説明

カードコネクタ

【課題】 カードコネクタからのトレイの引き出しにおけるストローク量が簡便に増大するカードコネクタを提供する。
【解決手段】 ベース部材11にカバー部材が重ね合わされて形成されるカード・トレイ収容空間13をもつカードコネクタにおいて、ベース部材11は平板状の絶縁体平板部11aと2つの金属板部11b,11bから構成される。絶縁体平板部11aにはカードの外部端子が加圧接触する例えば第1のコンタクト列16と第2のコンタクト列17が設けられる。そして、金属板部11b,11bの側壁11cに、カード・トレイ収容空間13に向かって突出するトレイ抜脱ストッパ18が互いに向かい合って一対に設けられる。このトレイ抜脱ストッパ18,18がトレイの側壁部に係合しカードコネクタからの抜脱を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタに関し、特にカードをトレイに収容してコネクタに対する着脱を行うトレイタイプのカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、デジタルカメラ、録音機、携帯電話、携帯型オーディオ、PDA(Personal Digital Assistance)、各種情報端末機器などの電子機器において、ICカード等のカードの利用が増大している。カードには、情報の記録、伝達あるいは処理に用いられるICチップと呼ばれるIC部品が組込まれたPCカード、MMC(Multi Media Card)カード、SD(Secure Digital)カード、SIM(Subscriber Identity Module)カード等がある。
【0003】
通常、これ等のカードは上記機器の回路基板等に取り付けられたカードコネクタ(以下、単にコネクタともいう)に装着され使用される。そのようなコネクタとして、例えば特許文献1のような、カードを載せるためのトレイを有するものが知られている。このコネクタは、上面が開口し、かつ底部に回路基板と導通するコンタクトを固定したハウジングと、該ハウジングの上面を塞ぐ金属製のカバーと、カードを支持しながらハウジングとカバーによって形成された挿抜口および収容空間をスライドして出し入れ(挿出)可能なトレイと、を具備している。
【0004】
ここで、トレイは左右一対のアームを備え、左右のアームの下面に突設するストッパを有している。また、ハウジングの底面には挿抜口側付近に基端が形成され、挿入方向(前方)に先端が延びる片持ち梁状の板ばねが設けられ、左右のアームの上記ストッパと係合する。トレイをコネクタから引き出そうとすると、上記板ばねとストッパが係合し、板ばねの弾性付勢力によってトレイがコネクタ内に保持される。従って、トレイがコネクタから脱落するのが防止される。なお、上記片持ち梁状板ばねを用いたトレイの脱落防止のストッパ(以下、トレイ抜脱ストッパという)については、その他に種々の形態がある。例えば同様な片持ち梁状板ばねが金属製のカバーの側壁あるいは上壁に設けられた構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−209992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、各種情報端末機器などの電子機器の小型化に伴い、カードコネクタを低背化、小型化することが要求されている。しかしながら、カードコネクタの小型化に伴い、トレイの抜脱を防止するために用いられている従来の片持ち梁状板ばねのトレイ抜脱ストッパでは、トレイのイジェクト状態において、トレイからカードを取り出すことが難くなるという問題が生じてくる。これは、例えば従来のトレイ抜脱ストッパでは、上述したようにコネクタ内にトレイを保持するには板ばねの弾性付勢が必要となる。所定の弾性付勢力を得るために、板ばねの基端から挿入方向(前方)に延びる先端の間のばね長を縮減することは困難である。このため、トレイの取り出し状態において、少なくとも板ばねの長さ分は、トレイはカード挿抜口からカード・トレイ収容空間内に保持されることとなる。このため、カード後端部を掴んでトレイから取り出そうとしても、カード挿抜口において、カード前端部がカバー部材の上壁とトレイの底壁部の間で引掛り、トレイからカードを取り出すことが困難となる。
【0007】
