説明

カード用コネクタ

【課題】スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができ、さらに、カードの挿入方向における寸法のばらつきを吸収して抜け止めを行うことができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】ハウジングと、ハウジング内をスライド可能に形成され、カード51の装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、装着位置からの更なる押し込みにより排出位置に戻されるスライド部材6と、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動してカード51を抜け止めする抜け止め部材9とを備え、抜け止め部材9は、バネ片43を有し、スライド部材6に形成された傾斜面33にバネ片43を弾接させることで、抜け止めするように動作する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、SIM(Subscriber Identity Module)カード用のカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SIMカード用のカード用コネクタとして、プッシュプッシュ式のカード用コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード用コネクタには、ハウジング内において挿入方向及び排出方向にSIMカードと共にスライドするスライド部材を、装着位置においてロックするロック機構が設けられている。ロック機構は、SIMカードの押し込みによりスライド部材を装着位置でロックし、SIMカードの更なる押し込みによりスライド部材のロックを解除する。SIMカードは、スライド部材のロックが解除されると、スライド部材を排出方向に付勢する排出バネの付勢力によって、スライド部材を介して排出位置に押し戻される。
【0003】
ところで、SIMカードの側面には、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きが形成されていない。したがって、スライド部材が装着位置にロックされた状態であっても、振動等でSIMカードがコネクタから抜け出るおそれがある。このため、カード用コネクタの装着口側に抜け止め用の抜け止め部材を設ける構成が考えられる(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のカード用コネクタの抜け止め部材は、手動操作によって、装着口の一部を塞ぐ抜け止め位置と、抜け止め位置から退避する退避位置との間を移動される。SIMカードは、抜け止め部材の抜け止め位置への移動により、コネクタからの抜けが防止され、抜け止め部材の退避位置への移動により、コネクタへの抜差しが許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17183号公報
【特許文献2】特許第2717349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のカード用コネクタにおいては、抜け止め部材が手動操作されるため、SIMカードの装着時に抜け止め部材の操作を忘れるおそれがあり、SIMカードの抜けを確実に防止できないという問題があった。また、SIMカードの装着時には、SIMカードの挿入後に抜け止め部材を手動操作して抜け止めし、SIMカードの排出時には、抜け止め部材を手動操作して抜け止めを解除した後に、SIMカードを取り出す必要があるため、操作が煩雑になるという問題があった。
【0006】
また、上記した従来のカード用コネクタの抜け止め部材は、挿入方向に対して直交する幅方向にスライドされることで、抜け止め位置と退避位置との間を移動される。抜け止め部材には、幅方向に延在するガイドが設けられ、ハウジングに形成されたガイド溝に遊びなく係合されている。したがって、SIMカードの大きさがばらつき、規定寸法よりも挿入方向における寸法が大きい場合には、抜け止め部材が挿入方向における遊びを有さないため、SIMカードの確実な抜け止めを行うことができなかった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができ、さらに、カードの挿入方向における寸法のばらつきを吸収して抜け止めを行うことができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカード用コネクタは、カードの装着空間を形成するハウジングと、前記カードの挿入方向及び排出方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記カードの装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、前記装着位置からの更なる押し込みにより排出位置に戻されるスライド部材と、前記スライド部材に設けられた連結部を介して前記スライド部材のスライドに連動され、前記カードを抜け止め保持する保持部を、前記カードを抜け止めする抜け止め位置と、前記抜け止め位置から退避する退避位置との間で移動させる抜け止め部材とを備え、前記抜け止め部材及び前記連結部のいずれか一方には弾接部が設けられ、いずれか他方には前記弾接部に弾接して前記抜け止め部材を駆動する駆動面が形成され、前記抜け止め部材は、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドにより前記弾接部と前記駆動面とが弾接されて、前記保持部を前記抜け止め位置に移動することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、スライド部材の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材の保持部が抜け止め位置に移動される。よって、カードの装着時には、抜け止め部材の操作を忘れていても、保持部が抜け止め位置に移動されるため、保持部によってカード用コネクタからのカードの抜けを確実に防止することができる。また、抜け止め部材の手動操作が不要となるため、簡易にカードの装着動作を行うことができる。また、弾接部と駆動面との弾接により、抜け止め部材と連結部とが連結を保ちつつ微動できるため、カードの挿入方向のおける寸法のばらつきを吸収して、カードの抜け止めを確実に行うことができる。さらに、カード用コネクタが、車載された場合であっても、外部から加わる振動を弾接部と駆動面との弾接により吸収して、ラトルノイズ等の異音の発生を低減することができる。
