説明

カードリーダ

【課題】スキミングを効果的に防止することが可能なカードリーダを提供する。
【解決手段】磁気ヘッド7を有するカードリーダ1は、カード2が挿入されるカード挿入部4と、カード挿入部4の前面側に異物45が取り付けられたことを検知するための異物検知装置21と、異物検知装置21の近傍に配置され異物検知装置21の周囲温度を測定する温度センサ22とを備えている。カードリーダ1の制御部は、温度センサ22で測定された異物検知装置21の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、カード挿入部4の前面側に異物45が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に温度センサ22で測定される異物検知装置21の周囲温度に応じた温度補正処理を実行し、温度センサ22で測定される異物検知装置21の周囲温度が上限値を超えるか下限値未満である場合、異物検知装置21に異常が生じているとして、異常処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された磁気データの読取および/またはカードへの磁気データの記録を行うカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検出体の有無を検出する物体検知装置として、磁性材料で形成されたコアと、コアの中心部に巻回される検出用コイルと、コアの両端側のそれぞれに巻回される一対の励磁用コイルとを備えるいわゆる差動型の物体検知装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の物体検知装置では、この物体検知装置の検知可能領域に被検出体がないときに、励磁用コイルの一方が発生させる磁力線の密度と、励磁用コイルの他方が発生させる磁力線の密度とのバランスが取れるように、かつ、励磁用コイルの一方が発生させる磁力線の方向と、励磁用コイルの他方が発生させる磁力線の方向とが逆方向になるように(すなわち、励磁用コイルの一方が発生させる磁界と、励磁用コイルの他方が発生させる磁界とのバランスが取れるように)、励磁用コイルが励磁されている。
【0003】
そのため、この物体検知装置では、検知可能領域に被検出体が入ってくると、その影響で、励磁用コイルの一方が発生させる磁界と励磁用コイルの他方が発生させる磁界とのバランスが崩れ、検出用コイルの両端部の間に電圧が発生する。特許文献1に記載の物体検知装置では、検出用コイルの両端部の間に発生する電圧の値が所定の閾値を超えるか否かを判別することで、物体検知装置の検知可能領域に被検出物が有るか否かを検出している。
【0004】
また、従来、カードに記録された磁気データの読取やカードへの磁気データの記録を行うカードリーダが広く利用されている。カードリーダが利用される金融機関等の業界では、従来、犯罪者がカードリーダのカード挿入部に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングが大きな問題となっている。そこで、スキミング用の磁気ヘッド(以下、「スキミング用磁気ヘッド」とする。)での磁気データの読取を阻止するための妨害磁界発生器を備えるカードリーダが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載のカードリーダでは、カードが挿入されるカード挿入時に、妨害磁界発生器が所定時間、駆動して、妨害磁界を発生させる。そのため、スキミング用磁気ヘッドがカード挿入部に取り付けられていても、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの適切な読取を阻止して、磁気データの不正取得を防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−255053号公報
【特許文献2】特許第3936496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の物体検知装置をカードリーダのカード挿入部に取り付ければ、物体検知装置を用いて、スキミング用磁気ヘッドがカード挿入部に取り付けられたことを検知することが可能である。また、特許文献1に記載の物体検知装置は、いわゆる差動型の検知装置であるため、スキミング用磁気ヘッドと物体検知装置との距離が一定であれば、物体検知装置の周囲の温度が変動しても、物体検知装置の検出用コイルの両端部に発生する電圧の値の変動量は小さい。そのため、特許文献1に記載の物体検知装置をカードリーダのカード挿入部に取り付ければ、スキミング用磁気ヘッドがカード挿入部に取り付けられたか否かを精度良く検知することが可能になる。
【0008】
一方、犯罪者によるスキミングは年々、巧妙化しており、スキミングを効果的に防止することができるカードリーダが市場で要求されている。しかしながら、特許文献1に記載の物体検知装置であっても、その周囲温度が変動すれば、検出用コイルの抵抗値等が変動するため、スキミング用磁気ヘッドと物体検知装置との距離が一定であるときの、検出用コイルの両端部に発生する電圧値が少なからず変動する。したがって、カード挿入部にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられたことを特許文献1に記載の物体検知装置によってさらに精度良く検知することが困難になるおそれがあり、その結果、スキミングを効果的に防止することが困難になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、スキミングを効果的に防止することが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードに記録された磁気データの読取および/またはカードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドを備えるカードリーダにおいて、カードが挿入される挿入口が形成されるカード挿入部と、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたことを検知するための異物検知装置と、異物検知装置の近傍に配置され異物検知装置の周囲温度を測定する温度センサと、カードリーダを制御する制御部とを備え、制御部は、温度センサで測定された異物検知装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行し、温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度が上限値を超えるか下限値未満である場合、異物検知装置に異常が生じているとして、異常処理を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明において、制御部は、たとえば、温度補正処理として、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別するために異物検知装置からの出力値と比較される閾値を、温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度に応じて補正する。また、本発明において、制御部は、たとえば、異常処理として、カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する。
