説明

カード型電子キー

【課題】キー本体の折り曲げが可能であって、万一、電子キーがこの折り曲げ部分で破損しても、無線通信によるキー照合を継続して実行することができるカード型電子キーを提供する。
【解決手段】カード型電子キー1は、通信対象との間で無線通信を介したキー照合が可能で、外形が板状である。カード型電子キー1は、キー本体10に、キー本体10の折り曲げを許容する連結部16を設け、近距離無線通信を用いたイモビライザー照合をキー照合として実行するLFアンテナ12c並びにトランスポンダ制御部11cを、連結部16を挟んだ一方の電子部品ユニット14にまとめて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カード型電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の通信対象と無線通信を行い、通信対象に搭載された装置を操作することができるカード型電子キーが採用されている。カード型電子キーは、小型で薄く、衣類のポケットに入れて持ち運べる利便性がある。しかし、カード型電子キーには、その形状上の理由、すなわち厚さが薄くしかも面積が厚さに対して広いことから、外部からの折り曲げ応力に関して弱いという問題がある。そこで、折り曲げ応力が加えられた場合においても内部に搭載されているプリント基板の損傷を防止することができるカード型電子キーが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカード型電子キーでは、外部から折り曲げ応力が加えられることによってケースが撓むと、プリント基板がケース内部において厚さ方向に変位し、プリント基板が平坦形状を維持できるようになっているため、プリント基板の損傷を防止できるようになっている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のカード型電子キーでは、ケースが撓むことができるよりも大きな外部からの折り曲げ応力が加えられると、プリント基板はケース内部において厚さ方向に変位することができず、プリント基板が平坦形状を維持することができず、プリント基板が損傷するおそれがあった。そこで、折り曲げ応力に対する耐性向上を図ることができる技術として、例えば折り曲げを促進する折り曲げ可能部をカード型電子キーに設け、この折り曲げ可能部によって曲げ応力を吸収することで対応する技術が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−241476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に車両には、トランスポンダを用いた無線によりキー照合を行うイモビライザーシステムが搭載されることが多い。このシステムを車両に搭載した場合、電子キーには、通信時において固有のIDコードとしてトランスポンダコードを車両に発信可能なトランスポンダ部が搭載される。トランスポンダ部は、電波を送受するアンテナと、トランスポンダコードの送受を管理する制御部とからなる。
【0007】
ここで、背景技術で述べたように電子キーの耐破損性を高めるべくキー本体に折り曲げ可能部を設けた場合、カード型電子キーに許容量を超える曲げ力が加えられた際には、電気接続部材が破損することも想定され得る。この場合、もし仮にトランスポンダ部のアンテナが、折り曲げ可能部を横断して形成されていると、この破損部分でトランスポンダ部のアンテナが分断され、システムが動作しない状況に陥ってしまう。こうなると、エンジンが始動できないばかりかアクセサリー等の電源も供給することができなくなるので、万一電気接続部材が破損してもイモビライザー照合に必要な通信が可能なカード型電子キーが求められていた。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、キー本体の折り曲げが可能であって、万一、電子キーがこの折り曲げ部分で破損しても、無線通信によるキー照合を継続して実行することができるカード型電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、通信対象との間で無線通信を介したキー照合が可能で、外形が板状をなしたカード型電子キーにおいて、キー本体に、当該キー本体の折り曲げを許容する連結部を設け、近距離無線通信を用いたイモビライザー照合を前記キー照合として実行するトランスポンダ機能部を、前記連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材にまとめて配置したことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、電子キーの折り曲げを許容すべくキー本体に連結部を設けたので、もし仮に電子キーに曲げ力がかかっても、このときにキー本体に発生する曲げ応力は連結部によって吸収される。