説明

カードの製造方法

【課題】異種材料の貼り合せや熱プレス金属板の加工を行なうことなく、表面に模様や質感を効率的に付与することの出来るカードの製造方法の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなるコア基材をコア基材と同種の複数の外装基材で外側から仮張りして積層体とする工程、前記積層体を一対の離型フィルムで狭持する工程、上記の狭持された積層体を挟む両面もしくは片面に所望の模様や質感を有する和紙や布を配置する工程、一対の金属板により前記積層体を前記和紙や紙上から狭持する工程、前記金属板を用いて熱ラミネートプレスする工程、前記金属板、前記和紙や布、離型フィルム及び前記積層体を分離する工程、及び前記積層体をカード化する断裁工程、を含むことを特徴とする和風模様カードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に和風等の模様を付与した質感を備えたカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型ICカードは定期券、乗車券、あるいは個人認証及び電子決済機能を有するプリベイドカードとして広範に利用されている。ICチップには8ビットのRISC系CPUを搭載し、外部リーダ/ライタとカード間のデータ交換速度が0.1秒以下の高速処理が可能で、偽造や変造がしにくくセキュリティ機能に優れるという利点がある。
【0003】
非接触型ICカードは、ICメモリ、制御部、アンテナからなる電子基板(インレット)を樹脂基材で挟み込んで、熱プレスして融着一体化して製造する。熱プレス技術を中核とする製造技術の一例は、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された製造方法によれば、まず、ICモジュールとアンテナ線を配置した樹脂基板を、予めICモジュールの収まるように孔を形成したセンターコアシートに仮張りする。
次いで、センターコアシートを厚さが250μmのコアシートで狭持し、さらに厚さが50μmの透明オーバーシートを仮張りする。仮張りしたシートを150℃、1.96MPaで熱ラミネートプレスすることによってカードに用いる積層体を作成するとされている。シート材料はいずれも塩化ビニル樹脂製である。
【0005】
特許文献2では、まず、通信用コイル及び通信用回路部を枠状に形成し、これを回路搭載用コアシートの枠状ざぐり部分に収容して平坦にする。このコアシートを層構成が表裏対称になるように3枚の別のコアシートで挟み、さらに最表面をなすオーバーシートフィルムで挟んでから積層体を形成する。
最後に、鏡面金属板で積層体を狭持して、温度150℃、圧力25Kg/cm2で5分間熱ラミネートプレスすることによってカードに用いる積層体を作成したと記載されている。
【0006】
熱ラミネートプレス(熱プレス)は、金属定盤間に多層のシートからなる積層体を挟みこんで加熱保持した後冷却する工程である。熱硬化性又は熱可塑性のシートは、その過程で融着するので一体化した積層体を得ることができる。
この場合の問題としては、個々のシート材の熱膨張差による反りがあげられる。この反りに関しては、層構成を奇数にして対称にする、中心になる層を硬く耐熱性の材料にする、あるいは低温でプレスするなどで対応ができる。
【0007】
しかしながら、カード本体となる積層体の材質と配置だけでは対応しがたい問題が起きる場合がある。
その一つは、挟み込んだシート材が熱プレス装置の金属定盤に貼りつく、あるいは積層体表面の印刷層が金属定盤側に転写する等の問題である。金属定盤へのこの貼り付きはカード表面の剥がれ、印刷不良などの外観不良に直結する。
【0008】
また、金属定盤側に残ったまま次の熱プレスを行うと、カード表面に凹みを生じ外観不良になる。金属定盤表面の付着物を無理に引き剥がして金属定盤の表面を傷めると、定盤表面部が再使用できないという問題もあった。
【0009】
金属定盤に関する別の問題は、温度を下げた後に上下の金属定盤を離間させた場合、上下どちらの定盤に融着一体化した積層体がへばりつくかわからないということがある。
一般には、挟まれたシートのサイズは周縁部での温度の均一性を保つために金属定盤より小さめに設定されるので、定盤表面を傷つけないように、シートの端から丁寧に引き剥がすことが必要であった。これらの事情によって、積層体を製造する工程のうちで、熱プレス部分の自動化が難しいという問題があった。
【0010】
