説明

カードリーダライタ

【課題】挿入されているカードが不用意に引き抜かれることを確実に防止可能な機構を備えた小型でコンパクトなカードリーダライタを提案すること。
【解決手段】ICカードリーダライタ1では、カード挿入口4からICカード10を挿入して押し込むと、当該ICカード10を受け入れたカードホルダ20がICカード10と共に押し込まれて、その後端位置まで移動する。カードホルダ20が後端位置まで移動すると、カードロックレバー31が旋回してカードホルダをロック位置に係止する。同時に、カードロックレバー31のシャッタ駆動用突起31bが旋回して、引抜防止シャッタ40を退避位置から引抜防止位置に移動させ、当該引抜防止位置にロックする。引抜防止シャッタ40は、ばね44により退避位置側に付勢されているので、ロック解除後は引抜防止シャッタ40が退避位置側に自動復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技媒体の貸し出し処理をカード型記憶媒体を用いたプリペイド方式により行う場合などに用いられるカードリーダライタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICメモリチップが内蔵されたICカードを用いてプリペイド方式により遊技媒体の貸し出し処理を行うことのできる遊技台用台間機が知られている。かかる遊技台用台間機では、ICカードに対して情報の読み書き処理を行うためのカードリーダライタが組み込まれており、例えば、利用者が紙幣などの金銭を投入すると、カードリーダライタによって投入金額がICカードに書き込まれた後に、当該ICカードが発行されるようになっている。
【0003】
本願出願人は、特許文献1において、利用者によってカード出入口に挿入されたICカード等のカード型記憶媒体を、カードリーダライタの内部に自動で挿入したり、カードリーダライタから自動で排出したりするためのカード自動搬送機構を備えたカードリーダライタを提案している。このカードリーダライタは、不用意なカードの引き抜きを防止するためのカード引き抜き防止機構を備えている。
【0004】
特許文献1のカードリーダライタにおけるカード引き抜き防止機構は、カード自動搬送機構に連動して作動する。具体的には、カード出入口から挿入されたICカード等がカードホルダに保持されてカードホルダごとカードリーダライタの奥にある後退位置に搬送されると、ホルダロック部材が作動してカードホルダが後退位置にロックされる。一方、カードホルダに形成されたカム溝には、カード出入口に設けられたシャッタ部材のスライドピンが係合している。従って、カードホルダの移動に連動してシャッタ部材が作動し、カードホルダが後退位置でロックされたときにはシャッタ部材が閉鎖姿勢になる。また、このシャッタ部材は、閉鎖姿勢になったときに、ホルダロック部材の端部によって開方向に動かないようにロックされる。従って、カード自動搬送機構によってカードホルダが作動しない限りはシャッタが開かず、ICカード等を不用意にあるいは強引に引き抜くことができないようになっている。
【特許文献1】特開2007−172033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、カム溝とスライドピンを設けたために構成が複雑になっており、カードリーダライタを十分にコンパクト化できないという問題点があった。また、ICカード等が完全に挿入完了位置に到達する前にカム溝内をスライドピンが作動し始めるので、ICカード等の挿入が完了する前にシャッタ部材の閉動作が一部始まっており、この時点でシャッタ部材が不安定な状態になっていた。
【0006】
また、特許文献1の構成では、カードホルダにカム溝が形成されており、シャッタ部材の動きがカードホルダの直線運動に直接連動しているために、シャッタ部材の駆動タイミングが、カードの寸法のばらつきや、カム溝あるいはスライドピンなどの機構部分の寸法のばらつきによって影響を受けてしまう可能性があった。従って、カードを完全にカード出入口の内側に搬送し終わるタイミングとシャッタの作動タイミングとの間に十分な動作余裕がなくなる恐れがあり、カードがシャッタに接触してしまう恐れがあった。カードとシャッタの接触をなくすためには、カードの挿入距離を長くしてシャッタの遊びを増やすことで対処できるが、そのようにするとカードリーダライタが大型化してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、挿入されているカードが不用意に引き抜かれてしまうことを確実に防止可能で、且つ、信頼性が高く安定した動作が可能な簡素な構成の機構を備えており、手動操作によってカードの挿入を行う小型でコンパクトなカードリーダライタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のカードリーダライタは、