【0010】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材は、前記スライド部材の前記排出位置へのスライドにより前記保持部に前記カードを当接させて、前記保持部を前記退避位置に移動することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、スライド部材の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材の保持部が退避位置に移動される。よって、カードの排出時には、抜け止め部材を操作することなく、保持部が退避位置に移動されるため、保持部によってカードの排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材の手動操作が不要となるため、簡易にカードの排出動作を行うことができる。また、抜け止め部材の保持部が、排出方向に移動されたカードの当接により退避位置に移動されるため、カードをスムーズに排出させることができ、操作性を向上させることができる。さらに、カードの排出時に、保持部との当接によりカードが制動されるため、カードの不意な飛び出しを防止することができる。
【0012】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材は、金属板からなり、前記弾接部を一体形成したことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、金属板の折り曲げ等により抜け止め部材に弾接部を一体形成することができ、強度を高めることができる。
【0014】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、前記連結部は、前記ストッパを迂回するようにして、前記スライド部材から排出方向に延び、前記カードの装着口の近傍において前記抜け止め部材を前記スライド部材のスライドに連動させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ストッパが装着口の近傍におけるスライド部材と抜け止め部材との連動を規制することがない。
【0016】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材は、前記ハウジングに揺動可能に支持されており、前記弾接部と前記駆動面との弾接により前記スライド部材のスライドが変換されて、前記保持部を揺動することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、抜け止め部材を揺動させることで、カード用コネクタの幅を広げることなく、保持部のカードに当接可能な部分を大きくとることができる。
【0018】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記駆動面は、前記抜け止め部材及び前記連結部のいずれか一方の側面に形成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、薄型の抜け止め部材及び連結部を使用しても、側面を駆動面とすることで、側方からの押圧力に対する部品強度を高めることが可能となる。また、薄型の抜け止め部材及び連結部を使用可能なため、カード用コネクタを薄型化することができる。
【0020】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記連結部は、前記スライド部材が前記排出位置にある場合に、前記保持部の前記抜け止め位置への移動を規制する第一の規制部を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、スライド部材が排出位置にあるカードの非装着時に、保持部が抜け止め位置に移動されることがないため、カード用コネクタに対するカードの装着が阻害されることがない。
【0022】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記連結部は、前記スライド部材が前記装着位置にある場合に、前記保持部の退避位置への移動を規制する第二の規制部を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、スライド部材が装着位置にあるカードの装着時に、保持部が退避位置に移動されることがないため、カード用コネクタからのカードの無理抜きを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができ、さらに、カードの挿入方向における寸法のばらつきを吸収して抜け止めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、スライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態の説明図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、抜け止め部材の揺動動作の遷移図である。
【図6】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタによるカードの装着動作の説明図である。
【図7】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタによるカードの排出動作の説明図である。
