説明

カード状磁気記録媒体及び転写用積層体

【課題】ホログラムを明瞭に視認することができるとともに、ESD障害の発生を防ぐことができるカード状磁気記録媒体及び転写用積層体を提供する。
【解決手段】カード基材20上に形成された磁気記録層12の上に、透明非導電性蒸着層14、および透明光回折層15がこの順に積層されたカード状磁気記録媒体であって、磁気記録層12と透明非導電性蒸着層14との間の全面に、鏡面インキ層13が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード状磁気記録媒体及び転写用積層体、特に、見る方向に応じて外観が変化するホログラム効果を有するカード状磁気記録媒体及び転写用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードの意匠性およびセキュリティー性を高めるため、カード上にホログラム像形成のための透明光回折層を設けることが行われている。特にホログラム像を磁気記録層上に形成した高意匠性のホログラム付き磁気カードとしては、従来より図4に示すものが知られている。この図4に示す磁気カードは、カード基材20上に、接着剤層51、磁気記録層52、アンカー層53、金属蒸着層54、透明光回折層55、保護層56が形成されている。そして、この金属蒸着層54にはアルミニウムなどの金属が用いられ、ホログラムを形成すると同時に、磁気記録層の色相を効果的に隠蔽する役割を果たしている。
【0003】
一方、磁気記録層等の下地を隠蔽するのではなく、むしろ視認できるようにすることで意匠性を高める方法として、従来から、特許文献1に記載されているような透明ホログラム付き磁気カードに関する技術が知られている。この特許文献1では、透明ホログラムを通して磁気記録層上に形成された絵柄層が見えるようにしている。そして、磁気記録層の色相を隠蔽して意匠性をさらに高めるため、隠蔽力の高いアルミ粉等を含有した隠蔽層を、磁気記録層と絵柄層との間に用いることができることが記載されている。
【0004】
また、透明ホログラム付き磁気カードに関する技術として、特許文献2に記載されている技術が知られている。この技術では、高輝度のインキ反射層を透明光回折層の一方の面であって、その面の一部の領域に形成することにより、より意匠性の高い絵柄層としている。
【特許文献1】特開2000−272275号公報
【特許文献2】特開2003−326824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、磁気記録層の色相を隠蔽する隠蔽層として、反射率の高くないアルミ粉含有のものを使用していたために、隠蔽層からの反射光が十分ではなく、ホログラムの絵柄を繊細かつ明瞭に視認することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2では、透明光回折層の一方の面であって、その面の一部の領域にしか、インキ反射層が形成されていないため、インキ反射層が形成されていない領域からの反射光が十分ではなく、ホログラムを繊細かつ明瞭に視認することができないという問題があった。
【0007】
また、図4に示す技術では、金属蒸着層54として導電性のある金属を用いていたため、ESD(Electro Static Discharge)障害が発生するという問題があった。ここで、ESD障害とは、磁気記録層52上に金属蒸着層54を有する磁気カードにおいて、該磁気記録層52に記録された情報の読み取り時に、人体に蓄積された電荷が金属蒸着層54を通してカード読み取り装置のヘッド側に流れ、カード読み取り装置の誤動作や破壊を引き起こす現象をいう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホログラムを明瞭に視認することができるとともに、ESD障害の発生を防ぐことができるカード状磁気記録媒体及び転写用積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカード状磁気記録媒体は、カード基材上に形成された磁気記録層の上に、透明非導電性蒸着層、および透明光回折層がこの順に積層されたカード状磁気記録媒体であって、前記磁気記録層と前記透明非導電性蒸着層との間の全面に、鏡面インキ層が形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の転写用積層体は、転写用仮支持体上に、透明光回折層、透明非導電性蒸着層、磁気記録層、接着剤層をこの順で積層した転写用積層体であって、前記透明非導電性蒸着層と前記磁気記録層との間の全面に、鏡面インキ層を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、磁気記録層と透明非導電性蒸着層との間の全面に、鏡面インキ層を形成するようにした。これにより、透明非導電性蒸着層を通過した光は反射率の高い鏡面インキ層で反射されるので、透明光回折層と透明非導電性蒸着層とにより構成されるホログラムの模様を明瞭に視認することができる。また、カード状磁気記録媒体に、導電性の高い金属膜を使用していないため、ESD障害が発生することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態によるカード状磁気記録媒体の構成の一例を示す断面図である。このカード状磁気記録媒体は、カード基材20の上に積層された接着剤層11、磁気記録層12、鏡面インキ層13、透明非導電性蒸着層14、透明光回折層15、保護層16により形成されている。
