説明

カードコネクタ、カードコネクタの製造方法

【課題】端末機器を大型化させずに、互換性があり大きさが異なる複数のICカードを端末機器に対応させる。
【解決手段】カードコネクタ301のボディ305には、開口302からスライド挿通されたICカードに対面する対面部312と、対面部312から下方に延びるコンタクト収容部305cと、が形成されている。コンタクト351は、ICカードのスライド挿通方向Aに延びる長尺をなす。コンタクト351の中腹部分には、接触部351cが形成される。接触部351cは、スライド挿通されたICカードのパッド部に押圧力を持って接触する。コンタクト351の第1の端部351a側の部分は、ボディ305に一体成形される。接触部351cは、対面部312よりも上方の側に位置付けられる。コンタクト351における接触部351cから第2の端部351bに向かう部分は、コンタクト収容部305cに入り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードを装着させるカードコネクタ、及び、このカードコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、背景技術として、「SIMカード等のICカードが装着されるICカード用コネクタは、…、電子機器内の配線基板上に配され…、ICカードと配線基板とを電気的に接続するコンタクト端子群を備えている。そのようなコンタクト端子群を構成する各コンタクト端子は、ICカード用コネクタのカード収容部内に互いに平行に配置されている。コンタクト端子は、薄板金属材料で作られ、所謂、片持ちばりのように、後述の固定端子部だけでベース部材に支持されている」(特許文献1の段落0003参照)という点が記載されている。そして、特許文献1には、このような背景の下、コンタクト端子が片持ちされるが故に生じる弾性(バネ定数)の低下、接点部の意図しない高さ上昇、ICカードの端部との干渉による可動片部の座屈等の問題点を解決する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−097947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明を、詳細に検討する。特許文献1の段落0020には、「…カードスロット側の端部側の端部近傍、および、…背面側の壁部側の端部近傍には、…、各コンタクト端子20aiの固定端子部が圧入される溝12Gai、12Gbiが形成されている」点が記載されている。また、特許文献1の段落0021には、「…隔壁12wには、…、各コンタクト端子20aiの可動端がそれぞれ移動可能に挿入される溝12SGが相対向して形成され」、この「溝12SGは、開口部12Raiの周縁に形成される底壁部12SBと」底壁部12SBに対し上方に位置する「一対の肩部12Sとの間に形成されている」点が記載されている。
【0005】
また、特許文献1の段落0024〜0026の記載から、溝12Gai,12Gbiを形成する部分や肩部12Sを形成し、コンタクト端子20aiを如何に浮き上がらせないようにするかという、特許文献1に記載の発明の発明者が想到したであろう技術的思想が読み取れる。というのも、第一に、肩部12Sの構造について、特許文献1の段落0024に「リフロー半田作業等による所定の熱量によって仮にベース部材12の中央部が上方に向けて凸状に反った場合」に「可動端20Eの係合部20eが…離脱することがないように設定されている」点が言及されているからである。また、第二に、特許文献1の段落0025に「リフロー半田作業のとき、ベース部材12の略中央部の上方に凸状に反りあがることに伴って可動片部20Cの接点部20cbの位置が所定の高さ以上になることが、規制されることとなる」と記載されているからである。
【0006】
本願の発明者は、ICカードを装着させるカードコネクタに関する技術開発を行う中で、上記の溝12Gai,12Gbiを形成する部分や肩部12Sのような、ICカードコネクタに設けられるコンタクトの浮き上がりの防止のためにハウジングの一部をコンタクトの上方に迫り出させる構造が、ICカードコネクタの厚みの増大に寄与していることに気がついた。また、溝12Gai,12Gbiにコンタクト端子20aiの固定部20Fを圧入させる際に溝12Gai,12Gbiを形成する部分が破損しないようこの部分を肉厚にしなければならないことにも気がついた。さらに、このような溝12Gai,12Gbiを形成する部分や肩部12Sを設けるが故に、ICカードコネクタを樹脂成形で形成するための金型の構造が複雑になっていることにも気がついた。