【0012】
本発明のカードリーダでは、制御部は、温度センサで測定された異物検知装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行する。そのため、異物検知装置の周囲温度が変動しても、たとえば、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別するために異物検知装置からの出力値と比較される閾値を異物検知装置の周囲温度に応じて補正する等の所定の温度補正処理を行うことで、カード挿入部の前面側に異物としてのスキミング用磁気ヘッドが取り付けられたことを異物検知装置によってより高い精度で検知することが可能になる。したがって、本発明では、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0013】
また、本発明のカードリーダでは、制御部は、温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度が上限値を超えるか下限値未満である場合に、異物検知装置に異常が生じているとして、異常処理を実行している。そのため、異物検知装置が適切に機能しなくなるように、たとえば、犯罪者がドライヤー等を用いて異物検知装置を加熱して、異物検知装置の周囲温度が上限値を超えた場合や、犯罪者がコールドスプレー等を用いて異物検知装置を冷却して、異物検知装置の周囲温度が下限値未満となった場合には、たとえば、カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する等の異常処理が実行される。したがって、本発明では、犯罪者が異物検知装置に対して不正行為を行ったときに、カードリーダの取引を停止させる等の所定の処置を行うことが可能になり、その結果、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0014】
なお、本発明において、「異物検知装置の近傍に配置され」とは、異物検知装置に接触はしていないが、異物検知装置の周囲温度を適切に検出できる範囲内に配置されていることを意味する。
【0015】
本発明において、異物検知装置は、たとえば、金属材料を含む異物がカード挿入部の前面側に取り付けられたことを検知するための金属センサである。この場合には、温度センサを用いて、金属センサの励磁用コイルの温度が許容値を超えているか否かを検知することが可能になる。したがって、温度センサによって励磁コイルの温度を測定した結果、励磁用コイルの温度が許容値を超えている場合には、励磁用コイルの断線を防止するため、励磁用コイルに印加される電圧の値を下げたり、励磁用コイルへの電圧の印加を停止する等の所定の処置を取ることが可能になる。その結果、たとえば、励磁用コイルにヒューズを接続する等の励磁用コイルの異常加熱対策を別途、講じる必要がなくなる。
【0016】
本発明において、金属センサは、磁性材料で形成されるコアと、コアに巻回される励磁用コイルおよび検出用コイルとを備え、温度センサは、励磁用コイルの端部および検出用コイルの端部が接続される端子が実装された中継基板に実装されていることが好ましい。このように構成すると、中継基板に実装された端子に、励磁用コイルの端部および検出用コイルの端部が接続されているため、中継基板とカードリーダの本体基板とリード線等の信号線で接続すれば、励磁用コイルおよび検出用コイルと本体基板とを電気的に接続することが可能になる。したがって、励磁用コイルおよび検出用コイルと本体基板とを電気的に接続するために、励磁用コイルおよび検出用コイルと本体基板とが信号線によって直接、接続されている場合と比較して、励磁用コイルや検出用コイルの近くにおける信号線のふらつきを抑制することが可能になり、その結果、金属センサの異物検知精度が信号線のふらつきによって低下するのを抑制することが可能になる。また、このように構成すると、中継基板に温度センサが実装されているため、温度センサ用の基板を別途、設ける必要がなくなり、カードリーダの構成を簡素化することが可能になる。
【0017】
本発明において、カード挿入部は、カード挿入部の前方に向かって突出する中空状の突出部を備え、金属センサおよび中継基板は、突出部の内部に配置されていることが好ましい。このように構成すると、デッドスペースとなりやすい突出部の内部に金属センサおよび中継基板が配置されるため、カードリーダを小型化することが可能になる。
【0018】
本発明において、制御部は、温度センサからの出力信号を継続的に監視していることが好ましい。犯罪者によって温度センサが破壊された場合には、温度センサから信号が出力されなくなるため、このように構成すると、犯罪者によって温度センサが破壊されたことを検知することが可能になる。また、温度センサが破壊されたことを検知することで、温度センサの近傍に配置される異物検知装置が破壊されたことを推定することが可能になる。したがって、このように構成すると、温度センサから信号が出力されなくなったときに、上位装置へ異常発生信号を出力する等の異常処理を実行することで、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0019】
また、上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードに記録された磁気データの読取および/またはカードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドを備えるカードリーダにおいて、カードが挿入される挿入口が形成されるカード挿入部と、カード挿入部の前面側に配置され磁界を発生させる磁界発生装置と、磁界発生装置の近傍に配置され磁界発生装置の周囲温度を測定する温度センサと、カードリーダを制御する制御部とを備え、制御部は、温度センサで測定された磁界発生装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、温度センサで測定される磁界発生装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行し、温度センサで測定される磁界発生装置の周囲温度が上限値を超えるか下限値未満である場合、磁界発生装置に異常が生じているとして、異常処理を実行することを特徴とする。
【0020】
