カードレス現金引出しシステムおよびカードレス現金引出し処理方法
【課題】 金融機関に設置された現金自動預払機等で、キャッシュカードを使用せずに現金を引出せるようにするカードレス現金引出しシステム、方法を提供する。
【解決手段】 登録者端末は、口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、管理サーバに送信する手段を備え、管理サーバは、前記取引条件を登録者端末から受信して記憶し、現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える。前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む。
【解決手段】 登録者端末は、口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、管理サーバに送信する手段を備え、管理サーバは、前記取引条件を登録者端末から受信して記憶し、現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える。前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関に設置された現金自動預払機等で、キャッシュカードを使用せずに現金を引出せるようにするカードレス現金引出しシステムおよびカードレス現金引出し処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャッシュカードを持参していなくとも携帯電話機等を用いて金融機関に設置されたATM(Automated Teller Machine;現金自動預払機または自動取引装置)で現金を引き出せるシステムや方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、利用者の携帯電話端末の現在位置に関するデータを取得した管理コンピュータが、携帯電話端末に利用希望地域の現金自動預払機リストを送信し、利用者が選択した現金自動預払機の識別子,預金口座識別子,引出希望金額,携帯電話端末の現在位置から利用者が選択した現金自動預払機までの所要時間から算出した取引予定時間,生成したパスワード等の取引条件管理データを用いて、設定された取引予定時間のみの取引を許容するバンキング処理方法、システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、携帯電話について登録された利用者固有のID,パスワード,メールアドレス,生年月日,携帯電話固有識別番号によって構成される属性情報を用いて、属性情報が一部または全部一致した場合、画像化した識別番号を利用者の携帯電話に送信し、その表示された画像を現金自動預払機が読み取って認証することによりカードレスで決済できるシステム、決済方法等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−303057号公報
【特許文献2】特開2009−245272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されたシステムや方法は、いずれも利用者がキャッシュカードを持参し忘れた場合に、あらかじめ登録されておいた携帯電話機の認証データによって認証を行い、あくまでも利用者が所有する口座から緊急的に引出しを行うものである。また、これらのシステムでは、キャッシュカードの代わりに携帯電話機を保持していないと利用できないという課題もある。
【0007】
キャッシュカードを保持してない場合にも現金を引出したいという場面は、単にキャッシュカードを持参し忘れた場合だけでなく、口座保有者とは別の人間でそもそもキャッシュカードを保持できない人間(例えば親戚や友人)に緊急に現金で送金したい場合や、保護者が、遠方の子供や孫に仕送りをしたいという場合にも生じる。このような人間に家族カードや代理人カードを持たせるのは現実的ではないし、仮にキャッシュカードを持たせると口座の取引状況や口座残高等の個人情報が知られる上、出金する金額や出金の時期も制限できないという課題がある。また、相手方の人間が、入院中や老人、子供等の場合、携帯電話機を保持してないということも十分に有りうる。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑み、出金者にキャッシュカードを持たせることなく、また出金者が必ずしも携帯電話機等を保持してなくとも、登録した特定の出金者にカードレスで口座保有者の口座から現金の出金を許可するシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一の発明では、以下のような解決手段を備えた銀行システムを提供する。
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機(ATM)と、管理サーバとがネットワークを介して接続された銀行システムであって、前記登録者端末は、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する手段を備え、前記管理サーバは、前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する手段と、前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える、ことを特徴とする銀行システム。
【0010】
上記発明によれば、口座保有者が特定の出金者にあらかじめ出金を許可する取引条件を定め、その取引条件を登録端末を用いて管理サーバに登録しておくだけで、前記出金者がその口座のキャッシュカードを持たずとも、また他の携帯端末など持つことなく、取引条件に合致するデータをATMから入力することにより現金での出金が可能となる。
【0011】
上記発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける前記現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む。
【0012】
上記発明によれば、取引条件に出金者の名前、出金許容額の他、現金を引き出すことのできるATMの場所、引き出しが可能な日時、一度限り有効なワンタイム暗証番号を口座保有者が指定できるので、出金要求を受けた際に、正当な出金者であるかどうかをシステムが判断しやすくなり、万一、不正な利用者が登録データを入手しても、指定時間に指定場所に行くことには躊躇するので犯罪抑止効果が期待できる。
【0013】
上記発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記出金許容額と一致した場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【0014】
上記発明によれば、出金者が現金自動預払機において引き出すことができる金額は、登録者があらかじめ設定しておいた出金許容額に一致する場合にのみに限られる。こうすることで、出金許容額そのものにも暗証番号の役目をもたせることができる。
【0015】
本発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記ワンタイム暗証番号に所定のルールで関連付けられた数値である場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【0016】
上記発明によれば、出金者が現金自動預払機において引き出す金額は、ワンタイム暗証番号に関連付けられた数値に一致する場合にのみ限られる。関連付けのルールはあらかじめ定めておき、例えば、ワインタイム暗証番号に+nした数値または−nした数値、あるいは暗証番号をm倍またはm分の1にした数値等の金額のみが出金が許される。こうすることで、出金者が出金額とワンタイム暗証番号を関連付けて記憶できるようになるので、ワンタイム暗証番号を忘れてしまう危険性を少なくすることができる。
【0017】
上記発明はさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金許容額には、前記出金者が出金可能な総額と、前記総額の範囲で分割して出金が可能な金額を含む。
【0018】
上記発明によれば、口座保有者は、出金を許可する総額と、その出金総額を何回かに分けて出金する場合の金額を設定できるので、家族等に毎月一定額を仕送りをするような場合等に、出金者が一度で使いすぎることを防止することができ、しかもそれを一度の設定登録で済ますことができる。
【0019】
上記の発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金許容額が分割して出金可能に設定されている場合、前記出金者が出金の際に次回出金時のワンタイム暗証番号を、前記現金自動預払機から設定させる手段。
【0020】
上記発明によれば、出金者が分割出金する際、次回引き出す際のワンタイム暗証番号を設定できる。分割出金を長期に設定する場合、総額が大きくなりがちであるが、このようにすることで、出金者が出金の際の機密性保持の意識が高まり、口座保有者からある程度の信頼を受けていると実感できる。また、万一、登録データが盗まれても、登録データには、出金者が設定した暗証番号は含まれないので、多額の金額を不正に出金されることが防止できる。
【0021】
上記発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記ワンタイム暗証番号を設定する際に、前記出金者が前記現金自動預払機で出金した金額または前記出金許容額の残り金額を、所定のルールで関連づけた数字で前記ワンタイム暗証番号を生成する手段。
【0022】
上記発明によれば、出金者が設定するワンタイム暗証番号を出金する金額を所定のルールで関連づけた数字とすることで、出金者は、今回の出金操作と関連して暗証番号を記憶できるので暗証番号を忘却しにくくすることができる。
【0023】
上記発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者名は、前記出金者の過去の愛称、ニックネーム、または前記出金者の氏名に任意の文字列を追加または変換した文字列を含む。
【0024】
上記発明によれば、出金者がATMで入力するのは、出金者の氏名である必要はなく、口座保有者と出金者のみが知り得る幼少時や学生時代等の愛称やニックネーム、または氏名に特定の文字列を付加したものあるいは特定の文字列で変換したものとすることで、出金者名を第二の暗証番号とすることができ、機密性を高めることができる。
【0025】
また、上記の第一の発明のシステムは、以下のように、金融機関における現金引出し処理方法の発明としても捉えることができる。
