説明

カート装置

【課題】カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置する場合に、執務者の作業位置によらず、電子機器の表示面を執務者から見やすくする手段を提供する。
【解決手段】本発明に係るカート装置10は、床面上を走行可能なベース部11と、ベース部11から上方へ突出して設けられてその長さを調整可能な支持基体12と、平面視における一部が支持基体12によって下方から支持された天板14とを備え、天板14は、前後方向前端14bから前後方向後方側へ離間した位置が、支持基体12によって下方から支持され、天板14の前後方向後端部に、表示面164aを有するタブレットPC164が、上下方向に沿う軸の周りに回動可能に設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや病院、公共施設等における執務空間にて物品の移動に使用されるカート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスや病院や公共施設等では、電子機器等の物品を用いて執務を行いながら、ある執務空間から他の執務空間への移動が必要となる場合がある。この場合、執務空間の間で電子機器等を移動させる手段としては、カート装置が広く用いられている。このカート装置は、キャスターを有して走行可能なベース部と、ベース部から上方へ延びる支柱と、支柱に支持されて電子機器等が載置される天板とを有するものである。そして、このカート装置としては、執務者の体格や執務態様に応じて天板の高さ位置を上下方向に調整できるよう、天板を支持する支柱を伸縮可能に構成したものが従来提唱されている。
【0003】
ところで、このようなカート装置の使用に際しては、その配置場所の確保が問題となる。すなわち、例えば別々のカート装置を使用する複数の執務者が同じ執務空間に集まって執務を行う場合、当該執務空間に設置されたテーブル什器の周囲に複数台のカート装置が配置される。これにより、テーブル什器の周辺が煩雑になり、執務の妨げになるという問題が生じる。
【0004】
そこで、テーブル什器の周囲にカート装置を配置しながら周辺のスペースが狭くならないように、カート装置の天板がテーブル什器の天板より上方に位置するように支柱の長さを調整した上で、カート装置の天板の下の空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置し、カート装置の天板とテーブル什器の天板とが平面視で重なり合うように配置する方法が従来知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
そこで、テーブル什器の周囲にカート装置を配置する際には、カート装置の天板がテーブル什器の天板より上方に位置するように支柱の長さを調整した後、カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにして、カート装置をテーブル什器に突き合わせる。そうすると、カート装置の天板とテーブル什器の天板とが平面視で重なり合うようにしてカート装置が配置されるので、テーブル什器の周囲に広い空間を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−104573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のカート装置によれば、カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置した場合、執務者の作業位置によっては電子機器の使い勝手が悪いという問題がある。
【0008】
より詳細に説明すると、カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置した場合、カート装置とテーブル什器との間で物品の積み降ろし等の作業を行う執務者は、天板の左右方向に位置して作業を行う。従って、この際には電子機器の表示面を執務者の側である左右方向側へ向けるのが好適である。
【0009】
しかし、従来のカート装置では、電子機器の使用形態として、前後方向後方側に位置する執務者がカート装置を押して走行させながら電子機器を使用する形態しか想定されていない。従って、電子機器はその表示面を前後方向後方側に向けた状態とされ、表示面の向きを自在に変更することはできない。従って、電子機器の表示面が執務者から見難く、作業性が悪い。
【0010】
