説明

カード状媒体処理装置

【課題】カード収容部にカード状媒体を収容する際のユーザの操作性を確保するとともにカード収容部に収容されたカード状媒体のカード収容部からの抜けを防止することが可能で、かつ、カード状媒体に所定の処理が行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能なカード状媒体処理装置の具体的な構成を提案する。
【解決手段】カード状媒体処理装置1は、カード2が収容されるカード収容部3と、カード収容位置とカード処理位置との間でカード収容部3をスライド可能に保持する保持部4と、カード収容部3に収容されたカード2に当接するバネ部材13とを備えている。バネ部材13の一端側は、カード収容部3に固定されており、保持部4には、カード処理位置にカード収容部3が移動したときに、バネ部材13に当接して、カード収容部3内の下面に向かってバネ部材13を押し付ける押付部4bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード状媒体に所定の処理を行うカード状媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触式のICカードへのデータの記録やICカードからのデータの読取を行うカードリーダとして、ICカードを収容する収容部材(トレイ)を移動させて、カードリーダ内でICカードを搬送するカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、ICカードとの間でデータのやりとりを行うためのIC接点を備えており、このIC接点は、カードリーダの奥端側に配置されている。このカードリーダでは、収容部材によってICカードがカードリーダの奥端側へ搬送されると、ICカードに形成される端子部とIC接点とが接触して、カードリーダとICカードとの間でデータのやりとりが行われる。
【0003】
また、特許文献1に記載のカードリーダは、収容部材に収容されたICカードに当接して収容部材内でICカードを保持するバネ部材(板バネ)を備えている。バネ部材の一端側は、収容部材に固定されている。また、バネ部材によるICカードの押圧力は、収容部材がカードリーダの奥側へ移動するにつれて増加するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−33842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に記載のカードリーダでは、収容部材がカードリーダの奥側へ移動するにつれて、バネ部材によるICカードの押圧力が増加する。そのため、このカードリーダでは、カードリーダの手前側に配置されている収容部材へICカードを収容する際には、ユーザの操作性を損なわず、かつ、収容部材に収容されたICカードが収容部材から抜けるのを防止することが可能になる。また、このカードリーダでは、収容部材がカードリーダの奥端側へ移動してカードリーダとICカードとの間でデータのやりとりが行われる際には、ICカードの保持力を高めて、収容部材からICカードが抜けるのを効果的に防止することが可能になる。しかしながら、特許文献1には、かかる効果を生じさせるための具体的な構成は開示されていない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、カード収容部にカード状媒体を収容する際のユーザの操作性を確保するとともにカード収容部に収容されたカード状媒体のカード収容部からの抜けを防止することが可能で、かつ、カード状媒体に所定の処理が行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能なカード状媒体処理装置の具体的な構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のカード状媒体処理装置は、カード状媒体が収容されるカード収容部と、カード収容部にカード状媒体が収容されるカード収容位置とカード状媒体に所定の処理が行われるカード処理位置との間でカード収容部をスライド可能に保持する保持部と、カード収容部に収容されたカード状媒体に当接してカード収容部内の1つの側面であるカード押付面に向かってカード状媒体を付勢する板状または線状のバネ部材とを備え、バネ部材の一端側は、カード収容部に固定され、保持部には、カード処理位置にカード収容部が移動したときに、バネ部材に当接して、カード押付面に向かってバネ部材を押し付ける押付部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のカード状媒体処理装置は、カード収容位置とカード処理位置との間でカード収容部をスライド可能に保持する保持部と、カード収容部に収容されたカード状媒体に当接してカード収容部内のカード押付面に向かってカード状媒体を付勢するバネ部材とを備えている。また、本発明では、バネ部材の一端側は、カード収容部に固定され、保持部には、カード処理位置にカード収容部が移動したときに、バネ部材に当接して、カード押付面に向かってバネ部材を押し付ける押付部が形成されている。
