説明

カード処理装置

【課題】 スキャナーの清掃を容易にするとともに装置の小型化を図り、かつ製造コストを低減する。
【解決手段】 カード搬送路6を搬送されるカードCの情報を読み取るスキャナー10の読取り面11がカード搬送路6に近接して対向している。駆動軸20に軸着された駆動ローラ25と、従動軸27に軸着された従動ローラ28との間には無端ベルト35が張架されている。この無端ベルト35にはカードCの後端に係合し、カードCを搬送する搬送部材36が設けられ、搬送部材36の先端には、スキャナー10の読取り面11に摺接する清掃部材37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード搬送路を搬送されるカードの情報を読み取るスキャナーを備えたカード処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のカード処理装置においては、装置内に浮遊する塵埃等がスキャナーの読取り面に付着することによって、スキャナーがカードの情報を読み誤ってしまうおそれがあるため、定期的に読取り面を清掃する必要がある。従来のカード処理装置は、カードを挿入する挿入・排出口と、この挿入・排出口から挿入されたカードを搬送するフィードローラと、搬送されるカードに印字されたバーコードを読み取るスキャナとを備えている(例えば、特許文献1参照)。また、搬送路中に設けられた裏面用密着センサのスキャナ面に対向するように清掃機構を設け、この清掃機構を、タイミングベルトを駆動するモータとタイミングベルトの移動と一体的に移動するクリーナパッドと、このクリーナパッドを案内する案内手段とによって構成したものがある(例えば、特許文献2参照)。なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【特許文献1】特開平10−326328号公報(段落「0011」、図1)
【特許文献2】特開平5−274469号公報(段落「0022」〜「0035」、図2および図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のカード処理装置のうち、前者の装置においては、特別にスキャナの汚れを清掃する装置が備えられていないため、スキャナの読取り面が汚れた場合には、装置のカバー等を開いて布等を使って手作業により清掃することになり、手間がかかるという問題があった。また、後者の装置においては、カード処理装置内にスキャナの読取り面を専用に清掃する清掃機構を特別に設ける構造であるため、装置全体が大型化するというばかりではなく、部品点数が増加するため製造コストが増大するという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、スキャナーの清掃を容易にするとともに装置の小型化を図り、かつ製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、駆動源によって回転する駆動ローラと、この駆動ローラからカード搬送方向に離間した従動ローラと、これら従動ローラと駆動ローラとの間に張架された無端ベルトと、この無端ベルトの表面に設けられカードの前端または後端に係合する搬送部材と、前記駆動ローラと一体的に回転する搬送ローラと、この搬送ローラに対接するピンチローラと、前記無端ベルト上を搬送されるカードの情報を読み取るスキャナーと、前記搬送部材に前記スキャナーの読取り面を清掃する清掃部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カードを搬送する搬送部材にスキャナーの読取り面を清掃する清掃部材を設け、この搬送部材によってカードを搬送する際に同時にスキャナーの清掃をするようにしたことにより、清掃部材を搬送する専用の駆動装置が不要になるため、装置の小型化を図ることができるとともに製造コストを低減することができる。また、カードの搬送毎にスキャナーの読取り面を清掃できるため、スキャナーでカードの情報を読み取る際は、常に読取り面が清浄な状態になっているので、スキャナーによってカードの情報を読み誤ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るカード処理装置においてアッパーケースを外した状態を示す平面図、図2は同じく側面図、図3は図1におけるIII-III 線断面図、図4は図1におけるIV-IV 線断面図、図5は同じくスキャナーでカードの情報を読み取っている状態を示す図1におけるIII-III 線断面図、図6は同じくスキャナーによるカードの情報の読み取りが終了し、搬送部材によってカードを搬送している状態を示す図1におけるIII-III 線断面図、図7はスキャナーで情報が読み取られたカードを搬送している状態を示す図1におけるIV-IV 線断面図である。なお、図3および図5ならびに図6においては、説明の便宜上第1および第2のピンチローラの図示は省略してある。