このため、電子キーに折り曲げ力が付与されても、電子キーを破損から保護することが可能となる。また、本構成においては、この連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材にトランスポンダ機能部をまとめて配置したので、もし仮に電子キーが連結部で破損しても、この破損がトランスポンダ機能部に影響を及ぼさない。よって、電子キーが連結部で破損した後も、トランスポンダ機能部によるイモビライザー照合を継続して実行することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカード型電子キーにおいて、前記キー本体に内蔵された電池を駆動源に、狭域無線通信を用いたキーフリー照合を前記キー照合として実行可能であるキーフリー照合処理部を備え、前記キーフリー照合処理部は、前記連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材に配置され、前記電池は、前記連結部を挟んだもう一方の折れ曲がり部材に配置されていることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、もし仮に電子キーが連結部で破損した場合、キーフリー照合処理部は電池との接続が途切れてしまって動作できない状況に陥るので、連結部の破損後はキーフリー照合処理部を用いたキーフリー照合を実行することができなくなる。しかし、本構成においては、連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材にトランスポンダ機能部がまとめて配置されているので、連結部の破損に影響を受けないこのトランスポンダ機能部によって、連結部の破損後も無線通信によるキー照合を実行することが可能となる。よって、連結部の破損に伴うキーフリー照合の不可の状況に陥っても、問題なく無線通信によるキー照合が実行可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカード型電子キーにおいて、前記トランスポンダ機能部は、前記キーフリー照合処理部の回路内に組み込まれるとともに、当該キーフリー照合処理部のアンテナを、自身のアンテナとして共用することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、トランスポンダ機能部とキーフリー照合処理部との間で部品の共通化を図ることが可能となるので、部品コストの削減やサイズ大型化の抑制等に効果が高くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キー本体の折り曲げが可能であって、万一、電子キーがこの折り曲げ部分で破損しても、無線通信によるキー照合を継続して実行することができるカード型電子キーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】カード型電子キーの全体斜視図。
【図3】カード型電子キーの分解斜視図。
【図4】カード型電子キーの内部構造を示す内面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるカード型電子キーを電子キーシステムに具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、車両2には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくてもドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止等の車両動作を行うことが可能な電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムは、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー1が車両キーとして使用されている。電子キーシステムは、車両2からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを電子キー1が受信すると、それに応答する形で電子キー1が自身のIDコードを含ませたIDコード信号Sidを狭域無線通信により車両2に返信し、電子キー1のIDコードが車両2のIDコードと一致すると、ドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止が許可又は実行されるシステムである。
【0018】