【0009】
そのため、本発明では、カード収容部にカード状媒体を収容する際に、カード収容部に一端側が固定された片持ち状態のバネ部材をカード状媒体に当接させることが可能になる。したがって、本発明では、カード収容部にカード状媒体を収容する際にカード状媒体に作用するバネ部材のバネ力を小さくすることが可能になり、カード収容部にカード状媒体を収容する際のユーザの操作性を確保することが可能になる。また、小さなバネ力であってもカード状媒体にはバネ部材のバネ力が作用するため、カード収容部に収容されたカード状媒体のカード収容部からの抜けを防止することが可能になる。したがって、本発明では、カード収容位置とカード処理位置との間でスライドするカード収容部の移動時に、カード収容部からカード状媒体が抜けるのを防止することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、カード処理位置にカード収容部が移動したときに、バネ部材は、保持部に形成される押付部によって、カード押付面に向かって押し付けられる。そのため、押付部を利用して、バネ部材の、カード状媒体に当接する部分の両側でバネ部材を支持した両持ち状態のバネ部材をカード状媒体に当接させることが可能になる。あるいは、片持ち状態のバネ部材をカード状媒体に当接させる場合であっても、押付部を利用して、バネ部材の支点(すなわち、バネ部材の、押付部が当接する部分)と作用点(すなわち、バネ部材の、カード状媒体に当接する部分)との距離を短くすることが可能になる。したがって、本発明では、カード収容部がカード処理位置にあるときにカード状媒体に作用するバネ部材のバネ力を大きくすることが可能になり、その結果、カード状媒体に所定の処理が行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能になる。
【0011】
このように、本発明では、保持部に形成される押付部を用いた比較的簡易な構成で、カード収容部にカード状媒体を収容する際のユーザの操作性を確保するとともにカード収容部に収容されたカード状媒体のカード収容部からの抜けを防止することが可能になり、かつ、カード状媒体に所定の処理が行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能になる。また、本発明では、カード収容部にカード状媒体を収容する際にカード状媒体に作用するバネ部材のバネ力を小さくすることが可能になるため、カード収容部にカード状媒体を収容する際にカード状媒体に傷が生じるのを抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、バネ部材は、カード状媒体に当接するカード当接部と、押付部が当接する被押付部とを備え、カード当接部は、カード状媒体に向かって突出するように形成され、被押付部は、カード当接部の突出方向と反対の方向へ突出するように形成され、押付部には、被押付部に当接する傾斜面が形成され、傾斜面は、カード状媒体処理装置の奥側に向かうにしたがって、カード押付面側へ傾斜している。この場合には、傾斜面を利用して、カード状媒体に作用するバネ力をしだいに大きくしていくことが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、バネ部材は、カード状媒体に当接するカード当接部と、押付部が当接する被押付部とを備え、被押付部は、カード当接部よりもバネ部材の他端側に形成されている。この場合には、カード収容部がカード処理位置にあるときに、押付部を利用して、カード当接部の両側でバネ部材を支持することが可能になる。すなわち、押付部を利用して、両持ち状態のバネ部材をカード状媒体に当接させることが可能になる。
【0014】
