説明

カードリーダライタユニット

【課題】カードリーダライタユニットにおいて、被取付部である筐体正面の外部からのみの作業で、後の本固定が容易である仮固定を可能とする。
【解決手段】カードリーダライタユニット10の外側部後部の取付面12に、筐体正面に穿設された上下に水平な辺を有する被取付穴22の上下に対向する2つの辺22a、22bにそれぞれ係止可能である第1の係止部13および第2の係止部14を設け、第1の係止部13は、被取付穴22の上辺と平行である折面と、取付面12と平行である先端面とを有して、断面Z字状に形成され、第2の係止部14は、被取付穴22の下辺と直交してかつ被取付穴22の下辺に当接するヘ字状斜面を有する2つの先端面とから形成され、前記第1の係止部13の先端と前記第2の係止部14の先端との距離は、前記被取付穴22の最大差渡し長さより短くてかつ前記係止可能である2つの辺の距離よりも長く設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機に装着するカードリーダライタユニットに関し、特に自動販売機正面への取付において仮固定可能な取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関や自動販売機等において、キャッシュレスや個人認証等を実現するためのカードとして、磁気カードおよび非接触ICカード等のカードが用いられており、これらカードの情報の読み取りおよび更新は、磁気ヘッドや非接触通信するかざし部等の読取部を備えたカードリーダライタユニット(以下、リーダライタユニットと称す。)によって行われる。
【0003】
このリーダライタユニットを自動販売機等機器の筐体へ取り付ける場合、該リーダライタユニットの外側部である磁気カードの差込口や非接触ICカードと非接触通信するかざし部は、筐体正面の表面から凸状になるように設けられて、筐体の外部と内部との間の情報伝達経路を介して、筐体内部に設けられてかつリーダライタユニットの外側部と有線または無線で機械的に接続される情報処理部にカードの情報を伝達するようにしているものがある。
【0004】
ところで、上述した筐体正面の表面に凸状となるカード差込口やかざし部の取り付けにおいては、その取付強度を堅固にすると共に、外部からの塵埃、雨水等が、前記情報伝達経路から内部へ侵入するのを防止する必要がある。
【0005】
そこで、従来においては、取付対象である筐体正面に前記情報伝達経路をなす被取付穴を設けて、リーダライタユニットの磁気カードの差込口や非接触ICカードと非接触通信するかざし部等を有する外側部の背面(取付面。以下も同様に称す)が、前記被取付穴を完全に閉塞することができる大きさであるように形成し、前記被取付穴からリーダライタユニットの外側部の背面側の一部を筐体外部側から挿入して、前記取付面を筐体の表面に完全に密着させた状態で、筐体内部側から固定するようにしている。
【0006】
上述のように、リーダライタユニットを自動販売機等機器へ取り付ける際には、リーダライタユニットの外側部を筐体正面の外部で支えた状態で、支えられたリーダライタユニットを内部から固定して、さらに外部からの情報を伝達するための情報伝達手段を前記情報処理部に接続する作業が必要であることが明らかである。
【0007】
本出願人は、リーダライタユニットの取り付けに際して、筐体正面に穿設した被取付穴に筐体外部から内部へと挿し込まれるリーダライタユニットの凸部の周囲に複数の溝を設け、該溝に固定板を挿し込んで筐体正面の内側面と溝とを埋めるようにすることで、外側部を筐体に仮固定することができるリーダライタユニットを提案している(特開2011−128875号公報)。このようなリーダライタユニットにおいては、リーダライタユニットの外側部を筐体正面に仮固定することが出来るので、筐体外部で前記外側部を支える時間を短縮することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−128875号公報
【特許文献2】特願2011−212716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のリーダライタユニットにおいては、筐体の外部でリーダライタユニットの外側部を支えるための作業員と、支えられたリーダライタユニットの外側部を内部から仮固定および本固定するための作業員との、少なくとも2人の作業員が必要なことが明らかである。
【0010】