上述したカード取り出しの不具合を解決するために、カード挿抜口の上下寸法を相対的に大きくすることが考えられる。しかし、これはカードコネクタの低背化を阻む。このように、従来のトレイ抜脱ストッパはカード、カードコネクタの更なる小型化、低背化の阻害要因にもなる。また、板ばねの基端位置を挿入方向側にし、先端位置を挿抜口付近に延在するように変更し、トレイ引き出しのトローク量を大きくする方法も考えられるが、トレイを挿入する際に、トレイ先端と板バネの先端が衝突することで板バネが変形し、トレイの抜脱を防止できなくなる恐れがある。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、カードコネクタからのトレイ引き出しにおけるストローク量が簡便に増大するトレイ抜脱ストッパを備えたカードコネクタを提供することを目的とする。そして、カードコネクタの小型化、低背化にあってもトレイからのカードの取り出しを容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかるカードコネクタは、カードを収容できるトレイと、複数のコンタクトを有するベース部材と、前記ベース部材に組み合わされ前記ベース部材と共に前記トレイが収容されるカード・トレイ収容空間を形成するカバー部材と、を備えたカードコネクタにおいて、前記ベース部材に前記ベース部材の一部が上方向に切り起こされて前記ベース部材の左右の側壁から前記カード・トレイ収容空間に横方向に突出するトレイ抜脱ストッパが設けられ、かつ前記トレイ抜脱ストッパは前記カード・トレイ収容空間の後端にあって前記カードが取り出されるカード挿抜口に形成され、前記トレイの前端に係合部が設けられ、前記トレイ抜脱ストッパと前記係合部により前記トレイのカードコネクタからの抜脱を防止するようになっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、カードコネクタからの引き出しにおけるトレイのストローク量が簡便に増大するカードコネクタを提供することができる。そして、トレイのイジェクト状態において、トレイからカードが取り出し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかるカードコネクタの一例を示す上面図である。
【図2】図1のカードコネクタからカバー部材およびトレイを取り外した状態のベース部材を示し、(a)はその上面図であり、(b)はカード挿抜口からの正面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるカードコネクタのトレイ抜脱ストッパの一例を示し、(a)は図2のX−X拡大断面図であり、(b)は図2の領域Aの拡大図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるカードコネクタのトレイを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるカードコネクタの動作の説明に供する図であり、(a)はカードを脱着するためにトレイを引き出した状態(イジェクト状態)の上面図、(b)は(a)のY−Y拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。以下、図面においては、その要部に符号が付され、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略される。なお、本明細書では、カードコネクタ構造の説明を判り易くするため、コネクタに対するカードの挿抜方向を基準にした用語に統一する。例えば、カード前端部の挿入方向に用語「前」、カード後端部の引き出し方向に用語「後」をそれぞれ付す。また、コネクタのカバー部材が位置する側に用語「上」、ベース部材側に用語「下」を付す。
【0013】
図1、2に示すように、本実施形態のカードコネクタ10は、略扁平な直方体をなし、コネクタ本体のベース部材11と、このベース部材11に組み合わされたカバー部材12により形成される。ここで、ベース部材11とカバー部材12が上下に重ね合わされ、カード・トレイ収容空間13が形成されている。そして、カード・トレイ収容空間13の後端がカード挿抜口14として開放されている。このカード挿抜口14を通して、例えばSIMカードのようなカード(図示せず)の収容されたトレイ15がカード・トレイ収容空間13に挿入され、あるいはカード・トレイ収容空間13から引き出される。そして、カードのコネクタに対する装着あるいは脱着がなされる。
