説明

カード用コネクタ

【課題】カードを排出するプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むカード排出動作検出スイッチを有し、十分に長いディレイタイムを確保することができる。
【解決手段】端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、カードの端子部材と接触する接続端子と、カードをロック位置で保持するとともに、カードをロック位置から更に挿入方向に押込むプッシュ動作がなされると、付勢部材の付勢力によって、カードを挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、カードの挿入でカードによって変位させられる第1導通部材と、第1導通部材より挿入方向奥側に位置し、カードがロック位置にあるときに第1導通部材から離間し、カードがロック位置より挿入方向奥側から終端点までに位置するときに第1導通部材と接触する第2導通部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(Multi Media Card)(R)、SD(Secure Digital)(R)カード、ミニSD(R)カード、メモリスティック(R)、スマートメディア(R)等の各種メモリカードを利用するために、カード用コネクタを備えている。
【0003】
図11は従来のカード用コネクタを示す図である。
【0004】
図において、301はカード用コネクタの絶縁性ハウジングであり、図示されないメモリカードの先端が図における上から下に向けて挿入される。前記絶縁性ハウジング301には、複数の端子302が取付けられ、該端子302がメモリカードのコンタクトパッドと接触する。また、303はカードイジェクト機構におけるカムスライダであり、突起部がメモリカードの一部と係合し、絶縁性ハウジング301の側面に形成されたスライド壁304に沿ってスライドする。なお、前記カムスライダ303は、コイルスプリング305によって、図における上方に向けて付勢されている。
【0005】
さらに、絶縁性ハウジング301の奥側(図における下側)の壁には、メモリカードの有無を検知するための検知スイッチが配設されている。該検知スイッチは、弾性を備える可動接点部材306と固定された固定接点部材307とを有し、図に示されるように、絶縁性ハウジング301にメモリカードが挿入されていない状態では、可動接点部材306と固定接点部材307とが接触し、ONとなっている。そして、絶縁性ハウジング301にメモリカードが挿入されると、該メモリカードの先端部によって押されることにより、可動接点部材306が変位して固定接点部材307と非接触となり、検知スイッチがOFFとなる。これにより、メモリカードが挿入されたことが検出される。
【0006】
ところで、電子機器に装填(てん)されたメモリカードを引抜く動作を早い段階で検出するためのディレイスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、電子機器の演算手段がメモリカードにアクセスしながら処理を実行している最中にメモリカードを引抜かれると、演算手段とメモリカードとを接続するデータバスがデータの転送中に切断されてしまうので、データが破壊されたり、演算手段が動作を停止したまま復帰しなくなったりしてしまうことがある。前記ディレイスイッチは、メモリカードを引抜く動作を早い段階で検出することによって、カード用コネクタの端子とメモリカードのコンタクトパッドとの接触が切断されるまでに、演算手段とメモリカードとを接続するデータバスを安全に切断するための時間を稼ぐスイッチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−203209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のカード用コネクタは、前記特許文献1に記載されているようなディレイスイッチを採用することができなかった。前記特許文献1に記載されているようなディレイスイッチは、クレジットカードのようなICカードを使用する電子機器を想定したものであり、利用者の手で操作する排出レバーを必要とするものである。そのため、図11に示されるような比較的小型のメモリカードを利用するための、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプのカード用コネクタは、前記特許文献1に記載されているようなディレイスイッチを採用することができない。
【0009】
もっとも、図11に示されるようなカード用コネクタにおいて、メモリカードの有無を検知するための検知スイッチを、メモリカードを引抜く動作を検出するディレイスイッチとして利用することも考えられる。しかし、メモリカードを排出する際に、可動接点部材306と固定接点部材307とが接触状態となってから、端子302とメモリカードのコンタクトパッドとの接触が切断されるまでの遅れ時間、すなわち、ディレイタイムを十分に長く取ることは困難である。
【0010】
本発明は、前記従来のカード用コネクタの問題点を解決して、カードを排出する際のプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むカード排出動作検出スイッチを有することによって、構造が簡素でコストを低くすることができ、小型化することができ、十分に長いディレイタイムを確保することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、前記カードを挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記カードをロック位置で保持するとともに、前記カードをロック位置から更に挿入方向に押込むプッシュ動作がなされると、前記付勢部材の付勢力によって、前記カードを挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、前記ハウジングに取付けられ、前記カードの挿入でカードによって変位させられる第1導通部材と、該第1導通部材より挿入方向奥側に位置し、前記カードがロック位置にあるときに前記第1導通部材から離間し、前記カードが前記ロック位置より挿入方向奥側から終端点までに位置するときに前記第1導通部材と接触する第2導通部材とを有する。
【0012】
本発明の他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記第1導通部材は、前記ハウジングに取付けられる根本部と、該根本部から延出する本体部とを備え、該本体部は、挿入方向奥側の部分が前記第2導通部材と接触する当接部を含む。