カード型記憶媒体を挿入するためのカード挿入口と、
前記カード挿入口から挿入されるカード型記憶媒体を受け入れ、当該カード型記憶媒体によって、前記カード挿入口に接近した前端位置から、当該カード挿入口から離れた後端位置に押し込み可能なカードホルダと、
前記カードホルダを前記前端位置に向けて付勢しているホルダ付勢部材と、
前記カードホルダを前記後端位置にロックするためのホルダロック部材と、
前記ホルダロック部材をロック位置およびロック解除位置に移動させる駆動機構と、
前記カードホルダが前記前端位置から後端位置に到達する直前の時点まで、前記ホルダロック部材を前記ロック解除位置に保持している保持機構と、
前記カード挿入口の一部を封鎖する引抜防止位置、および、当該引抜防止位置から退避した退避位置に移動可能な引抜防止シャッタと、を備え、
前記ホルダロック部材は前記引抜防止シャッタに係合可能なシャッタ押圧面を有し、
前記シャッタ押圧面は、前記ホルダロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動する間に前記引抜防止シャッタを前記退避位置から前記引抜防止位置に移動させ、前記ホルダロック部材が前記ロック位置にある状態では前記引抜防止シャッタを引抜防止位置に保持することを特徴とする。
【0009】
本発明のカードリーダライタでは、このような構成により、カード挿入口からカード型記憶媒体を挿入して押し込むと、当該カード型記憶媒体を受け入れたカードホルダがカード型記憶媒体と共に押し込まれて、その後端位置まで移動する。カードホルダが後端位置まで移動すると、駆動機構によってホルダロック部材がロック位置に移動してカードホルダを後端位置にロックすることができる。また、引抜防止シャッタを引抜防止位置に移動させて保持することができるので、挿入されたカードの不用意な引き抜きを確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明では、引抜防止シャッタを引抜防止位置側に押圧して移動させるための機構を、ホルダロック部材を用いて構成してあるので、カードリーダライタの小型・コンパクト化および部品点数削減に有利である。また、カードホルダが後端位置に到達する直前までホルダロック部材がロック解除位置に保持されており、引抜防止シャッタの引抜防止位置への移動は、ホルダロック部材によるロック動作が開始してから行われる。従って、カードホルダが後端位置に到達してICカード等がカード挿入口の内側に完全に収納される前に引抜防止シャッタが閉まることがなく、カード搬送中に引抜防止シャッタが作動し始めるという不安定な状態を防止することができる。よって、カード型記憶媒体が引抜防止シャッタに接触しないようにすることができる。これにより、カードリーダライタを安定して動作させることができ、信頼性の高いカードリーダライタを提供できる。
【0011】
本発明において、前記引抜防止シャッタを前記引抜防止位置側から前記退避位置側へ付勢するシャッタ付勢部材を備え、前記シャッタ押圧面は、前記引抜防止シャッタを前記シャッタ付勢部材の付勢力に逆らって前記引抜防止位置に押し込むように構成するとよい。このようにすると、引抜防止シャッタは、引抜防止位置においてシャッタ押圧面に押し付けられた状態でガタ付き無く保持されるので、強引にカード型記憶媒体が引き抜かれようとした場合に、引き抜きを確実に阻止できる。一方、引抜防止シャッタを開けるときには、ホルダロック部材をロック位置からロック解除位置に移動させるだけで、シャッタ付勢部材の付勢力により、引抜防止シャッタが退避位置に自動で復帰させることができる。
【0012】