本発明の課題は、このような事情を考慮してなされたものであり、カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置する場合に、執務者の作業位置によらず、電子機器の表示面を執務者から見やすくする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係るカート装置は、床面上を走行可能なベース部と、前記ベース部から上方へ突出して設けられてその長さを調整可能な支持基体と、平面視における一部が前記支持基体によって下方から支持された天板と、を備えるカート装置であって、前記天板は、前後方向前端から前後方向後方側へ離間した位置が、前記支持基体によって下方から支持され、前記天板の前後方向後端部に、表示面を有する電子機器が上下方向に沿う軸の周りに回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、天板の下方であって支持基体より前後方向前方側には空間が形成される。これにより、カート装置をテーブル什器に対して突き合わせる際に、テーブル什器の天板がこの空間に収容される。これにより、平面視においてカートの天板とテーブル什器の天板とが重なり合うようにしてカートを配置することができるので、テーブル什器の周辺の空間がカート装置によって狭くなることを最低限に抑えることができる。また、天板の前後方向後端部に設けられる電子機器は、上下方向に沿う軸の周りに回動可能に設けられているため、電子機器の表示面を執務者の側に向けることにより、執務者の作業位置によらず執務者から表示面を見やすくすることができる。
【0013】
また、本発明に係るカート装置は、前記電子機器が、前記天板の前後方向後端部に設けられて上方へ延びる支持軸によって、上下方向に沿う軸の周りに回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、支持軸を介して天板より上方に離間した位置に電子機器が配置されるので、天板の上に電子機器を直接載置する場合と比較して、電子機器によって占領される面積が減る分、天板の上を広く利用することができる。
【0015】
また、本発明に係るカート装置は、前記支持基体が前記天板を支持する位置が、前記天板の前後方向後端から前後方向前方側へ離間した位置であることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、天板の下方であって支持基体より前後方向後方側に、空間が形成される。これにより、カート装置をテーブル什器に対して突き合わせた際に、作業を行う執務者は、自己の下肢をこの支持基体より前後方向後方側の空間に収容することができる。これにより、執務者はカート装置に近付いて作業を行いやすく、作業性が向上する。
【0017】
また、本発明に係るカート装置は、前記支持基体より前後方向前方側に、前記天板から前記ベース部まで達する空間が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、天板の下方であって支持基体より前後方向前方側に形成される空間は、天板からベース部まで連続するように形成される。これにより、作業を行う執務者は、自己の下肢をこの支持基体より前後方向前方側の空間にも収容することができる。これにより、執務者の作業性が一層向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るカート装置によれば、カート装置の天板の下方空間にテーブル什器の天板が入り込むようにしてカート装置を配置する場合に、執務者の作業位置によらず、電子機器の表示面を執務者から見やすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るカート装置の外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカート装置の外観を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子機器ユニットの動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカート装置の使用状態を示す図であり、通常使用時の状態を示している。
【図5】本発明の実施形態に係るカート装置の使用状態を示す図であり、不使用時における格納状態を示している。
【図6】本発明の実施形態に係るカート装置について、通常使用時における種々の使用形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係るカート装置の構成について説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るカート装置10の外観を示す図であり、図1は概略斜視図、図2は概略側面図である。
