説明

カードコネクタ、および電子機器

【課題】メモリーカードを飛び出しにくくすることが可能なカードコネクタを提供する。
【解決手段】カバー10は、平面部31が外周面の一部に形成されたヒンジ軸30と、ロック爪部11と、を有し、ソケット20は、閉状態でロック爪部11と係合してカバー10を固定させる係合部24と、ヒンジ軸30が挿通し、カバー10を、ロック爪部11が係合部24に係合した第1の位置からロック爪部11が係合部24から外れた第2の位置まで回転可能に支持するガイド孔25と、カバー10が第1の位置に配置されているときに変形し、その後、ロック爪部11が係合部24から外れたときに弾性変形し、弾性力でカバー10をヒンジ軸30を中心に第2の位置に向けて回転させ始める、ばね性を備えた信号端子22と、ガイド孔25に近接して設けられ、カバー10の回転の途中で平面部31に平行に当接し、カバー10の回転を一旦停止させる板状部材40と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリーカード用のカードコネクタ、およびそのカードコネクタが取り付けられた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一つである携帯電話機では、一般的に、画像データや音声データなどを記憶したメモリーカードを装着するためのカードコネクタが筺体に設けられている。カードコネクタには、カードを装着したカバーを、ヒンジ軸を中心に回転可能にソケットに連結したヒンジ式のカードコネクタがある(特許文献1参照)。
【0003】
図9は、本発明に関連するカードコネクタの要部構成を示す側面図である。図9に示すカードコネクタ100は、筺体500に取り付けられている。カードコネクタ100において、メモリーカード200は、カバー300に装着した状態でソケット400に電気的に接続されている。以下、図9に示すカードコネクタ100からメモリーカード200を抜き取る動作内容について、図10〜図12を参照しながら説明する。
【0004】
図10に示すように、カバー300を水平方向にスライドさせると、カバー300のロック爪部301がソケット400から外れる。すると、信号端子402の弾性力により、カバー300がヒンジ軸302を中心に回転し始める(図11参照)。その後、カード300は、図12に示すように、筺体500に当接する位置まで回転する。カバー300が筺体500に当接した状態で、カバー300からメモリーカード200を抜き取ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−210128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9に示すカードコネクタ100では、ヒンジ軸302の外周面が円曲面である。そのため、信号端子402の弾性力によってカバー300が回転し始めると、途中で停止することなく筺体500に当接するまで回転し続ける。そのため、例えば、操作者がカバー300から素早く指を離したり、操作者が誤ってカバー300を回転方向にはじいたりすると、カバー300が大きな回転速度で回転する場合が考えられる。この場合、カバー300が筺体500に当接するまでにカバー300からメモリーカード200が飛び出し、その結果、メモリーカード200が損傷したり紛失したりする可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、メモリーカードを飛び出しにくくすることが可能なカードコネクタ、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のカードコネクタは、メモリーカードが着脱可能なカバーと、前記カバーと重なり合う閉状態で前記カバーを固定可能なソケットと、を有するカードコネクタにおいて、前記カバーは、平面部が外周面の一部に形成されたヒンジ軸と、前記カバーの縁部から突出したロック爪部と、を有し、前記ソケットは、前記閉状態で前記ロック爪部と係合して前記カバーを前記ソケットに固定させる係合部と、前記ヒンジ軸が挿通し、前記カバーを、前記ロック爪部が前記係合部に係合した第1の位置から前記ロック爪部が前記係合部から外れた第2の位置まで回転可能に支持するガイド孔と、前記カバーが前記第1の位置に位置しているときに前記カバーに押しつけられて変形し、その後、前記ロック爪部が前記係合部から外れたときに弾性変形し、該弾性変形で生じた弾性力で前記カバーを前記ヒンジ軸を中心に前記第2の位置に向けて回転させ始める、ばね性を備えた信号端子と、前記ガイド孔に近接して設けられ、前記カバーの回転の途中で前記平面部に平行に当接し、該当接により前記カバーの回転を一旦停止させる板状部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため本発明の電子機器は、上記のカードコネクタと、前記カードコネクタが取り付けられた筺体と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号端子の弾性力によってカバーがヒンジ軸を中心に大きな回転速度で第1の位置から第2の位置に向けて回転し始めても、回転の途中で、ヒンジ軸の平面部が板ばねと平行に当接することによって、カバーの回転が一旦停止する。これにより、カバーからメモリーカードを飛び出しにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のカードコネクタの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示すカードコネクタのカバーの外形を示す図である。