【0014】
ベース部材11は、例えば加工性に優れたLCP(液晶ポリマー)や9Tナイロンのような絶縁性の合成樹脂材料からなる平板状の絶縁体平板部11aと、金属板の折り曲げ加工で形成された2つの金属板部11b、11bから構成される。これ等の金属板は例えばステンレスのような板ばね金属材料からなる。ここで、この2つの金属板部11b,11bは絶縁体平板部11aを挟んで絶縁体平板部11aの両側部に圧入あるいは接合している。
【0015】
カバー部材12は金属材料により形成されると好適である。例えばステンレス等の板金カバーのように板ばね金属材料により作製されるのが好ましい。
【0016】
そして、このカード・トレイ収容空間13の前方には、例えばカードの前端部に設けられた外部端子のコンタクトパッド(図示せず)と加圧接触する複数(図では3個)の弾性接片からなる第1のコンタクト列16が、ベース部材11の絶縁体平板部11aに埋め込みや圧入により設けられている。そして、第1のコンタクト列16は、カードコネクタ10の搭載される電子機器の端子に電気的に接続される第1の接続端子部16aとして、例えばベース部材11の前壁から外部に延出している。
【0017】
同様に、カード・トレイ収容空間13の後方に、カードの後端部のコンタクトパッドに加圧接触する複数(図では3個)の弾性接片からなる第2のコンタクト列17が、ベース部材11の絶縁体平板部11aに設けられている。そして、この第2のコンタクト列17は、第2の接続端子部17aとして、カード挿抜口14からベース部材11の外部に延出している。なお、これ等のコンタクト配置には電子機器に合わせた種々の態様がある。
【0018】
そして、トレイ抜脱ストッパ18が上記金属板部11bの一部の打ち曲げ加工により、カード・トレイ収容空間13に向かって折り曲げられ突出するように形成されている。トレイ抜脱ストッパ18は、カード・トレイ収容空間13の後端となるカード挿抜口14において、ベース部材11の左右の側壁11cに一対に互いに向かい合って設けられる。それと共に、金属板部11bあるいは側壁11cには切り欠き19が形成される。なお、トレイ抜脱ストッパ18は図2(a)に示すよりも後端に位置し、カード挿抜口14に接するように形成されていても構わない。
【0019】
図3に示されるように、このトレイ抜脱ストッパ18は、側壁11cを基端とする側壁11cあるいは金属板部11bの所定幅の切り起こし片になり、水平部18aと垂直部18bを有する。ここで、水平部18aはカード・トレイ収容空間13に向かって横方向に突出している部分であり、垂直部18bは側壁11cの一部であって下方向に延在する部分である。そして、垂直部18bの両脇には切り欠き19が延在している。
【0020】
また、この切り起こし片の水平部18aは金属板部11b面に対して所定の傾斜角度を有すると好適である。すなわち、トレイ15の挿出方向に所定幅をもつ水平部18aは、その前端部よりもその後端部が金属板部11bに近づくように傾斜しているとよい。また、図2(a)に示されるように、上記水平部18aの前端部の方が後端部よりもカード・トレイ収容空間13に突き出すように、水平部18aのカード・トレイ収容空間13に面する端面が傾斜しているとよい。
【0021】
そして、このトレイ抜脱ストッパ18がトレイ15をイジェクト状態にした後の更なる引き出し移動を防止することになる。ここで、トレイ抜脱ストッパ18となる切り起こし片の先端あるいは縁端の角部はアールが付けられ丸みを有するようになっていると好適である。なお、上記水平部18aにおける傾斜についてはカードコネクタ10の動作説明において後述される。
【0022】
図4に示すように、トレイ15は、例えばポリアセタール(POM)のような合成樹脂製であり、底壁部15a、前壁部15b、後壁部15c及び左右の側壁部15dを有する。また、その後壁部15cと側壁部15dが交差する領域に傾斜壁15eが形成されている。カードは、そのコンタクトパッドが下方に開放されて底壁部15a上に載置され、上方が開放されてトレイ15に収容されるようになっている。ここで、傾斜壁15eは、カードに形成された切り欠き部に対応して形成され、カードの誤挿入防止の働きをする。
【0023】