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとを用いて現金の出金管理を行う現金引出し処理方法であって、前記登録者端末において、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する段階と、前記管理サーバにおいて、前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する段階と、前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信する段階と、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する段階と、前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える段階とを含む、ことを特徴とする、現金引出し処理方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出金者にキャッシュカードを持たせることなく、また出金者が必ずしも携帯電話機等を保持してなくとも、登録した特定の出金者にカードレスで口座保有者の口座から一定の条件下で現金での出金を許可することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るカードレス出金システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録情報およびカードレス出金引出情報を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る登録者端末20とカードレス出金管理サーバ10のやり取りを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の内部処理手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の別の内部処理手順を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録データ確認画面の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(1)を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(2)を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(3)を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るカードレス引き出し画面の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係るカードレス出金システム1の概略を示す図である。本システムでは、カードレス出金管理サーバ10(単に管理サーバと呼ぶこともある)が口座保有者の登録者端末20とネットワーク40を介して接続され、さらにカードレス出金管理サーバ10は、専用ネットワーク41(一部に公衆回線を含んでいてもよい)を介して金融機関をはじめとして,駅,病院,公共機関,デパート,スーパー,コンビニエンス・ストア等(以下、金融機関等)に設置された複数のATM30に接続されている。なお、登録者端末20は、登録者側のデータを入力するための手段を有する端末であるが、必ずしも登録者が端末を所持していなくとも金融機関等の店舗で登録者の依頼を受けた店員やオペレータが入力するための端末をも意味する。
【0030】
カードレス出金管理サーバ10は、本システムの管理サーバとして機能し、カードレス出金登録情報データベース(以下、DB)11として、登録者の口座番号ごとにカードレス取引登録時の取引IDとカードレス取引条件を記録する手段を有する。また、カードレス出金管理サーバ10は、カードレス送金引出情報DB12として、登録者の口座番号ごとに出金時の取引IDと紐付けされた出金情報を記録する手段を有する。なお、カードレス出金登録情報DB11とカードレス出金引出情報DB12は、別々のDBとして構成してもよいし、一つのDBとして構成してもよい。
【0031】
カードレス出金登録情報11に含まれる登録時の取引IDは、口座所有者が特定の相手に対してカードレス出金を登録する際にシステムが取引条件ごとに生成する固有のIDである。出金者が異なれば別の取引IDが発行されるし、出金者が同じでも取引条件が異なれば別の取引IDが発行される。出金時の取引IDは、上記の取引IDと紐付けされた、出金操作ごとに発生する取引IDである。本システムでは、一つの登録時の取引IDに対して、分割して出金を行うこともできるようにするため出金時の取引IDは、別個のものとして取り扱うようにすることが望ましい。すなわち、一つの登録時取引IDに一つまたは複数の出金時取引IDが存在しうる。
【0032】
カードレス出金登録情報DB11に含まれる取引条件とは、口座保有者が登録時にこれからカードレス出金を許可するための条件を定めた情報であり、後述するように、出金者名,出金許容額,ワンタイム暗証番号(使い捨て暗証番号)の他、カードレス出金を許可する取引場所(ATMの設置場所)や取引日時等も指定することができる。また、カードレス出金引出情報DB12に含まれる出金情報には、後述するように、取引日時,取引場所,出金者名,引き出し金額,取引状況(正常か異常か、異常の場合はその理由)が記録される。
【0033】
カードレス出金管理サーバ10の機能は、典型的には、メモリ(RAM;Random
Access Memory,ROM; Read Only Memory)や記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムが読み出され、サーバ装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)で実行され、実行されたプログラムがメモリや記憶装置に格納されたDBから必要なデータを読み書きし、場合によっては、その他関連するハードウェアを制御することによって実現される。
【0034】
登録者端末20は、金融機関等とネットワークで接続された一般的な端末であり、PC(Personal
Computer)や携帯電話であってよい。本システムにおいて出金者は、口座保有者となんらかの連絡手段を持つ限り、必ずしも本システムに繋がる端末を保持してなくともよい。このようにすることで、あらかじめシステムに出金者側からの登録を不要にし、原理的には誰に対しても出金許可をすることができる。
【0035】
図2は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録情報およびカードレス出金引出情報を示す図である。図2(a)には、カードレス出金登録情報を構成するテーブルの一例が、図2(b)には、カードレス出金引出情報を構成するテーブルの一例を示す。なお、テーブル内のデータの持ち方、構成方法自体は任意である。
【0036】
カードレス出金登録情報は、登録者が所有する口座番号に対して、取引条件と取引条件ごとに生成された取引IDが記録されたテーブルである。取引条件には、出金を許可する出金者名の他,出金許容額,ワンタイム暗証番号,取引場所,取引日時等が含まれる。出金者名は必ずしも本名でなくとも、ニックネーム等でもよい。本システムでは、出金時に登録した出金者名と同じ文字列を入力することにより出金者名を特定する。最近の振込み詐欺で子供や孫の名前をかたり親や祖父母からお金を騙し取りとるような手口を防ぐため、出金者名は、実名よりむしろ登録者と出金者と間でのみが知りうる幼少時や過去のニックネーム等が好ましい。また、出金者名に特定の文字列を付加したり、特定の文字列を削除または変換したり、あるいは出金者名自体を任意の文字列とし、第二のパスワードとして使用することができる。もちろん、現在のATMで広く普及している指紋等の生体認証で本確認を行う仕組みと組み合わせることも可能であるが、その場合は、出金者の登録があらかじめ必要となる。
【0037】
出金許容額は、図示するように、総額と毎月の額のように分けて登録してもよい。こうすると、毎月の一定額の仕送りのような場合にも登録者は一度で登録で対応できるので便利である。一回のみでの出金を許可する場合は、図2(a)の上段で示すように、出金許容額(総額)と出金許容額(毎月)が一致させるか、毎月の金額をゼロにする。複数に分けて出金を許可する場合は、図2(a)の下段で示すように、総額と毎月の額に分割して登録することができる。この例では、総額60万円で毎月5万円ずつ、引出可能期間は12ヶ月間で設定されている。
【0038】
ワンタイム暗証番号(使い捨て暗証番号)は、取引条件が設定されると、システムにより生成される一回限り使用可能な暗証番号である。もちろん、登録者は、生成された暗証番号を登録画面上で変更してもよい。いずれにしろ、登録者はこのワンタイム暗証番号を出金者にあらかじめ伝えておく必要がある。連絡手段は、電話か直接会っての口頭で、できるだけ書面化しないほうが望ましい。
【0039】
また、出金許容額は、単なる出金限度額としてだけでなく、出金者がこの額でしか出金できない額として定めてもよい。例えば、出金許容額に端数をつけて50,001円と定めると、出金者はATMではこれに一致する金額でしか出金することできない。こうすることで、出金許容額にも暗証番号の役目をもたせることができる。もちろん、出金許容額と、「出金許可額」とを分けて定義し、前者はあくまで全体での出金許容枠、後者は一度に出金できる許可額としてもよい。
【0040】
また、ワンタイム暗証番号を、上記した「出金許可額」と関連付けさせることもできる。具体的には、出金許容額をワンタイム暗証番号に所定の演算をして決定したり、逆に、ワインタイム暗証番号を出金許可額に対して所定の演算をして生成する。例えば、ワインタイム暗証番号が1234なら、出金許可額は、10倍して12,340円とする。逆に、出金許可額を50,000円としたい場合は、例えば、ワインタイム暗証番号を+1したり、あるいは−1したりして、50001か49999とする。ただし、この演算は、ワンタイム暗証番号の桁数とATMの硬貨の出金単位を考慮して決められる。このようにすることで、出金者が出金額とワンタイム暗証番号を関連付けて記憶できるようになるので、ワンタイム暗証番号を忘れてしまう危険性を少なくすることができる。また、この演算を「Null(なし)」として、出金許可額=ワンタイム暗証番号とし、ワンタイム暗証番号自体の入力を省略できるようにすることもできる。なお、このようなワンタイム暗証番号と出金許可額と関連付けの演算ルールは、登録者と出金者で推測されないように、あらかじめ定めておく。
【0041】
図2(a)における取引日時、取引場所は、出金者が出金可能な期間と取り引き可能な場所をあらかじめ登録者が指定できることを示している。これにより、あらかじめ指定した出金者以外の者に対する不正利用防止の手段とすることができる。取引日時とは、出金者が実際にATMに行って出金できる日時あるいはその期間であり、取引場所とは、ATMの設置されている場所情報、典型的には、出金者の自宅,通勤先,通学先等の近傍の銀行やコンビニの店舗名等である。旅行先や入院先の近傍のATMであってもよい。登録者はあらかじめ、出金者と連絡をとり出金可能な日時と場所の組み合わせを相談し、登録時にシステムに入力しておく。取引場所と取引日時は複数登録できるものとするが、出金者はたとえワンタイム暗証番号を知っていても、定められた場所と期間の組み合わせが一致した場合にしか出金を行うこができない。このことは、不正な出金者にとっては、出金できる場所、日時がきわめて限定されるので犯罪防止にはきわめて有効である。
【0042】
