説明

カートリッジ誤挿入防止機構および磁気テープライブラリ装置用セル

【課題】直列してセルに挿入される2つの磁気テープカートリッジの側面に連続的な平面が形成されるような状況下での磁気テープカートリッジの誤挿入を確実に防止する。
【解決手段】最初に挿入されるカートリッジ100における挿入側端面aの挿入完了位置よりも挿抜口寄りの位置にカートリッジ100と干渉する第一の進入防止爪9を配備すると共に、第一の進入防止爪9からカートリッジ100の長さを僅かに上回る間隔を置いた位置に、カートリッジ100のテーパ面dがあれば当該位置におけるカートリッジ100の進入と第一の進入防止爪9の離脱を許容し当該位置にカートリッジ100のテーパ面dがなければ当該位置におけるカートリッジ100の進入と第一の進入防止爪9の離脱を防止する第二の進入防止爪10を配備し、更に、第一,第二の進入防止爪9,10の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の磁気テープカートリッジの方向性を合わせて直列的に収容する収納スペースと複数個の磁気テープカートリッジを挿抜するための挿抜口とを備えた磁気テープライブラリ装置用セルおよび其のカートリッジ誤挿入防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープカートリッジにおける誤挿入の防止に関連する技術としては、例えば、特許文献1に開示されるライブラリ装置が公知である。
このものは、カラーフィルタやアーム回転機構等からなる媒体位置検出機構を各磁気テープカートリッジの収容位置毎に設け、光源やミラーから構成される光学的な検出手段で磁気テープカートリッジの入れ違いを検知するものであり、構造が複雑であって磁気テープライブラリ装置の製造コストが高騰化する不都合がある。
また、磁気テープカートリッジの入れ違いを検知する機能を有するのみで、磁気テープカートリッジの誤挿入それ自体を防止する機能は備えていない。
【0003】
一方、複数個の磁気テープカートリッジの方向性を合わせて直列的に収容するようにした磁気テープライブラリ装置用セルのカートリッジ誤挿入防止機構としては、例えば、特許文献2等に開示されるものが既に公知である。
一般に、磁気テープカートリッジ100は、図8に示されるように、磁気テープカートリッジ100の挿入方向を明示するため、挿入側端面aに隣接する一側面bと,挿入側端面aおよび一側面bに隣接する他の一側面cと,前記挿入側端面aとによって画成される角部Xに、挿入側端面aおよび一側面bに対して斜交すると共に他の一側面cに対して直交する面から成り,且つ,挿入側端面aと一側面bと他の一側面cに連絡するテーパ面dを、他の一側面cの法線方向における磁気テープカートリッジ100の厚さ未満の幅で備えている。
そして、複数の磁気テープカートリッジ100の方向性を合わせて直列的に収容する磁気テープライブラリ装置用セル101は、例えば、図9に示されるように、複数の磁気テープカートリッジ100を収容する収納スペース102と此れらの磁気テープカートリッジ100を挿抜するための挿抜口103とを備える。
特許文献2等に見られる従来型のカートリッジ誤挿入防止機構は、例えば、図9に示されるように、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100における挿入側端面aの挿入完了位置よりも僅かに挿抜口103寄りで且つ収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離がテーパ面dの幅の範囲内となる位置において、磁気テープカートリッジ100の一側面bに対応する収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に突出して固設された進入防止爪104によって構成されている。
つまり、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100における他の一側面cからの法線方向の離間距離がテーパ面dの幅の範囲内となる位置に進入防止爪104を固設することにより、図9のように適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100に対しては角部Xと進入防止爪104との干渉をなくして進入防止爪104よりも奥にある挿入完了位置への磁気テープカートリッジ100の受け入れを許容する一方、不適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100に対しては、最初の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aにおいて角部Xの対角線上に位置する角部、あるいは、反挿入側端面e(図8参照)の角部を進入防止爪104に干渉させることによって、磁気テープカートリッジ100の誤挿入を防止しようとするものである。
しかし、このような構成では最初に挿入される磁気テープカートリッジ100の誤挿入を防止できるに過ぎず、それ以降に挿入される磁気テープカートリッジ100の誤挿入を防止することはできない。例えば、図9に示されるように、次の磁気テープカートリッジ100の天地を誤って逆にして挿入したとしても、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100の方向性さえ適切であれば、2つの磁気テープカートリッジ100が収納スペース102に綺麗に収まってしまうといった不都合が生じる。
【0004】
2つ目以降のカートリッジの誤挿入を防止するための技術として磁気テープライブラリ装置に転用が可能なものとしては、例えば、特許文献3に開示されるテープカートリッジのオートローダーが公知である。
このものは、カートリッジの傾斜面で押圧されて退避移動する誤挿入防止手段を収納スペース内に配置し、不適切に挿入されるカートリッジの直立面に誤挿入防止手段を当接させてカートリッジの誤挿入を防止する構成であるため、一定の条件下、つまり、間隔をおいて複数のカートリッジを1個宛で挿入するような場合においては、2つ目以降に挿入されるカートリッジの誤挿入を適切に防止することが可能である。
しかしながら、例えば、図9に示されるようにして、2つの磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面e(図8参照)を突き合わせ、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100の方向性を適切な状態にして収納スペース102内に挿入したような場合では、2つ目以降に挿入される磁気テープカートリッジの誤挿入を防ぐことができない。