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、一方の端部を片持ち支持されるコンタクトを備え、スライド挿通されるICカードがコンタクトの他方の端部が引っかからないような構造を有しながらも薄型であるカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカードコネクタは、(a)一方の面にパッド部が配置されたICカードがスライド挿通される開口と、前記開口からスライド挿通されたICカードに対面する対面部と、前記スライド挿通されたICカードから離反する第1の方向に前記対面部から延びるコンタクト収容部と、を有するハウジングと、(b)前記ICカードのスライド挿通方向に延びる長尺をなし、前記開口からスライド挿通されたICカードのパッド部に押圧力を持って接触する接触部を中腹部分に有するコンタクトと、を備え、(i)前記コンタクトにおける第1の端部側の部分は、前記ハウジングに一体成形され、(ii)前記接触部は、前記対面部よりも前記第1の方向とは反対の第2の方向の側に位置付けられ、(iii)前記コンタクトにおける前記接触部から前記コンタクトの第2の端部に向かう部分は、前記コンタクト収容部に入り込む。
【0009】
本発明のカードコネクタの製造方法は、(α)一方の面にパッド部が配置されたICカードがスライド挿通される開口と、前記開口からスライド挿通されたICカードに対面する対面部と、前記スライド挿通されたICカードから離反する第1の方向に前記対面部から延びるコンタクト収容部と、を有するハウジングを形成するにあたって、前記ICカードのスライド挿通方向に延びる長尺のコンタクトの中腹部分に設けられ前記開口からスライド挿通されたICカードのパッド部に押圧力を持って接触する接触部を前記対面部よりも前記第1の方向とは反対の第2の方向の側に位置付け、前記コンタクトにおける第1の端部側の部分が前記ハウジングに埋設されるよう樹脂成形を行う第1の段階と、(β)前記接触部から前記コンタクトの第2の端部に向かう部分を前記コンタクト収容部に入り込ませる第2の段階と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンタクトの第1の端部は樹脂成形により成形されたハウジングに一体成形され、ハウジングのコンタクト固定部分の周囲の肉厚を薄くしても、リフロー時におけるコンタクト固定部分周囲のハウジングの変形を、従来の圧入によりコンタクト固定する場合に比べて抑えられる。というのも、圧入の場合にはコンタクトを挿入した後のコンタクト固定部分の周囲に応力が残留し、この応力がリフローで加熱された際のコンタクトの保持力を弱める変形を生じさせやすいからである。これに対し、一体成形の場合には、このような応力が残留しない。このため、圧入の場合と比較して、リフロー時のハウジング変形が抑えられる。その結果、圧入の場合と比べて肉厚を薄くしても、圧入と同等のリフロー後のコンタクト保持力を維持することができる。つまり、一方の端部を片持ち支持されるコンタクトを備え、スライド挿通されるICカードがコンタクトの他方の端部が引っかからないような構造を有しながらも、カードコネクタの薄型化が実現される。
【0011】
特に、請求項2や請求項5の発明によれば、コンタクトの第2の端部は、ICカードが挿入されていない状態において、押圧力を持って摺接部に接する。このため、ICカードが挿入される際、コンタクトの第2の端部が、ICカードの挿入方向奥側の側面に干渉して、挿入に支障を来たすような状態になることがない。また、ICカードの挿入や抜去を繰り返すことに伴って、コンタクトの第1の端部から接触部に至る部分が、下方側を凸とする方向の反りが生じた場合など、コンタクトの第2の端部を浮き上がらせる方向の塑性変形が生じた場合であっても、この押下力と相殺するため、コンタクトの第2の端部が浮き上がることがない。従って、特許文献1に記載された溝12Gai,12Gbiを形成する部分や肩部12Sのような、コンタクトの浮き上がりを防ぐための構造が不要となる。その結果、カードコネクタのさらなる薄型化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カードコネクタ、カードアダプタ及び小型ICカードの斜視図である。
【図2】小型ICカードの底面図である。
【図3】ICカードの底面図である。
【図4】カバーが取り外された状態のカードコネクタの斜視図である。