【0013】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記第2導通部材は、前記ハウジングに取付けられる根本部と、該根本部から延出する本体部とを備え、該本体部は、前記カードが前記ロック位置より挿入方向奥側から終端点までに位置するときに前記第1導通部材と接触する当接部を含む。
【0014】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記第1導通部材の根本部及び前記第2導通部材の根本部は、前記ハウジングの奥壁部と略平行に前記ハウジングに取付けられ、前記第2導通部材の当接部は、前記第1導通部材の当接部と前記奥壁部との間に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カード用コネクタは、カードを排出する際のプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むカード排出動作検出スイッチを有する。そのため、構造が簡素でコストを低くすることができ、小型化することができ、十分に長いディレイタイムを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する途中の状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入しフルストロークとなった状態を示す平面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入しロックした状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを排出する動作でフルストロークとなった状態を示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのディレイスイッチの信号波形を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【図11】従来のカード用コネクタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す斜視図である。
【0019】
図1〜3において、10は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ10の内部には後述されるカード31が挿入され、前記カード用コネクタ10を介して、前記電子機器にカード31が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0020】
また、カード31は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、ミニSD(R)カード、メモリスティック(R)、スマートメディア(R)、T−Flash、マイクロSD(R)カード等のICカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、ミニSD(R)カードであるものとして説明する。また、本実施の形態において、カード用コネクタ10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ10又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ10又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0021】
ここで、前記カード用コネクタ10は、図2に示されるように、合成樹脂等の絶縁材によって一体的に成形されたカード31を収容するハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形され、ハウジング11の上側に取付けられたシェル12とを有する。前記カード用コネクタ10は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、前方(図2における左下方)からカード31が挿入される。
【0022】
また、図1及び3は、説明のためにシェル12を除去した状態のカード用コネクタ10を示す図である。図1及び3に示されるように、ハウジング11は、カード31の挿入方向に関して手前側となる前縁側(図1における上側、図3における左下側)が略U字状に切取られた形状を備える底壁部11a、及び、該底壁部11aの奥部において奥側の縁に沿って延在し、底壁部11aから立設する奥壁部11bを有する。ここで、底壁部11aの上面には、前後方向に延在するように形成された端子装填溝11eが複数形成され、各端子装填溝11eに接続端子としての端子13が挿入されて取付けられている。そして、該端子13は、その根本部が前記端子装填溝11e内における底壁部11aの手前側の縁に近い部分に取付けられ、その先端部が奥壁部11bに向けて斜め上方に延在して底壁部11aの上面より上方に突出している。前記端子13の先端部は、接触部として機能し、カード31の下面に配設された端子部材としてのコンタクトパッドに接触して電気的に接続される。また、前記端子13の根本部から延在するソルダーテール部13aは、底壁部11aの手前側の縁から前方に向けて突出し、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付け等によって電気的に接続される。
【0023】
そして、ハウジング11は、底壁部11aの一方の側縁に沿って前後方向に延在する断面L字状の側壁部としての第1側壁部11c、及び、底壁部11aの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁部としての第2側壁部11dを有する。前記第1側壁部11cには、カード用コネクタ10内に挿入されたカード31を案内するためのカード案内機構のスライド部材14が前後方向にスライド可能に取付けられている。なお、スライド部材14は、内側の側面から突出するように形成された第1係合部14a及び第2係合部14bを備える。第1係合部14a及び第2係合部14bは、カード31の後述される係合凸部32及び係合凹部33と各々係合する。
【0024】
ここで、前記カード用コネクタ10は、カード用コネクタ10内にカード31を挿入する際にも、カード用コネクタ10内からカード31を取出す際にも、カード31を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものであるとする。そして、前記第1側壁部11cには、プッシュ/プッシュの動作を行うためのカード案内機構におけるカム装置17が取付けられている。本実施の形態においては、該カム装置17がスライド部材14と一体的に形成されている。そして、前記カム装置17は、例えば、カム溝を備え、該カム溝と係合するカムピンと協働することによって、カード31とともに移動するスライド部材14にプッシュ/プッシュの動作を行わせるようになっている。
