説明

カードリーダ装置

【課題】カードリーダ装置において干渉を排除し、ICカードとの通信に生じる誤動作を減少させてシステム効率を改善する。
【解決手段】カードリーダ装置は複数のカードリーダ3-1-1 〜3-1-9 を備え、電源を有しないワイヤレスICカード3-2-1 〜3-2-6 と当該ICカードが接近した前記カードリーダとの間で無線による通信が行われるカードリーダ装置である。ICカードとの通信に障害を生じる近距離に配設された複数のカードリーダが回線で直接接続され、ICカードと通信可能であるか否かを示す接点信号3-7-1(a/b)をそれぞれ回線に出力して互いの状態を確認でき、ICカードと通信が可能であることを示す状態信号を最も早期に出力したカードリーダが優先的にICカードと通信を行うことを許容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカードリーダを備え、自己電源を有しないワイヤレスICカード(以下、単にICカードとも呼ぶ)と当該ワイヤレスICカードが接近した前記カードリーダとの間で無線通信が行われるカードリーダ装置に係り、特に近接して配置された複数のカードリーダの一つにワイヤレスICカードを翳して読み取りを行わせようとした場合に、カードリーダ間で生じる干渉によってワイヤレスICカードに生じる誤動作を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電波などを発射して非接触カードと通信する非接触カード制御装置を複数台設置し、上位制御装置が動作許可信号をこれら複数台の非接触カード制御装置のうちのいずれか1つに順次通知し、通知を受けた1つの非接触カード制御装置が電波などを発射して非接触カードと通信することにより、非接触カードと通信するときの干渉を防ぐように構成した非接触カード制御装置が開示されている。
【0003】
図1は下記特許文献1に記載された非接触カード制御装置の構成と動作順序の説明図であり、図1を参照して該非接触カード制御装置の動作を説明する。この装置によれば、最初のカードリーダの動作を行わせる命令(動作許可信号)1-4 が上位制御機1-1 から送信され、次のカードリーダの動作を許可する動作許可信号は制御機1-1 または最初のカードリーダ1-3-1 から送信される。また、動作終了信号1-5 はカードリーダ1-3-1 〜1-3-N から上位制御機1-1 に送られる。したがって、この装置は上位制御機1-1 がカードリーダ1-3-1 〜1-3-N の動作を制御することが特徴となっている。このためこれらの信号は全て通信回線1-2 を用いて行うことになる。
【0004】
下記特許文献2に開示されたリーダライタは、識別信号を無線送信して通信可能な移動情報通信体を検出し、当該移動情報通信体に対して無線通信を行うに際して、次のようにして識別信号の送信処理を行う。すなわち、通信手段が無線信号を受信し、検出手段が他のリーダライタから受信した識別信号に基づいて、当該他のリーダライタからの識別信号の送信タイミングを検出する。そして、通信制御手段が検出された送信タイミングとずれたタイミングで前記通信手段により識別信号の送信を行わせる。従って、例えば或るリーダライタの近傍に他のリーダライタが設置されている場合であっても、これら複数の異なるリーダライタからの識別信号の送信が互いにずれた送信タイミングで行われるため、これら複数の異なるリーダライタからの識別信号が互いに干渉してしまうのを防止することができるものとされている。
【0005】
下記特許文献3に開示されたデジタルコードレス電話機は、子機と送受信するデジタル信号を処理するデジタル信号処理部と、このデジタル信号処理部によるデジタル信号を子機と送受信する無線機部と、この無線機部による子機とのデジタル信号の送受信するチャネルのタイミングを制御するタイミング制御部とを備えた親機を有し、他局の親機が使用しているチャネルを監視し、他局の親機による子機へデジタル信号を送信するチャネルと自局の親機による子機へデジタル信号を送信するチャネルのタイミングが衝突する場合には、タイミング制御部により衝突前に自局の親機による子機へデジタル信号を送信するチャネルのタイミングを変更するものである。これによって、複数の親機が同一のサービス範囲内にある場合に、自局の親機と他局の親機から送信されるBCCH、PCHの衝突を回避できるものとされている。
【特許文献1】特開平5−46823号公報
【特許文献2】特開平11−102419号公報