【図5】カバーが取り外された状態のカードコネクタの平面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】ICカードが装着された状態での図5のC−C線断面図である。
【図8】カードコネクタの製造方法の第1の段階を終えた状態での、図5のC−C線断面視で見た断面図である。
【図9】カードコネクタの製造方法の第1の段階を終えた状態での斜視図である。
【図10】カードコネクタの製造方法の第2の段階の途中での、図5のC−C線断面視で見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1ないし図10に基づいて説明する。図1は、カードコネクタ301、カードアダプタ201及び小型ICカード401の斜視図である。カードコネクタ301は、携帯電話機や携帯音楽機器、デジタルカメラ等の端末機器501に搭載されており、小型ICカード401と端末機器501との間のデータ通信経路を構成する。カードコネクタ301は、開口302を有する。
【0014】
カードアダプタ201には、小型ICカード401を着脱自在に取付けることができる。このカードアダプタ201は、開口302からスライド挿通され、カードコネクタ301に装着される。小型ICカード401が取付けられたカードアダプタ201は、このカードアダプタ201と同じ形状を有し機能面で互換性を有するICカードと同一視できるものとなる。このため、カードアダプタ201に小型ICカード401が取付けられた状態のものを、単にICカード200と呼ぶことがある。
【0015】
図2は、小型ICカード401の底面図である。図1及び図2を参照する。小型ICカード401は、長方形の一の角部に切欠部402を形成した概ね五角形の平坦な板状をなす。小型ICカード401の一方の面401aには、八個のパッド部403が配置されている。パッド部403は、小型ICカード401に内蔵されたICチップ(図示せず)に電気的に接続している。なお、パッド部403は、小型ICカード401の他方の面401bには配置されていない。これらの八個のパッド部403のうち四個は、小型ICカード401において切欠部402から延びる一方の短辺404側に寄せてこの短辺404と平行に並んでいる。残りの四個のパッド部403は、他方の短辺405に寄せてこの短辺405と平行に並んでいる。小型ICカード401の一方の面401aにおいて八つのパッド部403よりも外側で、パッド部403と一方の短辺404との間、パッド部403と他方の短辺405との間、パッド部403と切欠部402から延びる一方の長辺406との間、及び、パッド部403と他方の長辺407との間には、余白部408が形成される。また、短辺404,405の延びる方向に隣り合うパッド部403の間には、仕切部409が形成される。このような小型ICカード401の一例は、microSIM規格の情報記憶媒体である。
【0016】
カードアダプタ201は、小型ICカード401よりも長く幅広で、長方形の一の角部に切欠部202を形成した五角形の平坦な板状をなす。カードアダプタ201の厚さは、小型ICカード401の厚さと同じである。図1にあらわれているカードアダプタ201の一方の面を、第1の面201aと呼ぶ。また、カードアダプタ201における第1の面201aとは反対側の面を、第2の面201b(図3参照)と呼ぶ。一例として、カードアダプタ201の外周の形状は、MiniSIM規格の情報記憶媒体と同じ形状をなしている。この場合、カードアダプタ201に小型ICカード401が取付けられたもの(ICカード200)は、MiniSIM規格の情報記憶媒体と機能面で互換性を有するものとなる。
【0017】
カードアダプタ201には、嵌合部203が設けられる。嵌合部203は、カードアダプタ201の第1の面201aから第2の面201bにかけて打ち抜かれ、平面視において小型ICカード401と同じ形状をなす孔である。嵌合部203には、小型ICカード401の切欠部402に対応する斜辺部203aが形成される。この斜辺部203aは、カードアダプタ201の切欠部202に平行に延びている。小型ICカード401は、第2の面201b側(図1における下側)にパッド部403が向けられた状態で、第1の面201a(図1における上側)側から嵌入される。嵌入された小型ICカード401は、脱落防止部204A(後述)に支持され、第2の面201b側に脱落しないようになっている。
【0018】
カードアダプタ201の第1の面201aで、切欠部202から延びる一方の短辺206の近傍には、把持部207が設けられる。把持部207は、一方の短辺206に平行に延びる長円形状の凹みである。前述の嵌合部203は、把持部207と他方の短辺208との間で、他方の短辺208に寄せて設けられる。
