説明

カード印刷装置

【課題】ICカードの認証とカード発行部でのICカードへのセキュリティ情報の書き込みと消耗品の収納カセットのICチップの情報の読み取りを1つのICリーダライタで行うことを可能とするカード印刷装置を提供する。
【解決手段】ICカードを積載するカードカセットと、ICカードを保持するセキュリティ認証用カードホルダと、ICカードにセキュリティ情報を書き込むエンコード部と、印刷消耗品の製造履歴情報を記憶したICチップが貼り付けられた印刷消耗品を収納する印刷消耗品カセット収納部と、ICカードに図形、文字等を印刷する印刷部と、カードスタッカと、を備え、更にカードのセキュリティ認証情報の読み取りと、セキュリティ情報の書き込みと、印刷用消耗品カセットのICチップ情報の読み取りと、を行うICリーダライタと、を備えたことを特徴とするカード印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDカードを発行するカード印刷装置に関するもので、詳しくはICカードとの通信、及び消耗品カセットとの通信を同一のICリーダライタでしかも安定した通信を行い、更にカードに顔画像や氏名などの図形や文字を印刷するカード印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、官公庁、銀行、会社、医療機関、及び学校などのサービス産業分野では、身分証明書、パスポート、外国人登録証、図書館利用カード、キャッシュカード、クレジットカード、自動車運転免許証、従業員証、社員証、会員証、医療カード及び学生証などのIDカードが普及している。この種のIDカードには、本人認識用の顔画像、及び所有者に関する文字や記号などの文字情報が印刷されており、特に近年、IDカードにはセキュリティの信頼性の高さからICカードを用いることが多くなっている。
【0003】
図1は従来から行われているICカードを発行する場合の工程の一例を示したものである。ICカード1は、カードを発行する人が適正な人であることを認証するカード認証部2を経過した後、カード発行部3で各種セキュリティ情報が記録され、更に印刷部4を備えた印刷装置で氏名や顔画像等の文字や図形の印刷が行われる。カード認証部2にカードがない場合には印刷部4は動作しないように制御されている。
【0004】
そして、以下に説明するようにカード認証部2、カード発行部3、更には印刷部4では、それぞれ別個にICリーダライタが使用されている。
【0005】
即ち、カード認証部2、カード発行部3、更には印刷部4ではICカードとの通信をICリーダライタを介して行うが、ICリーダライタは印刷装置に内蔵されているか、もしくは外部に取付けられており、ICリーダライタにICカードが搬送され、ICカードと通信が行われる。
【0006】
図2は、従来のICリーダライタと発行カードの位置関係を示す。発行カード41はカードガイド42に挟まれた状態で保持され、固定治具43に固定されたICリーダライタ44で発行カード41の情報を読み込んだり、発行カード41に情報を書き込んだりしている。
【0007】
この場合、ICカードの種類によっては、ICカード41とICリーダライタ44との位置関係、通信距離によって通信が不安定になることがあった。通信を安定化させるため、板状弱磁石を用いる技術があるが、カードの種類が変わった場合などは人手によって位置関係、通信距離を調整する必要があり、また、具体的な調整方法までは提案されていない。
【0008】
また、図1における従来から行われているICカードを発行する場合の工程において、カード認証部2におけるICカードの認証とカード発行部3でのICカードへのセキュリティ情報の書き込みは、各々のICリーダライタを用いて行っている。
【0009】
印刷部4に用いられる印刷方式はインクジェット印字機構や熱転写印字機構が代表例として挙げられるが、図3、及び図4は熱転写印字機構を示した図である。熱転写印字機構による印字方式は、直接転写方式と中間転写方式がある。図3は直接転写方式の熱転写印字機構の概略を示す図で、熱転写リボン11はリボン巻き出しロール12から供給され、
ロール13を介した後、電圧を加えることによって発熱する発熱体が複数個配列されたサーマルヘッド14によって熱転写リボン11のリボン基材面から押圧される。印刷用紙15は印刷用紙巻き出しロール16から供給され、プラテンロール17上で押圧された熱転写リボン11の熱転写層に接し、印刷用紙15上に転写層が転写され画像が形成される。転写された後の熱転写リボン19はロール18を介した後、リボン巻取りロール20に巻き取られる。
【0010】
図4は中間転写方式の熱転写印字機構の概略を示す図で、熱転写リボン21はリボン巻き出しロール22から供給され、ロール23を介した後、サーマルヘッド24によって熱転写リボン21のリボン基材面から押圧される。中間転写フィルム31は中間転写フィルム巻き出しロール32から供給され、ロール33を介した後、プラテンロール27上で押圧された熱転写リボン21の熱転写層に接し転写層が転写される。印刷用紙25は印刷用紙巻き出しロール26から供給され、中間転写フィルムに転写された転写層が二次転写部34のロール35及びロール36によって印刷用紙25に転写され、ロール37を介して移送された印刷用紙25に画像が形成される。転写された後の中間転写フィルム39はロール38を介した後、中間転写フィルム巻取りロール40に巻き取られる。また、プラテンロール27上で転写された後の熱転写リボン29は、ロール28を介した後、熱転写リボン巻取りロール30に巻き取られる。
【0011】
また、印刷部4に使用される消耗品として例えば図3に示す直接転写方式の場合の熱転写リボン11や図4に示す中間転写方式の場合の熱転写リボン21は、熱転写リボンに使われているインクの発色材料やその添加量、その他の添加物の組成や粘度等のバラツキによって印刷された文字、図形等の刷色にバラツキが生じてしまう。
【0012】
近年、上記消耗品の収納カセットには消耗品の製造履歴(使用した材料や製造条件、品質情報)が記憶されたICチップを貼ることが多く採用されている。そのICチップの情報を読み取り印刷条件を設定して印刷の刷色にバラツキのない印刷を行う方法が提案されているが、上記ICチップの情報の読み取りとカード発行部でのICカードへのセキュリティ情報の書き込みは、各々のICリーダライタを用いて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−322496号公報
【特許文献2】特公平8−2637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ICカードの認証とカード発行部でのICカードへのセキュリティ情報の書き込みと消耗品収納カセットのICチップの情報の読み取りを1つのICリーダライタで行うことを可能とするカード印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、ICカードにセキュリティ情報をエンコードし、顔画像や氏名等の図形、文字を印刷するカード印刷機であって、ICカードを積載するカードカセットと、ICカードを保持するセキュリティ認証用カードホルダと、ICカードにセキュリティ情報を書き込むエンコード部と、印刷消耗品の製造履歴情報を記憶したICチップが貼り付けられた印刷消耗品を収納する印刷消耗品カセット収納部と、ICカードに図形、文字等を印刷する印刷部と、カードスタッカと、を備え、更にカードのセキュリティ認証情報の読み取りと、セキュリティ情報の書き込みと、印刷用消耗品カセットのICチップ情報の読み取りと、を行うICリーダライタと、を備えたことを特徴とするカード印刷装置である。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明は、ICリーダライタは、回転可能な機構を有する1つのICリーダライタであることを特徴とする請求項1記載のカード印刷装置である。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、ICリーダライタが移動可能な機構を有し、ICリーダライタとICカード及び印刷消耗品カセットとの距離及び位置が可変であることを特徴とする請求項1または2に記載のカード印刷装置である。
【発明の効果】
【0018】
ICリーダライタが回転可能な機構を有することによって、カード認証情報の読み取と、セキュリティ情報の書き込みと、印刷用消耗品カセット情報の読み取りを1つのICリーダライタで行うことが出来、従来3つのICリーダライタを1つに減らすことが可能となる。更にICカードの種類が変更になった場合には、ICリーダライタが移動可能な機構を有することによって、ICカードとICリーダライタの距離及び位置を変えることが出来、その結果、安定してICカードとの通信を行うことが可能となる。同様に、印刷消耗品カセットとの距離、位置を変えることによって印刷用消耗品カセットが変更された場合においても、安定した通信を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来から行われているICカードを発行する場合の工程の一例を示す図。
【図2】従来のICリーダライタと発行カードの位置関係を示す図。
【図3】ICカード印刷装置に用いられる直接転写方式の熱転写印字機構の概略を示す図。
【図4】ICカード印刷装置に用いられる中間転写方式の熱転写印字機構の概略を示す図。
【図5】本発明に係るカード印刷装置を示す図で、直接転写方式の熱転写機構を用いた印刷装置の概略構成一例を示す図。
【図6】本発明に係るICリーダライタとICカードの位置関係を示す図。
【図7】本発明に係るICカードとICリーダライタの距離とICリーダライタの位置を変えることを説明するための図。
【図8】本発明に係るカード印刷装置を示す図で、間接転写方式の熱転写機構を用いた印刷装置の概略構成一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図5は本発明に係るカード印刷装置を示す図で、直接転写方式の熱転写機構を用いた印刷装置の概略構成の一例である。カードカセット50に積載されたICカード51はセキュリティ認証用カードホルダ52に移された後、カードガイド58によって保持され、ICリーダライタ53が位置その1にあって、カードの認証が行われる。その後、エンコード部54に移されICリーダライタ53が位置その2にあって、セキュリティ情報がエンコードされる。次に印刷部55によって文字、図形等の情報がサーマルヘッドによって印刷された後に、カードスタッカ56に収納される。印刷部55で使用される印刷消耗品は印刷用消耗品カセット収納部57に収納されている。また印刷用消耗品カセットには印刷消耗品、例えば熱転写リボンが収納されており、該カセットには熱転写リボンが製造された製造履歴情報が記憶されたICチップが貼り付けられている。ICチップに記憶されている製造履歴情報は、位置3にあるICリーダライタによって読み取られる。
【0021】