【0022】
カート装置10は、図1及び図2に示すように、最下部を構成するベース部11と、このベース部11から突出して上方へ延びる支持基体12と、支持基体12の高さ方向中間部に設けられた複数の収納部材13と、支持基体12の上端部に設けられた天板14と、天板14から水平方向へ突出して設けられた操作ハンドル部15と、天板14から上方へ突出して設けられた電子機器ユニット16と、天板14から斜め下方へ突出して設けられた操作レバー部17と、を備えるものである。
【0023】
(ベース部)
ベース部11は、カート装置10に走行機能を持たせる役割を果たすものである。このベース部11は、図1及び図2に示すように、基端部が互いに連結されて先端部が相異なる4方向へそれぞれ延びる4本の脚杆111と、これら脚杆111の先端部にそれぞれ取り付けられた4個のキャスター112とを有している。そして、4個のキャスター112は、脚杆111によって水平軸周りに回転可能にそれぞれ支持されるとともに、鉛直軸周りにもそれぞれ旋回可能に支持されている。これにより、ベース部11及びこれを有するカート装置10は、床面の上を任意の方向へ走行可能となっている。尚、本実施形態では、図1に矢印Pで示すように、操作ハンドル部15から見た天板14に向かう方向を、カート装置10の「前後方向」と呼ぶこととする。また、この前後方向に直交する方向を、カート装置10の「左右方向」と呼ぶこととする。
【0024】
(支持基体)
支持基体12は、ベース部11と天板14とを接続する役割を果たすものである。この支持基体12は、図1及び図2に示すように、ベース部11に固定された外側支柱18と、天板14に固定された内側支柱19と、を備えるものである。
【0025】
外側支柱18は、図に詳細は示さないが中空の円筒形状を有し、その長手方向一端部がベース部11の中心部に固定されている。一方、内側支柱19は、図2に示すように、外側支柱18より小径の円筒形状を有し、その外周面における前後方向前方側には、バンパー部材20が長手方向に沿って設けられている。このバンパー部材20は、内側支柱19に作用する衝撃を吸収する役割を果たすものであって、ゴム等の弾性部材から形成されている。
【0026】
そして、このように構成される内側支柱19が、外側支柱18の内部空洞に対して所定幅の隙間を介して嵌合されている。これにより内側支柱19は、外側支柱18の長手方向にスライド可能であって、外側支柱18に対する相対位置を上下方向に調整可能となっている。また、図に詳細は示さないが、外側支柱18の内部には、内側支柱19を所定の位置で移動不能にロックするためのロック機構が設けられている。
【0027】
このように構成される支持基体12によれば、内側支柱19を上下方向にスライドさせて外側支柱18への嵌合深さを調整することにより、全体としての長さを伸縮させることが可能となっている。
【0028】
(収納部材)
図2に示す収納部材13は、執務に用いる各種の物品を収納する役割を果たすものである。この収納部材13は、図1に示すように、支持基体12の前後方向前方側に取り付けられる棚板21と、支持基体12の前後方向後方側に取り付けられる収納ボックス22とを備えるものである。尚、この収納部材13は任意の構成であって、収納部材13を持たないカート装置10として構成とすることも可能である。
【0029】
図1に示す棚板21は、使用頻度が比較的低い物品の収納に用いられるものである。この棚板21は、図1及び図2に示すように、上面に物品載置面211aが形成された棚板本体211と、この棚板本体211の底面に設けられた棚板取付金具212とを有している。
【0030】
このように構成される棚板21は、図2に示すように、その棚板取付金具212が外側支柱18に係止されることにより、支持基体12の前後方向前方側に装着される。本実施形態では、上下方向に沿って支持基体12の2箇所に、棚板21が取り付けられている。尚、棚板21の数や形状は本実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0031】
図1に示す収納ボックス22は、使用頻度が高い物品の収納に用いられるものである。収納ボックス22は、図1及び図2に示すように、上部が開口された筐体であるボックス本体221と、このボックス本体221の裏面に設けられた収納ボックス取付金具222とを有している。
【0032】
このように構成される収納ボックス22は、図2に示すように、その収納ボックス取付金具222が外側支柱18に係止されることにより、支持基体12の前後方向後方側に装着される。尚、収納ボックス22の数や形状は本実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0033】
