説明

カード搬送機構

【課題】安価なレシートプリンタ用サーマルヘッドを採用して製品全体のコストダウンを図ることができるサーマルカードプリンタのカード搬送機構を提供する。
【解決手段】カードリーダライタ1のカード搬送路9の印字用ヘッド6の少なくとも直前部分の搬送路9aを所定の角度(例えば、θ=12°)を持って上方に傾斜すると共に、挿入されたカード10の先端部が当接しながらその形状に沿って搬送され、カード10の搬送軌道における上下位置を制御する傾斜面4bを設けた可動ガイド板4を印字ヘッド6の動作に追従して昇降可能、且つ、常時下方に弾発付勢して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルカードへの印字に際して使用されるカードプリンタのカード搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱感熱式の印字機能を備えたカードプリンタの原材料費においては、印字用サーマルヘッドの部品価格が占める割合が高く、製品コスト全体を引き上げる大きな要因となっている。例えば、図4の(a)に示すように、リライトカードの印字用として一般的に使用されている端面タイプと呼ばれるサーマルヘッド6は、構造が複雑で高価である。すなわち、その発熱部6aが下方に膨出した突条様にカード幅方向に沿って形成され、カード10が、発熱部6aとその下方に設けられたプラテンローラ11とにより挟持搬送される際にカード印字面に線接触して満遍なく押圧されて確実に印字できるようにされている。この構造により、カード10を印字用サーマルヘッド6に対して略平行、すなわち、装置の設置面に対して略平行に搬送することができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。換言すれば、比較的剛性が高いプラスチック等を材質としたカード10の搬送には平坦な搬送路が適しているためこのようなヘッド構造に改良されたともいえる。
【0003】
そこで、本発明者らは、この端面タイプのサーマルヘッドに換えて、特許文献3乃至特許文献6に開示されているような、一般的にはレシートプリンタ等に使用されている感熱紙用の安価なサーマルヘッド(前述の端面タイプの約1/2の価格)を採用することで、製品のコストダウンを図ることを考えた。レシートプリンタ用サーマルヘッドの発熱部は単なる平面という極めて簡単な構造であっても材質がフレキシブルな感熱紙に対しては充分印字可能であり、安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−139684号公報
【特許文献2】特開平6−135086号公報
【特許文献3】特開平6−99642号公報
【特許文献4】特開平7−68821号公報
【特許文献5】特開平8−72360号公報
【特許文献6】特開2004−314425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、端面タイプのサーマルヘッドを使用すれば、ヘッド6に対してカード10を平行に搬送することで確実に印字できたが(図4(a)参照)、本発明で採用したレシートプリンタ用のサーマルヘッド6の発熱部6aは平面状である。したがって、発熱部6aにカード10の印字面を確実に当接させるためは、発熱部6aに対して水平面から任意の角度θ(例えば、θ=12°)傾斜させてカード10を進行させる必要がある(図4(b)参照)。このようにカード10を傾斜した状態で搬送するためには、図5に示すように、カード挿入口2側のカード搬送路9aも傾斜させる必要がある。しかしながら、カード搬送路9aを傾斜させると、ヘッド6が降下していない時(印字・消去状態でない時)、カード10の先端部分が消去ヘッド7、またはその他の搬送部に衝突してカード詰まりが起こるという課題が生じる。本発明はこのような従来技術の課題に鑑み、安価なレシートプリンタ用サーマルヘッドを採用して製品全体のコストダウンを図ることができるサーマルカードプリンタのカード搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明のサーマルカードプリンタのカード搬送機構は、印字用又は消去用サーマルヘッドとプラテンローラによりサーマルカードを挟持搬送し、前記サーマルヘッドを発熱させることにより前記サーマルカードへの印字又は消去を行うカードプリンタにおいて、当該サーマルカードが前記サーマルヘッドに対して所定の傾斜角度を持って当接されると共に、挿入されたカード先端部が当接しながらその形状に沿って搬送されるガイドを設けたことを第1の特徴とする。また、ガイドが印字用サーマルヘッドの動作に追従して昇降可能、且つ、常時下方に弾発付勢されていることを第2の特徴とする。さらに、サーマルヘッドの発熱部が平面状であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成により本発明は以下の優れた効果を奏する。