本発明において、たとえば、磁界発生装置は、カード挿入部の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知するための金属センサであり、制御部は、温度補正処理として、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別するために金属センサからの出力値と比較される閾値を、温度センサで測定される金属センサの周囲温度に応じて補正する。また、本発明において、制御部は、たとえば、異常処理として、カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する。
【0021】
本発明のカードリーダでは、制御部は、温度センサで測定された磁界発生装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、温度センサで測定される異物検知装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行する。そのため、たとえば、磁界発生装置が、カード挿入部の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知するための金属センサである場合には、金属センサの周囲温度が変動しても、カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたか否かを判別するために金属センサからの出力値と比較される閾値を金属センサの周囲温度に応じて補正する等の所定の温度補正処理を行うことで、カード挿入部の前面側に異物としてのスキミング用磁気ヘッドが取り付けられたことを金属センサによってより高い精度で検知することが可能になる。したがって、本発明では、磁界発生装置が金属センサである場合に、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0022】
また、たとえば、磁界発生装置が、カード挿入部の前面側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッドによるカードの磁気データの読取を妨害するための妨害磁界を発生させる妨害磁界発生装置である場合には、妨害磁界発生装置の周囲温度が変動しても、妨害磁界発生装置の励磁用コイルに印加される電圧値を妨害磁界発生装置の周囲温度に応じて補正する等の所定の温度補正処理を行うことで、スキミング用磁気ヘッドに向かって効果的な妨害磁界を発生させることが可能になる。したがって、本発明では、磁界発生装置が妨害磁界発生装置である場合であっても、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0023】
また、本発明のカードリーダでは、制御部は、温度センサで測定される磁界発生装置の周囲温度が上限値を超えるか下限値未満である場合に、磁界発生装置に異常が生じているとして、異常処理を実行している。そのため、たとえば、磁界発生装置が、カード挿入部の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知するための金属センサである場合、磁界発生装置が適切に機能しなくなるように、たとえば、犯罪者がドライヤー等を用いて磁界発生装置を加熱して、磁界発生装置の周囲温度が上限値を超えたときや、犯罪者がコールドスプレー等を用いて磁界発生装置を冷却して、磁界発生装置の周囲温度が下限値未満となったときには、カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する等の異常処理が実行される。したがって、本発明では、犯罪者が磁界発生装置に対して不正行為を行ったときに、カードリーダの取引を停止させる等の所定の処置を行うことが可能になり、その結果、磁界発生装置が金属センサである場合に、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0024】
また、たとえば、磁界発生装置が、カード挿入部の前面側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッドによるカードの磁気データの読取を妨害するための妨害磁界を発生させる妨害磁界発生装置である場合、妨害磁界発生装置の励磁用コイルを短絡させようとして、たとえば、犯罪者がドライヤー等を用いて磁界発生装置を加熱して、磁界発生装置の周囲温度が上限値を超えたときには、カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する等の異常処理が実行される。したがって、本発明では、犯罪者が磁界発生装置に対して不正行為を行ったときに、カードリーダの取引を停止させる等の所定の処置を行うことが可能になり、その結果、磁界発生装置が妨害磁界発生装置であっても、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0025】
なお、本発明において、「磁界発生装置の近傍に配置され」とは、磁界発生装置に接触はしていないが、磁界発生装置の周囲温度を適切に検出できる範囲内に配置されていることを意味する。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のカードリーダでは、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの斜視図である。
【図2】図1に示すカードリーダの前面側の概略横断面図である。
【図3】図1に示すカードリーダの制御部および制御部に関連する構成のブロック図である。
【図4】図1に示すカードリーダの前面側の構成を説明するための概略平面図である。
【図5】図4に示す金属センサの構成を説明するための図である。
【図6】図4に示す金属センサおよび中継基板の平面図である。
【図7】図5に示す金属センサの周囲温度と検出用コイルの両端部に発生する電圧値との関係を示すグラフである。
【図8】図1に示すカードリーダでの異物検知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。図2は、図1に示すカードリーダ1の前面側の概略横断面図である。図3は、図1に示すカードリーダ1の制御部13および制御部13に関連する構成のブロック図である。
【0030】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取および/またはカード2への磁気データの記録を行うための装置であり、たとえば、ATM等の所定の上位装置に搭載されて使用される。このカードリーダ1は、図1、図2に示すように、カード2が挿入される挿入口3が形成されるカード挿入部4と、カード2が搬送されるカード搬送路5が形成される本体部6とを備えている。本体部6の内部には、磁気データの読取および/または磁気データの記録を行う磁気ヘッド7と、カード2を搬送するための駆動ローラ8およびパッドローラ9とが配置されている。