【特許文献3】特開平9−84133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明によれば、上位制御機1-1 はカードリーダ1-3-1 〜1-3-N との通信ではICカードの読取りデータの受信や正当性の照合、書き込みデータの送信、カードリーダとの相互認証など多くの通信を通信回線1-2 を介して行い、これによって複数のカードリーダ1-3-1 〜1-3-N を制御している。このため複数台数のカードリーダ1-3-1 〜1-3-N と接続する上位制御機1-1 は、カードリーダの数が多くなり、干渉グループが増えてくると上位制御機自身や通信回線の能力による制限が発生する。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、親局が子局の衝突を監視して無線による命令で衝突を防止するものであり、衝突防止を無線にて送信している。また、特許文献3に記載の発明は、子局自身が他の子局に対して衝突防止命令を無線で発信して衝突防止をするものであり、衝突防止を無線にて送信している。
【0008】
ここで、バッテリーを内蔵しないワイヤレスICカードのカードリーダにおいて、近接して配置された複数のカードリーダの一つにワイヤレスICカードを翳して読み取りを行わせようとした場合、カードリーダ間で干渉が生じてワイヤレスICカードに誤動作が生じてしまうが、これを防止するために特許文献2乃至3に記載の発明を用いようとすると、以下に説明するような問題点を生じてしまう。
【0009】
特許文献2乃至3に記載の無線により衝突を防止する発明における共通の問題点を図2を参照して説明する。
まず、ワイヤレスICカード(2-2-1または2-2-2)とカードリーダ(R/W)(2-1-1`2-1-4) の通信においては、ICカードは電源(バッテリー等)を持たずカードリーダの無線信号から電力を作り出すことが一般的である。従って、カードリーダは電源2-5 から電力の供給を受け、ICカードが充分に動作できるための磁界を作る必要がある。他方、ICカード(2-2-1 または2-2-2 )は受信した信号から動作に必要な電力を生成し、カードリーダ(2-1-1 〜2-1-4 )に信号を送るために、アンテナのインピダンスを変化させアンテナから反射する電波の強さを変えることで通信を行う。
【0010】
また、カードリーダ(2-1-1 〜2-1-4 )の受信系はICカード(2-2-1または2-2-2)が変化させたきわめて弱い反射波の変化を複数の増幅器を用いて読み取る。ICカード(2-2-1または2-2-2)の受信系は例えば13.56MHz の搬送波を用いるICカードではカードの寸法制限のため小型のアンテナを用いており、このためアンテナのゲインが低く、通信距離としては10〜20cmが最大である。したがって、ICカード(2-2-1または2-2-2)が、通信の対象となっていない他のカードリーダ(2-1-1 〜2-1-4 )の信号を受けて誤動作する距離も短い(図中のICカードが誤動作するエリアである狭いエリア2-3 )。しかし、カードリーダ自身は強い出力と高感度の受信アンテナを持つため、カードリーダ同士の通信距離は、カードリーダとICカード(2-2-1または2-2-2)の通信距離より長い距離(図中の無線が到達するエリアである広いエリア2-4 )となる。
【0011】
そこで、ICカード(2-2-1または2-2-2)が通信の対象としない他のカードリーダ(2-1-1 〜2-1-4 )の信号を受けて誤動作することを防止するために、カードリーダの電波信号が広いエリアにある他のカードリーダに届かないように各カードリーダの出力レベルを下げることも考えられるが、そのようにするとカードリーダとワイヤレスICカードとの交信ができなくなるので出力を下げることはできない。
【0012】
以上説明したように、複数のカードリーダを備え、自己電源を有しないワイヤレスICカードと当該ワイヤレスICカードが接近した前記カードリーダとの間で無線による通信が行われるカードリーダ装置においては、カードリーダ(2-1-1 〜2-1-4 )が複数の電波の衝突を感じるエリア(2-4 )と、ICカードが電波の衝突を感じるエリア(2-3 )とでは、領域の広狭に大きな違いが生じる。
【0013】
したがって図2に示したような環境条件下では、例えばカードリーダR/W(2-1-1)が衝突無しで他のカードリーダ(2-1-2〜2-1-4)に命令を理解させるためには、広いエリア(2-4) 内にある他のカードリーダ(2-1-2〜2-1-4)全てが変調送信を停止する必要がある。そのようにするには、図2のような場合に全てのカードリーダ(2-1-1〜2-1-4)を対象として逐次カードを読み取る方法を実施する必要がある。しかし、このような手法では、ICカード(2-2-1 )については衝突が発生しないカードリーダ(2-1-1と2-1-4)をも停止することになり、このためICカードの処理に長い時間がかかるため、かかる手法は実用的には採用が困難である。
【0014】
本発明は、以上説明したような課題を解決するためになされたものであり、複数のカードリーダを備え、自己電源を有しないワイヤレスICカードと当該ワイヤレスICカードが接近したカードリーダとの間で無線通信が行われるカードリーダ装置において、干渉を排除してICカードとの通信に生じる誤動作を可及的に減少させるとともに、システム効率を従来よりも大幅に向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載されたカードリーダ装置は、複数のカードリーダを備え、自己電源を有しないワイヤレスICカードと当該ワイヤレスICカードが接近した前記カードリーダとの間で無線による通信が行われるカードリーダ装置において、