さらに別の問題は、金属定盤表面の不溶層や作業環境起因の塵、屑などを、溶剤でかなり頻繁に洗浄し拭く必要がある。これ以外にも上述したように、熱プレス装置周辺では、必ず手作業が必要で作業員の介在が不可欠である。したがって、作業活動にともなう発塵による環境汚染と、それによる製造歩留まりの低下が避けられないという問題があった。
【0011】
上記課題を解決するために、特許文献3には、ICタグもしくはアンテナを敷設したインレット基材(20)を複数のコア基材(21)〜(23)で外側から仮張りして積層体(26)とする工程、前記積層体を一対の離型フィルム(24)で狭持する工程、一対の金属板(25)により前記積層体を前記離型フィルム上から狭持する工程、前記金属板を熱プレスする工程、前記金属板、離型フィルム及び前記積層体を分離する工程、及び前記積層体(26)をカード化する断裁工程、を含むことを特徴とする非接触型ICカードの製造方法が開示されている(図3参照)。
【0012】
これによって、金属板と積層体の間に離型フィルムを介在させてカード基材を熱ラミネートプレスすることによって、装置の金属板にカード基材が貼りつくこと、カード基材の印刷層が転写されることを防ぐことが可能になった。
【0013】
上記の方法によれば、カード表面に離型フィルムと金属板を配置して熱ラミネートプレスを行なっている。その結果、離型フィルムの表面状態がカード表面に転写されて、カード表面は離型フィルムの表面を反転した状態となる。
【0014】
通常、カード表面は後加工で個人情報を印字することを考慮して表面が平滑になるように、平滑度の高い離型フィルムを用いて熱ラミネートプレスを行い、カード表面が平滑になるようにしている。
【0015】
しかし、カードの種類によっては個人情報を印字しない場合もあり、そのようなカードは必ずしも表面の平滑性を必要としない。
表面の平滑性が不要なカードの表面はさまざまな方法で加飾することが出来るが、通常の印刷によっては得られない模様や質感を付与することが可能になるのでそのための方法がいくつか提案されている。
【0016】
特許文献4には、テレホンカードに紙のような柔軟シートを貼り付ける技術が開示されている。これによりカード表面の質感等を改善することが可能である。
テレホンカ−ドに紙のような柔軟シ−トを、テレホンカ−ドの読出し時に剥離する畏れのない強力な接着力で、しかも、読出しエラ−の原因等となるテレホンカ−ドの反りぐせをよく排除して接着できる磁気カ−ド用表面材として、磁気カ−ド本体に較べて極低剛性の柔軟シ−ト(例えば、和紙、絹布、皮革等)の裏面に、接着のための加熱温度が100℃〜150℃で、厚みが5μm〜100μmの熱可塑性樹脂系接着剤を設けることが提案されている。
【0017】
また、別の方法として、特許文献5にはカバー材を用いて、基材に押し花などの被保存体をシールし、カード類を作成する技術が開示されている。この技術によってもカード表面に押し花等の質感を付与することが可能である。
【0018】
すなわち、この方法によれば、平板状基材上に配置したシート状被保存体(押し花など)を、カードの表面から透視可能な状態でカバー材でシールする。
このカバー材は、前記被保存体を透視可能な薄葉紙層(和紙など)と、この薄葉紙層の一方の面に形成された熱接着性繊維質層(ホットメルト接着性繊維層)とで構成されている。このカバー材は通気性を有するとともに、加熱加圧により透明性が向上する。
【0019】
特許文献3で提案されている方法によって、表面の平滑性が不要なカードの表面に通常の印刷によっては得られない模様や質感を付与する場合には金属板表面を加工して紙や布の模様やそれを反転させた模様の凹凸面を形成して、熱プレスによってカード表面にエンボスを施す等の方法が考えられるが、このための特別の追加工程が必要になり生産効率の低下を招いてしまう。
【0020】
しかしながら、特許文献4と特許文献5で提案されている方法によって、表面の平滑性が不要なカードの表面に通常の印刷によっては得られない模様や質感を付与する場合にはカード表面に質感を与えるために柔軟シートあるいはカバー材を備えることが必要になる。
【0021】
のみならず、これらの方法はカード表面に表面の外装材のプラスチック材料と異なる布や押し花等の異種材料を貼り合せたカードとなるために、表面耐性等の物理特性を確保することが困難になる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2002−197433号公報
【特許文献2】特開平9−277766号公報
【特許文献3】特開2009−113357号公報
【特許文献4】特開平8−50719号公報