【0025】
なお、前記カム装置17のようなプッシュ/プッシュの動作を行うための機構は従来周知であるので、その説明を省略する。
【0026】
さらに、前記第1側壁部11cには、スライド部材14をカード31の挿入方向と反対の方向、すなわち、前方に向けて付勢するためのカード案内機構における付勢部材15が取付けられている。なお、該付勢部材15はコイルスプリングから成り、その両端は、奥壁部11bの係止部11f及びスライド部材14の係止部14cに当接する。そして、前記カード案内機構は、前記付勢部材15を備え、カード31を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード31が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材15の付勢力によって、前記カード31を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出する。なお、前記カード案内機構は、第1側壁部11cでなく、第2側壁部11dに配設されてもよい。
【0027】
また、前記ハウジング11の奥部、具体的には奥壁部11bに、カード排出動作検出スイッチとしてのディレイスイッチを形成する第1接点部材21及び第2接点部材22が取付けられている。前記ディレイスイッチは、カード31が移動することによって作動し、第1接点部材21と第2接点部材22とが相互に接離することによって、導通、すなわち、ON及び非導通、すなわち、OFFの状態となる。ここで、前記ディレイスイッチは、カード案内機構にカード用コネクタ10内に挿入されたカード31を押出して排出させる動作を行わせるためのプッシュ動作を検出するスイッチである。
【0028】
前記プッシュ動作において、カード案内機構のスライド部材14は、利用者の手指等によってカード31に付与される力を受けることにより、カード31とともに移動し、カード用コネクタ10内でカード31をロックした状態で保持するロック位置から奥壁部11bに向けて移動させられ、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。続いて、利用者によってカード31に付与される力が解除されると、スライド部材14及びカード31は、付勢部材15の反発力を受けて奥壁部11bから離脱する向きに移動させられ、ロック位置に復帰する。すなわち、該ロック位置から終端点までの行程を往復する。そして、スライド部材14及びカード31は、ロック位置を通過し、カード31の挿入方向と反対の方向に向けて更に移動する。
【0029】
この場合、前記ディレイスイッチは、スライド部材14及びカード31がロック位置から終端点まで移動する往きの行程の途中で非導通状態から導通状態に変化し、これにより、前記プッシュ動作が開始されたことを検出する。一方、カード31のコンタクトパッドが端子13の先端部と実際に非接触となるのは、終端点からの戻りの行程においてスライド部材14がロック位置に到達して以降である。すなわち、往きの行程においてスライド部材14及びカード31がディレイスイッチが導通状態に変化する地点から終端点に到達するまでの時間、及び、戻りの行程においてスライド部材14及びカード31が終端点からロック位置に到達するまでの時間を、ディレイタイムに含めることができる。これにより、遅れ時間、すなわち、ディレイタイムを十分に長くすることができる。なお、ディレイタイムとは、ディレイスイッチがプッシュ動作が開始されたことを検出してから、カード31のコンタクトパッドが端子13の先端部と非接触となるまでの時間を言う。
【0030】
そして、前記第1接点部材21は、奥壁部11bに取付けられた根本部21a、及び、該根本部21aから横方(図1における右方)に向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部21cを有する。なお、前記第1接点部材21は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材であり、前記根本部21aは本体部21cに対して所定の角度を形成するように曲げられている。そして、第1接点部材21の根本部21aは奥壁部11bの側面とほぼ平行となり、本体部21cは、カード31がカード用コネクタ10に挿入されていない状態においては、奥壁部11bの側面に対して傾斜し、カード31の挿入方向に関して手前側に向けて突出するように配設されている。
【0031】
さらに、前記根本部21aは、その下端にソルダーテール部21bを備える。該ソルダーテール部21bは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。一方、本体部21cの先端には、第1当接部21dが接続されている。該第1当接部21dは、その奥壁部11b側の面が第2接点部材22に当接する当接面として機能する。
【0032】
また、前記第2接点部材22は、奥壁部11bに取付けられた根本部22a、及び、該根本部22aから横方(図1における右方)に向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部22cを有する。この場合、第2接点部材22は、根本部22aと第2接点部材22との間の角度が鋭角となり、概略V字状の形状を有する。なお、前記第2接点部材22は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材である。そして、第2接点部材22の根本部22aは奥壁部11bの側面とほぼ平行となり、本体部22cは、カード31がカード用コネクタ10に挿入されていない状態においては、奥壁部11bの側面に対して傾斜し、カード31の挿入方向に関して手前側に向けて突出するように配設されている。
【0033】
さらに、前記根本部22aは、その下端にソルダーテール部22bを備える。該ソルダーテール部22bは、前記電子機器における相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。一方、本体部22cは、第1接点部材21の本体部21cよりも奥壁部11b寄りの位置に配設されている。そして、本体部22cの先端には、第2当接部22dが接続されている。該第2当接部22dは、カード31の挿入方向に関して手前側の面が第1接点部材21に当接する当接面として機能する。
【0034】
次に、前記構成のカード用コネクタ10の動作について説明する。