前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる距離に配設された複数の前記カードリーダが回線で直接接続され、前記ワイヤレスICカードと通信可能であるか否かを示す状態信号をそれぞれ前記回線に出力して互いの前記状態信号を確認できるように構成され、前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号を最も早期に出力した前記カードリーダが優先的に前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを許容されるように制御されることを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載されたカードリーダ装置は、請求項1記載のカードリーダ装置において、
通信が優先的に許容された前記カードリーダ以外のカードリーダは、通信が優先的に許容された前記カードリーダから前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号が出力されている間は、前記ワイヤレスICカードと通信を行わず、通信が優先的に許容された前記カードリーダから出力されていた状態信号が前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す状態信号となった場合に、前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載されたカードリーダ装置は、請求項2記載のカードリーダ装置において、
前記各カードリーダは、前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す他のカードリーダの状態信号を確認した場合に、自己の状態信号を前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態とした後に通信を行い、通信終了後に自己の状態信号を前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す状態とするように制御されることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載されたカードリーダ装置は、請求項1記載のカードリーダ装置において、
第1乃至第3の少なくとも3つの前記カードリーダが前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる距離に配設されることにより、前記第1のカードリーダと前記第2のカードリーダの間と、前記第2のカードリーダと前記第3のカードリーダの間に、前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる第1及び第2の干渉エリアがそれぞれ構成され、
前記第1のカードリーダと前記第2のカードリーダが前記回線で直接接続されて互いの前記状態信号を確認できるように構成され、前記第2のカードリーダと前記第3のカードリーダが前記回線で直接接続されて互いの前記状態信号を確認できるように構成され、
前記干渉エリアごとに、前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号を最も早期に出力した前記カードリーダが優先的に前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを許容されるように制御されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカードリーダ装置によれば、ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる距離に配設された複数のカードリーダが回線で直接接続され、ワイヤレスICカードと通信可能であるか否かを示す状態信号を回線を介して互いに確認できるので、通信可能の状態信号を最も早期に出力したカードリーダが優先される構成とすることにより、干渉を排除してICカードとの通信に生じる誤動作を可及的に減少させることができ、システム効率を従来よりも大幅に向上させることができる。
【0020】
特に請求項4に記載されたカードリーダ装置によれば、前記効果に加え、第1のカードリーダと第3のカードリーダは同じ時間帯にワイヤレスICカードとの通信を行うことができ、システム効率を従来よりもさらに一層大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本願発明者が出願時点において最良と考える本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、当然ながら本発明は、これら実施形態のみに限定されるものではなく、開示した実施形態を例とする請求項に記載された概念まで含むものである。