本発明において、前記引抜防止シャッタは、前記引抜防止位置と前記退避位置との間を旋回可能であり、前記シャッタ付勢部材は、ばね部材であるとよい。引抜防止シャッタを旋回させることにより、引抜防止シャッタを開閉する機構を簡易な構成にすることができる。また、ばね部材を用いることにより、簡易な構成で引抜防止シャッタを付勢することができる。
【0013】
本発明において、前記ホルダロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を旋回可能であり、前記保持機構は、前記ホルダロック部材に形成した係止爪と、前記カードホルダに形成した保持面とを有し、前記カードホルダが前記前端位置から前記後端位置に至る直前までの区間を移動している間は、前記係止爪が前記保持面に係合状態に保持されて前記ホルダロック部材の旋回が阻止され、前記カードホルダが前記後端位置に到達すると、前記係止爪が前記保持面から外れて、前記ホルダロック部材の旋回が可能になるように構成してもよい。
【0014】
このように、本発明では、カードホルダが後端位置まで到達したときにはじめて係止爪が保持面による保持状態から外れてホルダロック部材が旋回可能になるので、この旋回動作に基づいて開始される引抜防止シャッタの閉動作は、カードホルダが後端位置に到達する前には開始しない。また、カードホルダのロックを解除するためには、ホルダロック部材をロック時とは逆方向に旋回させなければならないので、この旋回動作により、ロック解除前に確実にシャッタが開く。よって、カード型記憶媒体とシャッタとの接触を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカードリーダライタでは、ホルダロック部材によってカードホルダを後端位置にロックすることができる。また、挿入されたカードの引き抜きを防止するための引抜防止シャッタを引抜防止位置に保持する機構を、ホルダロック部材を用いて構成してある。従って、少ない部品点数で、且つ、コンパクトな構成で、挿入されたカードが不用意に引き抜かれてしまうことを確実に防止できる。また、また、カードホルダが後端位置に到達する直前までホルダロック部材がロック解除位置に保持されており、引抜防止シャッタの引抜防止位置への移動は、ホルダロック部材によるロック動作が開始してから行われるので、カードホルダが後端位置に到達してICカード等がカード挿入口の内側に完全に収納される前に引抜防止シャッタが閉まることがない。よって、カード型記憶媒体が引抜防止シャッタに接触しないようにすることができ、カードリーダライタを安定して動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るICカードリーダライタの実施の形態を説明する。なお、ICカード以外の磁気カードなどのカード型記憶媒体のカードリーダライタに対しても本発明を同様に適用可能なことは勿論である。
【0017】
(構成の説明)
図1はICカードリーダライタ1を示す縦断面図、そのb−b線で切断した部分の横断面図および、矢印cの方向から見た場合の側面図である。ICカードリーダライタ1は扁平な矩形のケース2を備え、この内部に各構成部品が組み付けられている。ケース2の前端面3にはカード挿入口4が形成されている。前端面3は、その上端部分および下端部分が前方に突出した段状の面とされており、この面に沿って一定幅のカード挿入口4が開いている。すなわち、ICカード10の挿入を確実に行うことができるように、カード挿入口4が形成されている前端面3における上下方向の中央部分がカード挿入方向に凹状となっている。
【0018】
ケース2の内部には、カード挿入口4から挿入されるICカード10を受け入れ可能なカードホルダ20が配置されている。このカードホルダ20は、ケース2内を、前端位置から後端位置までの間で、前後方向にスライド可能である。カードホルダ20は、ICカード10を受け入れる本体板部分21と、この本体板部分21の後端に形成された直角に折れ曲がっているカード係合用の端板部分22と、本体板部分21の上端の前後に形成されたスライド突起23および24と、本体板部分21の下端に形成したスライド突起25および26と、本体板部分21と平行に配置されたカードスライダ27と、を備えている。ケース2には、スライド突起23、24をガイドするガイドレール5、6およびスライド突起25、26をガイドするガイドレール7、8が形成されている。
