説明

カード及びカード読取装置

【課題】電子技術を悪用しても内部に記憶されている情報を読み取って偽造することを防止するカードと、そのようなカードを読み取るのに好適なカード読取装置の提供。
【解決手段】基盤(11)の一表面に情報が記憶されたカードにおいて、電子情報記憶部分(1Aa)と香料情報記憶部分(1Ab)とを有し、前記電子情報記憶部分(1Aa)は電子的に読み取り可能な電子情報が記憶され、前記香料記憶部分(1Ab)は香りの異なる複数の香料(13)が前記表面に載置され、該複数の香料(13)は所定量の香料分子が通過して徐放される様にフィルム(14)で被覆されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード及びカード読取装置に関し、より詳細には電子情報及び香料情報が記憶され偽造を防止するようにしたカード及びそのカードを読み取るカード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行における引出、購買に際しての代金支払の様な各種経済活動では、カードの利用が一般化している。また、鉄道の改札業務、各種建造物の入門規制等を自働化するに際しても、カード(鉄道の定期券を含む)の利用が一般的である。
これ等のカードにおいては、カード内部に情報が記憶されており、斯かる情報を読取手段(カードリーダー等)で電子的に読み取って、そのカードが適正か否かを判定している。
【0003】
しかし、電子情報技術が進歩した反面、例えば「スキミング」と呼ばれる手口のように、電子情報読取技術を悪用する技術も高度化している。そして、電子情報読取技術を悪用して個々のカードに記憶された電子情報を読み取れば、カードの偽造が極めて容易に行われてしまい、適正なカード利用者に多大な不利益をもたらす事例が数多く見出されるようなった。
【0004】
スキミングの様な、カードに記憶された情報を不正読取する手口に対して、集積回路(ICチップ)を内蔵したカード、いわゆるICカードであれば、セキュリティレベルが高く、斯かるICカードを利用したシステムが、近年、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、電子情報技術は極めて進歩の速度が速く、セキュリティレベルを向上しても直ちにそれを打ち破る読み取り手法が開発されており、いわゆる「いたちごっこ」となってしまっているのが実情である。
換言すれば、スキミングその他の情報の不正読取技術を電子技術により防止しても、犯罪者は当該防止技術を無効化する新技術を直ちに開発してしまうのである。
【特許文献1】特開2004−78326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、電子技術を悪用しても内部に記憶されている情報を読み取って偽造することが困難なカードと、そのようなカードを読み取るのに用いられるカード読取装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカード(1)は、基盤(11)の一表面に情報が記憶されたカードにおいて、電子情報記憶部分(1Aa)と香料情報記憶部分(1Ab)とを有し、前記電子情報記憶部分(1Aa)は電子的に読み取り可能な電子情報が記憶され、前記香料記憶部分(1Ab)は香りの異なる複数の香料(香料チップ13)が前記表面に載置され、該複数の香料(香料チップ13)は所定量の香料分子が通過して徐放される様にフィルム(14)で被覆されて構成されている(請求項1)。
【0007】
フィルム(14)は、後述するカード読取装置(2)側のセンサ(S1〜S4)が検出することが出来る程度に香料分子を徐放することが出来るが、その徐放量は、香料から徐放される香料分子が短期間で無くならない程度であることが好ましい。
【0008】
また、本発明のカード読取装置(カードリーダー2)は、カード(1A)表面の電子情報及び香料情報を読取るカード読取装置において、前記電子情報を電子的に読取る読取手段(2A)と、カード表面の香りの異なる複数の香料(13)のうちの各1種類のみに感応して検出信号を出力する複数のセンサ(S1〜S4)を有する香料情報読取手段と、カード(1A)をガイドしてカード表面の電子情報及び複数の香料を前記電子的読取手段及び前記複数のセンサ(S1〜S4)にそれぞれ対応させるガイド(2Ba)とを有することを特徴とする(請求項2)。
【0009】
本発明のカード(1A)において、電子的な読取手段(2M)により読み取り可能な情報として、磁気的に読み取られた情報をも含むものとする。
【0010】
また、本発明のカード読取装置は、センサ(Sa〜Sc)の周囲部に加熱手段(例えば電気ヒーターH)を設け、センサ温度を高くしてセンサの検出能力を向上させるようにした(請求項3)。
【0011】
また、本発明のカード読取装置は、センサ(Sa〜Sc)の表面に負圧を発生する機構(真空ラインLv1〜Lv6、合流ラインLv、真空ブロワ50)を設け、前記ガイド(2Ba)によりガイドされるカード(1)を前記負圧により吸引しカードの複数の香料チップ(13)から徐放される香料分子が直近のセンサ(Sa〜Sc)に確実に検出される機能を有することを特徴とする請求項2のカード読取装置(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、適正なカード(1)は記憶された電子的な読取手段により読み取り可能な電子情報及び香料をそれぞれ記憶しており(請求項1)、両情報を併用することにより、適正なカードとして判定することが出来る。カード読取装置(2)のセンサ(S1〜S4)が感応する香料を選択すれば、センサ(S1〜S4)は徐放された香料分子を検出して検出信号を出力する。その結果、当該香料を載置したカード(1)が適正なカードとして判定することが出来る。勿論、ダミーの香料を設けることも可能である(図6、図7参照)。
【0013】
本発明において、カード読取装置(2A)はカード(1A)に記憶された(前記香料以外の)情報(1Aa)を電子的に読み取る読取手段(2M)と香料センサとを備えており(請求項2)、カード読取装置のセンサからの検出信号と、電子的な読取手段(2M)からの読取信号とを出力することができ、該出力をに基づき、例えば認証システムに利用することにより、適正なカードであるか否かを判定することができる。
上述した同様に、認証に香りを用いているので、「スキミング」その他の電子情報読取技術を悪用する技術に対処することが出来るのに加えて、いわゆる「ウェット系」の技術を用いて「香料」を解析、特定できたとしても、その様な「ウェット系」の技術設備では既存の電子情報を読み取ることが出来ない。
【0014】
換言すれば、香りの情報と既存の電子情報読取技術とを併用すれば、香りを解析するための設備と既存の電子情報読取技術設備とを同時に準備しない限り、カードの偽造が不可能である。それに加えて、いわゆる「ドライ系」の技術に属する電子情報読取技術と、いわゆる「ウェット系」の技術に属する香りに関する技術とは、技術分野が全く相違しているので、両方の設備を併せ持つことは困難である。
すなわち、香りの情報と既存の電子情報読取技術とを併用した本発明(請求項1〜請求項4)によれば、カード(1)を偽造することがさらに困難なカード及びその読取装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図9を参照して本発明の説明のための参考例について説明する。
図1は参考例に係るカードを用いた認証システムを利用したゲート開閉機構を示す。
【0016】
図1において、当該ゲート開閉機構は、参考例に係るカード1の情報を読取るカードリーダー2と、当該カード1を所持する人間Pが当該カード1でカードリーダー2を操作することにより開閉するゲート3と、そのゲート3を開閉操作するアクチュエータ4と、そのアクチュエータ4に流体圧(例えば、圧縮空気)を供給する圧力流体源(例えば、エアタンク)5と、流体供給ラインLa1、La2、流体排出ラインLxと、流体供給ラインLa1、La2及び流体排出ラインLxの交点に介装された三方弁6と、カードリーダー2で読取った情報に基づいてその三方弁6の開閉制御を行うコントロールユニット7とから構成されている。
【0017】
カードリーダー2はセンサS1〜S4を備えている。そのセンサS1〜S4は、特定の単一の香料のみに反応して、検出信号を出力する様に構成されている。
【0018】
このようなタイプのセンサとしては、例えば、いわゆる「薄膜」タイプのセンサや、酵素を用いたタイプのセンサを利用可能である。特に「薄膜」タイプのセンサは、「ppb」レベルの濃度まで検出可能であるため、後述するように、徐放された香料の分子を確実に検出して、検出信号を出力することが出来る。
【0019】
カード1は、図1に断面を示すように、基盤11上で、カード1表面のカードリーダー2と接触する側には香料のチップ13を埋め込むための凹部12が形成され、その凹部12の中に香料のチップ13が埋め込まれている。そして香料のチップ13を埋め込んだ上でカードのカードリーダー2と接触する側全体が表層部或いはフィルム14で被覆されている。この香料のチップ13を被覆する表層部或いはフィルム14には、香料チップ13から、香料の分子が徐放されることを許容する程度の微細孔15が形成されている。
【0020】
ここで、当該微細孔15は、センサS1〜S4が香料の分子を検出することが出来る程度の数の香料分子を徐放する程度に大きく、香料チップ13から徐放される香料分子が短期間で無くならない程度に小さいことが好ましい。
換言すれば、前記微細孔15が小さ過ぎると、香料チップ13から徐放される香料分子をセンサS1〜S4が検出することが出来なくなってしまい、前記微細孔15が大き過ぎると、早い時期に香料チップ13から香料分子が徐放されなくなってしまうので、識別手段としてのカード1の寿命が短縮化してしまう、という不都合がある。
【0021】
香料チップ13として選択される香料は、種々のものが可能である。偽造防止の観点から、人間の嗅覚で検知し難いものが好適である。
また、香料チップ13をカード1の基盤11に埋め込むにあたって、香料分子を徐放する期間が、カード1の使用期間として十分な程度に長期となる様に、徐放量を抑制して構成するのが好ましい。
【0022】
図1に戻り、カードリーダー2には、カード1自体がカードリーダー2に接触されたことを検出する接触センサ(以降、接触センサをカード検出センサという)21が設けられている。
偽造されたカードがカードリーダー20に接触された場合に、当該カード1には香料チップが埋め込まれていないことが想定される。そのような場合、カード1自体がカードリーダー2に接触されたことを検出する接触センサ21を設けていないと、センサS1〜S4は検出信号を発生しないので、コントロールユニット7は、カードリーダー2にカード1が接触されていない状態と判別することが出来ないからである。
【0023】
ここで、カード1がカードリーダー2と接触した際に、香料チップ13の位置がカードリーダー2側の各センサS1〜S4の位置と合致する必要がある。換言すれば、香料チップ13から徐放される香料粒子が、対応するセンサS1〜S4で確実に検出される程度の精度を有していることが必要である。
【0024】
なお、図1において、ゲート3の開閉は、コントロールユニット7からの開閉制御信号を受けた三方弁6の開閉作動により、流体圧を用いて行われているが、その他の方式を用いても良い。
例えば、ゲート3の開閉は流体圧以外の機械的手段を用いることや、磁力を用いることも可能である。その場合、コントロールユニット7からの制御信号は、バルブの開閉信号に代えて、機械的手段や磁力手段の制御信号となる。
【0025】
図1では、前述したように、カード1の基盤11におけるカードリーダー2と接触する側の表面に複数の凹部12を形成し、当該凹部12内に香料チップ13を挿入してその上からフィルム14で被覆しているが、図2で示す様に、カードリーダー2と接触する側の表面に香料チップ13を載置して、その状態で、被覆層或いはフィルム14を被覆しても良い。製造工程を減少して製造コストを下げるという観点からは、図2の手法の方が好適である。
【0026】
この場合、香料チップ13がカード1の基盤11上に載置されて被覆された後に、香料チップ13の位置がカードリーダー2側の各センサS1〜S4の位置から外れてしまうことを防止するため、香料チップ13の形態は、カード基盤11上に載置された際に移動し難い形態とすることが好ましい。
【0027】
図1において符号Liはカード検出センサ21とコントロールユニット7を接続する信号ラインを、符号Lisは各香りセンサとコントロールユニット7を接続する信号ラインを示す。
【0028】
図3は、図1に置けるコントロールユニット7の詳細を示すブロック図である。以下、図3を参照してコントロールユニット7の詳細構成について説明する。
【0029】
コントロールユニット7は、カードリーダー2のカード検出センサ21からの情報をラインLiによって受信するインターフェース71と、カードリーダー20の各センサS1〜S4に対応しカードリーダー2の各センサS1〜S4からの情報を受信するセンサ別のインターフェース721〜724とを有している。
【0030】
また、コントロールユニット7は、各センサ別インターフェース721〜724で受信した情報をラインL11〜L14によって受け、閾値と比較する比較手段731〜734と、各比較手段731〜734から比較結果をラインL21〜L24によって受け、それらの情報を総合的に判断して認証の可否を判定する認証判定手段74とを有している。
【0031】
更に、コントロールユニット7は、前記閾値を記憶したデータベース75と、認証判定手段74で判定した結果をラインL4で受信し、その判定結果に基づき、前記三方弁6に開閉制御信号を発信する三方弁開閉制御信号発生手段76とを有している。
【0032】
データベース75はラインL30、L31〜L30、L34によって各比較手段731〜734と接続され、閾値(例えば、センサS1に対応する香料12が単位時間に検出される所定量)を各比較手段731〜734に提供する。また、データベース75はラインL35によって認証判定手段74とも接続され、判定基準値(例えば全てのセンサからの検出量が、全てのセンサにおける閾値を満たしている値)を認証判定手段74に提供する。
【0033】
認証判定手段74で行われる判定では、図4の判定基準及び図6の判定方法で示す様に、全てのセンサS1〜S4が、対応する香料分子を検出して検出信号を出力した場合のみ、適正のカードと判定する。
【0034】
すなわち、図4に示す判定基準では、カード1側の香りAのチップC1、香りBのチップC2、香りCのチップC3、香りDのチップC4に対応するカードリーダー20側のセンサは、香りAのみを検出するセンサS1、香りBのみを検出するセンサS2、香りCのみを検出するセンサS3、香りDのみを検出するセンサS4であり、該当する各センサでの検出結果全てが所定量(閾値)以上検出している場合(検出結果は全て○)にのみ認証する様に構成されている。
【0035】
図5に基づいて、図4の判定基準の場合の判定制御方法を説明する。
先ず、ステップS1において、コントロールユニット70は、カード検出用センサ21によってカード1を検出した信号があったか否かを監視しており、カード検出の場合(ステップS1のYES)、ステップS2に進み、各センサS1〜S4からの信号を読み取り、更にデータベース75からの閾値を読取る。
【0036】
ステップS3においては、コントロールユニット7の各比較手段731〜734において、各センサS1〜S4の全てで検出した検出信号の値が各閾値以上であるか否かを判断する。各センサS1〜S4の全てで検出した検出信号の値が各閾値以上である場合(ステップS3のYES)は、ステップS4に進み、一方、閾値未満の出力センサがある場合(ステップS3のNO)は、ステップS5に進む。
【0037】
ステップS4では、適正なカードと判定して、図示では示していないが、前述のゲート30を開く様に三方弁6に制御信号を送った後、制御を終了する。
一方、ステップS5では、操作中のカードは不適正と判断し、前述のゲート30を閉じる様に三方弁6に制御信号を送った後、制御を終了する。
【0038】
ここで、その他の判定の手法として、例えば、特定のセンサのみは検出信号を出力せず、その他のセンサは検出信号を出力する場合のみが、「適正なカード」と判定される様に構成しても良い。
斯かる制御は図6の判断基準及び図7の制御フローチャートで示されている。
【0039】
すなわち、図6に示す判定基準では、図4で示した判定基準に対して、カード1のセンサ側において、チップC3のみが香り無しのチップ、所謂、ダミーチップが埋め込まれている。判定基準としては、図6の表の検出結果欄に示す如く、S1〜S4の結果が、○○×○の組合せの場合にのみ認証する様に構成されている。
【0040】
図7に基づいて、図6の判定基準の場合の判定制御方法を説明する。
先ず、ステップS11においてコントロールユニット7は、カード検出用センサ21によってカード1を検出した信号があったか否かを監視しており、カード検出の場合(ステップS11のYES)、ステップS12に進み、各センサS1〜S4からの信号を読み取り、更にデータベース75からの閾値を読取る。
【0041】
ステップS13では、コントロールユニットの各比較手段731〜734において、各センサS1〜S4の検出信号と各閾値の値とを比較し、各検出信号が閾値以上である場合○とした場合と、検出信号が閾値未満の場合の×とした場合の各センサS1〜S4と検出結果の○、×の組合せ(図6の例では○○×○)を決定する。
【0042】
次のステップS14では、上記ステップS13の組合せ(例えば、○○×○)がカード10に登録されているか否かを判断する。登録されていれば(ステップS14のYES)、ステップS15に進み、登録されていなければ(ステップS14のNO)、ステップS16に進む。
【0043】
ステップS15では、適正なカードと判定して、図示では示していないが、前述のゲート3を開く様に三方弁6に制御信号を送った後、制御を終了する。
一方、ステップS16では、操作中のカードは不適正と判断し、前述のゲート3を閉じたままとする様に三方弁6に制御信号を送った後、制御を終了する。
【0044】
図6の判定方法及び図7のフローチャートで示されている制御によれば、例えば、カード偽造者が香料或いは匂いが真偽判定に寄与していることに気がついた場合に、カードリーダー2側では、ダミーの香料チップ(常にセンサに反応しない香料)を混ぜることによって、偽造を困難にする効果がある。
すなわち、或カードが紛失した場合に、紛失したカードを偽造者が使うことを想定して、図6の判定方法及び図7の制御フローチャートで香料チップC3と反応するセンサS3をカードリーダー2に取り付ける。その結果、カード偽造者が紛失したカード1を偽造したものをカードリーダー2に接触させれば、センサS3が検出信号を出力する(図6で「○」となる)ため、認証判定手段は「不適正なカード」と判定するのである。
【0045】
図8は、図1におけるゲート3の周辺であって、ゲート開閉機構300とカード認証処理機構200を配置した領域のレイアウト例の詳細を示した平面図である。
【0046】
図8において、カード認証処理機構200は、図示の例では、一方が壁面Wの通路Cに沿って延在するカウンター210の入口部分211にカード挿入口212が形成されており、そのカード挿入口212の近傍に前記カード検出センサ21が設置されている。カード検出センサ21は後述のカード搬送手段213の作動スイッチとしての作用を奏する。
【0047】
カウンター210の内部は、カード挿入口212から所定の長さのカード搬送手段(例えば、挿入口から内部方向に向って図示しないベルトコンベアが作動するカード用搬送路)213が組込まれており、搬送路213の最深部に前記カードリーダー2が設置してある。
【0048】
カードリーダー2のその先には、カード1をカードリーダー2の所定の位置に停止させるためのカードストッパー8が設けられている。そのカードストッパー8は、カードストッパー用アクチュエータ(例えばエアシリンダ)9によって伸張・縮退が操作される。カードストッパー8は、挿入されたカード1とカードリーダー2との相対位置を適正せしめるために設けられている。
【0049】
図15及び図16に関連して後述する様に、適正なカード1であっても、カードリーダー2に対する相対位置が適正ではないと、カードリーダー2に設けたセンサS1〜S4が対応する香料チップ13以外の香料チップの香料分子を検出してしまい、コントロールユニット7が「不適正なカードである」と判定してしまう恐れが存在するからである。
【0050】
カードストッパー8の後方(図示の下方)でカウンター210の後端214にはカード取り出し口215が設けられ、カード取り出し口215の近傍にはカードが取り出されたことを検知するカード排出センサ22が設置されている。カード排出センサ22はカード搬送手段213の停止スイッチとして作用する。
【0051】
前述したように、ゲート開閉用アクチュエータ4には、エアタンク5からエア供給ラインLa1、La2を介して圧縮空気が供給され、エア供給ラインLa1、La2の接続部に前記三方弁6が介装されている。
又、カードストッパー用アクチュエータ9にはエアタンク5からラインLa1、La3、La4を介して圧縮空気が供給され、エア供給ラインLa3、La4の接続部に前記とは別の三方弁60が介装されている。
【0052】
前記ゲート操作用の三方弁6A及びカードストッパー用の三方弁60は夫々制御信号ラインLoa、Lobによってコントロールユニット7に接続されている。
【0053】
又、カード搬送手段213はコントロールユニット7と制御信号ラインL213で接続され、カード検出センサ21、カード排出センサ22は夫々信号ラインL21.L22でコントロールユニット7と接続されている。図8において符号Lisは前述した様にカードリーダー2とコントロールユニット7とを接続する信号ラインを示している。
以下、図9に基づいて、カード認証(非認証も含む)に伴うカード処理及び、ゲート3の開閉制御について説明する。
【0054】
先ず、カード検出センサ21がカードを検出するまで待機しており(ステップS21)、検出したら(ステップS21のYES)、ステップS22に進み、コントロールユニット7はカード搬送手段213を作動させる。
【0055】
次のステップS23では、カードストッパー用アクチュエータ9を伸張させ、カード搬送手段213を停止させる。すると、投入したカード1はカードリーダー2の所定の位置で停止し、センサS1〜S4を用いた判定を行う(ステップS24)。
【0056】
次のステップS25では判定が終了したか否かを監視しており、判定が終了したなら(ステップS25のYES)、次のステップS26に進む。判定が終了していないなら(ステップS25のNO)、再びステップS24以降を繰り返す。
【0057】
ステップS26では、コントロールユニット7はカードが適正か否かを判断して、適正であれば(ステップS26のYES)、ステップS27に進み、適正でなければ(ステップS26のNO)、ステップS30に進む。
【0058】
ステップS27では、ゲート開閉用アクチュエータ4を作動させ、ゲート3を開放し、次に、フローチャートにか記述していないが、カード所持者がゲート3と通過したことを、例えば図示しない赤外線センサで感知し、カード搬送手段213を再び前進方向に操作させ、カード取り出し口214からカード1を取り出す(ステップS28)。ステップS29では、カード排出センサ22によりカード取出しを検知し、その後、カード搬送手段213を停止させて制御を終了する。
【0059】
ステップS30では、カード搬送手段213を逆転させ、カード1をバックさせ、挿入口212よりカード1を排出する。次のステップS31では、カード検出センサ21によりカードの挿入口212からの取り出しを検知し、その後、カード搬送手段213の逆転を停止させて制御を終了する。