電子キーシステムを以下に説明すると、車両2には、電子キー1との間で狭域無線通信を行う際にID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)21と、車両2の電源系を管理するメインボディECU31とが設けられている。照合ECU21には、車両2の各ドアに埋設されて車外にLF(Low Frequency)帯の信号を発信可能な車外LF発信機22と、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の無線信号を発信可能な車内LF発信機23と、車内後方の車体等に埋設されてRF(Radio Frequency)帯の無線信号を受信可能なRF受信機24とが接続されている。照合ECU21には、例えばドアロック施解錠等を管理するメインボディECU31が車内LAN(Local Area Network)30を介して接続されている。
【0019】
一方、電子キー1には、車両2との間で電子キーシステムに準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部11が設けられている。通信制御部11は、固有のキーコードとしてIDコードが記憶された11aを備えている。通信制御部11には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF通信部12と、通信制御部11の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信部13とが接続されている。また、通信制御部11には、電子キー1側において同システムに準ずるID照合(スマート照合)を管理するスマート通信部11bが設けられている。
【0020】
照合ECU21は、車外LF発信機22からLF帯のリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、車両2の周辺に車外通信エリアを形成する。電子キー1がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号SrqをLF通信部12で受信すると、電子キー1(スマート通信部11b)はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ11aに登録されたIDコードを含ませたRF帯のIDコード信号SidをRF発信部13から返信する。照合ECU21は、RF受信機24でIDコード信号Sidを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせて、ID照合としてスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU21は、車外照合が成立すると、メモリ21aに車外照合フラグを一定時間立てて、メインボディECU31を介してドアロック装置38によるドアロックの施解錠を許可又は実行する。なお、スマート照合がキーフリー照合に相当する。
【0021】
また、電子キーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このワンプッシュエンジンスタートシステムを以下に説明すると、車両2には、照合ECU21のID照合成立結果を基に、エンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU32が設けられている。エンジンECU32は、車内LAN30を通じて照合ECU21等の各種ECUに接続されている。車両2の運転席には、車両2の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ33が設けられている。
【0022】
照合ECU21は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、ドアが開けられて運転者が乗車したことを例えばカーテシスイッチ37で認識すると、車内LF発信機23からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU21は、電子キー1がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたIDコード信号SidをRF受信機24で受信すると、自身に登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせて、ID照合としてスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU21は、この車内照合が成立すると、メモリ21aに車内照合フラグを立てる。このとき、メインボディECU31は、エンジンスイッチ33のスイッチ操作部34が押圧操作されると、車両2の電源状態をオフ状態からACC(Accessory)オン状態やIG(Ignition)オン状態に切り換え可能とする。
【0023】