【特許文献5】特開2000−309061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記の問題を解決するために、本発明においては、異種材料の貼り合せや熱プレス金属板の加工を行なうことなく、カードの表面に模様や質感を効率的に付与することの出来るカードの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するための、請求項1の発明は、カード基材を一対の離型フィルムで狭持する工程、該離型フィルムで狭持されたカード基材を、一対の金属板により紙又は布を介して狭持する工程、該金属板を用いて熱ラミネートプレスする工程、該金属板と該紙又は布と離型フィルムとカード基材とを分離する工程、を有することを特徴とするカードの製造方法である。
【0025】
請求項2に係る発明は、前記紙又は布が凹凸を有することを特徴とする。
【0026】
請求項3に係る発明は、前記離型フィルムの膜厚が20〜40μmの間であることを特徴とする。
【0027】
請求項4に係る発明は、前記カード基材が、熱可塑性からなる1層以上のコア基材と、該コア基材の両側に1対の熱可塑性からなる外装基材を有することを特徴とする。
【0028】
請求項5に係る発明は、前記離型フィルムは前記カード基材及び前記金属板より平面寸法的に大なることを特徴とする。
【0029】
請求項6に係る発明は、前記離型フィルムが剥離保護層を有し、前記熱ラミネートプレス工程で剥離保護層をカード基材に転写形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の製造方法によれば、金型に模様を形成する特殊加工をすることなく、安価に紙や布の表面の艶や凹凸の質感がカード表面に再現することができ、通常の印刷では得られないおもむきのあるカードとすることが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のカードの製造方法に係る非接触型カードの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のカードの製造方法に係るカードの一例を示す断面模式図である。
【図3】従来製法の非接触型カードの一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明のカードの製造方法に係る非接触型ICカードの製造工程を説明する説明図である。
【図5】本発明のカードの製造方法による熱ラミネートプレス工程前後の外観例である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の和紙模様カードの製造方法の実施形態の一例を、図面を援用して説明する。
図4は本発明の和紙模様カードの一例として非接触型ICカードの製造工程の例を、目的となるひとつのまとまった作業単位ごとに、金属板回流部(28)の周りに配置した様子を模式的に説明する説明図である。
また、図1には非接触型ICカードのカード本体となるカード基材のラミネート構成を示した。
【0033】
先ず、カード基材供給ユニット(1)であるが、カード本体となるカード基材(26)は図2で示す構造である。
インレット基材(20)は塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどからなるフィルムの一方の平面上、あるいはそのフィルムをざぐった孔に、アンテナや半導体部品等無線通信に必要な部品(ICチップ又はICモジュール)を設置したものである。
【0034】
これらのアンテナと半導体部品等は一般には多面付けされていて個々のカードは製造工程の最後の断裁工程で個別にカットされて完成する。また、断裁前はインレット基材(20)はアンテナだけを含み、半導体部品等及びそれを収容する孔はなくてもよく、その場合断裁後に必要に応じて収用孔を形成して、半導体部品を実装してもよい。
【0035】
カード本体となるカード基材(26)は、インレット基材(20)を中心層にして層構成が表裏対称になるように塩化ビニル樹脂などからなるコア基材(21)、中間基材(22)、外装基材(23)など複数の層を、シアノアクリレートなどの接着材で仮張りして積層して製造する。なお、上記層構成は一例であり、目的に応じて中間層を省略してもよい。
【0036】
カード基材を構成するここの基材の積層方法としては、ロールツーロール方式と枚葉式などの周知の方法が使用できる。積層する層の数は必要に応じて決められるが、通常はカードの総厚が0.68mmから0.84mmの範囲内に収まるようにする。このカード基材を所望のサイズに断裁してカード基材供給ユニット(1)内のストッカに保持する。