【0013】
接着剤層11は、磁気記録層12の一方の面に必要に応じて設けられる。接着剤層11の材料としては、公知の加熱されると溶融または軟化して接着効果を発揮する感熱接着剤が適用でき、具体的には、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系、メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン−アルキッド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用でき、これらの樹脂をカード基材に応じて単独または複数を組み合せて使用する。
これら樹脂から接着剤層11を形成するには、該材料樹脂を溶剤に溶解または分散させて、適宜顔料などの添加剤を添加して、公知のロールコーティング、グラビアコーティングなどの方法で塗布し乾燥させて、厚さ0.1〜30μm程度、好ましくは0.4〜10μmの層とする。接着剤層11の厚さは、この範囲未満では、カード基材20との接着力が不足して脱落し易く、また、それ以上では、接着効果は十分でその効果は変わらないのでコスト的に無駄である。さらにまた、接着剤層11へは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を、適宜加えてもよい。充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウムなどの体質顔料が適用できる。特に体質顔料の添加は、箔切れを良化させる。帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤などや、ポリアミドやアクリル酸誘導体などが適用できる。
【0014】
磁気記録層12は、例えば、定期券の自動改札等に見られるように、磁気ヘッドに接触させて、記録されている信号を読み取り、磁気カードが真正であるか、あるいは使用が正当である旨を判定するためのもので、磁性の金属、あるいは金属酸化物をバインダ中に分散させたものである。
磁気記録層12は、γ−Fe、Fe、CrO、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Cr、Co−Ni、MnAl、Baフェライト、Srフェライトなどの従来公知の磁性微粒子を、バインダへ分散されてなる組成物である。該組成物を溶剤などへ分散又は溶解させた組成物インキを用いて、公知のコーティング法で、カード基材20上へ、組成物インキを塗布して、乾燥し、必要に応じて、温度30℃〜70℃で適宜エージング、または、電離放射線(紫外線、電子線など)を照射して、形成すれば良い。コーティング法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、キスコート、コンマコート、ロッドコート、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ナイフコート、スクイズコート、エアードクターコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、カーテンコート、フローコートなどが適用できる。該塗布方法で磁気記録層12を形成する場合には、その膜厚は1〜100μm、好ましくは5〜20μm程度である。
【0015】
なお、γ−Feなどの磁性微粒子が分散されるバインダの材料としては、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂などが用いられ、必要に応じて、ニトリルゴムなどのゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマーなどを添加することができる。また、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボンその他の添加剤を使用することができる。
【0016】
鏡面インキ層13は、透明非導電性蒸着層14の一方の面であって、その面の全面に設けられる。このことにより、金属光沢(金属反射光沢)を持ったホログラム像の再生画像が明瞭に視認できるようになる。
また、従来からも、金属光沢を付与する印刷インキがあったが、該インキはアルミニウムペーストやアルミニウム粉等の金属顔料を用いた、シルバーまたはゴールド等のメタリック調印刷インキである。アルミニウムペーストには、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプがあるが、いずれを用いても、真空薄膜法の金属薄膜の金属光沢には、はるかに及ばなかった。
本発明の実施形態では、印刷法で、真空薄膜法の金属薄膜に匹敵する金属光沢が得られる鏡面インキを用いる。即ち、鏡面インキとして、アルミニウムなどの金属薄膜細片を樹脂中に分散した鏡面インキを用いることにより、高輝度を発揮でき、ホログラム像の反射層に使用することができ、また既存の塗布装置で製造することができる。