【0019】
図3は、ICカード200の底面図である。換言すると、図3は、小型ICカード401が取付けられた状態のカードアダプタ201の底面図である。カードアダプタ201は、樹脂成形によって第2の面201bに形成され、脱落防止部204Aを備える。脱落防止部204Aは、棒状をなしてスライド挿通方向Aに平行に延びる部分であって、幅方向Bに非対称であり、センターリブ部204及びサイドリブ部205を含んでいる。ここで、幅方向Bとは、スライド挿通方向Aとカードアダプタ201の厚さ方向とのいずれにも直交する方向をいう。
【0020】
センターリブ部204は、仕切部409をはじめ、嵌合部203に嵌合された小型ICカード401の幅方向Bの中央の領域を支持する。このセンターリブ部204は、カードアダプタ201の一方の短辺206から他方の短辺208まで一杯に延び、嵌合部203に掛け渡されている。センターリブ部204は、互いに離間して幅方向Bに三本並んでいる。センターリブ部204は、嵌合部203に嵌合された小型ICカード401のパッド部403とコンタクト351(図4等参照)との接触を妨げないよう、嵌合部203に嵌合された小型ICカード401の仕切部409に一致する箇所に配置される。
【0021】
サイドリブ部205は、余白部408をはじめ、嵌合部203に嵌合された小型ICカード401の幅方向Bの端部の領域(長辺406,407の近傍の領域)を支持する。このサイドリブ部205は、カードアダプタ201において切欠部202から延びる一方の長辺209に近い右サイドリブ部205Rと、他方の長辺210に近い左サイドリブ部205Lとを含む。右サイドリブ部205Rは、左サイドリブ部205Lに対して幅広である。サイドリブ部205(左サイドリブ部205L、右サイドリブ部205R)は、カードアダプタ201が延びる面の方向と平行に迫り出し、平面視において嵌合部203における幅方向Bの両側領域に位置する。
【0022】
脱落防止部204A(センターリブ部204、サイドリブ部205)は、カードアダプタ201の第2の面201bから突出している。これらの突出高によるカードコネクタ301の厚みの増加は、カードコネクタ301に設けられた退避部303によって防がれる。退避部303については、後述する。
【0023】
再び図1を参照する。カードコネクタ301は、ハウジング301Aを有する。ハウジング301Aは、第1の部分ハウジングとしてのボディ305に第2の部分ハウジングとしてのカバー304を被せて構成され、平面視略矩形の平坦な箱型形状をなす。ボディ305は、樹脂成形によって形成され、正面視において上方に開くコ字形状をなしている。ボディ305とカバー304とは、ICカード200をスライド挿通させるための開口302を、カードコネクタ301の正面側の側面に形成する。
【0024】
カバー304は、金属板をプレス加工して形成され、被覆部306と引っ掛け部307と爪部308と突き当て部309とを有する。被覆部306は、開口302の上縁からスライド挿通方向Aに延びる平坦な部分である。被覆部306は、開口302からスライド挿通されたICカード200の浮き上がりを押さえつける。引っ掛け部307は、被覆部306の幅方向の両端部から下方に延びる部分で、ボディ305の両側部の外側の側面305a(図4参照)に沿う。引っ掛け部307は、ボディ305に対するカバー304のガタつきを防ぐ。爪部308は、引っ掛け部307の一部に切れ込み308aを入れた後に折り曲げられて形成される。爪部308は、ボディ305の両側部の外側に設けられた爪受部305bに係合する。突き当て部309は、ボディ305における開口302とは反対側の端部から下方に延びる部分である。突き当て部309には、開口302からスライド挿通されたICカード200(カードアダプタ201)の先端部分(他方の短辺208)が突き当たる。
【0025】
図4は、カバー304が取り外された状態のカードコネクタ301の斜視図である。図5は、カバー304が取り外された状態のカードコネクタ301の平面図である。図6は、図5のC−C線断面図である。図7は、ICカード200が装着された状態での図5のC−C線断面図である。ボディ305には、対面部312と退避部303とが設けられる。対面部312は、ボディ305の上面でコンタクト351(後述)の間の領域に設けられる。対面部312は、コンタクト351に対してスライド挿通方向Aや幅方向Bに並ぶ領域に形成される。対面部312は、開口302からスライド挿通されたICカード200の下面に対面し、この下面を支持する。
