説明

カード用コネクタ

【課題】カードのスムーズな挿入を阻害することなく、カードの飛び出しを確実に防止することができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ本体2にカバー3を装着して、カード51の装着空間を形成するハウジングを形成し、ハウジング内にカード51と共にハウジング内をスライドするスライド部材22とスライド部材22を排出方向に付勢する排出バネ23を配置し、カバー3に設けられた当接部36により、装着口4側において、カードの装着空間を装着口4に向かって狭めるようにスライド部材22を揺動させて、スライド部材22とコネクタ本体2の側壁部13との間でカード51を挟み込む構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、カードの飛び出し防止構造を備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードの飛び出し防止構造を備えたカード用コネクタとして、ハウジングの奥側でカードに対して制動力を付与するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。従来のカード用コネクタにおいては、挿入方向及び排出方向にカードと共にスライドするスライド部材に突起部が設けられ、ハウジングにスライド部材の突起部をガイドするガイド溝が設けられている。この突起部及びガイド溝は、スライド部材の排出方向へのスライド時に、ハウジングの奥側(排出方向の後側)に向かってカードの装着空間を狭めるようにスライド部材を揺動させている。
【0003】
このため、カードの排出時には、スライド部材の排出方向の後側部分によって、カードがスライド部材に対して装着空間を挟んで対向するハウジングの側壁部に押し付けられる。このように、従来のカード用コネクタにおいては、カードの排出時にハウジングの奥側でカードの装着空間が狭められるため、カードとハウジングの側壁部とが摺接され、ハウジングの奥側においてカードに制動力が作用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−85684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような従来のカード用コネクタにおいては、スライド部材の排出方向へのスライド時に、ハウジングの奥側でカードの装着空間が狭まる一方、ハウジングの装着口側ではカードの装着空間が広がるようにスライド部材が揺動する。このため、ハウジングの装着口側では、スライド部材の排出方向の前側部分がカードから離間されるため、装着口側においてカードに十分な制動力が作用されず、カードの飛び出しを確実に防止できないという問題があった。
【0006】
また、従来のカード用コネクタにおいては、排出バネによってスライド部材が排出方向に付勢されるが、バネの付勢力の強いハウジングの奥側でカードに制動力が作用されるため、バネの付勢力に抗するようにカードに対して大きな制動力を作用させる必要があった。このため、ハウジングに対するカードの挿入時に、スライド部材に作用する制動力によってカードのスムーズな挿入が阻害されていた。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、カードのスムーズな挿入を阻害することなく、カードの飛び出しを確実に防止することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカード用コネクタは、カードの装着空間を形成するハウジングと、前記カードの挿入方向に、前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、前記カードの排出方向に、前記スライド部材を付勢する排出バネと、前記ハウジングの装着口側において、前記カードの装着空間を装着口に向かって狭めるように、前記スライド部材を揺動させる揺動部とを備え、前記ハウジングの装着口側において、前記揺動部によって揺動された前記スライド部材と、前記装着空間を挟んで前記スライド部材に対向する前記ハウジングの側壁部との間で、前記カードを挟み込むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ハウジングの装着口側において、カードの装着空間を装着口に向かって狭めるようにスライド部材が揺動されるため、スライド部材の排出方向の前側部分(挿入方向の後側部分)とハウジングの側壁部とによってカードが挟み込まれる。よって、排出バネの付勢力が弱いハウジングの装着口側でカードに対して制動力が作用されることで、カードの飛び出しを確実に防止することができる。また、排出バネの付勢力が弱いハウジングの装着口側において、カードに制動力が作用されるため、排出バネの付勢力が強いハウジングの奥側でカードに制動力が作用される構成と比較して、小さな制動力でカードの飛び出しを防止することができる。このため、ハウジングに対するカードの挿入時に、カードに作用する制動力によってカードのスムーズな挿入が阻害されることがない。
【0010】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記揺動部は、前記スライド部材により前記カードが前記側壁部に押し付けられるように前記スライド部材に当接することで、前記スライド部材を揺動させる当接部であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、スライド部材を当接部に当接させることで、カードの装着口側においてスライド部材を確実に揺動させることができる。