【0060】
現在、電子情報の読取技術が大変進歩しているが、例えば「スキミング」と呼ばれる手口のように、電子情報読取技術を悪用する技術も高度化している。
しかし、図1〜図9の参考例では、香りについて偽造しない限り、偽造したカードを適正なカードであると御判定させることは出来ない。そして、よく知られている様に、既存の電子技術では香りに関する情報を捏造、偽造することは不可能である。
すなわち、本発明の参考例によれば、電子情報読取技術を悪用した「スキミング」その他の手口で偽造することが不可能なカードを提供することが出来るのである。
【0061】
次に、図10〜図13を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1〜図9の参考例で用いられるカード1は香料チップが埋め込まれており、カード読取装置(カードリーダー)或いは認証システムは、香料が適正なものであるか否かのみでカード1が適正であるか否かを判定している。
これに対して、図10〜図13の第1実施形態では、既存の電子的な認証(磁気的に測定された情報による認証も含む)と、香による認証とを組み合わせている。
【0062】
図10、図11において、第1実施形態で用いられるカード1Aは、既存の各種カードのように電子的な判定を可能とする情報が表示(或いは記憶)された部分1Aaと、香の情報が記憶されている部分1Abとを有している。
【0063】
すなわち、「電子的な判定を可能とする情報が記憶された部分」即ち電子情報記憶部分1Aaについては、従来、公知の方式がそのまま適用されて、電子的な情報が記憶されて読み取り可能に構成されている。
【0064】
一方、「香の情報が記憶されている部分」即ち香料情報記憶部分1Abは、図1〜図9の参考例と同様に、当該部分には香料チップ13が埋め込まれている。ここで、香料チップ13の埋め込みの態様は、図11で示す様に、カード基盤11の一表面上に香料チップ13が載置された状態で被覆層或いはフィルム14で被覆されていても良く、或いは、カード基盤に凹部を形成し、当該凹部内に香料チップ13を配置して被覆しても良い。
【0065】
図12は、図10、図11で示す様なカード1Aを用いた認証システムをブロック図として表現している。以下、図12に基づいて、認証システムの構成について説明する。
【0066】
第1実施形態に係る認証システムは、図12において、電子情報読取手段としてのカードリーダー2Mと香料センサSa〜Scとを用いた香り検知部2Sとから成る読み取り手段2Aと、コントロールユニット7Aと、表示手段であるモニタ77とを有している。
【0067】
コントロールユニット7Aは、香料センサSa〜Scからの情報を受け継ぐインターフェース72Aと、インターフェース72Aからの情報により、たとえば、香りの種類や香りの量を解読する香り情報解読手段78と、カードリーダー2Mからの情報を受け継ぐインターフェース72Bと、インターフェース72Bからの情報により、電子情報を解析する電子情報解析手段79と、判定手段73A、データベース75Aとから構成されている。ここで、電子情報を解析する電子情報解析手段79は、公知・市販の部材をそのまま転用することが可能である。
【0068】
次に図13に基づいて、第1実施形態の認証判定制御の方法を説明する。
先ずステップS41において、コントロールユニット7Aは、カードリーダー2Mによって電子情報を、香り検知部2Sによって香り情報を読取り、ステップS42に進む。
【0069】
ステップS42では、読み取りが完了するまで待機しており、読み取りが完了したなら(ステップS42のYES)、データベース75Aから取り出した正規の電子情報及び正規の香り情報と比較する(ステップS43)。
【0070】
次のステップS44では、コントロールユニット7Aの判定手段73Aにおいて、電子情報及び香り情報がともに適正であるか否かを判断しており、適正であれば(ステップS44のYES)、適正なカードと判断して(ステップS45)制御を終了する。一方、適正でないなら(ステップS44のNO)、不適正なカードと判断して制御を終了する。
【0071】
図12及び図13において、電子情報読取手段であるカードリーダー2Mで読み取られた電子情報と、香り情報読取手段である香り検知部2Sで検出した香りに関する信号とが、共に適正である場合のみ、「カードが適正」と判断されるが、先ず電子情報について適正か否かを判定してから香りに関する情報の適否を判定しても良いし、或いは、それとは逆に、先ず香りに関する情報が適正か否かを反対してから、電子情報の適否を判定しても良い。
また、明確に図示はされていないが、電子情報と香りに関する情報とが、同時に読取手段で読み取られて、同時に適否が判定されて、両者とも適正な場合に「カードが適正」と判定する様に構成しても良い。