本発明において、バネ部材は、板バネであり、カード当接部および被押付部は、平板状の部材が折り曲げられることで形成されていることが好ましい。このように構成すると、バネ部材の構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、カード状媒体処理装置は、たとえば、カード状媒体に形成される端子部に接触するIC接点を備え、カード収容部がカード処理位置にあるときに、端子部とIC接点とが接触して、カード状媒体とカード状媒体処理装置との間でデータのやりとりが行われる。この場合には、端子部とIC接点とが接触してカード状媒体とカード状媒体処理装置との間でデータのやりとりが行われているときのカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能になる。したがって、カード状媒体に記録されるデータが破壊されるのを防止することが可能になる。
【0016】
本発明において、カード状媒体処理装置は、たとえば、IC接点を保持するIC接点ブロックを備え、カード収容部に収容されたカード状媒体がカード収容部とともにカード処理位置へ移動してIC接点ブロックに接触すると、IC接点ブロックがカード状媒体に向かって移動して、端子部とIC接点とが接触する。この場合には、カード収容部からカード状媒体が抜ける方向へIC接点ブロックからの反力がカード状媒体に作用することもあるが、本発明では、カード収容部がカード処理位置にあるときにカード状媒体に作用するバネ部材のバネ力を大きくすることが可能になるため、端子部とIC接点とが接触してカード状媒体とカード状媒体処理装置との間でデータのやりとりが行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能になる。
【0017】
本発明において、カード状媒体処理装置は、たとえば、カード収容部にカード状媒体が収容されたことを検出する検出機構を備えている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のカード状媒体処理装置では、カード収容部にカード状媒体を収容する際のユーザの操作性を確保するとともにカード収容部に収容されたカード状媒体のカード収容部からの抜けを防止することが可能になり、かつ、カード状媒体に所定の処理が行われる際のカード収容部からのカード状媒体の抜けを効果的に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカード状媒体処理装置の斜視図である。
【図2】図1に示すカード状媒体処理装置からフレーム等を取り外した状態の斜視図である。
【図3】図1に示すカード状媒体処理装置の断面図である。
【図4】図1に示すカード状媒体処理装置において、カード処理位置までトレイが移動したときのカード状媒体およびIC接点ブロックの状態を説明するための側面図である。
【図5】図1に示すカード状媒体処理装置の断面図であり、(A)はカード収容位置にあるトレイにカードが収容されたときの状態を示す図、(B)はトレイがカード処理位置にあるときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(カード状媒体処理装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカード状媒体処理装置1の斜視図である。図2は、図1に示すカード状媒体処理装置1からフレーム4等を取り外した状態の斜視図である。図3は、図1に示すカード状媒体処理装置1の断面図である。図4は、図1に示すカード状媒体処理装置1において、カード処理位置までトレイ3が移動したときのカード状媒体2およびIC接点ブロック11の状態を説明するための側面図である。
【0022】
本形態のカード状媒体処理装置1は、カード状媒体である接触式のICカード2(以下、「カード2」とする)に記録されたデータの読取やカード2へのデータの記録を行うためのカードリーダである。したがって、以下では、本形態のカード状媒体処理装置1を「カードリーダ1」とする。このカードリーダ1は、カード2が収容されるカード収容部としてのトレイ3と、トレイ3をスライド可能に保持する保持部としてのフレーム4と、トレイ3を駆動する駆動機構5と、カード2とデータのやりとりを行うためのIC接点6とを備えている。
【0023】
本形態では、図1等に示すX方向にトレイ3がスライドして、カード2が移動する。また、X方向に略直交する図1等のZ方向は、カードリーダ1に挿入されるカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに略直交する図1等のY方向は、カードリーダ1に挿入されるカード2の幅方向(短手幅方向)である。なお、以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0024】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。上述のように、カード2は、接触式のICカードであり、カード2には、ICチップ(図示省略)が内蔵されている。また、カード2の表面(上面)には、ICチップと電気的に繋がる端子部2a(図2参照)が形成されている。
