カートン及び包装物供給体
【課題】包装物を切断するための切断刃を有したカートンの中に包装物が巻き回されたかたちのロールが収容されるカートンにおいて包装物を切断する際に生じる変形を抑えるカートン及び該カートンを用いる包装物供給体を提供する。
【解決手段】カートンに設けられた蓋部5は、収容部4の背面壁4Bに連結されて引き出し口を開閉する頂壁5Tと、切断刃6が取り付けられるとともに、収容部4の正面壁4Fの外側で該正面壁4Fと相対向するように頂壁5Tに連結された対向壁5Fとを有して、収容部4の正面壁4Fの外側表面と対向壁5Fの内側表面との間に引き出し口から引き出されたラップフィルム3Fが挟入可能に構成され、対向壁5Fは、該対向壁5Fの外側表面に押し出されたエンボス部7によって切断刃6の歯先6aが収容部4の正面壁4F側に向くように湾曲している。
【解決手段】カートンに設けられた蓋部5は、収容部4の背面壁4Bに連結されて引き出し口を開閉する頂壁5Tと、切断刃6が取り付けられるとともに、収容部4の正面壁4Fの外側で該正面壁4Fと相対向するように頂壁5Tに連結された対向壁5Fとを有して、収容部4の正面壁4Fの外側表面と対向壁5Fの内側表面との間に引き出し口から引き出されたラップフィルム3Fが挟入可能に構成され、対向壁5Fは、該対向壁5Fの外側表面に押し出されたエンボス部7によって切断刃6の歯先6aが収容部4の正面壁4F側に向くように湾曲している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物を切断するための切断刃を有したカートンの中に包装物が巻回されたかたちのロールが収容されるカートン及び包装物供給体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルム、アルミニウム箔、クッキングシートなどの包装物が巻き回されてなるロールには、取り扱い性や安全衛生の改善を図るために、ロールを収容する板紙製の箱体であるカートンが広く利用されている。包装物を引き出し可能にするカートンの中には、包装物の引き出し口となる開口を有してロールを収容する有底箱体状の収容部と、収容部の引き出し口を開閉可能に収容部に連結された蓋部とからなるものが一般に知られている。また蓋部を構成する縁のうちでロールの軸方向に沿う縁には、包装物を切断するための切断刃が取り付けられて、収容部から引き出された包装物を蓋部によってロールの軸方向に切断するカートンも一般的である。
【0003】
上述したカートンにおいて所定の長さの包装物がロールから切り取られる際には、下記(イ)〜(ハ)の作業が順に実施される。
(イ)まず、一方の手によって収容部が把持されて、収容部に収容された包装物が他方の手によって引き出し口から引き出される。
(ロ)次いで、収容部の正面壁と蓋部の対向壁との間に包装物が挟入され、切断刃の取り付けられた対向壁の一部が一方の手の親指などによって収容部の正面壁に押さえ付けられて、収容部の正面壁と蓋部の対向壁によって包装物が挟持される。
(ハ)そして、収容部を把持する一方の手によって、ロールの中心軸が回転中心となるようにカートンがロールの周方向に回されて、収容部から引き出された包装物に切断刃の歯先が差し込まれて包装物の切断が開始される。
【0004】
上記(ロ)の作業においては、後続する(ハ)の作業にて切断刃の歯先が包装物に円滑に差し込まれるように、収容部の正面壁と蓋部の対向壁とによって包装物が挟持されて、包装物と切断刃との相対的な位置が固定されている。そこで、包装物と切断刃との相対的な位置がより確実に固定されるように、特許文献1に記載のように、包装物と剥離可能に粘着する粘着層を収容部の一側壁に設けるという提案がなされている。収容部の一側壁に上述した粘着層が設けられる構成であれば、収容部から引き出された包装物が再び収容部内に巻き戻ってしまうことが抑えられるため、上記(ハ)の作業においては、切断刃の歯先が包装物に対して、より円滑に差し込まれるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−265839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、切断刃を有したカートンを備える包装物供給体の断面構造を示す断面図であって、上記(ハ)の作業時に蓋部に対して作用する力を説明する図である。図8に示されるように、切断刃を有したカートンによって包装物61が切断される際には、蓋部62の対向壁62Fに取付けられた切断刃63の歯先がまず、収容部64の引き出し口64aから引き出された包装物61に差し込まれ、次いで包装物61に差し込まれた切断刃63の各歯が、該包装物61を徐々に切り開く。
【0007】
この際、切断刃63の歯先が包装物61に差し込まれた後には、包装物61が収容部64から引き離されることに伴って、該包装物61に差し込まれた切断刃63も収容部64から引き離されるような外力Foを受けることになる。そして、切断刃63の取り付けられた対向壁62Fに対しても、収容部64から引き離されるような外力Foがロールの軸方向の全体にわたって作用するようになる。その結果、包装物61の切断作業が実行される度に上記外力Foが切断刃63に対して繰り返し作用することになり、終には切断刃63の歯先が収容部64から離れるように、対向壁62Fが反ってしまう(図8の二点鎖線参照)。
【0008】
包装物61の切断性を高めるためには、包装物61に対して切断刃63が円滑に差し込まれること、すなわち切断刃63の歯先を包装物61の表面に向けることが一般に必要とされている。しかしながら、上述したように対向壁62Fが反ってしまうと、切断刃63の歯先を包装物61の表面に向け難くなる結果、包装物61の切断性を欠くことになってしまう。
【0009】
なお、対向壁62Fのうちで収容部64の正面壁64Fに押さえ付けられる部分においては、指先などからの力によって上記外力Foが相殺されて、上述した対向壁62Fの反りも抑えられる。だが、収容部64の正面壁64Fに押さえ付けられていない対向壁62Fの部分では、上記外力Foに対する抗力が何ら作用しないために、上述したような対向壁62Fの反りが抑えられず、結局のところ包装物61の切断性が免れ得ないものとなる。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、包装物を切断するための切断刃を有したカートンの中に包装物が巻き回されたかたちのロールが収容されるカートンにおいて包装物を切断する際に生じる変形を抑えるカートン及び該カートンを用いる包装物供給体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及び作用・効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、包装物が巻き回されたロールを収容するカートンにおいて、前記包装物の引き出し口を頂部に有して前記ロールを収容する箱体状の収容部と、前記収容部に連結されて前記引き出し口を開閉する蓋部とを有し、前記蓋部に取り付けられて前記引き出し口から引き出された包装物を切断する切断刃を備えるカートンであって、前記蓋部は、前記収容部の背面壁に連結されて前記引き出し口を開閉する頂壁と、前記切断刃が取り付けられるとともに、前記収容部の正面壁の外側で該正面壁と相対向するように前記頂壁に連結された対向壁とを有して、前記対向壁は、該対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって前記切断刃の歯先が前記収容部の正面壁側に向くように湾曲していることを要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、蓋部の対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって該対向壁が湾曲し、且つ該対向壁に取り付けられた切断刃の歯先が収容部の正面壁側に向くようになる。切断刃の歯先が向く収容部の正面壁と該切断刃の取り付けられた対向壁との間には引き出された包装物が挟入されるため、切断刃の歯先は自ずと包装物の表面に向くことになる。その結果、切断刃の歯先が包装物に差し込まれやすくなるため、切断刃による包装物の切断性を向上することが可能である。しかも、切断刃の歯先を正面壁から遠ざける力が包装物の切断作業によって加えられるとしても、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め対向壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位を抑えることが可能である。それゆえに、包装物を切断する際に生じる対向壁の変形を抑え、切断刃による包装物の切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記対向壁が、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部は、前記ロールの軸方向において前記切断刃の全幅にわたり前記対向壁に複数配列されていることを要旨とする。
