、それぞれの電極用の接続端子615が接続される。
【0124】
次いで、処理ユニット2上の測定開始ボタンを押し、測定をスタートさせると、砒素・セレン測定用溶離液(=1M硫酸;pH=約2)が被検液導入部のポート113から注入され、この溶離液は、吸着担体22aと通って流れ、さらに電極31、32、33、34に沿って流れる。貫通孔401が塞がれているので、溶離液が被検液導入部の方向に逆流することはない。電極31、32、33に面する流路は液絡133を介して参照電極34に面する流路に接続されているが、液絡133が非常に狭いため、参照電極室の塩化カリウム溶液が電極31、32、33の列に逆流することはない。この流路の最下流は、ポート116を介して処理ユニットの廃液溜に接続されている。
【0125】
なお、図3では簡略化のため、電極31、32、33に面する液体流路、液絡133、及び参照電極34に面する液体流路は、ポート116に連通するように示されているが、実際の配置は図1の通りであり、電極31、32、33に面する液体流路からポート116に至る流路の間に液絡133を介して参照電極34に面する流路が接続されている。このため、電極31、32、33に面する液体流路と参照電極34に面する流路とは、流体的に接続されているが、参照電極34側の塩化カリウム溶液が溶離液と交換することはない。
【0126】
電極に面する液体流路に溶離液を満たした状態で電気接続のチェックを行う。作用極31、32と対極33との間に電流又は電圧を印加して、作用極にかかる電圧又は電流をチェックすることにより、溶離液が流路に行きわたって電気接続が確保されているか、電極と端子との接続が確実になされているかをチェックする。電極に面する流路に溶離液を満たすために必要な溶液量は40μl程度である。
【0127】
次に、溶離液注入用ポート113から砒素・セレン測定用溶離液を一定の流速で流入させ、作用極31、32に砒素およびセレンを析出するための電位(−0.4V)を印加する。溶離液が吸着担体22aを通過すると吸着担体に捕捉されていた砒素およびセレンが離脱して溶離液中に移動し、溶離液の流れに伴って電極近傍に達する。電極近傍では砒素およびセレンの還元反応が起こり、作用極31、32上に析出する。溶離液の流入および析出電位の印加は捕捉された砒素およびセレンが脱着し尽くすまで行う。50μl/分の流速で300μl析出させれば砒素およびセレンの溶離は殆ど完了するので、析出時間は6分程度に設定する。操作としては、5分50秒まで流入を継続し、最後の10秒間は流路中の液体を静止するための時間とし、6分経過後に電位の挿引を開始する。挿引の条件は以下の通りである。
ASV測定条件
挿引の方式:LSV(電位の掃引の際に一定周波数を印加しない方式)
析出電位:-0.4V
析出時間:6分
掃引速度:0.2V/s
掃引開始電位:-0.4V
掃引終了電位:1.2V
【0128】
上記の操作を行った際の電位−電流曲線を記録すると、図9のようなグラフが得られる。ここで観察されるピークの面積は、析出時間中に作用電極上に析出した重金属が、電位の上昇によって再溶解する際に流れた電流であり、溶解した物質量に対応する。図9においては、砒素、セレンの濃度を代えて上記の測定を行った場合の電位−電流曲線を示している。
【0129】
砒素、セレンの測定操作は以上で完了する。続けて、カドミウム、鉛、水銀の測定に入る。その手順はほぼ砒素、セレンの場合と同様であるが、以下の点が異なる。すなわち、カチオンの測定においては、溶離液として塩化カリウムイオンが含まれていても測定が妨害されることはないので、参照電極のための溶液と溶離液を兼用することができる。溶離液と参照電極室のための溶液が共通となるため、参照電極に面する流路を他の電極に面する流路とは独立して設ける必要がなく、4個の電極35、36、37、38を連続して配置すればよい。図1において、カチオン側の電極として、4個の電極が一つの流路に面するように配置されている。この場合の溶離液の組成は、以下の通りである。
カチオン測定用溶離液:
0.4M 塩化カリウム + 10mM クエン酸 + 3.5mM エチレンジアミン(pH=約4)
【0130】
カチオン性物質吸着担体22bは活性化液が不要である。このため、上記の第1の操作手順に対応する操作手順においては、被検液の注入のみを行えばよい。
【0131】
これらの制御は、図8のソフトウエアフローチャートに示すように、処理ユニット2内の処理装置において、プログラム通りに実行される。
【0132】
以上の点を変更する以外はアニオン測定と同様にして測定を行ったときの電位−電流曲線を図10に示す。カドミウム、鉛、水銀の3種とも尖鋭なピークが得られ、各金属の濃度に応じてピーク面積が変化している様子が分かる。このようにして得られた検量線を基に定量分析を行うことができる。掃引の条件は下記の通りである。
ASV測定条件
挿引の方式:SWV(電位の掃引の際に一定周波数を印加する方式)
析出電位:-0.9V
析出時間:6分
掃引速度:0.255V/s
掃引開始電位:-0.9V
掃引終了電位:0.6V
周波数:100Hz
ステップ電位: 2.55mV
振幅:25.5mV
【0133】
砒素及びセレンの測定と、カドミウム・鉛・水銀測定を連続して行う場合には、シリンジホルダに検出用カートリッジをセットした状態で砒素・セレン用の被検液導入部1aの貫通孔401から吸着担体22aの活性化液を注入する。次いで、被検液を、砒素・セレン用の被検液導入部の貫通孔401とカドミウム・鉛・水銀用の被検液導入部1aの貫通孔401にそれぞれ10mlずつ注入する。その後、検出用カートリッジ1を処理ユニット2に挿入し、スタートボタンを押すと、まず砒素・セレン測定用の溶離液の送液、電気接続のチェック、2度目の溶離液の送液および電気化学測定が行われる。続いてカドミウム・鉛・水銀測定用の溶離液の送液、電気接続のチェック、2度目の溶離液の送液および電気化学的測定が行われる。カドミウム・鉛・水銀測定の終了後にはバルブ機構51、ポンプ52及びそれらを繋ぐ配管の洗浄のための洗浄水が、洗浄水タンク503から送水される。この系統の全体を図8(d)に示す。洗浄水は、バルブ機構51、ポンプ52及び配管内の液をちょうど押し流す量の洗浄水が、順に配管を切り換えながら洗浄水タンク503から送水される。バルブ機構51、ポンプ52及び配管を合わせた容量は約600μlであり、この洗浄水の送液によって検出用カートリッジ内部に溜まっていた溶離液約600μl分が押し流されて廃液溜110内に溜まる。
六価クロムの測定は、電気化学的測定をカソーディック・ストリッピング・ボルタンメトリ法で行う以外は、砒素、セレンの場合と同様に行う。六価クロムの電気化学的測定方式は、砒素・セレンの電気化学測定方式と異なるため、六価クロムと砒素・セレンの測定は同時に行わず、それぞれ個別の検出用カートリッジを用いて行う。しかしながら、六価クロムの測定に引き続き、カドミウム・鉛・水銀測定は、同一の検出用カートリッジにて連続的に行うことができる。
【0134】
図11は、本発明のカートリッジにおける濃縮部の第二の実施形態を示す概略断面図である。この実施形態では、被検液は、加熱蒸発により濃縮される。カートリッジに形成された液体流路500に面してペルチエ素子501のような発熱素子が配置され、この発熱素子501に導線502により電流が供給される。発熱素子501に向き合った液体流路500の側壁には蒸気透過性材料の膜503が配置されており、加熱により生じた蒸気がこの膜503から流路500外に抜けることにより、被検液が濃縮される。
【0135】
図12に被検液濃縮部の別の構成を示す。この実施形態は、多孔質膜を使用する例である。被検液流路600は、被検液入口にバルブ601が配置され、被検液出口にバルブ602が配置されている。該被検液流路600には、該流路600を濃縮室600aと排液室600bとに分離するように、多孔質膜603が配置される。
【0136】
この構成においては、出口バルブ602を閉じた状態で入口バルブ601から被検液を導入し、濃縮室600aに適当な圧力を印加することにより、濃縮室600a内の被検液を濃縮することができる。濃縮後には、出口バルブ602を開いて被検液を電極構成に流すことができる。この構成は、多孔質膜603の面積を任意に大きくすることにより、濃縮時間を短縮できるという利点がある。
【0137】
図13a、図13b、図13cは、上述した検出用カートリッジ1について使用することができる携帯型分析ユニットを示す斜視図である。図13aに示すように、分析ユニットは全体として長方体形状の分析器本体すなわちハウジング700を備え、この分析器本体700は、上下に重ねられた本体上部701と本体下部702とにより構成される。本体700には、携帯に便利なように、ハンドル703が設けられる。本体上部701は、上面が開放された形状であり、この上面には蓋704が固定される。
【0138】
図13bは、蓋704を取り外して本体上部701の内部を示すものである。本体上部701内には、長手方向の一側部に沿って仕切り壁701aにより廃液タンク室701bが形成され、この廃液タンク室701bに廃液タンク705が配置されている。廃液タンク705は、本体上部701に対し、取外し可能に固定される。
【0139】
仕切り壁701aを挟んで廃液タンク室701bの反対側は各種の機能部品を収める室701cであり、この室701cの一方の長手方向端部から中央部付近までにわたって、複数の試薬タンク706が並列配置されている。本実施形態においては、5個の試薬タンクが配置されるが、図14においては、試薬タンク706の下方の配置を示すために、両端の試薬タンク706のみを示してある。また、室701cの長手方向端部に隣接する試薬タンク706は、その内部が分かるように上方を切り欠いて示してある。
【0140】
試薬タンク706の下方には、複数の切換バルブからなる切換バルブ機構707が配置されている。この切換バルブ機構707の下側に、タンク切換配管プレート708が配置される。室701cには、さらにカートリッジ取付部として、カートリッジホルダ709が配置され、該カートリッジホルダ709の横に送液ポンプ710が配置される。カートリッジホルダ709の下側には、後述する吐出先切換バルブ機構711及び吐出先切換配管プレートが配置される。
【0141】
図13cは、本体下部702の内部を示すものである。本体下部702内には、長手方向一側部に沿って電池ボックス712が配置され、その横に必要な制御回路及びマイクロプロセッサ等の演算処理装置を組み込んだ電子基板713が配置される。
【0142】
図13aに戻ると、本体上部701の上面に取り付けられる蓋704には、試薬タンク706の取付位置に対応して、試薬タンク出し入れのための開閉蓋714が設けられ、カートリッジホルダ709の取付位置に対応してカートリッジのための開閉蓋714aが設けられる。
【0143】
図14a、図14b(i)(ii)(iii)及び図14cは、電気化学分析に使用するための検出用カートリッジを示すもので、図1、図2(a)(b)(c)及び図3に対応する図であり、対応する部分は同一の符号を付して示してある。この例においては、カートリッジの下面に、ポート113、114、115に加えてポート116、117が形成されており、ポート116が廃液タンク705に接続され、ポート117が参照電極34の溶液供給用の試薬タンクに接続されるように構成されている。また、ポート114、115間の流路はカートリッジ外部ではなく、カートリッジ内に形成されている。
【0144】
図46は電気化学分析に使用するための検出用カートリッジの他の例を示すものである。電気化学分析用の検出用カートリッジにおいては、樹脂製の第1シートと第2シートを積層してなり、前記第1シートに電極を収容する凹部が形成され、前記凹部には電極が配置され、前記第2シートには前記電極に対応する位置に試薬を流通させる液体流路が形成され、前記第1シートと第2シートの間には、前記電極に対応する位置に一定の面積の孔を設けた絶縁シートが配置され、かつ、前記電極とは離れた位置に貯留部が形成され、前記第1シートと第2シートの相対する面の反対面の一方又は両方に第3シートが配置され、前記第3シートには前記貯留部に接続する流路を構成する溝が設けられる。図1および図14に示すカートリッジにおいては、前記第1シート(基板12)と第2シート(基板13)が積層され、積層面と反対面の両方に第3シート(基板11および14)が設けられているが、この例では、片面(図46中の上面)のみに第3シートが積層される。また、測定系は1系統であり、アニオン測定、カチオン測定のいずれにも対応可能に構成されている。被検液はカートリッジ外の専用ホルダー(図示せず)から導入される。
【0145】
図15aは、クロマトグラフィー分析用のカートリッジにおける流体の流れを示す図3aに対応する図であり、図15bは図3cに対応する図である。流路303がクロマトグラフィー分析のためのカラムを構成する。カートリッジは、少なくともカラム303の部分が透明プラスチック材料により形成され、後述するように、この部分に検出用の光を透過させることにより、分析が行われる。
【0146】
図16及び図17を参照すると、タンク切換配管プレート708の上面には、複数個の試薬タンク嵌合部715が並列して設けられている。図16では、一つの嵌合部715に試薬タンク706を取り付けた状態が示されている。図17は、この取り付け状態を示す断面図である。嵌合部715は、プレート708の上面に形成された円形環状の突起部715aと、該突起部715aの円形中心において上向きに突出する試薬タンク開口用ピン715bとを有し、該ピン715bの周りには、仮想円弧に沿った4点においてプレート708の上面に開口するスリット715cが形成されている。突起部715aの内周に隣接して、環状のシール溝715dが形成され、このシール溝715dにO-リング715eが配置されている。
【0147】
一方、試薬タンク706の一端部下側には下向きの突出部706aが形成され、この突出部706aの下向き面に、プレート708の環状突起715aに対応する環状溝706bが形成されている。また、試薬タンク706には、プレート708のスリット715cに対応する位置に、試薬吐出孔706cが形成されている。この吐出孔706cには、ばね706dにより閉方向に付勢されたバルブ706eが設けられている。試薬タンク706の上面には通気孔706fが形成されており、この通気孔706fは、気体透過性であるが液体は通さない材料によりシールされている。
【0148】
以上のように構成された試薬タンク706は、環状溝706bをプレート708の環状突起部715aに嵌合させることにより所定位置に取り付けられる。このとき、プレート708のピン715bが試薬タンク706のバルブ706eを押し上げて、試薬吐出孔706cを開き、タンク706の内部をスリット715cに連通させる。スリット715cは、プレート708内に形成された流路に連通している。試薬タンク706とプレート708との間の液漏れは、O−リング715eにより防止される。
【0149】
図18を参照すると、この図にはタンク切換配管プレート708に形成される試薬流路708a及びポンプ吸入流路708bの詳細が、切換バルブ707との関係で示されている。試薬流路708aの各々は、一端が嵌合部715においてプレート708に形成されたスリット715cに接続され、他端が切換バルブ707の下方においてプレート708の上面に開口し、該切換バルブ707に接続されている。図19に、流路708aと切換バルブ707の流路707aとの接続関係の一例を示す。
【0150】
図18には、さらに、送液ポンプ710が示されている。送液ポンプ710は、図14においては本体上部701の長手方向に配置されるように示されているが、図18では、図示の便宜上、図14に示される方位から90°回転した方位で示してある。タンク切換配管プレート708には、ポンプ吸入流路708bが形成されている。この流路708bは、切換バルブ707に一端のポートP1が接続され、他端が送液ポンプ710の吸入口に接続されている。この接続は、図20に示すように、チューブによって行われる。
【0151】
送液ポンプ710は、小型で、マイクロリットルのオーダーの液体を脈動なく安定して送り出すことができるものが好ましく、携帯型分析ユニットに用いるものとしては、消費電力が小さいことが必要である。流速は、5〜100マイクロリットル/分であればよく、吐出圧力は、0.01〜10MPaでよい。この特性を備えたポンプとしては、ユニフロー社製の「ペンシルポンプ」及びサイベックス社製の「コンフルエントPDP」のようなシリンジポンプがある。
【0152】
再び図18を参照すると、吐出先切換配管プレート716が示されている。このプレート716は、図13bにおいてはカートリッジホルダ709の下側において、吐出先切換バルブ711の上方に配置されるものである。図18に示すように、吐出先切換配管プレート716には、ポンプ吐出流路716aが形成されている。図20に示すように、流路716aの一端は、チューブによってポンプ710の吐出口に接続され、他端は吐出先切換バルブ711に接続される。
【0153】
次に、カートリッジホルダ709の詳細を示す図21を参照する。このカートリッジホルダ709は、基本的な構造は図4(a)に示すカートリッジホルダと同じであり、フンジにより開閉自在に結合された上板709aと下板709bを有する。下板709bに、検出用カートリッジを嵌め込むための凹部709cが形成されている。上板709aには、図4(a)に示すカートリッジホルダの上板と同様に、カートリッジの電極に接触する電極ピンと配線が設けられるが、図21では、これらは省略してある。カートリッジホルダ709の上板709aの裏側には弾性材(図示せず)が配置される。この弾性材は、上板709aが閉じられた位置で検出用カートリッジの厚さのばらつきを吸収し、液体の漏れを防止する。
【0154】
カートリッジホルダ709の下板に形成される凹部709cの底面には、この位置に嵌め込まれるカートリッジの下面に形成される各種の流体ポートに対応する位置に流体ポートが形成される。図22は、例として図13から図15までに図示して先に説明した検出用カートリッジ1の下面に形成されるポートを示すもので、これらのポートには、それぞれ、G’、F’’、F’’’、H’、I’、K’、L’の符号を付してある。ポートH’及びL’が図3のポート113に対応し、ポートG’及びK’が図3のポート114に対応する。ポートF’’及びF’’’が廃液ポート116となる。ポートI’は検出用カートリッジ1の参照極に通じるポート117である。
【0155】
図18に戻ると、吐出先切換配管プレート716に形成される流路及びポートが示されている。図18において、プレート716の上面には、図22の各ポートに対応するポートが開口しており、これらのポートには、図22のポートと同じ符号を付して対応関係を示してある。ポートJ’は、この例では使用されていず、したがって、図22のカートリッジ1には対応するポートはない。
【0156】
吐出先切換配管プレート716の下面には、ポートG、F、H、I、J、K、L、P2が開口しており、これらのポートは、図20に一部が示される切換バルブ711により、選択的にポンプ710に接続される。図18に示されるように、プレート716の下面には、ポンプ吐出流路716aに通じるポートP2が開口しており、このポートP2は図20に示すようにポンプ710に接続される。送液ポンプ710とタンク切換配管プレート708及び吐出先配管プレート716との間の切換バルブ機構707、711による切換接続関係を図23に示す。図23では、試薬タンク706の一つに洗浄水を入れたものを使用している。
【0157】
図24は、吐出先切換配管プレート716の構造を分解斜視図で示すものである。プレート716は、プラスチック材料の成形により形成される上プレート部材720と下プレート部材721とを積層した構造である。流路716aその他の流路は、下プレート部材721の上面に成形により形成された溝により構成される。同時に、下面に開口するポートも成形時に形成される。上プレート部材720には、必要な個所に上面に開口するポートが、厚さ方向に貫通して形成される。これらの上プレート部材720及び下プレート部材721を貼り合わせることにより、吐出先切換配管プレート716が形成される。図18を参照すると、タンク切換配管プレート708も、プラスチック材料の成形により形成された上プレート部材722と下プレート部材723を積層した構造であり、流路は下プレート部材723の上面に溝として成形され、上プレート部材722には上面に開口するポート及びスリット715c等がプレート部材の成形時に形成される。
【0158】
図25及び図26に、廃液タンク705の接続を示す。図に示すように、廃液タンク705の一端に廃液注入口705aが形成される。この廃液注入口705aには例えばテフロン(登録商標)製のシール部材705bが配置されている。一方、廃液タンク室701bの底板に形成された突起部に、中空針730を備えた廃液排出部材731が固定されており、この部材731の中空針730に通じる流路は、チューブを介して吐出先切換配管プレート716の下面に開口したポートに接続されている。廃液タンク705は、部材731の中空針730をシール部材705bに貫通させて所定位置に取り付けられる。
【0159】
以上の実施形態では、タンク切換配管プレート708と吐出先切換配管プレート716は別の部材により形成されているが、これらは一体の成形品とすることもできる。
【0160】
図13aには示されていないが、分析ユニットは、本体700の蓋704上に操作に必要なスイッチや表示部が設けられ、これらは適宜、電子基板713に接続される。
【0161】
図27は、クロマトグラフ分析に適用されるシステムの一例を示すものである。この場合、分析ユニットの試薬タンク706には、それぞれ、洗浄水、溶離液及び活性化液が収められる。各々の試薬タンク706は、切換バルブ707−1、707−2、707−3を介して送液ポンプ710に切換接続される。検出用カートリッジ1−1は、試料貯留用フルタを有する貯留部21−1とクロマトグラフ用カラム21−2とを有する。貯留部21−1は、カートリッジ1−1の下面に開口する液入口ポート21−3及び液出口ポート21−4に流路により接続されている。カラム21−2は、液入口ポート21−5と液出口ポート21−6を有する。
【0162】
分析ユニット側には、送液ポンプ710の吐出口を各ポートに切換接続する切換バルブ711−1、711−2、711−3、711−4、711−5が設けられる。図27において、各バルブに付されたローマ字符号A、B、C、D、Eは、それぞれ図18及び図23において各バルブに付された符号に対応している。
【0163】
このクロマトグラフ分析における動作は、次の通りである。
(1)分析ユニットセット前に、カートリッジにサンプルを通し、濃縮部のフルターを通過させる(ターゲット物質がフィルターにトラップされる)。
(2)分析ユニットにカートリッジを設置する。
(3)貯留用フルターに活性化液を送液する(本測定においてカラムに気泡が混入するのを防ぐため、フルタの気泡を予め追い出しておく)。
(4)カラムに溶離液を送液する。
(5)本測定を行う。溶離液を、貯留用フルター→分析ユニット内流路→カラム→分析ユニット内の光学検出部分析ユニット→廃液タンクへと通過させる。
(6)光学検出部で検出した信号から、ターゲット物質の同定、定量化を行う。
(7)流路を洗浄する。
【0164】
図28(a)(b)及び図29(a)(b)に、分析ユニットを濃度測定のためのカートリッジとともに使用した場合の作動の時間的な流れを表の形態で示す。ここで、系統1は、図1に示される2つの電極列のうちの一方の電極列、例えば電極35、36、37、38の列を表し、系統2は、他方の電極列、例えば電極31、32、33、34の列を表す。この図においても、バルブに付されたローマ字符号は、図23における符号に対応する。なお、ポンプのオートゼロとは、送液ポンプが自動的にゼロ位置にセットされるという意味である。
【0165】
図30は、分析ユニットをクロマトグラフ分析用のカートリッジとともに使用した場合の時間的な流れを示す。この図において、ローマ字符号は、図27中のバルブに付された符号に対応する。「(カ)」は、カートリッジ内を液体が通過することを意味する。
【0166】
図31は、液体クロマトグラフ分析に使用される本発明の一実施形態による分析装置を示す外観図である。この分析装置は、ほぼ長方体形状の本体すなわちハウジング801を備える分析ユニット800を有する。ハウジング801の上面には開閉蓋802により開閉されるカートリッジ挿入用開口803が形成され、この開口803を通して液体クロマトグラフ分析用のカートリッジ804が挿入される。図31に示す分析ユニット800のハウジング801も、図13a、図13b、図13cについて説明した分析ユニットのハウジング700と同様に本体上部801aと本体下部801bとからなる。本体下部801bは、図13cに示すハウジング700の本体下部702と同様の構成であり、図示してはいないが、図13cに示すものと同様な電池ボックス及び電子基板を備える。図31には、この電池ボックスにACアダプタを介して接続される電気的接続プラグ805及びパーソナルコンピュータへの接続プラグ806が示されている。
【0167】
図32は、液体クロマトグラフ分析用のカートリッジ810の概略断面図である。カートリッジ810は、4枚の成形プラスチック板811、812、813、814を重ね合わせた積層体構造であり、少なくとも上下両側のプラスチック板811、814は透明プラスチック材料により構成される。
【0168】
下側のプラスチック板814は、4つのポート814a、814b、814c、814dを有する。ポート814aは試薬注入用ポートであり、ポート814bは、被検液注入用のポートとして機能する。ポート814cは被検液循環用ポートであり、ポート814dは廃液ポートである。プラスチック板812、813の界面には、被検物質の一時的貯留部となるフルタ815を収容するフルタ用凹部816が形成されており、ポート814bからフルタ用凹部816を通る流路817が2枚のプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成されている。また、ポート814aから2枚のプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して、液体流通用流路818が形成され、これら流路817、818は、カートリッジ810の内部において上部プラスチック板811の内面に形成された溝からなる流路819により互いに接続されている。