メインボディECU31は、エンジンが停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ33のスイッチ操作部34が押圧操作されたことを検出すると、照合ECU21に車内照合成立の有無を確認する。メインボディECU31は、照合ECU21から車内照合が成立の旨の通知を受ければ車内照合が成立済みであることを認識して、停止状態のエンジンを始動すべくエンジンECU32に起動信号を出力する。起動信号を受け付けたエンジンECU32は、車内照合結果を確認し、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジンを始動する。一方、メインボディECU31は、エンジンが稼働している際にエンジンスイッチ33のスイッチ操作部34が押圧操作されたことを検出すると、車両2が停止していることを条件にエンジンを停止状態にする。
【0024】
また、車両2には、電子キー1と近距離無線通信によりID照合を行うイモビライザーシステムが設けられている。イモビライザーシステムを搭載した車両2には、イモビライザーシステムのコントロールユニットとして前述の照合ECU21が設けられている。照合ECU21には、イモビライザーコイル36を備えたイモビライザー通信機35が接続されている。このイモビライザーコイル36は、エンジンスイッチ33の筐体内においてスイッチ操作部34を囲むようにリング状に巻回された取り付け状態をとっている。
【0025】
一方、電子キー1には、近距離無線を受信及び発信可能な前述のLF通信部12と、通信制御部11にトランスポンダ制御部11cとが設けられている。通信制御部11のメモリ11aには、イモビライザーシステムに用いるトランスポンダコードが登録されている。すなわち、電子キー1は、電子キーシステムに用いるLFアンテナで近距離無線を受信するとトランスポンダ制御部11cを起動し、トランスポンダコードを含むトランスポンダ信号StrをLFアンテナから発信することで、トランスポンダとして機能する。本例のトランスポンダ制御部11cは、スマート通信を管理する通信制御部11に一体に組み込まれたものであって、通信制御部11のメモリに書き込まれたイモビライザーシステム用の制御プログラムを通信制御部11のCPUが実行することにより機能的に生成される。
【0026】
イモビライザーシステムは、ブレーキペダルを踏みながら電子キー1をイモビライザーコイル36にかざすように近づけることにより、イモビライザーコイル36から発信される駆動電波Sivで電子キー1(トランスポンダ制御部11c)を起動させ、起動した電子キー1にトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号Strを返信させる。車両2は、このトランスポンダ信号Strをイモビライザーコイル36で受信すると、これを車両2側で照らし合わせてID照合(イモビライザー照合)を行う。エンジンスイッチ33のスイッチ操作部34を押圧操作してエンジンを始動する際、エンジン始動の前段階の認証動作として車内照合成立有無を確認する。なお、車内照合成立を条件とすることに限らず、イモビライザー照合が成立していれば、エンジン始動が許可される。
【0027】
次に、電子キー1の構造について図2〜図4を参照して説明する。
図2及び図3に示されるように、電子キー1は、長方形の板状をなしている。電子キー1は、キー本体10の表面が軟質材料で形成されているとともに、この軟質材料の内部に複数の部品群が組み込まれた構造をとっている。電子キー1の厚みは、5mm程度である。このカード型電子キー1には、処理回路やアンテナ等の電子部品を収容した電子部品ユニット14と、電池51及びメカニカルキー61等の金属部品を収容した電池キー部品ユニット15とが設けられている。これら電子部品ユニット14及び電池キー部品ユニット15は、間隔を置いて配列され、これらが軟質樹脂17によってそれぞれモールド成形されている。
【0028】
また、これら電子部品ユニット14及び電池キー部品ユニット15は、キー本体10の折り曲げを許容する連結部16により一体部品として連結されている。このため、電子キー1は、この連結部16の部分において折り曲げ可能なキーとして形成されている。電子部品ユニット14及び電池キー部品ユニット15は折れ曲がり部材に相当する。
【0029】
図4に示されるように、電子部品ユニット14は、プリント基板41が設けられている。プリント基板41は、電子部品を固定して配線するための部品である。プリント基板41には、電子キー1を制御するCPU、受信回路、送信回路等からなるIC及びチップ部品42や、アンテナ12a,12b,12c,13a等の電子部品が実装されている。IC及びチップ部品42の中のCPUは、電子キー1における無線通信(照合通信)の動作を管理する。すなわち、このIC及びチップ部品42の中には、電子キー1側においてスマート照合を管理するスマート通信部11bと、同じく電子キー1側においてイモビライザー照合を管理するトランスポンダ制御部11cが機能的に設けられている。