【0014】
切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、包装物の切断作業において切断刃を通して対向壁に加えられる。請求項2に記載の発明によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、ロールの軸方向に沿って切断刃の全幅にわたり複数配列されている。そのため、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め切断刃の全幅にわたり対向壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記対向壁が、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部が、前記切断刃の歯先を結ぶ線に沿って前記対向壁に配列されていることを要旨とする。
【0016】
切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、包装物の切断作業において切断刃の歯先から対向壁に伝えられる。請求項3に記載の発明によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、切断刃の歯先を結ぶ線に沿って配列されている。そのため、切断刃の歯先を対向壁に向ける力が予め切断刃の歯先の配列に沿って正面壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、包装物が巻き回されてなるロールと、前記ロールを収容するカートンとを備える包装物供給体であって、前記カートンが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンであることを要旨とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、包装物を切断する際に生じるカートンの変形を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の斜視構造を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の正面構造を示す正面図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の断面構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封後の断面構造を示す断面図。
【図5】包装物が切断刃の歯先に差し込まれる際の包装物と切断刃とを拡大した拡大図。
【図6】変形例にかかる包装物供給体の正面構造を示す正面図。
【図7】変形例にかかる包装物供給体の正面構造を示す正面図。
【図8】従来例の包装物供給体について包装物の切断開始時における断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる包装物供給体を具体化した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。図1〜図3は、それぞれ本実施形態の包装物供給体の開封前の斜視構造を示す斜視図、正面構造を示す正面図、及び断面構造を示す断面図である。また図4、図5は、それぞれ本実施形態の包装物供給体の開封後の断面構造を示す断面図、及び包装物の切断開始時における包装物と切断刃とを拡大した拡大断面図である。
【0021】
包装物供給体1は、板紙の一例であるコートボール紙が複数の罫線で折り曲げられてなる直方体形状のカートン2を備えている。カートン2の内部には、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等からなる包装物としてのラップフィルム3Fが円筒状のペーパーコア3Cに巻き回されてなるロール3が収容されている。以下、ロール3の中心軸線と平行な方向であって、カートン2の長手方向を軸方向Aという。またカートン2を構成する各側壁において、ロール3側の表面を内側表面、ロール3側とは反対側の表面を外側表面という。
【0022】
カートン2は、頂部が開口した有底箱体状の収容部4を有して、収容部4の内部にロール3を収容している。収容部4の底壁4BTには、底壁4BTを画定する前後一対の端辺に軸方向Aに延びる罫線が設けられて、上方に延びる前後一対の正面壁4F及び背面壁4Bが該罫線を介して底壁4BTと連結されている。また収容部4の底壁4BTには、底壁4BTを画定する左右一対の端辺に軸方向Aと交差する方向に延びる罫線が設けられて、上方に延びる左右一対の収容部左端壁4SL及び収容部右端壁4SRが該罫線を介して底壁BTに連結されている。さらに収容部4を構成する上記正面壁4Fの上端辺には軸方向Aに延びる罫線が設けられて、正面壁4Fの内側表面と重なる副正面壁4Fd(図3参照)がカートン2の強度を向上するように該罫線を介して連結されている。
【0023】
収容部4を構成する背面壁4Bには、背面壁4Bを画定する上端辺に軸方向Aに延びる罫線が設けられて、収容部4の開口を覆う蓋部5が該罫線を介して連結されている。この蓋部5の頂壁5Tは、頂壁5Tの後端辺と上記背面壁4Bの上端辺とが一つの罫線で重なるように背面壁4Bに回動可能に連結されて、ラップフィルム3Fの引き出し口である収容部4の開口を覆っている。蓋部5の頂壁5Tには、頂壁5Tを画定する左右一対の端辺に軸方向Aと交差する方向に延びる罫線が設けられて、上記収容部左端壁4SL及び収容部右端壁4SRの上部を外側から覆うかたちの蓋部左端壁5SL及び蓋部右端壁5SRが該罫線を介して連結されている。また蓋部5の頂壁5Tには、頂壁5Tを画定する前端辺に軸方向Aに延びる罫線5Lが設けられて、上記正面壁4Fの全体と相対向する対向壁5Fが該罫線5Lを介して頂壁5Tに連結されている。
【0024】
対向壁5Fにおける底壁4BT側には、軸方向Aの全体にわたって複数の接着ポイント4Fcが設けられ、該接着ポイント4Fcと対向する正面壁4Fの部分と対向壁5Fとが接着ポイント4Fcで接着されている。また対向壁5Fにおける上下方向の略中央には、正面側から見てV字形状をなすミシン目線5Fmが軸方向Aの全幅にわたって穿設されている。ミシン目線5Fmの右端には、ミシン目線5Fmに沿って対向壁5Fの切断を開始するための開封端5Eが設けられている。
【0025】
そして開封端5Eが対向壁5Fから正面側に引っ張られると、ミシン目線5Fmが右端から左端に向けて切断される。対向壁5Fがミシン目線5Fmで切断されると、正面壁4Fに接着されていた下側部分と、頂壁5Tに連設された上側部分とに、対向壁5Fが2分割される。そして対向壁5Fがミシン目線5Fmで2分割されることによって、上記接着ポイント4Fcによるカートン2の強制的な封止が解除される。また対向壁5Fが2分割されて頂壁5Tが回動することによって、カートン2が開封されてカートン2に収容されたラップフィルム3Fを引き出すことが可能になる。
【0026】
対向壁5Fと正面壁4Fとの間には、対向壁5Fの軸方向Aの全幅にわたる切断刃6がミシン目線5Fmと相対向するように対向壁5Fの内側表面に接着されている。切断刃6の歯先には、底壁4BT側に歯先を向ける複数の歯が、ミシン目線5Fmと同じく、正面側から見てV字形状に配列されている。そして対向壁5Fがミシン目線5Fmで2分割されて対向壁5Fの下側部分が収容部4から取り除かれることによって、上記切断刃6の各
歯が対向壁5Fの上側部分から露出するようになる。また正面壁4Fの外側表面において軸方向Aの中央付近には、ラップフィルム3Fと剥離可能に粘着する粘着層4aが収容部4の開口側に偏るように設けられている。
【0027】
そして、所望の長さのラップフィルム3Fがロール3から切り取られる際には、上述したようにカートン2が開封された後に、下記(a)〜(d)の作業が順に実施される。
(a)まず、収容部4の開口が開放された状態のカートン2が一方の手によって把持されて、収容部4に収容されたロール3におけるラップフィルム3Fの先端が他方の手によって収容部4の開口から引き出される。
(b)次に、収容部4の開口が蓋部5によって閉じられて、収容部4の開口から引き出されたラップフィルム3Fが正面壁4Fの外側表面と対向壁5Fの内側表面との間に挟入される。
(c)次いで、カートン2を把持する一方の手の親指などによって対向壁5Fの中央が正面壁4Fに押さえ付けられる。この際、引き出されたラップフィルム3Fが粘着層4aに粘着して、引き出されたラップフィルム3Fと切断刃6との相対位置が軸方向Aの中央において確実に固定される。