図2(b)には、出金者が本システムで実際に出金した記録が、カードレス出金引出情報として保持されることが示されている。出金情報として、カードレス出金登録時に発行された取引IDごとに、実際に引き出された取引日時・取引場所,ATMに入力した出金者名,実際に引き出された引き出し金額,および取引状況が記録される。図2(b)の下段で示すように、一つの登録時の取引ID(この例ではAAAA−0002)に対し、複数に分けて出金することが許可されている場合は、登録時の取引IDにサフィックスをつけてこれを出金時の取引ID(この例ではAAAA−002−001)としてもよい。
【0043】
取引が正常に行われた場合には、取引情報欄には、「正常」と記録されるが、「異常」があった場合には、その理由(出金者名不一致、ワンタイム暗証番号不一致、取引場所不一致、取引日時不適、出金許容額オーバ等)が一または複数記録される。「異常」な取引があった場合、カードレス出金管理サーバ10は、その旨をあらかじめ登録された一または複数の手段で登録者に通知し、その取引IDにおけるワンタイム暗証番号を消滅させる。ワンタイム暗証番号の再発行には、登録者がデータの再登録するか更新が必要である。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る登録者端末20とカードレス出金管理サーバ10のやり取りを示す図である。なお、ここで登録者端末20とは、登録者側のデータを入力する端末(PCや携帯電話機等)であるが、必ずしも登録者が所持していなくとも金融機関等の店舗で登録者の依頼を受けた店員やオペレータ等が入力するための端末をも意味する。
【0045】
まず、本システムへの登録者は、登録者端末20(以下、端末)からカードレス出金管理サーバ10(以下、管理サーバ)に対しログイン要求およびログインデータ(ログインID,パスワード)の送信を行い、本人認証を受ける。本人認証は、印鑑認証や生体認証など他の方法と組合わせてもよい。管理サーバは本人認証OKの場合、メインメニュー画面を端末に送信し、端末は送られたメインメニュー画面を表示する。
【0046】
登録者が、表示されたメインメニュー画面から「カードレス出金サービス」を選択すると、その要求が管理サーバに送信され、管理サーバからカードレス出金登録画面が返信されて端末に表示される。このカードレス出金登録画面の例については後述する。
【0047】
登録者が、登録画面で必要なデータ(自己の保有する口座番号と、許可する出金者氏名またはニックネーム,出金許容額,取引場所,取引日時などの取引条件)を入力すると、管理サーバではその登録データの妥当性を検証し、所定の条件に合致すれば認証正常とし、取引IDとワンタイム暗証番号を生成して、端末の登録画面に送信する。端末側では、登録者が登録データ確認画面において登録データを確認し、必要であれば修正して、最終的にOKであれば管理サーバは登録データをDBに保存する。
【0048】
図4は、本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の内部処理手順を示すフロー図である。
【0049】
まず、カードレス出金管理サーバ10は、ステップS10において、ATM30からカードレス出金サービス要求を受信する。そしてステップS11において、入力された口座番号からカードレス出金の登録データがあるかどうかを検索する。
【0050】
登録データがなければ(ステップS12;No)、カードレス出金管理サーバ10は、しかるべきエラーメッセージをATM30に表示させ、取引記録を保存して終了するためにステップS18,S19へ処理を移す。登録データがあれば(ステップS12;Yes)、ATM30に入力された出金者名が登録時のデータと一致するか、そのATM30の位置情報が、登録時に指定された取引場所であるか、また、現在時刻が、登録された取引日時の範囲内かどうかをチェックする(ステップS13)。チェックしたデータがすべて一致しなければ(ステップS13;No)、ステップS18へ処理を移す。
【0051】
チェックしたすべてのデータが一致すれば(ステップS13;Yes)、カードレス出金管理サーバ10は、さらに入力されたワンタイム暗証番号をチェックし、一致しなければ(ステップS14;No)、再度入力を求め、所定回数不一致であれば(ステップS16;No)、ステップS18に移り、処理を終了する。
【0052】
ワンタイム暗証番号が一致すれば(ステップS14;Yes)、カードレス出金管理サーバ10は、さらに出金者から要求された出金額は登録データの出金許容範囲にあるかどうかをチェックし、許容範囲内であれば(ステップS15;Yes)、正当な取引であると判断し、ステップS17において、ATM30に対して出金処理実行の許可を与える。ATM30はその許可を受けて、現金の払い出しを行う。ステップS15において、出金額が許容範囲外の場合は、再入力を出金者に求めさせ、ステップS16において所定回数不一致が続けば、ステップS18において、取引利用終了のメッセージ(エラーメッセージ)を送信する。取引が正常であっても異常であってもステップS19において、その取引データを記録する。なお、上記ステップS16では、ワンタイム暗証番号と出金額は、所定回数の再入力を求めることとしているが、ステップS12,ステップS13と同じように再入力を求めず、ただちに取引利用終了メッセージを発行して取引記録保存後、取引終了としてもよい。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の別の内部処理手順を示す図である。図5においては、図4におけるステップS15とステップS17の間にステップS15Aにおいて、ワンタイム暗証番号再設定の処理が追加される。それ以外のステップは、図4と同じであるので説明を省略する。
【0054】
ここでは、カードレス出金管理サーバ10は、ステップS14,S15において、ワンタイム暗証番号、出金額ともに登録されたデータと比べてOKであれば、ATM30に対して出金処理実行の許可(ステップS17)を出す前に、ワンタイム暗証番号再設定の処理を行う(ステップS15A)。ワンタイム暗証番号再設定とは、出金者が許可された出金額を何度かに分けて出金したい場合(例えば、出金額の総額と毎月の額が共に指定登録されている場合、または自らが使いすぎを防止するために自主的に分割して出金するような場合)に、登録者に登録データの更新を求めることなく、次回の出金時のために自分でワンタイム暗証番号を設定できる機能である。同じ暗証番号を続けて使用するのは危険であるし、万一なんらかの手段で登録データを盗用された場合でも起こりうる被害を最小限に防ぐためである。特に、本システムで毎月の仕送りなどを行う場合、毎月の額は少なくとも、総額はかなり多額となることもあるため、その場合は特に二重、三重のセキュリティを施すことが望ましい。
【0055】
なお、ワンタイム暗証番号の再設定は、出金処理実行(ステップS17)の後に行わずその前に行うのは、出金が終了すると、出金者はすべて処理が完了したと勘違いして再設定を忘れやすいためである。また、ワンタイム暗証番号の再設定について詳しくは後述のATMの操作画面例で説明する。
【0056】
図6は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録画面の一例を示す図である。本システムの登録者は、登録者端末20からこのような登録画面を用いてカードレス出金の取引条件を設定することができる。
【0057】
図6のカードレス出金登録画面では、登録者は、カードレス出金を許可する口座番号と口座名義人、あらかじめ申し込んでおいたログインID,パスワードを入力する。ログインが成功すると、図の点線部分で囲われた部分に示すように、取引条件設定画面が表示される。
【0058】
取引条件には、出金者名101,出金者許容額の総額102,出金許容額の毎月の額103,取引場所104,取引開始日時と取引終了日時(2つ合わせて取引可能期間と呼ぶ)105,ワンタイム暗証番号に関する設定(106,107,108)の各項目を入力する必要がある。なお、入力を簡単にするために初期画面では、前回入力した内容を再表示してもよい。
【0059】
出金者名101は、カードレス出金を許可される人間の氏名またはニックネームを入力する欄である。前述したように、出金者名は、実名であってもよいが、できれば登録者(口座保有者)と出金者のみが知る識別子であることが望ましい。例えば、現在のニックネームでなく、幼少のころの愛称とか学生時代のニックネーム等である。また実名に秘密のキーワードを付加したり特定の文字を削除したようなものあってもよい。このような「出金者名」は、登録者と出金者であらかじめ決めておくことが望ましいが、想定外の相手や緊急の場合には、出金の要請を受けたときにはじめて取り決めざるを得ない。ただし、その場合でも最初の連絡ではなく、詐欺防止のために、登録者のほうから再度出金者に電話等で連絡することが望ましい。
【0060】
出金許容金額総額102は、今回の登録で出金者が引き出すことのできる金額の総額を入力する欄である。また、出金許容金額毎月103は、総額を毎月に分けて引き出す場合の毎月の限度額を入力する欄である。この例では、総額60万円を毎月5万円ずつ1年間にわたり出金許可することを示している。もちろん、毎月でなくとも、毎週とか、2ヶ月ごととかのように一定の期間で分割してもよい。こうすることで、毎回、一定額を決められた期間の間続けて仕送りするような場合でも登録は一度で済ませることができる。また、登録者は分割出金を特に登録してなくとも、出金者自身が一度に使いすぎを防止するために、1回あたりの出金額を制限することもできる。例えば、後で詳しく説明するが、ワンタイム暗証番号を出金者が出金のたびに更新できるようにすることで、出金許容総額の範囲内で出金を複数回に分けて行うことができる。
【0061】
取引場所104の欄には、出金者がカードレス出金できるATMの設置場所の情報を指定する。この欄の近傍には、当該サービスの行える金融機関の取引可能なATMの設置場所を容易に検索できるようにATM検索ボタン104Aを備えていることが望ましい。
【0062】
取引可能期間105の欄には、カードレス出金を許可する期間を日時で入力する。通常はできるだけ短期間に設定する。ただし、この例の仕送りのように長期の期間を設定する場合は、まるまる1年間でなく、例えば、毎月25日か26日の8時から18時までのように短い期間で指定できるようにしたほうがよい。なお、当然のことながら、カードレス出金管理サーバ10は、全ATMの稼動管理テーブルを参照して、上記取引場所で指定したATMの取扱可能時間外を、取引開始日時および取引終了日時に指定できないようにする。
【0063】
登録者が、ワンタイム暗証番号設定項目(106〜108)で、「自動生成」106のマークをチェックすると、ワンタイム暗証番号は、登録データが妥当であると検証が終わったときに、カードレス出金管理サーバ10が取引IDとともに自動生成する。また、「その都度入力」107のマークにチェックすると、登録者がワンタイム暗証番号を入力する。もちろん、自動生成された暗証番号を修正してもよい。
【0064】
また、登録者が「次回以降は出勤者に設定させる」108にチェックマークを入れると、出金者が分割出金時に次回のワンタイム暗証番号を設定できるようになる。これは、すでに説明したように、分割出金の場合に登録者がシステムに毎回、暗証番号を発行させる手間を省くためである。出金者にある程度信用があり、出金許容金額の総額の範囲内であれば、ある程度出金者の自由度を認め、このことにより暗証番号の漏洩の危険を減少させるためである。ただし、出金者が、ワンタイム暗証番号を重複しないように毎回考えるのは面倒であるため、後述するような方法で暗証番号を設定させてもよい。