【図3】図1に示すカードコネクタのソケットの外形を示す図である。
【図4】図1に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図5】図1に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図6】図1に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図7】図1に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図8】本発明のカードコネクタの他の実施形態の構成を示す図である。
【図9】本発明に関連するカードコネクタの要部構成を示す側面図である。
【図10】図9に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図11】図9に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【図12】図9に示すカードコネクタからメモリーカードを抜き取る動作内容を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のカードコネクタの一実施形態の構成を示す図である。図1(a)は、本実施形態のカードコネクタ1の上面図であり、図1(b)は、カードコネクタ10の側面図である。
【0013】
本実施形態のカードコネクタ1は、カバー10と、カバー10と重なり合う閉状態でカバー10を固定可能なソケット20と、を有する。図2は、カバー10の外形を示す図である。図2(a)は、カバー10の上面図であり、図2(b)は、カバー10の側面図である。また、図2(c)は、図2(b)に記載の領域Rの拡大図である。図3は、ソケット20の外形を示す図である。図3(a)は、ソケット20の上面図であり、図3(b)は、ソケット20の側面図である。
【0014】
ソケット20は、図3(a)に示すように、金属板または合成樹脂で形成されたコネクタフレーム21を有する。コネクタフレーム21には、合成樹脂製のインシュレータ23が取り付けられている。インシュレータ23は、導電率の良い銅合金製で形成され、ばね性を備えた信号端子22を保持している。信号端子22は、カバー10に挿入されるメモリーカード200と接触する接触部22aと、表面実装部22bと、接触部22aと表面実装部22bをつなげ弾性力を生み出すアーム部22cと、を有する。また、インシュレータ23には、係合部24が設けられている(図3(b)参照)。係合部24は、カバー10の縁部から突出したロック爪部11と係合することによって、カバー10をソケット20に固定させる。
【0015】
コネクタフレーム21の両側面には、図3(b)に示すように、楕円状のガイド孔25が開口している。ガイド孔25には、カバー10の両側面から突出したヒンジ軸30が挿通されている。ガイド孔25は、ヒンジ軸30を回転可能に支持している。ヒンジ軸30は、図2(c)に示すように、平面部31(第1の平面部)と、平面部31と隣接する平面部32(第2の平面部)と、平面部31および平面部32と隣接する円孤部33と、を有する。
【0016】
ガイド孔25に近接して、ばね性を備えた板状部材40が設けられている(図3(b)参照)。板状部材40は、コネクタフレーム21の一部の板金を延出するか、あるいは、板ばね単体をコネクタフレーム21に圧入することによって形成される。
【0017】
次に、本実施形態のカードコネクタ1からメモリーカード200を抜き取る動作内容について、図4〜図7を参照しながら説明する。なお、ここでは、カードコネクタ1が、筺体50に取り付けられている電子機器(例えば、携帯電話機)の形態で説明する。
【0018】
図4では、メモリーカード200がカバー10内に装着され、カバー10は、ロック爪部11がインシュレータ23の係合部24に係合する位置(第1の位置)に配置されている。このとき、ヒンジ軸30は、ガイド孔25の一端に位置している。また、ソケット20の信号端子22は、ソケット20に押さえつけられて変形している。
【0019】
まず、カバー10が、ロック爪部11がインシュレータ23の係合部24から外れるように、水平方向(図4の矢印X参照)にスライド移動させられる。このとき、ヒンジ軸30は、ガイド孔25の他端に移動する。なお、板状部材40には、山部が形成されており、ヒンジ軸30が板状部材40の山部を乗り上げないとカバー10はスライドできない仕組みになっている。この仕組みにより、操作者にカバー10のロックが解除されたことを気づかせることが可能となる。なお、カバー10のロックが解除されるとは、図5に示すように、カバー10のロック爪部11がインシュレータ23の係合部24から外れた状態になることをいう。
【0020】
カバー10のロックが解除された後、操作者がカバー10から指を離すと、信号端子22の弾性力により、カバー10は、ヒンジ軸30を中心に回転方向(図5の矢印Y参照)に回転し始める。その後、図6に示すように、ヒンジ軸30の平面部31が板状部材40と平行に当接する位置までカバー10が回転したとき、ヒンジ軸30の平面部31と板状部材40との当接によって、カバー10の回転が一旦停止する。
【0021】
