説明

カード挿入及び返却機構

【目的】 1枚のカードの挿入及び複数枚重ねたカードの一括返却を可能としたカード挿入及び返却機構を提供することにある。
【構成】 カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1上に、ストッパ2を配置すると共に揺動部材3を軸支し、カードの挿入時に揺動部材3がストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時に揺動部材3がストッパ2から離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に返却すべき複数枚のカードが通過可能なカード返却口S2を形成するよう構成した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、プリペイドカードを利用することのできる公衆電話機、自動券売機或いは自動精算機などの接客面の裏面側に取付けられ、1枚のカードの挿入及び複数枚重ねたカードの一括返却を可能としたカード挿入及び返却機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリペイドカードを利用することのできる公衆電話機、自動券売機或いは自動精算機において、プリペイドカードの磁気情報を処理するためには、磁気ヘッドにカードを1枚ずつ送り出さなくてはなくてはならない。そのため、接客面に設けたカード挿入口の開口高さをカード1枚が通過する大きさに形成し、カードを2枚重ねてカード挿入口に挿入できなくする必要がある。
逆に、カード挿入口に挿入された複数枚のカードを客に返却する場合、公衆電話機のように、カードをカード返却口より1枚ずつ返却していたのでは、カードの返却に時間差が生じて、客がカードを取り忘れる可能性がある上、客の待ち時間も長い。そこで、カードを複数枚重ねて客に一括返却する方法が自動精算機などで採用されているが、カード返却口をカード挿入口とは別の位置に設けているため、カード取込用の搬送装置の他にカード返却用の搬送装置を必要とし、カード搬送系の駆動制御が複雑なものとなってしまうという難点があった。また、自動券売機のように、券購入用の料金ボタンを接客面に多数配置する必要のある装置においては、料金ボタンが接客面の大半を占めることから、接客面にカード返却口をカード挿入口と別に設けることができず、カード挿入口より挿入した複数枚のカードを当該カード挿入口より1枚ずつ返却しているのが実情である。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、接客面にカード挿入口とカード返却口を別々に設けることなく、1枚のカードの挿入及び複数枚重ねたカードの一括返却を可能としたカード挿入及び返却機構を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は、カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1と、前記カード受部材1上において返却すべき複数枚のカードを重ねた高さよりも高い位置に配置されたストッパ2と、前記カード受部材1上に揺動自在に軸支され、カードの挿入時に上記ストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時にストッパ2から離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に上記複数枚のカードが通過可能なカード返却口S2を形成する揺動部材3とにより構成するという手段を採用することによって、上述の目的を解決した。
【0005】
【作用】
本考案のカード挿入及び返却機構は、カードの挿入時に揺動部材2がストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時に揺動部材3がストッパから離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に返却すべき複数枚のカードが通過可能なカード返却口S2を形成するものである。
【0006】
【実施例】
以下、本考案を添付図面に示す実施例に基づいて、更に詳しく説明する。
図1乃至図3は本考案に係るカード挿入及び返却機構の一実施例を示す側面図であり、図4は本考案に係るカード挿入及び返却機構の他の実施例を示す側面図である。
【0007】
本実施例のカード挿入及び返却機構は、図1乃至図4に示されるように、プリペイドカードを使用することのできる公衆電話機、自動精算機或いは自動券売機などの接客パネルPの裏面側に取付けられる。そして、カード挿入及び返却機構の後方(図1の右側)には、後述するカード受部材1の延長線上にカード搬送装置(図示せず)が設けられている。このカード搬送装置は、1枚のプリペイドカード(以下、カードと云う)を取り込んで磁気ヘッドに向け搬送し、返却すべき複数枚のカード(本実施例にあっては2枚のカード)を重ねた状態に接客パネルPに向け一括して送り出すよう構成されている。
【0008】