【0025】
トレイ3は、樹脂材料によって形成されている。また、トレイ3は、上下方向に扁平な略四角筒状に形成されており、その前端と奥端とが開口している。トレイ3の前端は、カード2の挿入口となっている。トレイ3の奥端には、カード2の端部が突き当たる突当部3aが形成されている。突当部3aは、トレイ3の内部において、カード2の前後方向の位置決めの機能を果たしている。トレイ3には、カード2の略半分程度が収容可能となっている。トレイ3の詳細な構成については後述する。
【0026】
フレーム4は、上下方向に扁平な略直方体状に形成されており、フレーム4の内部には、トレイ3が配置される配置空間が形成されている。フレーム4は、トレイ3を前後方向へスライド可能に保持している。本形態では、トレイ3がフレーム4の前端側に配置されてカード2がトレイ3に収容されるカード収容位置(図5(A)に示す位置)と、トレイ3がフレーム4の奥側へ移動してカード2の端子部2aとIC接点6とが接触しデータのやりとりが行われるカード処理位置(図5(B)に示す位置)との間で、トレイ3は、フレーム4に対してスライド可能となっている。フレーム4の上側には、基板8が固定されている。フレーム4の詳細な構成については後述する。
【0027】
駆動機構5は、駆動源となるモータ9と、モータ9の動力をトレイ3に伝達する動力伝達機構とを備えている。モータ9は、フレーム4の奥端側に固定されている。動力伝達機構は、たとえば、フレーム4に回転可能に支持される歯車列と、トレイ3に固定されるラック10(図2参照)とから構成されており、歯車列を構成するピニオンがラック10に噛み合っている。この動力伝達機構は、フレーム4の左端側に配置されている。
【0028】
IC接点6は、IC接点ブロック11に保持されている。IC接点ブロック11は、フレーム4の内部の奥端側に配置されている。また、IC接点ブロック11は、上方へ退避している退避位置(図5(A)に示す位置)と、カード2の端子部2aにIC接点6が接触する接触位置との間でスライド可能となるように、フレーム4に保持されている。
【0029】
本形態では、カード収容位置にトレイ3があるとき(すなわち、フレーム4の前端側にトレイ3が配置されているとき)に、IC接点ブロック11は、退避位置にある。この状態で、トレイ3に収容されたカード2がトレイ3とともにカード処理位置に向かって移動すると(すなわち、フレーム4の奥側へ移動すると)、カード2の端部がIC接点ブロック11の当接部11aに当接する。この状態で、さらにトレイ3がフレーム4の奥側へ移動すると、カード2に押されたIC接点ブロック11は、カード2に向かって奥斜め下側へ移動する。カード処理位置までトレイ3が移動すると、図4に示すように、カード2の端子部2aにIC接点6が所定の接触圧で接触する。
【0030】
なお、IC接点ブロック11には、上方向へ突出する遮光部11bが形成されている。この遮光部11bが、基板8に実装される光学式のセンサ12の発光素子と受光素子との間を遮ると、カード処理位置までトレイ3が移動して、カード2の端子部2aにIC接点6が所定の接触圧で接触していることが検出される。また、IC接点ブロック11は、図示を省略する付勢部材によって、退避位置へ向かう方向(すなわち、前斜め上方向)に付勢されており、カード処理位置にあるトレイ3がカード収容位置に向かって移動すると、IC接点ブロック11は、付勢部材によって、退避位置へ戻される。
【0031】
(トレイの構成およびフレームの構成)
図5は、図1に示すカード状媒体処理装置1の断面図であり、(A)はカード収容位置にあるトレイ3にカード2が収容されたときの状態を示す図、(B)はトレイ3がカード処理位置にあるときの状態を示す図である。
【0032】
上述のように、トレイ3は、上下方向に扁平な略四角筒状に形成されている。トレイ3の上面を構成する上面部3bには、図2に示すように、カード2の端子部2aとIC接点6との接触が可能となるように、切欠き部3cが形成されている。切欠き部3cは、トレイ3の奥端から前側に向かって所定の範囲に形成されている。また、トレイ3の上面部3bには、後述のバネ部材13の一部が配置される開口部3dが形成されている。開口部3dは、上下方向で上面部3bを貫通するように形成されるとともに、略矩形状に形成されている。また、開口部3dは、上面部3bの右前端側に形成されている。
【0033】