そこで、本発明は、取り付けの際の作業員の人数を削減し、1人の作業員が、リーダライタユニットの仮固定および本固定と、さらに外側部から情報処理部までの情報伝達経路の形成が可能であるように、リーダライタユニットの外側部を被取付部である筐体正面の外部からのみの作業で仮固定することができ、さらに、本固定し易い仮固定をすることができるリーダライタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明のリーダライタユニットでは、リーダライタユニットの外側部後部の取付面に、筐体正面に穿設された上下に水平な辺を有する被取付穴の上下に対向する2つの辺にそれぞれ係止可能である第1の係止部および第2の係止部を設け、前記第1の係止部は、前記被取付穴の上辺と平行である折面と、該折面に延設されて前記取付面と平行である先端面とを有して、断面Z字状に形成され、前記第2の係止部は、前記被取付穴の下辺と平行である折面と、該折面の左右に設けられて前記取付穴の下辺と直交してかつ前記被取付穴の下辺に当接するヘ字状斜面を有する2つの先端面とから形成され、前記第1の係止部の先端と前記第2の係止部の先端との距離は、前記被取付穴の最大差渡し長さより短くてかつ前記係止可能である2つの辺の距離よりも長く設けるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明のリーダライタユニットの外側部においては、その後部の取付面に、筐体正面に穿設された被取付穴上下の対向する2つの辺をそれぞれ係止する2つの係止部を設け、リーダライタユニットの外側部を側方に傾けた状態で、筐体の正面側から2つの係止部を被取付穴に挿入し、リーダライタユニット外側部背面を被取付面に密着させたまま、水平状態になるまで回転させることによって、2つの係止部が被取付穴の対向する辺を係止して、筐体にリーダライタユニットの外側部を仮固定できるようにし、その仮固定は仮固定後の位置ずれを軽減するようにしたものなので、筐体の正面側からのみの簡単な作業でリーダライタユニットの外側部を仮固定することができ、そして、筐体の内側からのねじ締め等による本固定および外側部から情報処理部までの情報伝達経路の形成作業に至るまで、1人の作業員のみでの取り付け作業が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係るリーダライタユニットの外側部の取付部の背面図。
【図2】図2は、図1の左側面図。
【図3】図3は、図1の正面図。
【図4A】図4Aは、図1におけるC−C切断部端面の図2におけるA部分拡大図。
【図4B】図4Bは、図1におけるC−C切断部端面の図2におけるB部分拡大図。
【図5】図5は、2つの係止部を被取付穴に介挿する様子を示すリーダライタユニットの外側部の取付部の背面図。
【図6】図6は、図5の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るリーダライタユニットの一実施例を示して詳述する。
まず、本発明のリーダライタユニット10を筐体20に取り付けた状態における取付部の構成を説明する。
【0015】
図1および図2に示す、リーダライタユニット10の取付部は、被取付部となる筐体20正面側の被取付面21と、被取付面21に穿設された被取付穴(角穴)22と、カードの情報の読み取りを行う読取部を具えるリーダライタユニット10の外側部11と、外側部11の背面である取付面12に設けられる第1の係止部13および第2の係止部14とを具えている。
【0016】
リーダライタユニット10の外側部11は、筐体20の外部側に配置されるものであり、外側部11が具える読取部において読み取った情報を、被取付穴22を通って筐体20の外部と内部との間を導通する図示せぬ情報伝達手段を介して筐体20内部に配設される図示せぬ情報処理部に伝達されるようにしている。
【0017】
本実施例におけるリーダライタユニット10(磁気カード情報処理装置)は、図3に示すように、その外側部11の正面に設けられたカード差込口11aに磁気カードを差込み、カード差込口11aに連通するカード通路11bに沿って下方に磁気カードをスライドさせて、カード通路11b内に設けられる図示せぬ磁気ヘッドによって磁気カードの情報の読み取りを行うようにするものである(特願2011−212716号)。
【0018】
なお、本実施例において、筐体20に取り付けるリーダライタユニット10は、スワイプ方式の磁気カード情報処理装置としているが、特開2011−128875号公報に示されるような、非接触式ICカードを用いる電子マネー決済装置等の装置に適用しても構わない。