また、真空薄膜法による金属薄膜と異なり、金属薄膜細片が樹脂中に分散し、互いに離間した状態となっており、鏡面インキ層の抵抗値を極めて高く設定することができるため、帯電電荷の放電経路となりにくくESD障害を発生させることがない。
【0017】
本発明の実施形態による金属薄膜細片とは蒸着、スパッタリング、展延等により得られる金属の薄膜を粉砕し、細かな片としたものである。
金属薄膜細片の金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。金属を薄片にする方法としては、アルミニウムのように融点の低い場合は蒸着、アルミニウム、金、銀、銅などの展性を有する場合は箔、融点が高く展性もない金属の場合はスパッタリング等を挙げることができる。これらのなかでも蒸着金属薄膜から得られた金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。大きさが5μm未満の場合は、塗膜の輝度が不十分となり、25μmを超えると金属薄膜細片が配向しにくくなるので輝度が低下する。
【0018】
鏡面インキ層に用いられる結着樹脂としては、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料に通常使われているものをベースに、カルボキシル基、リン酸機、スルホン酸基、硝酸基、アミノ基及び/又はそれらの金属塩のいずれか一種を含有させたものを用いることが好ましい。
具体的にはたとえばアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂などの重合系樹脂に、(メタ)アクリル酸やフタル酸、フマル酸および/またはその塩、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホニルナトリウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル酸エステル等を共重合させたもの、あるいはポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの縮合系樹脂の場合に、ポリオール成分、ポリカルボン酸成分の一部に、2,2−ジメチロールプロピオン酸、5−スルホン酸フタル酸、ジエタノールアミノエチルジイソプロピル燐酸エステル等を用いたもの、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等を塩化酢酸、ブロム酢酸、濃硫酸、濃硝酸などで変性したもの等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
また、この結着樹脂の他に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、一般にインキまたは塗料に用いられるアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂を併用しても差し支えない。
【0019】
このように形成した鏡面インキ層が良好な反射率と高い抵抗値を実現するためには、鏡面インキの樹脂/金属薄膜細片の質量比は0.1〜10が好ましく、0.5〜5がさらに好ましい。該質量比が0.1より小さいと鏡面インキ層の抵抗値を高く保持することができずESD障害が発生する可能性が増加し、10より大きいと反射率が低下するため良好なホログラム像を得にくくなる。
なお、一般にインキの配合原料を安定して分散させるには、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、あるいはサンドミル等を使用して練肉することにより、顔料その他添加剤をサブミクロンまで微粒子化する。しかし、本発明の実施形態による鏡面インキ層に使用する鏡面インキに、金属光沢を発現させるために配合する金属薄膜細片は5〜25μmの大きさが好ましい。上記練肉を行った場合は金属薄膜細片が微粒子化してしまい、金属光沢が極端に低下する。したがって、本発明の実施形態においては練肉は行わず、単に上記配合原料を混合してインキとすることが好ましい。
【0020】
透明非導電性蒸着層14は、ホログラムのレリーフ構造を設けた透明光回折層15の一方の面へ設けられることにより、ホログラムの再生像が明瞭に視認できるようになる。該透明非導電性蒸着層14としては、透明光回折層15の一方の面と屈折率に差のある透明金属化合物を用いる。その光学的な屈折率が透明光回折層15のそれとは異なることにより、ほぼ無色透明な色相で、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラム等のレリーフを視認できる。しかも非導電性であるのでESD障害の原因とならない。該透明非導電性蒸着層14の屈折率としては、透明光回折層15との屈折率の差が大きいほど効果があり、屈折率の差が0.3以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上である。光回折層の屈折率が1.5程度であることを考慮すると蒸着材料としては例えば、ZnS、TiO、Al、Sb、SiO、TiO、SiO等の透明非導電性蒸着膜が適用でき、好ましくは、TiO、ZnS等を使用して充分な屈折率の差を実現することができる。また、屈折率が小さいものでは、LiF、MgF、AlFなどを用いることができる。なお、この透明とは、可視光が十分透過すれば良く、無色または有色で透明なものも含まれる。