【0019】
カードスライダ27の後端には、端板部分22の上端部が嵌合する嵌合部27aが形成されている。また、カードスライダ27の下端には案内溝部27bが形成されている。この案内溝部27bは、ケース2の前後に延びるガイドレール9にスライド可能に係合されている。従って、カードスライダ27は、本体板部分21および端板部分22等と一体になってケース2の前後方向にスライドする。
【0020】
カードホルダ20とケース2の間には、前後方向に水平に延びる引張りコイルばね28が架け渡されている。カード挿入口4からICカード10を挿入すると、引張りコイルばね28を伸長させながらカードホルダ20を後方に押し込むことができる。
【0021】
カードホルダ20の後方には、カードホルダ20をケース後端側の位置にロックするためのホルダロック機構30が組み込まれている。ホルダロック機構30は、後端の支軸30aを中心として上下方向に旋回可能なカードロックレバー31(ホルダロック部材)と、このカードロックレバー31を上下に旋回させるためのソレノイド32(駆動機構)と、カードホルダ20の側に形成された係合爪29を備えている。係合爪29はカードスライダ27に形成されている。カードロックレバー31は支軸30aからケース前端側に向かって延びており、その先端と支軸30aとのほぼ中間の位置に、下向きのフック31a(係止爪)が形成されている。
【0022】
カードホルダ20が前端位置にあるときは、カードロックレバー31はソレノイド32の復帰ばね力によって係合爪29側に付勢されているが、係合爪29の上端面29a(保持面)にフック31aの先端が押し付けられているので、ロック解除位置に保持されている(図1(a)参照)。一方、カードホルダ20が後方に押し込まれると、フック31aが係合爪29の上端面29aから前側に落ち込み、当該係合爪29に前方から係合した状態になる(図3(a)参照)。つまり、カードホルダ20がフック31aによって係止され、カードホルダ20の前方への移動が阻止されたロック状態になる。
【0023】
カードロックレバー31にはフック31aに隣接してストッパ面31dが形成されており、このストッパ面31dが上端面29aに当接した位置でカードロックレバー31の旋回が停止し、ロック動作が完了するようになっている。ロック状態においてソレノイド32を励磁すると、カードロックレバー31が上方に旋回して係合爪29とフック31aとの係合が解除され、ロック状態が解除される。この結果、カードホルダ20は引張りコイルばね28のばね力によって前端位置に復帰する。
【0024】
カード挿入口4が形成されているケース前端面3の下端部分には、引抜防止シャッタ40が配置されている。引抜防止シャッタ40は、挿入されたICカード10が不用意に引き抜かれてしまうことを防止するためのものである。
【0025】
図4はICカードリーダライタ1の内部の主要部分を示す斜視図であり、(a)はICカード10が挿入される前の状態であり、(b)はICカード10が完全に挿入された後のロック状態である。図1および図4を参照して説明すると、引抜防止シャッタ40は、ケース2に垂直に取り付けた支軸41を中心として左右に旋回可能な状態で支持されている。引抜防止シャッタ40の前端部分はカード挿入口4の側に湾曲している引抜防止爪42となっている。引抜防止爪42の支軸41寄りの部位には、下方向きの係合ピン42aが形成されている。また、引抜防止シャッタ40における支軸41の後側の部位には、上方向きに延びる突起部43が形成されている。
【0026】
係合ピン42aは、引抜防止爪42の下方に取り付けられたばね44における2本のばね足の一方に係合している。ばね44は、2本のばね足がケース2の後端方向を向くように配置されており、もう一方のばね足は、係合ピン42aよりもカード挿入口4寄りの位置においてケース2の内部に固定されている。従って、引抜防止爪42は、ばね44の付勢力により、その湾曲した先端部分をカード挿入口4から退避させる方向(図4(a)における矢印Aの方向)に付勢されている。すなわち、引抜防止シャッタ40は、ばね44の付勢力によってカード挿入口4から退避している位置(退避位置)に移動可能である。ばね44の付勢力は、引抜防止シャッタ40を退避位置に戻すことが可能な強さであればよい。