(天板)
図1に示す天板14は、その上面に物品載置面14aが形成された平板部材である。この天板14は、図1及び図2に示すように、その底面における中心部に内側支柱19の上端部が固定されることにより、平面視でその一部が支持基体12によって下方から支持されている。より詳細には、天板14は、その前後方向前端14bから前後方向後方側へ離間した位置であって、且つ、その前後方向後端14cから前後方向前方側へ離間した位置を、支持基体12によって支持されている。
【0034】
これにより、図1及び図2に示すように、天板14の下方であって支持基体12よりも前後方向前方側には、前部空間FSが形成されている。また、天板14の下方であって支持基体12よりも前後方向後方側には、後部空間RSが形成されている。
【0035】
(操作ハンドル部)
操作ハンドル部15は、図1に示すように、天板14の前後方向後端部から前後方向後方へ突出する一対の取付バー151と、一対の取付バー151の先端部同士を互いに接続して前後方向に略直交して延びる操作バー152とを有している。そして執務者は、操作バー152を把持して操作することにより、カート装置10を所定の方向へ走行させることが可能となっている。
【0036】
(電子機器ユニット)
図1に示す電子機器ユニット16は、天板14に固定されたヒンジ161と、ヒンジ161によって支持された支持軸162と、支持軸162によって支持されたホルダ163と、ホルダ163によって保持されたタブレットPC164(電子機器)とを備えるものである。
【0037】
ヒンジ161は、図1及び図2に示すように、天板14の前後方向後端14cにおける幅方向中央部に固定されている。従って、ヒンジ161は、天板14、一対の取付バー151、及び操作バー152によって包囲されるハンドル部空間HSの内部に位置している。これにより、このヒンジ161との接触によって後述するテーブル什器TJ等が損傷することを防止している。
【0038】
支持軸162は、長尺な棒状の部材であって、その基端部がヒンジ161によって回動可能に支持されている。ここで、図3は、電子機器ユニット16の動作説明図である。図3(a)に示すように、ヒンジ161に支持された支持軸162は、前後方向に直交する第一軸SJ1の周りに回動可能となっている。そして、支持軸162は、図3(a)に実線で示すように天板14に直交するように起立した状態から、図3(a)に二点鎖線で示すように天板14に平行するように倒伏した状態までの回動が許容されている。
【0039】
また、図3(b)に示すように、ヒンジ161に支持された支持軸162は、公知の構造によって、カート装置10の高さ方向に沿う第二軸EJの周りにも自在に回動可能となっている。これにより、支持軸162を天板14に直交するように起立させた状態において、図3(b)に実線で示すようにタブレットPC164の表示面164aを前後方向後方に向けた状態から、図3(b)に二点鎖線で示すようにタブレットPC164の表示面164aを前後方向前方に向けた状態までの間で、表示面164aの向きを自在に変更することが可能となっている。そして、このように支持軸162を、第一軸SJ1及び第二軸EJの両軸の周りにそれぞれ回動可能としたことにより、平面視におけるタブレットPC164の配置の自由度を高めることができる。
【0040】
ホルダ163は、図1及び図2に示すように、支持軸162の先端部に回動可能に支持されている。より詳細には、図3(a)に示すように、支持軸162に支持されたホルダ163は、前後方向に直交する第三軸SJ2の周りに回動可能となっている。従って、ホルダ163に保持されたタブレットPC164は、図3(a)に実線で示すようにその表示面164aが支持軸162と略平行になる状態から、図3(a)に二点鎖線で示すようにその表示面164aが支持軸162と略直交する状態までの回動が許容されている。これにより、タブレットPC164は、支持軸162に対する傾斜角度を自在に変更することが可能となっている。
【0041】
そして、図に詳細は示さないが、支持軸162を天板14に直交するように起立させた状態において、第三軸SJ2の周りに回動するタブレットPC164の移動軌跡は、平面視においてハンドル部空間HSの内部に包含されている。これにより、タブレットPC164との接触によって後述するテーブル什器TJ等、並びにタブレットPC164自体が損傷することを防止している。
【0042】