トレイ3の下面を構成する下面部3eの上面3f(図3参照)には、カード2の下面が当接するカード搭載部3gが上方向へ突出するように形成されている。カード搭載部3gは、トレイ3の奥端部と前端側との2箇所に形成されている。トレイ3の前端側に形成されるカード搭載部3gは、開口部3dの下側に形成されている。カード搭載部3gの上端面は、上下方向に略直交する平面状に形成されており、トレイ3に収容されたカード2の下面は、カード搭載部3gの上端面に当接する。
【0034】
トレイ3の内部には、トレイ3にカード2が収容されたことを検出するための検出機構(図示省略)が配置されている。この検出機構は、たとえば、カード2の端部が当接して回動するレバーと、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサとから構成されている。レバーは、カード2の端部が当接するカード当接部と、発光素子と受光素子との間を遮る遮光部とを備えており、たとえば、発光素子と受光素子との間から遮光部が外れている状態のレバーのカード当接部にカード2の端部が当接してレバーが回動し、発光素子と受光素子との間を遮光部が遮ると、トレイ3にカード2が収容されたことが検出される。なお、検出機構は、上下方向からカード2を挟むように配置される発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサであっても良いし、カード2に接触するレバー部材を備えるマイクロスイッチであっても良い。
【0035】
トレイ3の上面部3bの上面の右端側には、トレイ3に収容されたカード2の上面に当接して、下面部3eの上面3fに向かって(すなわち、下側に向かって)カード2を付勢するバネ部材13が固定されている。バネ部材13は、ステンレス鋼板等の平板状の金属部材が折り曲げられることで形成された板バネである。バネ部材13は、前後方向に細長い略帯状に形成されており、バネ部材13の奥端側が上面部3bの上面に固定されている。すなわち、バネ部材13の奥端側には、上面部3bに固定される固定部13aが形成されている。また、バネ部材13の前端側には、カード2の上面に当接するカード当接部13bと、フレーム4に形成される後述の押付部4bが当接する被押付部13cとが形成されている。被押付部13cは、カード当接部13bよりも前端側に形成されており、バネ部材13の前端部分を構成している。
【0036】
カード当接部13bは、下側へ向かって突出するように形成されている。すなわち、カード当接部13bは、トレイ3に収容されたカード2に向かって突出するように形成されている。具体的には、カード当接部13bは、左右方向から見たときの形状が略三角形状となるように下側に向かって折り曲げられることで形成されている。カード2に当接するカード当接部13bの下端は、円弧状の曲面となっている。
【0037】
カード当接部13bの一部は、トレイ3の開口部3dの中に配置されており、カード当接部13bの下端は、トレイ3の内部に配置されている。また、カード当接部13bの下端は、トレイ3の前端側に形成されるカード搭載部3gの上面と所定の隙間を介して対向している。トレイ3の前端側に形成されるカード搭載部3gの上面とカード当接部13bの下端との間に形成される隙間は、カード2の厚さよりも薄くなっている。
【0038】
被押付部13cは、上側へ向かって突出するように形成されている。すなわち、被押付部13cは、カード当接部13bの突出方向と反対の方向へ突出するように形成されている。被押付部13cは、カード当接部13bの前端に繋がるように形成されている。後述の押付部4bが当接する被押付部13cの上端は、円弧状の曲面となっている。
【0039】
上述のように、フレーム4は、上下方向に扁平な略直方体状に形成されており、フレーム4の内部には、トレイ3が配置される配置空間が形成されている。フレーム4の上面を構成する上面部4aの下面には、カード処理位置にトレイ3が移動する際、および、移動した後に、バネ部材13の被押付部13cに当接して、トレイ3の下面部3eの上面3fに向かって(すなわち、下方向に向かって)被押付部13cを押し付ける押付部4bが形成されている。押付部4bは、上面部4aの下面から下方向へ突出するように形成されている。本形態では、トレイ3の下面部3eの上面3fは、トレイ3内の1つの側面であるカード押付面である。なお、カード収容位置にトレイ3があるときには、上面部4aの下面と被押付部13cとの間には隙間が形成されている。
【0040】