【0027】
ここで、カードロックレバー31の先端部には、引抜防止シャッタ40を押圧して引抜防止位置に移動させ、引抜防止位置にロックするためのシャッタ駆動用突起31bが形成されている。シャッタ駆動用突起31bはカードロックレバー31の先端部から下向きに延びており、引抜防止シャッタ40の突起部43と対峙している。シャッタ駆動用突起31bの先端と突起部43の先端には、それぞれ、対峙方向に対して同じ方向に傾いたテーパ面であるシャッタ押圧面31cと被押圧面43aが形成されている。
【0028】
シャッタ駆動用突起31bは、カードロックレバー31の旋回に伴って旋回する。その旋回軌跡は、引抜防止シャッタ40における被押圧面43aとケース2の側面部分2bとの隙間に向かってシャッタ押圧面31cを移動させるように設定されている。カードホルダ20が前端位置にある状態(カード挿入待ち状態)では、被押圧面43aとケース2の側面部分2bとの隙間にシャッタ押圧面31cの先端部分が入り込んでおり、シャッタ押圧面31cの先端部分と被押圧面43aの先端部分の間にわずかな隙間がある状態になっている。カードロックレバー31が旋回してロック位置に移動するロック動作を開始すると、シャッタ押圧面31cが被押圧面43aに当接し、被押圧面43aに沿ってスライドする。これにより、シャッタ駆動用突起31bを被押圧面43aとケース2の側面部分2bとの隙間にスムーズに進入させることができる。
【0029】
被押圧面43aは、さらにカードロックレバー31が旋回することにより、シャッタ押圧面31cによって押圧される。これにより、引抜防止シャッタ40全体が支軸41を中心として回転し、その前端側の引抜防止爪42が内側に旋回する。これにより、引抜防止爪42は、カード挿入口4の下端部分の内側位置において、その幅方向に跨った引抜防止位置に位置決めされる。このようにすると、完全に挿入されたICカード10の後端面の下端部分に、引抜防止位置に位置決めされた引抜防止爪42が後側から当接した状態になる。この結果、ICカード10が不用意に引き抜かれてしまうことが防止される。
【0030】
引抜防止シャッタ40は、支軸41を中心として引抜防止位置側に回転している間、ばね44の付勢力によってシャッタ駆動用突起31bのシャッタ押圧面31cに被押圧面43aが押し付けられている。従って、引抜防止シャッタ40は、退避位置から引抜防止位置までガタ付き無く移動する。また、引抜防止位置に到達した状態においても、シャッタ駆動用突起31bによってガタ付き無く保持され、引抜防止位置に位置決めされている。
【0031】
(動作の説明)
次に、図1ないし図4を参照して、このように構成した本例のICカードリーダライタ1におけるカード挿入時の各部の動作を説明する。
【0032】
まず、カード挿入口4にICカード10を挿入していくと、図1および図4(a)に示すように、ICカード10の端部がカードホルダ20の端板部分22に当たる。この後は、ICカード10を押し込むと、図2に示すように、当該ICカード10がカードホルダ20と共に後方に押し込まれる。このとき、フック31aの先端は係合爪29の上端面29aに当接して保持されたまま、上端面29aに沿ってスライドする。
【0033】
ICカード10と共にカードホルダ20が後方に押し込まれて、その後端位置に至ると、フック31aの先端が上端面29aの前端の角部に至り、係合爪29の前方において下方に向かって落ち込み開始し、ロック動作が開始される。フック31aが下方に落ち込むにつれてカードロックレバー31が旋回し、シャッタ駆動用突起31bが下降する。それと共に、カードロックレバー31の先端のシャッタ押圧面31cが引抜防止シャッタ40の被押圧面43aに当接し、ばね44の付勢力に逆らって引抜防止シャッタ40を退避位置から引抜防止位置に向かって移動開始させる。
【0034】
そして、さらにカードロックレバー31が旋回することにより、カードロックレバー31がロック位置に到り、ストッパ面31dが上端面29aに当接してカードロックレバー31の旋回が止まる(図3および図4(b)参照)。このとき、フック31aは係合爪29に前側から係合して、カードホルダ20のロック状態が形成される。
【0035】