(d)続いて、カートン2を把持する一方の手によってカートン2がロール3の周方向Rに捻られる。これによって、切断刃6における軸方向Aの中央付近の各歯が引き出されたラップフィルム3Fへ差し込まれて、軸方向Aの中央付近からラップフィルム3Fが切り開かれる。
(e)そしてカートン2がロール3の周方向Rに更に捻られる。これによって、切断刃6の各歯が軸方向Aの中央側から順に引き出されたラップフィルム3Fへ差し込まれて、引き出されたラップフィルム3Fにおける軸方向Aの中央側から順にラップフィルム3Fが切り開かれる。
【0028】
上記(d)の作業では、ラップフィルム3Fに対する切断刃6の差し込みを円滑にするためには、まず切断刃6の歯先をラップフィルム3Fの表面に向けることが必要とされる。しかしながら、上記(e)の作業のように、切断刃6の歯先がラップフィルム3Fに差し込まれた後には、ラップフィルム3Fが収容部4から引き離されることに伴って、切断刃6の歯先も収容部4から引き離されるような外力を受けることとなる。その結果、上記(e)の作業が実施される度に上記外力が切断刃6に対して繰り返し作用することとなり、切断刃6の歯先が収容部4から離れるように対向壁5Fが反る虞がある。そこで、本実施の形態では、対向壁5Fの反りを抑えるべく、対向壁5Fにエンボス部7が設けられている。
【0029】
詳述すると、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分(図2における破線部分)の上側であって、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと相対向しない領域には、対向壁5Fの外側表面に突出する半円球状の複数のエンボス部7が軸方向Aに沿って配列されている。ここで複数とは、2以上で200以下、好ましくは、2以上で150以下、さらに好ましくは、4以上で100以下の数をいう。なお、上記半円球状には、断面が円形となるものに限られず、断面が円の一部であるもの、断面が楕円形のもの、断面が楕円の一部であるもの、断面が放物線またはその一部であるもの、断面が双曲線またはその一部であるもの、断面が曲線から構成されているものも含まれる。また、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと相対向しない領域とは、対向壁5Fを正面側から見たときに、対向壁5Fのうちで、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと重ならない領域である。そして粘着層4aと相対向しない領域にエンボス部7が設けられるため、包装物供給体1を使用する使用者に、エンボス部7の設けられていない領域、すなわち粘着層4aが設けられた領域であって切断刃6における軸方向Aの中央を、触覚を通して認知させることが可能である。
【0030】
エンボス部7は、例えばポンチや金型などの押圧部材によって対向壁5Fの内側表面が
押圧されることで該対向壁5Fの一部が外側表面から正面側に突出するエンボス加工により形成される。押圧によって形成されたエンボス部7の外縁部7a(図3及び図4参照)においては、対向壁5Fの内側表面が伸張し、且つ該対向壁5Fの外側表面が収縮する。そのため、エンボス部7の外縁部7aにおいては、対向壁5Fの内側表面における紙の密度と対向壁5Fの外側表面における紙の密度とに差が生じる。
【0031】
そして、対向壁5Fの内側表面には、対向壁5Fそのものが有する弾性力によって、伸張した部位が元に戻ろうとする圧縮応力が内在するようになる。また対向壁5Fの外側表面には、対向壁5Fそのものが有する弾性力によって、収縮した部位が元に戻ろうとする引張応力が内在するようになる。その結果、押圧部材による押圧が解除された状態、あるいはカートン2が開封された状態では(図4参照)、エンボス部7の外縁部7aに内在する応力が解放されて、対向壁5Fが正面側に突出するように湾曲する。すなわち、切断刃の歯が延びる方向と正面壁4Fに粘着されたラップフィルム3Fの表面とのなす角度θが0°<θ<90°を満たす範囲で、切断刃6の歯先6aが正面壁4Fに向くように対向壁5Fが湾曲する。
【0032】
ここで、上記のように対向壁5Fが湾曲するとなれば、切断刃の歯が延びる方向とラップフィルム3Fの表面とのなす角度θの分、上記(d)の作業において、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fの表面に向くことになる。その結果、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fに差し込まれやすくなるため、切断刃6の歯先6aをラップフィルム3Fに差し込むための負荷が軽減されて、ラップフィルム3Fの切断性を向上することが可能である。
【0033】
また、上記のように対向壁5Fが湾曲するとなれば、図5に示されるように、エンボス部7の外縁部7aに内在する応力Fiは、切断刃6の歯先6aが正面壁4Fの外側表面に押し付けられるように、該切断刃6に作用する。その結果、上記(e)の作業においては、正面壁4Fから引き離されるような外力Foを切断刃6の歯先6aが受ける一方、この外力Foに抗した応力Fiをも切断刃6は常に受けることになる。それゆえに、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざける外力Foがラップフィルム3Fによって加えられるとしても、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位を抑えることが可能である。よって、ラップフィルム3Fを切断する際に生じる対向壁5Fの変形を抑え、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0034】
ここで、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する上記外力Foは、上記(e)の作業において切断刃6を通して対向壁5Fに加えられる。この点、上述した構成においては、複数のエンボス部7が、ロール3の軸方向Aに沿って切断刃6の全幅にわたり配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6の全幅にわたり対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0035】
また、エンボス部7を構成する段差部分のうち、ロール3の軸方向Aと平行な方向に延びる段差部分や切断刃6の歯先6aを結ぶ線と平行な方向に延びる段差部分は、切断刃6の歯先6aを正面壁から遠ざける外力Foによって折り曲げられやすい。この点、上記した構成によれば、エンボス部7が半球状に構成されるため、上述した折り曲げを抑えることが可能である。その結果、切断刃6が取り付けられた対向壁5Fの変形をより確実に抑えることが可能である。
【0036】
なお、本実施形態の開封前のカートン2では、エンボス部7によって対向壁6Fが湾曲しない状態で正面壁4Fと対向壁5Fとが接着ポイント4Fcで接着されている。これに
限らず、エンボス部7によって対向壁6Fが湾曲した状態で正面壁4Fと対向壁5Fとが開封前に接着されてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかる包装物供給体及びカートンによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)蓋部5の対向壁5Fの外側表面に押し出されたエンボス部7によって、正面側に突出するように対向壁5Fが湾曲している。そして対向壁5Fに取り付けられた切断刃6の歯先6aが収容部4の正面壁4F側に向くようになる。その結果、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fに差し込まれやすくなるため、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性を向上することが可能である。
【0038】
(2)しかも、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざける外力Foがラップフィルム3Fの切断作業によって加えられるとしても、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位を抑えることが可能である。それゆえに、ラップフィルム3Fを切断する際に生じる対向壁5Fの変形を抑え、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0039】