【0026】
退避部303は、開口302からスライド挿通されたICカード200の脱落防止部204Aを通過させるための空間領域を形成する。退避部303は、対面部312から下方に凹み、スライド挿通方向Aに切られた溝形状をなして、脱落防止部204Aがスライド嵌合するようになっている。ここで、脱落防止部204Aが幅方向Bに非対称となっているが故に、切欠部202が開口302に向けられた状態でICカード200がカードコネクタ301に進入することができない。つまり、本実施の形態のカードアダプタ201では、カードコネクタ301に対するカードアダプタ201の逆差し防止が実現される。
【0027】
ボディ305には、八個のコンタクト351が取付けられる。コンタクト351は、ICカード200(小型ICカード401)のパッド部403(図2参照)のそれぞれに対応し、パッド部403に接触して、端末機器501(図1参照)とICカード200(小型ICカード401)内のICチップ(図示せず)との間の電気信号の通信経路を構成する。
【0028】
八個のコンタクト351のうち四個は、開口302側に位置して幅方向Bに並んでいる。残りの四個のコンタクト351は、開口302とは反対側(奥側310と呼ぶ)に位置して幅方向Bに並んでいる。これらのコンタクト351の配置箇所に対応するように、ボディ305には、八箇所のコンタクト収容部305cが形成されている。コンタクト収容部305cは、対面部312(後述)から下方(第1の方向D)に延びる孔部である。コンタクト収容部305cは、平面視においてスライド挿通方向Aに延びる長円形状に見える。本実施の形態では、コンタクト収容部305cは、ボディ305を貫通し、対面部312とは反対側の外壁部305eまで連通している。なお、コンタクト収容部305cは、ボディ305を貫通せずに有底であってもよい。
【0029】
いずれのコンタクト収容部305cにおいても、その内部で開口302や奥側310から遠い方の端部には、コンタクト351の第2の端部351b(後述)が載り摺動するための平坦な摺接部305dが形成されている。摺接部305dは、対面部312(後述)をなす面に対して下方に位置している。
【0030】
コンタクト351は、コンタクト収容部305cのそれぞれに一つずつ設けられる。いずれのコンタクト351も、スライド挿通方向Aに延びる長尺をなしている。コンタクト351の中腹部分には、接触部351cが形成される。この接触部351cは、コンタクト351を折り曲げて形成されるもので、コンタクト351の側面視において上方(第2の方向U)に凸となる「く」字形状の頂部に位置し、対面部312よりも上方(第2の方向U)に位置付けられる。
【0031】
いずれのコンタクト351においても、開口302や奥側310に近い第1の端部351aは、端から一部を残すようにして樹脂成形によってボディ305に埋設されている。このとき、コンタクト351における第1の端部351aから接触部351cに向かう部分は、ボディ305からコンタクト収容部305c内に突出する向きに向けられ、スライド挿通方向Aに延びる緩やかな傾斜面351dを形成する。これにより、第1の端部351aは、ボディ305からコンタクト収容部305c内に向けて延びる第1の部分351aaと、ボディ305から第1の部分351aaとは反対側に突出する第2の部分351abとを有することになる。この第2の部分351abは、ボディ305の下方に位置する基板311のランドパターン311aに接続されている。
【0032】
いずれのコンタクト351においても、接触部351cから、第1の端部351aとは反対側の第2の端部351bに向かう部分は、コンタクト収容部305cの内部に入り込んでいる。そして、第2の端部351bは、コンタクト351に備わるバネ性によって、下方に向かう押圧力を持って摺接部305dに接し、この摺接部305dの上面をスライド挿通方向Aに対して摺動できるようになっている。
【0033】
図1、図6及び図7を参照する。ICカード200と端末機器501との間での通信を行うための手順を、以下に説明する。
【0034】
まず、使用者は、小型ICカード401を、パッド部403が配置された一方の面401aをカードアダプタ201の第2の面201b側に向け、斜辺部203aに切欠部402を対応させて、カードアダプタ201の第1の面201a側から嵌入する。これにより、小型ICカード401は嵌合部203に嵌合され、小型ICカード401は、脱落防止部204Aに支持され、小型ICカード401に対してその厚さ方向に大きな力が加えられても小型ICカード401はカードアダプタ201から外れない。