【0037】
上記カード基材(26)を構成する個々の層に用いる材料として塩化ビニル樹脂(PVC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリカーボネートなどのプラスチックフィルムを用いることができ、中でも環境適性などの点からPET−Gを好適に用いることができる。
【0038】
離型フィルム(24)、(24’)としては、金属板(25)、(25’)と外装基材(23)、(23’)からの離型性のよいプラスチックフィルムを用いることができる。
このようなものとして、PP(ポリプロピレン)フィルム、2軸延伸PETフィルムなどがあげられる。
金属板に対するPPフィルムと2軸延伸PETフィルムの離型性は同等であったが、PET−Gに対するPPフィルムと2軸延伸PETフィルムの離型性は、PPフィルムの方が優れていたため、カード基材の外装基材(23)、(23’)としてPET−Gを用いた場合、離型フィルムにPPフィルム用いた場合を用いることが好ましい。なお、これは、PPのPET―Gに対する親和力が2軸延伸PETフィルムよりも劣るためと考えられる。
離型フィルムの厚みは20〜40μmの間であることが好ましい。この範囲であれば、金属板からのカード基材の離型性が良好でかつ、間に挟んだ紙や布の模様の転写も良好となる。
【0039】
また、離型フィルムはカード基材及び金属板より平面寸法的に大きくすることができる。
これにより、金属板の表面に触れることなく、離型フィルムの張り出し部分をグリップすることが可能になり、装置上でのハンドリングを容易にすることができる。例えば、カード基材、金属板、離型フィルムの分離時に、分離装置ユニットでの離型フィルム、一体化した積層体及び金属板と紙や布の引き離しが機械的に行えるようになる。
【0040】
また、離型フィルムには、剥離保護層を形成しておき、ラミネートプレス時にカード基材に転写形成してもよい。剥離保護層は塗布形成することができる。また、剥離保護層の厚みは0.5〜3.0μmの間であることが好ましい。この範囲であればカード基材表面に模様を付与することができると共にカード基材表面の保護性能を向上させることができる。
【0041】
離型フィルム(24)、(24’)はロール状に供給され、かつ前記積層体と丁合いされる前に断裁してもよい。離型フィルム(24)、(24’)としてPPフィルムを用いた場合、摩擦帯電によってフィルムが互いに密着することと、空気中の異物が付着することが問題となる場合がある。
そのため、離型フィルムをロール状に供給することにより、離型フィルムの繰り出し時の摩擦により発生する静電気に起因する、フィルム同士の密着や作業環境中の塵や埃等の発塵物のフィルムへの付着を効果的に防止することができる。また、フィルムをロールで供給し、引き出した際に除電ブロア処理を行って静電気発生を防ぐことも有用である。
重ね合わせは枚葉でなされるのでカットした後、重ね合わせに同期して排出する。これらの処理は離型フィルム供給ユニット(2)で自動的に行われる。
【0042】
和紙供給ユニット(16)では離型フィルムに和紙等の紙や布(27)、(27’)をカットして重ね合わせて排出する。
ここで本発明に用いる紙や布は、熱ラミネートプレス工程時に熱変型がなく、離型フィルムを介して外装基材の表面等カード基材の表面に模様をつけることができるものであれば和紙、洋紙、布、織物などの植物繊維又は化学繊維からなる繊維状物質を含む模様を有する材料、植物または動物の皮などの模様を有する材料等、様々な物を用いることができる。
また、これらの紙や布等の模様は、立体的な凹凸形状からなり、ラミネートプレス工程で、プレスしても一定の形状を維持し、かつ離型フィルムを介してカード基材に転写形成できるものであることが好ましい。
重ねあわせユニット(3)は、上部金属板(25)、紙や布(27)、離型フィルム(24)、カード基材(26)、離型フィルム(24’)、紙や布(27’)、及び下部金属板(25’)の重ね合わせを、位置決めして機械的自動的に行うユニットである。基本となるカード基材(26)を複数個重ねることもできる。
重ね合わせたものはこのままの状態で金属板回流路(28)のプレス前回流路(4)に排出されラミネートプレスユニット(5)へと移動していく。
【0043】