【0169】
ポート814cは、プラスチック板813を厚さ方向に貫通する液体流路820に接続されており、この液体流路820は、プラスチック板812、813の界面においてプラスチック板812に形成された溝からなる液体クロマトグラフ分析用カラム821の1端に接続されている。カラム821の他端は、プラスチック板813を厚さ方向に貫通する液体流路822を通って、液体流路823の一端に接続されている。液体流路823は、プラスチック板813、814間の界面においてプラスチック板813に形成された溝からなる。
【0170】
液体流路823は、プラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成された液体流路からなる吸光度測定セル824の一端に連通している。吸光度測定セル824の他端は、プラスチック板811、812の界面においてプラスチック板812に形成された溝からなる液体流路825及びプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成された液体流路826を介して廃液ポート814dに接続されている。
【0171】
図33は、カートリッジ810の各プラスチック板811、812、813、814の上下両面におけるポート、溝及び凹部の配列を示すもので、図33(a)は下側の面を示し、前記33(b)は上側の面を示す。なお、図33(b)は(a)に対して上下反転させた関係で示してあり、(a)における下側の縁が(b)における上側の縁に対応する。
【0172】
図33(a)を参照すると、最上部のプラスチック板811は、プラスチック板812との界面に液体流路819を構成する溝を有する。外側の表面は、図33(b)から分かるように平滑のままである。先に述べたように、プラスチック板811は、透明プラスチック材料により形成される。
【0173】
2番目のプラスチック板812においては、フルタ用凹部816及び流路818、826が図33(a)に示すように配列される。カラム821は螺旋状の流路として形成され、螺旋の中心に吸光度測定セル824が形成される。プラスチック板811との界面には吸光度測定用セル824を流路826に接続するための流路825を構成する溝が形成される。プラスチック板813、814に形成される各ポート及び液体流路の配置は、それぞれのポート及び流路に図32におけると同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。プラスチック板814も透明プラスチック材料により形成される。他のプラスチック板812、813は、必ずしも透明である必要はないが、透明であってもよい。
【0174】
図34(a)(b)は、それぞれ図33(a)におけるa−a線及びb−b線に沿ってとった断面図で、各プラスチック板を離して示している。
【0175】
図35に、ハウジング801の本体上部801aの内部を平面図により示す。本体上部801aの内部には、一端側から本体上部801aの長さ方向中央部にわたり、送液ポンプ830、光源831、廃液タンク832が並列配置されている。送液ポンプ830は、先に述べた実施形態に関連して図14に示されている送液ポンプ710と同様の構成である。廃液タンク832も先に述べた実施形態における廃液タンク705と同様の構成である。
【0176】
本実施形態においては、液体クロマトグラフ分析のために上述の光源831が設けられる。光源831は、波長200〜1100nmの光を射出でき、本体上部801aのスペースに収まるものであれば、どのようなものでもよい。波長は被検出物質により変化させる。光源831として使用するのに適当なものには、Sentronic GmbH 社製のFiberLight光源(重水素ランプ−タングステンランプ併用型)がある。光源831の光射出口には、射出光を平行光にするためのコリメートレンズ833が配置され、このコリメートレンズ833の射出側に出射光を所定の径に絞るためのスリットを有するスリット板834が固定され、その外側にカートリッジ抑えプレート835が設けられる。
【0177】
本体上部801aには、さらに、先の実施形態において使用した切換バルブ707と同様に、A、B、C、D、Eで表示される5個の切換バルブ836を有する吐出先切換バルブプレート837が、該本体上部801aに固定した関係で配置される。この吐出先切換バルブプレート837は垂直に配置される。カートリッジ810は、カートリッジ抑えプレート835と吐出先切換バルブプレート837との間に垂直に挿入される。
【0178】
カートリッジ810の挿入を容易にするために、カートリッジ抑えプレート835は、スリット板834、コリメートレンズ833及び光源831とともに、吐出先切換バルブプレート837から離れる方向に、すなわち図35において上方に向けて、図示位置から後退させることができる。詳細に述べると、光源831と、コリメートレンズ833、スリット板834及びカートリッジ抑えプレート835は、一体に移動可能なように、ベース板838上に取り付けられ、該ベース板838は、図示しないレールにより、図35に矢印で示す方向に可動に支持される。ベース板838の端部に配置されたコイルばね839が、該ベース板838を吐出先切換プレート837の方向に付勢する。したがって、光源831と、コリメートレンズ833、スリット板834及びカートリッジ抑えプレート835を支持するベースプレート838をコイルばね839の付勢力に抗して移動させ、カートリッジ抑えプレート835と吐出先切換バルブプレート837との間の間隔を広げて、カートリッジ810を挿入することができる。
【0179】
図35に示すように、カートリッジ810が挿入される位置には、該カートリッジ810を案内して位置決めするためのガイド部材840が吐出先切換バルブプレート837に固定して設けられる。図36は、吐出先切換バルブプレート837とガイド部材840の構成をカートリッジ810との関係で分かり易く示す斜視図である。ガイド部材840はコ字型の案内用切り欠き840aを有し、この切り欠き840aにカートリッジ810が嵌ることによりカートリッジ810の位置決めが行われる。吐出先切換バルブプレート837は、カートリッジ810の方向に突出する突出部837aを有し、カートリッジ810が所定位置に位置決めされたとき、この突出部837aがカートリッジ810のポート814bに嵌合する。
【0180】
再び図35を参照すると、吐出先切換バルブプレート837には、光源831とは反対側において、コリメートレンズ833及びスリット板834のスリットに対し光軸方向に整合した位置に、第2のスリット板841及び合焦レンズ842が配置され、該プレート837に固定されている。図示していないが、吐出先切換バルブプレート837には、スリット板834のスリット及びカートリッジ抑え板835を通り、カートリッジ810の測定セル824を通過した光を第2のスリット板841に通す開口が形成されている。さらに、分析手段としての分光器843が、合焦レンズ843からの光を受けるように本体上部801a内に配置されている。分光器843としては、オーシャンオプティクス社製のSASシリーズOEMモジュール(1024エレメントCMOS搭載型)を使用することができる。この分光器は、200〜700の波長域で分析能力を有する。
【0181】
図35に示すように、本体上部801aの底板部には、符号F、G、Hが付された3個の試薬タンク取付部844が設けられている。この試薬タンク取付部844は、図16に示された嵌合部715と同様な構造である。本体上部801aの底板の上側には、図37に示す構成のタンク切換バルブプレート845が配置される。タンク切換バルブプレート845は、下側の面に符号F、G、Hで示す3個の切換バルブ846が取り付けられ、バルブFは、一方では配管847を介して符号Fで示される試薬タンク取付部844に、他方では配管848を介して送液ポンプ830に接続されている。切換バルブ846のうちのバルブG及びHは、それぞれ配管849、850を介して符号G及びHで示される試薬タンク取付部844に接続されている。
【0182】
ここで図32に戻ると、切換バルブ846のうちの符号F、G、Hで示すものにそれぞれ接続される試薬タンクとして、活性化液タンク851、溶離液タンク852、洗浄水タンク853が示されている。これらタンクは、先に述べた実施形態における試薬タンク706と同様の構成とすることができ、試薬タンク取付部844に取り付けられる。
【0183】
図32には、さらに、吐出先切換バルブプレート837に配置される5個の切換バルブ836の接続関係が示されている。送液ポンプ830は、切換バルブ836のうちのバルブBに接続され、該バルブBは、さらにカートリッジ810のポート814aに接続される。バルブBは、他の2つのバルブA、Dにも通じており、バルブAは、一方ではカートリッジ810のポート814bに接続され、他方ではバルブEを介してポート814cに接続される。バルブDは直接ポート814cに接続される。バルブCは、ポート814aと廃液タンク832との間を接続する。これらの接続は、先に述べた実施形態におけると同様に、切換プレート837及び845に溝として形成された流路及び適当な配管によって行われる。カートリッジ810が所定の位置に位置決めされたとき、カートリッジ810の各ポートと吐出先切換バルブプレート837の流路との接続が行われるように、カートリッジ810の各ポートと切換プレート837の流路とが位置決めされている。図36に示す突出部837aは、切換バルブ836のバルブAとカートリッジ810のポート814bとを接続するもので、内部にはそのための液体流路を有する。
【0184】
次に、この実施形態の作動を説明する。先ず、カートリッジ810を準備し、カートリッジ810にポート814bから被検液を定量注入する。注入量は測定対象となる物質の濃度に応じて適宜定める。これにより、カートリッジ810のフルタ815に被検出物質が貯留される。被検出物質以外の液体は、ポート814aから排出される。ここで、装置の電源を入れ、測定プログラムを立ち上げる。測定プログラムは、図38に示す作動フローを実行するものである。図39は、作動の時系列的な流れを示すものである。図38及び図39を参照すると、被検液が注入されたカートリッジ810は、分析ユニット800に挿入される。次に、吐出先切換バルブ836のバルブB及びCを開き、ポンプ830を作動させる。これは、吐出先切換バルブプレート837内の流路の空吐出を行うための操作である。次いで、タンク切換バルブ846のバルブFを開にして送液ポンプ830に所定量の活性化液を吸入する。活性化液は、フルタ815に貯留されている被検出物質がフルタ815から溶離し易くするものである。その後で、バルブFを閉にし、バルブA、Cを開き、送液ポンプ830を作動させ、活性化液をカートリッジ810のフルタ815に送る。活性化液は、ポンプ830からバルブAを通り、ポート814bを経てフルタ815に入り、流路817、819、818、ポート814a及びバルブCを経て廃液タンク832に流れる。
【0185】
次に、バルブGを開いて送液ポンプ830に所定量の溶離液を吸入し、バルブGを閉じる。ここで、バルブDを開いてポンプ830を作動させ、ポート814cを経てカラム821に溶離液を送り込む。これは、カラム821の前処理である。その後で、バルブDを閉じ、バルブGを開いて送液ポンプ830に所定量の溶離液を吸入し、次いでバルブB、Eを開いて送液ポンプ830を作動させる。溶離液は、バルブBからポート814aを経て、流路818、819、817からフルタ815に入り、フルタ815に貯留されていた被検出物質を溶離させ、ポート814b及びバルブEを経て、ポート814c、流路820の径路をたどり、カラム821に達する。さらに、溶離液は、カラム821から流路822、823を通り、吸光度測定セル824を経て、流路825、826及びポート814dを通り、廃液タンク832に排出される。この過程で光源831がONにされ(図38)、セル824を通る液体の吸光度が分光器843によって測定される。
【0186】
フルタ815及びカラム821には、被検出物質と化学的に相互作用する官能基が含まれており、フルタ815においては、その官能基が被検出物質をトラップする作用を果たす。溶離液は、このトラップされた被検出物質を溶離させてカラム821まで運ぶように作用する。カラムでは、そこに含まれる官能基の粒子が細かく、またカラムの流路も長い。溶離液に含まれる被検出物質は、カラムにおける官能基分子と化学的に相互作用しながら該カラムを通過するが、この相互作用の強さは、被検出物質の分子の種類によって異なる。その結果、カラム821を溶離液が通過する間に被検出物質がカラムから受ける吸着及び脱着の速度は、該物質の種類によって異なるものとなる。したがって、分光器843により吸光度の変化として検出されるタイミングは、被検出物質により異なるものとなる。これによって、溶離液に含まれている物質を検出することができる。
【0187】
検出結果は、分析ユニットの表面に適宜設けることができる表示窓又は分析ユニットに接続されるコンピュータの表示部に表示することができる。
【0188】
その後、分析ユニットの洗浄を行う。この洗浄は、例えば次の手順で行う。すなわち、先ず切換バルブ846のバルブHを開いた後にポンプ830を作動させることにより、所定量の洗浄液を該ポンプ830に吸引し、次いでバルブHを閉じ、バルブA、Cを開いてポンプ830を作動させてフルタ815の洗浄を行う。次にバルブA、Cを閉じ、バルブDを開いてポンプ830を作動させ、カラム821に洗浄液を通す。さらに、バルブDを閉じ、バルブB、Eを開いてポンプ830を作動させ、フルタ815及びカラム821の両方に洗浄液を通す。
【0189】
次に、本発明をイムノアッセイに適用した実施形態について説明する。図41は、イムノアッセイの分析原理を示すもので、図41aは競合法の一例を示し、図41bは競合法の他の例を示す。図41cは、非競合法の例である。
【0190】
図41aの例においては、段階Iは検出用カートリッジの外で行われる処理であって、抗体に標識が付着した標識抗体を含む試薬にサンプル抗原が加えられ、前段階反応が行われる。この前段階反応により、試薬に含まれる標識抗体の一部がサンプル抗原と反応し、サンプル抗原が標識抗体の一部と結合する。標識抗体の残りは未反応のままである。この状態で、試薬は貯留部に注入され、段階IIの処理が行われる。貯留部には固相化抗原が予め付着させられており、段階IIにおいて、試薬内の未反応抗体は、この固相化抗原に捕捉される。試薬は、固相化抗原に捕捉された標識抗体を貯留部に残したまま、貯留部から排出される。ここで、段階IIIにおいて、貯留部に標識抗体との反応のための基質が貯留部に送られて、基質と標識抗体との間で反応が進行する。反応生成物は、検出用カートリッジ内を次の検出機構に送られて検出される。このように、イムノアッセイを本発明に適用する場合には、貯留部が検出機構の作用の一部を達成することになる。
【0191】
図41bの例においては、段階Iにおける前処理は図41aの例におけると同じであるが、図41aの場合と異なり、貯留部には固相化抗体が予め付着している。段階Iにおける前段階反応を経た試薬は、段階IIにおいて検出用カートリッジの貯留部に注入され、ここで、段階Iにおいてサンプル抗原と反応した標識抗体のみが貯留部の抗体により捕捉される。このときの捕捉は、貯留部に付着していた抗体と試薬により運ばれた標識抗体とが、間に抗原を挟む状態になるので、サンドイッチ法とも呼ばれる。次いで、段階IIIにおいて、貯留部に反応のための基質が送液され、反応が進行し、反応性生物は検出機構により検出される。
【0192】
図41cの例においては、貯留部に予め固相化抗体が付着しており、段階Iでは、サンプル抗原が貯留部に送られて一部の固相化抗体と結合し、捕捉される。次に、段階IIにおいて、貯留部に標識抗体を含む試薬が送液され、図41bの段階IIにおけると同様にして標識抗体が捕捉され、段階IIIにおいて、貯留部に反応のための基質が送液され、貯留部に捕捉されている標識抗体との間で反応が進行する。その後は、先に述べた図41a及び図41bの場合と同じである。
【0193】
本発明は、上述した方法のいずれにも、或いは、上記以外にも、公知のイムノアッセイ法のいずれにも適用することができる。イムノアッセイについての文献は数多く存在するが、その数例を挙げると、例えば、日本国特開2000−155122、特開2003−987171などがある。図41においては、酵素標識の例を示したが、他の標識も同様の手法で使用することができる。
【0194】
イムノアッセイに本発明を適用する場合には、反応生成物の検出は、電気化学分析又は光学分析により行うことができる。既に述べたように、酸化還元酵素により生成された過酸化水素を検出する場合には、電気化学分析の手法を用いる。また、検出対象によっては光学分析を用いる。図42は、イムノアッセイにおいて電気化学分析による検出を行う場合の検出用カートリッジ1001の例を示す底面図である。貯留部1002には、液導入口1003からの流路1004が連通しており、貯留部1002の液体出口は流路1005を介して電極室1006に接続されている。電極室1006には、図示していないが、図1に示すのと同様に、作用極、対極及び参照極が配置される。この検出用カートリッジ1001の基本的な構成は、図1に示すものと同じである。したがって、検出用カートリッジ1001の底面には、処理ユニットの配管と連通するための外部ポート1007、1008、1009、1010が形成される。処理ユニットは、濃度検出装置におけるものと同様のものを使用できる。図43は、イムノアッセイにおいて光学分析に適用される検出用カートリッジの断面を示す。この図は、クロマトグラフィーの例における図32に対応する。したがって、対応する部分には同一の符号を付してある。図44の例が図32の例と異なるのは、図32における流路824がなく、ポート814cが直接、流路823に通じていることのみである。処理ユニットに配置される試薬タンク851、852、853のそれぞれには、洗浄バッファ、溶離バッファ、及びCBB溶液が入れられる。
【0195】
図47は、3枚のプラスチック基板により構成された検出用カートリッジを示すもので、図1に対応する分解図である。カートリッジ1000は、プラスチック材料製の基板1011、1012、1013からなり、これら基板は間に粘着シート1014を挟んで互いに接合される。基板1011、1012には貯留部を形成する凹部1015a及び開口1015bがそれぞれ形成される。また、基板1011には、参照極R、3個の作用極Sが配置され、粘着シート1014には、それらに対応する位置に小孔104aが形成される。また、本例においては、検出用カートリッジ1000に廃液溜が設けられており、基板1011、1013にはそのための凹部1016が、中間の基板1012には2つの凹部1016をつなぐ開口1017が形成されている。基板1012に形成された溝1018は、参照極Rに対応する参照極室であり、溝1019は作用極Sに対応する作用極室である。基板1012と基板1013には、貯留部と電極室及び廃液溜を接続する流路のための溝1020、1021、1022が形成されている。その他の点は、先に述べた実施形態の構成と同じである。
【0196】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0197】
(物質濃度検出用カートリッジの製造方法)
工程1:射出成型
1)成型品の作製
射出成型機(MEIKI社製)を用いて基板11〜14を成型した。成型条件は、シリンダー温度280℃、定量部温度が290℃、金型温度60℃である。成型品からランナーを切り離し、所定の成型品を得た。
2)成型品への部品取り付け
基板12の成型品には、作用極および対極として働くカーボン電極および銀ペースト電極を設置した。これらは、設置予定部分に予め接着剤を塗布し、その上から電極を置くことで固定化した。また基板13には、砒素・セレン測定時に参照極を濡らし、銀−塩化銀参照極を形成する為の塩化カリウムが入った容器23を設置した。この容器は、基板12に形成された針状体122の直上、基板14に形成された押下部141の直下にある。
工程2:粘着テープ貼付
1)粘着テープの準備
両面粘着テープを打ち抜き機にセットし、各成型品形状に合わせた開孔処理を行い、打ち抜き加工済み粘着テープを作製した。
2)成型品の貼り合せ
上面に粘着テープが貼付された成型品及びそれに積層される成型品を真空チャンバー付き位置決め装置にセットした。この装置は、画像認識による位置合わせ機構、位置合わせ部分の真空化機構を有するものである。この装置により、泡が入らない状態で正確な位置で両者を貼り合せることができる。
【実施例2】
【0198】
図31から図37までに示した構成の液体クロマトグラフ分析用の分析ユニット及びカートリッジを使用して、シュウ酸とコハク酸からなる有機酸混合液の分離試験を行った。
使用した分析装置は、下記のものであった。
光源 Sentronic GmbH社製 FiberLight (200〜1100 nm)
分光器 オーシャンオプティクス社製 SASシリーズOEMモジュール
(1024エレメントCMOS搭載型) (200〜700 nm)
カートリッジ 図32〜図37に示す構造
カラム充填材 和光純薬社 Wakosil-II 5C18-100 (粒径5μm)
フルタ充填材 和光純薬社 Wakosil-II 25C18 (25〜30μm 70%up)
設定流速及び温度 10 μl/分、室温
測定波長 210nm
コハク酸(和光純薬社製特級)0.1gとシュウ酸(和光純薬社製特級)0.1gを精製水(和光純薬社製)100mlに混合して下記の試料を調整した。
シュウ酸 10μg/10μl (MW=126:但し2水和物)
コハク酸 同上 (MW=60)
分析は、図38及び図39に基づいて左記に説明した手順で行った。送液ポンプからの送液量は、図39の「ポンプ」の欄に記載した通りであった。分析は、分析ユニット内で時間と吸光度を監視することによって行った。ポンプからの溶離液の吐出が終わった時点でポンプを停止した。得られた結果を図40に示す。この実施例では、シュウ酸のピークが3分の位置に、コハク酸のピークが12分の位置に検出された。
【実施例3】
【0199】
心臓疾患の推定に有用なホルモンであるBNP(脳性Na利尿ポリペプチド)の測定に本発明を適用した。この実施例で採用された方法は、イムノアッセイ上の分類としては、酵素標識法、不均一法、競合法に該当する。
貯留部として対BNP抗原を用い、検出機構としては酵素標識の作用を電気化学的に検出する手段を採用した。この実施例は、Analytical Chemistry, vol.77, No.13, 2005, pp.4235-4240に掲載されたMatsuuraらの方法を、本発明のカートリッジおよび処理ユニットに応用した例である。関係する物質は下記の通りである。
AChE:アセチルコリンエステラーゼ
ACh :アセチルコリン
sulfo-SMCC:スルフォスクシニミジル-4-N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレイト
PBS:リン酸緩衝液(リン酸バッファ)
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
〔準備〕
(1) 炭素繊維フィルター(東洋紡製、品番P-1611H、厚さ0.32mm)を100mg/l金溶液(1M-硫酸)に浸漬した状態で攪拌しながら-0.4Vで20分保つことによって、表面に金を析出させ、その後+0.75Vで2分間クリーニングを行って、表面が金メッキされた炭素繊維フィルターを作製した。この金メッキフィルターを、0.1mM-システアミン塩酸塩溶液中に2時間置き、Au表面上にシステアミンを結合させた。この金メッキフィルターを取り出し、10mM-PBSに移し変えて、EDCが0.1g/l、ヒトBNP-32が20mg/lとなるように加え、1時間培養した後、PBSで洗浄して、表面にBNP(抗原)が固定化された金メッキフィルターを得た。
(2) このBNP固定化金メッキフィルターを直径6.5mm、厚さ0.4mmにカットして、図42に示すカートリッジの貯留部として設置した。作用極と対極はPFCE、参照極はAgコーティング電極を用いた。検出用カートリッジにおける電極寸法と外部ポートの位置は、実施例2の系統1と共通であるが、貯留部および電極室の寸法は変更された。処理ユニットは、実施例2と共通のものを用いた。図23のタンクE(試薬4)には1mM-アセチルチオコリン塩化物(PBS溶液)が入れられた。本実施例において使用した処理ユニットは、カートリッジを交換すれば重金属分析と免疫分析の両方に対応できるものであった。
(3) 0.1M-PBS(pH=8)に、対BNP抗体(ウサギの対BNP-32 IgG)を0.4g/l、sulfo-SMCCを0.4g/lとなるように調整し、室温で1時間培養した後、ろ過を行って余分のsulfo-SMCCを除去した。同様にして、0.1M-PBSにコリンエステラーゼ1g/l、s-アセチルメルカプトコハク酸無水物を0.3g/l加えて10分培養した後、ろ過した。これらを、抗体:ACh=1:0.7(モル比)となるように混合して1時間培養し、AChE標識化された対BNP抗体を得た。
(4) AChE標識化された対BNP抗体(0.4mg/l in PBS溶液) 2mlを、BNPを含む被検液(ヒト血液)と1対1の割合で混合して攪拌し、30分間反応させたものを、市販シリンジを使いカートリッジの注入口より注入して、BNP固定化金メッキフィルターを通過させ、中間ポート115から流出させた(工程(1))。次に、同じ注入口からPBS溶液を4ml注入してBNP固定化金メッキフィルターを洗浄し、分析器にセットした。この操作で、被検液中のBNP-対BNP抗体(AChE標識化)反応物が中間ポートから流出し、AChE標識化された対BNP抗体のうち未反応成分が貯留部の金メッキフィルター上のBNPに捕捉された状態で分析器に設置された。