【0065】
最後に、登録者は、すべての登録データを入力し終り確認後、登録ボタン109を押すことにより、カードレス出金管理サーバ10に登録データの保存を行わせる。カードレス出金管理サーバ10は、この登録データに基づいて、出金者が指定された場所と日時にATMからカードレス出金サービスを要求した場合に、その出金を行ってよいかどうかを判断する。
【0066】
図7は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録データ確認画面の一例を示す図である。本図は、図6において登録者が登録ボタン109を押下した場合に表示される登録データ確認画面の一例である。
【0067】
この画面では、出金者の幼少時の愛称である「ナッチャン」が出金者名として使用され、総額60万円の出金許容額および毎月5万円の出金許容額が登録された画面である。出金は分割して行うように登録されており、かつワンタイム暗証番号は、初回以外の以降の回で、出金者が毎回出金時に設定できるようになっている。
【0068】
また、取引場所はAA銀行沖縄支店、取引日時は2010年4月1日から2011年3月31日までとなってる。前述したように、取引日時は、このように長期間を指定するのは危険で、毎月の特定日と特定時間を指定するようにしたほうがよい。最後に、登録者は、この登録データを確認しOKであれば、確認ボタンを押下する。修正する場合は、修正ボタンを押し、前の画面に戻って必要な箇所を修正できる。
【0069】
図8,図9,図10は、本発明の実施形態に係るATM30での操作手順を示す図である。これらは一連の操作であるので図8から図10まで以下まとめて説明する。
【0070】
画面200は、出金者が登録者とあらかじめ相談して決めた店舗の場所に所定の時間に訪れ、ATMを操作する際の最初の画面である。この画面は通常のATMのメインメニュー画面である。出金者が引き出し(出金)ボタンを押すと、201のようなメッセージが表示され、このATMはカードレスでも出金が行えることを示す。
【0071】
出金者がここで、「カードレス」ボタンを押すと、カードレス引出画面202が表示される。この画面で、出金者は、出金を行う口座番号を入力する。入力された口座番号が、カードレス出金に登録されていなければ、203のようなエラーメッセージが表示される。なお、ここで口座番号は、実在の口座番号だけでなく、カードレス出金のための実口座番号と対応づけられた仮想口座番号であってもよい。口座番号がカードレス出金に登録されていれば、図9の画面204が表示される。
【0072】
画面204では、出金者は出金者の名前を入力する。画面204には文字入力のためのキー(例えば、あいうえお鍵盤)が表示される。ここでは出金者名は実名でなくともよいが、登録されている出金者名を正確に入力する必要がある。本システムでは、出金者名もパスワードの役割を果たすので他者から類推されにくいものにしたほうがよいのは言うまでもない。出金者が「名前」を入力し、確認ボタンを押すと、カードレス出金管理サーバ10にそれまで入力したデータが送信され、登録データと比較される。ここで入力された出金者名が登録されたデータと一致しない場合は、出金者名不一致のエラーメッセージが表示され、取引を行っているATMが登録された取引場所でない場合は、取引場所不一致のエラーメッセージ205、現在日時が登録された範囲にない場合は、取引日時不適のエラーメッセージ206が表示される。
【0073】
上記の3つのデータがすべて登録されたデータと合致した場合は、画面207が表示され、ワンタイム暗証番号の入力を求められる。暗証番号が正しくない場合は、暗証番号不一致のエラーメッセージ208が表示される。この場合、再度暗証番号の入力を求め、再度不一致の場合は、エラーメッセージ209を表示し、取引を中止する。もちろん、再度暗証番号の入力を求めず、直ちに取引中止としてもよい。
【0074】
ワンタイム暗証番号が一致した場合には、画面210が表示され、引き出し金額の入力を求められる。入力した出金額が登録された出金額の条件の範囲に合致していれば、図10の画面212が表示されるが、合致しない場合は、エラーメッセージ211が表示される。なお、取引可能期間が過ぎた場合、ワンタイム暗証番号は無効となる。
【0075】
図10の画面212は、カードレス出金の最終操作画面である。この例の画面では60万円の総額出金額に対して今回は5万円を出金すると残り55万円となる旨が表示される他、次回の出金時に使用するワンタイム暗証番号を設定することができる。もちろん、登録者がそのように出金者に対して暗証番号の再設定を許可するように設定していることが前提となる。ここで入力する暗証番号は、出金者が任意で決めてよいし、通常の暗証番号と異なり、必ずしも4桁である必要もない。ただし、この暗証番号を忘れると、登録者に連絡し登録データの更新をしてワンタイム暗証番号の再発行をしてもらわなければならないので注意が必要である。出金者がワンタイム暗証番号を正常に再設定し終わると、終了メッセージ213が表示され現金の支払いが実行される。
【0076】
図11は、本発明の実施形態に係るカードレス引き出し画面の別の例を示す図である。ここでは、図10の画面例のように、出金者が毎回暗証番号を任意で設定するのは面倒であったり、忘れやすいという危険性に備えて、システムが暗証番号設定を手助けする仕組みである。
【0077】
図11(a)の画面212Aでは、システムがあらかじめ設定されたルールに基づき、暗証番号を生成し表示する手段を備えていることを示す。例えば、ルールは今回引き出した金額に関連したルールや、今回引き出し後の残り金額に関連するルールなど、出金者が印象に残りやすい事象と関連ずけるようにする。より具体的には、図11(b)のようなルール表を用いることができる。このルール表では、ルール1からルール5までが今回引き出した額に一定の操作をして得られた数字を次回の暗証番号候補として表示するためのものであり、ルール6からルール10までは、残り金額に関連した金額の数字を次回の暗証番号候補として表示させるためのものである。
【0078】
例えば、この例では、今回引き出した金額が50000、残り金額が550000であるので、ルール1を適用すると、暗証番号は、49999となり、ルール6を適用すると550001となる。適用するルールは、システムがランダムに表示するものとするが、出金者もルール変更ボタン214を押して、適用するルールの番号を変更することができる。ルール変更ボタン214が押されると、システムは再度ランダムに選んだルールを表示する。なお、他の者からの覗き見を防止するため、画面にはルール番号とその説明のみを表示し、暗証番号はその桁数のみを暗示して例えば●●●●●のようにだけ表示してもよい。このようにすることで、出金者は次回の暗証番号を忘れずらく、適用ルールも出金者が出金を完了したときのみに表示される金額に関連するので第三者に類推されにくくなる。
【0079】
上記画面では、出金額と残り金額に関連する数値を暗証番号候補として表示する例を示したが、これらの数値は、出金者に関連する別の数値を用いてもよい。例えば、生年月日の数字にある一定の操作を加えて暗証番号にする等である。より具体的には、19970505を生年月日とし、ルール4を適用すると、両端の数字を除いた997050が暗証番号候補となる。出金者はこの暗証番号そのものでなく、適用されたルールを覚えることでより忘れにくくなる。なお、出金額や残り金額は、取引終了時にATMが発行する取引明細書等で確認することができる。なお、当然のことながら、暗証番号や適用ルールは取引明細書等には印字されないので、取引明細書を紛失しても悪用される危険は少ない。
【0080】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0081】
10 カードレス出金管理サーバ
11 カードレス出金登録情報DB
12 カードレス出金引出情報DB
20 登録者端末
30 ATM
40、41 ネットワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関に設置された現金自動預払機等で、キャッシュカードを使用せずに現金を引出せるようにするカードレス現金引出しシステムおよびカードレス現金引出し処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャッシュカードを持参していなくとも携帯電話機等を用いて金融機関に設置されたATM(Automated Teller Machine;現金自動預払機または自動取引装置)で現金を引き出せるシステムや方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、利用者の携帯電話端末の現在位置に関するデータを取得した管理コンピュータが、携帯電話端末に利用希望地域の現金自動預払機リストを送信し、利用者が選択した現金自動預払機の識別子,預金口座識別子,引出希望金額,携帯電話端末の現在位置から利用者が選択した現金自動預払機までの所要時間から算出した取引予定時間,生成したパスワード等の取引条件管理データを用いて、設定された取引予定時間のみの取引を許容するバンキング処理方法、システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、携帯電話について登録された利用者固有のID,パスワード,メールアドレス,生年月日,携帯電話固有識別番号によって構成される属性情報を用いて、属性情報が一部または全部一致した場合、画像化した識別番号を利用者の携帯電話に送信し、その表示された画像を現金自動預払機が読み取って認証することによりカードレスで決済できるシステム、決済方法等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−303057号公報
【特許文献2】特開2009−245272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されたシステムや方法は、いずれも利用者がキャッシュカードを持参し忘れた場合に、あらかじめ登録されておいた携帯電話機の認証データによって認証を行い、あくまでも利用者が所有する口座から緊急的に引出しを行うものである。また、これらのシステムでは、キャッシュカードの代わりに携帯電話機を保持していないと利用できないという課題もある。
【0007】
キャッシュカードを保持してない場合にも現金を引出したいという場面は、単にキャッシュカードを持参し忘れた場合だけでなく、口座保有者とは別の人間でそもそもキャッシュカードを保持できない人間(例えば親戚や友人)に緊急に現金で送金したい場合や、保護者が、遠方の子供や孫に仕送りをしたいという場合にも生じる。このような人間に家族カードや代理人カードを持たせるのは現実的ではないし、仮にキャッシュカードを持たせると口座の取引状況や口座残高等の個人情報が知られる上、出金する金額や出金の時期も制限できないという課題がある。また、相手方の人間が、入院中や老人、子供等の場合、携帯電話機を保持してないということも十分に有りうる。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑み、出金者にキャッシュカードを持たせることなく、また出金者が必ずしも携帯電話機等を保持してなくとも、登録した特定の出金者にカードレスで口座保有者の口座から現金の出金を許可するシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一の発明では、以下のような解決手段を備えた銀行システムを提供する。