(3)切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向けるエンボス部7が、ロール3の軸方向Aに沿って切断刃6の全幅にわたり複数配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6の全幅にわたり対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0040】
(4)粘着層4aと相対向しない領域にエンボス部7が設けられるため、包装物供給体1を使用する使用者に、エンボス部7の設けられていない領域、すなわち粘着層4aが設けられた領域であって切断刃6における軸方向Aの中央を、触覚を通して認知させることが可能である。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・複数のエンボス部7の位置は、軸方向Aに沿う直線上に限られず、例えば図6に示されるように、切断刃6の歯先6aを結ぶ線、すなわち正面側から見てV字形状をなす線上に配置されてもよい。
【0042】
切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する外力Foは、ラップフィルム3Fの切断作業において切断刃6の歯先6aから対向壁5Fに伝えられる。上記の構成によれば、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向けるエンボス部7が、切断刃6の歯先6aを結ぶ線に沿って配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける力が予め切断刃6の歯先6aの配列に沿って正面壁4Fに付与されている分、上述した(1)〜(4)の効果に加えて、切断刃6の歯先6aの変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0043】
・また図6に示されるように、複数のエンボス部7は、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分に隣接している構成が好ましい。
上述したように、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する外力Foは、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分を通して対向壁5Fに伝えられる。上記の構成によれば、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6が接合される接合部分の近傍から切断刃6に付与されている分、同切断刃6の歯先6aを対向壁5Fに向ける力がより直接的に切断刃6に付与される。その結果、切断刃6の歯先6aの変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0044】
・エンボス部7の形状は、半球状に限られず、エンボス部の形状は、切断刃6の歯先6aが収容部の正面壁側に向くように湾曲する形状であれば、例えば断面が矩形のエンボス部であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)、(2)、(4)に準じた効果を得ることができる。
【0045】
・対向壁5Fに設けられるエンボス部7の個数は、切断刃6の歯先6aが収容部の正面壁側に向くように湾曲する個数であれば、特に限定されるものではない。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に準じた効果を得ることができる。
【0046】
・切断刃6の形状は、V字形状に限られず、例えば図7に示されるように、対向壁が延びる方向(軸方向A)に沿って延びる直線状の切断刃であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に類する効果を得ることができる。
【0047】
・複数のエンボス部7の位置は、粘着層4aと相対向しない領域に限られず、ラップフィルム3Fが粘着層4aに十分粘着するのであれば、粘着層4aと相対向する領域に配置されてもよい。
【0048】
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(付記1)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部は、前記切断刃が接合される前記対向壁の接合部分に隣接していることを特徴とするカートン。
【0049】
上述したように、切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、切断刃が接合される対向壁の接合部分を通して対向壁に伝えられる。(付記1)に記載の構成によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、切断刃が接合される対向壁の接合部分に隣接している。そのため、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め切断刃が接合される接合部分の近傍から切断刃に付与されている分、同切断刃の歯先を対向壁に向ける力がより直接的に切断刃に付与される。その結果、切断刃の歯先の変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0050】
(付記2)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記エンボス部が半球状であることを特徴とするカートン。上記した半球状には、断面が円形のものに限られず、楕円形のものも含まれている。
【0051】
エンボス部を構成する段差部分のうち、ロールの軸方向と平行な方向に延びる段差部分や切断刃の歯先を結ぶ線と平行な方向に延びる段差部分は、切断刃の歯先を正面壁から遠ざける力によって折り曲げられやすい。この点、(付記2)に記載の構成によれば、エンボス部が半球状に構成されるため、上述した折り曲げを抑えることが可能である。その結果、切断刃が取り付けられた対向壁の変形をより確実に抑えることが可能である。
【0052】
(付記3)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記収容部の正面壁の外側表面には、前記包装物が剥離可能に粘着する粘着層が設けられ、前記エンボス部は、前記粘着層とは相対向しない領域に設けられていることを特徴とするカートン。
【0053】
収容部の正面壁の外側表面に設けられた粘着層は、該収容部の正面壁の外側表面と蓋部対向壁の内側表面とによる包装物の挟持をより確実なものとする。そして、収容部の正面壁の外側表面に設けられた粘着層は、収容部から引き出された包装物が再び収容部内に巻
き戻ってしまうことを抑え、切断刃の歯先が包装物に円滑に差し込まれることを可能にする。一方、蓋部の対向壁の内側表面のうちで粘着層と相対向する領域に上述したエンボス部が設けられると、粘着層と相対向する領域が段差を有した面となってしまい、粘着層に対する包装物の粘着性が失われる虞がある。この点、(付記3)に記載の発明によれば、粘着層とは相対向しない領域にエンボス部が設けられる構成であるため、上述した粘着層による効果が失われることもない。
【符号の説明】
【0054】
θ…角度、A…軸方向、R…周方向、1…包装物供給体、2…カートン、3…ロール、3C…ペーパーコア、3F…ラップフィルム、4…カートン本体、4B…背面壁、4BT…底壁、4F…正面壁、4Fc…接着ポイント、4Fd…副正面壁、4SL,4SR…収容部端壁、5…蓋部、5E…開封端、5F…対向壁、5Fm…ミシン目線、5SL,5SR…蓋部端壁、5T…頂壁、6…切断刃、7…エンボス部、7a…外縁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物を切断するための切断刃を有したカートンの中に包装物が巻回されたかたちのロールが収容されるカートン及び包装物供給体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルム、アルミニウム箔、クッキングシートなどの包装物が巻き回されてなるロールには、取り扱い性や安全衛生の改善を図るために、ロールを収容する板紙製の箱体であるカートンが広く利用されている。包装物を引き出し可能にするカートンの中には、包装物の引き出し口となる開口を有してロールを収容する有底箱体状の収容部と、収容部の引き出し口を開閉可能に収容部に連結された蓋部とからなるものが一般に知られている。また蓋部を構成する縁のうちでロールの軸方向に沿う縁には、包装物を切断するための切断刃が取り付けられて、収容部から引き出された包装物を蓋部によってロールの軸方向に切断するカートンも一般的である。
【0003】
上述したカートンにおいて所定の長さの包装物がロールから切り取られる際には、下記(イ)〜(ハ)の作業が順に実施される。