押付部4bの前端側には、被押付部13cに当接する傾斜面4cが形成されている。傾斜面4cは、奥側に向かうにしたがって下方向へ傾斜する平面状に形成されている。すなわち、傾斜面4cは、奥側に向かうにしたがって下面部3eの上面3f側へ傾斜している。また、傾斜面4cは、奥側に向かうにしたがって下方向へ緩やかに傾斜している。また、押付部4bには、傾斜面4cの奥端に繋がるように、上下方向に略直交する平面状の平行面4dが形成されている。
【0041】
本形態では、トレイ3がフレーム4の前端側に配置されている状態で、図5(A)に示すように、トレイ3の前端からカード2がトレイ3に挿入されて収容される。カード2がトレイ3に収容されるときには、固定部13aがトレイ3に固定されている片持ち状態のバネ部材13(すなわち、固定部13aを支点とする片持ち状態のバネ部材13)のカード当接部13bがカード2に当接する。
【0042】
また、トレイ3にカード2が収容された状態では、図5(A)に示すように、カード当接部13bがカード2の上面に当接しており、カード2は、カード当接部13bとカード搭載部3gとの間に挟まれた状態で、トレイ3内で保持されている。すなわち、カード2は、片持ち状態のバネ部材13の付勢力によって、トレイ3内で保持されている。たとえば、前後方向が鉛直方向と平行になるように、カードリーダ1を持ち上げた場合に、カード2の自重でカード2がトレイ3から落ちない程度の保持力で、カード2はトレイ3内で保持されている。
【0043】
トレイ3の内部に配置される検出機構によってトレイ3にカード2が収容されたことが検出されると、駆動機構5が起動して、トレイ3がフレーム4の奥側へ搬送される。すなわち、カード2がカードリーダ1の奥側へ搬送される。トレイ3がフレーム4の奥側へ搬送されると、やがて、バネ部材13の被押付部13cがフレーム4の押付部4bの傾斜面4cに当接する。被押付部13cが傾斜面4cに当接すると、被押付部13cは傾斜面によって下側へ押される。
【0044】
また、トレイ3がフレーム4の奥側へさらに搬送されると、トレイ3は、カード処理位置へ到達する。トレイ3がカード処理位置にあるときには、被押付部13cは、押付部4bの平行面4dに当接しており、平行面4dによって下側へ押されている。すなわち、トレイ3がカード処理位置にあるときには、カード2は、固定部13aおよび被押付部13cを支点とする両持ち状態のバネ部材13の付勢力によって、カード当接部13bとカード搭載部3gとの間に挟まれた状態で、トレイ3内で保持されている。また、トレイ3がカード処理位置にあるときには、カード2の端子部2aにIC接点6が所定の接触圧で接触しており、カードリーダ1とカード2との間でデータのやりとりが行われている。
【0045】
カードリーダ1とカード2との間でデータのやりとりが終了すると、トレイ3は、カード収容位置までフレーム4の前側へ搬送される。トレイ3がカード収容位置に到達すると、ユーザによって、トレイ3からカード2が引き抜かれる。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カード2がトレイ3に収容されるときに、固定部13aがトレイ3に固定されている片持ち状態のバネ部材13のカード当接部13bがカード2に当接する。そのため、本形態では、トレイ3にカード2を収容する際にカード2に作用するバネ部材13のバネ力を小さくすることが可能になり、トレイ3へカード2を収容する際のユーザの操作性を確保することが可能になる。
【0047】
また、本形態では、カード2がトレイ3に収容されると、小さなバネ力であってもカード2にバネ部材13のバネ力が作用するため、トレイ3に収容されたカード2のトレイ3からの抜けを防止することが可能になる。したがって、本形態では、前後方向へトレイ3が移動する際の、トレイ3からのカード2の抜けを防止することが可能になる。また、トレイ3の内部に配置される検出機構がカード2の端部に当接して回動するレバーを備えている場合であって、レバーを付勢する付勢部材の付勢力によってカード2にトレイ3から抜ける方向(すなわち、前方向)への力が作用する場合には、トレイ3からカード2が抜けやすくなるが、本形態では、この場合であっても、トレイ3からのカード2の抜けを防止することが可能になる。
【0048】
また、本形態では、トレイ3がカード処理位置にあるときに、カード2は、両持ち状態のバネ部材13の付勢力によって、カード当接部13bとカード搭載部3gとの間に挟まれた状態で、トレイ3内で保持されている。そのため、カード処理位置にトレイ3があるときにカード2に作用するバネ部材13のバネ力を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、カード2の端子部2aとIC接点6とが接触して、データのやりとりが行われているときのトレイ3からのカード2の抜けを効果的に防止することが可能になり、その結果、カード2に記録されるデータが破壊されるのを防止することが可能になる。