図6は本発明に係るICリーダライタ53とICカード51の位置関係を示す。ICリーダライタは回転可能な機構60を有している。回転可能な機構60によって位置その1、位置その2、位置その3にICリーダライタを回転することが出来る。その結果、位置その1で認証用カードの認証情報の読み取りを、位置その2で発行するICカードへのセキュリティ情報のエンコードと、更には位置その3で消耗品カセットに貼り付けられているICチップの製造履歴の情報の読み取りを1つのICリーダライタで行うことが出来る。更にICリーダライタは移動可能な機構(図示せず)を有しているため、図7に示すように、ICカードの種類が変更した場合でも、ICカードとICリーダライタの距離とICリーダライタの位置を矢印61、62の方向に変えることによって、ICカードとの通信を安定して行うことが可能となる。
【0022】
ICリーダライタとICカードとの距離とICリーダライタの位置、及びICリーダライタと消耗品カセットに貼り付けられているICチップとの距離とICリーダライタの位置は、予めICカードの種類毎、消耗品カセットの種類毎に設定されており、ICカードの種類、消耗品カセットの種類を選択することによって、設定された距離、位置に制御される。
【0023】
尚、ICリーダライタに備えられている回転可能な機構及び移動可能な機構は、既知の機械機構を採用することが出来る。
【0024】
更に図8は、本発明に係るカード印刷装置を示す図で、間接転写方式の熱転写印字機構を用いた印刷装置の概略構成一例を示す図であって、図5に示す本発明に係る直接転写方式の熱転写印字機構を用いたカード印刷装置に比べて、中間転写フィルム63に一度印刷画像がサーマルヘッドによって形成され、該印刷画像が更に二次転写部でICカードに転写される。
【0025】
熱転写機構は本発明の実施のための実施形態の例示であって、インクジェット方式による印刷方式を採用しても良い。
【0026】
このように本発明によれば、発行するICカードへのセキュリティ情報のエンコードと認証用カードの認証情報の読み込みと更には消耗品カセットに貼り付けられているICチップの製造履歴の情報の読み込みを1つのICリーダライタで行うことができるため、従来用いられていた3つのリーダライタを1つに減らすことが可能になった。
【0027】
また、ICリーダライタとICカードとの距離とICリーダライタの位置、及びICリーダライタと消耗品カセットに貼り付けられているICチップとの距離とICリーダライタの位置は、ICリーダライタに備えられた移動可能な機構によって設定されるため、ICリーダライタとICカード、消耗品カセットに貼り付けられているICチップとの通信を安定して行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・ICカード
2・・・カード認証部
3・・・カード発行部
4・・・印刷部
11・・・熱転写リボン
12・・・リボン巻き出しロール
13・・・ロール
14・・・サーマルヘッド
15・・・印刷用紙
16・・・印刷用紙巻き出しロール
17・・・プラテンロール
18・・・ロール
19・・・熱転写リボン
20・・・リボン巻取りロール
21・・・熱転写リボン
22・・・リボン巻き出しロール
23・・・ロール
24・・・サーマルヘッド
25・・・印刷用紙
26・・・印刷用紙巻き出しロール
27・・・プラテンロール
28・・・ロール
29・・・転写された後の熱転写リボン
30・・・熱転写リボン巻取りロール
31・・・中間転写フィルム
32・・・中間転写フィルム巻き出しロール
33・・・ロール
34・・・二次転写部
35・・・ロール
36・・・ロール
37・・・ロール
38・・・ロール
39・・・転写された後の中間転写フィルム
40・・・中間転写フィルム巻取りロール
41・・・発行カード
42・・・カードガイド
43・・・固定治具
44・・・ICリーダライタ
50・・・カードカセット
51・・・ICカード
52・・・セキュリティ認証用カードホルダ
53・・・ICリーダライタ
54・・・エンコード部
55・・・印刷部
56・・・カードスタッカ
57・・・印刷用消耗品カセット収納部
58・・・カードガイド
59・・・ICリーダライタ固定治具
60・・・回転可能な機構
61、62・・・ICリーダライタの位置を変える方向を示す矢印
63・・・中間転写フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードにセキュリティ情報をエンコードし、顔画像や氏名等の図形、文字を印刷するカード印刷機であって、ICカードを積載するカードカセットと、ICカードを保持するセキュリティ認証用カードホルダと、発行カードにセキュリティ情報を書き込むエンコード部と、印刷消耗品の製造履歴情報を記憶したICチップが貼り付けられた印刷消耗品を収納する印刷消耗品カセット収納部と、ICカードに図形、文字等を印刷する印刷部と、カードスタッカと、を備え、更にカードのセキュリティ認証情報の読み取りと、セキュリティ情報の書き込みと、印刷用消耗品カセットのICチップ情報の読み取りと、を行うICリーダライタと、を備えたことを特徴とするカード印刷装置。
【請求項2】
ICリーダライタは、回転可能な機構を有する1つのICリーダライタであることを特徴とする請求項1記載のカード印刷装置。
【請求項3】
ICリーダライタが移動可能な機構を有し、ICリーダライタとICカード及び印刷消耗品カセットとの距離及び位置が可変であることを特徴とする請求項1または2に記載のカード印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−79217(P2011−79217A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233094(P2009−233094)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】