説明

カードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタ

【課題】バネ力や挿抜耐久性を落とすことなく、かつ異物などの除去効果及び接触信頼性を向上させるようにしたカードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタを提供する。
【解決手段】カードコネクタは、カバー部材、ベース部材及び複数の弾性コンタクト片を備えるとともに、カバー部材とベース部材とによりICカードを収容するカード収容空間が形成される。複数の弾性コンタクト片それぞれは、接触部、弾性変形部、固定部及び端子部を含み、接触部及びこれに続く弾性変形部が片持ち梁状に延在するように固定部を介してベース部材に固定され、弾性コンタクト片の接触部は、中心線に沿う断面形状及び該中心線に直交する断面形状が上に凸に円弧状に湾曲し、接触部表面から上方に向って突出形成された点接触部分を複数備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やカメラ等の電子機器に取り付けられたカードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタに関し、特に接触信頼性及び耐久性を向上させたカードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカードコネクタに用いられる代表的な弾性コンタクト片が図5に示されている。図5において、弾性コンタクト片70の接触部71は、長手方向に上に凸に湾曲するように形成されている。該接触部71は、したがって、挿入されるICカード(集積回路内蔵カード)の外部接点(不図示)と線接触するように構成されている。あるいは、該接触部71が、断面線VB−VB線に沿って、さらに上に凸に湾曲され、ICカードの外部接点に対して1点で点接触するように構成されている。なお、図5において、72は、接触部71を上下動させる弾性変形部、73は、弾性コンタクト片をカードコネクタに固定するための固定部である。
【0003】
このような線接触または一点点接触であると、弾性コンエクタト片の接触部とICカードの外部接点との間に異物が挟まることにより接触不良が生じる恐れがある。このような接触不良を改善するために、特許文献1や特許文献2に示されるように複数接触が提案されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平04−012280号公報
【特許文献2】特開2002−100440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、接触部の断面をV字形にして2点接触としていることで、接触部がエッジ形状をなすことになり、接触するICカードの外部接点により弾性コンタクト片自身の接触部が削られ、ICカードの挿抜に対する耐久性が低下する恐れがある。また、接触部がエッジ形状をなすことにより、接触するICカードの外部接点を傷つけ、弾性コンタクト片との接触が不安定となる恐れがある。
【0006】
また、特許文献2にでは、弾性コンタクト片が2つに分割されるため、分割された各弾性接触片の幅が狭まることによりバネ力が弱まり、従来の弾性コンタクト片に比べてバネ力に若干劣ることになる。そのため、ICカードを複数回挿抜することにより、弾性コンタクト片によって得られる接触力が低下し、接触信頼性に問題が生じる恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題点に鑑み、バネ力や挿抜耐久性を落とすことなく、かつ異物などの除去効果及び接触信頼性を向上させ、カードコネクタの低背化を妨げることがないようにしたカードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカードコネクタ用弾性コンタクト片は、上記目的を達成するために、カードコネクタのベース部材に取り付けられ、ICカードの外部接点と接触するカードコネクタ用弾性コンタクト片であって、前記弾性コンタクト片は、接触部、弾性変形部、固定部及び端子部を含み、前記接触部及びこれに続く前記弾性変形部が片持ち梁状に延在し、前記カード収容空間内に突出するように前記固定部を介して前記ベース部材に取付けられ、前記弾性コンタクト片の前記接触部は、中心線に沿う断面形状及び該中心線に直交する断面形状がいずれも上に凸に円弧状に湾曲し、前記接触部表面から上方に向って突出形成されている点接触部分を複数備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るカードコネクタ用弾性コンタクト片は、また、複数の点接触部分の間に、接触部を上下方向に貫通する長孔が形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係るカードコネクタは、上述の弾性コンタクト片が複数取り付けられているベース部材、前記ベース部材とともに、前記ICカードを収容するカード収容空間を形成するカバー部材を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカードコネクタ用弾性コンタクト片及びそれを備えるカードコネクタは、このように構成されることにより、複数の上に凸の点接触部分を備えることにより、対応するICカードの外部接点に対して、複数箇所で点接触することが可能となる。