【0030】
また、LFアンテナ12a,12b,12cはLF帯の無線信号を受信するアンテナであって、例えばLFアンテナ12a〜12cをそれぞれX軸、Y軸、Z軸方向の電波を受信するアンテナとして組み込むことにより3軸対応となっている。例えば、LFアンテナ12a,12bは互いの軸線が直交するX軸及びY軸方向の電波検出用のバーアンテナであり、LFアンテナ12cはLFアンテナ12a,12bの軸線と直交するZ軸方向の電波検出用のループアンテナである。ここで、スマート通信部11bやアンテナ12a,12b,12c,13aがスマート照合処理部として機能する。スマート照合処理部がキーフリー照合処理部に相当する。なお、このZ軸方向のLFアンテナ12cは、LF帯の無線信号を発信可能であって、近距離無線の駆動電波Sivを受信するとトランスポンダ制御部11cに起電力を供給してトランスポンダ制御部11cを起動するとともに、トランスポンダ信号Strを発信する。すなわち、トランスポンダ制御部11cは、LFアンテナ12cが駆動電波Sivを受信すると、この駆動電波Sivによって起動状態に切り換わり、イモビライザー照合の実行動作に移る。ここで、トランスポンダ制御部11c及びLFアンテナ12cがトランスポンダ機能部として機能し、トランスポンダ機能部は電子部品ユニット14にまとめて配置されている。この近距離無線通信において、トランスポンダ機能部は駆動源である電池51からの給電なく受信及び発信が可能である。一方、RFアンテナ13aは、電子キー1の発信アンテナであって、RF帯の無線信号を送信するループアンテナからなる。電子部品が実装されたプリント基板41は、硬質樹脂により実装面41aがモールド成形されている。
【0031】
電池キー部品ユニット15のユニット本体には、同ユニットの各種部品の収納先として電池キー収容部53が取り付けされている。電池キー収容部53は、ユニット本体(キー本体10)の電子部品ユニット14側の側面(図1及び図2に示す紙面手前側面)が開口する形状をとり、例えばPPS等の硬質樹脂により形成されるとともに、内部に空間を有する形状をとっている。この電池キー収容部53の内部には、電池51の収納先として電池ケース52と、メカニカルキー61の収納先としてキーケース65とが隣り合う状態で設けられている。電池ケース52及びキーケース65は、PPS等の硬質樹脂にて形成されている。電池キー収容部53は、軟質樹脂17によりモールド成形されている。
【0032】
電池ケース52には、電池51と、電池ケース52内に露出して電池51のそれぞれの電極に接続される−極のターミナル54a並びに+極のターミナル54bと、電池51を挿入するための電池挿入口56を閉蓋する蓋部57とが設けられている。蓋部57には、電池51の一部を収容する空間として収容部57aが形成されている。蓋部57には、蓋部57がキー本体10から脱落するのを防止する一対の係合凸部57bが電池ケース52の内壁に向かって突出形成され、これら係合凸部57bを、電池ケース52の内壁に形成された係合凹部58にそれぞれ係合することにより、蓋部57が電池挿入口56に取り付けられる。
【0033】
また、メカニカルキー61は、長方形かつ板状の鍵部(キープレート)62と、使用者が使用時に把持する把持部63とからなる。把持部63は、鍵部62の延出方向に対して直交して鍵部62の基端部に形成され、メカニカルキー61を収容するためのキー挿入口64を閉蓋する機能を持つ。キーケース65の内面には、メカニカルキー61を側方から押圧する帯状の金属が折り曲げられた板ばね66が設けられている。板ばね66は、キー本体10の長さ方向(図2の紙面上下方向)に真っ直ぐ延びる基端部66aがキーケース65の樹脂部分に固定され、先端側のばね部66bがキーケース65の内部に露出可能となっている。キーケース65にメカニカルキー61が挿入されると、メカニカルキー61の側面に板ばね66が押圧してメカニカルキー61をキーケース65内に保持することにより、メカニカルキー61の脱落を防止する。
【0034】
電子部品ユニット14と電池キー部品ユニット15との間には、連結部16の部位において、SUS(Stainless Used Steel)等の金属を板状に成形した一対の金属板44が架橋されている。本例の金属板44は、柔軟性があるため折り曲げ力が加えられると折れ曲がるとともに、折り曲げに対して復元力を発生して元の状態である折り曲げられていない状態に戻ろうとする板ばねとして機能する。金属板44の一端は電子部品ユニット14の軟質樹脂17に埋設され、金属板44の他端は電池キー部品ユニット15の軟質樹脂17に埋設されている。各金属板44は、S字状をなしており、金属板44の両端の延出方向が同一直線上に位置しない形状となっている。
【0035】