【0049】
特に本形態では、トレイ3がカード処理位置にあるときに、カード2は、前斜め上方向に向かって付勢されるIC接点ブロック11に当接しているため、IC接点ブロック11からの反力がカード2に作用して、トレイ3からカード2が抜けやすくなるが、本形態では、カード処理位置にトレイ3があるときにカード2に作用するバネ部材13のバネ力を大きくして、トレイ3からのカード2の抜けを効果的に防止することが可能になる。
【0050】
このように、本形態では、フレーム4に形成される押付部4bを用いた比較的簡易な構成で、トレイ3へカード2を収容する際のユーザの操作性を確保するとともにトレイ3に収容されたカード2のトレイ3からの抜けを防止することが可能になり、かつ、カードリーダ1とカード2との間でデータのやりとりが行われる際のトレイ3からのカード2の抜けを効果的に防止することが可能になる。また、本形態では、トレイ3へカード2を収容する際にカード2に作用するバネ部材13のバネ力を小さくすることが可能になるため、トレイ3へカード2を収容する際にカード2に傷が生じるのを抑制することが可能になる。
【0051】
本形態では、バネ部材13は、板バネである。そのため、本形態では、バネ部材13の構成を簡素化することが可能になる。
【0052】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0053】
上述した形態では、バネ部材13の被押付部13cは、カード当接部13bよりも前端側に形成されている。この他にもたとえば、被押付部13cは、カード当接部13bと固定部13aとの間に形成されても良い。この場合には、トレイ3がカード処理位置にあるときに、カード2は、被押付部13cを支点とする片持ち状態のバネ部材13の付勢力によって、カード当接部13bとカード搭載部3gとの間に挟まれた状態で、トレイ3内で保持される。そのため、固定部13aを支点とする片持ち状態のバネ部材13の付勢力によって、カード2がトレイ3内で保持される場合と比較して、前後方向(X方向)におけるバネ部材13の支点(すなわち、被押付部13c)と作用点(すなわち、カード当接部13b)との距離を短くして、カード2に作用するバネ部材13のバネ力を大きくすることが可能になる。したがって、上述した形態と同様に、カードリーダ1とカード2との間でデータのやりとりが行われているときのトレイ3からのカード2の抜けを効果的に防止することが可能になり、その結果、カード2に記録されるデータが破壊されるのを防止することが可能になる。
【0054】
上述した形態では、バネ部材13に形成される被押付部13cの数は1個であるが、バネ部材13に形成される被押付部13cの数は2個以上であっても良い。この場合には、たとえば、2個以上の被押付部13cのそれぞれに当接する複数の押付部4bがフレーム4に形成される。また、この場合には、カード当接部13bよりも前端側に全ての被押付部13cが形成されても良いし、カード当接部13bと固定部13aとの間に全ての被押付部13cが形成されても良い。また、カード当接部13bを挟んだ両側に被押付部13cが形成されても良い。
【0055】
上述した形態では、バネ部材13は、板バネである。この他にもたとえば、バネ部材13は、金属製の線状部材(ワイヤ)が折り曲げられることで形成された線バネ(ワイヤバネ)であっても良い。また、バネ部材13は、樹脂材料で形成された樹脂バネであっても良い。バネ部材13が樹脂バネである場合には、バネ部材13は、たとえば、樹脂製のトレイ3と一体で形成されても良い。
【0056】
バネ部材13のカード当接部13bは、カード2の上面に当接している。この他にもたとえば、カード当接部13bがカード2の幅方向におけるカード2の端面に当接するように、バネ部材13が配置されても良い。この場合には、バネ部材13の付勢力によって、たとえば、カード2は左側に向かって付勢される。バネ部材13の付勢力によって、カード2が左側に向かって付勢される場合には、トレイ3の左側面を構成する左側面部の右面は、トレイ3内の1つの側面であるカード押付面である。
【0057】
上述した形態では、押付部4bの下面は、傾斜面4cと平行面4dとによって構成されている。この他にもたとえば、押付部4bの下面は、奥側に向かうにしたがって下側へ傾斜する傾斜面のみによって構成されても良い。
【0058】