【0035】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する途中の状態を示す平面図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入しフルストロークとなった状態を示す平面図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入しロックした状態を示す平面図、図7は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを排出する動作でフルストロークとなった状態を示す平面図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタのディレイスイッチの信号波形を示す図である。
【0036】
まず、カード31をカード用コネクタ10に挿入して、該カード用コネクタ10が取付けられた電子機器にカード31を装着する動作について説明する。なお、図4〜7は、図1と同様に、説明のためにシェル12を除去した状態を示している。
【0037】
この場合、利用者が手指等によってカード31をカード用コネクタ10の前方から途中まで挿入すると、図4に示されるようになる。この状態において、カード31の下面に配設された図示されないコンタクトパッドは、端子13の位置にまで到達していない。また、カード31の一方の側辺に形成された係合凸部32及び係合凹部33は、カード案内機構のスライド部材14の第1係合部14a及び第2係合部14bと係合していない。さらに、第1接点部材21と第2接点部材22とが当接しておらず、ディレイスイッチはOFFの状態になっている。
【0038】
続いて、利用者がカード31をプッシュして更に押込むと、カード31の係合凸部32及び係合凹部33がスライド部材14の第1係合部14a及び第2係合部14bと係合し、カード31は、スライド部材14とともに、奥壁部11bに向けて移動する。この際、スライド部材14がコイルスプリングから成る付勢部材15を圧縮するので、スライド部材14及びカード31は、付勢部材15の反発力を受けるが、該反発力が利用者の手指等が発揮する押込力よりも小さいので、前記反発力に抗して移動する。
【0039】
そして、スライド部材14及びカード31は、図5に示されるように、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。なお、カード31は、終端点に到達するまでの行程の途中において、その挿入方向の前面が第1接点部材21に当接し、該第1接点部材21を奥壁部11bの方向に変位させる。そして、カード31が奥壁部11bに向けて移動するにつれて、第1接点部材21は、大きく変位して第2接点部材22に当接し、該第2接点部材22を奥壁部11bの方向に変位させる。最終的に、フルストローク状態となると、第1接点部材21及び第2接点部材22は、カード31によって奥壁部11bの側面に押付けられた状態となる。
【0040】
続いて、利用者がカード31をプッシュする動作を止め、カード31に対する押込力を解除すると、付勢部材15の反発力によって、スライド部材14及びカード31は奥壁部11bから離脱する向きに移動させられる。そして、スライド部材14及びカード31は、図6に示されるように、カード用コネクタ10内でカード31をロックした状態で保持するロック位置で停止する。これは、カム装置17によって、スライド部材14の動きが規制され、前記ロック位置で停止させられるためである。
【0041】
そして、カード31は、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ10が取付けられた電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード31がロック位置に保持されている場合、カード31のコンタクトパッドは、端子13の先端部と接触して導通している。また、第1接点部材21と第2接点部材22とが当接しておらず、ディレイスイッチはOFFの状態になっている。
【0042】
次に、カード31をカード用コネクタ10から排出させて取出す動作について説明する。
【0043】
この場合、利用者が手指等によってカード31をプッシュして押込むと、スライド部材14及びカード31は、ロック位置から奥壁部11bに向けて移動させられる。すると、カード31の挿入方向の前面が第1接点部材21に当接し、該第1接点部材21を奥壁部11bの方向に変位させて第2接点部材22に当接させる。これにより、ディレイスイッチは、非導通状態から導通状態に、すなわち、OFFからONに変化し、カード31を排出させるプッシュ動作が開始されたことを検出する。
【0044】
続いて、利用者がカード31をプッシュして更に押込むと、スライド部材14及びカード31は、図7に示されるように、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。この間、第1接点部材21と第2接点部材22とが当接した状態を維持するので、ディレイスイッチはONの状態を維持している。
【0045】
続いて、利用者がカード31をプッシュする動作を止め、カード31に対する押込力を解除すると、付勢部材15の反発力によって、スライド部材14及びカード31は奥壁部11bから離脱する向きに移動させられ、ロック位置に復帰する。この場合、カム装置17によって、スライド部材14の動きが規制されず、前記ロック位置で停止させられないので、スライド部材14及びカード31は、前記ロック位置を通過し、カード31の挿入方向と反対の方向に更に移動する。そして、カード31の係合凸部32及び係合凹部33とスライド部材14の第1係合部14a及び第2係合部14bとの係合が解除され、スライド部材14及びカード31は、図4に示されるような状態に復帰する。なお、終端点からロック位置に復帰するまでの途中において、第1接点部材21及び第2接点部材22は、それ自体のばね性によって元の姿勢に復元するので、第1接点部材21と第2接点部材22とは互いに非当接となる。そのため、ディレイスイッチはONからOFFに変化する。
【0046】
このように、カード31をカード用コネクタ10から排出させて取出す場合、ディレイスイッチは、スライド部材14及びカード31がロック位置から終端点まで移動する往きの行程の途中でOFFからONに変化して、プッシュ動作が開始されたことを検出するようになっている。そして、カード31のコンタクトパッドが端子13と実際に非接触となるのは、終端点からの戻りの行程においてスライド部材14がロック位置に到達して以降である。そのため、往きの行程においてスライド部材14及びカード31がディレイスイッチが導通状態に変化する地点から終端点に到達するまでの時間、及び、戻りの行程においてスライド部材14及びカード31が終端点からロック位置に到達するまでの時間を、ディレイタイムに含めることができる。これにより、ディレイスイッチがプッシュ動作が開始されたことを検出してから実際にカード31のコンタクトパッドが端子13と非接触となるまでのディレイタイムを十分に長くすることができる。