【0021】
上記の透明金属化合物の形成は、いずれも10〜2000nm程度、好ましくは10〜1000nmの厚さになるよう、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの真空薄膜法で得られる。透明非導電性蒸着層14の厚さがこの範囲未満では、光がある程度透過して効果が減じ、また、その以上では、反射効果は変わらないので、コスト的に無駄である。
【0022】
透明光回折層15は、無色または着色された透明または半透明なもので、単層であっても多層状であってもよく、凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂どうし、または熱硬化性樹脂同志の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。
【0023】
透明光回折層15のうえには保護層16を積層することができる。保護層16は、透明光回折層15を保護する作用を果たす。保護層16の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂等が例示でき、その膜厚は0.5〜5μmが好適であるが、これらに限定されることはない。
【0024】
カード基材20は、従来のカードに使用されている基材と同様であり、繰り返し使用に耐える機械的強度、耐薬品性、耐溶剤性、製造に耐える耐熱性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、上質紙、OCR紙、ノーカーボン紙、アート紙等の紙類、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PETと略す)などの基材フィルムが適用できる。板状の物体は、業種によってはフィルム、シート、ボードなどと種々に呼ばれるが、本願明細書では同じものとする。該基材フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルファイトなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、ニトロセルロースなどのセルロース系フィルム、などがある。
【0025】
該基材フィルムは、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材フィルムは、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリ塩化ビニルなどのビニル系フィルム、機械的強度、コスト面から好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0026】
該基材フィルムは、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、該樹脂フィルムは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウムなどの体質顔料が適用できる。着色剤としては、分散染料が好ましく、モノアゾ、ビスアゾ、アントラキノン、ニトロ、スチリル、メチン、アロイレン、ベンズイミダゾール、アミノナフチルアミド、ナフトキノンイミド、クマリン誘導体などの分散染料が適用できる。通常は、酸化チタンなどの顔料で白色に着した基材が用いられる。帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤などや、ポリアミドやアクリル酸誘導体などが適用できる。
【0027】
カード基材20の厚みは、全体の剛度が適当に保たれる厚みであればよく、通常、100〜800μmの厚さのものが適用できる。これ以上の厚さでは、剛度があり過ぎて携帯に不便で、重くコストも高い、これ以下では、繰り返し使用又は携行時の外力で、シワ、折り癖がついたり、磁気の読み取り不良が発生したりして耐久性が悪い。サイズに関しては、特に限定はないが、少なくとも転写箔を転写する工程までは、カードサイズの複数倍を面付けできる大判シート、又は長尺で連続した巻取り体とすることが生産効率上好ましい。そして、転写後のサイズは、必要に応じて、適宜裁断して用いてもよく、最後にカードサイズに打抜き、又は裁断すればよい。
【0028】
以上の構成を有する本願発明のカード状磁気記録媒体は、カード基材上の全面または一部に順次各層を積層して製造することができるが、それら層構成の一部または全部を転写法を用いて形成することができる。例えば、カード基材上の記述の層構成全部を転写法で形成する場合には、図2に示すように転写用仮支持体21上に保護層16、透明光回折層15、透明非導電性蒸着層14、鏡面インキ層13、磁気記録層12、接着剤層11を順次積層した転写用積層体10を使用する。該転写用積層体10は図2に示すように、接着剤層11を介してカード基材20上に重ね合わせられ、転写用仮支持体側を剥離した後、保護層側からの加熱、加圧下で積層される。