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機(ATM)と、管理サーバとがネットワークを介して接続された銀行システムであって、前記登録者端末は、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する手段を備え、前記管理サーバは、前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する手段と、前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える、ことを特徴とする銀行システム。
【0010】
上記発明によれば、口座保有者が特定の出金者にあらかじめ出金を許可する取引条件を定め、その取引条件を登録端末を用いて管理サーバに登録しておくだけで、前記出金者がその口座のキャッシュカードを持たずとも、また他の携帯端末など持つことなく、取引条件に合致するデータをATMから入力することにより現金での出金が可能となる。
【0011】
上記発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける前記現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む。
【0012】
上記発明によれば、取引条件に出金者の名前、出金許容額の他、現金を引き出すことのできるATMの場所、引き出しが可能な日時、一度限り有効なワンタイム暗証番号を口座保有者が指定できるので、出金要求を受けた際に、正当な出金者であるかどうかをシステムが判断しやすくなり、万一、不正な利用者が登録データを入手しても、指定時間に指定場所に行くことには躊躇するので犯罪抑止効果が期待できる。
【0013】
上記発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記出金許容額と一致した場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【0014】
上記発明によれば、出金者が現金自動預払機において引き出すことができる金額は、登録者があらかじめ設定しておいた出金許容額に一致する場合にのみに限られる。こうすることで、出金許容額そのものにも暗証番号の役目をもたせることができる。
【0015】
本発明は、さらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記ワンタイム暗証番号に所定のルールで関連付けられた数値である場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【0016】
上記発明によれば、出金者が現金自動預払機において引き出す金額は、ワンタイム暗証番号に関連付けられた数値に一致する場合にのみ限られる。関連付けのルールはあらかじめ定めておき、例えば、ワインタイム暗証番号に+nした数値または−nした数値、あるいは暗証番号をm倍またはm分の1にした数値等の金額のみが出金が許される。こうすることで、出金者が出金額とワンタイム暗証番号を関連付けて記憶できるようになるので、ワンタイム暗証番号を忘れてしまう危険性を少なくすることができる。
【0017】
上記発明はさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金許容額には、前記出金者が出金可能な総額と、前記総額の範囲で分割して出金が可能な金額を含む。
【0018】
上記発明によれば、口座保有者は、出金を許可する総額と、その出金総額を何回かに分けて出金する場合の金額を設定できるので、家族等に毎月一定額を仕送りをするような場合等に、出金者が一度で使いすぎることを防止することができ、しかもそれを一度の設定登録で済ますことができる。
【0019】
上記の発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金許容額が分割して出金可能に設定されている場合、前記出金者が出金の際に次回出金時のワンタイム暗証番号を、前記現金自動預払機から設定させる手段。
【0020】
上記発明によれば、出金者が分割出金する際、次回引き出す際のワンタイム暗証番号を設定できる。分割出金を長期に設定する場合、総額が大きくなりがちであるが、このようにすることで、出金者が出金の際の機密性保持の意識が高まり、口座保有者からある程度の信頼を受けていると実感できる。また、万一、登録データが盗まれても、登録データには、出金者が設定した暗証番号は含まれないので、多額の金額を不正に出金されることが防止できる。
【0021】
上記発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者が前記ワンタイム暗証番号を設定する際に、前記出金者が前記現金自動預払機で出金した金額または前記出金許容額の残り金額を、所定のルールで関連づけた数字で前記ワンタイム暗証番号を生成する手段。
【0022】
上記発明によれば、出金者が設定するワンタイム暗証番号を出金する金額を所定のルールで関連づけた数字とすることで、出金者は、今回の出金操作と関連して暗証番号を記憶できるので暗証番号を忘却しにくくすることができる。
【0023】
上記発明ではさらに以下の手段も備えることができる。
前記出金者名は、前記出金者の過去の愛称、ニックネーム、または前記出金者の氏名に任意の文字列を追加または変換した文字列を含む。
【0024】
上記発明によれば、出金者がATMで入力するのは、出金者の氏名である必要はなく、口座保有者と出金者のみが知り得る幼少時や学生時代等の愛称やニックネーム、または氏名に特定の文字列を付加したものあるいは特定の文字列で変換したものとすることで、出金者名を第二の暗証番号とすることができ、機密性を高めることができる。
【0025】
また、上記の第一の発明のシステムは、以下のように、金融機関における現金引出し処理方法の発明としても捉えることができる。
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとを用いて現金の出金管理を行う現金引出し処理方法であって、前記登録者端末において、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する段階と、前記管理サーバにおいて、前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する段階と、前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信する段階と、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する段階と、前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える段階とを含む、ことを特徴とする、現金引出し処理方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出金者にキャッシュカードを持たせることなく、また出金者が必ずしも携帯電話機等を保持してなくとも、登録した特定の出金者にカードレスで口座保有者の口座から一定の条件下で現金での出金を許可することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るカードレス出金システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録情報およびカードレス出金引出情報を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る登録者端末20とカードレス出金管理サーバ10のやり取りを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の内部処理手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の別の内部処理手順を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るカードレス出金登録データ確認画面の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(1)を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(2)を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るATM30での操作手順(3)を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るカードレス引き出し画面の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係るカードレス出金システム1の概略を示す図である。本システムでは、カードレス出金管理サーバ10(単に管理サーバと呼ぶこともある)が口座保有者の登録者端末20とネットワーク40を介して接続され、さらにカードレス出金管理サーバ10は、専用ネットワーク41(一部に公衆回線を含んでいてもよい)を介して金融機関をはじめとして,駅,病院,公共機関,デパート,スーパー,コンビニエンス・ストア等(以下、金融機関等)に設置された複数のATM30に接続されている。なお、登録者端末20は、登録者側のデータを入力するための手段を有する端末であるが、必ずしも登録者が端末を所持していなくとも金融機関等の店舗で登録者の依頼を受けた店員やオペレータが入力するための端末をも意味する。
【0030】
カードレス出金管理サーバ10は、本システムの管理サーバとして機能し、カードレス出金登録情報データベース(以下、DB)11として、登録者の口座番号ごとにカードレス取引登録時の取引IDとカードレス取引条件を記録する手段を有する。また、カードレス出金管理サーバ10は、カードレス送金引出情報DB12として、登録者の口座番号ごとに出金時の取引IDと紐付けされた出金情報を記録する手段を有する。なお、カードレス出金登録情報DB11とカードレス出金引出情報DB12は、別々のDBとして構成してもよいし、一つのDBとして構成してもよい。
【0031】
カードレス出金登録情報11に含まれる登録時の取引IDは、口座所有者が特定の相手に対してカードレス出金を登録する際にシステムが取引条件ごとに生成する固有のIDである。出金者が異なれば別の取引IDが発行されるし、出金者が同じでも取引条件が異なれば別の取引IDが発行される。出金時の取引IDは、上記の取引IDと紐付けされた、出金操作ごとに発生する取引IDである。本システムでは、一つの登録時の取引IDに対して、分割して出金を行うこともできるようにするため出金時の取引IDは、別個のものとして取り扱うようにすることが望ましい。すなわち、一つの登録時取引IDに一つまたは複数の出金時取引IDが存在しうる。
【0032】