【0022】
1.実施形態1(図3及び図4)
図3は本発明の第1実施形態であるカードリーダ装置の構成図であり、図4は同カードリーダ装置の動作順序を説明する作動タイミング図である。本例のカードリーダ装置は、複数のカードリーダのうち、衝突(ICカードとの通信において発生する誤作動)が発生するカードリーダ同士のみについて衝突防止を行なわせることを特徴としている。
【0023】
図3において、3-1-1 〜3-1-9 はワイヤレスICカードと通信して読み書きを行うカードリーダ(R/W) であり、上位の制御手段である単一の制御機3-5 と通信ライン3-6 を介して接続されている。3-2-1 〜3-2-6 はバッテリー等の自己電源を有しないワイヤレスICカードであり、カードリーダ3-1-1 〜3-1-9 に近接することにより通信を行うことができる。図3中、干渉エリア3-3-1 〜3-3-3 は、ワイヤレスICカードが衝突を感じるエリアであり、無線命令の到達エリア3-4 は、カードリーダ同士の通信が衝突するエリアである。そして、干渉エリア3-3-1 〜3-3-3 にある各2基のカードリーダ3-1-1,3-1-2 と3-1-5,3-1-6 と3-1-8,3-1-9 は、それぞれ互いに専用の回線で直接に接続されており、各回線には、当該各組のカードリーダがワイヤレスICカードと通信が可能であるか否かを示す状態信号として、接点信号3-7-1 〜3-7-3 が出力されて相手方がこれを認識することができる。ここで、本例の接点信号は例えばリレーのON/OFF信号で構成することができ、取り決めにより通信する場合をON信号とし、通信しない場合をOFF信号とする(もちろん逆でもよい。)。カードリーダ3-1-1 から3-1-2 へ出力する状態信号を接点信号3-7-1aとし、カードリーダ3-1-2 から3-1-1 へ出力する状態信号を接点信号3-7-1bとする。同様に、カードリーダ3-1-5 から3-1-6 へ出力する状態信号を接点信号3-7-2aとし、カードリーダ3-1-6 から3-1-5 へ出力する状態信号を接点信号3-7-2bとする。また、カードリーダ3-1-8 から3-1-9 へ出力する状態信号を接点信号3-7-3aとし、カードリーダ3-1-9 から3-1-8 へ出力する状態信号を接点信号3-7-3bとする。
【0024】
各カードリーダ3-1-1 〜3-1-9 は、上位の制御機3-5 の機能とは別に、所定の時間間隔でICカードの接近の有無を常時監視しており、ICカードを検知すれば後述する手順でICカードとの通信を開始する。また、各カードリーダ3-1-1 〜3-1-9 の上位にある制御機3-5 は、下位のカードリーダ3-1-1 〜3-1-9 のいずれかがICカードを検知してこれと通信を開始した時に機能し、当該カードリーダがICカードから読み取ったデータを通信ライン3-6 を経由して受信し、各種のソフトウエアを稼動させている。
【0025】
以上のような構成のカードリーダ装置においては、複数のカードリーダのうち、互いに接近して配設されたカードリーダ3-1-1 とカードリーダ3-1-2 において、ICカード3-2-1 に対する干渉エリア3-3-1 が存在し、ICカード3-2-1 が両方の命令を実行したりする干渉が生じることがある。同様に干渉エリア3-3-2 ではICカード3-2-4 が、干渉エリア3-3-3 ではICカード3-2-6 がそれぞれ誤動作することがある。
【0026】
しかし、これ以外のカードリーダではICカード3-2-1 〜3-2-6 に誤動作が引き起こされることはない。図示及び説明の都合上、3つの干渉エリアで誤動作するICカードの符号を特定したが、実際には全てのICカード3-2-1 〜3-2-6 が全ての干渉エリア3-3-1 〜3-3-3 で干渉により誤動作することとなる。
【0027】
他方、カードリーダ3-1-1 〜3-1-9 の無線命令の到達エリア3-4 には9台のカードリーダ3-1-1 〜3-1-9 が存在している。この無線命令の到達エリア3-4 はカードリーダ3-1-1 〜3-1-9 同士が通信を行う場合には干渉エリアとなる。
【0028】
本例では、カードリーダ同士の緩衝によるICカード3-2-1 〜3-2-6 の誤作動を防止するために、カードリーダ3-1-1 とカードリーダ3-1-2 、カードリーダ3-1-5 とカードリーダ3-1-6 、カードリーダ3-1-8 とカードリーダ3-1-9 間を専用の直接回線で接続し、お互いの状態を示す接点信号3-7-1(a/b)〜3-7-3(a/b)を互いに確認できるようにしている。なお、専用の回線によるカードリーダ同士の接続は、カードリーダ同士の干渉がICカードに誤作動を引き起こしうるエリアが非常に狭いので、簡単に行うことができる。
【0029】