離型フィルム(24)、(24’)のサイズはカード基材(26)と金属板(25)、(25’)のサイズより大きくすることが肝要である。この余分な耳の部分は熱ラミネートプレスの後の分離ユニット(7)で使用する。金属板についてはSUS304、SUS430などが使用出来る。
金属板の表面が鏡面であるとカード基材表面が鏡面を下地として紙や布などの模様を有するものとなる。金属板の表面がマット形状であるとカード基材表面がマット形状を下地として紙や布などの模様を有するものとなる。
【0044】
ラミネートプレスユニット(5)には金属板25,25’で狭持された、離型フィルム及び和紙とで挟まれたカード基材(26)が搬入され、熱プレスと搬出を機械的に行うユニットである。
プレス条件としては、金属板と離型フィルムに接するカード基材、例えば外装基材に用いたフィルムのガラス転移温度以上であることが望ましく、通常、100℃から160℃、圧力が1.5MPaから4MPa、時間としては30分から60分の範囲が標準的である。
【0045】
分離ユニット(7)は、離型フィルム(24),(24’)、紙や布(27)、(27’)金属板(25),(25’)、及び一体化したカード基材(26)を分離するユニットである。分離は離型フィルムの張りだし部分をグリップしながら、金属板を引きはなし、次いで和紙と一緒に離型フィルムを引き離す。
【0046】
これらの処理はいずれも機械的に可能である。最終的に離型フィルムと紙や布と一体化したカード基材は分別され、搬送ハンドなどでそれぞれのストッカすなわち、フィルム和紙回収ユニット(8)とカード基材排出ユニット(9)に貯えられる。
【0047】
カード基材排出ユニット(9)に蓄えられたカード基材は断裁部(10)に送られる。断裁部(10)はカード基材を打ち抜き法で個片化する部分でありこれによって紙模様や布模様の非接触型ICカードが完成する。
【0048】
金属板(25),(25’)は金属板回流路(28)を経て金属板ストッカ(11)に回収され、必要であれば、洗浄、乾燥もしくは交換され再投入される。
こうした一連の作業はハンド、リフター、コンベアなどを組み合わせて容易に実行できる。上記作業を自動化をすることで、製造歩留まり率の向上が達成できる。
より具体的には、カード基材、離型フィルム、紙又は布及び金属板の重ねあわせをなす工程を一単位、金属板を熱プレスする工程を一単位、前記金属板、前記紙又は布、離型フィルム及び一体化した積層体を分離する工程を一単位、及び金属板ストッカ工程を一単位とし、すべての単位が金属板を回流するように連結することでカード製造の各工程をコンベア、搬送ハンドあるいはリフターなどで連結し、自動化製造ラインとすることができる。
【0049】
本発明では、上述したように、カード基材の熱ラミネートプレス時に、金属板と離型フィルムの間に紙や布を介在させて熱ラミネートプレスすることにより、直接和紙や布を配置して熱ラミネートを行なう場合にカード表面に生じる紙や布の繊維の残留(毛羽立ち)がなく、加えて、離型フィルムが熱ラミネート時に金属板を介して加わる熱により軟化し、同じく金属板を介して加わる圧力により紙や布の凹凸に追従して変形するので紙や布の模様をカード表面に転移させることが出来る。
これによって離型フィルムを介して配置された紙や布の表面の艶や凹凸の質感がカード表面に再現されて、同じプラスチック材料で形成されるカード表面の外装基材上にたとえば、和風の情感を漂わせたおもむきのあるカードとすることが出来るようになった。
さらに本発明の方法によれば、熱ラミネートプレス時の金属板と和紙や布との貼りつきがなく、カード表面と離型フィルムの貼りつきも起こらないために、金属板で一対の和紙や布と離型フィルムと積層体を狭持したまま、熱プレス装置へ搬入し、熱プレス及び排出処理を行うことが出来る。
さらに、熱プレス装置自体への製品の貼りつきがなくなり、その結果、周辺での関連手作業がなくなり作業の自動化も可能になることによって生産の効率化と不良率の低減も可能になる。
【0050】
上述の例では非接触ICカードの構成で説明したが、単層の基材を用いたカードや、接触式のICカード、磁気カードにも適用可能である。接触式のICカードとする場合、熱ラミネートプレス工程の後に接触式のICモジュールを収用する凹部をミリング加工などにより形成し、凹部内に接触式ICモジュールを埋設する。また、磁気カードとする場合、熱ラミネートプレス工程の後に、表面模様を潰さないようにカード表面に磁気記録層(磁気テープ)の埋設を行う。
【0051】
また、カード表面には絵柄層を設けてもよい。離型フィルムに剥離保護層を形成する場合、剥離保護層に絵柄層を形成しておくこともできる。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