カード基材20上の一部、例えばカード長手方向にストライプ状に積層体が形成されたとき等は、加熱、加圧工程で該積層体をカード基材20中に埋め込んで、カード表面を均一高さの平滑平面にすることができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)転写用基材であるカード基材20として、厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この一方の面へ、下記剥離性保護層用塗料を乾燥後膜厚が1μmとなるように、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、剥離性保護層を設けた。
【0030】
<剥離性保護層用塗料>
・セルロースアセテート樹脂 5部
(ダイセル化学社製「L−20」)
・アセトン 25部
・酢酸エチル 25部
・トルエン 20部
・シクロヘキサノン 20部
・ポリイソシアネート 2部
(大日本インキ化学工業社製「ハードナーNo.50(有効成分:50%)」)
【0031】
該剥離性保護層面へ、ユピマーLZ065(三菱化学社製、紫外線硬化樹脂商品名)を固形分25質量%となるように溶剤で希釈して、ロールコーティング法で、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布し乾燥して、透明光回折層を形成した。別途レーザー光を用いて作ったマスターホログラムから、2P法で複製したスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、150℃で相対するローラーとの間で加熱プレス(エンボス)して、透明光回折層上に微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯で波長が200〜400nmの紫外線を照射して硬化させた。該レリーフが賦形された透明光回折層面へ、真空蒸着法で、厚さが50nmになるように酸化チタンを蒸着して、透明非導電性蒸着層を形成した。該透明非導電性蒸着層面へ、下記鏡面インキを、乾燥後厚さが0.5μmとなるように、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、鏡面インキ層を設けた。
【0032】
<鏡面インキ>
・金属薄膜細片ペースト 10部
コールターカウンター法による平均粒子径:(D50) 10〜15μm
厚さ:約300Å
配合溶剤:酢酸エチル/酢酸イソプロピル 固形分:9〜11%
(東洋アルミニウム社製「KM−100」)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 0.5部
(UCC社製「VMCH」)
・ポリウレタン樹脂 1.0部
(大日本インキ化学工業社製「NT−810」)
・メチルエチルケトン 25部
・トルエン 20部
・シクロヘキサノン 20部
・ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製「ハードナーNo.50(有効成分:50%)」)
【0033】
該鏡面インキ層上に下記の磁気記録層用塗料を、その磁気出力値がISO/IEC7811−6の規格を満たすように乾燥厚みを調整し、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、磁気記録層を設けた。
【0034】
<磁気記録層用塗料>
・バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製「MC−127」;保磁力220kA/m)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日信化学社製「ソルバインA」)
・ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製「TS−03」)
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・シクロヘキサノン 25部
・ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製「ハードナーNo.50(有効成分:50%)」)
【0035】
磁気記録層用塗料の調整は、特開平09−059541に示す方法による。該磁気記録層上に下記の感熱接着剤塗料を、その厚みが3μmとなるように、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、感熱接着剤層を設けた。
<感熱接着剤層用塗料>
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製「TS−03」)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製「ソルバインC5」)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 50部