【図8】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、SIMカードが装着されるカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0027】
まず、本実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカードについて説明する。図8は、本発明の実施の形態に係るカードの平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図をそれぞれ示している。
【0028】
図8(a)、(b)に示すように、カード51は、いわゆるSIMカードであり、上面視略矩形状に形成され情報記憶部を有する記憶媒体である。カード51の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面52が形成されている。傾斜面52は、カード51の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面52が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
【0029】
カード51の背面には、カード51の挿入方向における後端側の略半部に、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子15に接触して情報の読み出しまたは書込みをするための複数の接点パッド53が設けられている。また、カード51の側面は、挿入方向に沿って平坦に形成され、カード用コネクタ1のスライド部材6の側面に面接触される。すなわち、カード51は、カード用コネクタ1のスライド部材6に保持されることなく、スライド部材6に面接触された状態で挿入方向及び排出方向に動作される。
【0030】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカード51の装着空間を形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2及びカバー3が組み合わされて装着口4を有する箱状体をなしている。コネクタ本体2の底壁部11における装着口4側の略前半部には、複数のコンタクト端子15が設けられている。各コンタクト端子15は、底壁部11の略前半部から奥壁部12側に向かって延在している。
【0032】
コネクタ本体2の奥壁部12には、カード51の装着検出用のスイッチ部5が設けられている。スイッチ部5は、奥壁部12に揺動可能に支持されたレバー21と、レバー21に設けられた接点バネ22とを有している。スイッチ部5は、奥壁部12の内側面に露出された一対の固定接点23、24に対向し、カード51の非装着時に、接点バネ22の一端を一方の固定接点23に接触させ、接点バネ22の他端を他方の固定接点24から離間させている。そして、スイッチ部5は、カード51により奥壁部12側に押し込まれると、レバー21の回動により接点バネ22の他端を他方の固定接点24に接触させて、カード51の装着を検出する。
【0033】
コネクタ本体2の一の側壁部13側には、側壁部13に沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁部12に当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。また、コネクタ本体2の装着口4側には、スライド部材6の排出方向へのスライドを遮るようにストッパ26が設けられている。ストッパ26は、スライド部材6に当接することで、スライド部材6を排出位置に規制する。
【0034】
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入方向及び排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6は、挿入方向の前端側からコネクタ本体2の中央に向かって延在する腕部31を有している。腕部31は、カード51の挿入方向の前端面に当接し、スライド部材6とカード51とを一体に動作させる。
【0035】
スライド部材6の上面にはハートカム溝39(図6参照)が形成されており、このハートカム溝39とストッパ26に設けられたラッチピン8とによりスライド部材6の位置が規定される。ラッチピン8は、スライド部材6のスライド方向に延在し、両端が底壁部11に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン8の一端は、ストッパ26に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝39上に摺動される。
【0036】
ハートカム溝39は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてラッチピン8の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁部12近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ラッチピン8及びハートカム溝39は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0037】
また、スライド部材6には、ストッパ26の側方を通り装着口4側に延在する連結部32が設けられている。連結部32の先端の近傍には、スライド部材6に連動する抜け止め部材9が設けられている。抜け止め部材9は、カード51を抜け止め保持する保持片44を有している。また、抜け止め部材9は、連結部32を介してスライド部材6に連動し、装着口4の一部を塞ぐ抜け止め位置と抜け止め位置から退避した退避位置との間で保持片44を移動させる。
【0038】
カバー3は、金属製の板材を折り曲げて形成されており、上板の一側方にはラッチピン8を押えるピン押え35が形成されている。ピン押え35は、底壁部11側に切り起こされた片持ちバネであり、ラッチピン8の中間部分を下方に押圧してラッチピン8の他端をハートカム溝39に押し付けている。