その理由は、図9に示されるようにして反挿入側端面e(図8参照)を突き合わせた2つの磁気テープカートリッジ100の側面、つまり、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100の一側面bと次に挿入される磁気テープカートリッジ100の別の側面fとによって連続的な平面が形成され(特許文献3の図6,図10では上面に相当)、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面e(図8参照)が誤挿入防止手段の配設位置を通過しても、誤挿入防止手段の復帰動作が此の連続的な平面に阻まれて実行不可能となり、其のまま次の磁気テープカートリッジ100の挿入を許容してしまうからである。
なお、図9では、一例として、最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合について示しているが、次の磁気テープカートリッジ100の裏表を逆にして其の挿入側端面aを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合、および、次の磁気テープカートリッジ100の天地および裏表を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合についても、これと同様の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−67316号公報(段落0013,段落0053)
【特許文献2】特開2010−86578(段落0005,段落0021,図6A,図6B,図6C)
【特許文献3】特開平11−45534号(段落0022,段落0032,図6,図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、複雑な媒体位置検出機構や光学的な検出手段を要することなく、磁気テープカートリッジの誤挿入、特に、2つ目以降に挿入される磁気テープカートリッジの誤挿入や反挿入側端面を突き合わせたような磁気テープカートリッジの誤挿入、つまり、磁気テープカートリッジの側面に連続的な平面が形成されるような状況下での誤挿入をも確実に防止することのできる簡単な構造のカートリッジ誤挿入防止機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカートリッジ誤挿入防止機構は、挿入側端面に隣接する一側面と,前記挿入側端面および前記一側面に隣接する他の一側面と,前記挿入側端面とによって画成される角部に、前記挿入側端面および前記一側面に対して斜交すると共に前記他の一側面に対して直交する面から成り,且つ,前記挿入側端面と前記一側面と前記他の一側面に連絡するテーパ面を、前記他の一側面の法線方向における厚さ未満の幅で備えた複数個の磁気テープカートリッジの方向性を合わせて直列的に収容する収納スペースと前記複数個の磁気テープカートリッジを挿抜するための挿抜口とを有する磁気テープライブラリ装置用セルに設けられるカートリッジ誤挿入防止機構であり、前記目的を達成するため、特に、
最初に挿入される磁気テープカートリッジにおける前記挿入側端面の挿入完了位置よりも僅かに挿抜口寄りで且つ収容状態にある磁気テープカートリッジの前記他の一側面からの法線方向の離間距離が前記テーパ面の幅を上回る位置において磁気テープカートリッジの前記一側面に対応する前記収納スペースの内壁から前記収納スペース内に進退可能とされた第一の進入防止爪と、
前記第一の進入防止爪から磁気テープカートリッジにおける挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔を置いた挿抜口寄りの位置で且つ収容状態にある磁気テープカートリッジの前記他の一側面からの法線方向の離間距離が前記テーパ面の幅の範囲内となる位置において磁気テープカートリッジの前記一側面に対応する前記収納スペースの内壁から前記収納スペース内に進退可能とされた第二の進入防止爪と、
前記第一,第二の進入防止爪に連絡し、前記収納スペースに対する前記第一,第二の進入防止爪の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段と、
前記第一の進入防止爪が前記収納スペースから離脱し、且つ、前記第二の進入防止爪が前記収納スペース内に進入する方向に前記リンケージ手段を定常的に付勢するリンケージ付勢手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカートリッジ誤挿入防止機構は、最初に挿入される磁気テープカートリッジにおける挿入側端面の挿入完了位置よりも僅かに挿抜口寄りの位置に其の進入状態で磁気テープカートリッジのテーパ面の有無に関わりなく磁気テープカートリッジに干渉して磁気テープカートリッジの進入を防止する第一の進入防止爪を配備すると共に、第一の進入防止爪から磁気テープカートリッジにおける挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔を置いた位置には当該位置における磁気テープカートリッジにテーパ面があれば当該位置における磁気テープカートリッジの進入と収納スペースからの第一の進入防止爪の離脱を許容し当該位置における磁気テープカートリッジにテーパ面がなければ当該位置における磁気テープカートリッジの進入と収納スペースからの第一の進入防止爪の離脱を防止する第二の進入防止爪を配備し、更に、収納スペースに対する第一,第二の進入防止爪の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段を第一の進入防止爪が収納スペースから離脱し且つ第二の進入防止爪が収納スペース内に進入する方向で定常的に付勢するようにしているので、不適切な方向性で挿入される最初の磁気テープカートリッジの誤挿入、および、最初の磁気テープカートリッジの挿入に次いで間隔をおいて不適切な方向性で挿入される2つ目以降の磁気テープカートリッジの誤挿入の全てが収納スペース内に進入している第二の進入防止爪によって確実に防止され、また、適切な方向性で挿入される最初の磁気テープカートリッジに反挿入側端面を突き合わせて行なわれるような2つ目以降の磁気テープカートリッジの誤挿入、つまり、磁気テープカートリッジを続けて挿入することによって第一,第二の進入防止爪を配設した収納スペースの内壁に対応する側の磁気テープカートリッジの側面に連続的な平面が形成されるような状況下で行われる磁気テープカートリッジの誤挿入も、収納スペース内に進入している第一の進入防止爪と此の進入防止爪により進入を阻まれている最初の磁気テープカートリッジの反挿入側端面とを利用して確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のカートリッジ誤挿入防止機構を適用した一実施形態の磁気テープライブラリ装置用セルを使用する磁気テープライブラリ装置の一例について簡略化して示したブロック図である。