(5) ポート1007から、基質として1mM-アセチルチオコリン塩化物(PBS溶液)を 200 μl/minで 1.0 ml送液することにより、貯留部と電極室を連続して通過させた(工程(2))。基質が貯留部に到達するとAChE標識の作用により、 AChE標識量に応じたチオコリンが生成され、電極室に送られる。以下の条件でLSV測定を行い、得られた電圧−電流曲線からチオコリンの電極活性を測定した。チオコリンの量は未反応の対BNP抗体に対応しており、被検液中のBNP量と一定の関係にあるので、被検液中のBNP濃度を変えて測定を行い、検量線を得ることが出来た。
LSV条件:-0.7V × 2分 → 1.4V (挿引速度 50mV/sec)
処理ユニットにおける操作のフローを図44に示す。
【実施例4】
【0200】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)による特定タンパク質の分離・定量分析に本発明を適用した。
(1)カートリッジの作製
図43に示す流路断面の他は、外形及び外部ポートが図32、33、34に示すものと共通である検出用カートリッジを射出成形により作成した。異なる点はクロマトカラム821を無くしたこと、セル形状を直径5mmとしたことである。基板材料は、アクリル樹脂を使用した。また、貯留部816としては、IMAC用樹脂(VIVA science社、Vivapure Metal Chelate樹脂)を使用した。処理ユニットとしては、実施例4と共通のものを用いた。
(2)サンプルの調製
サンプルとなるタンパク質の粗抽出液は、以下のように調製した。
まず、ポリ(ヒスチジン)−タグ−LacZタンパクを発現可能なベクターを保持する大腸菌を500ml培養した。同培養液を4℃、3000×gで15分間、遠心法により菌を回収した。次に、Vortexミキサーで回収した菌を40mlの抽出用バッファに懸濁した。そして、抽出/洗浄バッファを0.50mg/ml濃度となるように加えて、室温で30分間静置した。次に、大腸菌を超音波破砕機で10秒間破砕した後、破砕液を氷上で冷却した。次に、破砕液を4℃、10000×gで20分間、遠心処理して、不溶性画分を沈殿させ、上澄みを別途採取した。採取した粗抽出液は、孔径0.45μmのディスポーザブルフィルターに通液し、サンプル溶液とした。
(3)カートリッジの準備・前処理
カートリッジの注入口から、まず0.1M塩化ナトリウム水溶液2ml、次に0.5M硫酸ニッケル水溶液2ml、最後に0.1M塩化ナトリウム水溶液4mlを通液した。次に膜平衡化バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、10mMイミダゾールとなるように調製した溶液、pH8.0)溶液2mlを通液した。このとき、溶液は注入口814bから貯留部816を通過して中間ポート814aから流出させた。
(4)サンプルのカートリッジへの注入
カートリッジの注入口から、市販のシリンジを用いて段階(2)で調製したサンプル溶液5mlを注入した。溶液は、注入口814bから貯留部816を通過して中間ポート814aから流出させた。
(5)分析操作
カートリッジを分析器にセットし、ポート814bから洗浄バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、20mMイミダゾール溶液、pH8.0)を2ml、1ml/minで注入し、中間ポート814aから流出させた。次に、ポート814bと814cが連通するようにバルブ836を切り替え、ポート814aから溶離バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、250mMイミダゾール溶液、pH8.0)0.2mlを50μl/minの割合で注入した。このとき、溶離バッファは、貯留部816を通過してセル814内に流入するようにした。次に、再びバルブ836を切り替え、ポート814cからプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社製)0.2mlを500μl/minの割合で加えた。この操作で、セル824内の液体は、溶離バッファとプロテインアッセイCBB溶液にほぼ置換された。次に分析器内蔵の分光器および光源(HPLCと共通)によって595nmの吸光度を観察し、吸光度のピーク強度からタンパクの回収量を定量した。
(6)結果
以上の操作のフローを図45に示す。この方法により、カートリッジの準備から分析終了まで約15分という高速で目的タンパク質を回収できた。
本発明は、上述した測定方法に限らず、種々の方法に適用できる。本発明を適用できる測定方法の幾つかの例を、検出原理及び操作の概略とともに、図46に示す。
【0201】
(発明の効果)
以上の説明から分かるように、本発明においては、検出用カートリッジが、被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジに接続可能であり、該カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置を提供する。検出用カートリッジは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、該貯留部を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。検出用カートリッジには、貯留部の下流側に、検出機構の少なくとも一部が設けられる。処理ユニットは、送液ポンプと、該送液ポンプを、検出用カートリッジに設けられた複数のポートの選択した1つに切換接続する配管切換バルブ機構とを備える。バルブ機構は、検出用カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過して検出カートリッジの1つのポートからカートリッジ外に出るようにする流路接続と、試薬が送液ポンプにより検出用カートリッジの1つのポートから貯留部に供給され、該貯留部を通過した試薬が他のポートからカートリッジ外に送り出されるようにする流路接続との間で切り換えるように作動する。
【0202】
また、本発明の特定の態様においては、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、該貯留部を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。そして、この検出用カートリッジを使用して分析及び/又は処理を行う処理ユニットが、複数の試薬タンクと、送液ポンプと、複数の試薬タンクの選択された1つを送液ポンプに接続するタンク切換バルブ機構を備えるタンク切換バルブプレートと、送液ポンプをカートリッジに形成されたポートのうち、所望のものに接続する配管切換バルブ機構を備える配管切換バルブプレートとを有する。そして、タンク切換バルブプレートのバルブ機構と配管切換バルブプレートのバルブ機構とを所望の位置に切り換えて送液ポンプを作動させながら被検出物質の分析を行う。
【0203】
本発明のカートリッジ式分析装置は、上記のように構成されているから、分析に必要な機能部分を極めてコンパクトに処理ユニットのハウジング内に収めることができ、簡便な携帯型として構成することが容易である。したがって、本発明の分析装置は、被検出物質が採集される現場での迅速な分析にも使用でき、極めて有用性の高い装置となる。
以上、本発明を特定の実施形態について図示し、詳細な説明を行ったが、本発明は、これら特定の実施形態の細部に限定されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の一実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。
【図2】(a)は、検出用カートリッジの組立て状態を示す斜視図である。(b)は(a)のA−A断面を、(c)は(a)のB−B断面を示す。
【図3】検出用カートリッジの液体流路を概略的に示す断面図である。
【図3(a)】検出用カートリッジ内の被検液の流れを示す斜視図である。
【図3(b)】シリンジホルダの取付け状態を示す斜視図である。
【図3(c)】検出用カートリッジ内の溶離液の流れを示す斜視図である。
【図4】処理ユニットの構造を分解して示す斜視図である。
【図4(a)】カートリッジホルダにカートリッジを挿入する状態を示す斜視図である。
【図4(b)】カートリッジホルダを閉じた状態で示す斜視図である。
【図4(c)】カートリッジホルダの内部構造を分解して示す斜視図である。
【図5】処理ユニットの外観斜視図である。
【図6】処理ユニットの外部機器との接続状態を示す図である。
【図7】処理ユニット内部の電気系統のブロック図である。
【図8(a)】測定における操作手順の一部を示すフロー図である。
【図8(b)】図8(a)に続く操作手順を示すフロー図である。
【図8(c)】図8(b)に続く操作手順を示すフロー図である。
【図8(d)】本発明の実施形態のシステム全体を示す系統図である。
【図9】砒素、セレン測定により得られた電位−電圧曲線を示すグラフである。
【図10】カドミウム、鉛、水銀測定により得られた電位−電圧曲線を示すグラフである。
【図11】他の実施形態による濃縮部を示す概略断面図である。
【図12】さらに他の実施形態による濃縮部を示す概略断面図である。
【図13(a)】検出用カートリッジとともに使用される本発明による分析ユニットの一例を示す斜視図である。
【図13(b)】図13(a)の分析ユニットにおいて、蓋を取り外して示す斜視図である。
【図13(c)】分析ユニットの本体下部を示す斜視図である。
【図14(a)】電気化学分析に使用される本発明の検出用カートリッジの一例を示す分解斜視図である。
【図14(b)】図14(a)のカートリッジを組立て状態で示すもので、(i)は斜視図、(ii)は(i)のA−A断面図、(iii)は(i)のB−B断面図である。
【図14(c)】図14(a)のカートリッジの縦断面図である。
【図15(a)】図14(a)のカートリッジにおける液体の流れを示すもので、図3(a)に対応する斜視図である。
【図15(b)】図14(a)のカートリッジにおける液体の流れを示すもので、図3(c)に対応する斜視図である。
【図16】図13に示す分析ユニットにおけるタンク切換配管プレートと、試薬タンク及び切換バルブ機構の配置関係を示す斜視図である。
【図17】試薬タンクの接続部を示すための断面図である。
【図18】分析ユニットの本体上部内の各種部品の配置を示す斜視図である。
【図19】タンク切換配管プレートと切換バルブとの接続を示す断面図である。
【図20】送液ポンプとタンク切換配管プレート及び吐出先切換配管プレートの接続関係を示す概略図である。
【図21】分析ユニットに使用されるカートリッジホルダの斜視図である。
【図22】検出用カートリッジの下面のポートを示す平面図である。
【図23】分析ユニットにおける切換バルブの接続関係を示す系統図である。
【図24】吐出先切換配管プレートの構造を示す分解斜視図である。
【図25】廃液タンクの接続を示す分解部分図である。
【図26】廃液タンクの接続を示す概略図である。
【図27】クロマトグラフ分析に適用されるシステムの一例を示す系統図である。
【図28(a)】濃度分析に使用される検出用カートリッジを使用し、系統1において検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図28(b)】濃度分析に使用される検出用カートリッジを使用し、系統1において検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図29(a)】濃度分析のための検出用カートリッジを使用し、系統2において検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図29(b)】濃度分析のための検出用カートリッジを使用し、系統2において検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図30(a)】クロマトグラフ分析のための検出用カートリッジを使用して検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図30(b)】クロマトグラフ分析のための検出用カートリッジを使用して検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図31】本発明の他の実施形態による液体クロマトグラフ分析装置の外観を示す斜視図である。
【図32】図31の実施形態による分析装置に使用される検出用カートリッジの断面をバルブ機構との接続関係も含めて示す図である。
【図33】図32に示す検出用カートリッジの構成を示す分解図であり、(a)はカートリッジの構成要素である各プラスチック板の下側の面を示し、(b)は上側の面を示す。
【図34】検出用カートリッジの断面図であり、(a)は図33(a)の線a−aに沿ってとった断面を、(b)は線b−bに沿ってとった断面をそれぞれ示す。
【図35】図31の分析ユニットのハウジングにおける本体上部の構成を示す平面図である。
【図36】吐出先切換バルブプレートとガイド部材及び検出用カートリッジの関係を示す斜視図である。
【図37】タンク配管切換バルブプレートを示す平面図である。
【図38】図31から図37までに示す液体クロマトグラフ分析用の装置における作動を示すフロー図である。
【図39】分析動作の時間的流れを示す流れ図である。
【図40】実施例2における検出結果を示すグラフである。
【図41】本発明をイムノアッセイに適用する場合の幾つかの例を概略的に示す工程フロー図であり、(a)は競合法の1例を、(b)は競合法のうちサンドイッチ法と呼ばれる例を、(c)は非競合法の1例をそれぞれ示す。
【図42】実施例5において使用した検出用カートリッジの底面図である。
【図43】実施例6において使用した検出用カートリッジの断面図である。
【図44】実施例5における処理フローを示す表である。
【図45】実施例6における処理フローを示す表である。
【図46】3枚のプラスチック基板により構成された検出用カートリッジの例を示す図1と同様な分解図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状被検体に含まれる目標物質の検出に使用される検出装置に関する。特に本発明は、カートリッジと該カートリッジに組み合わされる処理ユニットとからなる検出装置に関する。さらに詳細に述べると、本発明は、被検出物質を含む液状被検体における被検出物質の有無、濃度、組成その他の性質に関連する情報を発生するためのもので、液状被検体を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジが接続可能であり、該カートリッジに通される液状被検体に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−311829号公報は、カード式の携帯型使い捨て分析システムを開示する。この分析システムは、人又は動物の体液における少なくとも一つの検査値を検出してそれに相応した出力信号を発生するセンサーを備えたカード式使い捨て検査具と、該検査具からの信号を受けて演算処理する演算処理部及び表示部を含む携帯型分析ユニットとからなる。
【0003】
カード式使い捨て検査具は、間に薄い仕切り板を挟んで互いに液密に重畳される二枚の基板から構成される。基板の一方は、内面に、検査対象となる人又は動物の体液を通す通路と、この通路の一端に連通するように体液貯蔵部が設けられる。通路の他端には基板を厚さ方向に貫通する体液注入孔が設けられる。センサーは、他方の基板の内面に設けられる。さらに、該他方の基板内面には、センサー校正用の試薬容器を受ける凹部と、仕切り板の開口部を介して上記一方の基板に設けた体液貯蔵部に連通する第2の体液貯蔵部が設けられる。
【0004】
携帯型分析ユニットは、検査具を差し込むための挿入口を有し、検査具が差し込まれたとき、試薬容器受け凹部に位置する試薬容器が破られてセンサーまで流れ、実際の分析に先立って該センサーの校正が行われる。その後、体液注入口から人又は動物の体液が注入され、基板内面に形成された通路を通ってセンサーまで流れ、測定が行われる。測定により発生する電気信号は、分析ユニットに送られて、演算処理部により処理され、分析の結果が表示部に表示される。
【0005】
この分析システムは、軽便で、現場での検査が可能であり、検査すべき体液を注射器等の注入器で直接注入できるので、検査すべき体液が雰囲気に触れるのを避けることができるという利点がある。しかし、検査対象は、人又は動物の体液といった高濃度の液体であり、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定又はクロマトグラフ分析には使用できない。
【0006】
米国特許第6,110,354号明細書は、飲用水や廃水、及び血液や尿のような生物学的流体などの分析に使用される微小バンド電極アレイを備えた分析装置を開示する。分析の原理は、分析対象の電解質液体が電極に接触することによって発生する電流のファラデー成分を検出することである。この分析装置の一例として示される構造は、平坦な基板からなる平板状のセンサーを備えるもので、微小バンド電極アレイを用いることにより非ファラデ−成分の発生を抑制して検出感度を高めることができ、水溶液に微小量含まれる有害金属の検出が可能になると考えられる。しかし、土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質を対象とする場合には、この装置を用いて濃度測定を行うのは、検出感度が十分でないため困難である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、検出対象及び使用場所についての制約が少なく、簡便に使用することができるカートリッジと該カートリッジに組み合わせて使用される処理ユニットとからなる検出装置を提供することを主要な目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、濃度検出装置、液体クロマトグラフ分析、免疫学的検定法(イムノアッセイ)、その他の被検出物質を含む液状被検体を検出するための方法に使用することができる検出装置を提供することである。
【0009】
特定的には、本発明の別の目的は、カートリッジを使用する携帯に便利な簡易検出装置を提供することである。
【0010】
本発明は、検出に必要な液体流通のための流路配管を極めてコンパクトに収めることができる構造を備えた、携帯に便利なカートリッジ式検出装置を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明の別の目的は、被検体に含まれる被検出物質の濃度が極めて微量であっても支障なく濃度検出を行うことができる濃度検出装置を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、液状被検体のクロマトグラフ分析などの分析を試料採取現場でも簡易に行うことができるような、カートリッジ式携帯型簡易検出装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、検査場所に制限がなく、どんな場所ででも容易に濃度検出、液体クロマトグラフ分析、免疫学的検定法による分析、その他の検出を行うことができる携帯容易な分析装置を提供することである。
【0014】
さらに本発明の追加的な目的は、上述のカートリッジ式検出装置及び/又は分析装置に使用される検出用カートリッジ及び/又は処理ユニットを提供することである。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、最も広義の側面においては、被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジに接続可能であり、該カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置を提供する。検出用カートリッジは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、検出機構の少なくとも一部と、該貯留部及び検出機構の少なくとも一部の一方又は両方を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。本発明に関連して使用する場合、「検出」という用語は、被検出物質の有無、濃度、組成その他の性質に関連する情報を発生することを意味し、定量及び/又は定性分析のような分析も含む。
【0016】
処理ユニットは、試薬タンクと送液ポンプとを備える。本発明のこの側面においては、検出用カートリッジと処理ユニットの組合せによって、カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過して検出用カートリッジ外に排出される液体流路と、試薬が層液ポンプにより検出用カートリッジの一つのポートから貯留部に供給され、該貯留部と検出機構の上記少なくとも一部とを連続して通過する液体流路とが切り換え可能になる。
【0017】
本発明の一態様においては、被検液は、処理ユニットとは無関係に検出用カートリッジに供給することができる。検出用カートリッジに供給された被検液は、貯留部に到達し、ここで被検液に含まれる被検出物質が貯留部に一時的に貯留される。貯留部は、多孔質セラミック等の多孔質物質、或いは繊維又は微粒子などの表面積の大きな材料により形成することができ、その表面に、被検出物質に対して化学反応又は吸着作用を行う官能基を修飾した構成とすればよい。この構成により、被検出物質が貯留部を形成する材料に付着されて保持されることになる。貯留部を通過した残りの被検液は、検出用カートリッジの上述したポートからカートリッジ外に送り出される。或いは、検出用カートリッジ内に廃液溜を形成し、貯留部からの被検液をこの廃液溜に導くこともできる。
【0018】
次いで、処理ユニットの送液ポンプから検出用カートリッジに試薬が送り込まれ、貯留部を通過させられる。この試薬は、化学反応又は吸着により貯留部に保持されている被検出物質を溶離させる作用を有するものである。試薬を貯留部に通すことによって、貯留部に保持されていた被検出物質は、該貯留部から溶離され、試薬に含まれる形で該試薬とともにカートリッジ内を下流側へ流れる。被検出物質を含む試薬は、一時的にカートリッジ外の流路に出て再びカートリッジ内に入るか、カートリッジ外に出ることなく、該カートリッジ内の内部流路を経て、下流側に設けられた検出機構に向けて流れる。
【0019】
処理ユニットに配置された試薬タンクは、該試薬タンクを送液ポンプに接続することができる。この場合において、複数個の試薬タンクを処理ユニット内に配置し、これら複数個の試薬タンクのうちの所望の1つを該送液ポンプに接続するために、タンク切換バルブ機構を設けることができる。処理ユニットには、廃液タンクを配置して、検出用カートリッジから輩出された液をこの廃液タンクに導くようにすることができる。
【0020】
さらに、本発明の他の一態様においては、検出用カートリッジが処理ユニットに設置されない状態で、該カートリッジ内に供給された被検液が貯留部を通過して検出カートリッジ外に排出される液体流路と、該検出用カートリッジが該処理ユニットに設置された状態で、試薬が、送液ポンプにより検出用カートリッジの1つのポートから貯留部に供給され、該貯留部と検出機構の少なくとも一部とを連続して通過するようになる液体流路とがそれぞれ形成される。この場合において、これら液体流路の切換えのためのバルブ機構を設けることができ、また、このバルブ機構は、処理ユニット内に配置することができる。
【0021】
本発明による検出装置は、種々異なる物質の検出に応用することができる。1つの側面においては、検出装置は、被検液に含まれる被検出物質の濃度に関する情報を提供する濃度検出装置である。この場合には、検出用カートリッジは、被検出物質の濃度に関する電気信号を生成する。一例として、被検液は、微量の被検出物質を含む土壌又は泥濘のような被検体を水その他の液体に溶解して形成される。
【0022】
本発明を濃度検出装置に適用した場合の一態様による検出用カートリッジは、被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、該被検液導入部からの液体流路とを備える。貯留部は、該液体流路内に配置される。この態様においては、貯留部は、被検液内の被検出物質を濃縮して保持する濃縮部として構成される。この濃縮部は、被検出物質を吸着する能力をもったフィルタの形態に構成することができる。検出用カートリッジ内に設けられる検出機構は、検出用電極構成である。フィルタに吸着された被検出物質は、試薬として供給される溶離液に溶出して検出機構を構成する検出用電極構成に送られる。被検出物質が溶離した溶離液が検出用電極構成に達すると、電極には検出電気信号が生成される。
【0023】
この態様における本発明の検出装置は、処理ユニットが、カートリッジからの電気信号を読み取って被検出物質の濃度に関する情報を生成する読取部を含む。この態様における検出用カートリッジは、廃液溜を有する形態とすることができ、この場合には、被検液導入部から廃液溜に至る液体流路が設けられる。
【0024】
読取部は、電気信号をカートリッジから受け取って処理し、被検体における被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理手段を備える。処理ユニットには、任意に、検出結果を表示するための表示部を設けることができる。
【0025】
本発明のこの態様によるカートリッジ式濃度検出装置は、土壌や泥濘などに含まれる重金属の検出に使用できる。この場合には、検出用カートリッジは、電極構成において、重金属を含む被検液における重金属の濃度に関連する電気信号を生成し、該カートリッジからの電気信号が読取部によりを読み取られて被検出物質の濃度に関する情報が生成されるように構成される。
【0026】
重金属の濃度を検出するためのカートリッジ式濃度検出装置においては、カートリッジには、上述したように、被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連通する液体流路と、被検液導入部からの液体流路に配置された被検液濃縮のための濃縮部として機能する貯留部と、検出用電極構成とが設けられる。ここで、貯留部すなわち濃縮部は、流路内に配置されて重金属を吸着するように作用する吸着担体を含み、該濃縮部には、該吸着担体に吸着された重金属を溶離させる溶離液を吸着担体に通して検出用電極構成に向けて流す溶離液供給部が組み合わされ、吸着担体に吸着された重金属が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極において生成される。