したがって、仮に、いくつかの点接触部分が接触不良となっても、残りの点接触部分が接触を補償し、接触信頼性を向上させることが可能となる。また、ごみが接触部とICカードの外部接点との間に存在しても、複数の点接触部分がICカードの外部接点上を摺動することにより、ごみを排除または破壊することが可能となる。それによって、弾性コンタクト片の接触信頼性を向上させることができるとともに、ICカードの外部接点を傷つけることもない。さらに、点接触部分の形状が、断面で円弧状をなしているため、ICカードの挿抜に対して接触部が変形する恐れが少なくなり、点接触を維持し、従来の弾性コンタクト片よりも挿抜耐久性に優れている。また、複数の点接触部分及び弾性変形部が一体化されているため、弾性変形部の幅が広く形成され得ることになり、ICカードの挿抜が頻繁に繰り返されても、弾性変形部のバネとしての機能が低下することもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るカードコネクタ用弾性接触片の第1の実施形態を示し、(a)は、弾性接触片の斜視図、(b)は、上面図、(c)は、側面図、(d)は、(a)のId−Id線に沿う断面図である。
【図2】図1に示される弾性コンタクト片を備えたカードコネクタの概略図であり、(a)は、カバーを取り除いたカードコネクタの斜視図、(b)は、同じくカバーを取り除いたカードコネクタの上面図である。
【図3】本発明に係るカードコネクタ用弾性接触片の第2の実施形態を示し、(a)は、弾性接触片の要部拡大斜視図、(b)は、上面図、(c)は、(a)のIIIc−IIIc線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係るカードコネクタ用弾性接触片の第3の実施形態を示し、(a)は、弾性接触片の要部拡大斜視図、(b)は、上面図、(c)は、(a)のIVc−IVc線に沿う断面図である。
【図5】従来のカードコネクタ用弾性接触片を示し、(a)は、弾性接触片の要部拡大斜視図、(b)は、(a)のVb−Vb線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るカードコネクタ用弾性コンタクト片の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
最初に、ICカード(以下、単に、「カード」ともいう。)が装着されるカードコネクタ50について簡単に説明する。カードコネクタ50は、図2(a)、(b)に示されるように、カバー部材51とベース部材52とを備える。カバー部材51とベース部材52とが重ね合わされることで、ICカードが収容されるカード収容空間55が形成される。カード収容空間55は、矢印X方向と逆の方向に向って開口し、カード挿入口として形成される。カードコネクタ50を構成するカバー部材51は、金属から形成され、ベース部材52は、電気的に絶縁性の合成樹脂で形成されることが好ましい。なお、カード収容空間55は、カードコネクタ50が配される電子機器の筐体(不図示)の内周部とベース部材52とによって形成されてもよい。この場合、ベース部材52は、電子機器の筐体の内周部により覆われることになる。カードコネクタ50は、ベース部材52の底板53に取付けられた複数の弾性コンタクト片10をさらに備えている。本実施形態では、複数の弾性コンタクト片10は、カード挿入方向(矢印X)に前後に2列に、かつ各列は、カード挿入方向に直交するとともに、各列の隣接するコンタクト片10、10が互いに平行となるように配置されている。また、本実施形態では、弾性コンタクト片10それぞれは、ベース部材52の底板53内にインサート成形で埋め込まれることで該ベース部材52の底板53に固定されている。
【0015】
カードコネクタのカード収容空間55内へICカード(不図示)が矢印X方向に挿入されることにより、該ICカードの外部接点は、対応する弾性コンタクト片10と電気的に接触する。それにより、ICカードは、カードコネクタ50が装着される携帯電話機、カメラ、情報端末機などの電子機器(不図示)と電気的に接続される。
【0016】