【図2】同実施形態のカートリッジ誤挿入防止機構を実装した磁気テープライブラリ装置用セルの構成の主要部を示した斜視図である。
【図3】同実施形態の磁気テープライブラリ装置用セルの収納スペースに2つの磁気テープカートリッジを適切に収容した状態を示した斜視図である。
【図4】最初に挿入する際の磁気テープカートリッジの方向性を誤った場合のカートリッジ誤挿入防止機構の動作について示した平面図である。
【図5】最初の磁気テープカートリッジが適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジが誤った方向性で最初の磁気テープカートリッジに突き合わされて挿入された場合の状況の一例を示した平面図である。
【図6】最初の磁気テープカートリッジと次の磁気テープカートリッジとを適切に突き合わせた状態で挿入した場合の状況を示した平面図である。
【図7】2つの磁気テープカートリッジが磁気テープライブラリ装置用セルの収納スペースに完全に挿入された状態を示した平面図である。
【図8】一般的な磁気テープカートリッジの外観を示した斜視図である。
【図9】公知の磁気テープライブラリ装置用セルとカートリッジ誤挿入防止機構について示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための一実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は本発明のカートリッジ誤挿入防止機構を適用した一実施形態の磁気テープライブラリ装置用セルを使用する磁気テープライブラリ装置の一例について簡略化して示したブロック図である。
【0012】
この磁気テープライブラリ装置1は、磁気テープライブラリ装置用セル2を集合して構成されるマガジン3と、磁気テープカートリッジ100内の磁気テープに対してデータの読み書きを行うドライブユニット4、および、磁気テープライブラリ装置用セル2とドライブユニット4との間で磁気テープカートリッジ100の受け渡しを行なうアクセッサ5を備える。
【0013】
マガジン3は磁気テープライブラリ装置1から外部に取り出すことが可能であり、マガジン3を構成する磁気テープライブラリ装置用セル2の各々には2つずつの磁気テープカートリッジ100を手動操作によって装填および排出できるようになっている。
【0014】
磁気テープライブラリ装置1,マガジン3,ドライブユニット4,アクセッサ5は何れも公知の構成要素であるので具体的な説明は省略する。
【0015】
磁気テープカートリッジ100は標準的な仕様のもので、図8に示されるように、挿入側端面aに隣接する一側面bと,挿入側端面aおよび一側面bに隣接する他の一側面cと,前述の挿入側端面aとによって画成される角部Xに、挿入側端面aおよび一側面bに対して斜交すると共に他の一側面cに対して直交する面から成り,且つ,挿入側端面aと一側面bと他の一側面cに連絡するテーパ面dを、他の一側面cの法線方向におけるカートリッジ100の厚さ未満の幅で備えている。
【0016】
以下、この実施形態にあっては、図8に示されるように、磁気テープカートリッジ100において前述の一側面bと対を成すようにして平行に位置する他の側面を別の側面fと呼ぶものとする。
【0017】
カートリッジ誤挿入防止機構を実装した磁気テープライブラリ装置用セル2の構成の主要部を図2の斜視図に示す。
【0018】
磁気テープライブラリ装置用セル2は、方向性を合わせた2つの磁気テープカートリッジ100を直列的(玉突き式ともいう)に収容するためのもので、2つの磁気テープカートリッジ100を収容するための収納スペース102と此れらの磁気テープカートリッジ100を挿抜するための挿抜口103とを備え、挿抜口103の一側には、収納スペース102に収容された2つの磁気テープカートリッジ100の脱落を防止するためのラッチ6が設けられている。
ラッチ6は板バネ7を介して挿抜口103の一側に取り付けられており、収納スペース102に収容された2つ目の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面e(図8参照)にラッチ6の先端を係合させることによって、収納スペース102に収容された2つの磁気テープカートリッジ100の脱落を防止するようになっている。
【0019】
図8では特に記載していないが、磁気テープライブラリ装置用セル2には、収納スペース102に収容されたカートリッジ100を排出方向に向けて定常的に付勢するバネ機構が設けられている。
【0020】
収納スペース102,挿抜口103,ラッチ6,バネ機構は何れも公知の構成要素である。
【0021】
この実施形態におけるカートリッジ誤挿入防止機構8は、最初に挿入される磁気テープカートリッジ100における挿入側端面aの挿入完了位置よりも僅かに挿抜口103寄りで且つ収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離が磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅を上回る位置において、磁気テープカートリッジ100の一側面bに対応する収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に進退可能とされた第一の進入防止爪9と、第一の進入防止爪9から磁気テープカートリッジ100における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔を置いた挿抜口103寄りの位置で且つ収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離が磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅の範囲内となる位置において、磁気テープカートリッジ100の一側面bに対応する収納スペースの内壁Bから収納スペース102内に進退可能とされた第二の進入防止爪10と、第一の進入防止爪9および第二の進入防止爪10に連絡し、収納スペース102に対する第一の進入防止爪9および第二の進入防止爪10の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段11と、第一の進入防止爪9が収納スペース102から離脱し、且つ、第二の進入防止爪10が収納スペース102内に進入する方向でリンケージ手段11を定常的に付勢するリンケージ付勢手段12を有する。