上記で作製した転写用積層体を所定の幅に裁断してストライプ状の転写用積層体を作成した後、卓上型ヒートシーラー(テスター産業社製)を使用して、ポリ塩化ビニル製のカード用オーバーシート(太平化学社製)にストライプ状転写用積層体を熱圧接着した。その後、転写用積層体の転写用基材を除去することによって、磁気ストライプ部分をカード形成用オーバーシートに転写して、磁気ストライプ付カード形成用オーバーシートを得た。この磁気ストライプ付カード形成用オーバーシートとカード形成用センターコア、および反対面のカード形成用オーバーシートを重ねて、平圧プレス機(東洋精機製作所製)を使用して、140℃、20kg/cm、20分間の熱圧プレス加工を行い、カード形成用オーバーシート、カード形成用センターコアの熱圧プレスを行った。その後、打ち抜き加工を行うことによって磁気カードを作製した。
【0036】
(比較例1)転写用基材として、厚さ23μmのG2(帝人デュポン社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。この一方の面へ、実施例1と同様の剥離性保護層用塗料を用い、同様の方法で乾燥後膜厚が1μmとなるように剥離性保護層を設けた。
【0037】
該剥離性保護層面へ、実施例1と同様の方法で透明光回折層を形成し、透明光回折層上に微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形、硬化させ、該レリーフが賦形された透明光回折層面へ、真空蒸着法で、厚さが35nmになるようにアルミニウムを蒸着して、反射層を形成した。該反射層面へ、下記アンカー層用塗料を、乾燥後厚さが0.5μmとなるように、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、アンカー層を設けた。
【0038】
<アンカー層用塗料>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 0.5部
(日信化学社製「ソルバインA」)
・ポリウレタン樹脂 0.5部
(大日本インキ化学工業社製「TS−03」
・メチルエチルケトン 25部
・トルエン 20部
・シクロヘキサノン 20部
・ポリイソシアネート 2部
(大日本インキ化学工業社製「ハードナーNo.50(有効成分:50%)」)
【0039】
該アンカー層上に実施例1と同様の磁気記録層用塗料を用い、同様の方法で、その磁気出力値がISO/IEC7811−6の規格を満たすように厚みを調整し、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、磁気記録層を設けた。
【0040】
該磁気記録層上に実施例1と同様の感熱接着剤塗料を用い、同様の方法せその厚みが3μmとなるように、ロールコーティング法で塗布、乾燥し、感熱接着剤層を設けた。
上記で作製した転写用積層体を実施例1と同様に所定の幅に裁断してストライプ状転写用積層体を作成した後、カード形成用オーバーシート(太平化学社製)に熱圧接着し、カード形成用センターコア、および反対面のカード用オーバーシートと熱圧プレスを行い、その後、打ち抜き加工を行うことによって磁気カードを作製した。
【0041】
(比較例2)比較例1において、反射層の材料を酸化チタン(蒸着膜厚50nm)とする以外は、比較例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0042】
(比較例3)比較例1において、透明光回折層の膜厚を4μmとする以外は比較例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0043】
(比較例4)比較例3において、反射層の材料をクロム(蒸着膜厚16nm)とする以外は比較例3と同様にして磁気カードを作成した。
【0044】
(比較例5)比較例3において、反射層の材料をニッケル(蒸着膜厚30nm)とする以外は比較例3と同様にして磁気カードを作成した。
【0045】
(比較例6)比較例3において、反射層の材料をニッケルとクロムの合金(蒸着膜厚30nm)とする以外は比較例3と同様にして磁気カードを作成した。
【0046】
上述のようにして作成した実施例1、比較例1〜比較例6の磁気カードについて、以下の試験手順により、ホログラム層の外観の評価、およびESD特性の評価を行った。
<ホログラム層の外観の評価>
下記評価基準を用い目視により判定した。
○・・・銀白色の明るい外観を呈するホログラム像が確認できる。
×・・・反射光量が少なく全体的に暗い色相のホログラム像となる。
<ESD特性の評価>
ESD特性の評価は以下のようにして行った。
始めに、図3に示すように、unitech社製磁気カードリーダー30「MSR120(挿引式)」に、テスト磁気データを記録したカード31「動作確認用カード」を挿引させ、磁気カードリーダー30が正常に動作する事(磁気データが正常に読み取れる)を確認する。
【0047】
正常動作確認後、被測定磁気カード31を上述の磁気カードリーダーに、磁気ストライプ表面がカードリーダー30の磁気読み取りヘッドに接触するよう挿入し、磁気ヘッドに接触した側と反対端の磁気ストライプ面に対し、静電気放電シミュレータ(IEC61000−4−2(静電気放電イミュニティ試験)規格対応)を用いて、試験電圧を単一放電(接触放電)する。