【0035】
続いて、使用者は、カードアダプタ201の把持部207を持ち、他方の短辺208を開口302に対面させて、他方の短辺208側から開口302に通過させ、脱落防止部204Aを退避部303にスライド嵌合させて、ICカード200(カードアダプタ201に小型ICカード401が取付けられた状態のもの)をカードコネクタ301に進入させる。
【0036】
図7を参照する。カードコネクタ301内でICカード200がスライド挿通方向Aに沿って奥側310に進むと、ICカード200の先端部分(カードアダプタ201の他方の短辺208)は、コンタクト351の傾斜面351dに接触する。ICカード200がさらに進むと、ICカード200の先端部分はコンタクト351を押し下げる。このとき、コンタクト351の第2の端部351bは摺接部305dを摺動して奥側310に、コンタクト351の接触部351cは下方に変位する。カードアダプタ201がさらに進むと、ICカード200は接触部351cに乗り上がる。そして、ICカード200の先端部分が突き当て部309に突き当たるまでICカード200が進むと、ICカード200に含まれるのパッド部403は、このパッド部403に対応するコンタクト351の接触部351cの位置に到達する。コンタクト351は、それ自身のバネ性によって、接触部351cを上方に押し上げる。これにより、接触部351cは、パッド部403に押圧力を持って接する。この押圧力によるICカード200の浮き上がりは、カバー304の被覆部306によって防止される。
【0037】
また、使用者は、カードコネクタ301に装着されたカードアダプタ201の把持部207を持って、カードアダプタ201をカードコネクタ301から引き抜くことができる。カードアダプタ201が引き抜かれると、コンタクト351は、それ自身のバネ性によって元の形に戻ろうとする。これにより、コンタクト351の第2の端部351bは、摺接部305dを摺動して開口302に向けて動く。また、コンタクト351の接触部351cは、上方に変位する。
【0038】
図8は、カードコネクタ301の製造方法の第1の段階を終えた状態での、図5のC−C線断面視で見た断面図である。図9は、カードコネクタ301の製造方法の第1の段階を終えた状態での斜視図である。カードコネクタ301の製造方法を、以下に述べる。なお、説明のために、図8では、ボディ305を樹脂成形するための上方金型M1及び下方金型M2が上下方向に退避されている。また、図9では、これらの上方金型M1及び下方金型M2は省略されている。
【0039】
まず、第1の段階として、金属部材351eを保持して樹脂成形を行い、ボディ305を作る。金属部材351eは、長尺の切り落とし部351fを有する。切り落とし部351fの側方部分からは、コンタクト351となる舌状の金属片部351gが複数延出している。金属片部351gの先端部分は、コンタクト351の第2の端部351bとなる部分であって、摺接部305dに滑り接触するために軽く折り曲げられている。金属片部351gの中腹部分は、コンタクト351の接触部351cとなる部分であって、上方に凸となるよう予め曲げられている。金属片部351gの根元部分は、コンタクト351の第1の端部351aとなる部分である。
【0040】
ボディ305を作るための樹脂成形は、ボディ305の上面を形成する上方金型M1とボディ305の下面を形成する下方金型M2との間に金属部材351eを挟み込んだ状態で、上方金型M1と下方金型M2との間に形成された空隙に溶融樹脂を射出して行われる。この樹脂成形は、金属部材351eが片持ちに保持された状態で行われる。詳細には、接触部351cが対面部312よりも上方(第2の方向U)に位置付けられ、かつ、コンタクト351における第1の端部351a側となる部分がボディ305に埋設されるように、第2の端部351bとなる金属片部351gの先端部分を自由端として金属片部351gを片持ちに維持された状態でなされる。ここで、金属片部351gの根元部分が、基板311のランドパターン311aに固着される第2の部分351abとなる箇所を残してボディ305に埋設されるように(図6や図7も参照)、金属部材351eは保持される。このとき、コンタクト351における第1の端部351a側となる部分をボディ305に埋設させるために、上方金型M1や下方金型M2には、流出防止部M3が設けられる。流出防止部M3は、コンタクト351を強固に挟みこんで溶融樹脂の流出を防止し、ボディ305のうちコンタクト351を埋めこむ部分の開口302側の側面及び奥側310側の側面を形成する。また、コンタクト351における第1の端部351aから接触部351cに向かう部分が、図8に示すように、ボディ305からコンタクト収容部305cに突出されるように、金属部材351eは保持される。また、平面視において、金属片部351gの先端と摺接部305dとは僅かに離間しており(図8に符号wで示す)、このために、上方金型M1及び下方金型M2の開閉の際に、上方金型M1において摺接部305dを形成するための部分が金属片部351gの先端部分(第2の端部351b)に接触しない。