【0012】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、前記当接部は、前記ストッパの近傍に設けられたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、スライド部材の排出位置を規定するストッパの近傍に当接部が設けられることで、よりハウジングの装着口に近い位置でカードに対して制動力を作用させることができる。
【0014】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記当接部は、ハウジングに形成された片持バネであることを特徴とする
【0015】
この構成によれば、ハウジングに対して当接部を容易な加工で形成することができる。
【0016】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記スライド部材は、前記ハウジングの装着口側において前記カードに形成された凹部を係止する係止バネを設けたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、スライド部材の揺動により、係止バネがカードに近付けられるため、係止バネとカードの凹部とを強く係止させて、より確実にカードの飛び出しを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カードのスムーズな挿入を阻害することなく、カードの飛び出しを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、スライド部材の揺動構造の説明図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの排出動作の説明図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、SD(Secure Digital)カードが装着されるカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0021】
まず、本実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカードについて説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るカードの平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図をそれぞれ示している。
【0022】
図5(a)、(b)に示すように、カード51は、いわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。カード51の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面52が形成されている。傾斜面52は、カード51の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面52が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
【0023】
カード51の前端側の背面には、挿入方向に延在する複数の仕切りによって溝部53が形成されている。溝部53には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子18に接触する複数のパッド54が設けられている。カード51の一の側面には、後述するスライド部材22の係止バネ27に係止される凹部55が形成されている。また、カード51の他の側面には、カード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部56が設けられている。
【0024】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカード51の装着空間を形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2及びカバー3が組み合わされて装着口4を有する箱状体をなしている。コネクタ本体2の底壁部11の中央部分には、複数のコンタクト端子18が設けられている。底壁部11に設けられた各コンタクト端子18は、底壁部11の中央部分から奥壁部12側に向かって延在している。
【0026】
コネクタ本体2の一の側壁部13には、カード51の書き込み禁止状態を検出するスイッチ部21が設けられている。スイッチ部21は、下方に設けられた図示しない固定接点に離接可能に支持されており、図示しない巻きバネにより固定接点に対して離間方向に付勢されている。スイッチ部21は、カード51の操作部56の設定位置に応じてカード51に当接される。そして、スイッチ部21は、巻きバネの付勢力に抗して押し込まれると、固定接点に接触され、カード51の書き込み禁止状態を検出する。
【0027】
コネクタ本体2の一の側壁部13に対向する他の側壁部14は、前端側のストッパ16を残して切り欠かれている。コネクタ本体2には、この切欠き部分に沿って挿入方向及び排出方向にスライド可能なスライド部材22と、スライド部材22のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ23とが配置されている。排出バネ23は、一端が奥壁部12に当接され、他端がスライド部材22に当接されており、スライド部材22を排出方向に付勢している。
【0028】
スライド部材22は、排出バネ23に付勢された状態で挿入方向及び排出方向にスライド可能に構成されている。なお、以下、排出方向における前側(挿入方向における後側)をスライド部材22の前側とし、排出方向における後側(挿入方向における前側)をスライド部材の後側として説明する。スライド部材22の後側部分には、コネクタ本体2の中央に向かって突出する挿入位置規制部24が形成されている。挿入位置規制部24の側面は、スライド部材22の後端に向かって装着空間の幅方向を狭めるような傾斜面25であり、カード51の傾斜面52に当接可能に約45度に傾斜している。この構成により、挿入位置規制部24の傾斜面25がカード51の傾斜面52に当接する正挿入時にのみカード51が装着位置まで案内されるので、カード51の誤装着が防止される。
【0029】
スライド部材22の上面には図示しないハートカム溝が形成されており、このハートカム溝とストッパ16に設けられたラッチピン26によりスライド部材22の位置が規定される。ラッチピン26は、スライド部材22のスライド方向に延在し、両端が底壁部11に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン26の一端は、ストッパ16に回動可能に支持され、他端はスライド部材22のハートカム溝上に摺動される。
【0030】
ハートカム溝は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材22のスライドに応じてラッチピン26の他端を一方向に摺動させる。スライド部材22が奥壁部12近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン26の他端がハートカム溝の係止部分に係止され、排出バネ23の付勢によるスライド部材22の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材22が押し込まれると、ラッチピン26とハートカム溝との係止状態が解除されて、排出バネ23の付勢によりスライド部材22が復帰される。このように、ラッチピン26とハートカム溝は、スライド部材22の装着位置における保持機能を有している。
【0031】
また、スライド部材22には、スライド方向に延在する金属性の係止バネ27が設けられている。係止バネ27は、板バネであり、スライド部材22の後側部分に片持ちで保持されている。係止バネ27の自由端側には、カード51の凹部55を係止する係止突起28が形成されている。この係止突起28とカード51の凹部55との係止により、スライド部材22とカード51とが一体に移動される。
【0032】
カバー3は、金属製の板材を折り曲げて形成されており、上板部31の一側方にはラッチピン26を押えるピン押え32が形成されている。ピン押え32は、底壁部11側に切り起こされた片持ちバネであり、ラッチピン26の中間部分を下方に押圧してラッチピン26の他端をハートカム溝に押し付けている。ピン押え32の後方には、スライド部材22の浮き上がりを押える押え片33が形成されている。押え片33は、底壁部11側に切り起こされた片持ちバネであり、スライド部材22が装着位置側にスライドされたときに、スライド部材22の後端側を下方に押圧して、排出バネ23の反力による浮き上がりを防止している。
【0033】
上板部31の装着口4側の略半部には、カード51の飛び出し防止用の一対の制動片34が形成されている。一対の制動片34は、底壁部11側に僅かに切り起された片持ちバネであり、カード51の上面に接触して、カード51の排出時の飛び出しを抑制している。カバー3のスライド部材22側の側板部35には、スライド部材22に側方から当接する当接部36が形成されている。当接部36は、装着空間側に切り起こされた片持バネであり、スライド部材22の排出方向へのスライド時に、スライド部材22の前側部分に当接してスライド部材22を揺動させている。このスライド部材22の揺動により、カード51の排出時に、側壁部13とスライド部材22との間にカード51を挟み込んでカード51に対して制動力が作用される。
【0034】
以下、図3を参照して、スライド部材の揺動構造について説明する。図3は、本実施の形態に係るスライド部材の揺動構造の説明図である。なお、図3は、カード用コネクタの一部を模式図的に示したものであり、(a)においてはカード、スライド部材、排出バネを省略し、(b)においては排出バネを省略して記載している。
【0035】
図3(a)に示すように、コネクタ本体2の底壁部11には、スライド部材22を挿入方向にガイドする一対のガイド壁部41、42が、上面から僅かに突出して形成されている。一対のガイド壁部41、42は、コネクタ本体2の奥側における対向間隔L1よりもコネクタ本体2の前側における対向間隔L2が広く形成される。この一対のガイド壁部41、42の対向間隔の広がりにより、コネクタ本体2の前側にスライド部材22の揺動スペース43が形成される。
【0036】
カバー3の側板部35には、ストッパ16の近傍に上記した当接部36が設けられている。当接部36は、スライド部材22の前側部分を揺動スペース43に押し込むようにコネクタ本体2内に突出している。この場合、当接部36は、腕を短くすることで剛性が高められ、スライド部材22を強く押し込めるように形成されている。図3(b)に示すように、カード51が装着された状態では、スライド部材22は、コネクタ本体2の奥側において一対のガイド壁部41、42により幅方向で位置決めされている。カード51の排出が開始されると、カード51と共にスライド部材22が一対のガイド壁部41、42に沿って排出位置に向けてスライドされる。