次に、図4を参照して本例におけるカードリーダ3-1-1 〜3-1-9 (図4ではR/W 3-1-1 〜R/W 3-1-9 と示す)の動作順序を説明する。
カードリーダ3-1-1 は自分がICカード3-2-1 との通信を行うためにICカード3-2-1 に対して変調信号を送信する直前に、カードリーダ3-1-2 の接点信号3-7-1bがオン(ON)になっているか調べ、オフ(OFF )であれば自分の接点信号3-7-1aを、最初にオン(ON)にして、変調信号4-1-1 をカードに向けて送信する。
【0030】
カードリーダ3-1-1 はICカード3-2-1 との通信を完了したら、直ちに変調信号4-1-1 を無変調信号に変え、接点信号3-7-1aをOFF に設定する。他方、カードリーダ3-1-2 はカードリーダ3-1-1 の接点信号3-7-1aがオンになっている間は変調信号の放出は行わず、タイマーなどの設定で数ミリ秒〜数百ミリ秒後に再びカードリーダ3-1-1 の接点信号3-7-1aがオフになっているか調べ、オフになっていれば、最初に接点信号3-7-1bをオンにし、続いて変調信号4-2-1 をICカード3-2-1 に向けて出力する。
【0031】
カードリーダ3-1-2 はICカード3-2-1 と交信が完了したらまず変調信号4-2-1 を無変調信号に変え、接点信号3-7-1bをオフにする。カードリーダ3-1-1 はカードリーダ3-1-2 の接点信号3-7-1bを調べてオンであれば無変調のまま待機し、接点信号3-7-1bがオフになった場合に接点信号3-7-1aをオンにして変調信号4-1-2 を送信する。
【0032】
同様にカードリーダ3-1-5 とカードリーダ3-1-6 とは接点信号3-7-2a/bを用いてお互いを制御しあってICカード3-2-4 と交信する。
【0033】
しかし、干渉エリア3-3-1 〜3-3-3 にあるカードリーダ同士はお互いに上述したような制御を行うが、干渉エリア3-3-1 〜3-3-3 外にある他のカードリーダ3-1-3 、3-1-4 、3-1-7 はもちろんのこと、他の干渉の組み合わせに対しても何の制御も行わない。このようにすることによって全体の効率が極めてよくなり干渉も完全に解消する。
【0034】
例えば図3の場合に本例ではカードリーダ3-1-1 、3-1-2 、3-1-5 、3-1-6 、3-1-8 、3-1-9 は効率がそれぞれ50%、そのほかの三台(3-1-3、3-1-4 、3-1-7 )は100%となり、干渉がない場合のシステムの効率を100%とすると本発明では約67%の効率になる。他方、従来の発明のいずれを採用してもすべてのカードリーダを制御するために効率は11%まで低下してしまう。
【0035】
本例は、ワイヤレスICカード(例えば13.56MHz の搬送波を用いて動作するバッテリーを有しないカード)に誤動作を生じさせる干渉エリア内の近接したカードリーダ同士を、無線信号や制御機に接続している回線(前記通信ライン3-6 )を用いず、専用回線で直接接続して接点信号のような状態信号を互いに確認できるようにして同カードリーダ同士の干渉を防ぐようにしたので、バッテリーを保有しないワイヤレスICが前記干渉を感知して誤作動するのを有効に防止することができる。
【0036】
2.実施形態2(図5)
図5は本発明の第2実施形態であるカードリーダ装置の構成の要部と、その動作順序を説明する作動タイミングを示す図である。
【0037】
本例においては、3台のカードリーダ(5-1-1,5-1-2,5-1-3 、図4ではR/W 5-1-1 〜R/W 5-1-3 と示す)が隣接しており、ICカードが誤動作を起こす干渉エリアは2箇所である(5-2-1 と5-2-2 )。干渉エリア5-2-1 ではICカードはカードリーダ5-1-1 と5-1-2 の電波を受けて誤動作が生じる。干渉エリア5-2-2 ではカードリーダ5-1-2 と5-1-3 の電波を受けて誤動作する。カードリーダ5-1-1 とカードリーダ5-1-2 は接点信号5-3-1(カードリーダ5-1-1 から5-1-2 へ) と5-3-2-1(カードリーダ5-1-2 から5-1-1 へ) で接続されており、カードリーダ5-1-2 と5-1-3 は接点信号5-3-2-2(カードリーダ5-1-2 から5-1-3 へ) と5-3-3(カードリーダ5-1-3 から5-1-2 へ) で接続されている。
【0038】
このように接続した場合は、カードリーダ5-1-1 と5-1-3 は同じ時間帯に動作することができるので、従来の発明に比べてシステムの効率を大幅に向上させることができる。
【0039】
以上説明した各実施形態は、説明の便宜上、第1実施形態及び第2実施形態のそれぞれに項分けして説明したが、本明細書の全趣旨及び特許請求の範囲に記載した本発明の内容に照らして可能な限り、各実施形態の一部又は各実施形態同士を適宜に組み合わせた構成も、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、特許文献1に記載された非接触カード制御装置の構成と動作順序の説明図である。