【0027】
本発明の別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、カートリッジの貯留部すなわち濃縮部は、被検液導入部からの被検液を受けて該被検液に含まれる被検出物質を吸着するように作用する吸着担体を含み、該濃縮部には、該吸着担体に吸着された被検出物質を溶離させる溶離液を前記吸着担体に通して前記検出用電極構成に向けて流す溶離液供給部が組み合わされ、吸着担体に吸着された被検出物質が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成されるようになっている。
【0028】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジには、被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に導入された被検液を濃縮するための濃縮部と、検出用電極構成と、被検液導入部と濃縮部と検出用電極構成とを接続する流路が設けられる。濃縮部は、被検液導入部からの被検液を受けて該被検液に含まれる被検出物質を吸着するように作用する吸着担体を含む。さらに、濃縮部には、該吸着担体に吸着された被検出物質を溶離させる溶離液を該吸着担体に通して検出用電極に向けて流す溶離液供給部が組み合わされる。バルブ機構が設けられ、該バルブ機構は、被検液導入部から濃縮部に至る被検液導入流路を開き、溶離液供給部から濃縮部に至る溶離液供給流路を閉じる被検液導入用位置と、被検液導入部から濃縮部に至る被検液導入流路を閉じ、溶離液供給部から濃縮部に至る溶離液供給流路を開く溶離液供給用位置との間で流路切り替えを行うことができる。また、溶離液供給用位置において溶離液供給部から濃縮部に溶離液を送るために、送液ポンプ手段が設けられる。
【0029】
この態様においては、吸着担体に吸着された被検出物質が溶離液供給部からの所定量の溶離液に溶解されて検出用電極構成に接触させられることにより、被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成される。この構成においては、溶離液供給部、バルブ機構及び送液ポンプ手段は、処理ユニットのケーシング内に設けることができる。
【0030】
カートリッジには、吸着担体を通った後の被検液をカートリッジ外に排出するための排出流路と、電極構成を通った後の溶離液を収容する廃液溜とが形成され、被検液の導入段階では、排出流路が開かれ、電極構成と廃液溜との間の流路が閉じられ、溶離液の供給段階では、排出流路が閉じられ、電極構成と廃液溜との間の流路が開かれるようにすることができる。吸着担体は、膜、微粒子、又は多孔質体のいずれの形態であってもよい。
【0031】
吸着担体は、カチオン性物質吸着担体とすることができる。この場合において、該吸着担体は、該担体を構成する材料をスルホン酸基で処理して形成することができる。また、吸着担体は、アニオン性物質吸着担体とすることができる。この場合には、該吸着担体は、該担体を構成する材料を4級アミン基で処理して形成することができる。さらに、吸着担体は、該担体を構成する材料を重金属受容性物質で処理して形成することができる。この重金属受容性物質は、キレート物質、包接体及び重金属吸着性物質のいずれかとすることができる。キレート物質は、イミノ2酢酸又はエチレンジアミン基のいずれかとすることができる。包接体は、ポルフィリン及びカリックスアレンのいずれかとすることができる。また、重金属吸着性物質は、アポ酵素及び重金属吸着抗体のいずれかとすることができる。
【0032】
カートリッジは、カード状に形成することができ、この場合の処理ユニットは、ケーシングにカード状のカートリッジを挿入する挿入部を形成することが好ましい。
【0033】
電極構成は、寸法が10μmより大きくない少なくとも1個の微小電極要素を含むものとすることが好ましい。この場合、電極要素の上面に絶縁体シートを配置し、該絶縁体シートに寸法が10μmより大きくない孔を形成することにより、該微小電極要素とすることが好ましい。
【0034】
電極構成は、複数の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含むものとし、複数の作用電極要素は、互いに異なる面積であって異なる濃度範囲の測定のために働くようにすることができる。
【0035】
さらに、該電極構成は、少なくとも1個の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含むものとすることができる。
【0036】
また、貯留部を構成する濃縮部は、カチオン性物質を吸着するカチオン吸着担体とアニオン性物質を吸着するアニオン吸着担体とが並列配置された構成とし、検出機構となる電極構成は、2組の電極組を含み、各々の電極組を、それぞれカチオン吸着担体とアニオン吸着担体に対応させることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジは、濃度検出対象となる被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連なる液体流路と、該液体流路に配置された濃度検出用電極構成とを内部に備え、被検液を液体流路において濃度検出用電極構成に接触させることにより被検液に含まれる特定物質の濃度に関連する電気信号が濃度検出用電極構成により生成されるようになっている。電極構成は、複数の作用電極要素と、少なくとも1個の対極要素と、少なくとも1個の参照電極要素とを含み、複数の作用電極要素は、互いに異なる面積であって異なる濃度範囲の測定のために働くようにされる。
【0038】
本発明のさらに別の態様によるカートリッジ式濃度検出装置においては、検出用カートリッジは、平坦なカード状であり、ケーシングには、該カード状のカートリッジを挿入する挿入部が設けられる。このカートリッジは、濃度検出対象となる被検液を導入する被検液導入部と、被検液導入部に連なる液体流路と、該液体流路に配置された濃度検出用電極構成とを内部に備え、被検液を液体流路において濃度検出用電極構成上に流すことにより被検液に含まれる特定物質の濃度に関連する電気信号が前記濃度検出用電極構成により生成されるようになっている。
【0039】
このカートリッジは、液体流路の少なくとも一部を構成する凹部が一面に形成された樹脂製の第1シート材と、被検液導入部を構成する貫通孔及び検出用電極構成を収容する凹部が形成された樹脂製の第2シート材と、被検液導入部を構成する貫通孔が形成された樹脂製の第3シートとを含み、該第1、第2、第3シートは、それぞれの間に絶縁材シートを挟んで順に積層される。第2シートの電極収容用凹部には検出用電極構成の電極要素が配置され、該電極要素が第3シートに面するように第2シートと第3シートとが積層される。第2シートと第3シートの間の絶縁材シートは、電極要素に対応する部分において該電極の所要面積を露出させる孔が形成され、第3シートの第2シートに向いた側には、被検液を電極要素に導くための液体流路が形成される。
【0040】
この場合、カートリッジの第1シートには、第2シートに面する側に、電極要素からの廃液を収容する廃液溜を構成する凹部を形成することができる。
【0041】
本発明の上記の態様によれば、検出用カートリッジの流体流路に、被検出物質を濃縮して貯留するための濃縮部が備えられるので、含有濃度が極めて低い被検出物質の場合であっても、支障なく濃度検出を行うことができる。土壌が有害な重金属等により汚染されている場合には、その濃度は極めて低い場合であっても、規制対象となる。従来は、このような極低濃度の物質の現場での検出は不可能であると考えられていたが、本発明のこの態様によるカートリッジ式濃度検出装置を使用すれば、検査対象の土壌が採取される場所において、汚染物質の検出を簡単に行うことができるようになる。この場合には、供試被検液は、被検体土壌を溶解して形成すればよい。被検出物質を濃縮する濃縮部は、該被検出物質を吸着する吸着担体を含む構成とすることが好ましいが、他の濃縮原理に基づくものであってもよい。例えば、加熱により液体成分を蒸発させることによる濃縮法や、逆浸透膜を用いる方法などがある。
【0042】
本発明の上記態様による濃度検出装置は、該被検出物質を含む液体が検出用電極に接触したとき、該電極に被検出物質の濃度に関する電気的情報が生成される物質であれば、どのような物質の濃度検出にも適用することができる。使用される電極構成としては、典型的には、作用極、対極及び参照電極からなるものが通常は用いられる。作用極は、被検出物質を吸着し、溶離液に接触したときに該被検出物質を溶離液中に放出する電極である。作用電極に望まれる条件としては、印加できる電位の範囲が広いこと、すなわち電位窓が広いこと、腐食や酸化に耐性があることである。電位窓とは、電気化学上好ましくない水素イオンの発生又は酸化皮膜の生じない電位領域を指し、この領域は、電極の材質及び測定対象溶液のpH値によって異なる範囲となる。
【0043】
作用電極として使用するのに好ましい材料は、白金、金、水銀、銀、ビスマス、カーボンなどである。作用電極を形成するにあたっては、これらの材料から適宜選択すればよいが、測定対象である被検出物質を吸着し易い材料であることが好ましい。被検出物質がカドミウム、鉛及び水銀である場合には、作用極としてはカーボン表面を有する電極を使用し、砒素及び水銀測定用の作用極としては金表面を有する電極を使用することが適切である。六価クロムの検出のためには、カーボン表面を有する電極を使用すればよい。その理由は、カーボン表面を有する電極は、六価クロムとジフェニルカルバジドの会合体を良く吸着する性質を有するからである。
【0044】
カーボン表面を有する電極としては、黒鉛/ガラス状炭素比が70/30の黒鉛のカーボン焼結体からなるカーボン電極が好ましい。一般に、黒鉛は、鉛やカドミウム、水銀などを吸着し易いが、その結晶の配向方向を揃え難いために、物質の吸着にばらつきを生じたり、接触する液体により膨潤したりするという問題がある。しかし、黒鉛にガラス状カーボンを一部混入して焼結することにより、焼結体を緻密化し、液体の浸透を抑制することができる。また、ガラス状カーボンにより黒鉛の配向方向をランダム化して、吸着のばらつきを極めて小さくすることができる。上述した黒鉛/ガラス状カーボン比が約70/30の焼結体は、高感度で再現性のよい作用電極を構成するのに好都合である。
【0045】
金表面を有する電極としては、特に材質に制限はない。本発明においては、ガラス基板上にクロム層を介して金を被覆した構成を用いることにより、良好に作動する作用電極を得ることができる。この場合、クロム及び金の成膜はスパッタリングにより行うことができる。膜の厚さに特に制限はないが、クロム層は約40nm、金層は約400nmとすればよい。
【0046】
対極は、作用電極との間で電流を流すためのものである。導電性の材料であれば、どのような材料であっても対極として使用できる。
【0047】
参照電極は、既知の安定した電位を示すことにより電位の基準とすることができる電極である。この場合の代表的な参照電極として、水素電極、飽和カロメル電極(水銀/塩化水銀電極)、銀ハロゲン化銀電極などを挙げることができる。銀/ハロゲン化銀電極としては、銀表面が塩素を含む溶液との平衡反応により塩化銀を形成している銀・塩化銀電極がある。この電極においては、電圧が印加された場合にも、銀と塩化銀との平衡状態が常時保たれるため、発現する電位は常時一定となり、参照電極として用いることができる。銀・臭化銀電極及び銀・ヨウ化銀電極も使用できるが、材料の汎用性及び加工コストの観点からは、銀・塩化銀電極が好ましい。
【0048】
電極のサイズは特に限定はされないが、一例を挙げると、3x8.4mmの長方形平面形状を有し、厚さが0.5mmの薄板状の電極に、直径1ないし2.5mm程度の小孔をあけた両面粘着テープのようなシートを貼付して所定面積の電極表面を露出させるようにすることができる。電極は、薄板状の予め成形した電極素材をカートリッジ基板に貼り付ける構成とすることが、成形及び取り付けの容易さの観点から好ましいが、カートリッジ基板に直接形成することもできる。
【0049】
検出は、電気化学的測定によることが最も一般的である。水溶液中の電気化学反応においては、電極上の反応の方が溶液中の物質移動よりも速いため、溶液抵抗と呼ばれる物質移動速度に由来する応答の遅れがあり、ピークが不明瞭になる。電極サイズがμmオーダーの微小電極を用いると、問題となる物質移動が面拡散から点拡散に変わり、単位面積あたりの応答の遅れが緩和される。従って、より小さいスケールのピークが判別可能となり、感度が向上する。この効果を期待出来るようにするには、電極の短径寸法を10μm以下とすることが好ましい。また、このような電極をアレイ状に多数配置することにより、高い電流総量を得ることができる。このような大きさの微小電極を作成するには、半導体の微細加工技術を用いることができる。例えば、電極とする材質のうえに絶縁層を形成し、この絶縁層に10μmより小さい孔を設けることで微小円電極を得ることができる。また、10μmより小さい作用極と対極を交互に並べた形状の櫛型電極としても、同様の効果を発揮することができる。
【0050】
電気化学測定による重金属検出を行う場合には、作用電極を所定の電位に高めるための充電電流をできる限り小さくすることが望ましい。このためには、重金属を含む溶液中を電子がより移動しやすくなるようにする必要があり、その目的で適当な電解質を添加することができる。溶液中で塩を形成する物質であればどんな物質でもよいが、塩化カリウム、硫酸、硝酸、硝酸カリウム、水酸化ナトリウム等が価格の観点から好ましい。また、作用極の電位窓は、pHに応じて負側もしくは正側にずれる性質を有するため、電解質によってpHの調整をしておくことで、測定対象電位範囲における作用極からの水素発生や作用極上の酸素皮膜形成などの不具合を防ぐことが出来る。
【0051】
後述する溶離液は、典型的には、電解質を含有する溶液である。電解質が含まれている溶離液を一定流量で送液することにより、溶離から検出までを連続して行うことができる。このように構成することにより、配管及び操作を簡易化でき、溶液の混合比や混合スピードを管理する必要がなくなる。溶離液と電解質溶液を別途用意する場合には、それぞれの溶液の絶対量の管理が必要になるが、本発明の濃度検出装置のように、流路や電極を設けるスペースが極少量である場合には、溶液の絶対量の管理は困難であり、1種類の溶液のみにより溶離と電気化学測定を行えるようにすることは、極めて重要である。
【0052】
また、前述のように、参照電極においては、印刷した銀の上に塩化銀を生成させるために、塩素を含む溶液を参照電極活性化液として印刷した銀に対し接触させ、極微弱な電流を参照電極に流す。従って、溶離液に塩素を含有させておけば、参照電極を活性化させるために用いる活性化液を別に用いる必要がなくなり、簡便な構造とすることが出来る。ただし、セレンの測定の場合には、電気化学的測定を行う際に塩素が妨害物として作用するため、溶離液に塩素を含有させておくことはできない。このため、以下に述べる参照電極活性化液を用いることが必要になる。
【0053】
参照電極活性化液は、印刷した銀に対し接触させて、極微弱な電流を参照電極に流すことにより、印刷した銀の上に塩化銀を生成して参照電極としての作用を行わせるためのものである。参照電極活性化液は、一般的には、適量の塩素を含有する。好ましい塩素含有量は0.05M〜3Mであり、含有量が小さすぎると塩化銀の形成が不安定となり、大きすぎると固形物を析出するために取扱いにくくなる。該活性化液は、水に塩化カリウム、塩化ナトリウムなどを所定量溶解することにより、調製することが出来る。
【0054】
参照電極は、作用極、対極との間で電気的相互作用を有することが必要であるため、参照電極活性化液は、溶離液と接触している必要がある。しかしながら、電気参照電極活性化液を溶離液と別に用いる目的の一つは、電気化学的測定の際に塩素が妨害物となることを避けるためである。すなわち、作用極部に参照電極活性化液が流入することを防ぐことが必要であるため、参照電極室を別途設けておき、参照電極室と溶離液が液路により接続される構造を形成しておく。液路は、容易に分子拡散を生じないように微細流路としておくことが好ましい。多孔質膜で参照電極室と溶離液が隔てられている構造としてもよいが、この際には多孔質膜に参照電極活性化液が浸透するまでに或る程度長い時間が掛かることから、本発明のように短時間で被検出物質の検出を行う目的の場合には、微細流路の方がより好ましい。参照電極室中には参照電極が設置され、この参照電極質に参照電極活性化液が予め含まれた状態とするか、若しくは参照電極活性化液が必要に応じて供給される構成にしておくことが望ましい。検出用カートリッジに予め参照電極活性化液を搭載しておく場合には、液体の蒸発による固体物質の析出を防ぐために、参照電極活性化液をアルミニウム製パックなどに封入しておくことが有用である。
【0055】
吸着担体によっては、サンプル液を通過させる前に吸着担体を活性化する液体を通過させる必要があるものがある。例えば、砒素、セレン、六価クロムを吸着する4級アミンは、OH-イオンと接触することにより吸着性能を発揮するようになるが、これは、目的とする陰イオンがOH-イオンと置換する反応を利用するものである。この場合には、吸着担体活性化液が使用される。吸着担体活性化液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
【0056】
吸着担体は、電極構成の上流側で流路中に設けられる。既に述べたように、吸着担体は、膜、微粒子、多孔質体のいずれの形態であってもよく、また、それらの組み合わせであってもよい。本発明は又、クロマトグラフィー分析、イムノアッセイ、その他の検出に適用でき、吸着担体は、それぞれの目的に応じて適切な構造を選定すればよい。以下に、それぞれの形態を具体的に説明する。
【0057】
〔膜構造〕
主として繊維によりフィルター状に形成される。高分子膜、金属膜に適当な孔を開けたものとすることもできる。膜構造の例としては、表面の形態により被測定対象物質に対する吸着機能を持つもの、表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つもの、繊維に特定機能を有する粒子を担持させたものが挙げられる。
微粒子:この構造には、微粒子表面の形態により被測定対象物質吸着機能を持つもの、微粒子表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つものがある。微粒子を、流路の長手方向に約10mm以上にわたって延びるカラム状に充填すれば、クロマトグラフィーを行うことが出来る。充填の形状は、直方体状、円筒状のいずれでもよい。
【0058】
〔多孔質体〕
多数の連通孔を有する担体である。例としては、多孔質セラミック、多孔質ガラス等のモノリス型多孔質無機材料、或いは、ポリアクリルアミドゲル、スチレンジビニルベンゼン共重合体等を多孔質化したものなどが挙げられる。連通孔表面の形態により被測定対象物質吸着機能を持つもの、連通孔表面を官能基で修飾したことにより同様の吸着機能を持つものがある。連通孔を有する担体が一体構造を有する場合には、以下にこれをモノリスと呼ぶ。クロマトグラフィーができる長さより小さい場合には、これをモノリスディスクと呼び、クロマトグラフィーができる長さのものは、これをモノリスカラムと呼び、いずれも用語は目的に応じて使い分けることができる。モノリスカラムは、樹脂充填カラムに比べて相対的に低圧力で通液することが可能であるため、低圧送液ポンプを用いることができ、同じ分析性能を有する機器でも、より小型化、低消費電力化が可能になる。モノリスディスクについても、同様の理由で低圧力での送液が可能であるため機器の小型化が容易となる。モノリスカラム及びモノリスディスクとも、一体化された構造を有するので、カートリッジ式マイクロリアクタ内に設置する際の取り扱いが容易である。
【0059】
吸着担体を構成する材料の例としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンープロピレン共重合体等に代表されるポリオレフィン、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体に代表されるオレフィン−ハロゲン化オレフィン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等に代表されるハロゲン化ポリオレフィン及びポリスルホン、シリカ、アルミナなどが挙げられる。繊維状の吸着担体の場合には、セルロース系材料、綿や麻などの植物性繊維、絹や羊毛などの動物性繊維に代表される各種の天然繊維あるいは再生繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の各種合成繊維等の繊維状材料が用いられる。
【0060】
また上記構造をとらない場合でも、流路の壁面が被測定対象物質に対する吸着機能を有する場合には、同様に濃縮機能を生じることができる。
【0061】
吸着担体の表面に被測定対象物質に対する吸着機能を持たせるためには、表面が被測定対象物質に対する相補的な構造を有するか、又はイオン結合、配位結合、キレート結合、疎水性相互作用、分子内極性による相互作用等を起こす機能性分子が固定化されるようにすればよい。
【0062】
相互作用を有する機能性分子としては、例えば、スルホ基、第4級アンモニウム基、オクタデシル基、オクチル基、ブチル基、アミノ基、トリメチル基、シアノプロピル基、アミノプロピル基、ニトロフェニルエチル基、ピレニルエチル基、ジエチルアミノエチル基、スルホプロピル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、スルホキシエチル基、オルトリン酸基、ジエチル(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル基、フェニル基、イミノジ酢酸基、エチレンジアミン、硫黄原子を含むキレート形成基、例えば、各種メルカプト基、ジチオカルバミン酸基、チオ尿素基などの官能基や、アビジン、ビオチン、ゼラチン、ヘパリン、リジン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、プロテインA、プロテインG、フェニルアラニン、ヒママメレクチン、デキストラン硫酸、アデノシン5'リン酸、グルタチオン、エチレンジアミン二酢酸、プロシオンレッド、アミノフェニルホウ酸、牛血清アルブミン、ポリヌクレオチド(例えばDNA)、タンパク質(例えば抗体)等の原子団が挙げられる。これらの物質は単独で用いてもよいし、2種類以上を同時に用いてもよい。
【0063】
溶離液は、吸着担体に吸着している被検出物質を、吸着担体から離脱させるためのものである。吸着の形態に応じて有効な溶離液は異なるので、吸着の化学的特性から判断して、溶離液を選定する。例えば、吸着担体表面に吸着しやすいイオンを含有する溶液であって、この溶液が吸着担体を通過するときに、該吸着担体に既に吸着しているイオンの形態の測定対象成分が溶離液中のイオンと交換することによって、測定対象成分を吸着担体から離脱させることができる。本発明においては、被検出物質に応じて下記に示すような組成を有する溶離液を用いることができる。
【0064】
カドミウム、鉛、水銀測定の場合には、吸着担体として、3M社からCation-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として0.4M 塩化カリウム、 10mM クエン酸、3.5mM エチレンジアミンを含む液体(pH=約4)を使用する。この吸着担体は、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子10%、繊維状テフロン(登録商標)90%の構成である。微粒子表面はスルホン酸基が形成されている。
【0065】
砒素、セレン、六価クロムの測定の場合には、吸着担体として、3M社からAnion-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として、1M−硫酸(pH=約2)を用いる。この吸着担体も、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子表面は4級アミン基が形成されている。
【0066】
吸着担体によっては、サンプル液を通過させる前に吸着担体を活性化する液体を通過される必要があるものがある。例えば、砒素、セレン、六価クロムを吸着する4級アミンは、OH-イオンと接触することにより吸着性能を発揮するようになるが、これは、目的とする陰イオンがOH-イオンと置換する反応を利用するものである。この場合には、吸着担体活性化液が使用される。吸着担体活性化液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
【0067】
吸着担体の大きさは、吸着担体の吸着容量が、目的とする成分を吸着するにあたって飽和とならない範囲で、自由に決定できる。測定対象物質を含む溶液中に、吸着担体に吸着しうる物質がどの程度含まれているかを予め想定し、吸着担体の大きさを決定する。吸着担体の吸着容量が小さい場合には、濃縮倍率を上げやすいが、飽和吸着となり易いため、所望の吸着容量が得られる大きさの吸着担体とすることが必要である。また、吸着部にクロマトグラフィ作用を期待する場合には、少なくとも流路方向に10mm以上の長さを有するカラム形状とすることが必要である。
【0068】
吸着担体の空隙率、連通孔の大きさ等は、溶液との接触を確実に行うことができ、目詰まりが問題とならない範囲で決定する。膜構造の場合には、その目の粗さは0.3μm程度以上、微粒子を用いる場合には、その粒子径は2〜50μm程度、モノリスカラムの場合の連通孔は1〜50μm程度が好ましい。
【0069】
本発明のこの態様においては、前述した3M社のエムポア(TM)ディスクカードリッジを用いることにより、好適な結果が得られる。このディスクカートリッジは、厚みが非常に薄いため、吸着した重金属を離脱させるときに用いられる溶離液の量が、具体的には9ないし15μlというように極少量で済み、従って溶離液中の重金属濃度が高くなり、結果として高感度の分析を実現出来る。吸着担体の形態の如何を問わず、その容積が極少であることは、微量成分の分析の場合には重要である。