(1)印字用サーマルヘッドに対して傾斜して挿入されたカード先端部が当接しながらその形状に沿って搬送される可動ガイドを設けたことにより、平面状の発熱体を備えた安価なサーマルヘッドを採用でき、製品全体のコストダウンを図ることができる。
(2)可動ガイドを設けたことによりカードの先端部分が消去ヘッドやその他の搬送部品への衝突を防止し、カード詰まりを防止できる。
(3)可動ガイドの付勢によりカードの反りを矯正して印字を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るカード搬送機構の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るカード搬送機構を示す側面断面図である。
【図3】カード搬送機構の動きを経時的示す側面断面図である。
【図4】カードとサーマルヘッドの当接関係の(a)は従来技術、(b)は本発明を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明に係るカード搬送路の一例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。尚、本実施例では、本発明を、書き換え可能なリライトカードと印字用及び消去用のサーマルヘッドを備えたカードリーダライタに適用したものについて説明する。また、便宜上、同様の構成要素には同一の参照符号を付して説明する。
【実施例】
【0010】
図1に示すように、本発明に係るリライトカードリーダライタ1(以下、単にリーダライタ1と称する)は、リライトカード10(以下、単にカード10と称する)表面に印字及び消去する機能を備えている。尚、カード10は、例えば、PETG等のカード基材にロイコ塗料に代表されるような、加熱により発色と消色を繰り返す感熱特殊塗料を塗布してリライト層を形成しており、カードリーダライタ1の印字ヘッド6及び消去ヘッド7からなる印字・消去部RWによって文字等が書き換えられる。
【0011】
すなわち、リーダライタ1は、図2に示すように、その躯体に、カード挿入口2から挿入されるカード10をカード搬送路9で搬送する搬送機構と、カード10に印刷を行う印字ヘッド6と消去を行う消去ヘッド7を備えている。印字ヘッド6では、通常の文字や図柄、バーコード等も印字できる。印字ヘッド6は、カード10に所定の熱量を付与することにより発色させるサーマルヘッドであり、例えば、カード10のリライト層に用いられている感熱特殊塗料がロイコ塗料の場合には、消色の際には110℃の発熱量が必要であり、発色の際には130℃の発熱量が必要である。このため、印字ヘッド6は、所定の温度範囲での温度切り換えが短時間且つ確実にデコーダ(図示せず)により制御される必要がある。
【0012】
ところで、リーダライタ1のカード搬送路9において、カード詰まりを解消するために、通常は印字ヘッド6と消去ヘッド7の間にガイド板を固定して設けるが、印字ヘッド6と消去ヘッド7は昇降動作するため、固定したガイド板では各々のヘッド6、7の降下の際に邪魔になる。そこで、本発明では、その一端部にアーム状の支軸を設けた下向きに弧状の可動ガイド板4を、消去ヘッド7を装着するホルダー5に一体的に形成されたガイド孔5aを上下に摺動可能に嵌装して、その支軸4aでもって軸承し、印字ヘッド6並びに消去ヘッド7の昇降に対して自由に追従することができるようにされている。尚、支軸4aはバネ(図示せず)等により常に下方に付勢されている。そして、図3に示すように、印字ヘッド6、消去ヘッド7の両者が同時に上がっている時はガイド板として機能し、それ以外の(どちらか一方、または両方が降りている)時は印字ヘッド6と消去ヘッド7の動きを妨げないように移動するようにされている。
【0013】
すなわち、カード搬送路9の印字用ヘッド6の少なくとも直前部分の搬送路9aが所定の角度(例えば、θ=12°)を持って上方に傾斜されると共に、挿入されたカード10の先端部が当接しながらその形状に沿って搬送されカード10の搬送軌道における上下位置を制御する傾斜面4bを設けた可動ガイド板4を設けることで、可動ガイド板4が印字ヘッド6の動作に追従して昇降可能、且つ、常時下方に弾発付勢されていることになる。つまり、可動ガイド板4にカード10が進入する傾斜方向と逆向きの傾斜面を設けることで、カード10の端面を当接させてカード10の進行方向を下方に誘導するようにされている。以上の構成により、印字ヘッド6の発熱部6aが平面状であってもカード10の印字面を確実に当接させることができ、また、カード10の先端部分が消去ヘッド7、またはその他の搬送部品に衝突してカード詰まりが起こることがなく、印字面に確実に印字することができる。カード10が、プラテンローラ11及び12と印字ヘッド6及び消去ヘッド7との間を通過する際、各ヘッド6及び7を所定の圧力で押圧させてカード10を挟持し、各ヘッド6及び7を所定の温度に加熱して、カード10に所定の熱量を付与して、情報の印字(発色)もしくは消去(消色)を行う。一方、印字を行わない場合は、印字ヘッド6の押圧を行わず、カード10の厚さ以上の間隔で印字ヘッド6をプラテンローラ11から離隔させておく。