【図2】図2は、特許文献2乃至3に記載の無線により衝突を防止する発明における共通の問題点を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態であるカードリーダ装置の構成図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態であるカードリーダ装置の動作順序を説明する作動タイミング図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態であるカードリーダ装置の構成の要部と、その動作順序を説明する作動タイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
第1実施形態(図3)
3-1-1 〜3-1-9 :ICカードリーダ(R/W)
3-2-1 〜3-2-6 :ワイヤレスICカード
3-3-1 〜3-3-3 :ワイヤレスICカードが衝突(干渉)を感じる干渉エリア
3-4 :カードリーダ同士の通信が衝突(干渉)する無線命令の到達エリア
3-5 :制御機
3-6 :制御機とカードリーダの通信ライン
3-7-1(a/b)〜3-7-3(a/b):干渉エリアのカードリーダ間で送信される接点信号
第2実施形態(図5)
5-1-1 〜5-1-3 :カードリーダ(R/W)
5-2-1,5-2-2 :ワイヤレスICカードが衝突(干渉)を感じる干渉エリア
5-3-1,5-3-2-1,5-3-2-2,5-3-3 :干渉エリアのカードリーダ間で送信される接点出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカードリーダを備え、自己電源を有しないワイヤレスICカードと当該ワイヤレスICカードが接近した前記カードリーダとの間で無線による通信が行われるカードリーダ装置において、
前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる距離に配設された複数の前記カードリーダが回線で直接接続され、前記ワイヤレスICカードと通信可能であるか否かを示す状態信号をそれぞれ前記回線に出力して互いの前記状態信号を確認できるように構成され、前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号を最も早期に出力した前記カードリーダが優先的に前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを許容されるように制御されることを特徴とするカードリーダ装置。
【請求項2】
通信が優先的に許容された前記カードリーダ以外のカードリーダは、通信が優先的に許容された前記カードリーダから前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号が出力されている間は、前記ワイヤレスICカードと通信を行わず、通信が優先的に許容された前記カードリーダから出力されていた状態信号が前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す状態信号となった場合に、前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを特徴とする請求項1記載のカードリーダ装置。
【請求項3】
前記各カードリーダは、前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す他のカードリーダの状態信号を確認した場合に、自己の状態信号を前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態とした後に通信を行い、通信終了後に自己の状態信号を前記ワイヤレスICカードと通信が不可能であることを示す状態とするように制御されることを特徴とする請求項2記載のカードリーダ装置。
【請求項4】
第1乃至第3の少なくとも3つの前記カードリーダが前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる距離に配設されることにより、前記第1のカードリーダと前記第2のカードリーダの間と、前記第2のカードリーダと前記第3のカードリーダの間に、前記ワイヤレスICカードとの通信に障害を生じる第1及び第2の干渉エリアがそれぞれ構成され、
前記第1のカードリーダと前記第2のカードリーダが前記回線で直接接続されて互いの前記状態信号を確認できるように構成され、前記第2のカードリーダと前記第3のカードリーダが前記回線で直接接続されて互いの前記状態信号を確認できるように構成され、
前記干渉エリアごとに、前記ワイヤレスICカードと通信が可能であることを示す状態信号を最も早期に出力した前記カードリーダが優先的に前記ワイヤレスICカードと通信を行うことを許容されるように制御されることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate