説明

カード処理装置

【課題】偏心カムを駆動するためのアクチュエータを、場所や方向の制約を受けずに配置できるとともに、偏心カムのロック解除を容易に行うことができ、しかもコスト低減が可能なカード処理装置を提供する。
【解決手段】カードの異常検出時にカードの取り出しを阻止する阻止機構100は、偏心カム60と、支持具53と、偏心カム用ソレノイド51とを備える。支持具53は、十字状に配置された4つのアーム53a〜53dを備えており、4つのアームを含む第1の平面上での重心位置が、当該第1の平面における第1の回転中心と一致し、かつ、第1の回転中心を含み第1の平面と直交する第2の平面上での重心位置が、当該第2の平面における第2の回転中心と一致する構造を有している。そして、アーム53a〜53dのうちの1つが偏心カム60と係合し、残りのアームのうちの1つが偏心カム用ソレノイド51に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードやICカード等の情報が記録されたカードに対して、情報の読み取りまたは書き込みを行うカード処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカード処理装置は、ローラを回転させることにより、カード挿入部の挿入口から挿入されたカードを装置内部へ搬送する。そして、カード処理装置は、読み取りヘッドを用いて、カードに記録された情報を読み取り、または、書き込みヘッドを用いて、カードに情報を書き込む。その後、カード処理装置は、ローラを逆回転させることにより、カードを挿入口から排出する。
【0003】
ところで、ATM(現金自動取引処理装置)のような上位装置に取り付けられているカード処理装置では、不正を働こうとする者が、意図的にカードをカード処理装置内に詰まらせようとして、カード処理装置に対して何らかの細工を施すことがある。この場合、ATMの利用者がカード処理装置の挿入口にカードを挿入すると、カードがカード処理装置内に詰まってしまう。このような異常が発生すると、利用者は異常を解消してもらうために、ATMが設置されている場所を離れて、係員の居る所へ行く。すると、その隙に不正を働こうとする者が工具等を用いてカード処理装置内に詰まったカードを取り出して持ち去り、その後カードを悪用するという問題が生じる。
【0004】
上記のような問題を解決するために、カード挿入部からカードが取り出されることを阻止する阻止機構を備えたカード処理装置が、後掲の特許文献1〜3で提案されている。この阻止機構は、回転可能な偏心カムと、この偏心カムを回転させるアクチュエータとを備えている。そして、カードの詰まりが検出されると、アクチュエータが作動して偏心カムが回転し、偏心カムの外周部分がカードに接触することで、カード挿入部からのカードの取り出しを阻止するようにしている。
【0005】
図26および図27は、そのような阻止機構の詳細を示す図である。各図の(A)は阻止機構の側面図、(B)は阻止機構の平面図を示している。なお、(B)では(A)のカード2、カード挿入部3、およびシャッタ14等の図示を省略している。
【0006】
図26は、アクチュエータであるソレノイド13が駆動していない状態を示している。偏心カム10は、軸11を中心に回転するように設けられている。また、図26(A)に示すように、偏心カム10は、軸11に対して偏心している。偏心カム10のカード2に面する側の外周9は、略円弧状に形成されている。このため、偏心カム10の軸11から外周9までの距離は一定ではない。偏心カム10の外周9には、軸11からの距離が、搬送路5を搬送されるカード2に接触しない長さL1である外周部分9aと、搬送路5を搬送されるカード2に接触する長さL2である外周部分9bとが含まれている。図26(A)の状態では、外周部分9aが搬送路5に対して向いているが、外周部分9aはカード2に接触していない。一方、後述するように偏心カム10を軸11を中心に時計回りに回転させることにより、外周部分9bを搬送路5に対して向けると、図27(A)に示すように外周部分9bがカード2の表面に接触する。
【0007】
軸11には、ねじりコイルばね12が取り付けられている。ねじりコイルばね12は、偏心カム10を時計回りに回転させるように偏心カム10に力を加えている。これは、ねじりコイルばね12の下端部が、偏心カム10に係っているからである。一方、ねじりコイルばね12の上端部は、壁34に当たっている。
【0008】
図26(B)に示すように、ソレノイド13のプランジャ54の先端には、ロッド18が取り付けられている。また、プランジャ54の周りにはコイルばね55が設けられている。コイルばね55は、ロッド18にソレノイド13から離れる方向の力を加えている。ロッド18には、偏心カム10の上部と当接して、偏心カム10を図26(A)の姿勢に支持する支持具97が連結されている。支持具97は、アーム84、ローラ87、およびコイルばね88等から構成されている。アーム84は、軸86を中心に回転する。軸86は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定されている。軸86の周りにはコイルばね88が設けられている。コイルばね88の一端は、アーム84から突出した爪90に当たっている。コイルばね88の他端は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定された爪89に当たっている。アーム84の中央には、ピン83が設けられている。ピン83は、ロッド18に設けられた溝85に挿入されている。アーム84の左側には、ローラ87が設けられている。ローラ87は、軸92を中心に回転することができる。また、ローラ87は、偏心カム10の上部に取り付けられたブロック91の右側面に接触している。このため、ねじりコイルばね12の弾性力により偏心カム10が軸11を中心に時計回りに回転しようとしても、偏心カム10の回転は阻止される。
【0009】
ソレノイド13が駆動すると、プランジャ54がソレノイド13の内部に引き込まれる。すると、図26(B)において、ロッド18の溝85が上方に移動して、溝85の端がピン83に当たり、ピン83も上方に移動する。これにより、図26(B)において、アーム84が軸86を中心に時計回りに回転する。このとき、ローラ87が軸92を中心に回転する。このため、ローラ87とブロック91との間に発生する摩擦力は小さい。
【0010】
カード処理装置1がカード2の詰まりを検出したとき、上述したようにソレノイド13が駆動する。図27は、ソレノイド13が駆動した状態を示している。図27(B)において、プランジャ54およびロッド18が上側に移動している。溝85の移動により、ピン83が上側に移動している。ピン83の移動により、アーム84が、軸86を中心として時計回りに回転している。ローラ87がブロック91の右側面から背面へ退避するため、偏心カム10が、ねじりコイルばね12の弾性力により軸11を中心に回転し、図27(B)において、偏心カム10の上部が右側に移動している。このとき、コイルばね88の弾性力により、アーム84が軸86を中心として反時計回りに回転しようとする。しかし、コイルばね88の弾性力により、ブロック91の背面とローラ87とが接触して、アーム84の回転を妨げている。図27(A)に示すように、偏心カム10が軸11を中心に時計回りに回転することにより、偏心カム10の外周部分9bがカード2の表面に接触する。このとき、偏心カム10からカード2の表面に対して押圧力が働いている。
【0011】
偏心カム10がカード2の表面に接触することで、上記の押圧力とともに、カード2と偏心カム10の外周部分9bとの間で大きな摩擦力が働く。このため、不正を働こうとする者が、カード挿入部3の挿入口3aから、工具などを使用して、詰まったカード2を引き抜こうとしても容易に抜くことができない。
【0012】
図27(A)の状態において、不正を働こうとする者が、さらに大きな力をかけてカード2を挿入口3aから引き抜こうとした場合を想定する。この場合、カード2を大きな力で引き抜こうとすることで、カード2と偏心カム10との間の摩擦力により、偏心カム10が軸11を中心にさらに時計回りに回転する。すると、カード2に接触している外周部分9bは、カード2を引き抜こうとする方向とほぼ同じ方向に移動することになる。この状態を図28に示す。
【0013】
図28において、偏心カム10は、軸11に対して偏心しているため、図27(A)において、カード2に接触している外周部分9bよりもさらに軸11からの距離L2’が長い外周部分9b’が、カード2に接触する。距離L2’は、距離L2よりも長い。これにより、さらに大きな押圧力が偏心カム10からカード2の表面に働き、偏心カム10とカード2との間の摩擦力もさらに大きくなる。このため、ますます、カード2を引き抜くことが困難になる。
【0014】
偏心カム10がカード2に押圧力を加えている状態で、偏心カム10の位置をロックするロック機構を設けることにより、カード処理装置1の外部からカード2を押したり引いたりしても、カード2を移動させないようにすることができる。図29および図30は、阻止機構にロック機構を付設した場合の構造図である。各図において(A)は側面図、(B)は正面図を示している。なお、(A)、(B)では、阻止機構の支持具97、ソレノイド13、コイルばね12等の図示を省略している。また、(B)では、壁34、シャッタ14、カード挿入部3等の図示を省略している。この例では、偏心カム10の外周9に、歯部108が形成されている。
【0015】
図29は、ソレノイド13が駆動していない状態を示している。壁34には、台130が取り付けられている。台130の軸138を中心に回転するように、固定具134が取り付けられている。固定具134は、偏心カム10の位置を、図30(A)の位置に固定する。図29(B)において、固定具134の左側には、爪137が設けられている。固定具134の上側には、爪135が設けられている。固定具134の右側の爪133には、コイルばね131の一端が取り付けられている。コイルばね131の他端は、台130の穴132に引っかけられている。このため、コイルばね131の弾性力により、固定具134には、軸138を中心として固定具134を反時計回り方向に回転させようとする力が働いている。固定具134の左辺139は、レバー19に当たっている。このため、固定具134の回転は、図29(B)に示される状態で停止している。図29(B)において、レバー19はハッチングで示されている。
【0016】
カード処理装置が、カード2の詰まりを検出すると、ソレノイド13(図26参照)を駆動する。ソレノイド13が駆動すると、図29(A)において、偏心カム10が、軸11を中心に時計回り方向に回転する。そして、外周9の歯部108がカード2に接触する。このときの状態を図30に示す。
【0017】
図30において、カード2を引き抜こうとすると、歯部108とカード2との摩擦力により、偏心カム10が、さらに時計回りに回転しようとする。これにより、歯部108がさらにカード2に押し付けられ、カード2が抜き取られることが防止される。
【0018】
偏心カム10が時計回りに回転したため、図30(A)において、偏心カム10のレバー19が右上に移動している。このため、図30(B)に示すように、レバー19が固定具134の左辺139から外れている。よって、固定具134が、コイルばね131の弾性力により、軸138を中心に反時計回り方向に回転する。そして、上側の爪135とレバー19が接触する位置で、固定具134の回転が停止する。これにより、レバー19が、下側に移動できなくなる。すなわち、偏心カム10がロック状態となる。
【0019】
この状態において、挿入口3aからカード2をさらに挿入させた場合、カード2と歯部108との摩擦力により、偏心カム10が反時計回りに回転しようとする。このとき、図30(A)において、レバー19は、左下に移動しようとする。しかし、図30(B)のように、固定具134の爪135とレバー19とが接触しているため、偏心カム10は、反時計回りに回転することができない。これにより、カード処理装置1の外部から、カード2を押したとしても、偏心カム10が回転しないため、カード2は移動しない。一方、カード2を引いたときには、カード2と歯部108との摩擦力により、偏心カム10が時計回りに回転し、歯部108が、カード2の表面に対してさらに押し付けられる。このため、カード2を抜くことができない。
【0020】
よって、歯部108がカード2に接触した状態で、カード処理装置の外部からカード2を押したり引いたりしても、カード2は、移動することがない。これにより、カード処理装置内に詰まったカード2が持ち去られるのを防止することができる。
【0021】
偏心カム10のロック状態を解除するには、図30(B)において、固定具134の爪137を上側に持ち上げ、時計回りに回転させる。そして、図30(A)において、レバー19を押し下げ、偏心カム10を反時計回りに回転させる。すると、支持具97のアーム84(図27参照)が、コイルばね88の弾性力により、軸86を中心に反時計回り方向へ回転するので、ローラ87が、偏心カム10のブロック91の右側面に接触し(図26参照)、偏心カム10の位置が固定されて、図29に示す状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第4223382号公報
【特許文献2】特許第4346470号公報
【特許文献3】特許第4401212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述した従来のカード処理装置においては、図26で説明したように、アーム84のピン83がロッド18の溝85に挿入されていて、ソレノイド13が駆動すると、ロッド18が移動して溝85の端がピン83に当たり、ロッド18と共にピン83が移動することにより、アーム84が軸86を中心として回転するようになっている。
【0024】
ここで、図26(B)からわかるように、ソレノイド13がアーム84を牽引する位置、すなわちピン83の位置は、アーム84の支点である軸86と、アーム84の作用点であるローラ87とを結ぶ線上にある。このように、アーム84の支点と作用点とを結ぶ線上の点を牽引する構造では、アクチュエータであるソレノイド13を配置する場所と方向が制約を受け、例えば、図26(B)の位置から90°右方向へ回転した位置にソレノイド13を配置することはできなかった。このため、周囲の部品や配線の邪魔にならないようにソレノイド13の位置を変更しようとしても、自由な位置にソレノイド13を配置することができないという問題があった。
【0025】
また、従来のカード処理装置では、ソレノイド13が駆動していない状態で、振動衝撃が加わった場合に、偏心カム10と支持具97との係合が外れて(図27の状態)誤作動することを防止するために、偏心カム10と支持具97との接触力を大きくする必要がある。このため、偏心カム10に時計回り方向の付勢力を与えるねじりコイルばね12のばね力を強くして、偏心カム10からアーム84のローラ87に大きな荷重をかけていた。したがって、偏心カム10のロック解除時には、この強いばね力に抗してレバー19を押し下げねばならず、その操作が容易ではなかった。また、アーム84の作用点の摩擦を低減するために、ベアリングの役割を果たすローラ87を設ける必要があり、コスト高になるという問題があった。
【0026】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、偏心カムを駆動するためのアクチュエータを、場所や方向の制約を受けずに配置できるとともに、偏心カムのロック解除を容易に行うことができ、しかもコスト低減が可能なカード処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係るカード処理装置は、情報が記録されたカードが挿入されるカード挿入部と、このカード挿入部から挿入されたカードの異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段が異常を検出した場合に、カード挿入部からのカードの取り出しを阻止する阻止機構とを備える。阻止機構は、偏心カムと、支持具と、アクチュエータとを備えている。偏心カムは、回動自在に設けられ、カードから離間して当該カードに押圧力を与えない第1の位置と、カードと接触して当該カードに押圧力を与える第2の位置とへ変位可能となっている。支持具は、回動自在に設けられ、偏心カムと係合することにより、当該偏心カムを第1の位置に支持し、偏心カムとの係合を解除することにより、偏心カムを第1の位置から第2の位置へ変位させる。アクチュエータは、異常検出手段が異常を検出した場合に、支持具と偏心カムとの係合が解除されるように、支持具を回動させる。
【0028】
また、本発明では、支持具は、十字状に配置された4つのアームを備えており、4つのアームを含む第1の平面上での重心位置が、当該第1の平面における第1の回転中心と一致し、かつ、第1の回転中心を含み第1の平面と直交する第2の平面上での重心位置が、当該第2の平面における第2の回転中心と一致する構造を有している。そして、4つのアームのうちの1つが偏心カムと係合し、残りのアームのうちの1つがアクチュエータに連結されている。
【0029】
このような構成によると、アクチュエータは、4つのアームのうち偏心カムと係合するアーム以外の任意のアーム(すなわち作用点を有しないアーム)に連結されるので、従来のようにアームの支点と作用点とを結ぶ線上の点を牽引するのではなく、当該線上の点以外の箇所を牽引することになる。このため、アクチュエータを配置する場所と方向の制約が緩和され、配置の自由度を高めることができる。
【0030】
また、支持具は、第1の平面と第2の平面のいずれにおいても、重心位置が回転中心と一致する構造となっているので、前後方向・左右方向・上下方向の全てに対してバランスが取れており、どの方向に振動衝撃が加わっても、支持具に回転モーメントが発生しない。このため、偏心カムから支持具に大きな荷重をかけなくても、振動衝撃により偏心カムと支持具との係合が外れて誤動作することがないので、偏心カムに強いばね力を作用させる必要がなく、偏心カムのロック解除の操作が容易となる。
【0031】
さらに、支持具と偏心カムとが係合する部分(作用点)の荷重が小さいので、従来のような摩擦低減のためのローラを支持具に設ける必要がなく、コストを低減することができる。
【0032】
本発明に係るカード処理装置は、アームが、第1アームと、この第1アームと反対方向に延びる第2アームと、第1および第2アームと直交する第3アームと、この第3アームと反対方向に延びる第4アームとからなり、第1アームはアクチュエータに連結され、第2アームは第1アームと釣り合う錘を有し、第3アームは、第1および第2アームに対してアクチュエータと反対側へ延びて偏心カムと係合し、第4アームは、第1および第2アームに対してアクチュエータと同じ側へ延びて第3アームと釣り合う錘の機能を有するような構成としてもよい。
【0033】
本発明に係るカード処理装置は、偏心カムが、カードに接触するカム部と、支持具と係合する係合部と、カム部とカードとの接触を解除する際に操作されるレバーとを備えているような構成としてもよい。
【0034】
本発明に係るカード処理装置は、偏心カムを第2の位置でロックするためのロック機構をさらに備えていてもよい。このロック機構は、偏心カムのレバーに近づく方向であるロック方向と、レバーから離れる方向である解除方向とに回動可能な固定具を含む。好ましい実施形態では、固定具は、係止部と、第1の爪部と、第2の爪部とを有している。偏心カムをロックする際には、当該偏心カムの第2の位置への移動に伴って、固定具がロック方向に回動したときに、係止部が偏心カムのレバーと係止する。また、偏心カムのロックを解除する際には、固定具を解除方向に回動させた後、レバーを押し下げたときに、当該レバーが第1の爪部を押すことにより、固定具が再びロック方向に回動する。さらに、偏心カムのロックが解除されて当該偏心カムが第1の位置にある状態で、固定具が解除方向に操作されたときには、第2の爪部が、レバーと当接して、当該レバーに対し、偏心カムと支持具との係合力を強める方向の力を付与する。