【0031】
本形態では、図1等に示すX方向でカード2が搬送される。具体的には、X1方向にカード2が挿入され、X2方向にカード2が排出される。また、X方向に略直交する図1等のZ方向は、カードリーダ1に挿入されるカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに略直交する図1等のY方向は、カードリーダ1に挿入されるカード2の幅方向(短手幅方向)である。なお、以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0032】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の裏面(下面)には、磁気データが記録される磁気ストライプ2a(図4参照)が形成されている。なお、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0033】
カード挿入部4は、本体部6の前端面に取り付けられている。このカード挿入部4の詳細な構成については、後述する。
【0034】
磁気ヘッド7は、そのギャップ部がカード搬送路5に下側から臨むように配置されている。また、磁気ヘッド7は、カード2の磁気ストライプ2aに接触可能な位置に配置されている。磁気ヘッド7の上側には、対向ローラ10が配置されており、磁気ヘッド7と上下方向で対向している。駆動ローラ8は、カード搬送路5に下側から臨むように配置されている。パッドローラ9は、駆動ローラ8の上側で駆動ローラ8に対向しており、駆動ローラ8に向かって付勢されている。
【0035】
また、カードリーダ1は、カードリーダ1を制御する制御部13(図3参照)を備えている。制御部13は、カードリーダ1の本体基板14に実装されるCPU、ROMおよびRAM等の電子部品や、本体基板14に形成される回路パターンによって構成されている。この制御部13は、カードリーダ1が搭載される上位装置の制御部(上位制御部)18に接続されている。
【0036】
(カード挿入部の構成)
図4は、図1に示すカードリーダ1の前面側の構成を説明するための概略平面図である。図5は、図4に示す金属センサ21の構成を説明するための図である。図6は、図4に示す金属センサ21および中継基板23の平面図である。
【0037】
カード挿入部4は、本体部6に固定される固定部4aと、固定部4aから前側に向かって突出する突出部4bとを備えている。突出部4bは、カード挿入部4の左右方向の全域には形成されていない。具体的には、突出部4bは、カード挿入部4の左端から右端側に向かって所定の範囲に形成されており、突出部4bの右側は、固定部4aから前側へ突出する部分が存在しない切欠部4cとなっている。
【0038】
突出部4bは、中空状に形成されている。また、突出部4bは、上下方向で挿入口3を挟むように配置される上側突出部4dと下側突出部4eとを備えている。挿入口3の下側に配置される下側突出部4eの内部には、カード挿入部4の前面側に異物が取り付けられたことを検知するための異物検知装置としての金属センサ21と、温度センサ22が実装される中継基板23とが配置されている。また、突出部4bには、挿入口3にカード2が挿入されたことを検知するためのカード検知器(図示省略)が配置されている。なお、本形態の金属センサ21は、磁界を発生させる磁界発生装置でもある。
【0039】
切欠部4cは、図4に示すように、左右方向において、磁気ヘッド7が配置される位置に形成されている。すなわち、切欠部4cは、カード2の磁気ストライプ2aが通過する箇所に形成されている。本形態では、駆動ローラ8およびパッドローラ9によって排出されたカード2の前端は、切欠部4cの奥端面4fよりも前側にあるが、突出部4bの前端面よりも奥側にある。すなわち、駆動ローラ8およびパッドローラ9によって排出されたカード2の前端側は、切欠部4cに露出している。カードリーダ1からカード2が排出されると、ユーザは、切欠部4cに露出したカード2の前端側を摘んで、カード2をカードリーダ1から引き抜く。本形態の突出部4bは、カードリーダ1からカード2を引き抜く際にカード2を摘むための切欠部4cを形成するために、設けられている。
【0040】
金属センサ21は、図5に示すように、磁性材料で形成されるコア25と、コア25の中心軸CLを中心に巻回される一対の励磁用コイル26、27および検出用コイル28とを備えている。中継基板23には、励磁用コイル26、27および検出用コイル28の端部が半田付けして固定される5個の端子29(図6参照)が実装されている。
【0041】
コア25は、図5の紙面垂直方向を厚さ方向とする薄板状に形成されている。このコア25は、中心軸CLの軸方向における略中央に配置される中央コア部25aと、中心軸CLの軸方向において中央コア部25aの両端側のそれぞれに配置される一対の軸端コア部25bと、中央コア部25aと軸端コア部25bとの間に配置される鍔部25cとによって構成されている。中央コア部25aの幅は、軸端コア部25bの幅よりも広くなっている。また、鍔部25cの幅は、中央コア部25aの幅よりも広くなっている。コア25は、中心軸CLの軸方向と左右方向とが略一致するように配置されている。
【0042】
励磁用コイル26、27は、一対の軸端コア部25bのそれぞれに巻回されている。検出用コイル28は、中央コア部25aに巻回されている。励磁用コイル26、27の一端部は、中継基板23に実装される5個の端子29のうちの2個の端子29のそれぞれに接続されている。励磁用コイル26、27の他端部は、共通の1個の端子29に接続されている。検出用コイル28の両端部のそれぞれは、残りの2個の端子29のそれぞれに接続されている。
【0043】
励磁用コイル26、27の一端部は、端子29、中継基板23の回路パターン、および、リード線等のケーブル32を介して本体基板14に実装される可変抵抗33に接続されている(図3、図5参照)。可変抵抗33は、交流電源34に接続されている。励磁用コイル26、27の他端部は、端子29、中継基板23の回路パターン、および、ケーブル32を介して本体基板14のグランドパターンに接続されている(図3、図5参照)。検出用コイル28の両端部は、端子29、中継基板23の回路パターン、および、ケーブル32を介して本体基板14の電圧検出回路に接続されている(図3参照)。
【0044】