【0014】
図3(a)は、リーダライタ1の印字ヘッド6及び消去ヘッド7の双方が上昇した初期状態を示す。その際は可動ガイド板4も上方に移動し、カード搬送路9全体が開放される。そして、リライトカード10が、カード挿入口2から挿入されると、図3(b)に示すように、先ず、カード搬送路9上を搬送機構である搬送ローラ8により、そのままカード搬送路9の終端側水平部9bまで一旦搬送された後、逆送し、消去ヘッド7とプラテンローラ12とにより挟持搬送されながら、カード10のリライト層に印字されている文字、図形等の古い可視情報の消去が開始される。この時、印字ヘッド6は上昇し、消去ヘッド7のみ降下している。次いで、図3(c)に示すように、消去ヘッド7とプラテンローラ12により挟持搬送されると共に、印字ヘッド6も下降してプラテンローラ11とにより挟持搬送されながら新たな可視情報の印字が開始される。この時、印字ヘッド6及び消去ヘッド7双方は下降している。そして、図3(d)に示すように、新たな可視情報の書き込みが終了したカード10が、カード挿入口2から排出される。この時、消去ヘッド7は上昇し、印字ヘッド6は下降している。
【0015】
すなわち、リーダライタ1に挿入されたカード10は、搬送ローラ8と搬送ガイドローラ3が協働して、先ず、カード搬送路9の傾斜部9aを通過し、カード搬送路9の奥側に搬送されるのであるが、その際にカード10の先端部が消去ヘッド7やその他の搬送部に衝突することが無い。そればかりでなく、カード10に反りなどの不具合が生じている場合も可動ガイド4板の付勢力により平坦に矯正して印字を確実に行うことができる。
【0016】
尚、搬送ローラ8と印字・消去部RWのプラテンローラ11及び12の駆動は、駆動モータ(図示せず)によりエンコーダ(図示せず)からの指令に基づいて制御される。また、本発明の要旨は、発熱体が平坦なレシートプリンタ用サーマルヘッドでも確実に印字できるようにカード搬送路における印字ヘッドの少なくとも直前部分が所定の角度を持って上方に傾斜されると共に、挿入されたカード先端部が当接しながらその進行に倣って昇降してカードの搬送軌道における上下位置を制御するガイド板を設けた点にあり、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で改変を施し得るのは勿論構わない。
【符号の説明】
【0017】
1 カードリーダライタ
2 カード挿入口
3 搬送ガイドローラ
4 可動ガイド板
4a ガイド板の支軸(シャフト)
4b ガイド板の傾斜面
5 消去ヘッドホルダー
5a ガイド孔
6 印字ヘッド(サーマルヘッド)
6a 発熱部
7 消去ヘッド(サーマルヘッド)
8 搬送ローラ
9 搬送路
9a カード搬送路の傾斜部
9b カード搬送路の水平部
10 リライトカード
11 プラテンローラ
12 プラテンローラ
13 ブラケット
14 バネ
RW 印字・消去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字用又は消去用サーマルヘッドとプラテンローラによりサーマルカードを挟持搬送し、前記サーマルヘッドを発熱させることにより前記サーマルカードへの印字又は消去を行うカードプリンタにおいて、当該サーマルカードが前記印字用サーマルヘッドに対して所定の傾斜角度を持って当接するようにされると共に、挿入されたカード先端部が当接しながらその形状に沿って搬送されるガイドを設けたことを特徴とするカード搬送機構。
【請求項2】
ガイドが印字用サーマルヘッドの動作に追従して昇降可能、且つ、常時下方に弾発付勢されていることを特徴とする請求項1記載のカード搬送機構。
【請求項3】
サーマルヘッドの発熱部が平面状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカード搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179739(P2012−179739A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42647(P2011−42647)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000177346)三和ニューテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】