【0035】
このような構成によると、偏心カムがカードを押圧した状態でロックされるので、カード挿入部からカードが取り出されるのをより確実に阻止することができる。また、偏心カムがロックされていないときに、誤って固定具が解除方向に操作されたとしても、第2の爪部から偏心カムのレバーに対して、偏心カムと支持具との係合力を強めるように作用する力が働くので、偏心カムと支持具との係合が外れて偏心カムがロック状態になることはなく、阻止機構の誤動作が防止される。
【0036】
本発明に係るカード処理装置は、偏心カムのレバーに、支持具の第1の爪部を押すための突起を設けた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、偏心カムを駆動するためのアクチュエータを、場所や方向の制約を受けずに配置できるとともに、偏心カムのロック解除を容易に行うことができ、しかもコスト低減が可能なカード処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るカード処理装置の概略構成図である。
【図2】カード処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】カード挿入部付近の構造を示す斜視図である。
【図4】阻止機構およびロック機構の詳細構造図である。
【図5】偏心カムを示す図である。
【図6】支持具の断面図である。
【図7】支持具のバランスの原理を説明するための図である。
【図8】偏心カムが第1の位置にあるときの阻止機構の図である。
【図9】図8の状態におけるロック機構の動作を説明する図である。
【図10】偏心カムが第2の位置にあるときの阻止機構の図である。
【図11】図10の状態におけるロック機構の動作を説明する図である。
【図12】ロック解除時の操作を説明する図である。
【図13】ロック解除時の操作を説明する図である。
【図14】カード処理の概略を示すフローチャートである。
【図15】カード処理の詳細を示すフローチャートである。
【図16】カード処理の詳細を示すフローチャートである。
【図17】カード処理の詳細を示すフローチャートである。
【図18】カード処理の詳細を示すフローチャートである。
【図19】カード処理の詳細を示すフローチャートである。
【図20】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図21】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図22】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図23】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図24】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図25】カード処理装置におけるカードの位置を示す図である。
【図26】従来の阻止機構を示す図である。
【図27】従来の阻止機構を示す図である。
【図28】従来の阻止機構を示す図である。
【図29】固定具が設けられた従来の阻止機構を示す図である。
【図30】固定具が設けられた従来の阻止機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。
【0040】
まず、本発明の実施形態に係るカード処理装置の概略構造を、図1を参照しながら説明する。図1において、挿入検出センサ17は、カード2がカード挿入部3の挿入口3aに挿入されたことを検出する。カード2には、情報が記録されている。カード2が磁気カードの場合には、カード2の表面に磁気ストライプが備わっていて、この磁気ストライプに磁気情報が記録されている。カード2が接触式ICカードの場合には、カード2の表面にIC接点が備わり、カード2の内部にIC接点と接続されたICチップが備わっている。カード2が非接触式ICカードの場合は、カード2の内部に通信用のアンテナとICチップとが備わっている。接触式ICカードおよび非接触式ICカードでは、ICチップに情報が記録されている。以後の説明では、ICカードとして接触式ICカードを例に挙げる。
【0041】
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、シャッタ14が開く。シャッタ14が開くことにより、カード2がカード処理装置1の内部に搬送可能となる。カード2が搬送される搬送路5は、一点鎖線で示されている。なお、図26では、シャッタ14は搬送路5の上側に配置されているが、図1の場合は、シャッタ14は搬送路5の下側に配置されている。
【0042】
搬送路5は、挿入口3aおよび上下のローラ4によって構成されている。図1には図示されていないモータ25(図2)が駆動することにより、ローラ4が回転する。挿入口3aから挿入されたカード2がローラ4に当接すると、回転するローラ4によって、カード2はカード処理装置1の内部へ搬送される。カード検出センサ6、7、8は、それぞれの位置におけるカード2の有無を検出する。カード2の挿入後、カード検出センサ6がカード2を検出している状態からカード2を検出しない状態になると、シャッタ14が閉じる。
【0043】
挿入されたカード2が磁気カードの場合には、磁気カードの搬送中に、磁気ヘッド15が、磁気カードの磁気情報を読み取ったり、磁気カードに磁気情報を書き込んだりする。挿入されたカード2がICカードの場合には、カード2を所定の位置まで搬送する。そして、IC接点ヘッド16を降下させるための接点ヘッド用ソレノイド28(図2)が駆動することにより、IC接点ヘッド16が降下してICカードのIC接点に接触する。そして、このIC接点ヘッド16が、ICカードから情報を読み取ったり、ICカードに情報を書き込んだりする。読み取りまたは書き込みが終了すると、接点ヘッド用ソレノイド28(図2)が駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16が上昇してIC接点から離れる。カード2に対する情報の読み取りまたは書き込みが終了すると、ローラ4が逆回転して、カード2が挿入口3aへ向けて搬送される。そして、カード検出センサ6がカード2を検出していない状態からカード2を検出した状態になると、シャッタ14が開く。これにより、カード2が、挿入口3aの外にローラ4によって搬送される。
【0044】
挿入口3aの近傍には、阻止機構の一部を構成する偏心カム60が設けられている。偏心カム60は、カム部62やレバー63等を備えており、軸66を中心に回動自在となっている。この偏心カム60を含む阻止機構の詳細構造については、後で説明する。
【0045】
上記のカード処理装置1で生じるカード異常の一例として、カード挿入部3の挿入口3aに何らかの細工がされて、カード2の挿入時または排出時に、カード2が搬送路5の内部に詰まってしまった場合を想定する。ローラ4を回転しようとしているにもかかわらず、ローラ4が回転していない場合に、カード処理装置1は、カード2がカード検出センサ6の位置で詰まっていることを検出する。カード処理装置1が、カード2の詰まりを検出すると、後述の偏心カム用ソレノイド51(図2)が駆動され、これに基づいて、偏心カム60が軸66を中心として時計回り方向に回動する。すると、偏心カム60のカム部62がカード2の表面に接触し、偏心カム60とカード2との間に摩擦力が発生するので、カード2が挿入口3aから外に引き抜かれることが阻止される。この場合の詳細動作については、後で説明する。
【0046】
次に、カード処理装置1の電気的構成につき、図2を参照しながら説明する。図2において、CPU20は、カード処理装置1の各部を制御したり各部から情報を取得したりする。磁気ヘッド15は、カード2が磁気カードの場合に、カードの磁気ストライプから磁気情報を読み取ったり、磁気ストライプに磁気情報を書き込んだりする。IC接点ヘッド16は、カード2がICカードの場合に、カードのIC接点と接触して、ICチップから情報を読み取ったり、ICチップに情報を書き込んだりする。
【0047】
モータ25は、ローラ4(図1)に機構的に接続されており、このモータ25が駆動することによって、ローラ4が回転する。ロータリエンコーダ26は、本発明における異常検出手段の一例であって、モータ25の回転数を検出する。カード検出センサ6、7、8は、搬送路5(図1)の所定の位置に、カード2が存在するか否かを検出する。挿入検出センサ17は、挿入口3aにカード2が存在するか否かを検出する。各センサ6、7、8、17は、カード2の存在を検出すると、OFF状態からON状態に切り替わる。シャッタ用ソレノイド27は、シャッタ14(図1)を開閉するためのソレノイドである。偏心カム用ソレノイド51は、偏心カム60を回動させるためのソレノイドである。接点ヘッド用ソレノイド28は、IC接点ヘッド16を上下に移動させるためのソレノイドである。
【0048】
ROM21は、CPU20の動作プログラムを記憶している。RAM22は、各部を制御する制御パラメータや、磁気ヘッド15およびIC接点ヘッド16などの各部から取得した情報を一時的に記憶する。さらに、RAM22は、磁気ヘッド15またはIC接点ヘッド16によってカードに書き込む情報を一時的に記憶する。通信部24は、上位装置と通信を行う。上位装置の例として、カード処理装置1が搭載されているATMがある。通信部24は、カード2から読み取った情報やカード2が詰まったこと等を示す障害情報等を上位装置に送信する。また、通信部24は、上位装置からカード2に書き込む情報や処理対象のカード2の種類情報等を受信する。
【0049】
次に、カード処理装置1の詳細な構造について、阻止機構とロック機構を中心に、図面を参照しながら説明する。
【0050】
図3は、カード挿入部3付近の構造を示しており、便宜上、挿入口3aの上壁を除去した状態で表してある。また、図1の挿入検出センサ17の図示は省略してある。カード挿入部3は、樹脂成型品のブロックからなり、図1で示したように、カード処理装置1の前面に設けられる。カード挿入部3に形成された挿入口3aには、カード2が図3の矢印方向に挿入される。カード挿入部3の後方には、壁部40が設けられている。壁部40の後面側には、阻止機構100が配設されており、壁部40の前面側には、ロック機構200が配設されている。
【0051】
図4は、阻止機構100とロック機構200の詳細な構造を示している。(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図4では、図3の壁部40の図示を省略してある。
【0052】
阻止機構100は、偏心カム60と、支持具53と、偏心カム用ソレノイド51とを備えている。偏心カム用ソレノイド51は、本発明におけるアクチュエータの一実施形態である。
【0053】
偏心カム60は、軸66(図4(D))を中心として回動自在に設けられており、基部61と、この基部61に取り付けられたカム部62と、基部61と一体に形成されたレバー63と、基部61に固定された係合部64とを備えている。基部61、カム部62およびレバー63は金属からなり、係合部64は樹脂からなる。カム部62には、歯部65が形成されている。軸66は、図示しないフレームに固定されている。なお、図4では図示されていないが、偏心カム60には、ねじりコイルばね(図8(B)の符号69)が付設されており、このばねによって、軸66を中心とする時計回り方向の付勢力が、偏心カム60に作用している。
【0054】
図5は、偏心カム60を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。図26の偏心カム10と同様に、偏心カム60における軸66からカム部62の外周までの距離は等距離ではなく、カム部62の外周に対して軸66が偏心している。図5(C)のように、レバー63の先端付近には、下方へ突出する突起67が一体に設けられている。また、軸66の端部には、Eリング68が装着されている。
【0055】
後述するように、偏心カム60は、軸66を中心として回動することで、カム部62がカード2から離間した位置(図8(D)の位置)と、カム部62がカード2と接触した位置(図10(D)の位置)へ変位可能となっている。
【0056】
図4に戻って、支持具53について説明する。支持具53は、図4(A)、(B)に示されるように、十字状に配置された4つのアーム53a〜53dを備えている。これらのアーム53a〜53dは、樹脂で一体成型されている。支持具53は、軸57に支持されていて、軸57を中心として回動自在となっている。軸57は、図示しないフレームに固定されている。
【0057】
4つのアーム53a〜53dのうち、第1アーム53aは、偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58(図4(C))とピン52(図4(A))を介して連結されている。第2アーム53bは、第1アーム53aと反対方向に延びていて、第1アーム53aと釣り合う錘56を有している。ここでは、錘56は円柱状の金属からなり、第2アーム53bの端部に形成された円筒部に装着されている。第1および第2アーム53a、53bと直交する第3アーム53cは、これらのアーム53a、53bに対して偏心カム用ソレノイド51と反対側へ延びており、先端部が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aと係合するようになっている。第3アーム53cと反対方向に延びる第4アーム53dは、第1および第2アーム53a、53bに対して偏心カム用ソレノイド51と同じ側へ延びており、第3アーム53cと釣り合う錘の機能を有している。
【0058】
支持具53は、偏心カム用ソレノイド51との間に介在するコイルばね59により、図4(A)において、軸57を中心に反時計回り方向に付勢されている。後述するように、支持具53が軸57を中心として回動することで、第3アーム53cは、偏心カム60と係合した位置(図8(A)の位置)と、偏心カム60との係合が外れた位置(図10(A)の位置)へ変位可能となっている。
【0059】
図6は、支持具53の正面断面図を示している。第1アーム53aの端部は、ピン52を介して偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58に連結されており、また、コイルばね59から荷重を受けるので、第1アーム53aには相応の負荷がかかる。そこで、この第1アーム53aとのバランスを取るため、第2アーム53bの端部に錘56が設けられている。なお、符号81は軸57のフランジ部であり、符号82は軸57の端部に装着されたEリングである。
【0060】
次に、支持具53のバランスについて、図7を参照しながら説明する。図7はバランスの原理を説明する図なので、支持具53を模式的に描いてある。(A)は平面図、(B)は正面図である。
【0061】
図7(A)において、X座標とY座標を図の方向に設定し、4つのアーム53a〜53dを含む平面をXY平面とする。このXY平面は、本発明における第1の平面に相当する。このとき、XY平面上で支持具53が矢印a方向へ回転しようとする場合の回転中心は、軸57の軸心となる。この回転中心は、本発明における第1の回転中心に相当する。
【0062】
ここで、前述したように、第1アーム53aと第2アーム53bについては、第2アーム53bに、第1アーム53aと釣り合う錘56が設けられている。また、第3アーム53cと第4アーム53dについては、第4アーム53dが、第3アーム53cと釣り合う錘の機能を有している。したがって、XY平面上で、支持具53の重心の位置は、回転中心(軸57の軸心)と一致する。
【0063】
一方、図7(B)において、Z座標を図の方向に設定し、軸57を含みXY平面と直交する平面をXZ平面とする。このXZ平面は、本発明における第2の平面に相当する。このとき、XZ平面上で支持具53が矢印b方向へ回転しようとする場合の回転中心は、軸57の軸心上にある点Pである。
【0064】
ここで、XZ平面上での支持具53の重心の位置が、同平面上の回転中心(点P)と一致するように、各アーム53a〜53d、錘56、フランジ部81、Eリング82などの形状や重量が設計されている。
【0065】
このように、本実施形態においては、XY平面上で、支持具53の重心位置が回転中心と一致し、XZ平面上でも、支持具53の重心位置が回転中心と一致している。このため、前後・左右・上下のいずれの方向に振動や衝撃が加わっても、支持具53に回転モーメントは発生しない。
【0066】
再び図4に戻って、次はロック機構200について説明する。図4(B)に示すように、ロック機構200は、固定具70と、この固定具70を回動自在に支持する軸78と、固定具70に対して弾性力を付与するねじりコイルばね79と、軸78が固定されているフレーム80とを備えている。
【0067】
固定具70は、弓状に形成された第1部分71と、この第1部分71から軸78と平行に延びる第2部分72と、この第2部分72から垂直に延びる第3部分73とを有している。第1部分71には、ロック解除時に固定具70を回動させるための操作片74と、偏心カム60のレバー63が係止する係止部75と、レバー63と当接可能な爪部77が設けられている。また、第3部分73には、レバー63の突起67(図5(C))により押される爪部76が設けられている。爪部76は本発明における第1の爪部に相当し、爪部77は本発明における第2の爪部に相当する。
【0068】
第1部分71と第3部分73は、フレーム80に固定された軸78に挿通されている。これにより、固定具70は、軸78を中心として、偏心カム60のレバー63に近づく方向であるロック方向(反時計回り方向)と、レバー63から離れる方向である解除方向(時計回り方向)とに回動可能となっている。第1部分71の係止部75には、ギヤ状の凹凸が形成されている。ねじりコイルばね79は、一端がフレーム80に支持され、他端が第1部分71に固定されたピン81(図4(A))に連結されている。このねじりコイルばね79により、固定具70は、図4(C)において、軸78を中心として反時計回り方向に付勢されている。
【0069】
次に、阻止機構100とロック機構200の動作について、図8〜図13を参照しながら説明する。
【0070】
通常時(待機時)には、阻止機構100は図8に示す状態にある。図8において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図8では、ロック機構200の図示を省略してある。
【0071】
図8の状態では、偏心カム用ソレノイド51が作動しておらず、支持具53の第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aに係合している。そして、支持具53は、コイルばね59の弾性力を受けて、図8(A)で軸57を中心として反時計回り方向に付勢されているので、上記の係合状態が維持される。
【0072】
一方、偏心カム60は、ねじりコイルばね69(図8(B))により、軸66を中心とする時計回り方向の力を受けるが、上述したように、第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64と係合しているため、時計回り方向に回動することができない。このため、偏心カム60は、図8(D)に示す位置にある。この位置は、カム部62がカード2から離間してカード2に押圧力を与えない位置であって、本発明における第1の位置に相当する。