【0019】
リーダライタユニット10の外側部11を筐体20に取り付ける際、外側部11は、その背面である取付面12が被取付面21に完全に密着するようにして筐体20の外部側に配置される(図2)。
また、被取付穴22は、リーダライタユニット10の外側部11の取付面12によって、完全に閉塞可能な大きさであるように穿設している(図1)。
【0020】
このように配置された被取付面21とリーダライタユニット10の外側部11とを、図示せぬねじ等により螺着して完全に固定することにより、従来のリーダライタユニットと同様に、被取付穴22からの塵埃、雨水等の内部への侵入を防止するようにしている。
【0021】
さらに、リーダライタユニット10の外側部11の取付面12には、本発明の特徴であって、被取付穴22の対向する2つの辺にそれぞれ係止可能である第1の係止部13および第2の係止部14が設けられており、上述の如く本固定をする前段階として、リーダライタユニット10の外側部11を筐体20に仮固定可能であるようにしている。
【0022】
第1の係止部13は、図1、図2および図4Aに示すように、被取付穴22の上辺22aと平行である折面13aを有し、さらに、折面13aに延設されて取付面12と平行である先端面13bを有して、断面Z字状に形成されるものである。
リーダライタユニット10の外側部11を筐体20に仮固定している状態においては、この先端面13bと取付面12とによって、筐体20の被取付面21を挟みこんで、折面13aが被取付穴22の上辺22aと対向する。
【0023】
また、第2の係止部14は、図1、図2および図4Bに示すように、第1の係止部13と略同一の幅(W≒W’)であるように、被取付穴22に対して第1の係止部13と対称の位置に形成され、被取付穴22の下辺22bと平行である折面14aを有し、さらに、折面14aの左右方向に延設されて下辺22bと直交する2つの先端面14bを有するものである。
この、先端面14bはヘ字状斜面14cを有しており、リーダライタユニット10の外側部11を筐体20に仮固定している状態においては、2つのヘ字状斜面14cが被取付穴22の下辺22bに当接する。
【0024】
上述のようにリーダライタユニット10の外側部11を筐体20に仮固定するために、第1の係止部13の折面13aと第2の係止部14の凹部14dとの距離Xと、第1の係止部13の先端13cと第2の係止部14の先端14eとの距離Yと、被取付穴22の上辺22aと下辺22bとの距離Hとの関係は、距離X<距離H<距離Y、となるように設けられる(図2)。
【0025】
また、第1の係止部13および第2の係止部14の幅は、リーダライタユニット10の外側部11を側方に傾けることによって被取付穴22に介挿可能である範囲において設けられる。すなわち、第1の係止部13と第2の係止部14と距離は被取付穴22の対角線(最大差渡し長さ)より短くなるように設けられる(図4等参照)。
【0026】
次に、上述したリーダライタユニット10の外側部11を筐体20に仮固定する方法について説明し、併せて構成をより詳細に説明する。
【0027】
図5および図6に示すように、リーダライタユニット10の外側部11を側方に傾けた状態で、筐体20の外部側から、取付面12を筐体20の被取付面21に密接させる。この際、第1の係止部13および第2の係止部14は、被取付穴22に介挿して、第1の係止部13の先端面13bと第2の係止部14の2つの先端14eとが、筐体20の内部側に位置するようにする。
【0028】
そして、取付面12と被取付面21とが密着した状態のまま、リーダライタユニット10が水平姿勢(図1および図2の姿勢)になるよう図5に示すR方向に回転させる。
【0029】
すると、第1の係止部13の先端面13bおよび取付面12が、筐体20の被取付面21を挟みこむと共に、第2の係止部14の2つのヘ字状斜面14cが、被取付穴22の下辺22bを挟持して、リーダライタユニット10の外側部11は、筐体20に仮固定される。
【0030】
このように、本発明のリーダライタユニット10は、筐体20の正面側からのみの簡単な作業で、仮固定することが可能である。
【0031】