上述した形態では、カード2は、接触式のICカードであるが、カード2は、たとえば、非接触式のICカードであっても良い。この場合には、トレイ3がカード処理位置にあるときに、カード2とカードリーダ1との間でデータの通信が行われる。また、カード2は、その表面に感熱方式で印字が行われる印字部を備えるカードであっても良い。この場合には、トレイ3がカード処理位置にあるときに、たとえば、サーマルヘッドによってカード2の印字部に印字が行われる。
【0059】
上述した形態では、カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。この他にもたとえば、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 カードリーダ(カード状媒体処理装置)
2 カード(カード状媒体)
3 トレイ(カード収容部)
3f 上面(カード押付面)
4 フレーム(保持部)
4b 押付部
4c 傾斜面
6 IC接点
11 IC接点ブロック
13 バネ部材
13b カード当接部
13c 被押付部
X2 カード状媒体処理装置の奥側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体が収容されるカード収容部と、前記カード収容部に前記カード状媒体が収容されるカード収容位置と前記カード状媒体に所定の処理が行われるカード処理位置との間で前記カード収容部をスライド可能に保持する保持部と、前記カード収容部に収容された前記カード状媒体に当接して前記カード収容部内の1つの側面であるカード押付面に向かって前記カード状媒体を付勢する板状または線状のバネ部材とを備え、
前記バネ部材の一端側は、前記カード収容部に固定され、
前記保持部には、前記カード処理位置に前記カード収容部が移動したときに、前記バネ部材に当接して、前記カード押付面に向かって前記バネ部材を押し付ける押付部が形成されていることを特徴とするカード状媒体処理装置。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記カード状媒体に当接するカード当接部と、前記押付部が当接する被押付部とを備え、
前記カード当接部は、前記カード状媒体に向かって突出するように形成され、
前記被押付部は、前記カード当接部の突出方向と反対の方向へ突出するように形成され、
前記押付部には、前記被押付部に当接する傾斜面が形成され、
前記傾斜面は、前記カード状媒体処理装置の奥側に向かうにしたがって、前記カード押付面側へ傾斜していることを特徴とする請求項1記載のカード状媒体処理装置。
【請求項3】
前記バネ部材は、前記カード状媒体に当接するカード当接部と、前記押付部が当接する被押付部とを備え、
前記被押付部は、前記カード当接部よりも前記バネ部材の他端側に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のカード状媒体処理装置。
【請求項4】
前記バネ部材は、板バネであり、
前記カード当接部および前記被押付部は、平板状の部材が折り曲げられることで形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のカード状媒体処理装置。
【請求項5】
前記カード状媒体に形成される端子部に接触するIC接点を備え、
前記カード収容部が前記カード処理位置にあるときに、前記端子部と前記IC接点とが接触して、前記カード状媒体と前記カード状媒体処理装置との間でデータのやりとりが行われることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカード状媒体処理装置。
【請求項6】
前記IC接点を保持するIC接点ブロックを備え、
前記カード収容部に収容された前記カード状媒体が前記カード収容部とともに前記カード処理位置へ移動して前記IC接点ブロックに接触すると、前記IC接点ブロックが前記カード状媒体に向かって移動して、前記端子部と前記IC接点とが接触することを特徴とする請求項5記載のカード状媒体処理装置。
【請求項7】
前記カード収容部に前記カード状媒体が収容されたことを検出する検出機構を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカード状媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−114279(P2013−114279A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256950(P2011−256950)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】