【0047】
なお、ディレイタイムを長くするためには、ディレイスイッチがONに変化する地点をできる限りロック位置に近付けることが望ましい。例えば、スライド部材14及びカード31がロック位置から終端点まで移動する距離、すなわち、ロック位置から終端点までの行程長が0.8〔mm〕であるとすると、ディレイスイッチがONに変化する地点をロック位置から0.2〔mm〕程度の位置とすることが望ましい。
【0048】
図8には、本発明の発明者が実際に制作したカード用コネクタ10を使用して行った実験の結果が示されている。図8において、横軸には時間(単位:秒)を採ってあり、縦軸には信号の値を採ってある。そして、Aはディレイスイッチの信号であり、Bはカード31のコンタクトパッドとカード用コネクタ10の端子13との接触状態を示す端子信号である。図8から、ディレイスイッチがONになってから端子信号がOFFになるまでの時間、すなわち、ディレイスイッチがプッシュ動作が開始されたことを検出してから実際にカード31のコンタクトパッドが端子13と非接触となるまでのディレイタイムが0.33秒であることが分かる。
【0049】
このように、本実施の形態において、ディレイスイッチは、カード31の移動によって変位する第1接点部材21と第2接点部材22とを有し、カード31を排出させる際のプッシュ動作における往復の行程において、第1接点部材21と第2接点部材22とが当接してONになるようになっている。そのため、カード31を排出する際のプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むので、十分に長いディレイタイムを確保することができる。したがって、カード31をカード用コネクタ10から排出させて取出す場合、カード用コネクタ10が取付けられた電子機器は、ディレイタイムの間に演算手段等とカード31とを接続する回路を安全に遮断することができる。
【0050】
また、ディレイスイッチは、金属等のばね性を備えた板材を加工した第1接点部材21と第2接点部材22とから成るので、構造が簡素でコストを低くすることができ、小型化することができる。さらに、前記ディレイスイッチを有するカード用コネクタ10も、構造を簡素化してコストを低くすることができ、小型化することができる。
【0051】
さらに、カード31を排出する際のプッシュ動作における往きの行程は、利用者が手指等によって付勢部材15の反発力に抗して行うカード31を押込む動作によるものなので、カード31の移動速度が低くなる。そのため、前記往きの行程を含むディレイタイムを十分に長くすることができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0053】
図9は本発明の第2の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【0054】
図9において、40は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、前記第1の実施の形態におけるカード用コネクタ10と同様に、電子機器に取付けられる。また、図9は、説明のためにシェル12を除去した状態のカード用コネクタ40を示す図である。該カード用コネクタ40は、合成樹脂等の絶縁材によって一体的に成形されたハウジング41を有し、前方(図9における上方)から図示されないカードが挿入される。なお、該カードは、前記第1の実施の形態におけるカード31とは異なる種類のものである。
【0055】
そして、ハウジング41は、前記第1の実施の形態におけるハウジング11と同様に、底壁部41a、及び、該底壁部41aの奥部において奥側の縁に沿って延在し、底壁部41aから立設する奥壁部41bを有する。ここで、底壁部41aの上面には、前後方向に延在するように形成された端子装填溝が複数形成され、各端子装填溝に接続端子としての端子43が挿入されて取付けられている。該端子43は前記第1の実施の形態における端子13と同様のものであり、その根本部が前記端子装填溝内における底壁部41aの手前側の縁に近い部分に取付けられ、その先端部が奥壁部41bに向けて斜め上方に延在して底壁部41aの上面より上方に突出している。前記端子43の先端部は、接触部として機能し、カードの下面に配設された端子部材としてのコンタクトパッドに接触して電気的に接続される。
【0056】
また、ハウジング41は、底壁部41aの一方の側縁に沿って前後方向に延在する第1側壁部41c、及び、底壁部41aの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁部としての第2側壁部41dを有する。本実施の形態においては、前記第2側壁部41dに、カード用コネクタ40内に挿入されたカードを案内するためのカード案内機構のスライド部材44が前後方向にスライド可能に取付けられている。なお、スライド部材44は、内側の側面から突出するように形成され、カードと係合する係合部を備える。
【0057】
本実施の形態におけるカード用コネクタ40も、前記第1の実施の形態におけるカード用コネクタ10と同様に、カード用コネクタ40内にカードを挿入する際にも、カード用コネクタ40内からカードを取出す際にも、カードを押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものであるとする。そして、前記第2側壁部41dには、プッシュ/プッシュの動作を行うためのカード案内機構におけるカム装置47が取付けられている。該カム装置47は、前記第1の実施の形態におけるカム装置17と同様のものであるので、その説明を省略する。
【0058】
さらに、前記第2側壁部41dには、スライド部材44を前方に向けて付勢するためのカード案内機構における付勢部材45が取付けられている。なお、該付勢部材45は、前記第1の実施の形態における付勢部材15と同様のものであるので、その説明を省略する。
【0059】
そして、前記奥壁部41bには、カード排出動作検出スイッチとしてのディレイスイッチを形成する第1接点部材51及び第2接点部材52が取付けられている。本実施の形態におけるディレイスイッチは、前記第1の実施の形態におけるディレイスイッチと同様に、カードが移動することによって作動し、第1接点部材51と第2接点部材52とが相互に接離することによって、導通、すなわち、ON及び非導通、すなわち、OFFの状態となる。
【0060】