【0037】
そして、図3(c)に示すように、スライド部材22がストッパ16に規制される排出位置に到達すると、スライド部材22の前側部分が当接部36に乗り上がって揺動スペース43側に押し込まれる。このとき、スライド部材22は、後側部分の角部29とガイド壁部42及び側板部35との接触部分を支点として、装着口4に向かってカード51の装着空間を狭めるように揺動される。
【0038】
このスライド部材22の揺動により、スライド部材22の前側部分がカード51をコネクタ本体2の側壁部13に押し付けて、カード51と側壁部13とを摺接させる。この構成より、カード51の排出時には、装着口4側においてスライド部材22と側壁部13との間にカード51が挟み込まれ、カード51に制動力が作用される。また、スライド部材22の揺動に伴って、スライド部材22に設けられた係止バネ27がカード51側に近付けられる。このため、係止バネ27の係止突起28がカード51の凹部55に深く係止され、スライド部材22からのカード51の抜け外れが抑えられる。
【0039】
このように、カード51の排出時に、スライド部材22が装着口4に向かってカード51の装着空間を狭めるように揺動されることで、スライド部材22に制動力が作用されると共に、係止バネ27の係止量を大きくすることで、カード51の飛び出しを防止している。また、金属製の当接部36が、直にカードに接触することがないため、カード51を傷つけることなく、カード51に対して制動力を作用させることが可能となる。尚、カード51を挟み込んで制動力を付与するスライド部材22とコネクタ本体2は、挿抜を繰り返すことでカード51に削れが発生することを防止することが可能なように、カード51との接触部分を例えば合成樹脂で形成することが可能である。
【0040】
図4を参照して、カード用コネクタの排出動作について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの排出動作の説明図であり、(a)がカード装着状態、(b)がカード排出状態をそれぞれ示している。なお、図4においては、説明の便宜上、カバーは、側板部のみを示している。
【0041】
図4(a)に示すように、カード51の装着状態においては、ラッチピン26の他端がハートカム溝の係止部分に形成され、カード51がスライド部材22と共に装着位置に保持される。このとき、スライド部材22は、一対のガイド壁部41、42により幅方向で位置決めされ、揺動が規制されている。したがって、カード51には、スライド部材22を介した制動力が作用していない。また、スライド部材22がコネクタ本体2の奥側まで押し込まれているため、排出バネ23が収縮され、スライド部材22に対する付勢力が大きくなっている。
【0042】
この状態から、さらにカード51が押し込まれると、ラッチピン26とハートカム溝との係止状態が解除されて、スライド部材22が排出バネ23により排出位置に向けて押し出される。このとき、スライド部材22は、一対のガイド壁部41、42により排出方向にガイドされ、一対のガイド壁部41、42の対向間隔が広がり始める位置まで、カード51側への揺動が規制される。
【0043】
図4(b)に示すように、カード51が排出位置まで押し出されると、スライド部材22の前側部分が側板部35に設けられた当接部36に乗り上がってカード51側に押し込まれる。スライド部材22は、当接部36からの押し込みにより、後側部分の角部29とガイド壁部42及び側板部35との接触部分を支点として、装着口4に向かって装着空間を狭めるように揺動される。そして、スライド部材22の前側部分とコネクタ本体2の側壁部13との間にカード51が挟み込まれることで、カード51に制動力が作用する。
【0044】
このとき、排出バネ23は伸びきっており、スライド部材22に対する付勢力が小さくなる。したがって、付勢力の小さい排出位置において、カード51に対して制動力を作用させることで、カード51の飛び出しを効果的に防止している。
【0045】
また、スライド部材22の揺動により、係止バネ27の係止突起28がカード51の凹部55に深く入り込む。これにより、スライド部材22からのカード51の抜け外れが抑えられる。このように、排出バネ23の付勢力が小さな排出位置においてカード51に制動力が作用されると共に、カード51に対して係止バネ27を深く係止させたことで、カード51の飛び出しを確実に防止することが可能となる。
【0046】
この場合、排出バネ23の付勢力が小さな排出位置において、カード51に対して制動力が作用するため、カード51の飛び出しを防止するために大きな制動力は不要である。したがって、スライド部材22の揺動量は、制動力によってカード51のスムーズな挿入を妨げない程度に調整されている。この構成により、カード51のスムーズな挿入を阻害することなく、カード51の飛び出しを確実に防止することが可能となる。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、装着口4側において、装着口4に向かって装着空間を狭めるようにスライド部材22が揺動されるため、スライド部材22の前側部分とコネクタ本体2の側壁部13とによってカード51が挟み込まれる。よって、排出バネ23の付勢力が弱い装着口4側でカード51に対して制動力が作用されることで、カード51の飛び出しを確実に防止することが可能となる。また、排出バネ23の付勢力が弱い装着口4側において、カード51に制動力が作用されるため、排出バネ23の付勢力が強いコネクタ本体2の奥側でカード51に制動力が作用される構成と比較して、小さな制動力でカード51の飛び出しを防止することができる。このため、カード用コネクタ1に対するカード51の挿入時に、カード51に作用する制動力によってカード51のスムーズな挿入が阻害されることがない。