【0073】
図9は、阻止機構100が図8の状態にあるときの、ロック機構200の状態を示している。図9において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図9では、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
【0074】
図9の状態では、ねじりコイルばね79により、固定具70は、軸78を中心として反時計回り方向に付勢されており、第1部分71が、偏心カム60のレバー63の側面に当接している。このため、固定具70は、それ以上反時計回り方向に回動することがない。
【0075】
後述する方法によってカード2の詰りが検出されると、阻止機構100は図10に示す状態となる。図10において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図10では、ロック機構200の図示を省略してある。
【0076】
図10の状態では、偏心カム用ソレノイド51が作動し、支持具53の第1アーム53aが、ピン52を介して、偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58に牽引される。したがって、支持具53は、コイルばね59の弾性力に抗して、図10(A)で軸57を中心に時計回り方向へ回動する。このため、第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aから離脱し、第3アーム53cと偏心カム60との係合が解除される。
【0077】
この結果、偏心カム60は、ねじりコイルばね69の弾性力により、軸66を中心として時計回り方向に回動し、図10(D)に示す位置へ変位する。この位置は、カム部62がカード2と接触してカード2に押圧力を与える位置であって、本発明における第2の位置に相当する。
【0078】
この状態では、図27の場合と同様に、カード2を挿入口3aから引き抜こうとすればするほど、カード2に対するカム部62の押圧力が強まり、カード2の引き抜きが困難になる。特に、カム部62に形成されている歯部65がカード2の表面に食い込むことで、カード2を挿入口3aから引き抜くのが一層困難になる。
【0079】
図11は、阻止機構100が図10の状態にあるときの、ロック機構200の状態を示している。図11において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図11では、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
【0080】
偏心カム60が図10(D)に示す位置へ変位するのに伴い、レバー63が上方へ跳ね上がる。このため、ロック機構200の固定具70は、ねじりコイルばね79の付勢力により、図9(C)の位置からさらに反時計回り方向(ロック方向)へ回動して、図11(C)に示すように、レバー63と当接する位置で停止する。このとき、固定具70に固定されたピン81がフレーム80に形成された案内溝80aの端部に当接することによっても、固定具70の回動が規制される。
【0081】
この状態では、固定具70の係止部75の一部が、レバー63と係止している。したがって、レバー63を押し下げて、偏心カム60のカム部62とカード2との接触を解くことは不可能となり、偏心カム60は図10(D)に示す位置でロックされる。これにより、カード2が挿入口3aから引き抜かれるのをより確実に防止することができる。なお、図11の状態においては、係止部75とレバー63との間に、わずかに間隙があってもよい。本発明でいう「係止」は、このような場合も含む。
【0082】
偏心カム60のロックを解除するには、以下のような操作を行う。図12および図13は、この場合の操作を説明する図である。各図において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、各図とも、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
【0083】
まず、図12に示すように、固定具70の操作片74を把持し、軸78を中心として、固定具70を時計回り方向(解除方向)へ回動させる。この回動は、途中までは、ねじりコイルばね79のばね力に抗して行われるが、固定具70をある程度まで回動させた時点で、ねじりコイルばね79がスナップ動作をして、そのばね力が、固定具70を時計回り方向に回転させるように作用する。このため、固定具70を図12(C)の位置まで回動させた後は、操作片74の把持を解除しても、固定具70は反時計回り方向(ロック方向)へは回動せず、この位置で静止する。なお、図12(C)の位置では、固定具70のピン81がフレーム80の案内溝80aの端部に当接することで、固定具70のそれ以上の回動が規制される。
【0084】
次に、図13に示すように、偏心カム60のレバー63を押し下げる。このとき、固定具70の係合部75は、レバー63の側方へ退避しているので、固定具70に邪魔されることなく、レバー63を押し下げることができる。レバー63の押し下げによって、偏心カム60は、軸66を中心として、反時計回り方向に回転する。このため、図13(D)に示すように、カム部62がカード2から離れてゆく。
【0085】
図13の状態から更にレバー63を押し下げると、固定具70の第3部分73に形成された爪部76が、レバー63に設けられた突起67により押されるため、固定具70は、軸78を中心として、反時計回り方向(ロック方向)へ回動を始める。そして、レバー63を最後まで押し下げると、固定具70は図9の位置へ復帰する。
【0086】
このように、レバー63に突起67を設け、この突起67で爪部76を押す構造としたことにより、固定具70を元の位置へ復帰させる際のレバー63の押し下げ量が少なくて済み、操作性が向上する。
【0087】
一方、レバー63の押し下げにより、偏心カム60が反時計回り方向へ回転すると、偏心カム60の係合部64の切欠64aに、支持具53の第3アーム53cの先端が、コイルばね59のばね力を受けて係合し、支持具53は図8の位置へ復帰する。
【0088】
上記のような操作によって、偏心カム60のロックが解除され、阻止機構100は図8の状態へ戻り、ロック機構200は図9の状態へ戻る。
【0089】
以上述べた実施形態によれば、偏心カム用ソレノイド51は、4つのアーム53a〜53dのうち、偏心カム60と係合する第3アーム53c以外の任意のアームに連結することができる。本実施形態では、第1アーム53aに偏心カム用ソレノイド51が連結されているが、第2アーム53bや第4アーム53dに偏心カム用ソレノイド51を連結してもよい。例えば、第2アーム53bに偏心カム用ソレノイド51を連結する場合は、第1アーム53aに錘56が設けられる。
【0090】
第3アーム53c以外のアームは、作用点(偏心カム60と係合する部分)を有しないアームであるから、これらのアームに偏心カム用ソレノイド51を連結すると、当該ソレノイド51は、アームの支点(軸57)と作用点とを結ぶ線上の点以外の箇所を牽引することになる。このため、従来のようにアームの支点と作用点とを結ぶ線上の点を牽引する場合に比べて、偏心カム用ソレノイド51を配置する場所と方向の制約が緩和され、配置の自由度を高めることができる。
【0091】
また、本実施形態では、図7で説明したように、いずれの方向に振動や衝撃が加わっても、支持具53に回転モーメントが発生しないので、偏心カム60から支持具57に大きな荷重をかけなくても、振動衝撃によって偏心カム60と支持具57との係合が外れて阻止機構100が誤動作するおそれがない。したがって、ねじりコイルばね69(図8(B))のばね力を強くする必要がないので、偏心カム60に与える付勢力は小さくて済む。この結果、偏心カム60のレバー63を押し下げる力も小さくて済み、偏心カム60のロック解除の操作が容易となる。
【0092】
また、本実施形態では、支持具57と偏心カム60との係合部分(作用点)の荷重が小さいので、従来のような摩擦低減のためのローラ87(図26)を支持具57に設ける必要がなく、第3アーム53cの先端を、偏心カム60の係合部64に設けた切欠64aに係合させるだけでよい。これによって、ローラを省略してコストを低減することができる。
【0093】
また、本実施形態では、ロック機構200にも工夫が施されている。従来のロック機構では、偏心カムがロックされていないときに、誤って固定具が解除方向に操作されると、偏心カムが回動して誤動作する(ロック状態になる)という問題がある。具体的に述べると、図29(非ロック状態)において、固定具134の爪137を上向きに強く押すと、爪137がレバー19に当接し、偏心カム10が、軸11を中心に時計回り方向の力を受ける。この力が強いと、偏心カム10とアーム84との係合状態が、図26の状態から図27の状態に移行し、偏心カム10が時計回り方向に回動してロック状態となる。
【0094】
一方、本実施形態のロック機構200では、偏心カム60がロックされていない図9の状態において、誤って固定具70が解除方向(時計回り方向)に操作された場合、固定具70の爪部77がレバー63に当接する。この場合、爪部77は先細りの形状をしているので、爪部77のテーパー面がレバー63の下面のエッジと線接触する。そして、固定具70がなおも解除方向に操作されると、爪部77からレバー63に強い力が加わるが、この力は、偏心カム60と支持具53との係合力を強めるように作用する。
【0095】