ところで、リーダライタユニット10を筐体20に仮固定する際、リーダライタユニット10を側方に傾けた状態から図5に示すR方向に回転させて水平状態にするため、基本的幾何学的原理から(第1の係止部13および第2の係止部14の幅寸法Wを弦長さとした際の円弧の高さを考慮し)、上記距離Xを距離Hよりさらに短くする必要がある。また、スムーズに回転させるために、第1の係止部13における折面13aの前後方向幅を、筐体20の被取付面21の厚みよりも若干大きくする必要がある。
そのため、上下方向、および、正面へ前傾する方向へのがたつきが生じる。
【0032】
しかしながら、本発明のリーダライタユニット10においては、第2の係止部14のヘ字状斜面14cにより、被取付穴22の下辺22bを係止することによって、第1の係止部13と第2の係止部14との距離を、被取付穴22の上辺22aと下辺22bとの距離に極力近付けることを可能にし、そして、断面Z字状の第1の係止部13における先端面13bと第2の係止部14のへ字状傾斜によって、外側部11の正面への前傾を抑えることを可能にしている。
その結果、がたつきの少ない仮固定ができるので、ねじ締め等による本固定での作業効率が向上する。
【0033】
このように、本発明のリーダライタユニットは、その外側部後部の取付面に、筐体正面に穿設された被取付穴の上下に対向する2つの辺をそれぞれ係止する2つの係止部を設け、リーダライタユニットの外側部を側方に傾けた状態で、筐体の正面側から2つの係止部を被取付穴に挿入し、リーダライタユニット外側部背面を被取付面に密着させたまま、水平状態になるまで回転させることによって、2つの係止部が被取付穴の対向する辺を係止して、筐体にリーダライタユニットを仮固定するようにしている。
【0034】
したがって、筐体の正面側からのみの簡単な作業で、がたつきの少ないリーダライタユニットの仮固定をすることができ、その後の、筐体の内側からのねじ締め等による本固定および外側部から情報処理部までの情報伝達経路の形成作業に至るまで、1人の作業員のみでの取り付け作業が可能である。
【0035】
なお、上記実施例においては、被取付穴22を角穴状に穿設したが、上下の辺が水平であって、垂直方向長さが最大差渡し長さよりも短い形状の穴であれば、どのような形状でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、自動販売機、駐車場の精算機および電子マネーチャージ機等の無人機器の表面に取り付ける、磁気カードおよび非接触ICカードのリーダライタ等の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 リーダライタユニット
11 リーダライタユニットの外側部
11a カード差込口
11b カード通路
12 リーダライタユニットの取付面(外側部の背面)
13 第1の係止部
13a 第1の係止部の折面
13b 第1の係止部の先端面
13c 第1の係止部の先端
14 第2の係止部
14a 第2の係止部の折面
14b 第2の係止部の先端面
14c 第2の係止部のヘ字状斜面
14d 第2の係止部の凹部
14e 第2の係止部の先端
20 筐体
21 被取付面
22 被取付穴
22a 被取付穴の上辺
22b 被取付穴の下辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体正面に取り付けられる外側部を備えたカードリーダライタユニットであって、
該リーダライタユニットの外側部後部の取付面に、前記筐体正面に穿設された上下に水平な辺を有する被取付穴の上下に対向する2つの辺にそれぞれ係止可能である第1の係止部および第2の係止部を設け、
前記第1の係止部は、前記被取付穴の上辺と平行である折面と、該折面に延設されて前記取付面と平行である先端面とを有して、断面Z字状に形成され、
前記第2の係止部は、前記被取付穴の下辺と平行である折面と、該折面の左右に設けられて前記取付穴の下辺と直交してかつ前記被取付穴の下辺に当接するヘ字状斜面を有する2つの先端面とから形成され、
前記第1の係止部の先端と前記第2の係止部の先端との距離は、前記被取付穴の最大差渡し長さ幅より短くてかつ前記係止可能である2つの辺の距離よりも長く設けたことを特徴とするカードリーダライタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92931(P2013−92931A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235074(P2011−235074)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】