ここで、前記第1接点部材51は、奥壁部41bに取付けられた根本部51a、及び、該根本部51aから横方(図9における右方)に向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部51cを有する。なお、前記第1接点部材51は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材であり、前記根本部51aは本体部51cに対して所定の角度を形成するように曲げられている。そして、第1接点部材51の根本部51aは奥壁部41bの側面とほぼ平行となり、本体部51cは、カードがカード用コネクタ40に挿入されていない状態においては、奥壁部41bの側面に対して傾斜し、カードの挿入方向に関して手前側に向けて突出するように配設されている。
【0061】
さらに、前記根本部51aは、その下端にソルダーテール部51bを備える。該ソルダーテール部51bは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。一方、本体部51cの先端には、第1当接部51dが接続されている。該第1当接部51dは、その下側の面が第2接点部材52に当接する当接面として機能する。
【0062】
また、前記第2接点部材52は、奥壁部41bに取付けられた根本部52a、及び、該根本部52aから横方(図9における右方)に向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部52cを有する。なお、前記第2接点部材52は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材である。そして、第2接点部材52の根本部52aは奥壁部41bの側面とほぼ平行となり、本体部52cは、底壁部41aの上面とほぼ平行となっている。
【0063】
さらに、前記根本部52aは、その下端にソルダーテール部52bを備える。該ソルダーテール部52bは、前記電子機器における相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。一方、本体部52cは、第1接点部材51の本体部51cよりも下方に配設されている。そして、本体部52cの先端には、第2当接部52dが接続されている。該第2当接部52dは、上側の面が第1接点部材51に当接する当接面として機能する。
【0064】
次に、本実施の形態におけるカード用コネクタ40の動作について説明する。ここでは、カードをカード用コネクタ40から排出させて取出す動作について説明する。
【0065】
この場合、図示されないカードは、カード用コネクタ40内において、ロック位置に保持されているものとする。なお、カードがロック位置に保持されている場合、カードのコンタクトパッドは、端子43と接触して導通している。また、第1接点部材51と第2接点部材52とは、図9に示されるように、当接しておらず、ディレイスイッチはOFFの状態になっている。
【0066】
そして、利用者が手指等によってカードをプッシュして押込むと、スライド部材44及びカードは、ロック位置から奥壁部41bに向けて移動させられる。すると、カードの挿入方向の前面が第1接点部材51に当接し、該第1接点部材51を奥壁部41bの方向に変位させて第2接点部材52に当接させる。この場合、第1当接部51dの下側の面が第2当接部52dの上側の面に当接する。これにより、ディレイスイッチは、非導通状態から導通状態に、すなわち、OFFからONに変化し、カードを排出させるプッシュ動作が開始されたことを検出する。
【0067】
続いて、利用者がカードをプッシュして更に押込むと、スライド部材44及びカードは、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。この間、第1接点部材51と第2接点部材52とが当接した状態を維持するので、ディレイスイッチはONの状態を維持している。
【0068】
続いて、利用者がカードをプッシュする動作を止め、カードに対する押込力を解除すると、付勢部材45の反発力によって、スライド部材44及びカードは奥壁部41bから離脱する向きに移動させられ、ロック位置に復帰する。この場合、カム装置47によってスライド部材44の動きが規制されず、前記ロック位置で停止させられないので、スライド部材44及びカードは、前記ロック位置を通過し、カードの挿入方向と反対の方向に更に移動する。そして、カードとスライド部材44との係合が解除され、カードは排出される。なお、終端点からロック位置に復帰するまでの途中において、第1接点部材51は、それ自体のばね性によって元の姿勢に復元するので、第1接点部材51と第2接点部材52とは互いに非当接となる。そのため、ディレイスイッチはONからOFFに変化する。
【0069】
このように、本実施の形態において、ディレイスイッチは、カードの移動によって変位する第1接点部材51と第2接点部材52とを有し、カードを排出させる際のプッシュ動作における往復の行程において、第1接点部材51と第2接点部材52とが当接してONになるようになっている。そのため、カードを排出する際のプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むので、十分に長いディレイタイムを確保することができる。したがって、カードをカード用コネクタ40から排出させて取出す場合、カード用コネクタ40が取付けられた電子機器は、ディレイタイムの間に演算手段等とカードとを接続する回路を安全に遮断することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、ディレイスイッチが第1接点部材51と第2接点部材52とが当接することによって、カードの排出が開始されたことを検出するように構成されている場合について説明したが、前記ディレイスイッチは、第1接点部材51と第2接点部材52とが非当接となることによって、カードの排出が開始されたことを検出するように構成することもできる。例えば、第2接点部材52の第2当接部52dの位置を図9における上方にずらすことによって、カードがロック位置に保持されている場合に第1接点部材51と第2接点部材52とが当接し、カードをプッシュして押込み、カードの挿入方向の前面が当接して第1接点部材51が変位すると、第1接点部材51と第2接点部材52とが非当接となるようにすることができる。
【0071】
その他の点の効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0073】
図10は本発明の第3の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【0074】
図10において、60は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、前記第1及び第2の実施の形態におけるカード用コネクタ10及び40と同様に、電子機器に取付けられる。また、図10は、説明のためにシェル12を除去した状態のカード用コネクタ60を示す図である。該カード用コネクタ60は、合成樹脂等の絶縁材によって一体的に成形されたハウジング61を有し、前方(図10における上方)から図示されないカードが挿入される。なお、該カードは、前記第1の実施の形態におけるカード31及び第2の実施の形態におけるカードとは異なる種類のものである。