【0070】
また、このように薄い膜構造を用いることにより、液体を通過させるために必要な送液圧力が殆どかからなくなる。装置を小型化するためには、ポンプの小型化が必須であり、送液圧力を低減することが有効である。この観点でも薄い膜構造の形態をとるのは好ましいことである。
【0071】
検出用カートリッジ内で各種の液体を移送・貯蔵するために、微小流路が形成される。液体を移送する流路は、数百μm〜数mmのオーダーの幅を有し、数百μm深さを有する溝により形成され、流路の断面積は100μm2〜1mm2程度であることが好ましい。流路が大きすぎると、流路中で乱流が生じやすくなり、目的とする物質の輸送が均一でなくなる。流路が小さすぎると、流路中に存在する微粒子などにより流路が詰まったり、気泡が抜けにくいなどの不具合が生じる場合がある。液体の移送を確実に行うために、流路の内部を親水化処理してもよい。親水化処理は、気泡の滞留を生じにくくする作用も併せて有する。
【0072】
カートリッジを処理ユニットの読取部に接続するには、カートリッジを、該読取部のケーシングに機械的に結合することが好ましい。カートリッジ内の電極や開口部に相当する位置と、読取部の端子、バルブ機構、各種溶液の注入口が正しく接続されるのを確実にする配置を得るために、処理ユニットのケーシングには、該カートリッジを所定位置に保持するホルダ部を設けることが好ましい。カートリッジとケーシングには、互いの形状に合わせて嵌合するように、凹部及び突起が設けられ、これらが相互に係合して、カートリッジを処理ユニットのケーシングに確実に保持する。
【0073】
電気化学的検出は、ホルダ部に固定されたピン状の端子を介して行われる。これらの端子と処理ユニットは予め結線される。この端子は、処理ユニット内にカートリッジが設置されたときに電極が位置するところに設けられ、その内部にバネを設けて伸縮可能とし、接続が確実になるような構成とすることが好ましい。ホルダ部にカートリッジを設置した状態で、予め電極上方に位置するようホルダーに固定された端子が、バネの力で電極と確実に接触する。これらの電極には、予め設定した測定プロファイルに従って電圧が印加され、電極に流れた電流を検出して、記録や表示部に信号が送られる。
【0074】
送液機能部は、送液用ポンプ、送液時に開口を開閉するバルブ機構、及びこれらポンプ及びバルブ機構を制御するための電子基板により構成することができる。バルブ機構は、対応する溶離液、電解質溶液、吸着担体用の前処理液、洗浄水等が収められる容器に接続される。
【0075】
送液用ポンプは、少量の液体を安定して送液でき、脈動がなく、流速が一定であるものが好ましい。5〜100μl/min程度の流速が安定して実現できることが好ましく、ポンプが送液可能な圧力は0.01〜10Mpaであることが好ましい。また、本体が小型かつ軽量で消費電力が少ないものであることが好ましい。これらの条件に適合するポンプとしては、シリンジポンプが挙げられる。好適なシリンジポンプとしては、ユニフロー社製ペンシルポンプがある。
【0076】
本発明の一態様である濃度検出装置においては、測定中に、被検出物質を含む被検液を一定の流速で流しながら測定を行うことが好ましい。このためには、流量検出手段を採用することが好ましい。溶液を流すことにより、単位時間当たりに電極表面近傍を通過する重金属イオンの数が多くなり、その結果、析出する被検出物質の量が多くなるので、測定を高感度で行うことが可能になる。また、一定の流速で常に溶液を更新し続けることができるので、吸着担体活性化液や洗浄液等の液残り分の影響を考慮したり、溶液の全容積を管理したりする必要がなくなり、流速のみを管理するだけで精度の高い分析をすることができるようになる。さらに、分析対象や濃度に応じて流速を変えることにより、的確な条件で測定を行うことができ、共通のチップを様々な分析対象に使用することができるようになる。
【0077】
また、本発明の上述した態様においては、被検液の流れの線速度を制御することによって、同時に高濃度/低濃度の分析を行い、測定精度を上げることができるが、流れの線速度の制御によってこのような効果を期待できるのは、流量検出手段を採用することの結果である。
【0078】
前述した流量制御を行う本発明の態様においては、電極毎に電極面積もしくは電極が収納される流路の幅及び深さなどを変えることにより、電極表面に吸着する被測定対象物質の量を電極毎に変化させ、低濃度範囲、高濃度範囲の分析を同時に行うことが可能となる。例えば、直径1mmと2.5mmの電極面積を併用すれば、約19倍の感度を使い分けることが可能になる。この場合には、流路の上流側に低濃度検出用の電極を、下流側に高濃度検出用の電極を配置することが好ましい。
【0079】
本発明はまた、液体クロマトグラフィー分析のための分析装置として構成することができる。すなわち、本発明の別の態様においては、カートリッジ式検出装置は、液体クロマトグラフィー分析のための検出用カートリッジを用いるものとすることができる。この場合において、検出用カートリッジは、被検液調整用のカラムと吸光度測定セルとを備えるものとすることができ、処理ユニットは、光源と、該光源からの光をカートリッジの吸光度測定セルに向ける入射光学系と、吸光度測定セルを通過した光を受けて被検出物質に関する情報を生成する分光器とを備えることができる。この態様においても、濃度検出装置の場合と同様に、測定中に、被検出物質を含む被検液を一定の流速で流しながら測定を行うことが好ましい。
【0080】
液体クロマトグラフィー分析の対象としては、タンパク質、核酸オリゴマー、DNA、RNA、ペプチド、農薬、有機酸合成分子オリゴマー、ポリマー、添加剤、単糖類、二糖類、小糖類、多糖類、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、グリセリド、リン脂質、ステロイド、アニオン、カチオン等を挙げることができる。測定原理は良く知られており、本発明においては、公知の原理に基づく方法を採用することができる。液体クロマトグラフィー分析の場合の貯留部は、濃度検出装置の場合と同様に構成すればよい。
【0081】
さらに、本発明においては、処理ユニットは、検出用カートリッジを取外し自在に取り付けることができるカートリッジ取付部と試薬タンクを取外し自在に取り付けることができる試薬タンク取付部とを備えることができる。また、カートリッジは、廃液ポートを備えることができ、処理ユニット内にはカートリッジからの廃液を受ける廃液タンクを設けることができる。この場合、配管切換バルブ機構は、カートリッジの廃液ポートを廃液タンクに選択的に切換接続するように構成される。
【0082】
配管切換バルブ機構及びタンク切換バルブ機構は、それぞれ配管切換バルブプレート及びタンク切換バルブプレート上に配置することができる。配管切換バルブプレート及びタンク切換バルブプレートの少なくとも一方は、プラスチック材料の射出成形又はプレート材料の切削加工により形成したプレート要素を複数枚積層し固定した構造にすることができる。この場合、少なくとも1つのプレート要素には、液体流通のために必要とされる孔及び流路溝を所要のパターンで予め形成する。他方のプレート要素は、孔及び溝を有するものであっても有しないものであってもよい。複数枚のプレート要素を積層し固定することにより、内部に所要の流路を有するプレートが形成され、該バルブプレートに取り付けられるバルブは、上記の孔を介してこれらの流路に適宜接続される。
【0083】
このようにバルブプレートを構成することにより、必要な流路のための配管をコンパクトに収めることが可能になる。また、この構成は、配管の間違いを防止し、流路の詰りや液漏れを発見するのに便利で、かつ、部品点数を減少でき、製造の観点からも、保守点検の観点からも有利であり、しかも、交換が容易であるという利点をもたらす。さらに、プレート要素を透明プラスチック材料により構成すると、プレート内部の視認性が良くなるという利点も得られる。実際の設計では、バルブプレートは数立方センチメートルといった小さな体積とすることができ、この僅かなスペースに所要の配管の大部分を収めることができるという利点が得られる。
【0084】
プレート要素の積層固定の方法としては、接着剤又は粘着剤による方法、高温又は超音波による接合、拡散接合などを挙げることができる。拡散接合は、接合する材料を高温高圧雰囲気に曝し、材料原子に拡散を生じさせ、接合面に一体的な融合を生じさせるものであり、主として金属に適用される技術であるが、プラスチック材料にも適用することができる。拡散接合を適用できるプラスチック材料としては、アクリル樹脂、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)がある。
【0085】
本発明においては、処理ユニットのハウジング内に、電源と情報処理手段を含む電子処理手段を内蔵することができる。複数の試薬タンクは、洗浄液タンク、活性化液タンク、及び溶離液タンクとすることができる。溶離液は、カートリッジ内の液体流路に通されたとき、カートリッジの貯留部に一時的に貯留された被検出物質を溶離させ、所望の分析のためにカートリッジ内の流路に送り出すように作用する。
【0086】
上述したように、貯留部は、例えば被検出物質を吸着する性質の吸着担体として構成することができる。また、試薬タンクの少なくとも1つは、溶離液用のタンクとすることができる。ここで、溶離液は、例えば被検出物質を吸着する性質の吸着担体として構成することができる貯留部に貯留されている被検出物質を、該吸着担体から離脱させるためのものである。吸着の形態に応じて有効な溶離液は異なるので、吸着の化学的特性から判断して、溶離液を選定する。例えば、吸着担体表面に吸着しやすいイオンを含有する溶液であって、この溶液が吸着担体を通過するときに、該吸着担体に既に吸着しているイオンの形態の測定対象成分が溶離液中のイオンと交換することによって、測定対象成分を吸着担体から離脱させることができる。本発明においては、被検出物質に応じて様々な組成を有する溶離液を用いることができる。
【0087】
本発明はまた、免疫学的検定法(イムノアッセイ)による検出のための装置としても実施できる。この場合の測定対象は、各種のアレルゲン、例えば、卵黄、卵白、牛乳、落花生、エビ、カニ、魚、貝、大豆、マンゴー、その他のアレルゲンとして知られている食品や、塵ダニ、羽毛、花粉、真菌、細菌、ゴキブリ、犬又は猫の毛が挙げられる。この他にも、内分泌撹乱物質、農薬、IgE又はIgG等の免疫グロブリン、ヒスタミン、遺伝子(RNA)、ストレスマーカー、各種タンパク質、人又は動物の血液、血液成分、尿、唾液、体液に含まれる抗原又は抗体、特定疾患を示す成分等を挙げることができる。
【0088】
イムノアッセイは、用いる標識の種類や反応済の抗原、抗体を分離する方法などによって、標識法と非標識法、競合法と非競合法(サンドイッチ法)、均一法と不均一法等に分類される。具体的な分析例は、これらの組合せによって構築される。種々の組合せが可能であるが、本発明に適用するのに好適な組合せについては後述する。
【0089】
検出法としては、免疫比濁法、ラテックス凝集比濁法、抗原電極及び抗体電極からなるイムノセンサ等による非標識法と、酵素イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、スピンイムノアッセイ、メタロイムイムノアッセイ、粒子イムノアッセイ、バイロイムノアッセイ等の標識法があり、本発明においては、いずれをも使用することができる。
【0090】
この実施形態においては、検出用カートリッジの貯留部は、フィルタとして構成することができ、該フィルタの表面に被検物質、例えば抗原及び/又は抗体を固定化する。この固定はフィルタ表面に直接行うことができ、適当なリガンドを介して行っても良い。例えば、プラスチック素材又は炭素繊維を抗原及び/又は抗体溶液に浸漬することにより、この固定を行うことができる。用いる抗原及び/又は抗体によっては、例えば、金−メルカプト結合を利用する場合のように、固定化に際し金属を介在させた方が良いものがある。このような場合には、例えば炭素繊維にメッキを施すとか、スパッタ処理又はプラズマ処理を行うとかの方法で、容易に金属被覆を形成できる。
【0091】
抗体及び/又は抗原は、測定対象に応じたものを用いる。また、ビオチンに対するアビジン、免疫グロブリンGに対するタンパク質A、ホルモンに対するホルモンレセプタ、DNAに対するDNAレセプタ、RNAに対するRNAレセプタ、薬物に対する薬物レセプタなどの組合せが考えられる。
【0092】
イムノアッセイは、抗原抗体反応を行わせる第1段階と、抗原又は抗体と反応した標識を検出する第2段階に大別される。貯留部では、第1段階の抗原抗体反応を利用して検出対象成分とそうでない成分の分離を行い、貯留部より下流側に設けられる電極構成又はセルからなる検出機構において、分離した成分の定性及び/又は定量分析を行う。第2段階における検出機構は、電気化学分析又は光学分析によるものとすることができる。電気化学分析による場合には、上述の濃度検出装置と同様な電極構成を採用することができる。光学分析による場合には、液体クロマトグラフィー分析の場合と同様な光学セルを採用することができる。
【0093】
イムノアッセイにおける標識物質としては、酵素標識、科学発光体標識、金属イオン等を用いることができる。酵素標識を用いる場合には、貯留部に標識が固定化された状態で貯留部に基質を流して、生成する反応物を下流側の検出機構で検出する。例えば、酸化還元酵素によって生成される過酸化水素を電気化学分析によって検出する。このような標識と基質の組合せとしては、グルコールオキシダーゼに対するグルコース、キサンチンオキシダーゼに対するキサンチン、アミノ酸オキシダーゼに対するアミノ酸、アスコルビン酸オキシダーゼに対するアスコルビン酸、アシルCoAオキシダーゼに対するアシルCoA、コレステロールオキシダーゼに対するコレステロール、ガラクトースオキシダーゼに対するガラクトース、シュウ酸オキシダーゼに対するシュウ酸、ザルコシンオキシダーゼに対するザルコシなどがある。
【0094】
また、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素標識を用いて、光学分析を行うこともできる。光学分析としては、比色法又は蛍光法を用いることができる。
【0095】
またさらに、他の原理を利用した分析、例えば特異的結合反応を利用した分析に本発明の検出装置を応用することもできる。この場合、貯留部を特異的結合反応を行う物質で構成することによって、例えば、IMAC(固定化金属イオン・アフィニティ クロマトグラフィ)、相補DNAのハイブリダイゼーション、その他の各種タンパク質の分析にも応用することが可能である。
【0096】
上述した態様のいずれの場合においても、本発明によるカートリッジ式検出装置は、測定ごとの交換、煩雑な洗浄や更新処理などを必要とする部分を検出用カートリッジに搭載することができる。例えば、電気化学分析のための電極、液体クロマトグラフィーにおけるクロマトカラム、イムノアッセイにおける抗原又は抗体の固定相がこれに該当し、検出用カートリッジに搭載される。
【0097】
光学セルは、検出用カートリッジに容易に組み込むことができ、測定者の労力を軽減する観点からは、検出用カートリッジに搭載することが好ましいが、光学セルの洗浄は単純な水洗ですむので、処理ユニット側に搭載してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(検出用カートリッジによる各種重金属の測定)
図1に、重金属の濃度分析に使用するのに適した本発明の一実施形態による検出用カートリッジの一例を分解図で示す。図示実施形態においては、検出用カートリッジ1は、4枚の樹脂製のベース基板11、12、13、14を、下からこの順で重ね、組み合わせて構成されている。典型的な例を挙げると、各基板の大きさは、平面形状が35mm×50mmであり、一枚の基板の厚さは1mmであり、重ね合わせた状態で約4mmとなる。
【0099】
基板12、13の間には、アニオン性物質を吸着する吸着担体22a、アニオン性物質を検出するための作用極31、32、該作用極31、32に対応する対極33及び参照極34と、カチオン性物質を吸着する吸着担体22b、カチオン性物質を検出するための作用極35、36、参照極37及び対極38が配置される。基板12には、これら電極を所定位置に収めるために凹部が形成される。図1において、基板12の凹部31a、32aが作用極31、32を収める作用電極室であり、凹部33aが対極33を収める対極室、凹部34aが参照電極34を収めるための参照電極室である。同様に、凹部35a、36aが作用電極室を、凹部37aが参照電極室を、凹部38aが対極室をそれぞれ構成する。吸着担体22a、22bは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部を構成する。
【0100】
砒素及びセレン測定用の作用極としては、ガラス基材上にクロム層を介して金層が形成された金電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用い、カドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の作用極としては板状カーボン電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用いる。この実施形態においては、作用極31を砒素及びセレン測定用の金電極とし、作用極32、35、36を、それぞれカドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の板状カーボン電極とすることができる。対極33、38には、作用極32と同様の板状カーボン電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用し、参照極34、37には、アルミナ基材上に銀ペースト(日本アチソン社製6022)が塗布された電極(例えば、サイズ3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用すればよい。もちろん、他の電極構成を採用することも可能である。
【0101】
電極の大きさは全て統一されており、電極表面と基板12の表面が同一面になるように、それぞれの電極31、32、33、34、35、36、37、38が基板12の凹部31a、32a、33a、34a、35a、36a、37a、38aにそれぞれ収められている。基板11と基板12の間、基板12と基板13の間、基板13と基板14の間は、粘着テープによって液密に固定される。図1には、基板12、13間に配置される粘着テープ24の例が示されている。他の基板の間に配置される粘着テープも同様な形状であり、各粘着テープは、必要な個所に開口又は孔が形成される。
【0102】
作用極31、32、35、36その他の電極の表面は、粘着テープ24によってマスクされる。図1に示すように、マスク24の電極に対応する8ヶ所の位置に所定の面積の孔を開口することにより、各電極が露出される。図1において、孔241、242が、アニオン性物質を検出するための作用極31、32にそれぞれ対応するものであり、カチオン性物質を検出するための電極列に対応する位置にも同様な孔が形成されている。図示実施形態では、作用極31に対応する孔241及び作用極35に対応する孔を直径1mmの円形孔とし、作用極32、36に対応する孔及び残りの電極に対応する孔を直径2mmの円形孔としている。これらの孔は、電極31〜38が液体と接するようにするためのものである。さらに、粘着テープ24には、吸着担体22a、22bに対応する位置にも該吸着担体22a、22と同じ大きさの孔243、244が形成されている。個々に説明はしないが、粘着テープ24及び他の粘着テープには、それぞれ基板に形成される凹部等に対応する位置に必要な孔又は開口が形成される。
【0103】
図1に示すように、基板11には、廃液溜110を形成する凹部と、液体流路の一部を形成する一対の流路溝111及び一対の流路溝112が形成されている。基板12には、被検液導入のための一対の貫通孔201が形成されており、この貫通孔201の各々は、基板12が基板11に重ねられたとき、該基板11の一対の流路溝111の各々の一端部に連通する位置に配置される。各流路溝111の他端部は、基板12及び基板13に形成された孔を通して後述する基板14の流路溝に連通する。各流路溝112の一端部は、吸着担体22a、22bの収容凹部にそれぞれ連通させられている。基板12は、さらに、基板11の廃液溜110に重なる開口202を有する。
【0104】
基板13は、該基板13が基板12に重ねられたとき、基板12の一対の貫通孔201に重なる一対の貫通孔301と、吸着担体22a、22bの上部を受ける一対の凹部302を有する。さらに、基板13は、電極31、32、33、34の列に重なる流路溝303と、電極35、36、37、38の列に重なる流路溝304を有する。また、基板13には、参照電極活性化液としての電解質溶液を入れた電解質溶液パックを収める電解質溶液室305と基板12の孔202に連通する孔306が形成されている。基板12には、基板13の電解質溶液室305内に延びる針状体203が設けられる。基板14には、基板13の一対の貫通孔301にそれぞれ重なる一対の貫通孔401と、基板13の電解質溶液室305に連通する貫通孔402が形成されている。基板14の外側表面には、貫通孔402を塞ぐように、可撓性の薄板部402aが、該基板14と一体に形成されている(図2(a)(c)参照)。参照電極活性化液として機能する電解質溶液は、予めアルミニウム製のパックに入れられた状態で供給され、この電解質溶液パックが電解質溶液室305に収められる。電解質溶液室305は参照電極室に連通している。
【0105】
基板14には、一対の流路溝403が形成されており、この流路溝403の各々の一端は、前述したように、基板12、13の孔を介して基板11の流路溝111の他端に連通している。図1から分かるように、電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列は、基板12の側縁に露出されている。貫通孔201、301、401は、全体として、被検液導入部1aを構成する。
【0106】
図2(a)に、図1の基板11、12、13、14を重ねて検出用カートリッジを組み立てた状態を示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図で、吸着担体を通る断面を示し、図2(c)は、図2(a)のB−B断面図で、電極34、38と参照電極用の電解質溶液室305を通る断面を示す。
【0107】
図3に、検出用カートリッジ内における液体流路を、上流側を左に、下流側を右に配置した状態で模式的に示す。図3における符号は、それぞれ図1に示す符号に対応する。ここでは、アニオン吸着担体22aを含む砒素、セレン測定用流路を例に説明する。吸着担体22aは、直径5mm×厚さ600μmの円形の膜で、その周縁を基板12、13の吸着担体収容用凹部21aの縁が押し挟んで保持している。吸着担体収容用凹部21aの縁部は、吸着担体22aの周縁方向からの液体の漏れを生じないように形成されている。また、この凹部は、流路方向の流れに沿って流路壁に急激な段差を生じないようにテーパ状に形成されており、これにより流路方向の流れがスムーズとなり、気泡の混入なども生じ難くなる。図3に示すように、基板11の外面には、流路溝111に通じる外部ポート113と、流路溝112の吸着担体収容用凹部21aに隣接する位置に通じる外部ポート114、及び流路溝112の下流側端部に隣接する位置に通じる外部ポート115が形成されている。さらに、基板11の外面には、基板12の貫通孔を介して基板13の流路溝304に通じる外部ポート116が形成されている。ポート113、114、115、116は、それぞれのポートを所望のように切り換えるバルブ機構51により制御される。図3には、そのための5方向バルブの一部を示す。バルブ機構51については、図4を参照して後で説明する。
【0108】
この実施形態による検出用カートリッジを用いて被検出物質を検出するに際しては、外部ポート113、114、116、117を閉じ、外部ポート115を開いた状態にする。そして、最初に被検出物質を含む被検液、及び必要に応じてアニオン吸着担体活性化液を、シリンジホルダを用いて、検出用カートリッジの被検液導入部1aを構成する貫通孔401、301、201に注液する。被検液の送液形態を、図3(a)に示す。被検液導入部1aの貫通孔401、301、201からシリンジにより注入された被検液は、溝111の液体流路を通り、基板12、13の孔を垂直方向上方に抜けて基板14の溝403からなる液体流路を流れて吸着担体22aに達する。ここで、被検液に含まれる被検出物質は吸着担体22aに吸着される。吸着担体22aを通過した被検液は、バルブ機構により開かれている外部ポート115から排出される。図3(b)は、シリンジを操作するのに使用されるシリンジホルダの一例を示す図である。ホルダは、クランプ15、16を有し、該クランプ15、16により検出用カートリッジ1を強く挟む構造となっている。クランプ16は、使用されない方の被検液導入部1aの貫通孔401を液密に塞ぐ構造を有する。また、クランプ16には、シリンジ17を嵌合させる開口を有する。
【0109】
電解質溶液室305には、外部ポート117から参照電極34を活性化するための電解質溶液が注入される。次いでバルブ機構51が切り換えられ、外部ポート115が閉じられ、外部ポート113が後述する溶離液供給部に対して開かれる。
【0110】
図3(c)に、溶離液の流れ径路を示す。溶離液供給部から送られる溶離液は、ポート113から溝403の液体流路を経て吸着担体22aに達し、該吸着担体22aを通過して溝112の液体流路に流れる。この間に、吸着担体22aに吸着されていた被検出物質が溶離液に溶出する。被検出物質を含む溶離液は、溝112の液体流路から基板13の溝303による液体流路に沿って、アニオン検出用電極31、32、33、34の上を流れる。被検出物質を含む溶離液が連続して電極上を流れることにより、電極には、被検出物質の濃度情報に関連する電気信号が発生する。