側壁部15dには、その外側面に沿って凹部15fが設けられている。ここで、凹部15fは、側壁部15dの先端部15gの下部領域に形成された係合部15hが一終端になり、トレイ15の後壁部15cと側壁部15dが交差する領域が他終端になるように形成されている。この凹部15fにトレイ抜脱ストッパ18が滑合するようになる。上記トレイ15の後壁部15cから側壁部15dにかけてそれ等の上面は同一面になっているが、上記先端部15gではその上面下側に低く低面部15jを形成しており、カバー部材の上壁12aとの間に隙間を設けている。この隙間によって、トレイをコネクタに取り付ける際に挿入しやすくなる。
【0024】
また、トレイ15では、その後壁部15cに把持部15iが設けられている。この把持部15iは、トレイ15の挿入および引き出しにおいて掴むところであり、カードコネクタ10に対するトレイ15の挿出を容易にする。
【0025】
なお、上述したようなカードコネクタ10では、ベース部材11の側壁11cにおける所定箇所に複数の突起部20が設けられ、カバー部材12の側壁12bに設けられた開口(図示せず)に係合するようになっている。そして、カバー部材12はベース部材11と組み合わされる。このカードコネクタ10は、カバー部材12の折曲げ片12c下端が電子機器の例えばプリント基板等に半田付けされて、電子機器に取り付けられる。
【0026】
次に、本実施形態のカードコネクタ10の動作について図5を参照して説明する。はじめにカードをカードコネクタ10から脱着する場合について説明する。図5は、トレイ15がカード挿抜口14を通して最も後方に引き出し移動したイジェクト状態を示す図になっている。この状態で、トレイ15の底壁部15aに載置され収容されているカード(図示せず)のカード後端部が掴まれてトレイ15から取り出されることになる。
【0027】
このトレイ15は、把持部15iが掴まれ、カード挿抜口14を通してカードコネクタ10のカード・トレイ収容空間13から引き出される。このトレイ15の引き出しにおいて、初めに、カードコネクタ10内で弾性圧接しているカードのコンタクトパッドは、トレイ15の前壁部15bのカード前端部に対する押圧により、第1のコンタクト列16および第2のコンタクト列17から取り外される。そして、そのカードを収容したトレイ15は、その底壁部15aの下面がベース部材11の金属板部11b面に接して摺動し引き出される。
【0028】
このトレイ15の引き出し移動において、トレイ抜脱ストッパ18は、トレイ15の凹部15fに滑合し、トレイ15の引き出し移動の案内をする。そして、凹部15fの一終端の係合部15hに当接すると、このトレイ抜脱ストッパ18はトレイ15を係合部15hで係止しそれ以上の引き出し移動を停止する。このようにして、トレイ15およびカードはカードコネクタ10から引き出されイジェクト状態になり、トレイ15はそれ以上の引き出し移動が防止される。この状態で、カードはそのカード後端部が掴まれてカードコネクタ10から取り出され脱着されることになる。
【0029】
ここで、切り起こし片であるトレイ抜脱ストッパ18の水平部18aは、上述したように金属板部11b面から所定の角度に傾斜しているとよい。この傾斜により、トレイ抜脱ストッパ18は、主にその水平部18aの前端部において、側壁部15dに設けられた凹部15fに滑合するようになる。そして、上記傾斜角度がなく水平部18a全体が凹部15fに当接する場合に較べて、トレイ15の引き出し移動における引っかかりがなく、トレイ抜脱ストッパ18の案内が円滑に行われる。この傾斜角度は僅かであればよく例えば1度程度以内で充分である。
【0030】
また、上記水平部18aに設けた傾斜は、トレイ15のイジェクト状態においてカードコネクタ10から抜け難くするように作用する。これは、この傾斜がトレイ15の側壁部15dの上面をカバー部材12の上壁12aに押し当てるようになるからである。この傾斜を設けることによっても水平部18aの幅であるストッパ長Lは短くできる。
【0031】
一方、カードのカードコネクタ10への装着では、従来技術で説明したのと同様に、カードを収容したトレイ15が例えばその手差しによるコネクタの前方への押圧によって挿入される。そして、トレイ抜脱ストッパ18は、トレイ15の挿入の場合にもトレイ15の凹部15fと滑合してトレイ15の挿入案内をする。この場合でも、その水平部18aに上記傾斜角度が設けられていると、トレイ15の凹部15fが水平部18aで引っかかることが無くなり、トレイ15の挿入移動におけるトレイ抜脱ストッパ18の案内が円滑に行われる。
【0032】