カードレス出金登録情報DB11に含まれる取引条件とは、口座保有者が登録時にこれからカードレス出金を許可するための条件を定めた情報であり、後述するように、出金者名,出金許容額,ワンタイム暗証番号(使い捨て暗証番号)の他、カードレス出金を許可する取引場所(ATMの設置場所)や取引日時等も指定することができる。また、カードレス出金引出情報DB12に含まれる出金情報には、後述するように、取引日時,取引場所,出金者名,引き出し金額,取引状況(正常か異常か、異常の場合はその理由)が記録される。
【0033】
カードレス出金管理サーバ10の機能は、典型的には、メモリ(RAM;Random
Access Memory,ROM; Read Only Memory)や記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムが読み出され、サーバ装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)で実行され、実行されたプログラムがメモリや記憶装置に格納されたDBから必要なデータを読み書きし、場合によっては、その他関連するハードウェアを制御することによって実現される。
【0034】
登録者端末20は、金融機関等とネットワークで接続された一般的な端末であり、PC(Personal
Computer)や携帯電話であってよい。本システムにおいて出金者は、口座保有者となんらかの連絡手段を持つ限り、必ずしも本システムに繋がる端末を保持してなくともよい。このようにすることで、あらかじめシステムに出金者側からの登録を不要にし、原理的には誰に対しても出金許可をすることができる。
【0035】
図2は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録情報およびカードレス出金引出情報を示す図である。図2(a)には、カードレス出金登録情報を構成するテーブルの一例が、図2(b)には、カードレス出金引出情報を構成するテーブルの一例を示す。なお、テーブル内のデータの持ち方、構成方法自体は任意である。
【0036】
カードレス出金登録情報は、登録者が所有する口座番号に対して、取引条件と取引条件ごとに生成された取引IDが記録されたテーブルである。取引条件には、出金を許可する出金者名の他,出金許容額,ワンタイム暗証番号,取引場所,取引日時等が含まれる。出金者名は必ずしも本名でなくとも、ニックネーム等でもよい。本システムでは、出金時に登録した出金者名と同じ文字列を入力することにより出金者名を特定する。最近の振込み詐欺で子供や孫の名前をかたり親や祖父母からお金を騙し取りとるような手口を防ぐため、出金者名は、実名よりむしろ登録者と出金者と間でのみが知りうる幼少時や過去のニックネーム等が好ましい。また、出金者名に特定の文字列を付加したり、特定の文字列を削除または変換したり、あるいは出金者名自体を任意の文字列とし、第二のパスワードとして使用することができる。もちろん、現在のATMで広く普及している指紋等の生体認証で本確認を行う仕組みと組み合わせることも可能であるが、その場合は、出金者の登録があらかじめ必要となる。
【0037】
出金許容額は、図示するように、総額と毎月の額のように分けて登録してもよい。こうすると、毎月の一定額の仕送りのような場合にも登録者は一度で登録で対応できるので便利である。一回のみでの出金を許可する場合は、図2(a)の上段で示すように、出金許容額(総額)と出金許容額(毎月)が一致させるか、毎月の金額をゼロにする。複数に分けて出金を許可する場合は、図2(a)の下段で示すように、総額と毎月の額に分割して登録することができる。この例では、総額60万円で毎月5万円ずつ、引出可能期間は12ヶ月間で設定されている。
【0038】
ワンタイム暗証番号(使い捨て暗証番号)は、取引条件が設定されると、システムにより生成される一回限り使用可能な暗証番号である。もちろん、登録者は、生成された暗証番号を登録画面上で変更してもよい。いずれにしろ、登録者はこのワンタイム暗証番号を出金者にあらかじめ伝えておく必要がある。連絡手段は、電話か直接会っての口頭で、できるだけ書面化しないほうが望ましい。
【0039】
また、出金許容額は、単なる出金限度額としてだけでなく、出金者がこの額でしか出金できない額として定めてもよい。例えば、出金許容額に端数をつけて50,001円と定めると、出金者はATMではこれに一致する金額でしか出金することできない。こうすることで、出金許容額にも暗証番号の役目をもたせることができる。もちろん、出金許容額と、「出金許可額」とを分けて定義し、前者はあくまで全体での出金許容枠、後者は一度に出金できる許可額としてもよい。
【0040】
また、ワンタイム暗証番号を、上記した「出金許可額」と関連付けさせることもできる。具体的には、出金許容額をワンタイム暗証番号に所定の演算をして決定したり、逆に、ワインタイム暗証番号を出金許可額に対して所定の演算をして生成する。例えば、ワインタイム暗証番号が1234なら、出金許可額は、10倍して12,340円とする。逆に、出金許可額を50,000円としたい場合は、例えば、ワインタイム暗証番号を+1したり、あるいは−1したりして、50001か49999とする。ただし、この演算は、ワンタイム暗証番号の桁数とATMの硬貨の出金単位を考慮して決められる。このようにすることで、出金者が出金額とワンタイム暗証番号を関連付けて記憶できるようになるので、ワンタイム暗証番号を忘れてしまう危険性を少なくすることができる。また、この演算を「Null(なし)」として、出金許可額=ワンタイム暗証番号とし、ワンタイム暗証番号自体の入力を省略できるようにすることもできる。なお、このようなワンタイム暗証番号と出金許可額と関連付けの演算ルールは、登録者と出金者で推測されないように、あらかじめ定めておく。
【0041】
図2(a)における取引日時、取引場所は、出金者が出金可能な期間と取り引き可能な場所をあらかじめ登録者が指定できることを示している。これにより、あらかじめ指定した出金者以外の者に対する不正利用防止の手段とすることができる。取引日時とは、出金者が実際にATMに行って出金できる日時あるいはその期間であり、取引場所とは、ATMの設置されている場所情報、典型的には、出金者の自宅,通勤先,通学先等の近傍の銀行やコンビニの店舗名等である。旅行先や入院先の近傍のATMであってもよい。登録者はあらかじめ、出金者と連絡をとり出金可能な日時と場所の組み合わせを相談し、登録時にシステムに入力しておく。取引場所と取引日時は複数登録できるものとするが、出金者はたとえワンタイム暗証番号を知っていても、定められた場所と期間の組み合わせが一致した場合にしか出金を行うこができない。このことは、不正な出金者にとっては、出金できる場所、日時がきわめて限定されるので犯罪防止にはきわめて有効である。
【0042】
図2(b)には、出金者が本システムで実際に出金した記録が、カードレス出金引出情報として保持されることが示されている。出金情報として、カードレス出金登録時に発行された取引IDごとに、実際に引き出された取引日時・取引場所,ATMに入力した出金者名,実際に引き出された引き出し金額,および取引状況が記録される。図2(b)の下段で示すように、一つの登録時の取引ID(この例ではAAAA−0002)に対し、複数に分けて出金することが許可されている場合は、登録時の取引IDにサフィックスをつけてこれを出金時の取引ID(この例ではAAAA−002−001)としてもよい。
【0043】
取引が正常に行われた場合には、取引情報欄には、「正常」と記録されるが、「異常」があった場合には、その理由(出金者名不一致、ワンタイム暗証番号不一致、取引場所不一致、取引日時不適、出金許容額オーバ等)が一または複数記録される。「異常」な取引があった場合、カードレス出金管理サーバ10は、その旨をあらかじめ登録された一または複数の手段で登録者に通知し、その取引IDにおけるワンタイム暗証番号を消滅させる。ワンタイム暗証番号の再発行には、登録者がデータの再登録するか更新が必要である。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る登録者端末20とカードレス出金管理サーバ10のやり取りを示す図である。なお、ここで登録者端末20とは、登録者側のデータを入力する端末(PCや携帯電話機等)であるが、必ずしも登録者が所持していなくとも金融機関等の店舗で登録者の依頼を受けた店員やオペレータ等が入力するための端末をも意味する。
【0045】
まず、本システムへの登録者は、登録者端末20(以下、端末)からカードレス出金管理サーバ10(以下、管理サーバ)に対しログイン要求およびログインデータ(ログインID,パスワード)の送信を行い、本人認証を受ける。本人認証は、印鑑認証や生体認証など他の方法と組合わせてもよい。管理サーバは本人認証OKの場合、メインメニュー画面を端末に送信し、端末は送られたメインメニュー画面を表示する。
【0046】
登録者が、表示されたメインメニュー画面から「カードレス出金サービス」を選択すると、その要求が管理サーバに送信され、管理サーバからカードレス出金登録画面が返信されて端末に表示される。このカードレス出金登録画面の例については後述する。
【0047】
登録者が、登録画面で必要なデータ(自己の保有する口座番号と、許可する出金者氏名またはニックネーム,出金許容額,取引場所,取引日時などの取引条件)を入力すると、管理サーバではその登録データの妥当性を検証し、所定の条件に合致すれば認証正常とし、取引IDとワンタイム暗証番号を生成して、端末の登録画面に送信する。端末側では、登録者が登録データ確認画面において登録データを確認し、必要であれば修正して、最終的にOKであれば管理サーバは登録データをDBに保存する。
【0048】
図4は、本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の内部処理手順を示すフロー図である。
【0049】
まず、カードレス出金管理サーバ10は、ステップS10において、ATM30からカードレス出金サービス要求を受信する。そしてステップS11において、入力された口座番号からカードレス出金の登録データがあるかどうかを検索する。
【0050】
登録データがなければ(ステップS12;No)、カードレス出金管理サーバ10は、しかるべきエラーメッセージをATM30に表示させ、取引記録を保存して終了するためにステップS18,S19へ処理を移す。登録データがあれば(ステップS12;Yes)、ATM30に入力された出金者名が登録時のデータと一致するか、そのATM30の位置情報が、登録時に指定された取引場所であるか、また、現在時刻が、登録された取引日時の範囲内かどうかをチェックする(ステップS13)。チェックしたデータがすべて一致しなければ(ステップS13;No)、ステップS18へ処理を移す。
【0051】
チェックしたすべてのデータが一致すれば(ステップS13;Yes)、カードレス出金管理サーバ10は、さらに入力されたワンタイム暗証番号をチェックし、一致しなければ(ステップS14;No)、再度入力を求め、所定回数不一致であれば(ステップS16;No)、ステップS18に移り、処理を終了する。
【0052】