すなわち、爪部77のテーパー面がレバー63の下面のエッジを押す結果、レバー63は、図9(C)で上向きの力に加えて左向きの力を爪部77から受ける。この左向きの力により、レバー63は、図8(A)において左側へ変位しようとする。これに伴って係合部64も左側、つまり第3アーム53cとの係合が外れる方向とは反対の方向へ変位しようとするので、第3アーム53cと係合部64とがより強く係合することになる。その結果、固定具70が解除方向に操作されても、偏心カム60が誤動作してロック状態(図10)となることはない。
【0096】
次に、カード処理装置1が、挿入されたカード2に対し情報の読み取りおよび書き込みを行ってから、カード2を排出するまでの処理について説明する。また、カード2の挿入時や排出時に、カード2が詰まった場合の処理についても説明する。
【0097】
図14は、カード処理装置1におけるカード処理の概略を示すフローチャートである。ステップS1において、CPU20は、通信部24を介してカード2の種類を上位装置から受信する。ここでは、カード2の種類として、磁気カードおよび接触式ICカードを想定している。次に、ステップS2において、CPU20は、受信したカード2の種類が磁気カードであるか否かを判定する。磁気カードであると判定された場合は、ステップS3において、CPU20は、磁気カードの取り込み処理と、磁気カードからの磁気情報の読み取り処理とを行う。続いて、ステップS4において、CPU20は、磁気カードへの磁気情報の書き込み処理を行う。そして、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS3、S4、S5のカード処理の詳細については、後述する。
【0098】
一方、ステップS2において、受信したカード2の種類が磁気カードでないと判定された場合は、ステップS6において、CPU20は、受信したカード2の種類がICカードであるか否かを判定する。ICカードであると判定された場合は、ステップS7において、CPU20は、ICカードの取り込み処理と、ICカードからの情報の読み取り処理と、ICカードへの情報の書き込み処理とを行う。その後、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS7のカード処理の詳細については、後述する。
【0099】
また、ステップS6において、受信したカード2の種類がICカードでないと判定された場合は、CPU20は、ステップS7の各処理を行わずに、ステップS5に進み、カード2の排出処理を行う。これは、挿入されたカードが、想定した磁気カードまたはICカードのいずれでもないため、カード処理を行うことができないからである。
【0100】
図15は、図14のステップS3における磁気カード取り込み処理および磁気カード読み取り処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS20において、CPU20は、挿入検出センサ17が挿入口3aへのカード2(磁気カード)の挿入を検出したか否かを判定する。図20は、挿入口3aにカード2が挿入された状態を示している。この状態では、カード2の先端が、挿入検出センサ17の位置に達していないため、シャッタ14は閉じている。
【0101】
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、CPU20は、次のステップS21に進む。ステップS21において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、図21に示すように、シャッタ14が搬送路5を開放する。図21は、カード2が、カード処理装置1の内部に挿入された状態を示している。そして、図15のステップS22において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。モータ25が正転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2をカード処理装置1の内部に搬送する方向(正転方向)に回転する。これにより、カード2は、その先端が挿入口3aに最も近いローラ4に当接するまで挿入された時点から、各ローラ4によって、搬送路5を右方向へ一定速度で搬送されてゆく。カード2が搬送される過程で、磁気ヘッド15は、カード2に記録されている磁気情報を読み取る。
【0102】
CPU20は、ロータリエンコーダ26の出力から得られるモータ25の回転数に基づき、フィードバック制御を行うことにより、モータ25の回転速度を一定に保つ。図15のステップS28においてモータ25の駆動を停止するまで、CPU20は、モータ25を一定速度で連続して正転駆動するよう制御する。
【0103】
ステップS23において、CPU20は、ロータリエンコーダ26が、モータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。例えば、CPU20が、モータ25に駆動指令を送信することに対応して、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転を検出しているか否かを判定する。ロータリエンコーダ26が回転数を定期的に出力していれば、カード2は、一定速度で搬送されていることになる。ロータリエンコーダ26が回転数を定期的に出力していなければ(またはロータリエンコーダ26からの出力がなければ)、カード2が詰まっていることになる。すなわち、ステップS23では、カード2が詰まっているか否かが判定される。カード2が詰まっていなければ、ステップS24に進む。カード2が詰まっていれば、ステップS29に進む。
【0104】
ステップS24では、一定速度で搬送されているカード2の磁気ストライプから、磁気ヘッド15によって磁気情報が読み取られ、CPU20は、当該磁気情報をRAM22に記憶させる。ステップS24の処理は、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
【0105】
ステップS25において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2を検出したか否かを判定する。カード検出センサ6が、カード2を検出した場合には、ステップS23の処理に戻る。カード検出センサ6がカード2を検出し続けている間は、CPU20は、カード2が詰まっているか否かを判定し続けている。すなわち、CPU20は、ステップS23、S24、S25の処理を繰り返すことによって、カード2が詰まっているか否かを判定している。図22は、カード検出センサ6がカード2を検出し、また、磁気ヘッド15がカード2に接触して磁気情報を読み取っている状態を示している。
【0106】
図15のステップS25において、カード検出センサ6がカード2を検出しなくなった場合は、カード2が、挿入口3aを通過して、カード処理装置1の内部に取り込まれている状態である。この場合、CPU20は、ステップS26に進み、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。図23は、カード検出センサ6が、カード2を検出しなくなったときのカード2の位置を示している。また、シャッタ用ソレノイド27の駆動が停止し、シャッタ14が閉じている状態を示している。
【0107】
シャッタ用ソレノイド27の駆動が停止されると、ステップS27において、CPU20は、カード検出センサ8がカード2を検出したか否かを判定する。カード検出センサ8の位置にカード2が存在することは、カード2全体が磁気ヘッド15を通過したことを意味する。図24は、カード2の先端がカード検出センサ8の位置に到達し、カード2の後端が磁気ヘッド15を通過した状態を示している。カード検出センサ8がカード2を検出すると、ステップS28において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている磁気情報を上位装置へ送信する。これにより、カード2の磁気情報の読み取り処理が終了する。
【0108】
一方、ステップS27において、カード検出センサ8がカード2を検出していない場合は、磁気ヘッド15とカード2とが接触している状態である。言い換えると、まだカード2の磁気情報読み取りが完了していない状態である。この場合、CPU20は、ステップS23に戻り、モータ25の駆動によるカード2の搬送、および、磁気ヘッド15によるカード2の磁気情報の読み取り処理を続ける。
【0109】
ここで、不正を行おうとする者が、カード処理装置1に何らかの細工を施し、カード2が搬送路5に詰まるようにしたとする。カード2が詰まったときのカード2の位置を図25に示す。この場合、CPU20からモータ25へ回転指令が出力されているにもかかわらず、ロータリエンコーダ26は、モータ25の回転数を検出しない。このため、CPU20は、図15のステップS23において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定する。そして、ステップS29において、CPU20は、カード取り出し阻止処理を行う。ステップS29の処理の内容については、後述する。その後、CPU20は、図14に示されるカード処理を強制的に終了(異常終了)する。
【0110】
図15で示したフローチャートでは、ステップS23で説明したように、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力しないときに、カード取り出し阻止処理を行うようにした。これ以外に、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力せず、かつ、カード検出センサ6がカード2を検出している場合に限って、カード取り出し阻止処理を行うようにしてもよい。後者の場合は、カード2がカード検出センサ6の位置に存在するときのみ、カード取り出し阻止処理が行われる。
【0111】