そして、例えば凹部15fの他終端に当接すると、その位置において、トレイ抜脱ストッパ18はトレイ15を係止する。ここで、カードの外部端子として設けられたコンタクトパッドが第1のコンタクト列16および第2のコンタクト列17に加圧接触し電気接続する。このようにして、カードはカードコネクタ10に装着される。また、この状態において、トレイ15はそのカードを収容したままでカードコネクタ10に収納される。
【0033】
なお、カードコネクタ10の組み立てにおいて、トレイ15をカードコネクタ10に装着する際には、トレイ15の先端部15gからカード挿抜口14に差し込み、先端部15gがトレイ抜脱ストッパ18を通り越しコネクタに取り付けられる。このようなトレイ15のコネクタへの装着は容易である。これは、トレイ15の先端部15gの上面がトレイ15の後壁部15cから側壁部15dにかける上面よりも下側に低くなっていることによる。
【0034】
上記実施形態において、トレイ15の凹部15fは側壁部15dの外側面に沿って溝状に形成されていても構わない。この場合には、トレイ抜脱ストッパ18の水平部18aは溝状になっている凹部15f内に嵌合する形態で摺動する。また、トレイ抜脱ストッパ18は所定幅の切り起こし片である水平部18aのみからなり、垂直部18bがない構造であってもよい。この場合には、垂直部18bの両脇には切り欠き19は延在しない。また、トレイ抜脱ストッパ18はその水平部18aの所定幅が狭くなって棒状に近い構造になってもよい。この場合には、上述した水平部18aの前端部から後端部にかけての傾斜を特に設けなくてもよい。
【0035】
従来技術で説明したトレイ抜脱ストッパは大きな弾性付勢をもつ必要があるために片持ち梁状板ばねとなっていた。これは、トレイをカードコネクタ内に挿入する場合には、トレイ抜脱ストッパがベース部材であるハウジングの底壁、カバー部材である金属製カバーの側壁あるいはその上壁に押しやられ、トレイを引き出す場合には、その弾性の復元力によりトレイを係止する必要があるからでもあった。これに対して、本実施形態のトレイ抜脱ストッパ18は必ずしも弾性を有することはない。このトレイ抜脱ストッパ18は、トレイを引き出す場合に弾性変形することなく、トレイ15の係合部15hに係合しトレイ15を係止する。また、カードコネクタ10に対するトレイ15の挿出において、弾性変形することなくトレイ15を案内する。
【0036】
このために、本実施形態のカードコネクタ10では、トレイ抜脱ストッパ18のストッパ長Lは、従来技術におけるトレイ抜脱ストッパのストッパ長に較べてその縮減が極めて容易になる。そして、カードを脱着するためのトレイ15のイジェクト状態において、トレイ15のストローク量はトレイ抜脱ストッパ18のストッパ長Lの縮減量に相当して増大する。
【0037】
このストローク量の増大は、トレイ15のイジェクト状態におけるトレイ15からのカードの取り出しを容易にする。この効果は例えばSIMカードのようなカードコネクタの小型化に伴い顕著なものになる。一般に、トレイ抜脱ストッパのストッパ長はカードおよびカードコネクタの小型化、低背化が進んでくると、カードおよびカードコネクタの寸法に対して相対的に増大する。このために、僅かなストッパ長Lの縮減であっても、トレイ15のイジェクト状態でカード後端部を掴んでトレイ15から取り出す場合に、カード挿抜口14においてカード前端部がカバー部材12の上壁12aとトレイ15の底壁部15aの間で引掛ることがなくなる。そして、スムースなカードの取り出しができるようになる。
【0038】
また、トレイ15の挿入移動および引き出し移動は円滑で安定したものになり、トレイ抜脱ストッパ18においては、従来技術で説明したような板ばね変形等の損傷は皆無になる。
【0039】
そして、例えばSIMカード、MicroSDカード等のカード、カードコネクタ10の更なる小型化、低背化の阻害要因も取り除かれる。更に、カードコネクタ10へのトレイ15の収納状態において、2つのトレイ抜脱ストッパ18がベース部材11の左右の側壁11cからトレイ15の凹部15fを介して狭圧する。このために、例えばトレイ15の飛び出し等が抑制され、カードコネクタ10に対して安定した収納が可能になる。そして、カードコネクタ10に取り付けられているトレイ15は、収容するカードの姿勢を正しく保持し、カードの外部端子であるコンタクトパッドと第1のコンタクト列16および第2のコンタクト列17との加圧接触を確実にする。