このように構成される電子機器ユニット16によれば、執務者は、タブレットPC164を使用する時は、まず支持軸162を第一軸SJ1の周りに回動させることによって天板14に直交するように起立させる。次に執務者は、支持軸162を第二軸EJの周りに回動させることにより、タブレットPC164の表示面164aを執務者の側に向ける。更に執務者は、ホルダ163を第三軸SJ2の周りに回動させることにより、執務者の目線角度に応じてタブレットPC164の表示面164aの傾斜角度を適宜調節する。
【0043】
尚、支持軸162の第一軸SJ1周りの回動、支持軸162の第二軸EJ周りの回動、及びホルダ163の第三軸SJ2周りの回動を行う順序は、本実施形態の順序に限定されず、任意に入れ替えが可能である。
【0044】
一方、執務者は、タブレットPC164を使用しない時は、まずホルダ163を第三軸SJ2の周りに回動させることにより、タブレットPC164をその表示面164aが支持軸162に略平行した状態とする。次に執務者は、支持軸162を第二軸EJの周りに回動させることにより、タブレットPC164を、その表示面164aが前後方向後方に向いた状態とする。更に執務者は、支持軸162を第一軸SJ1の周りに回動させて天板14に平行するように倒伏した状態とする。これにより、電子機器ユニット16を折り畳んで天板14上にコンパクトに収納することができる。
【0045】
尚、ホルダ163の第三軸SJ2周りの回動、支持軸162の第二軸EJ周りの回動、及び支持軸162の第一軸SJ1周りの回動を行う順序も、本実施形態の順序に限定されず、任意に入れ替えが可能である。また、タブレットPC164の不使用時には、ホルダ163からタブレットPC164を取り外してもよい。
【0046】
(操作レバー部)
図1に示す操作レバー部17は、内側支柱19のスライドを制御するロック機構(不図示)を操作するためのものである。すなわち、前述のように、外側支柱18の内部には、スライド可能に設けられた内側支柱19を任意の位置でスライド不能にロックするためのロック機構が設けられている。そして、執務者は、この操作レバー部17を操作することにより、ロック機構による内側支柱19のロックまたはロック解除を切り替えることが可能となっている。
【0047】
(使用状態及びその作用効果)
次に、本発明の実施形態に係るカート装置10の使用態様、及びその作用効果について説明する。図4及び図5は、本実施形態に係るカート装置10の使用状態を示す図であり、図4は通常使用時の状態を、図5は不使用時における格納状態をそれぞれ示している。
【0048】
カート装置10は、図4に示すように、その通常使用時には内側支柱19が外側支柱18からある程度の長さだけ引き出された状態とされ、その天板14の位置は、執務室に設置されたテーブル什器TJの天板TJaより高くなっている。ここで、このカート装置10の天板14の上に載置された物品(不図示)をテーブル什器TJの天板TJaの上に移し変える作業や、或いはテーブル什器TJの天板TJaの上に載置された物品(不図示)をカート装置10の天板14の上に移し変える作業を行う場合、執務者は、カート装置10をテーブル什器TJに対して突き合わせた状態にする。
【0049】
具体的に執務者は、図4に示すように、カート装置10を前後方向前方に走行させることによってテーブル什器TJに接近させる。そして、カート装置10の天板14の下方に形成された前部空間FSの内部にテーブル什器TJの天板TJaを挿入させ、挿入したテーブル什器TJの天板TJaがカート装置10の支持基体12に接触する位置まで、カート装置10をテーブル什器TJに接近させる。これにより、平面視においてカート装置10の天板14とテーブル什器TJの天板TJaとが重合するようにカート装置10が配置されるので、テーブル什器TJの周辺の空間がカート装置10によって狭くなることを最低限に抑えることができる。
【0050】
また、前述のように、カート装置10の支持基体12を構成する内側支柱19は、その前後方向前方側に弾性部材からなるバンパー部材20が設けられている。従って、テーブル什器TJの天板TJaが内側支柱19に接触した時に生じる衝撃は、バンパー部材20が弾性変形することによって吸収される。これにより、接触時の衝撃によってカート装置10の支持基体12やテーブル什器TJの天板TJaが破損することを、未然に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るカート装置10によれば、支持軸162を介して天板14より上方に離間した位置にタブレットPC164を配置したので、天板14の物品載置面14aの上にタブレットPC164を直接載置する場合と比較して、タブレットPC164によって占領される面積が減る分、天板14の物品載置面14aを広く利用することができるという利点がある。また、タブレットPC164が天板14より上方に配置されるため、物品載置面14aに載置された薬品等(不図示)が掛かることによってタブレットPC164に故障が発生するのを未然に防止することができる。