【0111】
図4に処理ユニット2の構成を示す。処理ユニット2は、ケーシング20内に収められた演算処理装置21と、溶離液供給部22とを備える。溶離液供給部22は、溶離液タンク54、55、56を収めた溶離液カセット50と、基板11の外部ポート113、114、115、116を切り換えるためのバルブ機構51と、ポンプ52とを備える。溶離液カセット50は、ケーシング20に嵌め込まれる構造であり、バルブ機構51とポンプ52は、図4では図示の便宜上ケーシング20の外に示してあるが、ケーシング20内に配置される。バルブ機構51は5方向バルブ53aと4方向バルブ53bとを含み、5方向バルブ53aは、ポンプ52及び4方向バルブ53bを介して溶液タンク54、55、56に接続されている。5方向バルブ53aは、図3に示す流出側の外部ポート115、116、117に接続されている。図3は、アニオン性物質検出用の流路を示すものであるが、カチオン性物質の検出のために、基板11には同様な3個の外部ポートが形成されており、5方向バルブ53aは、これらのポートの切り換えも行う。溶離液流入側のポート113は、アニオン性物質の検出用流路及びカチオン性物質の検出流路に共通にすることができる。
【0112】
4方向バルブ53bは、溶離液タンク54、55、56とポンプ52との間の接続を切り換えるためのものである。溶離液タンク54、55、56にはアニオン性物質吸着担体用の溶離液、カチオン性物質吸着担体用の溶離液(電解質溶液と兼用)、及び洗浄水がそれぞれ収められており、4方向バルブ53bによって、ポンプ52に送液される溶液が切り換えられる。
【0113】
溶離液タンクを収める溶離液カセット50は、処理ユニット2のケーシング20に対し着脱できる構造となっており、各タンクに貯蔵する溶液が不足した際には、溶液タンクを取り外し、溶液を補充することができる。溶離液タンク56について図に示すように、溶離液タンクと蓋57は着脱可能であり、ゴムリングにより溶液の漏れを完全にシールできる構造となっている。また蓋57の上部は、コネクタ構造により、カセット50の蓋58にワンタッチで結合できる構造となっている。
【0114】
さらに、処理ユニット2のケーシング20内に配置される演算処理装置21は、マイクロプロセッサ及び各種ドライバを搭載した電子基板66を備えており、処理ユニット2の上面67には、表示部と操作ボタンなどのユーザインタフェースが設けられている。処理ユニットの外面には、さらに検出用カートリッジ挿入ケース62が設けられる。この挿入ケース62は、開閉可能なヒンジ型の蓋として構成され、カートリッジが嵌め込まれるカートリッジホルダ61に対して開閉可能である。カートリッジホルダ61は、開閉可能な構造を有する。
【0115】
図4(a)は、カートリッジホルダ61が開いた状態で示す概略図、図4(b)はカートリッジホルダ61が閉じた状態を示す概略図である。カートリッジホルダ61は、図4(c)に示す構造を有する。カートリッジホルダ61は、上板613と、5方向バルブ53a及び各種送液チューブが接続される下板612とからなる下部構造と、該下部構造にフランジ部611によって可動的に結合された押さえ板614とからなる。図4(c)では、押さえ板614を裏向きにして示しており、押さえ板614の裏面には電極ピン615が設けられ、押さえ板614の表面の配線616を通じて、処理ユニットのマイクロプロセッサと電気信号の授受が行われる。電極ピン615は、検出用カートリッジ1の電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列に対応する配列である。
【0116】
また、押さえ板614の裏面には、検出用カートリッジ1の被検液導入部1aの貫通孔401に係合して液体の逆流を防ぐための弾性シール部材411と、電解質溶液室305に挿入されて参照電極活性化液を参照電極に向けて流入させるための突起141と、検出用カートリッジ1を上板613に押し付けて各種液体の漏れを防ぐための弾性突起412がそれぞれ設けられている。検出用カートリッジ1は、図4(a)に示すように、カートリッジホルダ61に挿入される。
【0117】
図3に示される例において、電極に面する溝304の深さは200μm、幅は3mmである。電極33と電極34の間の区間では、溝304は浅くなり、液絡133が形成されている。この液絡133の深さは100μm、幅は約100μmである。それ以外の流路の深さは500μm、幅は500μmである。被検液導入部1aの貫通孔401は、被検液注入時には注入に用いるシリンジの先端がちょうど収まる大きさであり、処理ユニットにセットした状態では塞がれるようになっているので、流路は構成しない。検出用カートリッジ1内の被検液導入部の貫通孔401及び廃液溜110、貫通孔202を除く流路の容積は、約1mlである。廃液タンク123を除いた流路1系統あたりの容積は45μlである。
【0118】
図5に示すカートリッジ挿入ケース62を開いて、想像線で示すように処理ユニットの側面から検出用カートリッジ1を取り付け又は取り外しすることができる。溶液タンク54、55、56が収められた溶離液タンクカセット50は、処理ユニット2のケーシング20に着脱可能であって、溶液の補充及び交換を容易に行うことができる。処理ユニット2は、電源コードを繋ぐ接続部64と、電源コードを繋がなくとも動作することができるバッテリー63と、外部と無線通信することができる通信機器65とを有する。
【0119】
処理ユニット2は、図6(a)に示すようにPDA機器500に接続したり、或いは、図6(b)に示すようにコンピュータ501に接続したりして、データの記録や転送等が容易に行えるようにすることができる。また、処理ユニット2は、モバイル用途に適するように、バッテリー駆動とすることができ、また、据え置きで測定する場合に適したAC電源による駆動とする両方に対応できる構成とすることができる。図7に、処理ユニット内の演算処理ユニットの構成をブロック図で示す。図に示すように、処理ユニット2は、マイクロコントローラから構成される制御部のほか、A/Dコンバータや各種のブロックに示される構成コンポーネントを含む。これらのコンポーネントは、いずれも周知のものであり、その詳細はこれ以上説明しない。
【0120】
図1ないし図7に示すケーシング用カートリッジ1及び処理ユニット2により、被検出物質の検出を行う場合の作動の流れを図8に示す。以下、図8に基づいて、例を挙げながら操作手順に従って説明する。
【0121】
第1の操作手順においては、検出用カートリッジ1は処理ユニット2に挿入されていず、シリンジホルダのクランプ15、16により保持されている。シリンジホルダは、検出用カートリッジ1が保持されたときに、被検液導入部1aの貫通孔401を塞ぐことができるように構成される。図3(b)に示す構成のシリンジホルダの代わりに、図2(a)に示す閉塞用の栓41又はバルブなどを利用してもよい。貫通孔401を塞ぐのは、ポート113から注入した溶離液が吸着担体22aを通過してポート115から流出するのを円滑にするためである。
【0122】
まず、アニオン性物質吸着担体22aの吸着能力を活性化するために、被検液導入部1aの貫通孔401からアニオン性物質吸着担体22a用の活性化液を注入する。活性化液の量はアニオン性物質吸着担体を濡らせばよく、50μlあれば充分である。次に、被検液導入部の貫通孔401から被検液10mlが注入され、アニオン性物質吸着担体22aを通過して外部ポート115から排出される。このとき、測定対象の砒素およびセレンは、アニオン性物質吸着担体22aに吸着により補足され、排出される溶液中には含まれない。続いて、参照電極34用の塩化銀形成のための塩化カリウム溶液を参照電極室に満たすため、該溶液が入ったパックを基板13の電解質溶液室305内に配置し、基板14に設けられた押下部すなわち可撓性薄板部402a(図1、図2)を押す。基板12には該容器に対応する位置に針状体203が設けられており、この針状体203によって溶液の入ったパックが破れ、ここから漏れ出た塩化カリウムは、参照電極34が位置する参照電極室に流れ込む。塩化カリウムは、参照電極の表面に銀/塩化銀電極を形成する。
【0123】
第2の操作手順においては、検出用カートリッジ1が処理ユニット2に挿入される。検出用カートリッジ1が処理ユニット2に挿入されると、バルブ機構51が操作されて、ポート117からアニオン用参照電極質に塩化カリウムを注入する。その後、溶離液注入用のポート113が開かれ、溶離液が注入される。同時に、被検液導入部1aの貫通孔401が塞がれ、作用極31、32、対極33、参照電極34に、それぞれの電極用の接続端子615が接続される。
【0124】
次いで、処理ユニット2上の測定開始ボタンを押し、測定をスタートさせると、砒素・セレン測定用溶離液(=1M硫酸;pH=約2)が被検液導入部のポート113から注入され、この溶離液は、吸着担体22aと通って流れ、さらに電極31、32、33、34に沿って流れる。貫通孔401が塞がれているので、溶離液が被検液導入部の方向に逆流することはない。電極31、32、33に面する流路は液絡133を介して参照電極34に面する流路に接続されているが、液絡133が非常に狭いため、参照電極室の塩化カリウム溶液が電極31、32、33の列に逆流することはない。この流路の最下流は、ポート116を介して処理ユニットの廃液溜に接続されている。
【0125】
なお、図3では簡略化のため、電極31、32、33に面する液体流路、液絡133、及び参照電極34に面する液体流路は、ポート116に連通するように示されているが、実際の配置は図1の通りであり、電極31、32、33に面する液体流路からポート116に至る流路の間に液絡133を介して参照電極34に面する流路が接続されている。このため、電極31、32、33に面する液体流路と参照電極34に面する流路とは、流体的に接続されているが、参照電極34側の塩化カリウム溶液が溶離液と交換することはない。
【0126】
電極に面する液体流路に溶離液を満たした状態で電気接続のチェックを行う。作用極31、32と対極33との間に電流又は電圧を印加して、作用極にかかる電圧又は電流をチェックすることにより、溶離液が流路に行きわたって電気接続が確保されているか、電極と端子との接続が確実になされているかをチェックする。電極に面する流路に溶離液を満たすために必要な溶液量は40μl程度である。
【0127】
次に、溶離液注入用ポート113から砒素・セレン測定用溶離液を一定の流速で流入させ、作用極31、32に砒素およびセレンを析出するための電位(−0.4V)を印加する。溶離液が吸着担体22aを通過すると吸着担体に捕捉されていた砒素およびセレンが離脱して溶離液中に移動し、溶離液の流れに伴って電極近傍に達する。電極近傍では砒素およびセレンの還元反応が起こり、作用極31、32上に析出する。溶離液の流入および析出電位の印加は捕捉された砒素およびセレンが脱着し尽くすまで行う。50μl/分の流速で300μl析出させれば砒素およびセレンの溶離は殆ど完了するので、析出時間は6分程度に設定する。操作としては、5分50秒まで流入を継続し、最後の10秒間は流路中の液体を静止するための時間とし、6分経過後に電位の挿引を開始する。挿引の条件は以下の通りである。
ASV測定条件
挿引の方式:LSV(電位の掃引の際に一定周波数を印加しない方式)
析出電位:-0.4V
析出時間:6分
掃引速度:0.2V/s
掃引開始電位:-0.4V
掃引終了電位:1.2V
【0128】
上記の操作を行った際の電位−電流曲線を記録すると、図9のようなグラフが得られる。ここで観察されるピークの面積は、析出時間中に作用電極上に析出した重金属が、電位の上昇によって再溶解する際に流れた電流であり、溶解した物質量に対応する。図9においては、砒素、セレンの濃度を代えて上記の測定を行った場合の電位−電流曲線を示している。
【0129】
砒素、セレンの測定操作は以上で完了する。続けて、カドミウム、鉛、水銀の測定に入る。その手順はほぼ砒素、セレンの場合と同様であるが、以下の点が異なる。すなわち、カチオンの測定においては、溶離液として塩化カリウムイオンが含まれていても測定が妨害されることはないので、参照電極のための溶液と溶離液を兼用することができる。溶離液と参照電極室のための溶液が共通となるため、参照電極に面する流路を他の電極に面する流路とは独立して設ける必要がなく、4個の電極35、36、37、38を連続して配置すればよい。図1において、カチオン側の電極として、4個の電極が一つの流路に面するように配置されている。この場合の溶離液の組成は、以下の通りである。
カチオン測定用溶離液:
0.4M 塩化カリウム + 10mM クエン酸 + 3.5mM エチレンジアミン(pH=約4)
【0130】
カチオン性物質吸着担体22bは活性化液が不要である。このため、上記の第1の操作手順に対応する操作手順においては、被検液の注入のみを行えばよい。
【0131】
これらの制御は、図8のソフトウエアフローチャートに示すように、処理ユニット2内の処理装置において、プログラム通りに実行される。
【0132】
以上の点を変更する以外はアニオン測定と同様にして測定を行ったときの電位−電流曲線を図10に示す。カドミウム、鉛、水銀の3種とも尖鋭なピークが得られ、各金属の濃度に応じてピーク面積が変化している様子が分かる。このようにして得られた検量線を基に定量分析を行うことができる。掃引の条件は下記の通りである。
ASV測定条件
挿引の方式:SWV(電位の掃引の際に一定周波数を印加する方式)
析出電位:-0.9V
析出時間:6分
掃引速度:0.255V/s
掃引開始電位:-0.9V
掃引終了電位:0.6V
周波数:100Hz
ステップ電位: 2.55mV
振幅:25.5mV
【0133】
砒素及びセレンの測定と、カドミウム・鉛・水銀測定を連続して行う場合には、シリンジホルダに検出用カートリッジをセットした状態で砒素・セレン用の被検液導入部1aの貫通孔401から吸着担体22aの活性化液を注入する。次いで、被検液を、砒素・セレン用の被検液導入部の貫通孔401とカドミウム・鉛・水銀用の被検液導入部1aの貫通孔401にそれぞれ10mlずつ注入する。その後、検出用カートリッジ1を処理ユニット2に挿入し、スタートボタンを押すと、まず砒素・セレン測定用の溶離液の送液、電気接続のチェック、2度目の溶離液の送液および電気化学測定が行われる。続いてカドミウム・鉛・水銀測定用の溶離液の送液、電気接続のチェック、2度目の溶離液の送液および電気化学的測定が行われる。カドミウム・鉛・水銀測定の終了後にはバルブ機構51、ポンプ52及びそれらを繋ぐ配管の洗浄のための洗浄水が、洗浄水タンク503から送水される。この系統の全体を図8(d)に示す。洗浄水は、バルブ機構51、ポンプ52及び配管内の液をちょうど押し流す量の洗浄水が、順に配管を切り換えながら洗浄水タンク503から送水される。バルブ機構51、ポンプ52及び配管を合わせた容量は約600μlであり、この洗浄水の送液によって検出用カートリッジ内部に溜まっていた溶離液約600μl分が押し流されて廃液溜110内に溜まる。
六価クロムの測定は、電気化学的測定をカソーディック・ストリッピング・ボルタンメトリ法で行う以外は、砒素、セレンの場合と同様に行う。六価クロムの電気化学的測定方式は、砒素・セレンの電気化学測定方式と異なるため、六価クロムと砒素・セレンの測定は同時に行わず、それぞれ個別の検出用カートリッジを用いて行う。しかしながら、六価クロムの測定に引き続き、カドミウム・鉛・水銀測定は、同一の検出用カートリッジにて連続的に行うことができる。
【0134】
図11は、本発明のカートリッジにおける濃縮部の第二の実施形態を示す概略断面図である。この実施形態では、被検液は、加熱蒸発により濃縮される。カートリッジに形成された液体流路500に面してペルチエ素子501のような発熱素子が配置され、この発熱素子501に導線502により電流が供給される。発熱素子501に向き合った液体流路500の側壁には蒸気透過性材料の膜503が配置されており、加熱により生じた蒸気がこの膜503から流路500外に抜けることにより、被検液が濃縮される。
【0135】
図12に被検液濃縮部の別の構成を示す。この実施形態は、多孔質膜を使用する例である。被検液流路600は、被検液入口にバルブ601が配置され、被検液出口にバルブ602が配置されている。該被検液流路600には、該流路600を濃縮室600aと排液室600bとに分離するように、多孔質膜603が配置される。
【0136】
この構成においては、出口バルブ602を閉じた状態で入口バルブ601から被検液を導入し、濃縮室600aに適当な圧力を印加することにより、濃縮室600a内の被検液を濃縮することができる。濃縮後には、出口バルブ602を開いて被検液を電極構成に流すことができる。この構成は、多孔質膜603の面積を任意に大きくすることにより、濃縮時間を短縮できるという利点がある。
【0137】
図13a、図13b、図13cは、上述した検出用カートリッジ1について使用することができる携帯型分析ユニットを示す斜視図である。図13aに示すように、分析ユニットは全体として長方体形状の分析器本体すなわちハウジング700を備え、この分析器本体700は、上下に重ねられた本体上部701と本体下部702とにより構成される。本体700には、携帯に便利なように、ハンドル703が設けられる。本体上部701は、上面が開放された形状であり、この上面には蓋704が固定される。
【0138】
図13bは、蓋704を取り外して本体上部701の内部を示すものである。本体上部701内には、長手方向の一側部に沿って仕切り壁701aにより廃液タンク室701bが形成され、この廃液タンク室701bに廃液タンク705が配置されている。廃液タンク705は、本体上部701に対し、取外し可能に固定される。
【0139】
仕切り壁701aを挟んで廃液タンク室701bの反対側は各種の機能部品を収める室701cであり、この室701cの一方の長手方向端部から中央部付近までにわたって、複数の試薬タンク706が並列配置されている。本実施形態においては、5個の試薬タンクが配置されるが、図14においては、試薬タンク706の下方の配置を示すために、両端の試薬タンク706のみを示してある。また、室701cの長手方向端部に隣接する試薬タンク706は、その内部が分かるように上方を切り欠いて示してある。
【0140】
試薬タンク706の下方には、複数の切換バルブからなる切換バルブ機構707が配置されている。この切換バルブ機構707の下側に、タンク切換配管プレート708が配置される。室701cには、さらにカートリッジ取付部として、カートリッジホルダ709が配置され、該カートリッジホルダ709の横に送液ポンプ710が配置される。カートリッジホルダ709の下側には、後述する吐出先切換バルブ機構711及び吐出先切換配管プレートが配置される。
【0141】
図13cは、本体下部702の内部を示すものである。本体下部702内には、長手方向一側部に沿って電池ボックス712が配置され、その横に必要な制御回路及びマイクロプロセッサ等の演算処理装置を組み込んだ電子基板713が配置される。
【0142】
図13aに戻ると、本体上部701の上面に取り付けられる蓋704には、試薬タンク706の取付位置に対応して、試薬タンク出し入れのための開閉蓋714が設けられ、カートリッジホルダ709の取付位置に対応してカートリッジのための開閉蓋714aが設けられる。
【0143】
図14a、図14b(i)(ii)(iii)及び図14cは、電気化学分析に使用するための検出用カートリッジを示すもので、図1、図2(a)(b)(c)及び図3に対応する図であり、対応する部分は同一の符号を付して示してある。この例においては、カートリッジの下面に、ポート113、114、115に加えてポート116、117が形成されており、ポート116が廃液タンク705に接続され、ポート117が参照電極34の溶液供給用の試薬タンクに接続されるように構成されている。また、ポート114、115間の流路はカートリッジ外部ではなく、カートリッジ内に形成されている。
【0144】
図46は電気化学分析に使用するための検出用カートリッジの他の例を示すものである。電気化学分析用の検出用カートリッジにおいては、樹脂製の第1シートと第2シートを積層してなり、前記第1シートに電極を収容する凹部が形成され、前記凹部には電極が配置され、前記第2シートには前記電極に対応する位置に試薬を流通させる液体流路が形成され、前記第1シートと第2シートの間には、前記電極に対応する位置に一定の面積の孔を設けた絶縁シートが配置され、かつ、前記電極とは離れた位置に貯留部が形成され、前記第1シートと第2シートの相対する面の反対面の一方又は両方に第3シートが配置され、前記第3シートには前記貯留部に接続する流路を構成する溝が設けられる。図1および図14に示すカートリッジにおいては、前記第1シート(基板12)と第2シート(基板13)が積層され、積層面と反対面の両方に第3シート(基板11および14)が設けられているが、この例では、片面(図46中の上面)のみに第3シートが積層される。また、測定系は1系統であり、アニオン測定、カチオン測定のいずれにも対応可能に構成されている。被検液はカートリッジ外の専用ホルダー(図示せず)から導入される。
【0145】
図15aは、クロマトグラフィー分析用のカートリッジにおける流体の流れを示す図3aに対応する図であり、図15bは図3cに対応する図である。流路303がクロマトグラフィー分析のためのカラムを構成する。カートリッジは、少なくともカラム303の部分が透明プラスチック材料により形成され、後述するように、この部分に検出用の光を透過させることにより、分析が行われる。
【0146】
図16及び図17を参照すると、タンク切換配管プレート708の上面には、複数個の試薬タンク嵌合部715が並列して設けられている。図16では、一つの嵌合部715に試薬タンク706を取り付けた状態が示されている。図17は、この取り付け状態を示す断面図である。嵌合部715は、プレート708の上面に形成された円形環状の突起部715aと、該突起部715aの円形中心において上向きに突出する試薬タンク開口用ピン715bとを有し、該ピン715bの周りには、仮想円弧に沿った4点においてプレート708の上面に開口するスリット715cが形成されている。突起部715aの内周に隣接して、環状のシール溝715dが形成され、このシール溝715dにO-リング715eが配置されている。
【0147】
一方、試薬タンク706の一端部下側には下向きの突出部706aが形成され、この突出部706aの下向き面に、プレート708の環状突起715aに対応する環状溝706bが形成されている。また、試薬タンク706には、プレート708のスリット715cに対応する位置に、試薬吐出孔706cが形成されている。この吐出孔706cには、ばね706dにより閉方向に付勢されたバルブ706eが設けられている。試薬タンク706の上面には通気孔706fが形成されており、この通気孔706fは、気体透過性であるが液体は通さない材料によりシールされている。
【0148】
以上のように構成された試薬タンク706は、環状溝706bをプレート708の環状突起部715aに嵌合させることにより所定位置に取り付けられる。このとき、プレート708のピン715bが試薬タンク706のバルブ706eを押し上げて、試薬吐出孔706cを開き、タンク706の内部をスリット715cに連通させる。スリット715cは、プレート708内に形成された流路に連通している。試薬タンク706とプレート708との間の液漏れは、O−リング715eにより防止される。
【0149】
図18を参照すると、この図にはタンク切換配管プレート708に形成される試薬流路708a及びポンプ吸入流路708bの詳細が、切換バルブ707との関係で示されている。試薬流路708aの各々は、一端が嵌合部715においてプレート708に形成されたスリット715cに接続され、他端が切換バルブ707の下方においてプレート708の上面に開口し、該切換バルブ707に接続されている。図19に、流路708aと切換バルブ707の流路707aとの接続関係の一例を示す。
【0150】
図18には、さらに、送液ポンプ710が示されている。送液ポンプ710は、図14においては本体上部701の長手方向に配置されるように示されているが、図18では、図示の便宜上、図14に示される方位から90°回転した方位で示してある。タンク切換配管プレート708には、ポンプ吸入流路708bが形成されている。この流路708bは、切換バルブ707に一端のポートP1が接続され、他端が送液ポンプ710の吸入口に接続されている。この接続は、図20に示すように、チューブによって行われる。
【0151】
送液ポンプ710は、小型で、マイクロリットルのオーダーの液体を脈動なく安定して送り出すことができるものが好ましく、携帯型分析ユニットに用いるものとしては、消費電力が小さいことが必要である。流速は、5〜100マイクロリットル/分であればよく、吐出圧力は、0.01〜10MPaでよい。この特性を備えたポンプとしては、ユニフロー社製の「ペンシルポンプ」及びサイベックス社製の「コンフルエントPDP」のようなシリンジポンプがある。
【0152】
再び図18を参照すると、吐出先切換配管プレート716が示されている。このプレート716は、図13bにおいてはカートリッジホルダ709の下側において、吐出先切換バルブ711の上方に配置されるものである。図18に示すように、吐出先切換配管プレート716には、ポンプ吐出流路716aが形成されている。図20に示すように、流路716aの一端は、チューブによってポンプ710の吐出口に接続され、他端は吐出先切換バルブ711に接続される。
【0153】
次に、カートリッジホルダ709の詳細を示す図21を参照する。このカートリッジホルダ709は、基本的な構造は図4(a)に示すカートリッジホルダと同じであり、フンジにより開閉自在に結合された上板709aと下板709bを有する。下板709bに、検出用カートリッジを嵌め込むための凹部709cが形成されている。上板709aには、図4(a)に示すカートリッジホルダの上板と同様に、カートリッジの電極に接触する電極ピンと配線が設けられるが、図21では、これらは省略してある。カートリッジホルダ709の上板709aの裏側には弾性材(図示せず)が配置される。この弾性材は、上板709aが閉じられた位置で検出用カートリッジの厚さのばらつきを吸収し、液体の漏れを防止する。
【0154】
