説明

カード取り出し装置

【課題】必要枚数のカードを取り出すことができる簡単で廉価な構成のカード取り出し装置を提案すること。
【解決手段】カード取り出し装置11では、その開口部22を介して必要枚数のカード28を摘み、前方に曲げながらカード取り出し口から引き出す。カード28は回転自在なローラ23を支点として前方に曲がりながら簡単に取り出すことができる。取り出されるカード28と共に引き出されるカードは、そのまま上方に引上げられてストッパ26に当るので、指で摘んだ必要枚数のカード28のみを取り出すことができ、余分なカードが引き出されることがない。カード収納部17に収納されているカード28は、自重によって前方に移動する台車30によって押されているので、所定枚数のカードを取り出されると、収納されているカードの全体が前方に押し出されて、ローラ23に押し付けられた状態が自動的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを必要枚数だけ取り出し可能な簡単な構成のカード取り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競馬の勝ち馬投票券を購入するためのマークシートが印刷されているカードは、競馬場などにおいて矩形のボックス内に積み重ねて置かれている。したがって、利用者はカードを何枚でも取り出すことができるので、必要枚数以上のカードが取り出されて、余ったカードがボックスの周囲にそのまま放置されることが多い。このような弊害を防止するために、例えば、下記の特許文献1に開示されているようなカード取り出し装置が提案されている。ここに開示されているカード取り出し装置では、モータ駆動により回転するローラを用いて、カードを送り出し、一度に取り出せるカードの枚数も最大で3枚程度に制限できるようになっている。
【特許文献1】特開平08−324821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一度に取り出すことのできる枚数がこのように少ない枚数に制限されると、一度に多数枚のカードを必要とする利用者にとっては極めて不便である。また、モータおよびローラを用いた搬送機構によりカードを送り出すようにすると、このような搬送機構を組み込むために、カード取り出し装置の寸法、コストが大幅に増加してしまう。
【0004】
本発明の課題は、駆動機構を用いることなく、利用者が必要枚数分のカードを取り出すことのできる廉価で簡単な構成のカード取り出し装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明のカード取り出し装置は、
縦置き状態のカードを前後方向に積層収納可能なカード収納部と、
前記カード収納部の前面における上端縁側の部分に形成されたカード取り出し口と、
前記カード取り出し口に連続して前記カード収納部の天面における前端縁から後方に延びており、収納される前記カードよりも狭い幅の開口部と、
前記カード取り出し口を幅方向に横切る状態に配置されている回転自在なローラと、
前記カード収納部に収納されているカードを前方に押し出して前記ローラに押し付けた状態を形成するためのカード押し出し部材とを有していることを特徴としている。
【0006】
本発明のカード取り出し装置では、カード収納部に収納されているカードのうち、その前側に位置しているカードの上端縁が、開口部を介して上側に露出している。したがって、この開口部に指などを入れて、必要枚数分のカードを摘むことができる。
【0007】
開口部の幅はカードの幅よりも狭いので、摘んだカードを上方に引き出すことができない。したがって、摘んだカードをカード収納部の前面上端縁部分に形成されているカード取り出し口から引き出すために、これらのカードを前方に引き出すと、カード取り出し口を幅方向に横切る状態に配置されている回転自在なローラを支点としてカードが前方に曲がる。また、カードの引き出し動作に連動して、当該ローラが連れ回るので、摘んだカードを簡単にカード取り出し口から引き出すことができる。
【0008】
また、引き出されるカードと共に引き出されようとするカードは、前方に折り曲げられることなく、上方に引上げられるので、開口部の両側部分に当たり、カード収納部から引き出されることがない。よって、摘んだカードのみが引き出され、余分なカードが引き出されることがない。
【0009】
必要枚数分のカードが引き出されると、カード収納部内のカードは、後側からカード押し出し部材によって前方に押し出されて、ローラに押し付けられた状態が再び形成される。
【0010】
ここで、カード押し出し部材としてはばね部材などの付勢部材を用いることができるが、自重により前記カード収納部内を前方に移動可能となっているものとすることができる。
【0011】
この場合には、前記カード収納部に、後端から前端に向けて下方に傾斜した傾斜面を配置しておき、前記カード押し出し部材を前記傾斜面に沿って自重により前方に移動可能としておけばよい。
【0012】