図16は、図15のステップS29におけるカード取り出し阻止処理の手順を示すフローチャートである。ステップS30において、CPU20は、偏心カム用ソレノイド51を駆動する。すると、図10で説明したように、偏心カム60が軸66を中心として回動し、カム部62の外周(歯部65)がカード2に接触する。これにより、カード2が挿入口3aから取り出されることが阻止される。そして、ステップS31において、CPU20は、通信部24を介して、カード2が搬送路5に詰まった旨の障害情報を上位装置に連絡する。
【0112】
図17は、図14のステップS4における磁気カード書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS3の処理が終了した時点では、カード2は、図24に示されるように、搬送路5の右端に停止している。カード2を搬送路5の挿入口3a側に搬送するため、ステップS40において、CPU20は、モータ25の逆転駆動を開始する。モータ25が逆転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2を挿入口3a側に搬送する方向(逆転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を左方向へ搬送されてゆく。
【0113】
ステップS41において、カード検出センサ6がカード2を検出すると、ステップS42において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開く。したがって、カード2は挿入口3aまで一旦搬送され、以降の処理において、カード2の先端から磁気情報を書き込むことができるようになる。このときのカード2の位置は、図22に示される位置である。なお、カード処理装置1の搬送路5を長くすることで、シャッタ14を開けることなく、カード2の先端から磁気情報を書き込むことができる位置にカード2を搬送することができる。
【0114】
図17のステップS43において、挿入検出センサ17がカード2を検出すると、ステップS44において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。そして、ステップS45において、CPU20は、上位装置から通信部24を介して、磁気カードに書き込む情報を受信し、RAM22に記憶する。続いて、CPU20は、RAM22に記憶されている情報に基づいて、搬送中のカード2に対して、磁気ヘッド15により磁気情報を書き込む。磁気情報の書き込みは、CPU20が書き込み信号を磁気ヘッド15に与えている期間だけ、連続的に行われる。
【0115】
ステップS46において、カード検出センサ6がカード2を検出しなくなった場合は、シャッタ14の位置にカード2が存在していない。したがって、ステップS47において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。このときのカード2の位置は、図23に示される位置である。そして、カード2が搬送され続けて、ステップS48において、カード検出センサ8がカード2を検出すると、ステップS49において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。このときのカード2の位置は、図24に示される位置である。この後、CPU20は、カード2への磁気情報の書き込み処理を終了し、図14のステップS5に進んで、カード2の排出処理を行う。なお、上述したCPU20が上位装置からカード2に書き込む情報を受信する時期については、図17のステップS45の磁気ヘッド15による書き込み開始前であればいつでもよい。
【0116】
図18は、図14のステップS5におけるカード排出処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS4の処理が終了した時点では、カード2は、図24に示されるように、搬送路5の右端に停止している。カード2を搬送路5の挿入口3a側に搬送し、カード2を排出するため、図18のステップS60において、CPU20は、モータ25の逆転駆動を開始する。モータ25が逆転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2を挿入口3a側に搬送する方向(逆転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を左方向へ搬送されてゆく。モータ25の逆転駆動は、後述するステップS65において、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
【0117】
カード2が、挿入口3a側に搬送され、ステップS61において、カード検出センサ6がカード2を検出したときには、搬送されたカード2は、挿入口3aに近づいている。そこで、ステップS62において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、搬送路5のカード2を挿入口3aから排出できるようになる。
【0118】
ステップS63において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、図15のステップS23と同様に、カード2が詰まっているか否かを判定することができる。
【0119】
ステップS63において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定された場合、すなわちカード2が詰まっていると判定された場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図16のフローチャートに従って実行する。その後、CPU20は、カード処理を強制的に終了(異常終了)する。
【0120】
一方、図18のステップS63において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定された場合、すなわちカード2が搬送路5において詰まっていないと判定された場合には、ステップS64において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2を検出してから、所定時間経過したか否かを判定する。このとき、カード2は、ローラ4の回転により一定速度で挿入口3aに向けて搬送されている。したがって、カード2の排出方向における先端がカード検出センサ6の位置を通過してから、カード2の後端が挿入口3に最も近いローラ4を通過するまでの時間は、あらかじめ決まっている。そこで、この時間を上述した所定時間に設定している。カード処理装置1にカード2が詰まるなどの異常が発生していない場合は、ステップS64で所定時間が経過すれば、カード2はすべてのローラ4を通過し終わっているので、ステップS65において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。一方、ステップS64で所定時間が経過していなければ、カード2はすべてのローラ4を通過し終わっていないので、CPU20はローラ4によるカード2の搬送を続ける。
【0121】
上記の例では、時間を計測することによって、モータ25の駆動を停止したが、これ以外に、搬送路5におけるカード検出センサの数を増やして、カード2が所定の位置を通過したときに、モータ25の駆動を停止するようにしてもよい。
【0122】
ステップS65において、CPU20がモータ25の駆動を停止すると、ステップS66において、CPU20は、挿入検出センサ17がカード2を検出したか否かを判定する。挿入検出センサ17がカード2を検出している場合は、挿入口3aにカード2が存在しているので、カード2が取り出されるのを待つ。利用者が挿入口3aからカード2を取り出して、挿入検出センサ17がカード2を検出しなくなった場合は、ステップS67において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じ、カード排出処理が終了する。
【0123】
図19は、図14のステップS7におけるICカード取り込み処理、ICカード読み取り処理、およびICカード書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS2の処理が終了した時点では、図20に示されるように、挿入口3aにカード2(ICカード)の先端が挿入されている状態にある。
【0124】
図19のステップS70において、CPU20は、挿入検出センサ17が挿入口3aへのカード2の挿入を検出したか否かを判定する。挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、ステップS71において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、カード2をカード処理装置1の内部に挿入できるようになる。そして、ステップS72において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。モータ25が正転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2をカード処理装置1の内部に搬送する方向(正転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を右方向へ搬送されてゆく。
【0125】
ステップS73において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、図15のステップS23と同様に、カード2が詰まっているか否かを判定することができる。
【0126】
ステップS73において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定された場合、すなわちカード2が詰まっていると判定された場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図16のフローチャートに従って実行する。その後、CPU20は、カード処理を強制的に終了(異常終了)する。