【0041】
溶融樹脂が固化した後、切り落とし部351fは切り落とされ、個々の金属片部351gは別個独立の複数のコンタクト351となる。
【0042】
図8及び図10を参照する。続いて、第2の段階として、図8中の矢印F(鉛直方向)のようにコンタクト351に下方(第1の方向D)への力を加えて接触部351cから第2の端部351bに向かう部分をコンタクト収容部305cに入り込ませる。この工程は、上方金型M1及び下方金型M2が閉じられた状態で行われる。これにより、コンタクト351は、矢印Fの力が加えられることで、上方金型M1と下方金型M2とに挟まれた箇所は動かず、接触部351cと第2の端部351bとは一緒に下方(第1の方向D)に変位するように変形する。変形後、第2の端部351bは、図10に示すように、摺接部305dよりも下方(第1の方向D)の側に位置付けられる。
【0043】
ここで、第2の端部351bが摺接部305dよりも下方へ変位する際、双方が互いに干渉しうる。これについては、図8に示される状態から、第2の端部351bが摺接部305dへ至る途中で、接触部351cの下面に接触して支点として機能し第2の端部351bの側の部分を下方へ変位させる、すなわち、第2の端部351bを接触部351cよりも相対的に早く下方へ変位させるような部材を設けることで回避することができる。なお、この例における接触部351cの下面のこの部材との接触箇所を支点とする変形は、コンタクト351の弾性変形の範囲で行うことが好ましい。
【0044】
続いて、図10中の矢印F’(鉛直方向)のようにコンタクト351に上方(第2の方向U)への力を加えて、第2の端部351bを摺接部305dよりも上方(第2の方向U)の側に押し戻される。第2の端部351bは摺接部305dよりも下方(第1の方向D)の側に位置付けられた後に摺接部305dよりも上方(第2の方向U)に戻され、このために、上方(第2の方向U)に戻された第2の端部351bは、押圧力を持って摺動自在に摺接部305dに接することになる。その結果、コンタクト351は、図8において一点鎖線で示されるような状態となる。そして、接触部351cは、対面部312よりも上方(第2の方向U)に位置付けられ、かつ、コンタクト351自身がバネ性を有することによって、開口302からスライド挿通されたICカード200のパッド部403に押圧力を持って接触することになる(図7参照)。
【0045】
なお、切り落とし部351fを切り落とす工程は、第2の端部351bを摺接部305dに接しさせた後に行ってもよい。
【0046】
続いて、カバー304がボディ305に被せられて、ハウジング301Aが構成され、本実施の形態のカードコネクタ301が完成する。
【0047】
本実施の形態のカードコネクタ301では、コンタクト351の第1の端部351aは樹脂成形により成形されたハウジング301A(ボディ305)に一体成形される。このため、ハウジング301A(ボディ305)におけるコンタクト351を固定する部分の周囲の肉厚を薄くしても、リフロー時におけるハウジング301A(ボディ305)の変形を、従来の圧入によるコンタクト固定手法に比べて抑えられる。というのも、圧入の場合には、コンタクトを挿入した後では、ハウジング(ボディ)におけるコンタクトの固定部分の周囲に応力が残留し、この応力がリフローで加熱された際のコンタクトの保持力を弱める変形を生じさせやすいからである。本実施の形態のように、一体成形してハウジング301A(ボディ305)にコンタクト351を固定する場合には、このような応力が残留しない。このため、本実施の形態では、圧入の場合と比較して、リフロー時のハウジング301A(ボディ305)の変形が抑えられる。その結果、圧入の場合と比べてハウジング301A(ボディ305)の肉厚を薄くしても、圧入と同等のリフロー後のコンタクト351の保持力を維持することができる。つまり、コンタクト351の一方の端部(第1の端部351a)を片持ち支持して、スライド挿通されるICカード200がコンタクト351の他方の端部(第2の部分351ab)が引っかからないような構造を有しながらも、カードコネクタ301を薄型化することが実現できる。