【0008】
図3に全体を符号1で示すカード処理装置は、アッパーケース2とロアーケース3とによって筺体が形成されており、これらアッパーケース2の底部4とロアーケース3の天井部5との間にカード搬送路6が形成されている。このカード搬送路6の図中右端側にカード挿入口部材7が取り付けられ、このカード挿入口部材7には、カード搬送路6に連通されたカード挿入口8が設けられており、このカード挿入口8と反対側であるカード搬送路6の左端にはカード排出口9が設けられている。
【0009】
10はスキャナーであって、カードCの表面に付されている情報を読み取る読取り面11が、カード搬送路6に近接して対向するようにアッパーケース2に取り付けられており、このスキャナー10は、図4に示すように後述する第1および第2のピンチローラ39,41間に位置付けられている。アッパーケース2の底部4には、スキャナー10の読取り面11に対応した部位およびピンチローラ39,41をカード搬送路6に臨ませる部位に窓12が設けられている。
【0010】
図1において、13は駆動源としてのモータであって、ロアーケース3の一方の側板14に取り付けられており、このモータ13の出力軸は側板14の外側に突出し、この出力軸には、図2に示すようにモータギア15が軸着されている。このモータギア15には大径ギア16が噛合し、この大径ギア16と同軸上に一体形成された小径ギア17には伝達ギア18が噛合し、これらギア16,17,18によって減速歯車機構19を構成している。
【0011】
20はロアーケース3の両側板14,21間に回転自在に支持された駆動軸であって、この駆動軸20の側板14から外側に突出した部位には駆動プーリ22が軸着されており、この駆動プーリ22と上記したギア18に同軸上に一体形成されたプーリ23との間には駆動伝達用ベルト24が張架されている。駆動軸20のロアーケース3内に位置する部位には、図1に示すように軸線方向が長さDに形成された駆動ローラ25と、軸線方向が長さDより短くかつ駆動ローラ25の径よりもわずかに大きい径に形成された第1の搬送ローラ26とが軸着されている。
【0012】
27はロアーケース3の両側板14,21間に回転自在に支持された従動軸であって、駆動軸20よりもカード搬送方向である矢印A方向に離間しており、この従動軸27の側板14の外側に突出した部位には従動プーリ28が軸着され、この従動プーリ28と上記した駆動プーリ22との間には駆動伝達用ベルト29が張架されている。従動軸27のロアーケース3内に位置する部位には、軸線方向が長さDに形成され上記した駆動ローラ25と同じ径に形成された従動ローラ30と、軸線方向が長さDよりも短くかつ従動ローラ30の径よりもわずかに大きい径でかつ上記した第1の搬送ローラ26と同じ径に形成された第2の搬送ローラ31とが軸着されている。
【0013】
これら駆動ローラ25と第1の搬送ローラ26とは、図3に示すようにロアーケース3の天井部5に設けた窓32からカード搬送路6内に臨み、従動ローラ30と第2の搬送ローラ31とは、ロアーケース3の天井部5に設けた窓33からカード搬送路6内に臨んでいる。駆動ローラ25と従動ローラ30との間には、幅がDに形成された無端ベルト35が張架されており、この無端ベルト35の表面の一部には、この無端ベルト35の走行方向(矢印A−B方向)と直交する方向で無端ベルト35の幅Dと同じ長さに形成された搬送部材36が突設されている。第1の搬送ローラ26と第2の搬送ローラ31との軸間距離L1は、図4に示すようにカードCの全長L2よりも長く形成されている。
【0014】
この搬送部材36は、後述するように無端ベルト35が矢印A−B方向に走行することにより、カード搬送路6内であって、第1のピンチローラ39と第1の搬送ローラ26とで挟持されてなく、かつ第2のピンチローラ41と第2の搬送ローラ31とで挟持されていないカードCの後端と前端とに係合し、カードCを矢印A−B方向へ搬送する。また、この搬送部材36の先端には清掃部材37が着脱自在に取り付けられており、この清掃部材37は、後述するように無端ベルト35が走行することにより、上記したスキャナー10の読取り面11に摺接する。清掃部材37としては、刷毛や清掃用の不織布等が用いられ、搬送部材36に対して容易に着脱できる構造であることが望ましい。また、搬送部材36と清掃部材37とを一体に形成し、これを無端ベルト35に対して着脱自在の構造としてもよい。
【0015】