また、カード収納部にカードを収納あるいは補充するために開閉蓋を取り付けることが一般的である。開閉蓋を開けてカードを収納する際には、カード押し出し部材が作業の邪魔にならないように所定の位置から移動しないように保持する必要がある。カード押し出し部材を移動しないように保持するためには、前記開閉蓋が閉じた状態では前記傾斜面の後端部分を形成している第1の位置に位置決めされ、前記開閉蓋を開けると、当該第1の位置から落下した第2の位置に移動する落下部材を配置しておき、前記第2の位置に落下した前記落下部材に乗っている前記カード押し出し部材が、自重によって前方へ移動しないようにしておけばよい。
【0013】
このようにすれば、開閉蓋を開けると、それに連動して落下部材が落下するので、そこにカード押し出し部材を戻せば、当該カード押し出し部材がその位置に保持される。よって、カードの収納あるいは補充作業を簡単に行うことができる。作業終了後に開閉蓋を閉めると、落下部材が再び第1の位置に戻り、カード押し出し部材が自重によって傾斜面に沿って前方に移動可能になるので、収納されているカードが前方に押されて、ローラに押し付けられた状態が自動的に形成される。
【0014】
落下部材を開閉蓋に連動させるための機構としては、前記落下部材を前記開閉蓋から吊紐によって吊り下げた構成を採用できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のカード取り出し装置では、カード収納部の天面の前端縁部分に形成されている開口部を介して必要枚数のカードを掴み、ローラを支点として前方に曲げながらカード取り出し口から引き出すことができる。よって、多数枚のカードを一度に引き出すことができる。
【0016】
また、引き出されるカードと共に引き出されようとするカードは、曲げられることなくそのまま上方に引き上げられるので、カード幅よりも狭い開口部の両側に位置する天面部分に当たり、引き出されることがない。よって、余分なカードが引き出されてしまうことがない。
【0017】
さらに、カード収納部に収納されているカードは、自重によって前方に移動するカード押し出し部材によって前方に押されている。また、開閉蓋を開けると落下する落下部材に乗せることにより、所定の位置から移動しないように保持できる。よって、カードの収納作業あるいは補充作業を、カード押し出し部材に邪魔されることなく簡単に行うことができる。
【0018】
このように、本発明によれば、駆動機構を用いることなく、必要枚数のカードを取り出し可能な簡単で廉価な構成のカード取り出し装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したカード取り出し装置の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は本実施の形態に係るカード取り出し装置の基本構成を示す斜視図であり、図2はその正面図、平面図および内部構成図である。これらを参照して説明すると、カード取り出し装置1は、直方体形状をしたカード収納部2を備えており、このカード収納部2に、前後方向に縦置き状態のカード3が積層収納される。カード収納部2の前面4の上半部分にはカード取り出し口5が形成されている。このカード取り出し口5の下側縁に近い部位にはカード収納部2の幅方向に向けて当該カード取り出し口5を横切る状態で回転自在なローラ6が架け渡されている。
【0021】
カード収納部2の天面前縁部分には、カード取り出し口5に連続する開口部7が形成されている。開口部7はカード3の幅よりも狭い幅のものである。開口部7の両側および後側を取り囲む状態で、天面部分には取付板8が固定されており、この取付板8の裏面には開口部7の左右の縁に沿って前後方向に延びるゴム板などのような高摩擦係数のストッパ9が貼り付けられている。カード収納部2の内部における後端にはカード押し出し部材10が配置されており、このカード押し出し部材10によって、カード収納部2に収納されているカード3が前方に押し出されて、ローラ6に押し付けられた状態となっている。
【0022】
カード収納部2に収納されているカード3における前端側のものは、それらの上端縁が開口部7を介して露出している。したがって、開口部7に指11などを入れて、必要枚数分のカード3aを摘むことができる。カード3aを摘み、そのまま上に引き出すと、開口部7の両側縁部分の裏面側に配置されている左右のストッパ9に当るので、カード3を引き出すことができない。
【0023】
図2(c)に示すように、摘んだカード3aを前方に引くと、ローラ6を支点としてカード3が前方に曲がり、カード取り出し口5からカード3aを取り出すことができる。ローラ6は回転自在であるので、カード3aの取り出しに連動して連れ回りする。よって、カード3aを簡単に取り出すことができる。取り出されるカード3aと共に引き出されるカード3bがある場合には、当該カード3bはそのまま上方に引上げられるので、ストッパ9に当り、外部に引き出されてしまうことがない。よって、指で摘んだ必要枚数のカード3aのみを取り出すことができ、余分なカードが引き出されることがない。カード収納部2に収納されているカード3は後側からカード押し出し部材10によって押されているので、所定枚数のカードを取り出されると、収納されているカードの全体が前方に押し出されて、ローラ6に押し付けられた状態が自動的に形成される。