【0022】
この実施形態における第一の進入防止爪9は、図2に示される通り、磁気テープカートリッジ100の他の一側面c(図8参照)の法線方向における磁気テープカートリッジ100の厚さに匹敵する幅を備えているが、実際には、少なくとも第一の進入防止爪9または其の一部が、収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離が磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅を上回る位置において、磁気テープカートリッジ100の一側面bに対応する収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に進入できるようになっていればよい。
つまり、第一の進入防止爪9が収納スペース102内に進入した状態において、適切な方向性で最初に収納スペース102に挿入された磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aに当接し、この磁気テープカートリッジ100が挿入完了位置にまで進入することを防止するに足る構造が、第一の進入防止爪9の構成上の必須要件である。
もし、収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離において磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅の範囲内に第一の進入防止爪9の全ての部分が存在するとなると、次に挿入される磁気テープカートリッジ100の挿入方向に不整合が合った場合、例えば、図5に示されるような状況下においても、適切な方向性で最初に収納スペース102に挿入された磁気テープカートリッジ100のテーパ面dと第一の進入防止爪9との摺接作用によって第一の進入防止爪9が収納スペース102の外側に向けて押し出され、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100の更なる進入が許容され、適切な方向性で最初に収納スペース102に挿入された磁気テープカートリッジ100、および、挿入方向に不整合を生じている次の磁気テープカートリッジ100が共に挿入完了位置にまで到達してしまうという不都合を生じるため、このような構成を採用する必要がある。
この実施形態で第一の進入防止爪9の幅を磁気テープカートリッジ100の厚さに匹敵する幅としているのは単に耐久性の向上が目的である。
【0023】
また、この実施形態における第二の進入防止爪10は、図2に示される通り、磁気テープカートリッジ100の他の一側面cの法線方向における磁気テープカートリッジ100のテーパ面d(図8参照)の幅に匹敵する幅を有しているが、実際には、第二の進入防止爪10の幅は磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅よりも狭くても構わない。
つまり、不適切な方向性で収納スペース102に挿入される磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aや反挿入側端面e(図8参照)に当接すし、且つ、適切な方向性で収納スペース102に挿入される磁気テープカートリッジ100のテーパ面dに摺接することが、第二の進入防止爪10の構成上の必須要件である。
この実施形態で第二の進入防止爪10の幅を磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅に匹敵する幅としているのは単に耐久性の向上が目的である。
【0024】
この実施形態におけるリンケージ手段11は、第一の進入防止爪9および第二の進入防止爪10と一体で、適切な方向性で挿入される磁気テープカートリッジ100の一側面bに対応する収納スペース102の内壁Bに沿った姿勢で中央部を回転自在に軸支された誤挿入防止レバー13によって構成されている。
【0025】
また、リンケージ付勢手段12は、第二の進入防止爪10が収納スペース102内に進入して第一の進入防止爪9が収納スペース102から離脱する方向、つまり、誤挿入防止レバー13を図2中に示される矢印Rの方向に向けて回転付勢する回転付勢手段14によって構成されている。
【0026】
この実施形態では誤挿入防止レバー13の中央部を回転自在に軸支するピン15を取り巻くようにして取り付けた捩りコイルバネによって回転付勢手段14を構成しているが、十分な弾性を有する合成樹脂等で誤挿入防止レバー13を形成するような場合にあっては、誤挿入防止レバー13の中央部に舌片を一体に設け、この舌片を回転付勢手段14として利用したり、適所に配備した板バネやコイルスプリング等を利用するといったことも可能である。
【0027】
第一の進入防止爪9を一端部に備え其の他端部に第二の進入防止爪10を備えた誤挿入防止レバー13は、収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cの法線方向に沿って設けられたピン15を中心として回転する構造であるから、収納スペース102に対する第一の進入防止爪9および第二の進入防止爪10の進退動作は必然的にトレードオフの関係となる。
【0028】
磁気テープライブラリ装置用セル2の収納スペース102に2つの磁気テープカートリッジ100を適切に収容した状態を参考までに図3の斜視図に示す。
【0029】
次に、この実施形態におけるカートリッジ誤挿入防止機構8の動作と機能について具体的に説明する。
【0030】
図4は最初に挿入する際の磁気テープカートリッジ100の方向性を誤った場合のカートリッジ誤挿入防止機構8の動作について示した平面図である。なお、図4では最初に挿入される磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして反挿入側端面eを先に挿入した場合について示しているが、磁気テープカートリッジ100の裏表を逆にして挿入しようとした場合も、カートリッジ誤挿入防止機構8の動作原理自体は此れと同じである。