以下に本発明の実施の形態の例を説明する。本発明の製造方法による磁気テープなし非接触ICカードの層構成の例を図1に示した。
本実施例のカード構成はコア基材(21)、(21’)にガラス転移温度(Tg)85℃の塩化ビニル樹脂(PVC)を用いており、中間基材(22)、(22’)、外装基材(23)、(23’)はコア基材と同種の基材を用いた。
【0053】
これらの基材を図1に示したようにインレット基材(20)を中心として、その表裏にコア基材、中間基材、外装基材をこの順で積層する。
温度条件を基材のTg以上である120℃から160℃、圧力条件を140N/cm2として、離型フィルム(24)、(24’)にはTgが0℃近辺のポリプロピレン(PP)フィルムを用いて熱ラミネートプレスにより各基材を一体化してカード基材(26)を作成した。
【0054】
一体化したカード基材の表面は、離型フィルム(24)(24’)を介して、金属板(25)、(25’)の表面状態が転写される。
金属板の表面が鏡面であればカード基材表面は鏡面に、金属板表面にマット加工(つや消し加工)が施されている場合はカード表面がマット感を有した面になる。
【0055】
本実施例では、図1のように離型フィルム(24)と金属板(25)の間に和紙(27)を挟みこむことにより、PPフィルム(24)、およびコア基材(21)、中間基材(22)、外装基材(23)のうちでも特に外装基材(23)のTgがラミネート温度より低く、かつ挟み込む和紙(27)の耐熱温度が高いためにPPフィルム(24)、外装基材(23)の表面が変形し、和紙(27)の持つ模様をカード表面に与えることが出来る。
【0056】
インレット基材(20)の反対面についても同様に離型フィルム(24’)と金属板(25’)の間に和紙(27’)を挟みこむことにより、PPフィルム(24’)、およびコア基材(21’)、中間基材(22’)、外装基材(23’)のうちでも特に外装基材(23’)のTgがラミネート温度より低く、かつ挟み込む和紙(27’)の耐熱温度が高いためにPPフィルム(24’)、外装基材(23’)の表面が変形し、和紙(27’)の持つ模様をカード裏面に与えることが出来る。
【0057】
加えて、挟み込む和紙(27)、(27’)を洋紙や布などに代えることによってカード基材(26)の表面の模様と質感を容易に変化させることが出来る。ここで用いる布は木綿の様な天然繊維質のものであってもよいし、ラミネートの時に熱変形の起こらないものであれば化学繊維質のものであってもよい。
このカード基材(26)を断裁して本発明の和風模様の非接触ICカードとした。このカードの表面の模様と質感はおもむきのある和風のものとなった。
【0058】
<実施例2>
コア基材をガラス転移温度(Tg)80℃のPET−Gに変えたほかは、実施例1と同様にして本発明の製造方法による磁気テープなし非接触ICカードを作成した。
このカードの表面の模様と質感は実施例1の場合と同様におもむきのある和風のものとなった。
【0059】
<実施例3>
図2に示すように、インレット基材(20)と中間基材(22)、(22’)を省略して、コア基材(21)、(21’)と外装基材(23)、(23’)をガラス転移温度(Tg)80℃のPET−Gに変えたほかは、実施例1と同様にして本発明の製造方法による磁気テープなしのカードを作成した。
このカードの表面の模様と質感は実施例1の場合と同様におもむきのある和風のものとなった。
【0060】
<比較例1>
図3に示したように、金属板(25)、(25’)と離型フィルム(24)、(24’)の間の和紙(27)を取り除いた他は実施例1と同様にして磁気テープなし非接触ICカードを作成した。
このカードの表面の模様と質感は金属板の表面と同じ平滑なマット面となり、シンプルではあるがおもむきのある和風のものとは程遠い外観となった。
【0061】
以上、本発明の和紙模様カードの一例として非接触型ICカードの製造工程の例を中心に示したが、本発明の製造方法によれば非接触型ICカード以外にも様々な構成のカードに対応でき、和風の趣のある外観のカードを効率的に製造することが出来る。
その一例として図2には非接触型ICカード以外のより単純な構成のカードの場合のラミネート構成の一例を示した。
【0062】
この場合はカード基材(26)に代えて構成のより単純なカード基材(26’)が用いられており、カード基材を構成する層は、インレット基材(20)とそれを挟む一対のコア基材(21)、(21’)、一対の中間基材(22)、(22’)、一対の外装基材(23)、(23’)から、コア基材(21)とそれを挟む一対の外装基材(23)、(23’)という構成に簡略化されている。