【0039】
以下、図3を参照して、スライド部材と抜け止め部材との連動構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。なお、図3においては、カードの排出時のスライド部材と抜け止め部材との連動状態を示している。
【0040】
図3に示すように、連結部32は、ストッパ26を迂回するように装着口4側に延在し、抜け止め部材9に当接可能に形成されている。このため、スライド部材6と抜け止め部材9は、装着口4近傍においてストッパ26により連動が規制されることがない。連結部32の先端部には、スライド部材6のスライドを抜け止め部材9のバネ片43に伝達可能な傾斜面33が形成されている。傾斜面33は、装着口4側に向かって側壁部13との間隔を狭めるように傾斜している。そして、傾斜面33は、スライド部材6のスライドに伴って移動されることで、抜け止め部材9のバネ片43を押圧する。
【0041】
抜け止め部材9は、金属板を折り曲げて形成されており、コネクタ本体2の底壁部11に設けられた支持突起41に揺動自在に支持される平板部42を有している。平板部42の奥壁部12側には、片持ちのバネ片43が設けられている。バネ片43は、平板部42に連なる基端部からストッパ26に向かって延在し、延在方向の途中部分で基端側に折り返されている。このバネ片43の自由端部側が、連結部32の傾斜面33に弾接されることで、抜け止め部材9が支持突起41を中心として揺動される。
【0042】
平板部42の装着口4側には、カード51を抜け止め保持する保持片44が設けられている。保持片44は、平板部42に連なる基端部から装着口4側(カード51側)に向かって延在し、途中部分で基端側に折り曲げられている。保持片44は、基端側の略半部でカード51を抜け止め保持する。保持片44の先端側の略半部は、退避位置においてカード51との接触を避けるように折り曲げられている。
【0043】
また、平板部42のバネ片43近傍は、連結部32に設けられた第一、第二の規制部48、49と共に、抜け止め部材9の揺動範囲を規制する規制片45となっている。規制片45は、連結部32において、第一、第二の規制部48、49に対して一段低くなった段部47に位置される。そして、抜け止め部材9は、スライド部材6が排出位置にある場合に、規制片45と第一の規制部48とによって抜け止め方向への揺動が規制される。これにより、カード51の非装着時に保持片44が抜け止め位置に移動されず、カード51の装着が阻害されることがない。また、抜け止め部材9は、スライド部材6が装着位置にある場合に、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向への揺動が規制される。これにより、カード51の装着時に保持片44が退避位置に移動されず、カード51の抜けが確実に防止される。
【0044】
このように構成された抜け止め部材9は、バネ片43と連結部32の傾斜面33との弾接によりカード51の挿入方向における寸法誤差を吸収している。以下、図4を参照して、寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態の説明図である。なお、図4において、(a)が規定寸法のカードがカード用コネクタに装着された状態、(b)が寸法誤差を有するカードがカード用コネクタに装着された状態をそれぞれ示している。
【0045】
図4(a)に示すように、カード用コネクタ1に規定寸法のカード51が装着された場合には、抜け止め部材9は、バネ片43と傾斜面33との弾接により保持片44を抜け止め位置に移動させる。このとき、保持片44は、カード51の挿入方向における後端面に面接触して、カード51を抜け止めする。
【0046】
一方、図4(b)に示すように、カード用コネクタ1に、挿入方向における寸法が規定寸法よりも大きなカード51が装着された場合には、抜け止め部材9は、バネ片43と傾斜面33との弾接により保持片44を抜け止め位置に向けて移動する。抜け止め位置に向けて移動された保持片44は、カード51が規定寸法よりも突出した分だけ、抜け止め位置に対して僅かに手前の位置(角度)でカード51の後端面に当接する。このとき、バネ片43が、規定寸法のカード51が装着された場合よりも大きく撓むことで、カード51の誤差を吸収しつつ抜け止め部材9を適切な揺動量に調整する。
【0047】
このように、カード51の装着時には、バネ片43と傾斜面33との弾接により、抜け止め部材9と連結部32とが連結を保ちつつ微動できるため、カード51の挿入方向における寸法のばらつきを吸収して、カード51の抜け止めを確実に行うことが可能となる。また、カード用コネクタ1が、車載された場合であっても、外部から加わる振動をバネ片43と傾斜面33との弾接により吸収して、ラトルノイズ等の異音の発生を低減することが可能となる。
【0048】
ここで、図5を参照して、抜け止め部材の揺動動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る抜け止め部材の揺動動作の遷移図である。なお、図5において、(a)から(c)がカードの装着時における抜け止め部材の揺動動作、(c)から(e)がカードの排出時における抜け止め部材の揺動動作をそれぞれ示している。
【0049】
図5(a)に示すように、スライド部材6が排出位置にある場合、スライド部材6によってカード51が装着口4から押し出されている。このとき、抜け止め部材9は、保持片44を退避位置に位置させており、規制片45と第一の規制部48とにより抜け止め方向への揺動が規制されている。この状態からカード51が押し込まれると、スライド部材6が挿入方向にスライドされ、抜け止め部材9のバネ片43と連結部32の傾斜面33とが接触される。
【0050】
図5(b)に示すように、カード51が更に押し込まれ、スライド部材6がさらに挿入方向にスライドされると、バネ片43が傾斜面33に乗り上がり始める。抜け止め部材9は、バネ片43に対する傾斜面33の押し込みにより支持突起41を中心に抜け止め方向に揺動を開始する。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第一の規制部48とが離間されるため、揺動が規制されることがない。