【0040】
ここで、トレイ抜脱ストッパ18の水平部18aが所定幅を有する場合には、それに傾斜をもたせることにより、カードコネクタ10へのカードの装着あるいは脱着において、トレイ15の挿入移動あるいは引き出し移動が極めて円滑になる。また、トレイ抜脱ストッパ18が水平部18aと垂直部18bを有し、その水平部18aのカード・トレイ収容空間13に面する端面が傾斜することにより、カードコネクタ10に対して極めて安定したトレイ15の収納が可能になる。これは、上記水平部18aの前端部に垂直部18bからの弾性力が集中することにより、上述したトレイ15の凹部15fへの狭圧が増大するからである。
【0041】
そして、本実施形態のカードコネクタ10では、その部品点数は少なく、上記トレイ抜脱ストッパ18およびトレイ15は簡素な構造となることから、その低コスト化は容易である。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0043】
例えば、トレイ15の側壁部15dには凹部15fが無く、トレイ抜脱ストッパ18は側壁部15dの外側面に摺接するようになっていてもよい。また、カードコネクタ10のベース部材11は全て合成樹脂からなる一体構造になっていてもよい。また、トレイ抜脱ストッパ18は棒状になっていてもよい。この場合、その角部に丸みが付けられていることが好ましい。
【0044】
最後に、上記トレイ抜脱ストッパ18は、カバー部材12の側壁12bに形成され、ベース部材11の側壁11cに設けられた開口を介してトレイ15を係止できるような構造になっていてもよいことに言及しておく。
【符号の説明】
【0045】
10…カードコネクタ,11…ベース部材,11a…絶縁体平板部,11b…金属板部,11c…ベース部材の側壁,12…カバー部材,12a…上壁,12b…カバー部材の側壁,12c…折曲げ片,13…カード・トレイ収容空間,14…カード挿抜口,15…トレイ,15a…底壁部,15b…前壁部,15c…後壁部,15d…側壁部,15e…傾斜壁,15f…凹部,15g…先端部,15h…係合部,15i…把持部,16…第1のコンタクト列,16a…第1の接続端子部,17…第2のコンタクト列,17a…第2の接続端子部,18…トレイ抜脱ストッパ,18a…水平部,19…切り欠き,20…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを収容できるトレイと、複数のコンタクトを有するベース部材と、前記ベース部材に組み合わされ前記ベース部材と共に前記トレイが収容されるカード・トレイ収容空間を形成するカバー部材と、を備えたカードコネクタにおいて、
前記ベース部材に前記ベース部材の一部が上方向に切り起こされて前記ベース部材の左右の側壁から前記カード・トレイ収容空間に横方向に突出するトレイ抜脱ストッパが設けられ、かつ前記トレイ抜脱ストッパは前記カード・トレイ収容空間の後端にあって前記カードが取り出されるカード挿抜口に形成され、前記トレイの前端に係合部が設けられ、前記トレイ抜脱ストッパと前記係合部により前記トレイのカードコネクタからの抜脱を防止するようになっていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記トレイ抜脱ストッパは、前記横方向に突出するその水平部が前記カード挿抜口に向かって前記カバー部材の側から前記ベース部材の側に下がるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ベース部材は、少なくともその側壁が板ばね金属材料により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記トレイの側壁部の外側面に沿って凹部が形成され、前記トレイ抜脱ストッパは前記凹部に滑合することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカードコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−128974(P2012−128974A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277249(P2010−277249)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】