本実施形態における弾性コンタクト片10それぞれは、図1(a)及び(b)に示されるように、中心線O−Oに対し左右対称の形状を有し、接触部11、弾性変形部12、固定部13及び端子部14を備えている。本実施形態においても、弾性コンタクト片10は、従来と同様、導電性の金属板から打ち抜き加工により一体的に形成される。
【0017】
接触部11は、ICカードの外部接点と電気的に接触する部材であり、本実施形態では、ICカードの外部接点と点接触し得る2つの点接触部分11a、11bを含んでいる。2つの点接触部分11a、11bは、図1(b)に示されるように、中心線O−Oを挟んで左右対称に、かつ互いに平行に配置されている。点接触部分11a、11bそれぞれは、中心線O−Oに沿って上に凸に円弧状に湾曲するとともに、図1(d)に示されるように、中心線O−Oと直交する断面線Id−Idに沿って上に凸に円弧状に湾曲するように形成されている。すなわち、点接触部分11a、11bそれぞれは、全体として概略半球状をなして接触部11の表面から上方に向って突出形成されている。本実施形態では、2つの点接触部分11a、11bは、一体に形成されており、弾性変形部12により上下方向に弾性変位可能に支持され、ICカードの外部接点に所定の接触圧力で弾性的に接触する。
【0018】
弾性変形部12は、図1(a)に示されるように、固定部13から片持ち梁状に斜め上方に延在し、接触部11を上下に弾性変位可能に支持する部材である。弾性変形部12は、固定部13との連結部12aを中心に板バネのように弾性変形し得るように形成されている。接触部11及び該接触部11に続く弾性変形部12は、カード収容空間55内に突出するように固定部13を介してベース部材52の底板53に固定される。
【0019】
固定部13は、弾性変形部12と端子部14との間に形成される平坦な部材であって、カードコネクタ50を構成するベース部材52の底板53に弾性コンタクト片10を固定するための部材である。本実施形態では、固定部13は、底板13内にインサート成形により埋め込まれることで、弾性コンタクト片10を底板53に固定させるように構成される。具体的には、図1(b)に明瞭に示されるように、固定部13は、矩形状の平板構造をなし、底板53に形成される矩形状の開口53aより若干大きい矩形状の窓13aを含んでいる。固定部13の矩形状の窓13aの端子部14側の辺(または、この辺に対向する辺)には、接触部11及びこれに続く弾性変形部12が、該窓13a内を通って上下に弾性変位可能であるように、連結部12aを介して接触部11及び弾性変形部12が設けられる。この場合、底板53の開口53aの大きさも、弾性コンタクト片10の接触部11及び弾性変形部12が該開口53aを通って上下に弾性変位可能であるように設定される。
【0020】
なお、固定部13の形状は、本実施形態に限られるものではなく、弾性変形部12から端子部14までほぼ同一の幅で形成されるように帯状に形成されてもよい。また、固定部13は、本実施形態のようにインサート成形で底板53に埋め込まれることに限られるものではなく、例えば、特許文献2に示されるように、底板53に設けられた溝などに固定部が圧入される構成を採ってもよい。
【0021】
端子部14は、カードコネクタ50が装着される電子機器の印刷回路などの外部端子に半田付けなどにより接続される部材である。端子部14は、固定部13から中心線O−Oに沿って、外方に向って(例えば、図1(b)に示されるように、接触部11に対向して)設けられる。
【0022】
本実施形態にかかる弾性コンタクト片10は、2つの上に凸状の概略半球状の点接触部分11a、11bを備えることにより、対応するICカードの外部接点に対して、2箇所で点接触することが可能となる。したがって、仮に一方の点接触部分11aまたは11bが接触不良となっても、他方の点接触部分11aまたは11bが接触を補償し、接触信頼性を向上させることが可能となる。また、ごみ(異物)が接触部11とICカードの外部接点との間に存在しても、2つの概略半球状の点接触部分11a、11bがICカードの外部接点上を滑る(摺動)ことにより、ごみを排除または破壊することが可能となる。それによっても弾性コンタクト片10の接触信頼性を向上させることができる。しかしながら、2つの点接触部分11a、11bはいずれも、概略半球状であるので、ICカードの外部接点を傷つける恐れはない。さらに、2つの点接触部分11a、11bの形状が、Id−Id線に沿う断面及び中心線O−Oに沿う断面で円弧状をなしているため、ICカードの挿抜に対して接触部11が変形する恐れが少なくなり、点接触を維持し得る。したがって、従来の弾性コンタクト片よりも挿抜耐久性に優れている。また、2つの点接触部分11a、11b及び弾性変形部12が一体化されているため、弾性変形部12の幅が広く形成され得ることになり、ICカードの挿抜が頻繁に繰り返されても、弾性変形部12のバネとしての機能が低下することもない。