カートリッジホルダ709の下板に形成される凹部709cの底面には、この位置に嵌め込まれるカートリッジの下面に形成される各種の流体ポートに対応する位置に流体ポートが形成される。図22は、例として図13から図15までに図示して先に説明した検出用カートリッジ1の下面に形成されるポートを示すもので、これらのポートには、それぞれ、G’、F’’、F’’’、H’、I’、K’、L’の符号を付してある。ポートH’及びL’が図3のポート113に対応し、ポートG’及びK’が図3のポート114に対応する。ポートF’’及びF’’’が廃液ポート116となる。ポートI’は検出用カートリッジ1の参照極に通じるポート117である。
【0155】
図18に戻ると、吐出先切換配管プレート716に形成される流路及びポートが示されている。図18において、プレート716の上面には、図22の各ポートに対応するポートが開口しており、これらのポートには、図22のポートと同じ符号を付して対応関係を示してある。ポートJ’は、この例では使用されていず、したがって、図22のカートリッジ1には対応するポートはない。
【0156】
吐出先切換配管プレート716の下面には、ポートG、F、H、I、J、K、L、P2が開口しており、これらのポートは、図20に一部が示される切換バルブ711により、選択的にポンプ710に接続される。図18に示されるように、プレート716の下面には、ポンプ吐出流路716aに通じるポートP2が開口しており、このポートP2は図20に示すようにポンプ710に接続される。送液ポンプ710とタンク切換配管プレート708及び吐出先配管プレート716との間の切換バルブ機構707、711による切換接続関係を図23に示す。図23では、試薬タンク706の一つに洗浄水を入れたものを使用している。
【0157】
図24は、吐出先切換配管プレート716の構造を分解斜視図で示すものである。プレート716は、プラスチック材料の成形により形成される上プレート部材720と下プレート部材721とを積層した構造である。流路716aその他の流路は、下プレート部材721の上面に成形により形成された溝により構成される。同時に、下面に開口するポートも成形時に形成される。上プレート部材720には、必要な個所に上面に開口するポートが、厚さ方向に貫通して形成される。これらの上プレート部材720及び下プレート部材721を貼り合わせることにより、吐出先切換配管プレート716が形成される。図18を参照すると、タンク切換配管プレート708も、プラスチック材料の成形により形成された上プレート部材722と下プレート部材723を積層した構造であり、流路は下プレート部材723の上面に溝として成形され、上プレート部材722には上面に開口するポート及びスリット715c等がプレート部材の成形時に形成される。
【0158】
図25及び図26に、廃液タンク705の接続を示す。図に示すように、廃液タンク705の一端に廃液注入口705aが形成される。この廃液注入口705aには例えばテフロン(登録商標)製のシール部材705bが配置されている。一方、廃液タンク室701bの底板に形成された突起部に、中空針730を備えた廃液排出部材731が固定されており、この部材731の中空針730に通じる流路は、チューブを介して吐出先切換配管プレート716の下面に開口したポートに接続されている。廃液タンク705は、部材731の中空針730をシール部材705bに貫通させて所定位置に取り付けられる。
【0159】
以上の実施形態では、タンク切換配管プレート708と吐出先切換配管プレート716は別の部材により形成されているが、これらは一体の成形品とすることもできる。
【0160】
図13aには示されていないが、分析ユニットは、本体700の蓋704上に操作に必要なスイッチや表示部が設けられ、これらは適宜、電子基板713に接続される。
【0161】
図27は、クロマトグラフ分析に適用されるシステムの一例を示すものである。この場合、分析ユニットの試薬タンク706には、それぞれ、洗浄水、溶離液及び活性化液が収められる。各々の試薬タンク706は、切換バルブ707−1、707−2、707−3を介して送液ポンプ710に切換接続される。検出用カートリッジ1−1は、試料貯留用フルタを有する貯留部21−1とクロマトグラフ用カラム21−2とを有する。貯留部21−1は、カートリッジ1−1の下面に開口する液入口ポート21−3及び液出口ポート21−4に流路により接続されている。カラム21−2は、液入口ポート21−5と液出口ポート21−6を有する。
【0162】
分析ユニット側には、送液ポンプ710の吐出口を各ポートに切換接続する切換バルブ711−1、711−2、711−3、711−4、711−5が設けられる。図27において、各バルブに付されたローマ字符号A、B、C、D、Eは、それぞれ図18及び図23において各バルブに付された符号に対応している。
【0163】
このクロマトグラフ分析における動作は、次の通りである。
(1)分析ユニットセット前に、カートリッジにサンプルを通し、濃縮部のフルターを通過させる(ターゲット物質がフィルターにトラップされる)。
(2)分析ユニットにカートリッジを設置する。
(3)貯留用フルターに活性化液を送液する(本測定においてカラムに気泡が混入するのを防ぐため、フルタの気泡を予め追い出しておく)。
(4)カラムに溶離液を送液する。
(5)本測定を行う。溶離液を、貯留用フルター→分析ユニット内流路→カラム→分析ユニット内の光学検出部分析ユニット→廃液タンクへと通過させる。
(6)光学検出部で検出した信号から、ターゲット物質の同定、定量化を行う。
(7)流路を洗浄する。
【0164】
図28(a)(b)及び図29(a)(b)に、分析ユニットを濃度測定のためのカートリッジとともに使用した場合の作動の時間的な流れを表の形態で示す。ここで、系統1は、図1に示される2つの電極列のうちの一方の電極列、例えば電極35、36、37、38の列を表し、系統2は、他方の電極列、例えば電極31、32、33、34の列を表す。この図においても、バルブに付されたローマ字符号は、図23における符号に対応する。なお、ポンプのオートゼロとは、送液ポンプが自動的にゼロ位置にセットされるという意味である。
【0165】
図30は、分析ユニットをクロマトグラフ分析用のカートリッジとともに使用した場合の時間的な流れを示す。この図において、ローマ字符号は、図27中のバルブに付された符号に対応する。「(カ)」は、カートリッジ内を液体が通過することを意味する。
【0166】
図31は、液体クロマトグラフ分析に使用される本発明の一実施形態による分析装置を示す外観図である。この分析装置は、ほぼ長方体形状の本体すなわちハウジング801を備える分析ユニット800を有する。ハウジング801の上面には開閉蓋802により開閉されるカートリッジ挿入用開口803が形成され、この開口803を通して液体クロマトグラフ分析用のカートリッジ804が挿入される。図31に示す分析ユニット800のハウジング801も、図13a、図13b、図13cについて説明した分析ユニットのハウジング700と同様に本体上部801aと本体下部801bとからなる。本体下部801bは、図13cに示すハウジング700の本体下部702と同様の構成であり、図示してはいないが、図13cに示すものと同様な電池ボックス及び電子基板を備える。図31には、この電池ボックスにACアダプタを介して接続される電気的接続プラグ805及びパーソナルコンピュータへの接続プラグ806が示されている。
【0167】
図32は、液体クロマトグラフ分析用のカートリッジ810の概略断面図である。カートリッジ810は、4枚の成形プラスチック板811、812、813、814を重ね合わせた積層体構造であり、少なくとも上下両側のプラスチック板811、814は透明プラスチック材料により構成される。
【0168】
下側のプラスチック板814は、4つのポート814a、814b、814c、814dを有する。ポート814aは試薬注入用ポートであり、ポート814bは、被検液注入用のポートとして機能する。ポート814cは被検液循環用ポートであり、ポート814dは廃液ポートである。プラスチック板812、813の界面には、被検物質の一時的貯留部となるフルタ815を収容するフルタ用凹部816が形成されており、ポート814bからフルタ用凹部816を通る流路817が2枚のプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成されている。また、ポート814aから2枚のプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して、液体流通用流路818が形成され、これら流路817、818は、カートリッジ810の内部において上部プラスチック板811の内面に形成された溝からなる流路819により互いに接続されている。
【0169】
ポート814cは、プラスチック板813を厚さ方向に貫通する液体流路820に接続されており、この液体流路820は、プラスチック板812、813の界面においてプラスチック板812に形成された溝からなる液体クロマトグラフ分析用カラム821の1端に接続されている。カラム821の他端は、プラスチック板813を厚さ方向に貫通する液体流路822を通って、液体流路823の一端に接続されている。液体流路823は、プラスチック板813、814間の界面においてプラスチック板813に形成された溝からなる。
【0170】
液体流路823は、プラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成された液体流路からなる吸光度測定セル824の一端に連通している。吸光度測定セル824の他端は、プラスチック板811、812の界面においてプラスチック板812に形成された溝からなる液体流路825及びプラスチック板812、813を厚さ方向に貫通して形成された液体流路826を介して廃液ポート814dに接続されている。
【0171】
図33は、カートリッジ810の各プラスチック板811、812、813、814の上下両面におけるポート、溝及び凹部の配列を示すもので、図33(a)は下側の面を示し、前記33(b)は上側の面を示す。なお、図33(b)は(a)に対して上下反転させた関係で示してあり、(a)における下側の縁が(b)における上側の縁に対応する。
【0172】
図33(a)を参照すると、最上部のプラスチック板811は、プラスチック板812との界面に液体流路819を構成する溝を有する。外側の表面は、図33(b)から分かるように平滑のままである。先に述べたように、プラスチック板811は、透明プラスチック材料により形成される。
【0173】
2番目のプラスチック板812においては、フルタ用凹部816及び流路818、826が図33(a)に示すように配列される。カラム821は螺旋状の流路として形成され、螺旋の中心に吸光度測定セル824が形成される。プラスチック板811との界面には吸光度測定用セル824を流路826に接続するための流路825を構成する溝が形成される。プラスチック板813、814に形成される各ポート及び液体流路の配置は、それぞれのポート及び流路に図32におけると同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。プラスチック板814も透明プラスチック材料により形成される。他のプラスチック板812、813は、必ずしも透明である必要はないが、透明であってもよい。
【0174】
図34(a)(b)は、それぞれ図33(a)におけるa−a線及びb−b線に沿ってとった断面図で、各プラスチック板を離して示している。
【0175】
図35に、ハウジング801の本体上部801aの内部を平面図により示す。本体上部801aの内部には、一端側から本体上部801aの長さ方向中央部にわたり、送液ポンプ830、光源831、廃液タンク832が並列配置されている。送液ポンプ830は、先に述べた実施形態に関連して図14に示されている送液ポンプ710と同様の構成である。廃液タンク832も先に述べた実施形態における廃液タンク705と同様の構成である。
【0176】
本実施形態においては、液体クロマトグラフ分析のために上述の光源831が設けられる。光源831は、波長200〜1100nmの光を射出でき、本体上部801aのスペースに収まるものであれば、どのようなものでもよい。波長は被検出物質により変化させる。光源831として使用するのに適当なものには、Sentronic GmbH 社製のFiberLight光源(重水素ランプ−タングステンランプ併用型)がある。光源831の光射出口には、射出光を平行光にするためのコリメートレンズ833が配置され、このコリメートレンズ833の射出側に出射光を所定の径に絞るためのスリットを有するスリット板834が固定され、その外側にカートリッジ抑えプレート835が設けられる。
【0177】
本体上部801aには、さらに、先の実施形態において使用した切換バルブ707と同様に、A、B、C、D、Eで表示される5個の切換バルブ836を有する吐出先切換バルブプレート837が、該本体上部801aに固定した関係で配置される。この吐出先切換バルブプレート837は垂直に配置される。カートリッジ810は、カートリッジ抑えプレート835と吐出先切換バルブプレート837との間に垂直に挿入される。
【0178】
カートリッジ810の挿入を容易にするために、カートリッジ抑えプレート835は、スリット板834、コリメートレンズ833及び光源831とともに、吐出先切換バルブプレート837から離れる方向に、すなわち図35において上方に向けて、図示位置から後退させることができる。詳細に述べると、光源831と、コリメートレンズ833、スリット板834及びカートリッジ抑えプレート835は、一体に移動可能なように、ベース板838上に取り付けられ、該ベース板838は、図示しないレールにより、図35に矢印で示す方向に可動に支持される。ベース板838の端部に配置されたコイルばね839が、該ベース板838を吐出先切換プレート837の方向に付勢する。したがって、光源831と、コリメートレンズ833、スリット板834及びカートリッジ抑えプレート835を支持するベースプレート838をコイルばね839の付勢力に抗して移動させ、カートリッジ抑えプレート835と吐出先切換バルブプレート837との間の間隔を広げて、カートリッジ810を挿入することができる。
【0179】
図35に示すように、カートリッジ810が挿入される位置には、該カートリッジ810を案内して位置決めするためのガイド部材840が吐出先切換バルブプレート837に固定して設けられる。図36は、吐出先切換バルブプレート837とガイド部材840の構成をカートリッジ810との関係で分かり易く示す斜視図である。ガイド部材840はコ字型の案内用切り欠き840aを有し、この切り欠き840aにカートリッジ810が嵌ることによりカートリッジ810の位置決めが行われる。吐出先切換バルブプレート837は、カートリッジ810の方向に突出する突出部837aを有し、カートリッジ810が所定位置に位置決めされたとき、この突出部837aがカートリッジ810のポート814bに嵌合する。
【0180】
再び図35を参照すると、吐出先切換バルブプレート837には、光源831とは反対側において、コリメートレンズ833及びスリット板834のスリットに対し光軸方向に整合した位置に、第2のスリット板841及び合焦レンズ842が配置され、該プレート837に固定されている。図示していないが、吐出先切換バルブプレート837には、スリット板834のスリット及びカートリッジ抑え板835を通り、カートリッジ810の測定セル824を通過した光を第2のスリット板841に通す開口が形成されている。さらに、分析手段としての分光器843が、合焦レンズ843からの光を受けるように本体上部801a内に配置されている。分光器843としては、オーシャンオプティクス社製のSASシリーズOEMモジュール(1024エレメントCMOS搭載型)を使用することができる。この分光器は、200〜700の波長域で分析能力を有する。
【0181】
図35に示すように、本体上部801aの底板部には、符号F、G、Hが付された3個の試薬タンク取付部844が設けられている。この試薬タンク取付部844は、図16に示された嵌合部715と同様な構造である。本体上部801aの底板の上側には、図37に示す構成のタンク切換バルブプレート845が配置される。タンク切換バルブプレート845は、下側の面に符号F、G、Hで示す3個の切換バルブ846が取り付けられ、バルブFは、一方では配管847を介して符号Fで示される試薬タンク取付部844に、他方では配管848を介して送液ポンプ830に接続されている。切換バルブ846のうちのバルブG及びHは、それぞれ配管849、850を介して符号G及びHで示される試薬タンク取付部844に接続されている。
【0182】
ここで図32に戻ると、切換バルブ846のうちの符号F、G、Hで示すものにそれぞれ接続される試薬タンクとして、活性化液タンク851、溶離液タンク852、洗浄水タンク853が示されている。これらタンクは、先に述べた実施形態における試薬タンク706と同様の構成とすることができ、試薬タンク取付部844に取り付けられる。
【0183】
図32には、さらに、吐出先切換バルブプレート837に配置される5個の切換バルブ836の接続関係が示されている。送液ポンプ830は、切換バルブ836のうちのバルブBに接続され、該バルブBは、さらにカートリッジ810のポート814aに接続される。バルブBは、他の2つのバルブA、Dにも通じており、バルブAは、一方ではカートリッジ810のポート814bに接続され、他方ではバルブEを介してポート814cに接続される。バルブDは直接ポート814cに接続される。バルブCは、ポート814aと廃液タンク832との間を接続する。これらの接続は、先に述べた実施形態におけると同様に、切換プレート837及び845に溝として形成された流路及び適当な配管によって行われる。カートリッジ810が所定の位置に位置決めされたとき、カートリッジ810の各ポートと吐出先切換バルブプレート837の流路との接続が行われるように、カートリッジ810の各ポートと切換プレート837の流路とが位置決めされている。図36に示す突出部837aは、切換バルブ836のバルブAとカートリッジ810のポート814bとを接続するもので、内部にはそのための液体流路を有する。
【0184】
次に、この実施形態の作動を説明する。先ず、カートリッジ810を準備し、カートリッジ810にポート814bから被検液を定量注入する。注入量は測定対象となる物質の濃度に応じて適宜定める。これにより、カートリッジ810のフルタ815に被検出物質が貯留される。被検出物質以外の液体は、ポート814aから排出される。ここで、装置の電源を入れ、測定プログラムを立ち上げる。測定プログラムは、図38に示す作動フローを実行するものである。図39は、作動の時系列的な流れを示すものである。図38及び図39を参照すると、被検液が注入されたカートリッジ810は、分析ユニット800に挿入される。次に、吐出先切換バルブ836のバルブB及びCを開き、ポンプ830を作動させる。これは、吐出先切換バルブプレート837内の流路の空吐出を行うための操作である。次いで、タンク切換バルブ846のバルブFを開にして送液ポンプ830に所定量の活性化液を吸入する。活性化液は、フルタ815に貯留されている被検出物質がフルタ815から溶離し易くするものである。その後で、バルブFを閉にし、バルブA、Cを開き、送液ポンプ830を作動させ、活性化液をカートリッジ810のフルタ815に送る。活性化液は、ポンプ830からバルブAを通り、ポート814bを経てフルタ815に入り、流路817、819、818、ポート814a及びバルブCを経て廃液タンク832に流れる。
【0185】
次に、バルブGを開いて送液ポンプ830に所定量の溶離液を吸入し、バルブGを閉じる。ここで、バルブDを開いてポンプ830を作動させ、ポート814cを経てカラム821に溶離液を送り込む。これは、カラム821の前処理である。その後で、バルブDを閉じ、バルブGを開いて送液ポンプ830に所定量の溶離液を吸入し、次いでバルブB、Eを開いて送液ポンプ830を作動させる。溶離液は、バルブBからポート814aを経て、流路818、819、817からフルタ815に入り、フルタ815に貯留されていた被検出物質を溶離させ、ポート814b及びバルブEを経て、ポート814c、流路820の径路をたどり、カラム821に達する。さらに、溶離液は、カラム821から流路822、823を通り、吸光度測定セル824を経て、流路825、826及びポート814dを通り、廃液タンク832に排出される。この過程で光源831がONにされ(図38)、セル824を通る液体の吸光度が分光器843によって測定される。
【0186】
フルタ815及びカラム821には、被検出物質と化学的に相互作用する官能基が含まれており、フルタ815においては、その官能基が被検出物質をトラップする作用を果たす。溶離液は、このトラップされた被検出物質を溶離させてカラム821まで運ぶように作用する。カラムでは、そこに含まれる官能基の粒子が細かく、またカラムの流路も長い。溶離液に含まれる被検出物質は、カラムにおける官能基分子と化学的に相互作用しながら該カラムを通過するが、この相互作用の強さは、被検出物質の分子の種類によって異なる。その結果、カラム821を溶離液が通過する間に被検出物質がカラムから受ける吸着及び脱着の速度は、該物質の種類によって異なるものとなる。したがって、分光器843により吸光度の変化として検出されるタイミングは、被検出物質により異なるものとなる。これによって、溶離液に含まれている物質を検出することができる。
【0187】
検出結果は、分析ユニットの表面に適宜設けることができる表示窓又は分析ユニットに接続されるコンピュータの表示部に表示することができる。
【0188】
その後、分析ユニットの洗浄を行う。この洗浄は、例えば次の手順で行う。すなわち、先ず切換バルブ846のバルブHを開いた後にポンプ830を作動させることにより、所定量の洗浄液を該ポンプ830に吸引し、次いでバルブHを閉じ、バルブA、Cを開いてポンプ830を作動させてフルタ815の洗浄を行う。次にバルブA、Cを閉じ、バルブDを開いてポンプ830を作動させ、カラム821に洗浄液を通す。さらに、バルブDを閉じ、バルブB、Eを開いてポンプ830を作動させ、フルタ815及びカラム821の両方に洗浄液を通す。
【0189】
次に、本発明をイムノアッセイに適用した実施形態について説明する。図41は、イムノアッセイの分析原理を示すもので、図41aは競合法の一例を示し、図41bは競合法の他の例を示す。図41cは、非競合法の例である。
【0190】
図41aの例においては、段階Iは検出用カートリッジの外で行われる処理であって、抗体に標識が付着した標識抗体を含む試薬にサンプル抗原が加えられ、前段階反応が行われる。この前段階反応により、試薬に含まれる標識抗体の一部がサンプル抗原と反応し、サンプル抗原が標識抗体の一部と結合する。標識抗体の残りは未反応のままである。この状態で、試薬は貯留部に注入され、段階IIの処理が行われる。貯留部には固相化抗原が予め付着させられており、段階IIにおいて、試薬内の未反応抗体は、この固相化抗原に捕捉される。試薬は、固相化抗原に捕捉された標識抗体を貯留部に残したまま、貯留部から排出される。ここで、段階IIIにおいて、貯留部に標識抗体との反応のための基質が貯留部に送られて、基質と標識抗体との間で反応が進行する。反応生成物は、検出用カートリッジ内を次の検出機構に送られて検出される。このように、イムノアッセイを本発明に適用する場合には、貯留部が検出機構の作用の一部を達成することになる。
【0191】
図41bの例においては、段階Iにおける前処理は図41aの例におけると同じであるが、図41aの場合と異なり、貯留部には固相化抗体が予め付着している。段階Iにおける前段階反応を経た試薬は、段階IIにおいて検出用カートリッジの貯留部に注入され、ここで、段階Iにおいてサンプル抗原と反応した標識抗体のみが貯留部の抗体により捕捉される。このときの捕捉は、貯留部に付着していた抗体と試薬により運ばれた標識抗体とが、間に抗原を挟む状態になるので、サンドイッチ法とも呼ばれる。次いで、段階IIIにおいて、貯留部に反応のための基質が送液され、反応が進行し、反応性生物は検出機構により検出される。
【0192】
図41cの例においては、貯留部に予め固相化抗体が付着しており、段階Iでは、サンプル抗原が貯留部に送られて一部の固相化抗体と結合し、捕捉される。次に、段階IIにおいて、貯留部に標識抗体を含む試薬が送液され、図41bの段階IIにおけると同様にして標識抗体が捕捉され、段階IIIにおいて、貯留部に反応のための基質が送液され、貯留部に捕捉されている標識抗体との間で反応が進行する。その後は、先に述べた図41a及び図41bの場合と同じである。
【0193】
本発明は、上述した方法のいずれにも、或いは、上記以外にも、公知のイムノアッセイ法のいずれにも適用することができる。イムノアッセイについての文献は数多く存在するが、その数例を挙げると、例えば、日本国特開2000−155122、特開2003−987171などがある。図41においては、酵素標識の例を示したが、他の標識も同様の手法で使用することができる。
【0194】
イムノアッセイに本発明を適用する場合には、反応生成物の検出は、電気化学分析又は光学分析により行うことができる。既に述べたように、酸化還元酵素により生成された過酸化水素を検出する場合には、電気化学分析の手法を用いる。また、検出対象によっては光学分析を用いる。図42は、イムノアッセイにおいて電気化学分析による検出を行う場合の検出用カートリッジ1001の例を示す底面図である。貯留部1002には、液導入口1003からの流路1004が連通しており、貯留部1002の液体出口は流路1005を介して電極室1006に接続されている。電極室1006には、図示していないが、図1に示すのと同様に、作用極、対極及び参照極が配置される。この検出用カートリッジ1001の基本的な構成は、図1に示すものと同じである。したがって、検出用カートリッジ1001の底面には、処理ユニットの配管と連通するための外部ポート1007、1008、1009、1010が形成される。処理ユニットは、濃度検出装置におけるものと同様のものを使用できる。図43は、イムノアッセイにおいて光学分析に適用される検出用カートリッジの断面を示す。この図は、クロマトグラフィーの例における図32に対応する。したがって、対応する部分には同一の符号を付してある。図44の例が図32の例と異なるのは、図32における流路824がなく、ポート814cが直接、流路823に通じていることのみである。処理ユニットに配置される試薬タンク851、852、853のそれぞれには、洗浄バッファ、溶離バッファ、及びCBB溶液が入れられる。