金属センサ21は、励磁用コイル26、27が発生させる磁界の変化を検出用コイル28で検出して、カード挿入部4の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知する機能を果たしている。具体的には、金属センサ21は、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45(図4参照)が取り付けられたことを検知する機能を果たしている。そのため、金属センサ21は、励磁用コイル26が発生させる磁界を表わす磁力線ML1または励磁用コイル27が発生させる磁界を表わす磁力線ML2がスキミング用磁気ヘッド45の取付位置を通過するように配置されている。具体的には、スキミング用磁気ヘッド45は切欠部4cに取り付けられると想定されるため、金属センサ21は、磁力線ML1または磁力線ML2が切欠部4cを通過するように配置されている。
【0045】
励磁用コイル26、27は、金属センサ21の検知可能領域(磁力線ML1、ML2が通過する領域)にスキミング用磁気ヘッド45がないときに、励磁用コイル26が発生させる磁界を表わす磁力線ML1の密度と、励磁用コイル27が発生させる磁界を表わす磁力線ML2の密度とのバランスが取れるように、かつ、磁力線ML1の方向と磁力線ML2の方向とが逆方向になるように励磁されている。すなわち、金属センサ21の検知可能領域にスキミング用磁気ヘッド45がないときに、励磁用コイル26が発生させる磁界と励磁用コイル27が発生させる磁界とのバランスが取れるように、可変抵抗33が調整されている。
【0046】
そのため、金属センサ21の検知可能領域にスキミング用磁気ヘッド45がないときには、理論上、検出用コイル28の両端部の間に電圧は発生していない。一方、金属センサ21の検知可能領域にスキミング用磁気ヘッド45が設置されると、その影響で、励磁用コイル26が発生させる磁界と励磁用コイル27が発生させる磁界とのバランスが崩れ、検出用コイル28の両端部の間に電圧が発生する。このように、金属センサ21は、検出用コイル28の両端部の間に発生する電圧を検出することで、スキミング用磁気ヘッド45を検知する。
【0047】
温度センサ22は、上述のように中継基板23に実装されている。具体的には、図6に示すように、中継基板23の、端子29が接続されるランド36の近傍に温度センサ22が実装されており、温度センサ22は、金属センサ21の近傍に配置されている。温度センサ22は、金属センサ21の周囲温度を測定する機能を果たしており、金属センサ21の周囲温度を適切に検出できる範囲内に配置されている。たとえば、金属センサ21と温度センサ22との距離は、1mm〜10mm程度であり、本形態では、金属センサ21と温度センサ22との距離は、5mm程度となっている。また、温度センサ22は、中継基板23の回路パターン、および、リード線等のケーブル37を介して本体基板14の温度検出回路に接続されている(図3参照)。
【0048】
(カードリーダにおける異物検知処理)
図7は、図5に示す金属センサ21の周囲温度Tと検出用コイル28の両端部に発生する電圧値Vとの関係を示すグラフである。図8は、図1に示すカードリーダ1での異物検知処理を説明するためのフローチャートである。
【0049】
以上のように構成されたカードリーダ1では、カードリーダ1にカード2が挿入されていない待機時には、図示を省略するシャッタ部材等によってカード搬送路5が閉鎖されており、カードリーダ1へのカード2の挿入ができない状態となっている。この状態で、カード挿入部4に配置されるカード検知器によって、挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、カード搬送路5が開放されて、カードリーダ1の内部へカード2が取り込まれ、カード2に対する所定の処理が実行される。
【0050】
また、カード2が挿入されていない待機時に、制御部13は、所定の時間間隔で継続的に検出用コイル28の両端部に発生する電圧値(すなわち、金属センサ21の出力値)Vを取得するとともに、取得した電圧値Vと所定の閾値とを比較する。また、制御部13は、この比較の結果に基づいて、スキミング用磁気ヘッド45等の異物がカード挿入部4の前面側に取り付けられたか否かを判別して、所定の処理を実行する。
【0051】
ここで、金属センサ21の周囲温度Tが変動すると、検出用コイル28の抵抗値等が変動するため、検出用コイル28の両端部に発生する電圧値Vは、スキミング用磁気ヘッド45等の異物と金属センサ21との距離が一定であっても、図7に示すように、金属センサ21の周囲温度Tによって変動する。具体的には、周囲温度Tが温度T0のときに電圧値Vが最も小さくなり、周囲温度Tが高くなるにしたがって、また、周囲温度Tが低くなるにしたがって、電圧値Vが大きくなる。このように、カードリーダ1の周囲温度が変動して、金属センサ21の周囲温度Tが変動した場合、電圧値Vが変動するため、電圧値Vと比較される閾値が一定であると、制御部13は、スキミング用磁気ヘッド45がカード挿入部4の前面側に取り付けられたか否かを適切に判別することができない。
【0052】
そこで、本形態では、制御部13を構成するROM等の記憶手段に、金属センサ21の周囲温度Tに応じて周囲温度Tに1対1で対応する閾値が、たとえば、テーブル化されて記憶されている。また、本形態の制御部13は、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tに応じて、電圧値Vと比較される閾値を補正する温度補正処理を実行している。
【0053】
また、本形態では、金属センサ21が適切に機能する仕様上の金属センサ21の周囲温度Tの上限値は温度T1であり、金属センサ21が適切に機能する仕様上の金属センサ21の周囲温度Tの下限値は温度T2である。ここで、カードリーダ1が使用される環境下において、一般に、周囲温度Tが温度T1を超えたり、温度T2未満となることはない。そのため、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tが温度T1を超えるか、あるいは、温度T2未満となった場合には、金属センサ21が適切に機能しなくなるように、たとえば、犯罪者がドライヤー等を用いて金属センサ21を加熱したり、コールドスプレー等を用いて金属センサ21を冷却したりする等の犯罪行為があったと推定される。
【0054】
そこで、本形態では、制御部13は、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tが温度T1を超えるか温度T2未満となった場合に、金属センサ21に異常が生じているとして、異常処理を実行する。以下、上述の温度補正処理および異常処理を含むカードリーダ1の異物検知処理を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、たとえば、図7におけるT0は25℃であり、T1は60℃であり、T2は−25℃である。
【0055】
カードリーダ1にカード2が挿入されていない待機時に、制御部13は、所定の時間間隔で継続的に、検出用コイル28の両端部に発生する電圧値Vを取得する(ステップS1)。その後、制御部13は、温度センサ22での測定結果に基づいて、金属センサ21の周囲温度Tを取得して(ステップS2)、この周囲温度Tが、温度T1以下でかつ温度T2以上であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0056】