【0127】
一方、ステップS73において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定された場合、すなわち、カード2が搬送路5において詰まっていないと判定された場合には、ステップS74において、CPU20は、カード検出センサ7がカード2を検出したか否かを判定する。カード挿入方向におけるカード2の先端が、カード検出センサ7の位置に到達したときに、カード2のIC接点がIC接点ヘッド16の位置に到達しているように、カード検出センサ7の位置が設定されている。
【0128】
ステップS74において、カード検出センサ7がカード2を検出しない場合は、CPU20は、ステップS73に戻り、カード2が詰まっているかどうかを判定する。カード検出センサ7がカード2を検出した場合は、ステップS75において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。そして、ステップS76において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。このとき、カード2のIC接点は、IC接点ヘッド16に対向して位置している。
【0129】
ステップS77において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28を駆動して、IC接点ヘッド16を降下させる。これにより、IC接点ヘッド16がカード2のIC接点に接触する。そして、ステップS78において、CPU20は、IC接点ヘッド16を介して、カード2のICチップから情報を読み取る。CPU20は、読み取った情報をRAM22に記憶する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている情報を上位装置に送信する。
【0130】
この後、CPU20は、通信部24を介して、書き込み情報を上位装置から受信する。また、CPU20は、受信した当該情報をRAM22に記憶する。そして、ステップS79において、CPU20は、RAM22に記憶した書き込み情報を、IC接点ヘッド16を介して、カード2のICチップに書き込む。書き込みが終了すると、ステップS80において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28の駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16を上昇させる。これにより、IC接点ヘッド16がカード2のIC接点から離れる。この後、CPU20は、図14のステップS5に進み、カード2の排出処理を行う。
【0131】
本発明では、以上述べた以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の実施形態では、偏心カム60を搬送路5の上方に設けたが、偏心カム60は搬送路5の下方に設けてもよい。
【0132】
また、前記の実施形態では、偏心カム60のカム部62を基部61とは別に設けたが、基部61とカム部62とを一体化してもよい。
【0133】
また、前記の実施形態では、第4アーム53dに錘が設けられていないが、必要に応じて、第4アーム53dに、第3アーム53cと釣り合う錘を設けてもよい。
【0134】
また、前記の実施形態では、固定具70の係止部75にギヤ状の凹凸を形成した例を挙げたが、ギヤ状の凹凸に代えて、係止部75に固定具70が係止する切欠を設けてもよい。
【0135】
また、前記の実施形態では、図4に示した構造の阻止機構100およびロック機構200の組み合わせを例に挙げたが、本実施形態によるロック機構200は、図4の阻止機構100とは異なる構造を備えた阻止機構と組み合わせることもできる。例えば、図26で示した従来の阻止機構との組み合わせも可能である。要するに、カードに接触するカム部と、支持具と係合する係合部と、カム部とカードとの接触を解除する際に操作されるレバーとを有する偏心カムを備えた阻止機構であれば、本実施形態のロック機構200を適用することができる。
【0136】
また、前記の実施形態では、磁気カードとICカードの両方を処理可能なカード処理装置1に本発明を適用したが、本発明は、磁気カード専用の装置やICカード専用の装置にも適用することができる。また、前記の実施形態では、ICカードとして接触式ICカードを例に挙げたが、本発明は、非接触式ICカードを取り扱うカード処理装置にも適用が可能である。
【0137】
さらに、前記の実施形態では、ATMに搭載されるカード処理装置を例に挙げたが、本発明に係るカード処理装置は、ATM以外のカードを取り扱う機器に搭載されるカード処理装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 カード処理装置
2 カード
3 カード挿入部
26 ロータリエンコーダ
51 偏心カム用ソレノイド
53 支持具
53a 第1アーム
53b 第2アーム
53c 第3アーム
53d 第4アーム
56 錘
57 軸
60 偏心カム
62 カム部
63 レバー
64 係合部
67 突起
70 固定具
76 爪部
77 爪部
100 阻止機構
200 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録されたカードが挿入されるカード挿入部と、
前記カード挿入部から挿入された前記カードの異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出した場合に、前記カード挿入部からの前記カードの取り出しを阻止する阻止機構と、を備えたカード処理装置において、
前記阻止機構は、
回動自在に設けられ、前記カードから離間して当該カードに押圧力を与えない第1の位置と、前記カードと接触して当該カードに押圧力を与える第2の位置とへ変位可能な偏心カムと、
回動自在に設けられ、前記偏心カムと係合することにより、当該偏心カムを前記第1の位置に支持し、前記偏心カムとの係合を解除することにより、前記偏心カムを前記第1の位置から前記第2の位置へ変位させる支持具と、
前記異常検出手段が異常を検出した場合に、前記支持具と前記偏心カムとの係合が解除されるように、前記支持具を回動させるアクチュエータと、を備え、
前記支持具は、十字状に配置された4つのアームを備えており、前記4つのアームを含む第1の平面上での重心位置が、当該第1の平面における第1の回転中心と一致し、かつ、前記第1の回転中心を含み前記第1の平面と直交する第2の平面上での重心位置が、当該第2の平面における第2の回転中心と一致する構造を有しており、
前記4つのアームのうちの1つが前記偏心カムと係合し、残りのアームのうちの1つが前記アクチュエータに連結されていることを特徴するカード処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記アームは、第1アームと、この第1アームと反対方向に延びる第2アームと、前記第1および第2アームと直交する第3アームと、この第3アームと反対方向に延びる第4アームとからなり、
前記第1アームは、前記アクチュエータに連結され、
前記第2アームは、前記第1アームと釣り合う錘を有し、
前記第3アームは、前記第1および第2アームに対して前記アクチュエータと反対側へ延びて、前記偏心カムと係合し、
前記第4アームは、前記第1および第2アームに対して前記アクチュエータと同じ側へ延びて、前記第3アームと釣り合う錘の機能を有していることを特徴するカード処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカード処理装置において、
前記偏心カムは、前記カードに接触するカム部と、前記支持具と係合する係合部と、前記カム部と前記カードとの接触を解除する際に操作されるレバーとを備えていることを特徴するカード処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカード処理装置において、
前記偏心カムを前記第2の位置でロックするためのロック機構をさらに備え、
前記ロック機構は、前記レバーに近づく方向であるロック方向と、前記レバーから離れる方向である解除方向とに回動可能な固定具を含み、
前記固定具は、係止部と、第1の爪部と、第2の爪部とを有しており、
前記偏心カムをロックする際に、当該偏心カムの前記第2の位置への移動に伴って、前記固定具が前記ロック方向に回動したときに、前記係止部が前記レバーと係止し、
前記偏心カムのロックを解除する際に、前記固定具を前記解除方向に回動させた後、前記レバーを押し下げたときに、当該レバーが前記第1の爪部を押すことにより、前記固定具が再び前記ロック方向に回動し、
前記偏心カムのロックが解除されて当該偏心カムが前記第1の位置にある状態で、前記固定具が前記解除方向に操作されたときに、前記第2の爪部が、前記レバーと当接して、当該レバーに対し、前記偏心カムと前記支持具との係合力を強める方向の力を付与することを特徴するカード処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のカード処理装置において、
前記レバーに、前記第1の爪部を押すための突起を設けたことを特徴するカード処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−203521(P2012−203521A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65727(P2011−65727)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】