【0195】
図47は、3枚のプラスチック基板により構成された検出用カートリッジを示すもので、図1に対応する分解図である。カートリッジ1000は、プラスチック材料製の基板1011、1012、1013からなり、これら基板は間に粘着シート1014を挟んで互いに接合される。基板1011、1012には貯留部を形成する凹部1015a及び開口1015bがそれぞれ形成される。また、基板1011には、参照極R、3個の作用極Sが配置され、粘着シート1014には、それらに対応する位置に小孔104aが形成される。また、本例においては、検出用カートリッジ1000に廃液溜が設けられており、基板1011、1013にはそのための凹部1016が、中間の基板1012には2つの凹部1016をつなぐ開口1017が形成されている。基板1012に形成された溝1018は、参照極Rに対応する参照極室であり、溝1019は作用極Sに対応する作用極室である。基板1012と基板1013には、貯留部と電極室及び廃液溜を接続する流路のための溝1020、1021、1022が形成されている。その他の点は、先に述べた実施形態の構成と同じである。
【0196】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0197】
(物質濃度検出用カートリッジの製造方法)
工程1:射出成型
1)成型品の作製
射出成型機(MEIKI社製)を用いて基板11〜14を成型した。成型条件は、シリンダー温度280℃、定量部温度が290℃、金型温度60℃である。成型品からランナーを切り離し、所定の成型品を得た。
2)成型品への部品取り付け
基板12の成型品には、作用極および対極として働くカーボン電極および銀ペースト電極を設置した。これらは、設置予定部分に予め接着剤を塗布し、その上から電極を置くことで固定化した。また基板13には、砒素・セレン測定時に参照極を濡らし、銀−塩化銀参照極を形成する為の塩化カリウムが入った容器23を設置した。この容器は、基板12に形成された針状体122の直上、基板14に形成された押下部141の直下にある。
工程2:粘着テープ貼付
1)粘着テープの準備
両面粘着テープを打ち抜き機にセットし、各成型品形状に合わせた開孔処理を行い、打ち抜き加工済み粘着テープを作製した。
2)成型品の貼り合せ
上面に粘着テープが貼付された成型品及びそれに積層される成型品を真空チャンバー付き位置決め装置にセットした。この装置は、画像認識による位置合わせ機構、位置合わせ部分の真空化機構を有するものである。この装置により、泡が入らない状態で正確な位置で両者を貼り合せることができる。
【実施例2】
【0198】
図31から図37までに示した構成の液体クロマトグラフ分析用の分析ユニット及びカートリッジを使用して、シュウ酸とコハク酸からなる有機酸混合液の分離試験を行った。
使用した分析装置は、下記のものであった。
光源 Sentronic GmbH社製 FiberLight (200〜1100 nm)
分光器 オーシャンオプティクス社製 SASシリーズOEMモジュール
(1024エレメントCMOS搭載型) (200〜700 nm)
カートリッジ 図32〜図37に示す構造
カラム充填材 和光純薬社 Wakosil-II 5C18-100 (粒径5μm)
フルタ充填材 和光純薬社 Wakosil-II 25C18 (25〜30μm 70%up)
設定流速及び温度 10 μl/分、室温
測定波長 210nm
コハク酸(和光純薬社製特級)0.1gとシュウ酸(和光純薬社製特級)0.1gを精製水(和光純薬社製)100mlに混合して下記の試料を調整した。
シュウ酸 10μg/10μl (MW=126:但し2水和物)
コハク酸 同上 (MW=60)
分析は、図38及び図39に基づいて左記に説明した手順で行った。送液ポンプからの送液量は、図39の「ポンプ」の欄に記載した通りであった。分析は、分析ユニット内で時間と吸光度を監視することによって行った。ポンプからの溶離液の吐出が終わった時点でポンプを停止した。得られた結果を図40に示す。この実施例では、シュウ酸のピークが3分の位置に、コハク酸のピークが12分の位置に検出された。
【実施例3】
【0199】
心臓疾患の推定に有用なホルモンであるBNP(脳性Na利尿ポリペプチド)の測定に本発明を適用した。この実施例で採用された方法は、イムノアッセイ上の分類としては、酵素標識法、不均一法、競合法に該当する。
貯留部として対BNP抗原を用い、検出機構としては酵素標識の作用を電気化学的に検出する手段を採用した。この実施例は、Analytical Chemistry, vol.77, No.13, 2005, pp.4235-4240に掲載されたMatsuuraらの方法を、本発明のカートリッジおよび処理ユニットに応用した例である。関係する物質は下記の通りである。
AChE:アセチルコリンエステラーゼ
ACh :アセチルコリン
sulfo-SMCC:スルフォスクシニミジル-4-N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレイト
PBS:リン酸緩衝液(リン酸バッファ)
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
〔準備〕
(1) 炭素繊維フィルター(東洋紡製、品番P-1611H、厚さ0.32mm)を100mg/l金溶液(1M-硫酸)に浸漬した状態で攪拌しながら-0.4Vで20分保つことによって、表面に金を析出させ、その後+0.75Vで2分間クリーニングを行って、表面が金メッキされた炭素繊維フィルターを作製した。この金メッキフィルターを、0.1mM-システアミン塩酸塩溶液中に2時間置き、Au表面上にシステアミンを結合させた。この金メッキフィルターを取り出し、10mM-PBSに移し変えて、EDCが0.1g/l、ヒトBNP-32が20mg/lとなるように加え、1時間培養した後、PBSで洗浄して、表面にBNP(抗原)が固定化された金メッキフィルターを得た。
(2) このBNP固定化金メッキフィルターを直径6.5mm、厚さ0.4mmにカットして、図42に示すカートリッジの貯留部として設置した。作用極と対極はPFCE、参照極はAgコーティング電極を用いた。検出用カートリッジにおける電極寸法と外部ポートの位置は、実施例2の系統1と共通であるが、貯留部および電極室の寸法は変更された。処理ユニットは、実施例2と共通のものを用いた。図23のタンクE(試薬4)には1mM-アセチルチオコリン塩化物(PBS溶液)が入れられた。本実施例において使用した処理ユニットは、カートリッジを交換すれば重金属分析と免疫分析の両方に対応できるものであった。
(3) 0.1M-PBS(pH=8)に、対BNP抗体(ウサギの対BNP-32 IgG)を0.4g/l、sulfo-SMCCを0.4g/lとなるように調整し、室温で1時間培養した後、ろ過を行って余分のsulfo-SMCCを除去した。同様にして、0.1M-PBSにコリンエステラーゼ1g/l、s-アセチルメルカプトコハク酸無水物を0.3g/l加えて10分培養した後、ろ過した。これらを、抗体:ACh=1:0.7(モル比)となるように混合して1時間培養し、AChE標識化された対BNP抗体を得た。
(4) AChE標識化された対BNP抗体(0.4mg/l in PBS溶液) 2mlを、BNPを含む被検液(ヒト血液)と1対1の割合で混合して攪拌し、30分間反応させたものを、市販シリンジを使いカートリッジの注入口より注入して、BNP固定化金メッキフィルターを通過させ、中間ポート115から流出させた(工程(1))。次に、同じ注入口からPBS溶液を4ml注入してBNP固定化金メッキフィルターを洗浄し、分析器にセットした。この操作で、被検液中のBNP-対BNP抗体(AChE標識化)反応物が中間ポートから流出し、AChE標識化された対BNP抗体のうち未反応成分が貯留部の金メッキフィルター上のBNPに捕捉された状態で分析器に設置された。
(5) ポート1007から、基質として1mM-アセチルチオコリン塩化物(PBS溶液)を 200 μl/minで 1.0 ml送液することにより、貯留部と電極室を連続して通過させた(工程(2))。基質が貯留部に到達するとAChE標識の作用により、 AChE標識量に応じたチオコリンが生成され、電極室に送られる。以下の条件でLSV測定を行い、得られた電圧−電流曲線からチオコリンの電極活性を測定した。チオコリンの量は未反応の対BNP抗体に対応しており、被検液中のBNP量と一定の関係にあるので、被検液中のBNP濃度を変えて測定を行い、検量線を得ることが出来た。
LSV条件:-0.7V × 2分 → 1.4V (挿引速度 50mV/sec)
処理ユニットにおける操作のフローを図44に示す。
【実施例4】
【0200】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)による特定タンパク質の分離・定量分析に本発明を適用した。
(1)カートリッジの作製
図43に示す流路断面の他は、外形及び外部ポートが図32、33、34に示すものと共通である検出用カートリッジを射出成形により作成した。異なる点はクロマトカラム821を無くしたこと、セル形状を直径5mmとしたことである。基板材料は、アクリル樹脂を使用した。また、貯留部816としては、IMAC用樹脂(VIVA science社、Vivapure Metal Chelate樹脂)を使用した。処理ユニットとしては、実施例4と共通のものを用いた。
(2)サンプルの調製
サンプルとなるタンパク質の粗抽出液は、以下のように調製した。
まず、ポリ(ヒスチジン)−タグ−LacZタンパクを発現可能なベクターを保持する大腸菌を500ml培養した。同培養液を4℃、3000×gで15分間、遠心法により菌を回収した。次に、Vortexミキサーで回収した菌を40mlの抽出用バッファに懸濁した。そして、抽出/洗浄バッファを0.50mg/ml濃度となるように加えて、室温で30分間静置した。次に、大腸菌を超音波破砕機で10秒間破砕した後、破砕液を氷上で冷却した。次に、破砕液を4℃、10000×gで20分間、遠心処理して、不溶性画分を沈殿させ、上澄みを別途採取した。採取した粗抽出液は、孔径0.45μmのディスポーザブルフィルターに通液し、サンプル溶液とした。
(3)カートリッジの準備・前処理
カートリッジの注入口から、まず0.1M塩化ナトリウム水溶液2ml、次に0.5M硫酸ニッケル水溶液2ml、最後に0.1M塩化ナトリウム水溶液4mlを通液した。次に膜平衡化バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、10mMイミダゾールとなるように調製した溶液、pH8.0)溶液2mlを通液した。このとき、溶液は注入口814bから貯留部816を通過して中間ポート814aから流出させた。
(4)サンプルのカートリッジへの注入
カートリッジの注入口から、市販のシリンジを用いて段階(2)で調製したサンプル溶液5mlを注入した。溶液は、注入口814bから貯留部816を通過して中間ポート814aから流出させた。
(5)分析操作
カートリッジを分析器にセットし、ポート814bから洗浄バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、20mMイミダゾール溶液、pH8.0)を2ml、1ml/minで注入し、中間ポート814aから流出させた。次に、ポート814bと814cが連通するようにバルブ836を切り替え、ポート814aから溶離バッファ(50mMNaH2PO4、300mMNaCl、250mMイミダゾール溶液、pH8.0)0.2mlを50μl/minの割合で注入した。このとき、溶離バッファは、貯留部816を通過してセル814内に流入するようにした。次に、再びバルブ836を切り替え、ポート814cからプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社製)0.2mlを500μl/minの割合で加えた。この操作で、セル824内の液体は、溶離バッファとプロテインアッセイCBB溶液にほぼ置換された。次に分析器内蔵の分光器および光源(HPLCと共通)によって595nmの吸光度を観察し、吸光度のピーク強度からタンパクの回収量を定量した。
(6)結果
以上の操作のフローを図45に示す。この方法により、カートリッジの準備から分析終了まで約15分という高速で目的タンパク質を回収できた。
本発明は、上述した測定方法に限らず、種々の方法に適用できる。本発明を適用できる測定方法の幾つかの例を、検出原理及び操作の概略とともに、図46に示す。
【0201】
(発明の効果)
以上の説明から分かるように、本発明においては、検出用カートリッジが、被検出物質を含む被検液を通す流路を有する検出用カートリッジと、該カートリッジに接続可能であり、該カートリッジ内に通される被検液に含まれる被検出物質に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式検出装置を提供する。検出用カートリッジは、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、該貯留部を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。検出用カートリッジには、貯留部の下流側に、検出機構の少なくとも一部が設けられる。処理ユニットは、送液ポンプと、該送液ポンプを、検出用カートリッジに設けられた複数のポートの選択した1つに切換接続する配管切換バルブ機構とを備える。バルブ機構は、検出用カートリッジ内に供給された被検液が、貯留部を通過して検出カートリッジの1つのポートからカートリッジ外に出るようにする流路接続と、試薬が送液ポンプにより検出用カートリッジの1つのポートから貯留部に供給され、該貯留部を通過した試薬が他のポートからカートリッジ外に送り出されるようにする流路接続との間で切り換えるように作動する。
【0202】
また、本発明の特定の態様においては、被検出物質を一時的に貯留する貯留部と、該貯留部を通る液体流路と、該液体流路に通じる複数のポートとを備える。そして、この検出用カートリッジを使用して分析及び/又は処理を行う処理ユニットが、複数の試薬タンクと、送液ポンプと、複数の試薬タンクの選択された1つを送液ポンプに接続するタンク切換バルブ機構を備えるタンク切換バルブプレートと、送液ポンプをカートリッジに形成されたポートのうち、所望のものに接続する配管切換バルブ機構を備える配管切換バルブプレートとを有する。そして、タンク切換バルブプレートのバルブ機構と配管切換バルブプレートのバルブ機構とを所望の位置に切り換えて送液ポンプを作動させながら被検出物質の分析を行う。
【0203】
本発明のカートリッジ式分析装置は、上記のように構成されているから、分析に必要な機能部分を極めてコンパクトに処理ユニットのハウジング内に収めることができ、簡便な携帯型として構成することが容易である。したがって、本発明の分析装置は、被検出物質が採集される現場での迅速な分析にも使用でき、極めて有用性の高い装置となる。
以上、本発明を特定の実施形態について図示し、詳細な説明を行ったが、本発明は、これら特定の実施形態の細部に限定されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の一実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。
【図2】(a)は、検出用カートリッジの組立て状態を示す斜視図である。(b)は(a)のA−A断面を、(c)は(a)のB−B断面を示す。
【図3】検出用カートリッジの液体流路を概略的に示す断面図である。
【図3(a)】検出用カートリッジ内の被検液の流れを示す斜視図である。
【図3(b)】シリンジホルダの取付け状態を示す斜視図である。
【図3(c)】検出用カートリッジ内の溶離液の流れを示す斜視図である。
【図4】処理ユニットの構造を分解して示す斜視図である。
【図4(a)】カートリッジホルダにカートリッジを挿入する状態を示す斜視図である。
【図4(b)】カートリッジホルダを閉じた状態で示す斜視図である。
【図4(c)】カートリッジホルダの内部構造を分解して示す斜視図である。
【図5】処理ユニットの外観斜視図である。
【図6】処理ユニットの外部機器との接続状態を示す図である。
【図7】処理ユニット内部の電気系統のブロック図である。
【図8(a)】測定における操作手順の一部を示すフロー図である。
【図8(b)】図8(a)に続く操作手順を示すフロー図である。
【図8(c)】図8(b)に続く操作手順を示すフロー図である。
【図8(d)】本発明の実施形態のシステム全体を示す系統図である。
【図9】砒素、セレン測定により得られた電位−電圧曲線を示すグラフである。
【図10】カドミウム、鉛、水銀測定により得られた電位−電圧曲線を示すグラフである。
【図11】他の実施形態による濃縮部を示す概略断面図である。
【図12】さらに他の実施形態による濃縮部を示す概略断面図である。
【図13(a)】検出用カートリッジとともに使用される本発明による分析ユニットの一例を示す斜視図である。
【図13(b)】図13(a)の分析ユニットにおいて、蓋を取り外して示す斜視図である。
【図13(c)】分析ユニットの本体下部を示す斜視図である。
【図14(a)】電気化学分析に使用される本発明の検出用カートリッジの一例を示す分解斜視図である。
【図14(b)】図14(a)のカートリッジを組立て状態で示すもので、(i)は斜視図、(ii)は(i)のA−A断面図、(iii)は(i)のB−B断面図である。
【図14(c)】図14(a)のカートリッジの縦断面図である。
【図15(a)】図14(a)のカートリッジにおける液体の流れを示すもので、図3(a)に対応する斜視図である。
【図15(b)】図14(a)のカートリッジにおける液体の流れを示すもので、図3(c)に対応する斜視図である。
【図16】図13に示す分析ユニットにおけるタンク切換配管プレートと、試薬タンク及び切換バルブ機構の配置関係を示す斜視図である。
【図17】試薬タンクの接続部を示すための断面図である。
【図18】分析ユニットの本体上部内の各種部品の配置を示す斜視図である。
【図19】タンク切換配管プレートと切換バルブとの接続を示す断面図である。
【図20】送液ポンプとタンク切換配管プレート及び吐出先切換配管プレートの接続関係を示す概略図である。
【図21】分析ユニットに使用されるカートリッジホルダの斜視図である。
【図22】検出用カートリッジの下面のポートを示す平面図である。
【図23】分析ユニットにおける切換バルブの接続関係を示す系統図である。
【図24】吐出先切換配管プレートの構造を示す分解斜視図である。
【図25】廃液タンクの接続を示す分解部分図である。
【図26】廃液タンクの接続を示す概略図である。
【図27】クロマトグラフ分析に適用されるシステムの一例を示す系統図である。
【図28(a)】濃度分析に使用される検出用カートリッジを使用し、系統1において検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図28(b)】濃度分析に使用される検出用カートリッジを使用し、系統1において検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図29(a)】濃度分析のための検出用カートリッジを使用し、系統2において検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図29(b)】濃度分析のための検出用カートリッジを使用し、系統2において検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図30(a)】クロマトグラフ分析のための検出用カートリッジを使用して検出を行う場合の作動流れの前半部分を示す流れ図である。
【図30(b)】クロマトグラフ分析のための検出用カートリッジを使用して検出を行う場合の作動流れの後半部分を示す流れ図である。
【図31】本発明の他の実施形態による液体クロマトグラフ分析装置の外観を示す斜視図である。
【図32】図31の実施形態による分析装置に使用される検出用カートリッジの断面をバルブ機構との接続関係も含めて示す図である。
【図33】図32に示す検出用カートリッジの構成を示す分解図であり、(a)はカートリッジの構成要素である各プラスチック板の下側の面を示し、(b)は上側の面を示す。
【図34】検出用カートリッジの断面図であり、(a)は図33(a)の線a−aに沿ってとった断面を、(b)は線b−bに沿ってとった断面をそれぞれ示す。
【図35】図31の分析ユニットのハウジングにおける本体上部の構成を示す平面図である。
【図36】吐出先切換バルブプレートとガイド部材及び検出用カートリッジの関係を示す斜視図である。
【図37】タンク配管切換バルブプレートを示す平面図である。
【図38】図31から図37までに示す液体クロマトグラフ分析用の装置における作動を示すフロー図である。
【図39】分析動作の時間的流れを示す流れ図である。
【図40】実施例2における検出結果を示すグラフである。
【図41】本発明をイムノアッセイに適用する場合の幾つかの例を概略的に示す工程フロー図であり、(a)は競合法の1例を、(b)は競合法のうちサンドイッチ法と呼ばれる例を、(c)は非競合法の1例をそれぞれ示す。
【図42】実施例5において使用した検出用カートリッジの底面図である。
【図43】実施例6において使用した検出用カートリッジの断面図である。
【図44】実施例5における処理フローを示す表である。
【図45】実施例6における処理フローを示す表である。
【図46】3枚のプラスチック基板により構成された検出用カートリッジの例を示す図1と同様な分解図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物質を含む被検体における前記被検出物質の濃度に関連する電気信号を生成する検出用カートリッジと、前記カートリッジが接続可能であり、前記カートリッジからの前記電気信号を読み取って前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式濃度検出装置であって、
前記カートリッジは、前記被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、前記被検液導入部からの液体流路とを備え、前記液体流路には、被検出物質を濃縮する濃縮部と、検出用電極構成とが設けられ、濃縮された被検出物質が前記液体流路を通される間に前記検出用電極構成により被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成されるようになっており、
前記処理ユニットは、前記電気信号を前記カートリッジから受け取って処理し、前記被検体における前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理手段を備える、
ことを特徴とするカートリッジ式濃度検出装置。
【請求項1】
被検出物質を含む被検体における前記被検出物質の濃度に関連する電気信号を生成する検出用カートリッジと、前記カートリッジが接続可能であり、前記カートリッジからの前記電気信号を読み取って前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理ユニットとからなるカートリッジ式濃度検出装置であって、
前記カートリッジは、前記被検体を溶解した被検液を導入する被検液導入部と、前記被検液導入部からの液体流路とを備え、前記液体流路には、被検出物質を濃縮する濃縮部と、検出用電極構成とが設けられ、濃縮された被検出物質が前記液体流路を通される間に前記検出用電極構成により被検出物質の濃度に関連する電気信号が該検出用電極構成において生成されるようになっており、
前記処理ユニットは、前記電気信号を前記カートリッジから受け取って処理し、前記被検体における前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する処理手段を備える、
ことを特徴とするカートリッジ式濃度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図13(c)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図14(c)】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28(a)】
【図28(b)】
【図29(a)】
【図29(b)】
【図30(a)】
【図30(b)】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図13(c)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図14(c)】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28(a)】
【図28(b)】
【図29(a)】
【図29(b)】
【図30(a)】
【図30(b)】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公開番号】特開2008−46140(P2008−46140A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254446(P2007−254446)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願2007−500449(P2007−500449)の分割
【原出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願2007−500449(P2007−500449)の分割
【原出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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