【実施例】
【0024】
図3は本発明を適用したカード取り出し装置の実施例を示す図であり、(a)はその平面図であり、(b)はその3B−3B線で切断した部分の断面図であり、(c)は3C−3C線で切断した部分の部分断面図である。図4(a)および(b)はカード押し出し部材としての台車の正面図および側面図である。
【0025】
本例のカード取り出し装置11は架台12を備え、この架台12は、一定間隔で平行に配置した左右の側板13、14と、これらの側板13、14の後端の間に取り付けた垂直背板15と、垂直背板15の上端から前方に水平に延びる状態で側板13、14の間に架け渡した後端側天板16を備えている。また、この架台12における側板13、14の間には、前方が下側となるように傾斜した前後方向に延びる一定幅の長方形のカード収納部17が形成されている。
【0026】
カード収納部17は、垂直背板15から前端に向けて下方に傾斜した状態に配置された底板18と、底板18の前端から直角に上方に延びている前板19と、底板18の後端からこれに直角に上方に延びている後板20と、後板20の上端部を中心として上下方向に開閉可能な状態で取り付けられている開閉蓋21から構成されている。前板19の上端と開閉蓋21の間には矩形のカード取り出し口22が形成されている。カード取り出し口22の下端部分には、幅方向に回転自在の状態でローラ23が側板13、14の間に架け渡されている。
【0027】
開閉蓋21の前端部分には台形状に切り取られた状態の開口部24が形成されている。この開口部24の縁に沿う状態で、開閉蓋21の裏面には取付板25が取り付けられ、この取付板25の表面にゴム板などからなるストッパ26が貼りつけられている。
【0028】
カード収納部17の内部において、底板18より上側の位置には、左右一対の支持板27a、27bが当該底板18と平行に前後方向に延びている。図において想像線で示すように、支持板27a、27bと開閉蓋21の間に、縦置きのカード28が積層状態で収納可能となっている。カード収納部17の後端側には、底板18に沿って移動可能なカード押し出し部材としての台車30が配置されている。
【0029】
台車30は、図4に示すように、一対の支持板27a、27bの間に沿って前後方向に移動可能な幅の台車本体31と、その裏面の前後に回転自在に取り付けられている前輪32および後輪33と、台車本体31の前面に取り付けられているカード押し出し板34とを備えている。台車本体31は所定の重さを備えているので、台車31は自重によって、傾斜配置されている底板18の表面18a(傾斜面)に沿って前方に滑落可能となっている。
【0030】
台車30が乗っている底板18における後端部分は、上下方向に移動可能な落下板35によって規定されている。落下板35は、開閉蓋21の後端のヒンジ部分21aの両端からガイド軸36を介して吊り下げられている左右一対の吊紐37a、37bによって吊り下げられている。開閉蓋21を閉じた状態では、落下板35は底板18と共に連続する傾斜面を形成している第1の位置に保持される。開閉蓋21を図において想像線で示す全開位置まで開けると、吊紐37a、37bが緩み、その分、落下板35が落下して想像線で示す第2の位置となる。この状態において、台車30を底板18の表面に沿って後方に引上げると、その後輪33が落下板35の上に落下して、想像線で示すように、前方には移動できない状態になる。この状態において開閉蓋21を閉めると、落下板35が再び持ち上がり、そこに乗っている台車30は自重によって前方に滑落可能な状態に戻る。
【0031】
この構成のカード取り出し装置11では、カード収納部17に収納したカード28が、後側から、台車30によって押されて、カード収納部17の前面を規定しているローラ23および前板19に押し付けられた状態が形成される。カード28の取り出し動作は図1のカード取り出し装置1の場合と同様であり、必要枚数分のカードを取り出すことができる。
【0032】
また、カードの収納作業や補充作業のために開閉蓋21を開けると、それに伴って、落下板35が落下する。したがって、台車30を後端まで引き戻すと、当該台車30を落下板35の上に落下させ、その位置から移動しないようにすることができる。よって、台車35が前方に移動しないように手で持って、カードの収納あるいは補充作業を行う必要がないので、便利である。作業終了後には開閉蓋21を閉じると、落下板35が引上げられるので、台車30によって収納されたカード28が前方に押し付けられた状態が自動的に形成される。
【0033】
本例のカード取り出し装置11によっても図1のカード取り出し装置1と同様な作用効果が得られる。これに加えて、収納されているカード28が自重によって移動する台車30によって押されており、開閉蓋21を開けると、台車30が乗っている底板18の後端部分を規定している落下板35が落下して台車30が底板18に沿って移動しないようにすることができる。よって、収納されているカード28をカード取り出し口22の側に押し出している機構を簡単な構成により実現できると共に、カードの収納あるいは補充作業において当該押し出し機構が邪魔にならないという利点がある。