(イ)まず、一方の手によって収容部が把持されて、収容部に収容された包装物が他方の手によって引き出し口から引き出される。
(ロ)次いで、収容部の正面壁と蓋部の対向壁との間に包装物が挟入され、切断刃の取り付けられた対向壁の一部が一方の手の親指などによって収容部の正面壁に押さえ付けられて、収容部の正面壁と蓋部の対向壁によって包装物が挟持される。
(ハ)そして、収容部を把持する一方の手によって、ロールの中心軸が回転中心となるようにカートンがロールの周方向に回されて、収容部から引き出された包装物に切断刃の歯先が差し込まれて包装物の切断が開始される。
【0004】
上記(ロ)の作業においては、後続する(ハ)の作業にて切断刃の歯先が包装物に円滑に差し込まれるように、収容部の正面壁と蓋部の対向壁とによって包装物が挟持されて、包装物と切断刃との相対的な位置が固定されている。そこで、包装物と切断刃との相対的な位置がより確実に固定されるように、特許文献1に記載のように、包装物と剥離可能に粘着する粘着層を収容部の一側壁に設けるという提案がなされている。収容部の一側壁に上述した粘着層が設けられる構成であれば、収容部から引き出された包装物が再び収容部内に巻き戻ってしまうことが抑えられるため、上記(ハ)の作業においては、切断刃の歯先が包装物に対して、より円滑に差し込まれるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−265839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、切断刃を有したカートンを備える包装物供給体の断面構造を示す断面図であって、上記(ハ)の作業時に蓋部に対して作用する力を説明する図である。図8に示されるように、切断刃を有したカートンによって包装物61が切断される際には、蓋部62の対向壁62Fに取付けられた切断刃63の歯先がまず、収容部64の引き出し口64aから引き出された包装物61に差し込まれ、次いで包装物61に差し込まれた切断刃63の各歯が、該包装物61を徐々に切り開く。
【0007】
この際、切断刃63の歯先が包装物61に差し込まれた後には、包装物61が収容部64から引き離されることに伴って、該包装物61に差し込まれた切断刃63も収容部64から引き離されるような外力Foを受けることになる。そして、切断刃63の取り付けられた対向壁62Fに対しても、収容部64から引き離されるような外力Foがロールの軸方向の全体にわたって作用するようになる。その結果、包装物61の切断作業が実行される度に上記外力Foが切断刃63に対して繰り返し作用することになり、終には切断刃63の歯先が収容部64から離れるように、対向壁62Fが反ってしまう(図8の二点鎖線参照)。
【0008】
包装物61の切断性を高めるためには、包装物61に対して切断刃63が円滑に差し込まれること、すなわち切断刃63の歯先を包装物61の表面に向けることが一般に必要とされている。しかしながら、上述したように対向壁62Fが反ってしまうと、切断刃63の歯先を包装物61の表面に向け難くなる結果、包装物61の切断性を欠くことになってしまう。
【0009】
なお、対向壁62Fのうちで収容部64の正面壁64Fに押さえ付けられる部分においては、指先などからの力によって上記外力Foが相殺されて、上述した対向壁62Fの反りも抑えられる。だが、収容部64の正面壁64Fに押さえ付けられていない対向壁62Fの部分では、上記外力Foに対する抗力が何ら作用しないために、上述したような対向壁62Fの反りが抑えられず、結局のところ包装物61の切断性が免れ得ないものとなる。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、包装物を切断するための切断刃を有したカートンの中に包装物が巻き回されたかたちのロールが収容されるカートンにおいて包装物を切断する際に生じる変形を抑えるカートン及び該カートンを用いる包装物供給体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及び作用・効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、包装物が巻き回されたロールを収容するカートンにおいて、前記包装物の引き出し口を頂部に有して前記ロールを収容する箱体状の収容部と、前記収容部に連結されて前記引き出し口を開閉する蓋部とを有し、前記蓋部に取り付けられて前記引き出し口から引き出された包装物を切断する切断刃を備えるカートンであって、前記蓋部は、前記収容部の背面壁に連結されて前記引き出し口を開閉する頂壁と、前記切断刃が取り付けられるとともに、前記収容部の正面壁の外側で該正面壁と相対向するように前記頂壁に連結された対向壁とを有して、前記対向壁は、該対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって前記切断刃の歯先が前記収容部の正面壁側に向くように湾曲していることを要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、蓋部の対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって該対向壁が湾曲し、且つ該対向壁に取り付けられた切断刃の歯先が収容部の正面壁側に向くようになる。切断刃の歯先が向く収容部の正面壁と該切断刃の取り付けられた対向壁との間には引き出された包装物が挟入されるため、切断刃の歯先は自ずと包装物の表面に向くことになる。その結果、切断刃の歯先が包装物に差し込まれやすくなるため、切断刃による包装物の切断性を向上することが可能である。しかも、切断刃の歯先を正面壁から遠ざける力が包装物の切断作業によって加えられるとしても、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め対向壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位を抑えることが可能である。それゆえに、包装物を切断する際に生じる対向壁の変形を抑え、切断刃による包装物の切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記対向壁が、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部は、前記ロールの軸方向において前記切断刃の全幅にわたり前記対向壁に複数配列されていることを要旨とする。
【0014】
切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、包装物の切断作業において切断刃を通して対向壁に加えられる。請求項2に記載の発明によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、ロールの軸方向に沿って切断刃の全幅にわたり複数配列されている。そのため、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め切断刃の全幅にわたり対向壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記対向壁が、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部が、前記切断刃の歯先を結ぶ線に沿って前記対向壁に配列されていることを要旨とする。
【0016】
切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、包装物の切断作業において切断刃の歯先から対向壁に伝えられる。請求項3に記載の発明によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、切断刃の歯先を結ぶ線に沿って配列されている。そのため、切断刃の歯先を対向壁に向ける力が予め切断刃の歯先の配列に沿って正面壁に付与されている分、切断刃の歯先の変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、包装物が巻き回されてなるロールと、前記ロールを収容するカートンとを備える包装物供給体であって、前記カートンが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンであることを要旨とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、包装物を切断する際に生じるカートンの変形を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の斜視構造を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の正面構造を示す正面図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封前の断面構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかる包装物供給体の開封後の断面構造を示す断面図。