ワンタイム暗証番号が一致すれば(ステップS14;Yes)、カードレス出金管理サーバ10は、さらに出金者から要求された出金額は登録データの出金許容範囲にあるかどうかをチェックし、許容範囲内であれば(ステップS15;Yes)、正当な取引であると判断し、ステップS17において、ATM30に対して出金処理実行の許可を与える。ATM30はその許可を受けて、現金の払い出しを行う。ステップS15において、出金額が許容範囲外の場合は、再入力を出金者に求めさせ、ステップS16において所定回数不一致が続けば、ステップS18において、取引利用終了のメッセージ(エラーメッセージ)を送信する。取引が正常であっても異常であってもステップS19において、その取引データを記録する。なお、上記ステップS16では、ワンタイム暗証番号と出金額は、所定回数の再入力を求めることとしているが、ステップS12,ステップS13と同じように再入力を求めず、ただちに取引利用終了メッセージを発行して取引記録保存後、取引終了としてもよい。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係るカードレス出金管理サーバ10の出金時の別の内部処理手順を示す図である。図5においては、図4におけるステップS15とステップS17の間にステップS15Aにおいて、ワンタイム暗証番号再設定の処理が追加される。それ以外のステップは、図4と同じであるので説明を省略する。
【0054】
ここでは、カードレス出金管理サーバ10は、ステップS14,S15において、ワンタイム暗証番号、出金額ともに登録されたデータと比べてOKであれば、ATM30に対して出金処理実行の許可(ステップS17)を出す前に、ワンタイム暗証番号再設定の処理を行う(ステップS15A)。ワンタイム暗証番号再設定とは、出金者が許可された出金額を何度かに分けて出金したい場合(例えば、出金額の総額と毎月の額が共に指定登録されている場合、または自らが使いすぎを防止するために自主的に分割して出金するような場合)に、登録者に登録データの更新を求めることなく、次回の出金時のために自分でワンタイム暗証番号を設定できる機能である。同じ暗証番号を続けて使用するのは危険であるし、万一なんらかの手段で登録データを盗用された場合でも起こりうる被害を最小限に防ぐためである。特に、本システムで毎月の仕送りなどを行う場合、毎月の額は少なくとも、総額はかなり多額となることもあるため、その場合は特に二重、三重のセキュリティを施すことが望ましい。
【0055】
なお、ワンタイム暗証番号の再設定は、出金処理実行(ステップS17)の後に行わずその前に行うのは、出金が終了すると、出金者はすべて処理が完了したと勘違いして再設定を忘れやすいためである。また、ワンタイム暗証番号の再設定について詳しくは後述のATMの操作画面例で説明する。
【0056】
図6は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録画面の一例を示す図である。本システムの登録者は、登録者端末20からこのような登録画面を用いてカードレス出金の取引条件を設定することができる。
【0057】
図6のカードレス出金登録画面では、登録者は、カードレス出金を許可する口座番号と口座名義人、あらかじめ申し込んでおいたログインID,パスワードを入力する。ログインが成功すると、図の点線部分で囲われた部分に示すように、取引条件設定画面が表示される。
【0058】
取引条件には、出金者名101,出金者許容額の総額102,出金許容額の毎月の額103,取引場所104,取引開始日時と取引終了日時(2つ合わせて取引可能期間と呼ぶ)105,ワンタイム暗証番号に関する設定(106,107,108)の各項目を入力する必要がある。なお、入力を簡単にするために初期画面では、前回入力した内容を再表示してもよい。
【0059】
出金者名101は、カードレス出金を許可される人間の氏名またはニックネームを入力する欄である。前述したように、出金者名は、実名であってもよいが、できれば登録者(口座保有者)と出金者のみが知る識別子であることが望ましい。例えば、現在のニックネームでなく、幼少のころの愛称とか学生時代のニックネーム等である。また実名に秘密のキーワードを付加したり特定の文字を削除したようなものあってもよい。このような「出金者名」は、登録者と出金者であらかじめ決めておくことが望ましいが、想定外の相手や緊急の場合には、出金の要請を受けたときにはじめて取り決めざるを得ない。ただし、その場合でも最初の連絡ではなく、詐欺防止のために、登録者のほうから再度出金者に電話等で連絡することが望ましい。
【0060】
出金許容金額総額102は、今回の登録で出金者が引き出すことのできる金額の総額を入力する欄である。また、出金許容金額毎月103は、総額を毎月に分けて引き出す場合の毎月の限度額を入力する欄である。この例では、総額60万円を毎月5万円ずつ1年間にわたり出金許可することを示している。もちろん、毎月でなくとも、毎週とか、2ヶ月ごととかのように一定の期間で分割してもよい。こうすることで、毎回、一定額を決められた期間の間続けて仕送りするような場合でも登録は一度で済ませることができる。また、登録者は分割出金を特に登録してなくとも、出金者自身が一度に使いすぎを防止するために、1回あたりの出金額を制限することもできる。例えば、後で詳しく説明するが、ワンタイム暗証番号を出金者が出金のたびに更新できるようにすることで、出金許容総額の範囲内で出金を複数回に分けて行うことができる。
【0061】
取引場所104の欄には、出金者がカードレス出金できるATMの設置場所の情報を指定する。この欄の近傍には、当該サービスの行える金融機関の取引可能なATMの設置場所を容易に検索できるようにATM検索ボタン104Aを備えていることが望ましい。
【0062】
取引可能期間105の欄には、カードレス出金を許可する期間を日時で入力する。通常はできるだけ短期間に設定する。ただし、この例の仕送りのように長期の期間を設定する場合は、まるまる1年間でなく、例えば、毎月25日か26日の8時から18時までのように短い期間で指定できるようにしたほうがよい。なお、当然のことながら、カードレス出金管理サーバ10は、全ATMの稼動管理テーブルを参照して、上記取引場所で指定したATMの取扱可能時間外を、取引開始日時および取引終了日時に指定できないようにする。
【0063】
登録者が、ワンタイム暗証番号設定項目(106〜108)で、「自動生成」106のマークをチェックすると、ワンタイム暗証番号は、登録データが妥当であると検証が終わったときに、カードレス出金管理サーバ10が取引IDとともに自動生成する。また、「その都度入力」107のマークにチェックすると、登録者がワンタイム暗証番号を入力する。もちろん、自動生成された暗証番号を修正してもよい。
【0064】
また、登録者が「次回以降は出勤者に設定させる」108にチェックマークを入れると、出金者が分割出金時に次回のワンタイム暗証番号を設定できるようになる。これは、すでに説明したように、分割出金の場合に登録者がシステムに毎回、暗証番号を発行させる手間を省くためである。出金者にある程度信用があり、出金許容金額の総額の範囲内であれば、ある程度出金者の自由度を認め、このことにより暗証番号の漏洩の危険を減少させるためである。ただし、出金者が、ワンタイム暗証番号を重複しないように毎回考えるのは面倒であるため、後述するような方法で暗証番号を設定させてもよい。
【0065】
最後に、登録者は、すべての登録データを入力し終り確認後、登録ボタン109を押すことにより、カードレス出金管理サーバ10に登録データの保存を行わせる。カードレス出金管理サーバ10は、この登録データに基づいて、出金者が指定された場所と日時にATMからカードレス出金サービスを要求した場合に、その出金を行ってよいかどうかを判断する。
【0066】
図7は、本発明の実施形態に係るカードレス出金登録データ確認画面の一例を示す図である。本図は、図6において登録者が登録ボタン109を押下した場合に表示される登録データ確認画面の一例である。
【0067】
この画面では、出金者の幼少時の愛称である「ナッチャン」が出金者名として使用され、総額60万円の出金許容額および毎月5万円の出金許容額が登録された画面である。出金は分割して行うように登録されており、かつワンタイム暗証番号は、初回以外の以降の回で、出金者が毎回出金時に設定できるようになっている。
【0068】
また、取引場所はAA銀行沖縄支店、取引日時は2010年4月1日から2011年3月31日までとなってる。前述したように、取引日時は、このように長期間を指定するのは危険で、毎月の特定日と特定時間を指定するようにしたほうがよい。最後に、登録者は、この登録データを確認しOKであれば、確認ボタンを押下する。修正する場合は、修正ボタンを押し、前の画面に戻って必要な箇所を修正できる。
【0069】
図8,図9,図10は、本発明の実施形態に係るATM30での操作手順を示す図である。これらは一連の操作であるので図8から図10まで以下まとめて説明する。
【0070】
画面200は、出金者が登録者とあらかじめ相談して決めた店舗の場所に所定の時間に訪れ、ATMを操作する際の最初の画面である。この画面は通常のATMのメインメニュー画面である。出金者が引き出し(出金)ボタンを押すと、201のようなメッセージが表示され、このATMはカードレスでも出金が行えることを示す。
【0071】
出金者がここで、「カードレス」ボタンを押すと、カードレス引出画面202が表示される。この画面で、出金者は、出金を行う口座番号を入力する。入力された口座番号が、カードレス出金に登録されていなければ、203のようなエラーメッセージが表示される。なお、ここで口座番号は、実在の口座番号だけでなく、カードレス出金のための実口座番号と対応づけられた仮想口座番号であってもよい。口座番号がカードレス出金に登録されていれば、図9の画面204が表示される。
【0072】
画面204では、出金者は出金者の名前を入力する。画面204には文字入力のためのキー(例えば、あいうえお鍵盤)が表示される。ここでは出金者名は実名でなくともよいが、登録されている出金者名を正確に入力する必要がある。本システムでは、出金者名もパスワードの役割を果たすので他者から類推されにくいものにしたほうがよいのは言うまでもない。出金者が「名前」を入力し、確認ボタンを押すと、カードレス出金管理サーバ10にそれまで入力したデータが送信され、登録データと比較される。ここで入力された出金者名が登録されたデータと一致しない場合は、出金者名不一致のエラーメッセージが表示され、取引を行っているATMが登録された取引場所でない場合は、取引場所不一致のエラーメッセージ205、現在日時が登録された範囲にない場合は、取引日時不適のエラーメッセージ206が表示される。
【0073】
上記の3つのデータがすべて登録されたデータと合致した場合は、画面207が表示され、ワンタイム暗証番号の入力を求められる。暗証番号が正しくない場合は、暗証番号不一致のエラーメッセージ208が表示される。この場合、再度暗証番号の入力を求め、再度不一致の場合は、エラーメッセージ209を表示し、取引を中止する。もちろん、再度暗証番号の入力を求めず、直ちに取引中止としてもよい。
【0074】
ワンタイム暗証番号が一致した場合には、画面210が表示され、引き出し金額の入力を求められる。入力した出金額が登録された出金額の条件の範囲に合致していれば、図10の画面212が表示されるが、合致しない場合は、エラーメッセージ211が表示される。なお、取引可能期間が過ぎた場合、ワンタイム暗証番号は無効となる。
【0075】