【0051】
図5(c)に示すように、カード51がカード用コネクタ1に装着され、スライド部材6が装着位置までスライドされると、バネ片43が傾斜面33に完全に乗り上がる。抜け止め部材9は、抜け止め方向の揺動により保持片44を抜け止め位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側に突出され、カード用コネクタ1からのカード51の抜けが防止される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向の揺動が規制される。したがって、カード用コネクタ1からのカード51の無理抜きが防止される。
【0052】
このように、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード51の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード51の抜けを確実に防止することが可能となる。
【0053】
図5(c)に示す状態から、カード51が更に押し込まれると、スライド部材6がカード51と共に排出方向に押し戻され、第二の規制部49による抜け止め部材9の退避方向の揺動規制が解除される。
【0054】
図5(d)に示すように、スライド部材6が排出方向にスライドされると、カード51の後端によって抜け止め部材9の保持片44が押し込まれる。抜け止め部材9は、保持片44に対するカード51の押し出しにより支持突起41を中心に退避方向に揺動を開始する。このとき、バネ片43が傾斜面33を下るため、バネ片43に対する傾斜面33の押し込み量が小さくなり、抜け止め部材9の退避方向の揺動に対するバネ片43の抵抗が弱まる。
【0055】
図5(e)に示すように、カード51がカード用コネクタ1から排出され、スライド部材6が排出位置までスライドされると、抜け止め部材9は、退避方向の揺動により保持片44を退避位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側から退避され、カード用コネクタ1に対するカード51の抜差しが許容される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と連結部32の第一の規制部48とによって抜け止め方向の揺動が規制される。
【0056】
このように、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。よって、カード51の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード51の排出が規制されることがない。
【0057】
図6及び図7を参照して、カード用コネクタの装着動作及び排出動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの装着動作の説明図である。図7は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの排出動作の説明図である。なお、図6及び図7においては、説明の便宜上、カバーを省略している。
【0058】
最初に、カード用コネクタ1によるカード51の装着動作について説明する。図6(a)に示すように、カード用コネクタ1にカード51が挿入されると、カード51の先端がスライド部材6の腕部31に接触される。このとき、抜け止め部材9は、第一の規制部48によって抜け止め方向の揺動が規制されるため、抜け止め部材9がカード51の挿入を妨げることがない。この状態からカード51が押し込まれると、スライド部材6が装着位置に向かってスライドし、抜け止め部材9の抜け止め方向の揺動規制が解除される。
【0059】
図6(b)に示すように、カード51が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端にハートカム溝39が摺動されながら、スライド部材6が更に装着位置側にスライドされる。このスライド部材6の挿入方向のスライドに伴って、連結部32の傾斜面33に抜け止め部材9のバネ片43が押し込まれ、抜け止め部材9が支持突起41を中心として抜け止め方向に揺動される。
【0060】
図6(c)に示すように、カード51が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、カード51がスライド部材6と共に装着位置に保持される。そして、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置まで移動され、カード用コネクタ1からのカード51の抜けが防止される。また、カード51によってスイッチ部5が押し込まれて、カード51の装着が検出される。そして、装着位置に保持されることでカード51の接点パッド53が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15と接触し、カード51の情報記憶部と上位装置との間での信号の授受が可能となる。
【0061】
次に、カード用コネクタ1によるカード51の排出動作について説明する。図7(a)に示すように、カード51の装着状態においては、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、スライド部材6の排出方向へのスライドが規制されている。このとき、抜け止め部材9は、第二の規制部49によって退避方向の揺動が規制されるため、カード51の無理抜きが防止される。
【0062】
図7(b)に示すように、カード51が更に押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、スライド部材6が排出バネ7により排出位置に向かって押し戻される。このスライド部材6の排出方向のスライドによって、カード51の後端に抜け止め部材9の保持片44が押し出されて、抜け止め部材9が支持突起41を中心として退避方向に揺動される。