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明に係る弾性コンタクト片の第2の実施形態の要部が図3(a)〜(c)に示されている。第2の実施形態における弾性コンタクト片20は、長孔21cを除いて上記第1の実施形態における弾性コンタクト片10と概略同じ形状を備えている。長孔21cは、接触部21の2つの点接触部分21a及び21bとの間であって、中心線O−Oに沿って延在するように形成されている。当該長孔21cは、2つの点接触部分21a、21bがICカードの外部接点上を摺動しながら接触するときに排除又は破壊されたごみなどを下方に落下させるために形成される。したがって、長孔21cは、接触部21を上下方向に貫通するように形成されている。このような長孔21cを設けることにより、接触部21上にごみなどを残さないようにすることで、接触不良を起こす確率をさらに低下させることが可能となる。なお、その他の構造については、上述したように、第1の実施形態と同じであるので説明は省略する。この場合、第1の実施形態における参照数字10番を20番に置き換えることで、第2の実施形態における弾性コンタクト片20の構造を容易に理解することができるであろう。
【0024】
(第3の実施形態)
本発明に係る弾性コンタクト片の第3の実施形態の要部が図4(a)〜(c)に示されている。第3の実施形態における弾性コンタクト片30は、3番目の点接触部分31cを除いて上記第1の実施形態における弾性コンタクト片10と概略同じ形状を備えている。3番目の点接触部分31cは、接触部31の2つの点接触部分31a及び31bとの間であって、中心線O−Oに沿って延在するように形成されている。3番目の点接触部分31cは、両側に形成される2つの点接触部分31a、31bと同じ形状を成すように形成されており、すなわち、概略半球状に上方に向って突出形成されている。本実施形態では、さらに点接触部分を増設することにより、3箇所で点接触することが可能となり、したがって、接触信頼性をさらに向上させることが可能となる。なお、その他の構造については、上述したように、第1の実施形態と同じであるので説明は省略する。この場合、第1の実施形態における参照数字10番を30番に置き換えることで、第3の実施形態における弾性コンタクト片30の構造を容易に理解することができるであろう。また、第2の実施形態のように、点接触部分31a、31b及び31cとの間に、中心線O−Oに平行に延在するように、長孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10、20、30、70 弾性コンタクト片
11、21、31、71 接触部
11a、11b 点接触部分
12、22、32、72 弾性変形部
13 固定部
14 端子部
21c 長孔
31c (3番目の)点接触部分
50 カードコネクタ
51 カバー部材
52 ベース部材
53 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードコネクタのベース部材に取り付けられ、ICカードの外部接点と接触するカードコネクタ用弾性コンタクト片であって、
前記弾性コンタクト片は、接触部、弾性変形部、固定部及び端子部を含み、前記接触部及びこれに続く前記弾性変形部が片持ち梁状に延在し、前記カード収容空間内に突出するように前記固定部を介して前記ベース部材に取付けられ、
前記弾性コンタクト片の前記接触部は、中心線に沿う断面形状及び該中心線に直交する断面形状がいずれも上に凸に円弧状に湾曲し、前記接触部表面から上方に向って突出形成されている点接触部分を複数備えていることを特徴とするカードコネクタ用弾性コンタクト片。
【請求項2】
前記複数の点接触部分の間に、前記接触部を上下方向に貫通する長孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ用弾性コンタクト片。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の弾性コンタクト片が複数取り付けられているベース部材、
前記ベース部材とともに、前記ICカードを収容するカード収容空間を形成するカバー部材、
を備えることを特徴とするカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−216439(P2011−216439A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86052(P2010−86052)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】