【0075】
そして、ハウジング61は、前記第1及び第2の実施の形態におけるハウジング11及び41と同様に、底壁部61a、及び、該底壁部61aの奥部において奥側の縁に沿って延在し、底壁部61aから立設する奥壁部61bを有する。ここで、底壁部61aの上面には、前後方向に延在するように形成された端子装填溝が複数形成され、各端子装填溝に接続端子としての端子63が挿入されて取付けられている。該端子63は前記第1及び第2の実施の形態における端子13及び43と同様のものであり、その根本部が前記端子装填溝内における底壁部61aの手前側の縁に近い部分に取付けられ、その先端部が奥壁部61bに向けて斜め上方に延在して底壁部61aの上面より上方に突出している。前記端子63の先端部は、接触部として機能し、カードの下面に配設された端子部材としてのコンタクトパッドに接触して電気的に接続される。
【0076】
また、ハウジング61は、底壁部61aの一方の側縁に沿って前後方向に延在する第1側壁部61c、及び、底壁部61aの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁部としての第2側壁部61dを有する。本実施の形態においては、前記第2側壁部61dに、カード用コネクタ60内に挿入されたカードを案内するためのカード案内機構のスライド部材64が前後方向にスライド可能に取付けられている。なお、スライド部材64は、内側の側面から突出するように形成され、カードと係合する係合部を備える。
【0077】
本実施の形態におけるカード用コネクタ60も、前記第1及び第2の実施の形態におけるカード用コネクタ10及び40と同様に、カード用コネクタ60内にカードを挿入する際にも、カード用コネクタ60内からカードを取出す際にも、カードを押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものであるとする。そして、前記第2側壁部61dには、プッシュ/プッシュの動作を行うためのカード案内機構におけるカム装置67が取付けられている。該カム装置67は、前記第1及び第2の実施の形態におけるカム装置17及び47と同様のものであるので、その説明を省略する。
【0078】
さらに、前記第2側壁部61dには、スライド部材64を前方に向けて付勢するためのカード案内機構における付勢部材65が取付けられている。なお、該付勢部材65は、前記第1及び第2の実施の形態における付勢部材15及び45と同様のものであるので、その説明を省略する。
【0079】
そして、前記ハウジング61の側部と奥部、具体的には、第1側壁部61c及び奥壁部61bに、カード排出動作検出スイッチとしてのディレイスイッチを形成する第1接点部材71及び第2接点部材72が、各々、取付けられている。本実施の形態におけるディレイスイッチは、前記第1及び第2の実施の形態におけるディレイスイッチと同様に、カードが移動することによって作動し、第1接点部材71と第2接点部材72とが相互に接離することによって、導通、すなわち、ON及び非導通、すなわち、OFFの状態となる。
【0080】
ここで、前記第1接点部材71は、第1側壁部61cに取付けられた根本部71a、及び、該根本部71aから奥壁部61bに向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部71cを有する。なお、前記第1接点部材71は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材であり、前記根本部71aは本体部71cに対して所定の角度を形成するように曲げられている。そして、第1接点部材71の根本部71aは第1側壁部61cの側面とほぼ平行となり、本体部71cは、カードがカード用コネクタ60に挿入されていない状態においては、第1側壁部61cの側面に対して傾斜し、内側に向けて突出するように配設されている。
【0081】
さらに、前記根本部71aは、その下端にソルダーテール部71bを備える。該ソルダーテール部71bは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。一方、本体部71cの先端には、第1当接部71dが接続されている。該第1当接部71dは、その下側の面が第2接点部材72に当接する当接面として機能する。
【0082】
また、前記第2接点部材72は、奥壁部61bに取付けられた根本部72a、及び、該根本部72aから横方(図10における右方)に向けて延在する細長い板状のカンチレバーのような形状である本体部72cを有する。なお、前記第2接点部材72は、金属等のばね性を備えた導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材である。そして、第2接点部材72の根本部72aは奥壁部61bの側面とほぼ平行となり、本体部72cは、底壁部61aの上面とほぼ平行となっている。
【0083】
さらに、前記根本部72aは、その下端にソルダーテール部72bを備える。該ソルダーテール部72bは、前記電子機器における相手側端子部材にはんだ付けされて電気的に接続される。そして、本体部72cの先端には、第2当接部72dが接続されている。該第2当接部72dは、上側の面が第1接点部材71に当接する当接面として機能する。
【0084】
次に、本実施の形態におけるカード用コネクタ60の動作について説明する。ここでは、カードをカード用コネクタ60から排出させて取出す動作について説明する。
【0085】
この場合、図示されないカードは、カード用コネクタ60内において、ロック位置に保持されているものとする。なお、カードがロック位置に保持されている場合、カードのコンタクトパッドは、端子63と接触して導通している。また、第1接点部材71と第2接点部材72とは、図10において実線で示されるように、当接しておらず、ディレイスイッチはOFFの状態になっている。
【0086】
そして、利用者が手指等によってカードをプッシュして押込むと、スライド部材64及びカードは、ロック位置から奥壁部61bに向けて移動させられる。すると、カードの側面が第1接点部材71の本体部71cに当接し、該本体部71cを第1側壁部61cの方向に変位させる。そして、本体部71cは、図10において二点鎖線で示されるように変位し、本体部71cの先端の第1当接部71dが第2接点部材72の第2当接部72dに当接する。この場合、第1当接部71dの下側の面が第2当接部72dの上側の面に当接する。これにより、ディレイスイッチは、非導通状態から導通状態に、すなわち、OFFからONに変化し、カードを排出させるプッシュ動作が開始されたことを検出する。
【0087】