このとき、同時に引抜防止シャッタ40が引抜防止位置に至り、ICカード10の後端面の下端部分に後側から当接した状態で、カード挿入口4を遮蔽する。ここで、引抜防止シャッタ40は、ばね44によって退避位置側に付勢されているので、その突起部43の先端の被押圧面43aがシャッタ駆動用突起31bのシャッタ押圧面31cによって押圧された状態が形成される。よって、引抜防止シャッタ40は、ガタ付き無く、その引抜防止位置に位置決めされ、当該位置にロックされた状態が形成される。よって、ICカード10が不用意に引き抜かれてしまう事態を確実に防止できる。
【0036】
このようにしてICカード10が挿入された状態で、ICカード10に埋め込まれている非接触型ICチップに対する記憶情報の読み出し、および情報の書き込みが行われる。カード返却指令があると、ソレノイド32が励磁され、カードロックレバー31が上方に押し上げられ、フック31aと係合爪29の係合が解除されてカードホルダ20のロックが解除される。カードロックレバー31が押し上げられると、その先端のシャッタ駆動用突起31bが引抜防止シャッタ40から外れて、当該引抜防止シャッタ40のロックも同時に解除される。
【0037】
この結果、引張りコイルばね28のばね力によって、ICカード10が保持されているカードホルダ20が前方位置に向けて押し出される。また、ばね44の付勢力によって引抜防止シャッタ40が退避位置に向けて旋回する。このように、カード挿入時とは逆の動作が行われて、ICカード10の後端部がカード挿入口4から突出した状態に戻る。
【0038】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態のICカードリーダライタ1では、挿入されるICカード10と共に押し込まれるカードホルダ20を後端位置にロックするためのカードロックレバー31にシャッタ駆動用突起31bを形成しており、カードホルダ20が後端位置まで押し込まれたところでカードホルダ20とカードロックレバー31との係合動作(ロック動作)が開始する。そして、この係合動作に基づいてシャッタ駆動用突起31bが旋回し、引抜防止シャッタ40を駆動している。
【0039】
カードロックレバー31は、カードホルダ20が後端位置に到達する直前までロック解除位置に保持されているので、引抜防止シャッタ40の引抜防止位置への移動は、カードロックレバー31によるロック動作が開始してから行われる。従って、カードホルダ20が後端位置に到達する前、すなわち、ICカード10がカード挿入口4の内側に完全に収納される前に引抜防止シャッタ40が閉まることがない。また、カードホルダ20のロック解除においては、カードロックレバー31がロック解除位置に戻ったときには、引抜防止シャッタ40がばね44の付勢力によって自動的に退避位置に戻っているので、引抜防止シャッタ40が開く前にICカード10の排出が行われることがない。よって、カード型記憶媒体10と引抜防止シャッタ40との接触を防止することができるので、ICカードリーダライタ1を安定して動作させることができ、信頼性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態では、引抜防止シャッタ40をばね44で引抜防止位置から退避する方向に付勢しているので、引抜防止位置に移動した引抜防止シャッタ40を、シャッタ駆動用突起31bによって引抜防止位置にガタ付き無く位置決めして、ロックすることができる。したがって、引抜防止シャッタ40がガタ付いて、ICカード10が不用意に引き抜かれてしまう事態を確実に防止できる。また、ばね40の付勢力により、引抜防止シャッタ40を退避位置に自動で復帰させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、カードホルダ20をロックするための部材と引抜防止シャッタ40を駆動するための部材を1つの部材で構成しているので、簡易な構成が実現されており、ICカードリーダライタ1の小型・コンパクト化および部品点数削減に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用したICカードリーダライタを示す縦断面図、横断面図および側面図である。
【図2】図1のICカードリーダライタにおけるカード挿入途中の状態を示す説明図である。