【0031】
つまり、何れの場合においても、回転付勢手段14によって図4中でカウンタークロックワイズ方向に回転付勢された誤挿入防止レバー13の他端部に一体に設けられている第二の進入防止爪10は、最初の磁気テープカートリッジ100を挿入する段階で、初期状態つまり収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に進入した状態となっているので、最初の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして挿入しようとした場合にあっては磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが、また、最初の磁気テープカートリッジ100の裏表を逆にして挿入しようとした場合にあっては磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aが第二の進入防止爪10と干渉し、最初の磁気テープカートリッジ100の誤った挿入操作が完全に防止される。
【0032】
最初の磁気テープカートリッジ100の挿入が許容されるのは、最初の磁気テープカートリッジ100の一側面bを磁気テープライブラリ装置用セル2の内壁Bに摺接させるようにして磁気テープカートリッジ100を挿入した場合(例えば図6参照)、すなわち、最初の磁気テープカートリッジ100に形成されたテーパ面dが第二の進入防止爪10に摺接して回転付勢手段14の付勢力に抗して誤挿入防止レバー13を図4あるいは図6中のクロックワイズ方向に回転させて、第二の進入防止爪10が収納スペース102の外側に押し出される場合に限られる。
【0033】
従って、最初の磁気テープカートリッジ100の誤挿入は、全て、第二の進入防止爪10のみによって確実に防止することが可能である。
【0034】
そして、最初の磁気テープカートリッジ100の適切な挿入によって此の磁気テープカートリッジ100のテーパ面dに第二の進入防止爪10が摺接し、誤挿入防止レバー13が図4中のクロックワイズ方向に回転して誤挿入防止レバー13の第一の進入防止爪9が収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に進入した場合にあっては、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過するまでの間、第二の進入防止爪10が収納スペース102の外側に離脱し且つ第一の進入防止爪9が収納スペース102内に進入した状態が維持されることになる(例えば図6参照)。
ここで、もし仮に、最初の磁気テープカートリッジ100のみを挿入し、次の磁気テープカートリッジ100を挿入せずに最初の磁気テープカートリッジ100を手指で押し込むといったような行為を行なった場合、第一の進入防止爪9と第二の進入防止爪10との間の離間距離が磁気テープカートリッジ100における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔であることから(例えば図5参照)、最初の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aが第一の進入防止爪9の位置に到達する前に最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の位置を通過することになる。
従って、第二の進入防止爪10は、最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の位置を通過した時点で、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100の一側面bによる支えを失い、結果的に、誤挿入防止レバー13が再び回転付勢手段14の付勢力で図4中のカウンタークロックワイズ方向に回転して初期状態に復帰し、誤挿入防止レバー13の一端に設けられている第一の進入防止爪9が収納スペース102から離脱し且つ第二の進入防止爪10が内壁Bから収納スペース102内に進入した状態となる。
よって、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100を手指で押し込み続けるとするなら、最初の磁気テープカートリッジ100を挿入完了位置まで押し込むことは許容され得るが、この段階では既に第二の進入防止爪10が内壁Bから収納スペース102内に進入した状態となっているので、仮に、間隔を置いて次の磁気テープカートリッジ100を挿入しようとしても、次の磁気テープカートリッジ100を誤った方向性で挿入することはできない。無論、次の磁気テープカートリッジ100を適切な方向性で挿入することは可能である。
【0035】
しかし、実際には、磁気テープライブラリ装置用セル2には、収納スペース102に収容された最初の磁気カートリッジ100を押圧することによって1つ若しくは2つの磁気テープカートリッジ100を排出方向に向けて定常的に付勢するバネ機構が設けられているので、2つの磁気テープカートリッジ100が間隔をおいて1個宛で挿入されるといった現象が生じることは殆どなく、最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eまたは挿入側端面aと次の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aまたは反挿入側端面eとがバネ機構の付勢力によって突き合わされた状態で、この付勢力に抗する手動操作力で2つの磁気テープカートリッジ100が直列的に纏められたまま挿入されるのが普通である。
【0036】
2つの磁気テープカートリッジ100が直列的に纏められた状態で挿入される場合であっても、最初の磁気テープカートリッジ100の天地や裏表が逆であった場合には、既に述べた通りの理由により、第二の進入防止爪10が最初の磁気テープカートリッジ100の誤挿入を全て阻止し、次の磁気テープカートリッジ100の挿入も必然的に不可能とするので、磁気テープカートリッジ100の誤挿入は完全に防止される。
【0037】
問題となるのは、最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、且つ、次の磁気テープカートリッジ100が誤った方向性で最初の磁気テープカートリッジ100に突き合わされた状態で挿入される場合である。