図1に示すカード挿入及び返却機構は、カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1と、このカード受部材1上において返却すべき2枚のカードを重ねた高さよりも高い位置に配置されたストッパ2と、前記カード受部材1上に揺動自在に軸支された揺動部材3と、この揺動部材3をストッパ2に当てるよう付勢するバネ部材4とから成っている。
【0009】
前記カード受部材1は、カードの長手方向に延びる横長の平板状に形成されて、接客パネルPに貫通形成した開口部P1の下部に略水平な状態に嵌着されている。しかして、前記カード受部材1は、接客パネルPの開口部P1から挿入されたカードを受けて上記カード搬送装置に案内したり、当該カード搬送装置が複数枚重ねて送り出したカードを受けて接客パネルPの開口部P1に案内したりする。
【0010】
前記ストッパ2は、接客パネルPの開口部P1と略同一幅の平板状に形成されている。前記ストッパ2は、後述する揺動部材3の右側下端部に設けた切欠部31内にカード受部材1と平行な状態に配置され、その右端部2aが揺動部材3の切欠部31の側面31aに当たるようになっている。
【0011】
前記揺動部材3は、カードの幅員方向に延びる略矩形の角柱状に形成され、右側下端部に略直角に切り欠いた切欠部31を有し、左側下端部に右斜下方に向けて傾斜する傾斜面32を有している。前記揺動部材3は、カードの幅員方向に延びる軸5を支点として切欠部31の弧状の上面31bがストッパ2の右端部2aの上端縁2bに摺接しながら時計回り方向又は反時計回り方向へ揺動するようになっている。そして、前記揺動部材3は、切欠部31の側面31aがストッパ2の右端部2aに当たった状態において、その下面33とカード受部材1とが平行となって当該カード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成する。また前記揺動部材3は、後述の如く、ストッパ2から離れる方向へ、即ち、反時計回り方向へ揺動すると、下面33の右側下端縁33aとカード受部材1との間にカード返却口S2を形成する(図3参照)。
【0012】
前記バネ部材4は、引張りコイルバネである。前記バネ部材4は、一端を揺動部材3の右端下部に、他端を揺動部材3の右側後方に設けたピン6に夫々引掛けて止めることにより、揺動部材3をストッパ2に当てるよう付勢している。前記バネ部材4の付勢力は、カード搬送装置が2枚重ねのカードを一定の搬送速度でカード受部材1上に送り出す際に、上方側のカード先端で揺動部材3の側面31aを押圧する押圧力よりも弱い力となっている。
【0013】
次に、かゝる構成のカード挿入及び返却機構の動作を説明する。
図1に示すように、例えば、2枚のカードC1,C2を重ねた状態でカード受部材1と揺動部材3の下面33とにより形成されたカード挿入口S1に挿入すると、下方側のカードC1のみがカード挿入口S1を通過し、揺動部材3が傾斜面32で上方側のカードC2をカード挿入口S1に入り込むのを阻止し、よって、2枚重ねのカードの挿入が防止される。
【0014】
一方、前述したカード搬送装置がカード挿入口S1より1枚づつ挿入された2枚のカードC1,C2を重ねた状態でカード受部材1上に送り出すと、上方側のカードC2の先端が揺動部材3の切欠部31の側面31aに当たる(図2参照)
。この状態においてカードC1,C2は、その後端部がカード搬送装置で挟持されている。そして、上記カード搬送装置がカードC1,C2を更に送り出すと、上方側のカードC2が揺動部材3の側面31aを押圧し、これにより揺動部材3が軸5を支点に時計回り方向へ揺動して、下面33の右側下端縁33aとカード受部材1との間に上記2枚重ねのカードC1,C2が通過可能なカード返却口S2を形成する(図3参照)。よって、2枚重ねのカードC1,C2は、カード返却口S2を通って客に一括返却される。しかる後に、客が接客パネルPの開口部P1よりカードC1,C2を抜き取ると、揺動部材3がバネ部材4の付勢力により反時計回り方向へ揺動して切欠部31の側面31aがストッパ2の右端部2aに当たり図1に示す状態に戻る。
【0015】
このように構成されたカード挿入及び返却機構は、2枚のカードC1,C2を客に一括返却する際に、揺動部材3の右側下端部33aが上方側のカードC2表面に接触してスリ傷を付ける虞があるので、このような不具合を防止するため、揺動部材3の右側下端部33aに摩擦係数が小さく、カード表面を傷付けることのない樹脂材やゴム材等を取付けることが好ましい。
【0016】
図4に示すカード挿入及び返却機構は、揺動部材3の右端上部にリンク7を介して電磁ソレノイド8(作動手段)の作動杆8aを回動自在に連結した他は上述のカード挿入及び返却機構と同様に構成されている。
【0017】
前記カード挿入及び返却機構は、カード挿入時に電磁ソレノイド8をOFFにして作動杆8aを左側へ前進させる。これにより、揺動部材3の側面31aがストッパ2の右端部2aに当たって、揺動部材3が下面33とカード受部材1との間に1枚のカードC1が通過可能なカード挿入口S1を形成する。そして、カード返却時に電磁ソレノイド8をONにして作動杆8aを後退させ、揺動部材3をバネ部材4の付勢力に抗して時計回り方向へ揺動させると、揺動部材3が下面33の右側下端縁33aとカード受部材1との間に2枚重ねのカードC1,C2が通過可能なカード返却口S2を形成する。
【0018】
このように揺動部材3を電磁ソレノイド8を用いてカードの返却時にのみ時計回り方向へ揺動作動するカード挿入及び返却機構は、電磁ソレノイド8の作動杆8aの引込み長さに応じて揺動部材3の揺動角度を大きく採ることが可能となるので、これに伴いカード返却口S2の開口高さも大きなものとすることができ、揺動部材3の右側下端縁33aで上方側のカードC2の表面にスリ傷を付けることなく客に2枚重ねのカードC1,C2を一括返却できるという利点がある。
【0019】
【考案の効果】
以上、説明したように、本考案のカード挿入及び返却機構は、カードの挿入時に揺動部材がストッパに当たってカード受部材との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口を形成し、カードの返却時に揺動部材がストッパから離れる方向へ揺動してカード受部材との間に返却すべき複数枚のカードが通過可能なカード返却口を形成するものであるので、カードの2枚重ねの挿入を防止できる上、複数枚重ねたカードの一括返却が可能となり、客がカードを取り忘れるといったようなことも少なくなる。
また、カード返却時の揺動部材の揺動作動をカード先端の押圧力により行うよう構成した場合、揺動部材を揺動作動させるための駆動手段が不要となるので、構造が簡単になって安価に作製できるというメリットがある。
また、カード返却時の揺動部材の揺動作動を作動手段を用いて行うよう構成した場合、カード返却口を返却すべき複数枚のカードを重ねた高さよりも大きく採ることが可能となるので、カード表面にスリ傷を付けることなく客に複数枚のカードを一括返却できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係るカード挿入及び返却機構の一実施例を示す側面図であって、揺動部材とカード受部材とで1枚のカードが通過可能なカード挿入口を形成した状態を表わしている。
【図2】図1に示すカード挿入及び返却機構において、カードの返却時に2枚重ねのカード先端で揺動部材の側面を押圧する状態の説明図である。
【図3】図1に示すカード挿入及び返却機構において、揺動部材とカード受部材とにより2枚重ねのカードが通過可能なカード返却口を形成した状態の説明図である。
【図4】本考案に係るカード挿入及び返却機構の他の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 カード受部材
2 ストッパ
3 揺動部材
4 バネ部材
8 電磁ソレノイド(作動手段)

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1と、前記カード受部材1上において返却すべき複数枚のカードを重ねた高さよりも高い位置に配置されたストッパ2と、前記カード受部材1上に揺動自在に軸支され、カードの挿入時に上記ストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時にストッパ2から離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に上記複数枚重ねたカードが通過可能なカード返却口S2を形成する揺動部材3とを備えて成るカード挿入及び返却機構。
【請求項2】 カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1と、前記カード受部材1上において返却すべき複数枚のカードを重ねた高さよりも高い位置に配置されたストッパ2と、前記カード受部材1上に揺動自在に軸支され、カードの挿入時に上記ストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時に複数枚重ねたカードの先端で押圧されその押圧力によりストッパ2から離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に上記複数枚のカードが通過可能なカード返却口S2を形成する揺動部材3と、前記揺動部材3を上記複数枚重ねたカード先端の押圧力よりも弱い力でストッパ2に当てるよう付勢するバネ部材4とから成るカード挿入及び返却機構。
【請求項3】 カードの挿入及び返却を案内するカード受部材1と、前記カード受部材1上において返却すべき複数枚のカードを重ねた高さよりも高い位置に配置されたストッパ2と、前記カード受部材1上に揺動自在に軸支され、カードの挿入時に上記ストッパ2に当たってカード受部材1との間に1枚のカードが通過可能なカード挿入口S1を形成し、カードの返却時にストッパ2から離れる方向へ揺動してカード受部材1との間に上記複数枚のカードが通過可能なカード返却口S2を形成する揺動部材3と、前記揺動部材3をストッパ2に当てるよう付勢するバネ部材4と、前記揺動部材3をカードの返却時にバネ部材4の付勢力に抗して揺動作動せしめる作動手段8とから成るカード挿入及び返却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】実開平6−75070
【公開日】平成6年(1994)10月21日
【考案の名称】カード挿入及び返却機構
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−18553
【出願日】平成5年(1993)3月19日
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)