また、電子部品ユニット14と電池キー部品ユニット15とは、連結部16の部位において、フレキシブル基板45によって電気的に接続されている。フレキシブル基板45の一端は電子部品ユニット14のプリント基板41に接続され、フレキシブル基板45の他端は電池キー部品ユニット15のターミナル54a,54bに接続されている。電子キー1の電源は、電池51からフレキシブル基板45を介して電子部品ユニット14へ供給される。
【0036】
図3に示されるように、一対の金属板44(フレキシブル基板45も含む)の上下には、これら金属板44を上下から挟む一対の細長い板形状の挟持部材46,47が設けられている。これら挟持部材46,47は、螺子によって金属板44に固定されている。挟持部材46,47は、細長い板形状を以て金属板44を上下から挟持することで蝶番の軸部材として機能する。すなわち、電子キー1は、挟持部材46,47が蝶番の回動軸となって、電子部品ユニット14と電池キー部品ユニット15とが折り曲がることが可能である。また、挟持部材46,47が金属板44を挟持しているため、板ばねとして機能する金属板44への負荷を抑制することができる。
【0037】
これら挟持部材46,47には、挟持部材46,47の露出を抑制する被覆部材48,49がキー本体10の上下にそれぞれ固設されている。これら被覆部材48,49は、3枚の板が連結されたような形状で、連結部分が折り曲げ可能となっている。これら被覆部材48,49は、電子部品ユニット14と挟持部材46,47と電池キー部品ユニット15とにそれぞれ固設されている。電子キー1の連結部16は、金属板44、挟持部材46,47及び被覆部材48,49によって形成されている。
【0038】
連結部16の両端には、電子キー1がこの連結部16において折れ曲がる際のその折れ曲がり量を規制(制限)する規制機構70が設けられている。本例の規制機構70を以下に説明すると、電子部品ユニット14において電池キー部品ユニット15側の両側端部には、キー本体10の平面方向に沿って突出する断面三角形状の第1凸部71が一対設けられている。また、電池キー部品ユニット15において電子部品ユニット14側の両側端部にも、各々の第1凸部71に向き合うように突出する断面三角形状の第2凸部72が一対設けられている。これら第1凸部71及び第2凸部72は、互いに向き合うもの同士が組となって働き、これら組同士のものは上下方向の線(垂線)を基準に対称形状をとっている。
【0039】
また、上側の挟持部材46の両端部において下側の挟持部材47側の面には、キー本体10の厚さ方向に沿って突出する断面三角形状の第3凸部73が一対設けられている。また、下側の挟持部材47の両端部において上側の挟持部材46側の面にも、各々の第3凸部73に向き合うように突出する断面三角形状の第4凸部74が一対設けられている。これら第3凸部73及び第4凸部74は、互いに向き合うもの同士が組となって働き、これら組同士のものはキー本体10の平面方向の基準線(水平線)を基準に対称形状をとっている。
【0040】
これら第1凸部71〜第4凸部74は、電子キー1が連結部16を境目にして上方(すなわち、英字のV字状)に折れ曲がった際、第1凸部71及び第2凸部72が第3凸部73に当接することでそれ以上の折れ曲がりを制限する。また、これら第1凸部71〜第4凸部74は、電子キー1が連結部16を境目に下方(すなわち、英字の逆V字状)に折れ曲がった際、第1凸部71及び第2凸部72が第4凸部74に当接することでそれ以上の折れ曲がりを制限する。本例の場合、これら第1凸部71〜第4凸部74は、電子部品ユニット14と電池キー部品ユニット15とのそれぞれが連結部16に対して規定位置以上折り曲がらないように形成されている。
【0041】
さて、本実施形態においては、電子キー1に、キー本体10の折り曲がりを許容する連結部16を設けた。このため、電子キー1に外部から折り曲げ力が加えられたとしても、電子キー1はこの連結部16によって折れ曲がるので、このときに電子キー1に発生する曲げ応力が連結部16によって吸収される。このため、電子キー1にかかる曲げ応力が電子キー1を破損する力として作用せずに済むので、電子キー1を破損から保護することが可能となる。
【0042】
また、万一、カード型電子キーに許容量を超える曲げ力が加えられた際には、電気接続部材としてのフレキシブル基板45が破損することが考えられる。しかしながら、電子部品ユニット14にトランスポンダ機能部として機能するLFアンテナ12cとトランスポンダ制御部11cとの両方がまとめて配置される。このため、万一フレキシブル基板45が破損して電池51から給電されなくなっても、トランスポンダが駆動電波Sivを受信することで起動してトランスポンダコードを車両2へ発信することができる。よって、万一電気接続部材が破損してもトランスポンダコードによるイモビライザー照合を継続して実行することができ、車両2のエンジンの始動及び電源状態を変更することが可能となる。