【0063】
図7(c)に示すように、スライド部材6が排出位置にスライドされると、カード51による押し出しにより、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。このようにして、カード51がカード用コネクタ1の装着口4から排出される。また、スイッチ部5へのカード51による押し込みが解除されるので、カード51の排出が検出される。そして、装着位置からカード51が排出位置に移動することでカード51の接点パッド53が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15から離間する。
【0064】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、連結部32の傾斜面33に押し込まれることで、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード51の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード51の抜けを確実に防止することが可能となる。また、接点バネ43と傾斜面33との弾接により、抜け止め部材9と連結部32とが連結を保ちつつ微動できるため、カード51の挿入方向のおける寸法のばらつきを吸収して、カード51の抜け止めを確実に行うことが可能となるさらに、カード用コネクタ1が、車載された場合であっても、外部から加わる振動を接点バネ43と傾斜面33との弾接により吸収して、ラトルノイズ等の異音の発生を低減することができる。
【0065】
また、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動し、カード51に押圧されて保持片44が退避位置に移動される。よって、カード51の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード51の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材9に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード51の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。また、保持片44が、排出方向に移動されたカード51の当接により退避位置に移動されるため、カード51をスムーズに排出させることができ、操作性を向上させることができる。また、カード51の排出時に、保持片44との当接によりカード51が制動されるため、カード51の不意な飛び出しを防止することができる。
【0066】
また、薄型の抜け止め部材9及び連結部32を使用しても、側面を傾斜面とすることで、側方からの押圧力に対する部品強度を高めることが可能となる。さらに、薄型の抜け止め部材9及び連結部32を使用可能なため、カード用コネクタ1を薄型化することができる。
【0067】
なお、上記した実施の形態においては、本発明をSIMカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。SIMカード以外にも、側面に切欠きが形成されたSDカード等に対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。また、上記した実施の形態においては、本発明をカードの接点パッドとコネクタのコンタクト端子とを接触させて信号の授受を行う接触式のカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。カード装着位置において、光学式や磁気式の信号読み出し書込み部材によってカードとコネクタとの信号の授受を行う非接触式のカード用コネクタに適用しても良い。
【0068】
また、上記した実施の形態においては、本発明を1種類のカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。2種類以上のカードに対応可能なコンバイン型のカード用コネクタや、3種類以上のカードに対応可能なカード用コネクタに適用してもよい。
【0069】
また、上記した実施の形態においては、保持部としての保持片が抜け止め部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。保持片は、抜け止め部材によって抜け止め位置と退避位置とに移動される構成であればよく、抜け止め部材と別体に形成されていてもよい。
【0070】
また、上記した実施の形態においては、連結部がスライド部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。連結部は、スライド部材のスライドに伴って抜け止め部材を連動させるものであればよく、スライド部材と別体に形成されていてもよい。
【0071】
また、上記した実施の形態においては、スライド部材及び抜け止め部材がカム機構を介して連動する構成としたが、この構成に限定されるものではない。スライド部材及び抜け止め部材は、どのような構成で連動してもよい。また、抜け止め部材は、スライド部材の挿入方向のスライドのみに連動する構成としてもよいし、スライド部材の排出方向のスライドのみに連動する構成としてもよい。
【0072】
また、上記した実施の形態においては、抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して揺動される構成としたが、この構成に限定されるものではない。抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して、スライド方向に直交するカード用コネクタの幅方向にスライドして、保持部を保持位置に移動させる構成としてもよい。
【0073】