【0063】
また、図5には本発明の和紙模様カードの製造方法によるラミネート前後の和紙とカード表面の外観例を示した。
図5(A)はラミネート前の和紙表面、(B)はラミネート前のカード表面、(C)はラミネート後の和紙表面、(D)はラミネート後のカード表面の外観である。
本発明の和紙模様カードの製造方法によって和紙の質感がカード表面に付与された状態がラミネート後のカード表面に現われていることが確認できる。
【0064】
以上のように、本発明の和風模様カードの製造方法によれば、カードの表裏面の質感が変わることにより、印刷による視覚の意匠性に加えて、質感による触覚の意匠性が加わる。
また、カード表面に紙や布の持つ凹凸による模様が加わったのみで、カードの物性は従来のプラスチックカードの性能をそのまま維持できる。
【0065】
また、特に、カード表面に紙や布を貼り合せた場合に比べると、紙や布は摩擦による発塵をしやすいが、本発明のカードは紙や布が表面にないので発塵が少ない、のみならず、手汗の吸収が少なく汚れも目立ちにくいという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の製造方法は、非接触型ICカードの製造以外にも、IDカード、接触型ICカード、非接触型ICデュアルカード等広く利用できる。
すなわち、磁気テープを備えていない、あるいはCP、UGなどの券面印字が入らないIDカード、及び接触型ICカード、非接触型ICデュアルカード等のカード表面に模様や質感を付与することが望まれている分野で広く適用できる技術である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・・・・・カード基材供給ユニット
2・・・・・・・離型フィルム供給ユニット
3・・・・・・・重ねあわせユニット
4・・・・・・・プレス前搬送路
5・・・・・・・ラミネートプレスユニット
6・・・・・・・プレス後搬送路
7・・・・・・・分離ユニット
8・・・・・・・フィルム和紙回収ユニット
9・・・・・・・カード基材排出ユニット
10・・・・・・断裁部
11・・・・・・金属板ストッカ
16・・・・・・和紙供給ユニット
20・・・・・・インレット基材
21、21’・・コア基材
22、22’・・中間基材
23、23’・・外装基材
24、24’・・離型フィルム
25、25’・・金属板
26、26’・・カード基材
27、27’・・紙や布
28・・・・・・金属板回流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材を一対の離型フィルムで狭持する工程、
該離型フィルムで狭持されたカード基材を、一対の金属板により紙又は布を介して狭持する工程、
該金属板を用いて熱ラミネートプレスする工程、
該金属板と該紙又は布と離型フィルムとカード基材とを分離する工程、
を有することを特徴とするカードの製造方法。
【請求項2】
前記紙又は布が凹凸を有することを特徴とす請求項1に記載のカードの製造方法。
【請求項3】
前記離型フィルムの膜厚が20〜40μmの間であることを特徴とする請求項1または2に記載のカードの製造方法。
【請求項4】
前記カード基材が、熱可塑性からなる1層以上のコア基材と、該コア基材の両側に1対の熱可塑性からなる外装基材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカードの製造方法。
【請求項5】
前記離型フィルムは前記カード基材及び前記金属板より平面寸法的に大なることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカードの製造方法。
【請求項6】
前記離型フィルムが剥離保護層を有し、
前記熱ラミネートプレス工程で剥離保護層をカード基材に転写形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカードの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250526(P2012−250526A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245214(P2011−245214)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】