【0043】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)電子キー1の折り曲げを許容すべくキー本体10に連結部16を設けたので、もし仮に電子キー1に曲げ力がかかっても、このときにキー本体10に発生する曲げ応力は連結部16によって吸収される。このため、電子キー1に折り曲げ力が付与されても、電子キー1を破損から保護することが可能となる。また、連結部16を挟んだ電子部品ユニット14にトランスポンダ機能部としてトランスポンダ制御部11cとLFアンテナ12cとをまとめて配置したので、もし仮に電子キー1が連結部16で破損しても、この破損がトランスポンダ機能部に影響を及ぼさない。よって、電子キー1が連結部16で破損した後も、トランスポンダ機能部によるイモビライザー照合を継続して実行することが可能となる。
【0044】
(2)もし仮に電子キー1が連結部16で破損した場合、電子部品ユニット14に搭載されるスマート通信部11bは電池キー部品ユニットに搭載される電池51との接続が途切れてしまって動作できない状況に陥る。このため、連結部16の破損後はスマート通信部11bを用いたスマート照合を実行することができなくなる。しかし、連結部16を挟んだ電子部品ユニット14にトランスポンダ機能部がまとめて配置されているので、連結部16の破損に影響を受けないこのトランスポンダ機能部によってイモビライザー照合を継続して実行でき、連結部16の破損後も無線通信によるキー照合を実行することが可能となる。よって、連結部16の破損に伴うスマート照合の不可の状況に陥っても、問題なく無線通信によるキー照合が実行可能となる。
【0045】
(3)トランスポンダ機能部は、スマート照合を実行するスマート通信部11bやアンテナ12a,12b,12c,13a等のスマート照合処理部に組み込まれるとともに、LFアンテナ12cを共用する。このため、トランスポンダ機能部とスマート照合処理部との間で部品の共通化を図ることが可能となるので、部品コストの削減やサイズ大型化の抑制等に効果が高くなる。
【0046】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記構成において、規制機構70を省略した構成を採用してもよい。
・上記実施形態では、トランスポンダ機能部をスマート通信回路に埋め込んだトランスポンダ制御部11cとLFアンテナ12cとしたが、自ら単体で動くチップ状のトランスポンダとしてもよい。すなわち、チップ状のトランスポンダが連結部16を跨がず、電子部品ユニット14又は電池キー部品ユニット15に設けられる。
【0047】
・上記構成において、LFアンテナ12cを共用するようにしたが、イモビライザー照合用のLFアンテナを別途設けるようにしてもよい。
・上記実施形態では、メカニカルキー61を備える構成を採用したが、メカニカルキー61を備えない構成、すなわちメカニカルキー61及びキーケース65を備えない構成を採用してもよい。
【0048】
・上記実施形態において、金属板44はSUSに限らず、ベリリウム鋼、洋白、りん青銅等に代えてもよい。そして、SUS、ベリリウム鋼、洋白、りん青銅の順番で右側の金属に代えるほど同じ大きさであれば硬くなり、弾性係数が小さくなるため、復元力を小さくすることができ、折り曲げ可能な角度を大きくすることができる。よって、電子キー1の仕様に合わせて折り曲げ可能な角度を調整することができる。
【0049】
・上記実施形態において、金属板44の金属をSUSに限らず、ベリリウム鋼、洋白、りん青銅等に代えることで硬さを変更したが、同じ金属において硬さの異なるものを採用してもよい。
【0050】
・上記構成において、金属板44を省略した構成を採用してもよい。
・上記実施形態では、電子キー1の連結部16は、挟持部材46,47及び被覆部材48,49等によって形成するようにしたが、これに限らず、例えば軟質樹脂等で電子部品ユニット14と電池キー部品ユニット15とを一体成形してもよい。
【0051】
・電子キー1の厚みを5mm程度としたが、カード型電子キーとしては10mm程度のものも含む。
・上記構成において、図1に示されるように、電子キー1に施錠スイッチ19a及び解錠スイッチ19bを設け、この施錠スイッチ19a及び解錠スイッチ19bを操作することで、車両2へ施錠信号Sl又は解錠信号Sulを発信して、車両2のドアロックを解錠又は施錠することが可能な電子キー1としてもよい。
【0052】
・電子キーシステムで使用する各通信の周波数はどの周波数の電波を使用してもよい。
・上記実施形態において、連結部16は、必ずしも1つに限定されず、2つ以上設けてもよい。
【0053】
・上記実施形態において、本例の技術思想の採用対象は、必ずしも車両2に限定されず、無線通信によりキー照合を実行する種々の装置や機器に適用可能である。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0054】