【0048】
さらに、本実施の形態のカードコネクタ301では、コンタクト351の第2の端部351bは押圧力を持って摺接部305dに接する。つまり、コンタクト351の端部の浮き上がりを防ぐための構造をカードコネクタ301に設けなくても良い。その結果、カードコネクタ301のさらなる薄型化が実現される。
【符号の説明】
【0049】
200 ICカード
201a 第1の面(パッド部が配置された一方の面)
301 カードコネクタ
301A ハウジング
302 開口
305c コンタクト収容部
305d 摺接部
312 対面部
351 コンタクト
351a 第1の端部
351b 第2の端部
351c 接触部
403 パッド部
A スライド挿通方向
D 下方(第1の方向)
U 上方(第2の方向)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にパッド部が配置されたICカードがスライド挿通される開口と、前記開口からスライド挿通されたICカードに対面する対面部と、前記スライド挿通されたICカードから離反する第1の方向に前記対面部から延びるコンタクト収容部と、を有するハウジングと、
前記ICカードのスライド挿通方向に延びる長尺をなし、前記開口からスライド挿通されたICカードのパッド部に押圧力を持って接触する接触部を中腹部分に有するコンタクトと、
を備え、
前記コンタクトにおける第1の端部側の部分は、前記ハウジングに一体成形され、
前記接触部は、前記対面部よりも前記第1の方向とは反対の第2の方向の側に位置付けられ、
前記コンタクトにおける前記接触部から前記コンタクトの第2の端部に向かう部分は、前記コンタクト収容部に入り込む、
カードコネクタ。
【請求項2】
前記コンタクト収容部の内部には、前記ICカードが挿入されていない状態で前記第2の端部が押圧力を持って接し、前記ICカードの挿入に伴って前記第2の端部が押圧力を持って摺動自在に接する摺接部が設けられる、
請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記コンタクトにおける前記第1の端部から前記接触部に向かう部分は、前記ハウジングから前記コンタクト収容部に突出する、
請求項1又は2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
一方の面にパッド部が配置されたICカードがスライド挿通される開口と、前記開口からスライド挿通されたICカードに対面する対面部と、前記スライド挿通されたICカードから離反する第1の方向に前記対面部から延びるコンタクト収容部と、を有するハウジングを形成するにあたって、前記ICカードのスライド挿通方向に延びる長尺のコンタクトの中腹部分に設けられ前記開口からスライド挿通されたICカードのパッド部に押圧力を持って接触する接触部を前記対面部よりも前記第1の方向とは反対の第2の方向の側に位置付け、前記コンタクトにおける第1の端部側の部分が前記ハウジングに埋設されるよう樹脂成形を行う第1の段階と、
前記接触部から前記コンタクトの第2の端部に向かう部分を前記コンタクト収容部に入り込ませる第2の段階と、
を備えるカードコネクタの製造方法。
【請求項5】
前記コンタクト収容部の内部には、前記第2の端部が接する摺接部が設けられ、
前記第2の段階では、前記第2の端部を、前記ICカードが挿入されていない状態で、押圧力を持って前記摺接部に接し、かつ、前記ICカードの挿入に伴って前記第2の端部が摺動自在となるように前記摺接部に接しさせる、
請求項4記載のカードコネクタの製造方法。
【請求項6】
前記第2の段階では、前記第2の端部を前記摺接部よりも前記第1の方向の側に位置付けた後に、前記第2の端部を前記摺接部に接しさせる、
請求項5記載のカードコネクタの製造方法。
【請求項7】
前記第1の段階では、前記コンタクトにおける前記第1の端部から前記接触部に向かう部分を、前記ハウジングから前記コンタクト収容部に突出させる、
請求項4から6のいずれか一に記載のカードコネクタの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−104026(P2012−104026A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253863(P2010−253863)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】