図10の画面212は、カードレス出金の最終操作画面である。この例の画面では60万円の総額出金額に対して今回は5万円を出金すると残り55万円となる旨が表示される他、次回の出金時に使用するワンタイム暗証番号を設定することができる。もちろん、登録者がそのように出金者に対して暗証番号の再設定を許可するように設定していることが前提となる。ここで入力する暗証番号は、出金者が任意で決めてよいし、通常の暗証番号と異なり、必ずしも4桁である必要もない。ただし、この暗証番号を忘れると、登録者に連絡し登録データの更新をしてワンタイム暗証番号の再発行をしてもらわなければならないので注意が必要である。出金者がワンタイム暗証番号を正常に再設定し終わると、終了メッセージ213が表示され現金の支払いが実行される。
【0076】
図11は、本発明の実施形態に係るカードレス引き出し画面の別の例を示す図である。ここでは、図10の画面例のように、出金者が毎回暗証番号を任意で設定するのは面倒であったり、忘れやすいという危険性に備えて、システムが暗証番号設定を手助けする仕組みである。
【0077】
図11(a)の画面212Aでは、システムがあらかじめ設定されたルールに基づき、暗証番号を生成し表示する手段を備えていることを示す。例えば、ルールは今回引き出した金額に関連したルールや、今回引き出し後の残り金額に関連するルールなど、出金者が印象に残りやすい事象と関連ずけるようにする。より具体的には、図11(b)のようなルール表を用いることができる。このルール表では、ルール1からルール5までが今回引き出した額に一定の操作をして得られた数字を次回の暗証番号候補として表示するためのものであり、ルール6からルール10までは、残り金額に関連した金額の数字を次回の暗証番号候補として表示させるためのものである。
【0078】
例えば、この例では、今回引き出した金額が50000、残り金額が550000であるので、ルール1を適用すると、暗証番号は、49999となり、ルール6を適用すると550001となる。適用するルールは、システムがランダムに表示するものとするが、出金者もルール変更ボタン214を押して、適用するルールの番号を変更することができる。ルール変更ボタン214が押されると、システムは再度ランダムに選んだルールを表示する。なお、他の者からの覗き見を防止するため、画面にはルール番号とその説明のみを表示し、暗証番号はその桁数のみを暗示して例えば●●●●●のようにだけ表示してもよい。このようにすることで、出金者は次回の暗証番号を忘れずらく、適用ルールも出金者が出金を完了したときのみに表示される金額に関連するので第三者に類推されにくくなる。
【0079】
上記画面では、出金額と残り金額に関連する数値を暗証番号候補として表示する例を示したが、これらの数値は、出金者に関連する別の数値を用いてもよい。例えば、生年月日の数字にある一定の操作を加えて暗証番号にする等である。より具体的には、19970505を生年月日とし、ルール4を適用すると、両端の数字を除いた997050が暗証番号候補となる。出金者はこの暗証番号そのものでなく、適用されたルールを覚えることでより忘れにくくなる。なお、出金額や残り金額は、取引終了時にATMが発行する取引明細書等で確認することができる。なお、当然のことながら、暗証番号や適用ルールは取引明細書等には印字されないので、取引明細書を紛失しても悪用される危険は少ない。
【0080】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0081】
10 カードレス出金管理サーバ
11 カードレス出金登録情報DB
12 カードレス出金引出情報DB
20 登録者端末
30 ATM
40、41 ネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとがネットワークを介して接続された銀行システムであって、
前記登録者端末は、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する手段を備え、
前記管理サーバは、
前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する手段と、
前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、
前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える、
ことを特徴とする、銀行システム。
【請求項2】
前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける前記現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の銀行システム。
【請求項3】
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記出金許容額と一致した場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項4】
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記ワンタイム暗証番号に所定のルールで関連付けられた数値である場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項5】
前記出金許容額には、前記出金者が出金可能な総額と、前記総額の範囲で分割して出金が可能な金額を含む、ことを特徴とする請求項2乃至4に記載の銀行システム。
【請求項6】
前記出金許容額が分割して出金可能に設定されている場合、前記出金者が出金の際に次回出金時のワンタイム暗証番号を、前記現金自動預払機から設定させる手段を備える、ことを特徴とする請求項5に記載の銀行システム。
【請求項7】
前記出金者が前記ワンタイム暗証番号を設定する際に、前記出金者が前記現金自動預払機で出金した金額または前記出金許容額の残り金額を、所定のルールで関連付けた数字で前記ワンタイム暗証番号を生成する手段を備える、ことを特徴とする請求項6に記載の銀行システム。
【請求項8】
前記出金者名は、前記出金者の過去の愛称、ニックネーム、または前記出金者の氏名に任意の文字列を追加または変換した文字列を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項9】
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとを用いて現金の出金管理を行う現金引出し処理方法であって、
前記登録者端末において、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する段階と、
前記管理サーバにおいて、
前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する段階と、
前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信する段階と、
前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する段階と、
前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える段階とを含む、
ことを特徴とする、現金引出し処理方法。
【請求項1】
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとがネットワークを介して接続された銀行システムであって、
前記登録者端末は、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する手段を備え、
前記管理サーバは、
前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する手段と、
前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信した際に、前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する手段と、
前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える手段とを備える、
ことを特徴とする、銀行システム。
【請求項2】
前記取引条件には、出金者名、出金許容額、出金を受付ける前記現金自動預払機の設置場所情報を含む取引場所、および出金可能な期間を定めた取引期間、一度の出金操作に限り有効なワンタイム暗証番号を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の銀行システム。
【請求項3】
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記出金許容額と一致した場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項4】
前記出金者が前記現金自動預払機において引き出そうとする出金要求額が、前記ワンタイム暗証番号に所定のルールで関連付けられた数値である場合にのみ出金を許可する、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項5】
前記出金許容額には、前記出金者が出金可能な総額と、前記総額の範囲で分割して出金が可能な金額を含む、ことを特徴とする請求項2乃至4に記載の銀行システム。
【請求項6】
前記出金許容額が分割して出金可能に設定されている場合、前記出金者が出金の際に次回出金時のワンタイム暗証番号を、前記現金自動預払機から設定させる手段を備える、ことを特徴とする請求項5に記載の銀行システム。
【請求項7】
前記出金者が前記ワンタイム暗証番号を設定する際に、前記出金者が前記現金自動預払機で出金した金額または前記出金許容額の残り金額を、所定のルールで関連付けた数字で前記ワンタイム暗証番号を生成する手段を備える、ことを特徴とする請求項6に記載の銀行システム。
【請求項8】
前記出金者名は、前記出金者の過去の愛称、ニックネーム、または前記出金者の氏名に任意の文字列を追加または変換した文字列を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の銀行システム。
【請求項9】
金融機関に口座を持つ口座保有者の登録データを受付ける登録者端末と、現金自動預払機と、管理サーバとを用いて現金の出金管理を行う現金引出し処理方法であって、
前記登録者端末において、前記口座保有者の口座から特定の出金者に対してキャッシュカードなしで出金を許可するための取引条件の入力を受付けて、前記管理サーバに送信する段階と、
前記管理サーバにおいて、
前記取引条件を前記登録者端末から受信して記憶する段階と、
前記現金自動預払機からキャッシュカードなしの出金要求を受信する段階と、
前記記憶された取引条件に基づいて出金の可否を判断する段階と、
前記現金自動預払機に対して出金の許可を与える段階とを含む、
ことを特徴とする、現金引出し処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−113341(P2012−113341A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259143(P2010−259143)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
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