【0052】
尚、本実施形態では、テーブル什器TJの周辺の省スペース化を図るべく、カート装置10の天板14をテーブル什器TJの天板TJaより高くして両者を平面視で重ね合わせたが、テーブル什器TJの周辺に十分な広さのスペースが存在する場合には、カート装置10の天板14をテーブル什器TJの天板TJaと同じ高さにしてもよい。
【0053】
他方、カート装置10は、図5に示すように、その不使用時には内側支柱19の大部分が外側支柱18の内部に挿入された状態とされ、その天板14の位置は、テーブル什器TJの天板TJaの位置より低くなっている。ここで、このカート装置10をテーブル什器TJの下に格納する場合、執務者は、図3(a)に二点鎖線で示すように、まず電子機器ユニット16を構成する支持軸162を第一軸SJ1周りに回動させて天板14に平行するように倒伏した状態とすることにより、電子機器ユニット16を折り畳んだ状態にする。そして、その状態においてカート装置10をテーブル什器TJに接近させる。そうすると、前述のようにカート装置10はその天板14の位置がテーブル什器TJの天板TJaの位置より低くなっているため、図5に示すように、テーブル什器TJの天板14の下方に形成された下部空間USに、カート装置10の全体を格納することができる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係るカート装置10の通常使用時における種々の使用形態について説明する。図6は、カート装置10の通常使用時における種々の使用形態を示す説明図である。
【0055】
図6に示す第一の使用形態UAは、執務者Mがカート装置10の前後方向後方に位置した状態で電子機器ユニット16を使用する形態を示している。この場合、執務者Mは、支持基体12が天板TJaに当接する位置まで、カート装置10をテーブル什器TJに対して突き合わせる。
【0056】
そして、執務者Mは、前述のように、図3に示す支持軸162を第一軸SJ1及び第二軸EJの周りにそれぞれ回動させることにより、タブレットPC164の表示面164aを執務者Mの側に、すなわち前後方向後方側に向ける。更に、執務者Mは、図3に示すホルダ163を第三軸SJ2の周りに回動させることにより、執務者Mの目線角度に応じてタブレットPC164の表示面164aの傾斜角度を適宜調整する。これにより、執務者Mは、カート装置10の前後方向後方から、タブレットPC164の表示面164aを容易に視認することができる。
【0057】
一方、図6に示す第二の使用形態UBは、執務者Mがカート装置10の左右方向に位置し、カート装置10の天板14とテーブル什器TJの天板TJaとの間で物品の積み降ろし等の作業を行いながら、電子機器ユニット16を使用する形態を示している。この場合も、執務者Mは、支持基体12が天板TJaに当接する位置まで、カート装置10をテーブル什器TJに対して突き合わせる。
【0058】
そして、執務者Mは、前述のように、図3に示す支持軸162を第一軸SJ1及び第二軸EJの周りにそれぞれ回動させることにより、タブレットPC164の表示面164aを執務者Mの側に、すなわち左右方向側へ向ける。更に、執務者Mは、図3に示すホルダ163を第三軸SJ2の周りに回動させることにより、執務者Mの目線角度に応じてタブレットPC164の表示面164aの傾斜角度を適宜調整する。これにより、執務者Mは、カート装置10の左右方向側から、タブレットPC164の表示面164aを容易に視認することができる。
【0059】
ここで、前述のようにカート装置10が収納部材13を持たない構成の場合、執務者Mは、図2に示す前部空間FS及び後部空間RSの内部に、自身の下肢Mkを収容することができる。特に、図6に示すように、カート装置10の左右方向に設置された椅子CHに執務者Mが腰掛けている場合、執務者Mはその下肢Mkの多くの部分を前部空間FS及び後部空間RSに収容することができる。これにより、執務者Mはカート装置10に近付いて作業を行いやすく、作業性が向上するという利点がある。
【0060】
また、図6に示す第三の使用形態UCは、第二の使用形態UBと同様に、執務者Mがカート装置10の左右方向に位置し、物品の積み降ろし等の作業を行いながら電子機器ユニット16を使用する形態を示している。しかし、この第三の使用形態UCでは、前述のようにカート装置10の天板14がテーブル什器TJの天板TJaと同じ高さに設定されている。これにより、カート装置10をテーブル什器TJに突き合わせた状態において、天板14の縁部と天板TJaの縁部とが互いに当接する。