ステップS3において、周囲温度Tが、温度T1以下でかつ温度T2以上である場合、制御部13は、制御部13の記憶手段から周囲温度Tに応じた閾値を取得して(ステップS4)、ステップS1で取得された電圧値Vが閾値を超えているか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5において、電圧値Vが閾値以下である場合には、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられていないとして、異物検知処理が終了する。
【0057】
一方、ステップS5において、電圧値Vが閾値を超えている場合には、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたとして、制御部13は、異常処理を実行する(ステップS6)。具体的には、制御部13は、上位制御部18へ異常発生信号を出力する。すなわち、制御部13は、カードリーダ1が搭載される上位装置へ異常発生信号を出力する。
【0058】
異常発生信号を受け取った上位制御部18は、スキミングを防止するため、たとえば、アラームを発生させる。また、異常発生信号を受け取った上位制御部18は、スキミングを防止するため、たとえば、所定の制御指令を制御部13へ出力し、制御指令を受け取った制御部13は、カード挿入部4に配置されるカード検知器によって挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されても、カード搬送路5が閉鎖された状態が維持されてカードリーダ1へカード2が挿入されないように、カードリーダ1を制御する。
【0059】
また、ステップS3において、周囲温度Tが、温度T1を超えているか、あるいは、温度T2未満である場合には、上述のように、犯罪行為があったと推定されるため、ステップS6へ進み、制御部13は、異常処理を実行する。なお、本形態の制御部13は、温度センサ22からの出力信号を継続的に監視している。
【0060】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、金属センサ21の近傍に温度センサ22が配置されており、温度センサ22で測定された金属センサ21の周囲温度Tが温度T1以下でかつ温度T2以上である場合、制御部13は、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tに応じて、電圧値Vと比較される閾値を補正している。そのため、金属センサ21の周囲温度Tが変動して電圧値Vが変動しても、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたことを金属センサ21によってより高い精度で検知することが可能になる。したがって、本形態では、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0061】
また、本形態では、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tが温度T1を超えるか、あるいは、温度T2未満である場合に、制御部13は、犯罪者による犯罪行為があったとして、上位制御部18へ異常発生信号を出力している。また、上位制御部18は、アラームを発生させる等の所定の処理を実行している。そのため、本形態では、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0062】
本形態では、金属センサ21の近傍に温度センサ22が配置されている。そのため、温度センサ22を用いて、金属センサ21の励磁用コイル26、27の温度が許容値を超えているか否かを検知することが可能になる。また、温度センサ22での検知結果に基づいて、励磁用コイル26、27の温度が許容値を超えている場合には、励磁用コイル26、27の断線を防止するため、励磁用コイル26、27へ印加される電圧の値を下げたり、励磁用コイル26、27への電圧の印加を停止する等の所定の処置を取ることが可能になる。したがって、本形態では、たとえば、励磁用コイル26、27にヒューズを接続する等の励磁用コイル26、27の異常加熱対策を別途、講じる必要がなくなる。その結果、たとえば、励磁用コイル26、27に接続されるヒューズに起因する金属センサ21の検知精度の低下を防止することが可能になる。
【0063】
本形態では、制御部13は、温度センサ22からの出力信号を継続的に監視している。犯罪者によって温度センサ22が破壊された場合には、温度センサ22から信号が出力されなくなるため、本形態では、制御部13が温度センサ22からの出力信号を継続的に監視することで、犯罪者によって温度センサ22が破壊されたことを検知することが可能になる。また、温度センサ22が破壊されたことを検知することで、温度センサ22の近傍に配置される金属センサ21が破壊されたことを推定することが可能になる。したがって、本形態では、温度センサ22から信号が出力されなくなったときに、制御部13が異常処理を実行することで、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0064】
本形態では、励磁用コイル26、27の端部および検出用コイル28の端部は端子29に接続され、端子29は中継基板23に実装されている。そのため、中継基板23と本体基板14とケーブル32で接続すれば、励磁用コイル26、27および検出用コイル28が本体基板14に電気的に接続される。したがって、励磁用コイル26、27および検出用コイル28と本体基板14とを電気的に接続するために、励磁用コイル26、27および検出用コイル28と本体基板14とがケーブル32によって直接、接続されている場合と比較して、本形態では、励磁用コイル26、27や検出用コイル28の近くにおけるケーブル32のふらつきを抑制することが可能になる。その結果、本形態では、ケーブル32のふらつきの影響で、金属センサ21の異物検知精度が低下するのを抑制することが可能になる。
【0065】
また、本形態では、中継基板23に温度センサ22が実装されており、金属センサ21に温度センサ22が直接、取り付けられていない。そのため、本形態では、温度センサ22の影響で、金属センサ21の異物検知精度が低下するのを抑制することが可能になる。
【0066】
本形態では、金属センサ21および中継基板23は、カード挿入部4の突出部4bの内部に配置されている。すなわち、本形態では、デッドスペースとなりやすい突出部4bの内部に金属センサ21および中継基板23が配置されている。そのため、本形態では、カードリーダ1を小型化することが可能になる。また、本形態では、中継基板23に温度センサ22が実装されているため、温度センサ22用の基板を別途、設ける必要がない。したがって、本形態では、カードリーダ1の構成を簡素化することが可能になる。