【図5】包装物が切断刃の歯先に差し込まれる際の包装物と切断刃とを拡大した拡大図。
【図6】変形例にかかる包装物供給体の正面構造を示す正面図。
【図7】変形例にかかる包装物供給体の正面構造を示す正面図。
【図8】従来例の包装物供給体について包装物の切断開始時における断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる包装物供給体を具体化した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。図1〜図3は、それぞれ本実施形態の包装物供給体の開封前の斜視構造を示す斜視図、正面構造を示す正面図、及び断面構造を示す断面図である。また図4、図5は、それぞれ本実施形態の包装物供給体の開封後の断面構造を示す断面図、及び包装物の切断開始時における包装物と切断刃とを拡大した拡大断面図である。
【0021】
包装物供給体1は、板紙の一例であるコートボール紙が複数の罫線で折り曲げられてなる直方体形状のカートン2を備えている。カートン2の内部には、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等からなる包装物としてのラップフィルム3Fが円筒状のペーパーコア3Cに巻き回されてなるロール3が収容されている。以下、ロール3の中心軸線と平行な方向であって、カートン2の長手方向を軸方向Aという。またカートン2を構成する各側壁において、ロール3側の表面を内側表面、ロール3側とは反対側の表面を外側表面という。
【0022】
カートン2は、頂部が開口した有底箱体状の収容部4を有して、収容部4の内部にロール3を収容している。収容部4の底壁4BTには、底壁4BTを画定する前後一対の端辺に軸方向Aに延びる罫線が設けられて、上方に延びる前後一対の正面壁4F及び背面壁4Bが該罫線を介して底壁4BTと連結されている。また収容部4の底壁4BTには、底壁4BTを画定する左右一対の端辺に軸方向Aと交差する方向に延びる罫線が設けられて、上方に延びる左右一対の収容部左端壁4SL及び収容部右端壁4SRが該罫線を介して底壁BTに連結されている。さらに収容部4を構成する上記正面壁4Fの上端辺には軸方向Aに延びる罫線が設けられて、正面壁4Fの内側表面と重なる副正面壁4Fd(図3参照)がカートン2の強度を向上するように該罫線を介して連結されている。
【0023】
収容部4を構成する背面壁4Bには、背面壁4Bを画定する上端辺に軸方向Aに延びる罫線が設けられて、収容部4の開口を覆う蓋部5が該罫線を介して連結されている。この蓋部5の頂壁5Tは、頂壁5Tの後端辺と上記背面壁4Bの上端辺とが一つの罫線で重なるように背面壁4Bに回動可能に連結されて、ラップフィルム3Fの引き出し口である収容部4の開口を覆っている。蓋部5の頂壁5Tには、頂壁5Tを画定する左右一対の端辺に軸方向Aと交差する方向に延びる罫線が設けられて、上記収容部左端壁4SL及び収容部右端壁4SRの上部を外側から覆うかたちの蓋部左端壁5SL及び蓋部右端壁5SRが該罫線を介して連結されている。また蓋部5の頂壁5Tには、頂壁5Tを画定する前端辺に軸方向Aに延びる罫線5Lが設けられて、上記正面壁4Fの全体と相対向する対向壁5Fが該罫線5Lを介して頂壁5Tに連結されている。
【0024】
対向壁5Fにおける底壁4BT側には、軸方向Aの全体にわたって複数の接着ポイント4Fcが設けられ、該接着ポイント4Fcと対向する正面壁4Fの部分と対向壁5Fとが接着ポイント4Fcで接着されている。また対向壁5Fにおける上下方向の略中央には、正面側から見てV字形状をなすミシン目線5Fmが軸方向Aの全幅にわたって穿設されている。ミシン目線5Fmの右端には、ミシン目線5Fmに沿って対向壁5Fの切断を開始するための開封端5Eが設けられている。
【0025】
そして開封端5Eが対向壁5Fから正面側に引っ張られると、ミシン目線5Fmが右端から左端に向けて切断される。対向壁5Fがミシン目線5Fmで切断されると、正面壁4Fに接着されていた下側部分と、頂壁5Tに連設された上側部分とに、対向壁5Fが2分割される。そして対向壁5Fがミシン目線5Fmで2分割されることによって、上記接着ポイント4Fcによるカートン2の強制的な封止が解除される。また対向壁5Fが2分割されて頂壁5Tが回動することによって、カートン2が開封されてカートン2に収容されたラップフィルム3Fを引き出すことが可能になる。
【0026】
対向壁5Fと正面壁4Fとの間には、対向壁5Fの軸方向Aの全幅にわたる切断刃6がミシン目線5Fmと相対向するように対向壁5Fの内側表面に接着されている。切断刃6の歯先には、底壁4BT側に歯先を向ける複数の歯が、ミシン目線5Fmと同じく、正面側から見てV字形状に配列されている。そして対向壁5Fがミシン目線5Fmで2分割されて対向壁5Fの下側部分が収容部4から取り除かれることによって、上記切断刃6の各
歯が対向壁5Fの上側部分から露出するようになる。また正面壁4Fの外側表面において軸方向Aの中央付近には、ラップフィルム3Fと剥離可能に粘着する粘着層4aが収容部4の開口側に偏るように設けられている。
【0027】
そして、所望の長さのラップフィルム3Fがロール3から切り取られる際には、上述したようにカートン2が開封された後に、下記(a)〜(d)の作業が順に実施される。
(a)まず、収容部4の開口が開放された状態のカートン2が一方の手によって把持されて、収容部4に収容されたロール3におけるラップフィルム3Fの先端が他方の手によって収容部4の開口から引き出される。
(b)次に、収容部4の開口が蓋部5によって閉じられて、収容部4の開口から引き出されたラップフィルム3Fが正面壁4Fの外側表面と対向壁5Fの内側表面との間に挟入される。
(c)次いで、カートン2を把持する一方の手の親指などによって対向壁5Fの中央が正面壁4Fに押さえ付けられる。この際、引き出されたラップフィルム3Fが粘着層4aに粘着して、引き出されたラップフィルム3Fと切断刃6との相対位置が軸方向Aの中央において確実に固定される。
(d)続いて、カートン2を把持する一方の手によってカートン2がロール3の周方向Rに捻られる。これによって、切断刃6における軸方向Aの中央付近の各歯が引き出されたラップフィルム3Fへ差し込まれて、軸方向Aの中央付近からラップフィルム3Fが切り開かれる。
(e)そしてカートン2がロール3の周方向Rに更に捻られる。これによって、切断刃6の各歯が軸方向Aの中央側から順に引き出されたラップフィルム3Fへ差し込まれて、引き出されたラップフィルム3Fにおける軸方向Aの中央側から順にラップフィルム3Fが切り開かれる。
【0028】
上記(d)の作業では、ラップフィルム3Fに対する切断刃6の差し込みを円滑にするためには、まず切断刃6の歯先をラップフィルム3Fの表面に向けることが必要とされる。しかしながら、上記(e)の作業のように、切断刃6の歯先がラップフィルム3Fに差し込まれた後には、ラップフィルム3Fが収容部4から引き離されることに伴って、切断刃6の歯先も収容部4から引き離されるような外力を受けることとなる。その結果、上記(e)の作業が実施される度に上記外力が切断刃6に対して繰り返し作用することとなり、切断刃6の歯先が収容部4から離れるように対向壁5Fが反る虞がある。そこで、本実施の形態では、対向壁5Fの反りを抑えるべく、対向壁5Fにエンボス部7が設けられている。
【0029】
詳述すると、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分(図2における破線部分)の上側であって、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと相対向しない領域には、対向壁5Fの外側表面に突出する半円球状の複数のエンボス部7が軸方向Aに沿って配列されている。ここで複数とは、2以上で200以下、好ましくは、2以上で150以下、さらに好ましくは、4以上で100以下の数をいう。なお、上記半円球状には、断面が円形となるものに限られず、断面が円の一部であるもの、断面が楕円形のもの、断面が楕円の一部であるもの、断面が放物線またはその一部であるもの、断面が双曲線またはその一部であるもの、断面が曲線から構成されているものも含まれる。また、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと相対向しない領域とは、対向壁5Fを正面側から見たときに、対向壁5Fのうちで、正面壁4Fに設けられた粘着層4aと重ならない領域である。そして粘着層4aと相対向しない領域にエンボス部7が設けられるため、包装物供給体1を使用する使用者に、エンボス部7の設けられていない領域、すなわち粘着層4aが設けられた領域であって切断刃6における軸方向Aの中央を、触覚を通して認知させることが可能である。