【0061】
この場合も、図6に示すように、執務者Mは第二の使用形態UBと同様にして、タブレットPC164の表示面164aを左右方向側へ向けるとともに、表示面164aの傾斜角度を適宜調整する。これにより、執務者Mは、カート装置10の左右方向から、タブレットPC164の表示面164aを容易に視認することができる。また、この第三の使用形態UCの場合も、執務者Mは、図2に示す前部空間FS及び図5に示す下部空間USに、自身の下肢Mkの多くの部分を収容することができるため、カート装置10に近付いて作業を行いやすく、作業性が向上するという利点がある。
【0062】
尚、図6に詳細は示さないが、執務者Mは、カート装置10をテーブル什器TJに突き合わせることなく、カート装置10の前後方向前方に位置した使用形態においても、タブレットPC164の表示面164aを前後方向前方に向けるとともに、その表示面164aの傾斜角度を適宜調整する。これにより、執務者Mは、カート装置10の前後方向前方から、タブレットPC164の表示面164aを容易に視認することができる。
【0063】
(変形例)
尚、本実施形態に係るカート装置10では、タブレットPC164を第二軸EJの周りに回動可能とするために、支持軸162を第二軸EJの周りに回動可能としたが、これに代えて、タブレットPC164を支持軸162の周りに回動可能としてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係るカート装置10では、電子機器ユニット16を構成する支持軸162を、天板14の前後方向後端14cから上方へ突出して設けたが、これに代えて、支持基体12や操作ハンドル部15から上方へ突出して支持軸162を設けてもよい。
【0065】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 カート装置
11 ベース部
111 脚杆
112 キャスター
12 支持基体
13 収納部材
14 天板
14a 物品載置面
14b 前後方向前端
14c 前後方向後端
15 操作ハンドル部
151 取付バー
152 操作バー
16 電子機器ユニット
161 ヒンジ
162 支持軸
163 ホルダ
164 タブレットPC
164a 表示面
17 操作レバー部
18 外側支柱
19 内側支柱
20 バンパー部材
21 棚板
211 棚板本体
211a 物品載置面
212 棚板取付金具
22 収納ボックス
221 ボックス本体
222 収納ボックス取付金具
CH 椅子
EJ 第二軸
FS 前部空間
HS ハンドル部空間
M 執務者
Mk 下肢
P 矢印
RS 後部空間
SJ1 第一軸
SJ2 第三軸
TJ テーブル什器
TJa 天板
UA 第一の使用形態
UB 第二の使用形態
UC 第三の使用形態
US 下部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を走行可能なベース部と、前記ベース部から上方へ突出して設けられてその長さを調整可能な支持基体と、平面視における一部が前記支持基体によって下方から支持された天板と、を備えるカート装置であって、
前記天板は、前後方向前端から前後方向後方側へ離間した位置が、前記支持基体によって下方から支持され、
前記天板の前後方向後端部に、表示面を有する電子機器が上下方向に沿う軸の周りに回動可能に設けられていることを特徴とするカート装置。
【請求項2】
前記電子機器が、前記天板の前後方向後端部に設けられて上方へ延びる支持軸によって、上下方向に沿う軸の周りに回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のカート装置。
【請求項3】
前記支持基体が前記天板を支持する位置が、前記天板の前後方向後端から前後方向前方側へ離間した位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカート装置。
【請求項4】
前記支持基体より前後方向前方側に、前記天板から前記ベース部まで達する空間が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のカート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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