【0072】
上述した参考例の場合と同様に、図10〜図13の第1実施形態においても、認証に香りを用いているので、「スキミング」その他の電子情報読取技術を悪用する技術に対処することが出来る。
特に、第1実施形態では、仮に香りについて特定できたとしても、香りを特定するための設備では既存の電子情報を読み取ることが出来ない。
【0073】
換言すれば、図10〜図13の第1実施形態では、既存の電子情報読取技術と、香りを解析するための設備とを同時に準備しない限り、カードの偽造が不可能であるが、電子情報読取技術と香りを解析するための技術とは、技術分野が全く相違しているので、両方の設備を併せ持つことは困難である。
すなわち、本発明の第1実施形態によれば、カードを偽造することがさらに困難なカード及びそれを用いたシステムを提供することが出来る。
【0074】
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
【0075】
カードとカードリーダーのセンサとの相対位置がずれると、適正なカードであっても、図16で示す様に、香料チップ13とセンサSa〜Scとの相対位置もずれてしまう。その結果、適正なカードを用いたとしても、各センサSa〜Scに最も近接しているのは別の香料チップとなり、各センサSa〜Scは検出信号を発生せず、「不適正なカード」であるとの誤判断を行ってしまう。
【0076】
これに対して、図14で示す様にカードリーダー2Bにカード設置用ガイド2Baを設ければ、図15に示すように、当該ガイド2Baによりカード1の設置位置が所定位置、即ちカードリーダー2BのセンサSa〜Scに対応した位置に固定されるので、カード1の香料チップ13とセンサSa〜Scとの相対位置が常に適正に保たれ、適正なカードであれば、香料チップ13から徐放される香料分子が、対応するセンサにより確実に検出される。
【0077】
即ち、カード設置用ガイド2Baはカードが無理なく載置できる面積を囲った、いわゆる堤状の縁である。
そのような構造のカード設置用ガイド2Baを設けることにより、図16で示す場合のような誤判断の発生が防止される。
第2実施形態のその他の構成及び作用効果については、図1〜図9で示す参考例及び第1実施形態と同様である。
【0078】
次に、図17を参照して本発明の第3実施形態を説明する。
【0079】
センサの感応性能は、センサ温度が高いほど向上する傾向があることが知られている。
図17の第3実施形態は、斯かる性質を利用して、センサの検出能力を向上させたものである。すなわち、カードが適正か否かを判定するに際して、カードリーダー2C側に設けられたセンサSa〜Scの周囲に加熱手段(例えば電気ヒーター)Hを設け、これらのヒータHを電源ラインLeで直列に電源Eと接続し、電源Eから電流を流すことによって、加熱手段Hによりセンサ温度を上昇させ、以って、センサの検出能力を向上させている。
【0080】
第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、参考例〜第2実施形態と同様である。
【0081】
次に、図18を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
【0082】
上述した各実施形態において、カードが適正か否かを正確に判定するためには、カードに設けられた香料チップから徐放される香料分子が、直近のセンサに確実に検出され、隣接するセンサでは検出されない様にする必要がある。
【0083】
そのため、図18の第4実施形態では、カードリーダー2D側に負圧を発生する機構を設け、カードがカードリーダーに吸引されて、密着する様に構成されている。
【0084】
図18において、カードリーダー2Dにおけるカード1を載置する面側には、第1実施形態(図14参照)と同様なカード設置用ガイド2Daを設けている。
そのガイド2Daに囲まれカードを載置する面2Dfにはカード1の香りチップ13を挟む位置に各1対ずつ吸引孔2Db(図示の例では総計6箇所)が形成されている。
【0085】
各吸引孔は真空ラインLv1〜Lv6、及び真空ラインLv1〜Lv6の合流した真空ラインLvによって真空ポンプ又は真空ブロワ50に接続されている。
【0086】
その様に構成された第4実施形態では、真空ブロワ50を稼動させることによって、カード1は強制的にカードリーダー2Dのカード載置面2Dfに吸引される。したがって、カードに設けられた香料チップから徐放される香料分子が、直近のセンサに確実に検出され、隣接するセンサでは検出されない。
【0087】
第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、参考例〜第3実施形態と同様である。