試験電圧の放電後に、磁気カードリーダー30の被測定磁気カード31を取り除き、動作確認用カードを挿引し、磁気カードリーダー30を動作させ、動作状況をIEC61000−4−2の「9 試験結果と試験報告」の分類(下記に示す)に従い分類する。
【0048】
1)仕様限度内の正常動作
2)自己回復性のある機能や動作の一時的な低下や損失
3)操作者の介入やシステムリセットを要する、機能や動作の一時的な低下や喪失
4)機器(素子)又はソフトウェアの損傷又はデータの損失による、回復できない機能の低下や喪失
【0049】
被測定カード毎に、試験電圧は2kVから開始し、まず上記の試験手順を行う。試験結果が上記分類の1)又は2)の時は、更に試験電圧を0.5kVステップで最大試験電圧15kVまで上昇させ上記の試験操作を行い、その試験電圧毎に試験結果評価する。
試験結果の分類が3)以上となった時点で、この被測定カードに対する試験を終了する。
全ての被測定カードに対して、同様に試験を行う。
【0050】
【表1】

【0051】
表1は、実施例1、比較例1〜比較例6のそれぞれの磁気カードについてのホログラム層の外観をまとめた表である。表1に示すように、実施例1、比較例1、比較例3の磁気カードは外観が○であったのに対して、比較例2、比較例4〜比較例6の磁気カードは外観が×であった。
【0052】
【表2】

【0053】
表2は、実施例1、比較例1〜比較例6のそれぞれの磁気カードについてのESD特性をまとめた表である。試験結果として、試験が終了した時点での結果の分類3)又は4)とそのときの試験電圧を示している。また、最大試験電圧15kVにおいても、結果分類が1)又は2)の時は、(15kV)と示している。表2に示すように、実施例1、比較例2では、最大試験電圧15kVにおいても、ESD特性が(15kV)となっており、ESD障害が発生していない。
【0054】
上述した表1と表2の結果から分かるように、比較例1〜比較例6の磁気カードでは、ホログラム層の外観又はESD特性のどちらかが低下しているが、実施例1の磁気カードでは、ホログラム層の外観及びESD特性の両方において良好な結果が得られている。すなわち、実施例1の磁気カードでは、磁気記録層12と透明非導電性蒸着層14との間の全面に、鏡面インキ層13が設けられているため、鏡面インキ層13での反射率を上げることができ、透明非導電性蒸着層14と透明光回折層15とにより構成されるホログラム層の模様を、より明瞭に視認させることができる。また、入射光を反射させる鏡面インキ層13を、真空薄膜法による金属薄膜層により構成していないため、磁気カードを読み取る際に、鏡面インキ層13を通して磁気カードリーダーに電流が流れることを防ぐことができるため、ESD障害が発生して、磁気カードの読み取りが失敗したり、磁気カードリーダーが故障したりすることを防ぐことができる。
【0055】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態によるカード状磁気記録媒体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態による転写用積層体10の構成の一例、及び該転写用積層体によるカード状磁気記録媒体の製造過程を示す断面図である。
【図3】ESD特性を調べるための方法を示す図である。
【図4】従来から用いられていた磁気カードの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・転写用積層体、11・・・接着剤層、12・・・磁気記録層、13・・・鏡面インキ層、14・・・透明非導電性蒸着層、15・・・透明光回折層、16・・・保護層、20・・・カード基材、21・・・転写用仮支持体、30・・・磁気カードリーダー、31・・・磁気カード、51・・・接着剤層、52・・・磁気記録層、53・・・アンカー層、54・・・金属蒸着層、55・・・透明光回折層、56・・・保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材上に形成された磁気記録層の上に、透明非導電性蒸着層、および透明光回折層がこの順に積層されたカード状磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層と前記透明非導電性蒸着層との間の全面に、鏡面インキ層が形成されたことを特徴とするカード状磁気記録媒体。
【請求項2】
前記鏡面インキ層は、金属薄膜細片を含有する請求項1に記載のカード状磁気記録媒体。
【請求項3】
前記磁気記録層は、カード基材長手方向にストライプ状に形成される請求項1または2に記載のカード状磁気記録媒体。
【請求項4】
転写用仮支持体上に、透明光回折層、透明非導電性蒸着層、磁気記録層、接着剤層をこの順で積層した転写用積層体であって、
前記透明非導電性蒸着層と前記磁気記録層との間の全面に、鏡面インキ層を有することを特徴とする転写用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−273002(P2007−273002A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97763(P2006−97763)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】