【0030】
エンボス部7は、例えばポンチや金型などの押圧部材によって対向壁5Fの内側表面が
押圧されることで該対向壁5Fの一部が外側表面から正面側に突出するエンボス加工により形成される。押圧によって形成されたエンボス部7の外縁部7a(図3及び図4参照)においては、対向壁5Fの内側表面が伸張し、且つ該対向壁5Fの外側表面が収縮する。そのため、エンボス部7の外縁部7aにおいては、対向壁5Fの内側表面における紙の密度と対向壁5Fの外側表面における紙の密度とに差が生じる。
【0031】
そして、対向壁5Fの内側表面には、対向壁5Fそのものが有する弾性力によって、伸張した部位が元に戻ろうとする圧縮応力が内在するようになる。また対向壁5Fの外側表面には、対向壁5Fそのものが有する弾性力によって、収縮した部位が元に戻ろうとする引張応力が内在するようになる。その結果、押圧部材による押圧が解除された状態、あるいはカートン2が開封された状態では(図4参照)、エンボス部7の外縁部7aに内在する応力が解放されて、対向壁5Fが正面側に突出するように湾曲する。すなわち、切断刃の歯が延びる方向と正面壁4Fに粘着されたラップフィルム3Fの表面とのなす角度θが0°<θ<90°を満たす範囲で、切断刃6の歯先6aが正面壁4Fに向くように対向壁5Fが湾曲する。
【0032】
ここで、上記のように対向壁5Fが湾曲するとなれば、切断刃の歯が延びる方向とラップフィルム3Fの表面とのなす角度θの分、上記(d)の作業において、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fの表面に向くことになる。その結果、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fに差し込まれやすくなるため、切断刃6の歯先6aをラップフィルム3Fに差し込むための負荷が軽減されて、ラップフィルム3Fの切断性を向上することが可能である。
【0033】
また、上記のように対向壁5Fが湾曲するとなれば、図5に示されるように、エンボス部7の外縁部7aに内在する応力Fiは、切断刃6の歯先6aが正面壁4Fの外側表面に押し付けられるように、該切断刃6に作用する。その結果、上記(e)の作業においては、正面壁4Fから引き離されるような外力Foを切断刃6の歯先6aが受ける一方、この外力Foに抗した応力Fiをも切断刃6は常に受けることになる。それゆえに、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざける外力Foがラップフィルム3Fによって加えられるとしても、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位を抑えることが可能である。よって、ラップフィルム3Fを切断する際に生じる対向壁5Fの変形を抑え、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0034】
ここで、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する上記外力Foは、上記(e)の作業において切断刃6を通して対向壁5Fに加えられる。この点、上述した構成においては、複数のエンボス部7が、ロール3の軸方向Aに沿って切断刃6の全幅にわたり配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6の全幅にわたり対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0035】
また、エンボス部7を構成する段差部分のうち、ロール3の軸方向Aと平行な方向に延びる段差部分や切断刃6の歯先6aを結ぶ線と平行な方向に延びる段差部分は、切断刃6の歯先6aを正面壁から遠ざける外力Foによって折り曲げられやすい。この点、上記した構成によれば、エンボス部7が半球状に構成されるため、上述した折り曲げを抑えることが可能である。その結果、切断刃6が取り付けられた対向壁5Fの変形をより確実に抑えることが可能である。
【0036】
なお、本実施形態の開封前のカートン2では、エンボス部7によって対向壁6Fが湾曲しない状態で正面壁4Fと対向壁5Fとが接着ポイント4Fcで接着されている。これに
限らず、エンボス部7によって対向壁6Fが湾曲した状態で正面壁4Fと対向壁5Fとが開封前に接着されてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかる包装物供給体及びカートンによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)蓋部5の対向壁5Fの外側表面に押し出されたエンボス部7によって、正面側に突出するように対向壁5Fが湾曲している。そして対向壁5Fに取り付けられた切断刃6の歯先6aが収容部4の正面壁4F側に向くようになる。その結果、切断刃6の歯先6aがラップフィルム3Fに差し込まれやすくなるため、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性を向上することが可能である。
【0038】
(2)しかも、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざける外力Foがラップフィルム3Fの切断作業によって加えられるとしても、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位を抑えることが可能である。それゆえに、ラップフィルム3Fを切断する際に生じる対向壁5Fの変形を抑え、切断刃6によるラップフィルム3Fの切断性をより長期間にわたって維持することが可能である。
【0039】
(3)切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向けるエンボス部7が、ロール3の軸方向Aに沿って切断刃6の全幅にわたり複数配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6の全幅にわたり対向壁5Fに付与されている分、切断刃6の歯先6aの変位をより広範囲にわたり抑えることが可能である。
【0040】
(4)粘着層4aと相対向しない領域にエンボス部7が設けられるため、包装物供給体1を使用する使用者に、エンボス部7の設けられていない領域、すなわち粘着層4aが設けられた領域であって切断刃6における軸方向Aの中央を、触覚を通して認知させることが可能である。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・複数のエンボス部7の位置は、軸方向Aに沿う直線上に限られず、例えば図6に示されるように、切断刃6の歯先6aを結ぶ線、すなわち正面側から見てV字形状をなす線上に配置されてもよい。
【0042】
切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する外力Foは、ラップフィルム3Fの切断作業において切断刃6の歯先6aから対向壁5Fに伝えられる。上記の構成によれば、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向けるエンボス部7が、切断刃6の歯先6aを結ぶ線に沿って配列されている。そのため、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける力が予め切断刃6の歯先6aの配列に沿って正面壁4Fに付与されている分、上述した(1)〜(4)の効果に加えて、切断刃6の歯先6aの変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0043】
・また図6に示されるように、複数のエンボス部7は、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分に隣接している構成が好ましい。
上述したように、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fから遠ざけるように対向壁5Fを変形する外力Foは、切断刃6が接合される対向壁5Fの接合部分を通して対向壁5Fに伝えられる。上記の構成によれば、切断刃6の歯先6aを正面壁4Fに向ける応力Fiが予め切断刃6が接合される接合部分の近傍から切断刃6に付与されている分、同切断刃6の歯先6aを対向壁5Fに向ける力がより直接的に切断刃6に付与される。その結果、切断刃6の歯先6aの変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0044】