【図3】図1のICカードリーダライタにおけるカードを挿入し終えた後の状態を示す説明図である。
【図4】図1のICカードリーダライタにおける引抜防止シャッタの開閉動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ICカードリーダライタ
2 ケース
2b 側面部分
3 ケース前端面
4 カード挿入口
5,6,7,8,9 ガイドレール
10 ICカード(カード型記憶媒体)
20 カードホルダ
21 本体板部分
22 端板部分
23,24,25,26 スライド突起
27 カードスライダ
27a 嵌合部
27b 案内溝部
28 引張りコイルばね
29 係合爪
29a 上端面(保持面)
30 ホルダロック機構
30a 支軸
31 カードロックレバー(ホルダロック部材)
31a フック(係止爪)
31b シャッタ駆動用突起
31c シャッタ押圧面
31d ストッパ面
32 ソレノイド
40 引抜防止シャッタ
41 支軸
42 引抜防止爪
42a 係合ピン
43 突起部
43a 被押圧面
44 ばね(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード型記憶媒体を挿入するためのカード挿入口と、
前記カード挿入口から挿入されるカード型記憶媒体を受け入れ、当該カード型記憶媒体によって、前記カード挿入口に接近した前端位置から、当該カード挿入口から離れた後端位置に押し込み可能なカードホルダと、
前記カードホルダを前記前端位置に向けて付勢しているホルダ付勢部材と、
前記カードホルダを前記後端位置にロックするためのホルダロック部材と、
前記ホルダロック部材をロック位置およびロック解除位置に移動させる駆動機構と、
前記カードホルダが前記前端位置から後端位置に到達する直前の時点まで、前記ホルダロック部材を前記ロック解除位置に保持している保持機構と、
前記カード挿入口の一部を封鎖する引抜防止位置、および、当該引抜防止位置から退避した退避位置に移動可能な引抜防止シャッタと、を備え、
前記ホルダロック部材は前記引抜防止シャッタに係合可能なシャッタ押圧面を有し、
前記シャッタ押圧面は、前記ホルダロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動する間に前記引抜防止シャッタを前記退避位置から前記引抜防止位置に移動させ、前記ホルダロック部材が前記ロック位置にある状態では前記引抜防止シャッタを引抜防止位置に保持することを特徴とするカードリーダライタ。
【請求項2】
前記引抜防止シャッタを前記引抜防止位置側から前記退避位置側へ付勢しているシャッタ付勢部材を備え、
前記シャッタ押圧面は、前記引抜防止シャッタを前記シャッタ付勢部材の付勢力に逆らって前記引抜防止位置に押し込むことを特徴とする請求項1に記載のカードリーダライタ。
【請求項3】
前記引抜防止シャッタは、前記引抜防止位置と前記退避位置との間を旋回可能であり、
前記シャッタ付勢部材はばね部材であることを特徴とする請求項2に記載のカードリーダライタ。
【請求項4】
前記ホルダロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を旋回可能であり、
前記保持機構は、前記ホルダロック部材に形成した係止爪と、前記カードホルダに形成した保持面とを有し、
前記カードホルダが前記前端位置から前記後端位置に至る直前までの区間を移動している間は、前記係止爪が前記保持面に係合状態に保持されて前記ホルダロック部材の旋回が阻止され、前記カードホルダが前記後端位置に到達すると、前記係止爪が前記保持面から外れて、前記ホルダロック部材の旋回が可能になることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載のカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−86819(P2009−86819A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253213(P2007−253213)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】