カバー10の回転が一旦停止した後、操作者が、カバー10を回転方向に付勢すると、カバー10は、再び回転し始める。そして、図7に示すように、ヒンジ軸30の平面部32が板状部材40に平行に当接する位置(第2の位置)までカバー10が回転したとき、カバー10の回転は停止する。このとき、カバー10は筺体50に接触することなく自立した状態になる。操作者は、この状態でメモリーカード200を抜き取ることができる。
【0022】
図9、図10に示すカードコネクタ100では、ヒンジ軸302の外周面が、円曲面であるため、カバー300は、筺体500に接触するまで回転し続けていた。そのため、信号端子402の弾性力によって、カバー300が大きな回転速度で回転し始めると、メモリーカード200がカバー300から飛び出す可能性が高かった。一方、本実施形態のカードコネクタ1では、ヒンジ軸30の平面部31と板状部材40との当接によりカバー10の回転が一旦停止するので、メモリーカード200がカバー10から飛び出しにくくなる。
【0023】
また、図9、図10に示すカードコネクタ100では、カバー300が筺体500に接触した状態で回転が停止する。そのため、操作者がメモリーカード200を抜き取る際にカバー300の端部が押し付けられると、テコの原理でヒンジ軸302に過剰な力が加わり、ヒンジ軸302やソケット400が変形または破損することが懸念される。しかし、本実施形態のカードコネクタ10では、カバー10は、平面部32が板状部材40に対して平行に当接する状態で自立する。そのため、仮に操作者がメモリーカード200あるいはカバー10を押し付けたりしても、ヒンジ軸30を回転方向に回転させることでヒンジ軸302に加わる力を逃すことができる。そのため、ヒンジ軸30やソケット20の変形、破損を防ぐことが可能となる。
【0024】
なお、本実施形態では、ヒンジ軸30に形成された平面部は2つだけであったが、本発明では、ヒンジ軸30の外周面に平面部を3つ以上形成してもよい。図8は、ヒンジ軸30の外周面に6つの平面部が形成されたカードコネクタを構成するカバーの側面図である。図8(a)は、カバー全体の側面図を示し、図8(b)は、図8(a)に示す領域Sの拡大図である。
【0025】
本実施形態のカードコネクタ1では、ヒンジ軸30に形成された平面部は2面のため、カバー10のロックが解除された直後と、カバー10が大きく開いたときに、カバー10の回転が停止した(図6、図7参照)。一方、図8に示すようにヒンジ軸30の外周面に3つ以上の平面部を形成すると、それぞれの平面部でカバー10の回転を一旦停止させることが可能となる。これにより、操作者は、カバー10が最も開いた状態(メモリーカード200がソケット20から最も離れた状態)でなくても任意の回転角度でカバー10の回転を停止させることが可能となる。すなわち、カバー10からメモリーカード200を抜き取る際に、カバー10の回転角度の選択の幅を広げることが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1、100 カードコネクタ
10、300 カバー
11 ロック爪部
20、200 ソケット
21 コネクタフレーム
22 信号端子
23 インシュレータ
24 係合部
25 ガイド孔
30、302 ヒンジ軸
31、32 平面部
33 円孤部
40 板状部材
50、500 筺体
200 メモリーカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリーカードが着脱可能なカバーと、前記カバーと重なり合う閉状態で前記カバーを固定可能なソケットと、を有するカードコネクタにおいて、
前記カバーは、平面部が外周面の一部に形成されたヒンジ軸と、前記カバーの縁部から突出したロック爪部と、を有し、
前記ソケットは、前記閉状態で前記ロック爪部と係合して前記カバーを前記ソケットに固定させる係合部と、前記ヒンジ軸が挿通し、前記カバーを、前記ロック爪部が前記係合部に係合した第1の位置から前記ロック爪部が前記係合部から外れた第2の位置まで回転可能に支持するガイド孔と、前記カバーが前記第1の位置に位置しているときに前記カバーに押しつけられて変形し、その後、前記ロック爪部が前記係合部から外れたときに弾性変形し、該弾性変形で生じた弾性力で前記カバーを前記ヒンジ軸を中心に前記第2の位置に向けて回転させ始める、ばね性を備えた信号端子と、前記ガイド孔に近接して設けられ、前記カバーの回転の途中で前記平面部に平行に当接し、該当接により前記カバーの回転を一旦停止させる板状部材と、を有する、
ことを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記ヒンジ軸の前記外周面は、互いに隣接する第1の平面部および第2の平面部と、前記第1の平面部および前記第2の平面部に隣接する円孤部と、を有する、請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ヒンジ軸の前記外周面は、互いに隣接する3つ以上の前記平面部を有する、請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のカードコネクタと、
前記カードコネクタが取り付けられた筺体と、
を有する電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−146568(P2012−146568A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5065(P2011−5065)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】