・エンボス部7の形状は、半球状に限られず、エンボス部の形状は、切断刃6の歯先6aが収容部の正面壁側に向くように湾曲する形状であれば、例えば断面が矩形のエンボス部であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)、(2)、(4)に準じた効果を得ることができる。
【0045】
・対向壁5Fに設けられるエンボス部7の個数は、切断刃6の歯先6aが収容部の正面壁側に向くように湾曲する個数であれば、特に限定されるものではない。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に準じた効果を得ることができる。
【0046】
・切断刃6の形状は、V字形状に限られず、例えば図7に示されるように、対向壁が延びる方向(軸方向A)に沿って延びる直線状の切断刃であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に類する効果を得ることができる。
【0047】
・複数のエンボス部7の位置は、粘着層4aと相対向しない領域に限られず、ラップフィルム3Fが粘着層4aに十分粘着するのであれば、粘着層4aと相対向する領域に配置されてもよい。
【0048】
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(付記1)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、前記複数のエンボス部は、前記切断刃が接合される前記対向壁の接合部分に隣接していることを特徴とするカートン。
【0049】
上述したように、切断刃の歯先を正面壁から遠ざけるように蓋部の対向壁を変形する力は、切断刃が接合される対向壁の接合部分を通して対向壁に伝えられる。(付記1)に記載の構成によれば、切断刃の歯先を正面壁に向けるエンボス部が、切断刃が接合される対向壁の接合部分に隣接している。そのため、切断刃の歯先を正面壁に向ける力が予め切断刃が接合される接合部分の近傍から切断刃に付与されている分、同切断刃の歯先を対向壁に向ける力がより直接的に切断刃に付与される。その結果、切断刃の歯先の変位をより効果的に抑えることが可能である。
【0050】
(付記2)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記エンボス部が半球状であることを特徴とするカートン。上記した半球状には、断面が円形のものに限られず、楕円形のものも含まれている。
【0051】
エンボス部を構成する段差部分のうち、ロールの軸方向と平行な方向に延びる段差部分や切断刃の歯先を結ぶ線と平行な方向に延びる段差部分は、切断刃の歯先を正面壁から遠ざける力によって折り曲げられやすい。この点、(付記2)に記載の構成によれば、エンボス部が半球状に構成されるため、上述した折り曲げを抑えることが可能である。その結果、切断刃が取り付けられた対向壁の変形をより確実に抑えることが可能である。
【0052】
(付記3)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンにおいて、前記収容部の正面壁の外側表面には、前記包装物が剥離可能に粘着する粘着層が設けられ、前記エンボス部は、前記粘着層とは相対向しない領域に設けられていることを特徴とするカートン。
【0053】
収容部の正面壁の外側表面に設けられた粘着層は、該収容部の正面壁の外側表面と蓋部対向壁の内側表面とによる包装物の挟持をより確実なものとする。そして、収容部の正面壁の外側表面に設けられた粘着層は、収容部から引き出された包装物が再び収容部内に巻
き戻ってしまうことを抑え、切断刃の歯先が包装物に円滑に差し込まれることを可能にする。一方、蓋部の対向壁の内側表面のうちで粘着層と相対向する領域に上述したエンボス部が設けられると、粘着層と相対向する領域が段差を有した面となってしまい、粘着層に対する包装物の粘着性が失われる虞がある。この点、(付記3)に記載の発明によれば、粘着層とは相対向しない領域にエンボス部が設けられる構成であるため、上述した粘着層による効果が失われることもない。
【符号の説明】
【0054】
θ…角度、A…軸方向、R…周方向、1…包装物供給体、2…カートン、3…ロール、3C…ペーパーコア、3F…ラップフィルム、4…カートン本体、4B…背面壁、4BT…底壁、4F…正面壁、4Fc…接着ポイント、4Fd…副正面壁、4SL,4SR…収容部端壁、5…蓋部、5E…開封端、5F…対向壁、5Fm…ミシン目線、5SL,5SR…蓋部端壁、5T…頂壁、6…切断刃、7…エンボス部、7a…外縁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装物が巻き回されたロールを収容するカートンにおいて、
前記包装物の引き出し口を頂部に有して前記ロールを収容する箱体状の収容部と、前記収容部に連結されて前記引き出し口を開閉する蓋部とを有し、
前記蓋部に取り付けられて前記引き出し口から引き出された包装物を切断する切断刃を備えるカートンであって、
前記蓋部は、
前記収容部の背面壁に連結されて前記引き出し口を開閉する頂壁と、
前記切断刃が取り付けられるとともに、前記収容部の正面壁の外側で該正面壁と相対向するように前記頂壁に連結された対向壁とを有して、
前記対向壁は、
該対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって前記切断刃の歯先が前記収容部の正面壁側に向くように湾曲している
ことを特徴とするカートン。
【請求項2】
前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、
前記複数のエンボス部は、前記ロールの軸方向において前記切断刃の全幅にわたり前記対向壁に複数配列されている
ことを特徴とする請求項1に記載のカートン。
【請求項3】
前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、
前記複数のエンボス部は、前記切断刃の歯先を結ぶ線に沿って前記対向壁に配列されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカートン。
【請求項4】
包装物が巻き回されてなるロールと、
前記ロールを収容するカートンとを備える包装物供給体であって、
前記カートンが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンである
ことを特徴とする包装物供給体。
【請求項1】
包装物が巻き回されたロールを収容するカートンにおいて、
前記包装物の引き出し口を頂部に有して前記ロールを収容する箱体状の収容部と、前記収容部に連結されて前記引き出し口を開閉する蓋部とを有し、
前記蓋部に取り付けられて前記引き出し口から引き出された包装物を切断する切断刃を備えるカートンであって、
前記蓋部は、
前記収容部の背面壁に連結されて前記引き出し口を開閉する頂壁と、
前記切断刃が取り付けられるとともに、前記収容部の正面壁の外側で該正面壁と相対向するように前記頂壁に連結された対向壁とを有して、
前記対向壁は、
該対向壁の外側表面に押し出されたエンボス部によって前記切断刃の歯先が前記収容部の正面壁側に向くように湾曲している
ことを特徴とするカートン。
【請求項2】
前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、
前記複数のエンボス部は、前記ロールの軸方向において前記切断刃の全幅にわたり前記対向壁に複数配列されている
ことを特徴とする請求項1に記載のカートン。
【請求項3】
前記対向壁は、複数の前記エンボス部を有し、
前記複数のエンボス部は、前記切断刃の歯先を結ぶ線に沿って前記対向壁に配列されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカートン。
【請求項4】
包装物が巻き回されてなるロールと、
前記ロールを収容するカートンとを備える包装物供給体であって、
前記カートンが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートンである
ことを特徴とする包装物供給体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−136744(P2011−136744A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298790(P2009−298790)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】
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