【0048】
なお、上記した実施の形態においては、揺動部が、当接によりスライド部材を揺動させる当接部である構成としたが、この構成に限定されるものではない。揺動部は、カード用コネクタの装着口側において、装着口に向かって装着空間を狭めるようにスライド部材を揺動させる構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば、揺動部は、スライド部材とコネクタ本体またはカバーとに設けたカム機構により構成されてもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態においては、本発明をSDカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。SDカード以外にカードに対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態においては、本発明を1種類のカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。2種類以上のカードに対応可能なコンバイン型のカード用コネクタや、3種類以上のカードに対応可能なカード用コネクタに適用してもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態においては、当接部がカバーの側板部に設けられる構成としたが、この構成に限定されるものではない。当接部は、カバーの側板部の代わりにコネクタ本体の側壁部に設けられる構成としてもよい。この場合、スライド部材側の側壁部は、当接部の形成箇所を切り欠かないように形成される。
【0052】
また、上記した実施の形態においては、当接部が片持ちバネで形成される構成としたが、この構成に限定されるものではない。当接部は、スライダ部材に当接して、スライド部材を揺動スペースに押し込み可能な構成であればよく、例えば、両持ちバネで形成して剛性を高めてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態においては、片持の当接部は、腕部を短くして剛性を高めたが、腕部を長くして弾性をもたせるようにしてもよい。この構成により、腕部が撓むことで、カードの寸法誤差を吸収させることができる。
【0054】
また、上記した実施の形態においては、当接部がストッパの近傍に設けられる構成としたが、この構成に限定されるものではない。当接部は、スライダ部材を装着口に向かって装着空間を狭めるように揺動させる位置にあれば、コネクタ本体またはカバーにおいて、どの位置に設けられていてもよい。
【0055】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、カードのスムーズな挿入を阻害することなく、カードの飛び出しを確実に防止することができるという効果を有し、特に、薄型カードに対応したカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 カード用コネクタ
2 コネクタ本体(ハウジング)
3 カバー(ハウジング)
4 装着口
13 側壁部
16 ストッパ
22 スライド部材
23 排出バネ
27 係止バネ
28 係止突起
36 当接部(揺動部)
41、42 ガイド壁部
43 揺動スペース
51 カード
55 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの装着空間を形成するハウジングと、
前記カードの挿入方向に、前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、
前記カードの排出方向に、前記スライド部材を付勢する排出バネと、
前記ハウジングの装着口側において、前記カードの装着空間を装着口に向かって狭めるように、前記スライド部材を揺動させる揺動部とを備え、
前記ハウジングの装着口側において、前記揺動部によって揺動された前記スライド部材と、前記装着空間を挟んで前記スライド部材に対向する前記ハウジングの側壁部との間で、前記カードを挟み込むことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記揺動部は、前記スライド部材により前記カードが前記側壁部に押し付けられるように前記スライド部材に当接することで、前記スライド部材を揺動させる当接部であることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、
前記当接部は、前記ストッパの近傍に設けられたことを特徴とする請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記当接部は、ハウジングに形成された片持バネであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記ハウジングの装着口側において前記カードに形成された凹部を係止する係止バネを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165331(P2011−165331A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23135(P2010−23135)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】