【0034】
(その他の実施の形態)
なお、上記の実施例は、カード収納部が単一の場合のものであるが、複数のカード収納部を備えた構成とすることも可能である。例えば、図5には、図3、4に示す構成のカード収納部17が3つ並列状態に形成された構成の所謂、三連式のカード取り出し装置の実施例を示してある。
【0035】
図5(a)はかかるカード取り出し装置41における開閉蓋を取り外した状態での平面図であり、図5(b)はその4B−4B線に沿って切断した部分の断面図である。カード取り出し装置41は、左右の側板13、14の間に、等間隔で2枚の仕切り板13A、14Aが配置され、これにより、3つのカード収納部17(1)〜17(3)が形成されている。各カード収納部の構成は図3の示すカード収納部と同一である。なお、カード収納部の底板は共通の一枚の底板18Aからなり、その後端部分を規定している共通の一枚の落下板35Aは、左右の端部が吊紐37a、37bによって、共通の一枚の開閉蓋21Aから吊り下げられている。
【0036】
この構成のカード取り出し装置41によっても、図3、4に示す実施例と同様な作用効果が得られる。なお、2つのカード収納部を備えた2連式の構成とすることもでき、4つ以上のカード収納部を備えた構成とすることも勿論できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用したカード取り出し装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のカード取り出し装置の正面図、平面図および内部構成図である。
【図3】本発明を適用したカード取り出し装置の実施例を示す平面図、縦断面図および横断面図である。
【図4】図3の台車を示す正面図および側面図である。
【図5】本発明を適用したカード取り出し装置の実施例を示す平面図および縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 カード取り出し装置、2 カード収納部、3,3a,3b カード、4 前面、5 カード取り出し口、6 ローラ、7 開口部、8 取付板、9 ストッパ、10 カード押し出し部材、12 架台、17 カード収納部、18,18A 底板、18a 底板表面、19 前板、21,21A 開閉蓋、22 カード取り出し口、23 ローラ、24 開口部、26 ストッパ、30 台車、31 前輪、32 後輪、34 カード押し出し板、35,35A 落下板、37a,37b 吊紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦置き状態のカードを前後方向に積層収納可能なカード収納部と、
前記カード収納部の前面における上端縁側の部分に形成されたカード取り出し口と、
前記カード取り出し口に連続して前記カード収納部の天面における前端縁から後方に延びており、収納される前記カードよりも狭い幅の開口部と、
前記カード取り出し口を幅方向に横切る状態に配置されている回転自在なローラと、
前記カード収納部に収納されているカードを前方に押し出して前記ローラに押し付けた状態を形成するためのカード押し出し部材とを有していることを特徴とするカード取り出し装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記カード押し出し部材は、自重により前記カード収納部内を前方に移動可能となっていることを特徴とするカード取り出し装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記カード収納部は、後端から前端に向けて下方に傾斜した傾斜面を備えており、
前記カード押し出し部材は前記傾斜面に沿って前方に移動可能であることを特徴とするカード取り出し装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記カード収納部の開閉蓋と、
前記開閉蓋が閉じた状態では前記傾斜面の後端部分を形成している第1の位置に位置決めされ、前記開閉蓋を開けると、当該第1の位置から落下した第2の位置に移動する落下部材とを有し、
前記第2の位置に落下した前記落下部材に乗っている前記カード押し出し部材は、自重による前方への移動が阻止されるようになっていることを特徴とするカード取り出し装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記落下部材は前記開閉蓋から吊紐によって吊り下げられていることを特徴とするカード取り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−199485(P2006−199485A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15800(P2005−15800)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】