続いて、利用者がカードをプッシュして更に押込むと、スライド部材64及びカードは、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。この間、第1接点部材71と第2接点部材72とが当接した状態を維持するので、ディレイスイッチはONの状態を維持している。
【0088】
続いて、利用者がカードをプッシュする動作を止め、カードに対する押込力を解除すると、付勢部材65の反発力によって、スライド部材64及びカードは奥壁部61bから離脱する向きに移動させられ、ロック位置に復帰する。この場合、カム装置67によってスライド部材64の動きが規制されず、前記ロック位置で停止させられないので、スライド部材64及びカードは、前記ロック位置を通過し、カードの挿入方向と反対の方向に更に移動する。そして、カードとスライド部材64との係合が解除され、カードは排出される。なお、終端点からロック位置に復帰するまでの途中において、第1接点部材71は、それ自体のばね性によって元の姿勢に復元するので、第1接点部材71と第2接点部材72とは互いに非当接となる。そのため、ディレイスイッチはONからOFFに変化する。
【0089】
このように、本実施の形態において、ディレイスイッチは、カードの移動によって変位する第1接点部材71と第2接点部材72とを有し、カードを排出させる際のプッシュ動作における往復の行程において、第1接点部材71と第2接点部材72とが当接してONになるようになっている。そのため、カードを排出する際のプッシュ動作における往復の行程をディレイタイムに含むので、十分に長いディレイタイムを確保することができる。したがって、カードをカード用コネクタ60から排出させて取出す場合、カード用コネクタ60が取付けられた電子機器は、ディレイタイムの間に演算手段等とカードとを接続する回路を安全に遮断することができる。
【0090】
なお、本実施の形態においては、ディレイスイッチが第1接点部材71と第2接点部材72とが当接することによって、カードの排出が開始されたことを検出するように構成されている場合について説明したが、前記ディレイスイッチは、第1接点部材71と第2接点部材72とが非当接となることによって、カードの排出が開始されたことを検出するように構成することもできる。例えば、第2接点部材72の第2当接部72dの位置を図10における左方にずらすことによって、カードがロック位置に保持されている場合に第1接点部材71と第2接点部材72とが当接し、カードをプッシュして押込み、カードの側面が当接して第1接点部材71が変位すると、第1接点部材71と第2接点部材72とが非当接となるようにすることができる。
【0091】
その他の点の効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0092】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、カード用コネクタに利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10、40、60 カード用コネクタ
11、41、61 ハウジング
11a、41a、61a 底壁部
11b、41b、61b 奥壁部
11c、41c、61c 第1側壁部
11d、41d、61d 第2側壁部
11e 端子装填溝
11f、14c 係止部
12 シェル
13、43、63、302 端子
13a、21b、22b、51b、52b、71b、72b ソルダーテール部
14、44、64 スライド部材
14a 第1係合部
14b 第2係合部
15、45、65 付勢部材
17、47、67 カム装置
21、51、71 第1接点部材
21a、22a、51a、52a、71a、72a 根本部
21c、22c、51c、52c、71c、72c 本体部
21d、51d、71d 第1当接部
22、52、72 第2接点部材
22d、52d、72d 第2当接部
31 カード
32 係合凸部
33 係合凹部
301 絶縁性ハウジング
303 カムスライダ
304 スライド壁
305 コイルスプリング
306 可動接点部材
307 固定接点部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、
(b)該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、
(c)前記カードを挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記カードをロック位置で保持するとともに、前記カードをロック位置から更に挿入方向に押込むプッシュ動作がなされると、前記付勢部材の付勢力によって、前記カードを挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、
(d)前記ハウジングに取付けられ、前記カードの挿入でカードによって変位させられる第1導通部材と、
(e)該第1導通部材より挿入方向奥側に位置し、前記カードがロック位置にあるときに前記第1導通部材から離間し、前記カードが前記ロック位置より挿入方向奥側から終端点までに位置するときに前記第1導通部材と接触する第2導通部材と
を有するカード用コネクタ。
【請求項2】
前記第1導通部材は、前記ハウジングに取付けられる根本部と、該根本部から延出する本体部とを備え、該本体部は、挿入方向奥側の部分が前記第2導通部材と接触する当接部を含む請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記第2導通部材は、前記ハウジングに取付けられる根本部と、該根本部から延出する本体部とを備え、該本体部は、前記カードが前記ロック位置より挿入方向奥側から終端点までに位置するときに前記第1導通部材と接触する当接部を含む請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記第1導通部材の根本部及び前記第2導通部材の根本部は、前記ハウジングの奥壁部と略平行に前記ハウジングに取付けられ、前記第2導通部材の当接部は、前記第1導通部材の当接部と前記奥壁部との間に位置する請求項2又は3に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−153387(P2010−153387A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30215(P2010−30215)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2005−178296(P2005−178296)の分割
【原出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】