【0067】
(他の実施の形態)
上述した形態および変形例は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0068】
上述した形態では、金属センサ21が、カード挿入部4の前面側に異物が取り付けられたことを検知するための異物検知装置として突出部4bの内部に配置されている。この他にもたとえば、発光部と受光部とを備える光学式センサが異物検知装置として突出部4bの内部に配置されても良い。この場合には、スキミング用磁気ヘッド45が取り付けられると想定される位置へ向かって発光部から光が射出されるとともに、スキミング用磁気ヘッド45で反射された光が受光部に入射するように、光学式センサが配置される。そのため、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられると、発光部から射出された光は、スキミング用磁気ヘッド45で反射された後、受光部に入射する。なお、この場合には、たとえば、特開2007−265189号公報に記載されているように、発光部は、赤外光等の非可視光を射出する。
【0069】
また、静電容量の変化に基づいてカード挿入部4の前面側に異物が取り付けられたことを検知する静電容量センサが異物検知装置として突出部4bの内部に配置されても良い。
【0070】
光学式センサや静電容量センサの周囲温度が変動すると、光学式センサや静電容量センサからの出力値が変動するため、この場合であっても、上述した形態と同様の温度補正処理(すなわち、光学式センサや静電容量センサの周囲温度に基づく閾値の補正)を制御部13が実行することで、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたことを光学式センサや静電容量センサによってより高い精度で検知することが可能になり、その結果、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0071】
上述した形態では、金属センサ21は、カード挿入部4の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知する機能を果たしている。この他にもたとえば、金属センサ21は、カード挿入部4の前面側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッド45によるカード2の磁気データの読取を妨害するための妨害磁界を発生させる妨害磁界発生装置としての機能を果たしても良い。この場合には、金属センサ21は、励磁用コイル26、27を励磁させて、妨害用の磁界を発生させる。
【0072】
また、この場合には、カード2が挿入されていない待機状態であって、かつ、金属センサ21がスキミング用磁気ヘッド45等の金属部材を検知していない状態で、カード挿入部4に配置されるカード検知器によって、挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、金属センサ21は、たとえば、挿入口3から挿入され、カードリーダ1の内部に取り込まれたカード2が排出されるまで、妨害用の磁界を発生させる。あるいは、金属センサ21は、挿入口3から挿入され、カードリーダ1の内部に取り込まれたカード2が排出されるまでの間であって、カード2の搬送が行われている間、妨害用の磁界を発生させる。なお、金属センサ21によってスキミング用磁気ヘッド45等が検知されたときにのみ、金属センサ21が妨害用の磁界を発生させても良い。
【0073】
金属センサ21が妨害磁界発生装置として機能する場合、励磁用コイル26、27に印加される電圧値が一定であっても、金属センサ21の周囲温度Tが変動すると、金属センサ21が発生させる妨害磁界の強度が変動する。そのため、この場合には、制御部13が、温度センサ22で測定された金属センサ21の周囲温度Tに応じて励磁用コイル26、27に印加される電圧値を補正する温度補正処理を実行することで、スキミング用磁気ヘッド45に向かって効果的な妨害磁界を発生させることが可能になる。したがって、金属センサ21が妨害磁界発生装置として機能する場合であっても、温度補正処理を実行することでスキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0074】
なお、金属センサ21が妨害磁界発生装置としてのみ機能する場合であっても、励磁用コイル26、27を短絡させようとして、たとえば、犯罪者がドライヤー等を用いて金属センサ21を加熱するおそれがある。しかし、この場合であっても、金属センサ21の周囲温度Tが温度T1を超えたときに、制御部13が上位制御部18へ異常発生信号を出力する等の異常処理を実行することで、犯罪者が金属センサ21に対して犯罪行為を行ったときに、カードリーダ1の取引を停止させる等の所定の処置を行うことが可能になり、その結果、スキミングを効果的に防止することが可能になる。
【0075】
上述した形態では、制御部13は、カード挿入部4の前面側にスキミング用磁気ヘッド45が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際の温度補正処理として、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tに応じて、電圧値Vと比較される閾値を補正している。この他にもたとえば、制御部13は、異物検知処理の際の温度補正処理として、温度センサ22で測定される金属センサ21の周囲温度Tに応じて、検出用コイル28の両端部に発生する電圧値Vの増幅率(ゲイン)を補正しても良い。
【0076】
上述した形態では、ステップS6において、制御部13は、上位制御部18へ異常発生信号を出力している。この他にもたとえば、制御部13は、ステップS6において、上位制御部18へ異常発生信号を出力せずに、カード搬送路5が閉鎖された状態を維持する等の異常処理を実行しても良い。
【0077】
上述した形態では、制御部13の記憶手段に、金属センサ21の周囲温度Tに応じて周囲温度Tに1対1で対応する閾値がテーブル化されて記憶されており、ステップS4では、この記憶手段から閾値が取得されている。この他にもたとえば、制御部13の記憶手段に所定の数式が記憶されるとともに、ステップS2で取得された周囲温度Tと制御部13の記憶手段に記憶された数式とから、ステップS4において、制御部13が閾値を計算して取得しても良い。
【0078】
上述した形態では、金属センサ21は、励磁用コイル26、27と検出用コイル28とを備えている。この他にもたとえば、金属センサ21は、励磁および検出兼用のコイルを備えていても良い。また、金属センサ21が妨害磁界発生装置としてのみ機能する場合には、金属センサ21は、検出用コイル28を備えていなくても良い。