【0038】
最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100が誤った方向性で最初の磁気テープカートリッジ100に突き合わされて挿入された場合の状況の一例を図5に示す。
【0039】
図5では最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとしている場合を例にとって示しているが、次の磁気テープカートリッジ100の裏表を逆にして其の挿入側端面aを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合、および、次の磁気テープカートリッジ100の天地および裏表を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合についても、カートリッジ誤挿入防止機構8の動作原理自体は全て同様である。
【0040】
これらの場合、最初の磁気テープカートリッジ100の挿入方向は適切であるから、まず、最初の磁気テープカートリッジ100に形成されたテーパ面dが第二の進入防止爪10と摺接し、回転付勢手段14の付勢力に抗して誤挿入防止レバー13を図5中のクロックワイズ方向に回転させることにより、第二の進入防止爪10が収納スペース102の外側に離脱し且つ第一の進入防止爪9が収納スペース102内に進入した状態となる。
【0041】
既に述べた通り、第一の進入防止爪9と第二の進入防止爪10との間の離間距離は1つの磁気テープカートリッジ100における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔となっているが、図5のようにして次の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして挿入しようとしている場合にあっては、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100における一側面bと次に挿入される磁気テープカートリッジ100における別の側面fとが1つの連続した平面を形成することになるので、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過しても、次の磁気テープカートリッジ100の別の側面fが第二の進入防止爪10を支え続け、図5に示される通り、誤挿入防止レバー1がクロックワイズ方向に回転したままの状態、つまり、第二の進入防止爪10が収納スペース102の外側に向けて離脱し且つ第一の進入防止爪9が収納スペース102内に進入した状態が維持されることになる。
【0042】
既に述べた通り、第一の進入防止爪9と第二の進入防止爪10との間の離間距離は1つの磁気テープカートリッジ100における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔となっているので、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過してからも最初の磁気テープカートリッジ100および次の磁気テープカートリッジ100を挿入完了位置に向けて僅かに押し進めることは可能だが、最終的に、収納スペース102内に進入している第一の進入防止爪9に最初の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aが干渉することになるので、2つの磁気テープカートリッジ100を其れ以上に押し進める操作は許容されない。
【0043】
既に述べたとおり、第一の進入防止爪9は最初に挿入される磁気テープカートリッジ100における挿入側端面aの挿入完了位置よりも僅かに挿抜口103寄りに配置されているので、最初の磁気テープカートリッジ100を適切な方向性で挿入し且つ次の磁気テープカートリッジ100を不適切な方向性で挿入しようとした場合においては、次の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aあるいは反挿入側端面eといった後端部が磁気テープライブラリ装置用セル2の挿抜口103から僅かに突出したままの状態となり、ラッチ6が次の磁気テープカートリッジ100の後端部に係合して其の脱落を防止することはない。
【0044】
従って、次の磁気テープカートリッジ100を押し進める手を離せば、2つの磁気テープカートリッジ100がバネ機構の付勢力によって挿抜口103から強制的にエジェクトされることになる。
【0045】
最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合、および、最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の裏表を逆にして其の挿入側端面aを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合においては第二の進入防止爪10が次の磁気テープカートリッジ100の別の側面fで支えられるのに対し、最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の天地および裏表を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合においては第二の進入防止爪10が次の磁気テープカートリッジ100の一側面bで支えられることになるが、2つ目の磁気テープカートリッジ100の誤挿入に際して生じる現象は、図5を参照して説明したもの、つまり、最初の磁気テープカートリッジ100が適切な方向性で挿入され、次の磁気テープカートリッジ100の天地を逆にして其の反挿入側端面eを最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに突き合わせて挿入しようとした場合と全く同様である。
【0046】
従って、この実施形態によれば、適切な方向性で挿入される最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eに次の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eを突き合わせる等して次の磁気テープカートリッジ100のみに誤挿入が生じた場合、つまり、磁気テープカートリッジ100を続けて挿入することによって、第一,第二の進入防止爪9,10を配設した収納スペース102の内壁Bに対応する側の磁気テープカートリッジ100の2つの側面(bとfまたはbとb)に連続的な平面が形成されるような状況下で行われる磁気テープカートリッジ100の誤挿入も、収納スペース102内に進入している第一の進入防止爪9と此の進入防止爪9により進入を阻まれている最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eとを利用して確実に防止することができる。
【0047】
一方、図6に示されるように、最初の磁気テープカートリッジ100と次の磁気テープカートリッジ100とを適切に突き合わせた状態で挿入した場合にあっては、まず、最初の磁気テープカートリッジ100に形成されたテーパ面dが第二の進入防止爪10と摺接し、回転付勢手段14の付勢力に抗して誤挿入防止レバー13を図6中のクロックワイズ方向に回転させることにより、第二の進入防止爪10が収納スペース102の外側に離脱し且つ第一の進入防止爪9が収納スペース102内に進入した状態となり、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過するまでの間、この状態が維持される。
【0048】
そして、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過すると、第二の進入防止爪10が最初の磁気テープカートリッジ100の一側面bによる支えを失い、結果的に、誤挿入防止レバー13が再び回転付勢手段14の付勢力によってカウンタークロックワイズ方向に回転して初期状態に復帰し、誤挿入防止レバー13の一端に設けられている第一の進入防止爪9が収納スペース102から離脱し且つ第二の進入防止爪10が内壁Bから収納スペース102内に進入した状態となる。なお、第二の進入防止爪10は、既に述べた通り、収容状態にある磁気テープカートリッジ100の他の一側面cからの法線方向の離間距離が磁気テープカートリッジ100のテーパ面dの幅の範囲内となる位置において収納スペース102の内壁Bから収納スペース102内に進入する構成であるから、次の磁気テープカートリッジ100に設けられたテーパ面dによって得られた角部Xの切欠部分に容易に進入することが可能である。
【0049】
また、既に述べた通り、第一の進入防止爪9と第二の進入防止爪10との間の離間距離は1つの磁気テープカートリッジ100における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔となっているので、最初に挿入された磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aを第一の進入防止爪9に当接させることなく、つまり、部品間の喰い付きを発生させることなく、最初の磁気テープカートリッジ100を通過させるための第一の進入防止爪9の離脱動作すなわちカウンタークロックワイズ方向への誤挿入防止レバー13の回転動作を円滑に行わせることができる。
【0050】
そして、適切な方向性で挿入された最初の磁気テープカートリッジ100の反挿入側端面eが第二の進入防止爪10の配設位置を通過した直後に第一の進入防止爪9が収納スペース102から離脱するので、最初の磁気テープカートリッジ100の挿入側端面aが第一の進入防止爪9の配設位置に到達する時点では最初の磁気テープカートリッジ100の挿入操作を阻むものは何もなく、最初の磁気テープカートリッジ100および次の磁気テープカートリッジ100を容易に挿入完了位置まで押し進めることができる。
【0051】
2つの磁気テープカートリッジ100が磁気テープライブラリ装置用セル2の収納スペース102に完全に挿入され、ラッチ6が2つ目の磁気テープカートリッジ100の後端部に係合した状態を図7に示す。
【0052】
以上に開示した実施形態の一部または全部は、以下の付記に示す記載によって適切に表現され得るが、発明を実施するための形態や発明の技術思想は、これらのものに制限されるものではない。
【0053】
〔付記1〕
挿入側端面(a)に隣接する一側面(b)と,前記挿入側端面(a)および前記一側面(b)に隣接する他の一側面(c)と,前記挿入側端面(a)とによって画成される角部(X)に、前記挿入側端面(a)および前記一側面(b)に対して斜交すると共に前記他の一側面(c)に対して直交する面から成り,且つ,前記挿入側端面(a)と前記一側面(b)と前記他の一側面(c)に連絡するテーパ面(d)を、前記他の一側面(c)の法線方向における厚さ未満の幅で備えた複数個の磁気テープカートリッジ(100)の方向性を合わせて直列的に収容する収納スペース(102)と前記複数個の磁気テープカートリッジ(100)を挿抜するための挿抜口(103)とを有する磁気テープライブラリ装置用セル(2)に設けられるカートリッジ誤挿入防止機構(8)であって、
最初に挿入される磁気テープカートリッジ(100)における前記挿入側端面(a)の挿入完了位置よりも僅かに挿抜口(103)寄りで且つ収容状態にある磁気テープカートリッジ(100)の前記他の一側面(c)からの法線方向の離間距離が前記テーパ面(d)の幅を上回る位置において磁気テープカートリッジ(100)の前記一側面(b)に対応する前記収納スペース(102)の内壁(B)から前記収納スペース(102)内に進退可能とされた第一の進入防止爪(9)と、
前記第一の進入防止爪(9)から磁気テープカートリッジ(100)における挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔を置いた挿抜口(103)寄りの位置で且つ収容状態にある磁気テープカートリッジ(100)の前記他の一側面(c)からの法線方向の離間距離が前記テーパ面(d)の幅の範囲内となる位置において磁気テープカートリッジ(100)の前記一側面(b)に対応する前記収納スペース(102)の内壁(B)から前記収納スペース(102)内に進退可能とされた第二の進入防止爪(10)と、
前記第一,第二の進入防止爪(9,10)に連絡し、前記収納スペース(102)に対する前記第一,第二の進入防止爪(9,10)の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段(11)と、
前記第一の進入防止爪(9)が前記収納スペース(102)から離脱し、且つ、前記第二の進入防止爪(10)が前記収納スペース(102)内に進入する方向に前記リンケージ手段(11)を定常的に付勢するリンケージ付勢手段(12)とを備えたことを特徴とするカートリッジ誤挿入防止機構(8)。
【0054】
〔付記2〕
前記リンケージ手段(11)は、前記第一,第二の進入防止爪(9,10)と一体に形成されて磁気テープカートリッジ(100)の前記一側面(b)に対応する前記収納スペース(102)の内壁(B)に沿った姿勢で中央部を回転自在に軸支された誤挿入防止レバー(13)によって構成され、
前記リンケージ付勢手段(12)は、前記第二の進入防止爪(10)が前記収納スペース(102)内に進入する方向で前記誤挿入防止レバー(13)を回転付勢する回転付勢手段(14)によって構成されていることを特徴とする付記1記載のカートリッジ誤挿入防止機構(8)。
【0055】
〔付記3〕
前記回転付勢手段(12)は、誤挿入防止レバー(13)の中央部を回転自在に軸支するピン(15)に取り付けられた捩りコイルバネによって構成されていることを特徴とする付記2記載のカートリッジ誤挿入防止機構(8)。
【0056】
〔付記4〕
前記第一の進入防止爪(9)は前記他の一側面(c)の法線方向における磁気テープカートリッジ(100)の厚さに匹敵する幅を有し、前記第二の進入防止爪(10)は前記他の一側面(c)の法線方向における前記テーパ面(d)の幅に匹敵する幅を有していることを特徴とする付記1,付記2,付記3のうち何れか一項に記載のカートリッジ誤挿入防止機構(8)。
【0057】
〔付記5〕
付記1,付記2,付記3または付記4の何れか一項に記載のカートリッジ誤挿入防止機構(8)を備えた磁気テープライブラリ装置用セル(2)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、磁気テープライブラリ装置のマガジンを構成するセルに限らず、直方体のカートリッジを採用する各種装置のセルにおけるカートリッジ誤挿入防止機構として転用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 磁気テープライブラリ装置
2 磁気テープライブラリ装置用セル
3 マガジン
4 ドライブユニット
5 アクセッサ
6 ラッチ
7 板バネ
8 カートリッジ誤挿入防止機構
9 第一の進入防止爪
10 第二の進入防止爪
11 リンケージ手段
12 リンケージ付勢手段
13 誤挿入防止レバー
14 回転付勢手段(捩りコイルバネ等)
15 ピン
100 磁気テープカートリッジ
101 磁気テープライブラリ装置用セル
102 収納スペース
103 挿抜口
104 進入防止爪
a 磁気テープカートリッジの挿入側端面
b 磁気テープカートリッジの一側面
B 磁気テープカートリッジの一側面に対応する収納スペースの内壁
c 磁気テープカートリッジの他の一側面
d 磁気テープカートリッジのテーパ面
e 磁気テープカートリッジの反挿入側端面
f 磁気テープカートリッジの別の側面
X 磁気テープカートリッジの角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入側端面に隣接する一側面と,前記挿入側端面および前記一側面に隣接する他の一側面と,前記挿入側端面とによって画成される角部に、前記挿入側端面および前記一側面に対して斜交すると共に前記他の一側面に対して直交する面から成り,且つ,前記挿入側端面と前記一側面と前記他の一側面に連絡するテーパ面を、前記他の一側面の法線方向における厚さ未満の幅で備えた複数個の磁気テープカートリッジの方向性を合わせて直列的に収容する収納スペースと前記複数個の磁気テープカートリッジを挿抜するための挿抜口とを有する磁気テープライブラリ装置用セルに設けられるカートリッジ誤挿入防止機構であって、
最初に挿入される磁気テープカートリッジにおける前記挿入側端面の挿入完了位置よりも僅かに挿抜口寄りで且つ収容状態にある磁気テープカートリッジの前記他の一側面からの法線方向の離間距離が前記テーパ面の幅を上回る位置において磁気テープカートリッジの前記一側面に対応する前記収納スペースの内壁から前記収納スペース内に進退可能とされた第一の進入防止爪と、
前記第一の進入防止爪から磁気テープカートリッジにおける挿抜方向の長さを僅かに上回る間隔を置いた挿抜口寄りの位置で且つ収容状態にある磁気テープカートリッジの前記他の一側面からの法線方向の離間距離が前記テーパ面の幅の範囲内となる位置において磁気テープカートリッジの前記一側面に対応する前記収納スペースの内壁から前記収納スペース内に進退可能とされた第二の進入防止爪と、
前記第一,第二の進入防止爪に連絡し、前記収納スペースに対する前記第一,第二の進入防止爪の進退動作をトレードオフの関係で許容するリンケージ手段と、
前記第一の進入防止爪が前記収納スペースから離脱し、且つ、前記第二の進入防止爪が前記収納スペース内に進入する方向に前記リンケージ手段を定常的に付勢するリンケージ付勢手段とを備えたことを特徴とするカートリッジ誤挿入防止機構。
【請求項2】
前記リンケージ手段は、前記第一,第二の進入防止爪と一体に形成されて磁気テープカートリッジの前記一側面に対応する前記収納スペースの内壁に沿った姿勢で中央部を回転自在に軸支された誤挿入防止レバーによって構成され、
前記リンケージ付勢手段は、前記第二の進入防止爪が前記収納スペース内に進入する方向で前記誤挿入防止レバーを回転付勢する回転付勢手段によって構成されていることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ誤挿入防止機構。
【請求項3】
前記回転付勢手段は、誤挿入防止レバーの中央部を回転自在に軸支するピンに取り付けられた捩りコイルバネによって構成されていることを特徴とする請求項2記載のカートリッジ誤挿入防止機構。
【請求項4】
前記第一の進入防止爪は前記他の一側面の法線方向における磁気テープカートリッジの厚さに匹敵する幅を有し、前記第二の進入防止爪は前記他の一側面の法線方向における前記テーパ面の幅に匹敵する幅を有していることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3のうち何れか一項に記載のカートリッジ誤挿入防止機構。
【請求項5】
請求項1,請求項2,請求項3または請求項4の何れか一項に記載のカートリッジ誤挿入防止機構を備えた磁気テープライブラリ装置用セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168997(P2012−168997A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26886(P2011−26886)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)