【0088】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、カードの表面に3〜4個の香料チップが載置されているが、載置するべき香料チップの個数はこれに限定されるものではなく、単一の香料チップであっても、2個或いは5個以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の参考例に係る認証システム全体の構成を示す模式図。
【図2】参考例に係る認証システムのカードの構成を示す断面図。
【図3】参考例に係る制御手段の構成を示すブロック図。
【図4】参考例に係る第1の判定基準を表に纏めた図。
【図5】参考例に係り第1の判定基準に基づく判定制御を示したフローチャート。
【図6】参考例に係る第2の判定基準を表に纏めた図。
【図7】参考例に係り第2の判定基準に基づく判定制御を示したフローチャート。
【図8】参考例のゲートの周辺であって、ゲート開閉機構とカード認証処理機構を配置した領域のレイアウト例の詳細を示した平面図。
【図9】参考例に係りカード処理制御及びガイド開閉制御の方法を説明するフローチャート。
【図10】本発明の第1実施形態に係るカードの斜視図。
【図11】第1実施形態に係るカードの断面図。
【図12】第1実施形態に係る制御系の構成を説明するブロック図。
【図13】第1実施形態に係る制御制御方法を説明するフローチャート。
【図14】本発明の第2実施形態に係るカードリーダーの斜視図。
【図15】第2実施形態のカードの使用方法を示した説明図。
【図16】カードをカードリーダーに載置する場合に不適切な位置に載置した状態を示した様態図。
【図17】本発明の第3実施形態に係るカードリーダーの断面図。
【図18】本発明の第4実施形態に係るカードリーダーにカードを載置した状態を示した様態図。
【符号の説明】
【0090】
1,1A・・・カード
2,2A,2B,2C,2D・・・カードリーダー
3・・・ゲート
4・・・ゲート開閉用アクチュエータ
5・・・圧力流体源/エアタンク
6・・・三方弁
7・・・制御手段
8・・・カードストッパー
9・・・カードストッパー用アクチュエータ
11・・・基盤
13・・・香料チップ
14・・・フィルム
15・・・
21・・・カード検出センサ
22・・・カード排出センサ
731〜734・・・比較手段
74・・・認証判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤(11)の一表面に情報が記憶されたカードにおいて、電子情報記憶部分(1Aa)と香料情報記憶部分(1Ab)とを有し、前記電子情報記憶部分(1Aa)は電子的に読み取り可能な電子情報が記憶され、前記香料記憶部分(1Ab)は香りの異なる複数の香料(香料チップ13)が前記表面に載置され、該複数の香料(13)は所定量の香料分子が通過して徐放される様にフィルム(14)で被覆されて構成されていることを特徴とするカード。
【請求項2】
カード(1A)表面の電子情報及び香料情報を読取るカード読取装置において、前記電子情報を電子的に読取る読取手段(2A)と、カード表面の香りの異なる複数の香料(13)のうちの各1種類のみに感応して検出信号を出力する複数のセンサ(S1〜S4)を有する香料情報読取手段と、カード(1A)をガイドしてカード表面の電子情報及び複数の香料を前記電子的読取手段及び前記複数のセンサ(S1〜S4)にそれぞれ対応させるガイド(2Ba)とを有することを特徴とするカード読取装置。
【請求項3】
センサ(Sa〜Sc)の周囲部に加熱手段(H)を設け、センサ温度を高くしてセンサの検出能力を向上させるようにしたことを特徴とする請求項2のカード読取装置。
【請求項4】
センサ(Sa〜Sc)の表面に負圧を発生する機構(Lv1〜Lv6、Lv、50)を設け、前記ガイド(2Ba)によりガイドされるカード(1)を前記負圧により吸引しカードの複数の香料チップ(13)から徐放される香料分子が直近のセンサ(Sa〜Sc)に確実に検出される機能を有することを特徴とする請求項2のカード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−285949(P2006−285949A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357562(P2005−357562)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【分割の表示】特願2005−107418(P2005−107418)の分割
【原出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(501048930)株式会社 ピクセン (34)
【Fターム(参考)】