【0079】
上述した形態では、突出部4bは、カード挿入部4の左端から右端側に向かって所定の範囲に形成されており、突出部4bの右側が、固定部4aから前側へ突出する部分が存在しない切欠部4cとなっている。この他にもたとえば、突出部4bが、カード挿入部4の左端から右端側に向かって所定の範囲に形成される第1突出部と、カード挿入部4の右端から左端側に向かって所定の範囲に形成される第2突出部とによって構成されるとともに、第1突出部と第2突出部との間が、固定部4aから前側へ突出する部分が存在しない切欠部4cとなっていても良い。
【0080】
上述した形態では、カードリーダ1は、駆動ローラ8およびパッドローラ9を備えるカード搬送式のカードリーダであるが、本発明の構成が適用されるカードリーダは、ユーザが手動でカード2を移動させながら、磁気データの読取や記録を行う手動式のカードリーダであっても良い。たとえば、本発明の構成が適用されるカードリーダは、カードリーダ内へカード2を差し込む際、あるいは、カードリーダからカード2を引き抜く際に磁気データの読取や記録を行ういわゆるディップ式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0081】
1 カードリーダ
2 カード
3 挿入口
4 カード挿入部
4b 突出部
7 磁気ヘッド
13 制御部
21 金属センサ(異物検知装置、磁界発生装置)
22 温度センサ
23 中継基板
25 コア
26、27 励磁用コイル
28 検出用コイル
29 端子
45 スキミング用磁気ヘッド(異物)
T 周囲温度
V 電圧値(出力値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録された磁気データの読取および/または前記カードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドを備えるカードリーダにおいて、
前記カードが挿入される挿入口が形成されるカード挿入部と、前記カード挿入部の前面側に異物が取り付けられたことを検知するための異物検知装置と、前記異物検知装置の近傍に配置され前記異物検知装置の周囲温度を測定する温度センサと、前記カードリーダを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記温度センサで測定された前記異物検知装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、前記カード挿入部の前面側に前記異物が取り付けられたか否かを判別する異物検知処理の際に前記温度センサで測定される前記異物検知装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行し、前記温度センサで測定される前記異物検知装置の周囲温度が前記上限値を超えるか前記下限値未満である場合、前記異物検知装置に異常が生じているとして、異常処理を実行することを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度補正処理として、前記カード挿入部の前面側に前記異物が取り付けられたか否かを判別するために前記異物検知装置からの出力値と比較される閾値を、前記温度センサで測定される前記異物検知装置の周囲温度に応じて補正することを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記制御部は、前記異常処理として、前記カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力することを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記異物検知装置は、金属材料を含む前記異物が前記カード挿入部の前面側に取り付けられたことを検知するための金属センサであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記金属センサは、磁性材料で形成されるコアと、前記コアに巻回される励磁用コイルおよび検出用コイルとを備え、
前記温度センサは、前記励磁用コイルの端部および前記検出用コイルの端部が接続される端子が実装された中継基板に実装されていることを特徴とする請求項4記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記カード挿入部は、前記カード挿入部の前方に向かって突出する中空状の突出部を備え、
前記金属センサおよび前記中継基板は、前記突出部の内部に配置されていることを特徴とする請求項5記載のカードリーダ。
【請求項7】
前記制御部は、前記温度センサからの出力信号を継続的に監視していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項8】
カードに記録された磁気データの読取および/または前記カードへの磁気データの記録を行う磁気ヘッドを備えるカードリーダにおいて、
前記カードが挿入される挿入口が形成されるカード挿入部と、前記カード挿入部の前面側に配置され磁界を発生させる磁界発生装置と、前記磁界発生装置の近傍に配置され前記磁界発生装置の周囲温度を測定する温度センサと、前記カードリーダを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記温度センサで測定された前記磁界発生装置の周囲温度が所定の上限値以下でかつ所定の下限値以上である場合、前記温度センサで測定される前記磁界発生装置の周囲温度に応じた温度補正処理を実行し、前記温度センサで測定される前記磁界発生装置の周囲温度が前記上限値を超えるか前記下限値未満である場合、前記磁界発生装置に異常が生じているとして、異常処理を実行することを特徴とするカードリーダ。
【請求項9】
前記磁界発生装置は、前記カード挿入部の前面側に金属材料を含む異物が取り付けられたことを検知するための金属センサであり、
前記制御部は、前記温度補正処理として、前記カード挿入部の前面側に前記異物が取り付けられたか否かを判別するために前記金属センサからの出力値と比較される閾値を、前記温度センサで測定される前記金属センサの周囲温度に応じて補正することを特徴とする請求項8記載のカードリーダ。
【請求項10】
前記制御部は、前記異常処理として、前記カードリーダが搭載される上位装置へ異常発生信号を出力することを特徴とする請求項8または9記載のカードリーダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−37555(P2013−37555A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173551(P2011−173551)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】