図4において、39はアッパーケース2の両側板に横架された軸40に回転自在に支持された第1のピンチローラであって、窓12からカード搬送路6内に臨み上記した第1の搬送ローラ26に対接している。41はアッパーケース2の両側板に横架された軸42に回転自在に支持された第2のピンチローラであって、窓12からカード搬送路6内に臨み上記した第2の搬送ローラ31に対接している。
【0016】
図1において、43はロアーケース3の他方の側板21に取り付けられたソレノイドであって、進退自在なロッド44には、図3に示すように側板21に軸45を介して揺動自在に支持されたストッパ部材46の下端部46aが枢着されている。ストッパ部材46はクランク状に形成されており、上端部に形成した係止部46bが窓33からカード搬送路6に進退自在となっている。すなわち、ソレノイド43のロッド44が後退することにより、ストッパ部材46が軸45を中心として図中時計方向へ回動し、係止部46bが窓33からカード搬送路6内に進出して、カード搬送路6内を矢印A方向に搬送されてきたカードCの前端に係合し、カードCを所定の読取り位置に停止させる。一方、ソレノイド43のロッド44が前進することにより、ストッパ部材46が軸45を中心として図7中反時計方向へ回動し、係止部46bがカード搬送路6から退出する。
【0017】
次に、主に図4ないし図7を用いて、このように構成されたカード処理装置において、スキャナーの読取り面を清掃する動作について説明する。予め、図4に示すように、ソレノイド43のロッド44を後退させておくことにより、ストッパ部材46の係止部46bを窓33からカード搬送路6内に進出させておく。この状態で、カードCをカード挿入口8からカード搬送路6内に挿入すると、カードCが挿入されたことを図示を省略したセンサが検知することにより、モータ13が正方向へ駆動し、モータ13の駆動は減速歯車機構19および駆動伝達ベルト24を介して駆動軸20に伝達され、駆動軸20が図中反時計方向に回転する。
【0018】
したがって、第1の搬送ローラ26とこれと対接している第1のピンチローラ39とによって前端部が挟持されたカードCは、第1の搬送ローラ26の反時計方向への回転により、カード搬送路6内を矢印A方向に搬送される。同時に、駆動軸20に軸着されている駆動ローラ25が反時計方向へ回転し、かつ駆動伝達用ベルト29を介して従動軸27が反時計方向へ回転するから、この従動軸27に軸着された従動ローラ28が反時計方向へ回転する。したがって、駆動ローラ25と従動ローラ28間に張架された無端ベルト35が反時計方向に走行する。
【0019】
第1の搬送ローラ26と第1のピンチローラ39とによって、カード搬送路6内を矢印A方向へ搬送されるカードCの後端が、これら両ローラ26,39による挟持が解除されると、第1の搬送ローラ26と第2の搬送ローラ31との軸間距離L1がカードCの全長L2よりも長く形成されているため、カードCは第2の搬送ローラ31と第2のピンチローラ41とにも挟持されない状態になる。この状態でカードCは一旦搬送が停止し、この後、反時計方向へ走行する無端ベルト35の搬送部材36が、図5に示すようにカードの後端に係合することにより、カードCは再び矢印A方向へ搬送される。カードCが矢印A方向へわずかに搬送され、搬送部材36がスキャナー10の矢印B側端部に位置付けられ、前端がストッパ部材46の係止部46bに当接することにより、モータ13の駆動が停止しカードCの搬送も停止する。このカードCの停止状態で、スキャナー10によってカードCの表面の情報が読み取られる。
【0020】
スキャナー10による読取りの結果、カードCが正カードと判定された場合は、ソレノイド43のロッド44が前進し、図6に示すように、ストッパ部材46の係止部46bがカード搬送路6内から退出する。同時に、モータ13が正方向へ駆動し、無端ベルト35が反時計方向に走行するため、カードCは搬送部材36によって矢印A方向へ搬送されるとともに、第1および第2の搬送ローラ26,31が反時計に回転する。
【0021】
搬送部材36によって矢印A方向へ搬送されたカードCは、前端部が第2の搬送ローラ31と第2のピンチローラ41とによって挟持されると、両ローラ31,41とによって矢印A方向へ搬送され、カード排出口9から図示を省略したカードリーダ内に搬送される。このとき、無端ベルト35の搬送部材36も矢印A方向に走行し、スキャナー10の矢印A側の端部に位置付けられる。したがって、搬送部材36の先端に取り付けられた清掃部材37がスキャナー10の読取り面11の矢印B方向の端部から矢印A方向の端部まで摺接するため、この清掃部材37によって読取り面11の汚れが除去される。
【0022】
図示を省略したカードリーダにおいて情報処理されたカードCが、図7に示すようにカード処理装置1のカード排出口9からカード搬送路6に挿入されると、これを図示を省略したセンサが検知することにより、モータ13が逆方向へ駆動する。したがって、モータ13の駆動は減速歯車機構19および駆動伝達ベルト24を介して駆動軸20に伝達され、駆動軸20が図中時計方向に回転する。