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載のカード型電子キーにおいて、前記連結部を挟んで一方の前記折れ曲がり部材には、前記アンテナ及び前記トランスポンダの制御部が内蔵され、前記連結部を挟んだもう一方の折れ曲がり部材には、該電子キーに関係する金属部品が内蔵されていることを特徴とするカード型電子キー。
【0055】
同構成によれば、連結部を挟んだ一方にアンテナが載り、連結部を挟んだもう一方の折れ曲がり部材に金属部品が搭載されているので、アンテナが金属部品に影響を受けることが抑制される。よって、アンテナの通信性能が金属部品によって影響を受ける状況が生じ難くなり、電子キーの動作に関して信頼性を損ない難くすることが可能となる。また、このように連結部を挟んでアンテナと電池とが別々に配置された場合に、万一これらを接続する電気接続部材が破損した際には、電池からの給電によるアンテナからの信号の発信ができなくなる。しかしながら、アンテナとトランスポンダの制御部とが同じ折れ曲がり部材に配置されるため、トランスポンダによるイモビライザー照合を行うことが可能となる。
【0056】
(b)請求項1〜3、及び(a)のいずれか一項に記載のカード型電子キーにおいて、前記連結部には、前記キー本体の折り曲げに対する復元力を発生する金属板を備えることを特徴とするカード型電子キー。
【0057】
同構成によれば、金属板には過度な折り曲げ力を抑制する働きもあるので、電子キーが連結部において折り曲がる際に、連結部に適度な反折り曲げ力を発生させられる。よって、連結部が折れ曲がりすぎてしまう状況が発生し難くなるので、このように折り曲げに対する耐性を向上すれば、連結部の破損を発生し難くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…電子キー、10…キー本体、11…通信制御部、11b…スマート通信部、11c…トランスポンダ制御部、12…LF通信部、12a,12b,12c…LFアンテナ、13…RF発信部、13a…RFアンテナ、14…電子部品ユニット、15…電池キー部品ユニット、16…連結部、17…軟質樹脂、33…エンジンスイッチ、34…スイッチ操作部、35…イモビライザー通信機、36…イモビライザーコイル、41…プリント基板、41a…実装面、42…IC及びチップ部品、44…金属板、45…フレキシブル基板、46,47…挟持部材、48,49…被覆部材、51…電池、52…電池ケース、53…電池キー収容部、54a,54b…ターミナル、56…電池挿入口、57…蓋部、57a…収容部、57b…係合凸部、58…係合凹部、61…メカニカルキー、62…鍵部、63…把持部、64…キー挿入口、65…キーケース、66…板ばね、70…規制機構、71…第1凸部、72…第2凸部、73…第3凸部、74…第4凸部、Sid…IDコード信号、Siv…駆動電波、Srq…リクエスト信号、Str…トランスポンダ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象との間で無線通信を介したキー照合が可能で、外形が板状をなしたカード型電子キーにおいて、
キー本体に、当該キー本体の折り曲げを許容する連結部を設け、近距離無線通信を用いたイモビライザー照合を前記キー照合として実行するトランスポンダ機能部を、前記連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材にまとめて配置した
ことを特徴とするカード型電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載のカード型電子キーにおいて、
前記キー本体に内蔵された電池を駆動源に、狭域無線通信を用いたキーフリー照合を前記キー照合として実行可能であるキーフリー照合処理部を備え、
前記キーフリー照合処理部は、前記連結部を挟んだ一方の折れ曲がり部材に配置され、前記電池は、前記連結部を挟んだもう一方の折れ曲がり部材に配置されている
ことを特徴とするカード型電子キー。
【請求項3】
請求項2に記載のカード型電子キーにおいて、
前記トランスポンダ機能部は、前記キーフリー照合処理部の回路内に組み込まれるとともに、当該キーフリー照合処理部のアンテナを、自身のアンテナとして共用する
ことを特徴とするカード型電子キー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248706(P2010−248706A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96422(P2009−96422)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】