また、上記した実施の形態においては、カード用コネクタは、弾接部として片持ちのバネ片を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。弾接部は、駆動面に対して弾接し、保持部を抜け止め位置に移動させる構成であればよく、例えば、両持ちのバネ片であってもよい。
【0074】
また、上記した実施の形態においては、カード用コネクタは、駆動面として傾斜面を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。駆動面は、弾接部に弾接し、保持部を抜け止め位置に移動させる構成であればよく、例えば、湾曲面であってもよい。
【0075】
また、上記した実施の形態においては、カード用コネクタは、抜け止め部材にバネ片を設け、連結部に駆動面を設ける構成としたが、この構成に限定されるものではない。カード用コネクタは、抜け止め部材に駆動面を設け、連結部にバネ片を設ける構成としてもよい。
【0076】
また、上記した実施の形態においては、バネ片は、金属板により抜け止め部材と一体に形成される構成としたが、この構成に限定されるものではない。バネ片は、樹脂製の抜け止め部材にインサート成形される構成としてもよい。
【0077】
また、上記した実施の形態においては、カード用コネクタは、カードの排出時に、カードに押圧されて抜け止め部材の抜け止めを解除する構成としたが、この構成に限定されるものではない。カードの排出時においても、弾接部と駆動面との弾接により抜け止め部材が駆動される構成としてもよい。
【0078】
また、上記した実施の形態においては、カード用コネクタは、保持部として片持ちの保持片を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。保持部は、カードを抜け止め保持する機能を有すればどのような構成であってもよい。
【0079】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができ、さらに、カードの挿入方向における寸法のばらつきを吸収して抜け止めを行うことができるという効果を有し、特に、SIMカード用のカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 カード用コネクタ
2 コネクタ本体(ハウジング)
3 カバー(ハウジング)
4 装着口
6 スライド部材
7 排出バネ
8 ラッチピン
9 抜け止め部材
26 ストッパ
32 連結部
33 傾斜面(駆動面)
43 バネ片(弾接部)
44 保持片(保持部)
45 規制片
48 第一の規制部
49 第二の規制部
51 カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの装着空間を形成するハウジングと、
前記カードの挿入方向及び排出方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記カードの装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、前記装着位置からの更なる押し込みにより排出位置に戻されるスライド部材と、
前記スライド部材に設けられた連結部を介して前記スライド部材のスライドに連動され、前記カードを抜け止め保持する保持部を、前記カードを抜け止めする抜け止め位置と、前記抜け止め位置から退避する退避位置との間で移動させる抜け止め部材とを備え、
前記抜け止め部材及び前記連結部のいずれか一方には弾接部が設けられ、いずれか他方には前記弾接部に弾接して前記抜け止め部材を駆動する駆動面が形成され、
前記抜け止め部材は、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドにより前記弾接部と前記駆動面とが弾接されて、前記保持部を前記抜け止め位置に移動することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記抜け止め部材は、前記スライド部材の前記排出位置へのスライドにより前記保持部に前記カードを当接させて、前記保持部を前記退避位置に移動することを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記抜け止め部材は、金属板からなり、前記弾接部を一体形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、
前記連結部は、前記ストッパを迂回するようにして、前記スライド部材から排出方向に延び、前記カードの装着口の近傍において前記抜け止め部材を前記スライド部材のスライドに連動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記抜け止め部材は、前記ハウジングに揺動可能に支持されており、前記弾接部と前記駆動面との弾接により前記スライド部材のスライドが変換されて、前記保持部を揺動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記駆動面は、前記抜け止め部材及び前記連結部のいずれか一方の側面に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項7】
前記連結部は、前記スライド部材が前記排出位置にある場合に、前記保持部の前記抜け止め位置への移動を規制する第一の規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項8】
前記連結部は、前記スライド部材が前記装着位置にある場合に、前記保持部の退避位置への移動を規制する第二の規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のカード用コネクタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−171142(P2011−171142A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34535(P2010−34535)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】