【0023】
第2の搬送ローラ31と第2のピンチローラ41とに後端部が挟持されたカードCは、第2の搬送ローラ31の時計方向への回転により、これら両ローラ31,41に挟持されてカード搬送路6内を矢印B方向に搬送される。同時に、駆動軸20に軸着されている駆動ローラ25が時計方向へ回転し、かつ駆動伝達用ベルト29を介して従動軸27が時計方向へ回転するから、この従動軸27に軸着された従動ローラ28が時計方向へ回転する。したがって、駆動ローラ25と従動ローラ28間に張架された無端ベルト35が時計方向に走行する。
【0024】
第2の搬送ローラ31と第2のピンチローラ41とによって、カード搬送路6内を矢印B方向へ搬送されるカードCの前端がこれら両ローラ31,41による挟持が解除されると、カードCは第1の搬送ローラ26と第1のピンチローラ39とにも挟持されていない状態になる。この状態で、カードCは一旦搬送が停止され、時計方向へ走行する無端ベルト35の搬送部材36が、カードCの前端に係合することにより、カードCは再び矢印B方向へわずかに搬送され、後端部が第1の搬送ローラ26と第1のピンチローラ39とによって挟持されると、両ローラ26,39とによって矢印B方向へ搬送され、カード挿入口8から返却される。このとき、無端ベルト35の搬送部材36も矢印B方向に走行し、スキャナー10の矢印B側の端部に位置する。したがって、搬送部材36の先端に取り付けられた清掃部材37がスキャナー10の読取り面11の矢印A方向の端部から矢印B方向の端部まで摺接するため、この清掃部材37によって読取り面11の汚れが除去される。
【0025】
このように、カードCを搬送する搬送部材36にスキャナー10の読取り面11を清掃する清掃部材37を設けたことにより、清掃部材37を搬送する専用の駆動装置が不要になるため、装置の小型化を図るとともに製造コストを低減することができる。また、カードCの搬送毎にスキャナー10の読取り面11を清掃することができるため、スキャナー10でカードCの情報を読み取る際は、常に読取り面11が清掃された状態になっているので、スキャナー10によってカードCの情報を読み誤ることがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るカード処理装置においてアッパーケースを外した状態を示す平面図である。
【図2】本発明に係るカード処理装置の側面図である。
【図3】図1におけるIII-III 線断面図である。
【図4】図1におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】本発明に係るカード処理装置において、スキャナーでカードの情報を読み取っている状態を示す図1におけるIII-III 線断面図である。
【図6】本発明に係るカード処理装置において、スキャナーによるカードの情報の読み取りが終了し、搬送部材によってカードを搬送している状態を示す図1におけるIII-III 線断面図である。
【図7】本発明に係るカード処理装置において、スキャナーで情報が読み取られたカードを搬送している状態を示す図1におけるIV-IV 線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…カード処理装置、6…カード搬送路、8…カード挿入口、9…カード排出口、10…スキャナー、11…読取り面、13…モータ、25…駆動ローラ、26…第1の搬送ローラ、30…従動ローラ、31…第2の搬送ローラ、35…無端ベルト、36…搬送部材、37…清掃部材、39…第1のピンチローラ、41…第2のピンチローラ、C…カード。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転する駆動ローラと、この駆動ローラからカード搬送方向に離間した従動ローラと、これら従動ローラと駆動ローラとの間に張架された無端ベルトと、この無端ベルトの表面に設けられカードの前端または後端に係合する搬送部材と、前記駆動ローラと一体的に回転する搬送ローラと、この搬送ローラに対接するピンチローラと、前記無端ベルト上を搬送されるカードの情報を読み取るスキャナーと、前記搬送部材に前記スキャナーの読取り面を清掃する清掃部材とを備えたことを特徴とするカード処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−172087(P2006−172087A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362981(P2004−362981)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】