説明

カード用コネクタ

【課題】カード接続端子とコンタクト端子の接触不良を防止し、接触信頼性のあるカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カードを挿入するカード挿入口が前面に開口した箱状のハウジングと、ハウジングに設けられ挿入したカードの接続端子との電気的接続を行うための複数のコンタクト端子と、ハウジングに設けられ挿入したカードの先端面と接触し、挿入する押圧力を解除した場合にカードを排出する方向に僅かだけ押し戻すためのバネと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリーカード等のカード型の記録媒体をパソコン、携帯電話機、デジタルカメラ等の電子機器に接続するためのカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリーカード等をスライドさせて挿入するカード用コネクタとしては、カードを受容してコネクタハウジング内を、カードの挿抜方向に摺動するスライドプレートを有し、側縁に切欠きを有するカードが、スライドプレートに保持された状態で、この切欠きとコネクタハウジングに取り付けられたロック部材即ち線状のばねの突起とが係合して、コネクタハウジング内に係止されるようになっているものが代表的である。
【0003】
例えば特許文献1においては、片持ち支持の金属板バネを用いたロック部材が、該ロック部材の先端部を長さ方向に沿って曲げた山形状の係合部が、該カードコネクタ上面を覆う金属カバーの孔内に突出する突起を有し、該突起がカードの無理抜きにより金属カバーに引掛かった後、該金属カバーの下側に潜込み、該係合部がカードの切欠きから外れるようなカードコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−287438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のメモリーカード等をスライドさせて挿入する構造のカード用コネクタにおいては、カードをコネクタに挿入する場合、カードの先端面が、コネクタ内部に設けられている端面にぶつかり、それ以上カードが奥方向に挿入できない事を認識するのでカードを挿入するための力を解除する。
【0006】
従来のカード用コネクタは、挿入する力を解除した後にカードは固定されてカードの移動は起きないで一連の挿入動作は終了する。これらのカード挿入動作の際には、カードの端子とコネクタに設けられたコンタクト端子の接触部付近には、カード表面に付着していた埃等の異物は、コンタクトがカード表面を摺動したことで、かき集められおり、カード接続端子とコネクタ端子との接触不良を起こす問題があった。
【0007】
また特許文献1に記載されている方法は、カードのロックを確実にできるものであるが、カード端子とコンタクト端子の接触不良を防止する構造ではない。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、カード接続端子とコンタクト端子の接触不良を防止し、接触信頼性のあるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るカード用コネクタは、カードを挿入するカード挿入口が前面に開口した箱状のハウジングと、ハウジングに設けられ挿入したカードの接続端子との電気的接続を行うための複数のコンタクト端子と、ハウジングに設けられ挿入したカードの先端面と接触し、挿入する押圧力を解除した場合にカードを排出する方向に僅かだけ押し戻すためのバネと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、カード端子とコンタクト端子の接触不良を防止するカード用コネクタを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るカード用コネクタとカードを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカード用コネクタにカードを挿入した状態を示す図である。
【図3】カードの先端面Aとカード用コネクタの端面Bが接触した時のコンタクト端子と接続端子の接触部を示す図である。
【図4】カードを挿入する力を解除した場合のカードとカード用コネクタの位置関係を示す図である。
【図5】カードが片持ち板バネにより押し戻された時のコンタクト端子と接続端子の接触部を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るカード用コネクタに両持ち板バネを側面方向に設置した状態を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るカード用コネクタにカードを挿入した図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るカード用コネクタに両持ち板バネを側面方向に設置した状態を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るカード用コネクタにカードを挿入した図である。
【図10】従来のカード用コネクタを示す図である。
【図11】従来のカード用コネクタにカードを挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施の形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、従来のカード用コネクタについて、図10を参照して説明する。図10(a)は、従来のカード用コネクタ9とカード2を上面からみた図であり、図10(b)は、従来のカード用コネクタ9とカード2のD−D線断面図である。
【0014】
カード用コネクタ9は、カード2を挿入するカード挿入口15が前面に開口した箱状のハウジングである。カード用コネクタ9は、樹脂製のモールド4とモールド4に上方から被着される金属板である板金カバー3と挿入したカード2との電気的接続を行うためのコンタクト端子5とを備える。
【0015】
板金カバー3は、図示しないプリント配線基板に対する半田付け用の脚部が複数設けられている。
【0016】
コンタクト端子5は、カード2の各接続端子7と電気的に接続する。コンタクト端子5は、金属薄板を打抜き加工及び曲げ加工して、側から見た形状が略「逆へ」の字形に形成された細幅の板バネからなる。コンタクト端子5は、後部がモールド4の底部に固定され、前部がモールド4の底部の上に上下に弾性変位可能に突出されている。
【0017】
このような片持ち支持の板バネを用いたコンタクト端子5は、後端部に図示しないプリント配線基板に対する半田付け用の脚部13が設けられ、前端部にカード2の接続端子7に弾接触される半月状の接触部が設けられている。
【0018】
カード2は、一般的なメモリーカードであり、カード2裏面側には内部のデータを読書きするための接続端子(接触面)7が並設されている。本実施形態においては、一例として端子が下側にくるものとするため破線で記載する。カード2は、例えばSDカード(登録商標)やメモリースティック(登録商標)などの公知のものである。
【0019】
図11は、カード用コネクタ9にカード2を挿入した状態を示す図である。
【0020】
カード用コネクタ9にカード2を挿入した場合、カード先端面Aとコネクタ端面Cが接触し、それ以上カードを挿入できない図11に示す状態になる。次にカード用コネクタ9の最奥部までカード2を挿入して挿そうとする力を解除した場合は、カード2は挿入した位置から動くことはない。つまり、カード2挿入動作終了後は、図11の状態が変わることはない。
【0021】
つまり、図10に示した従来のコネクタ9は、図3に示すように接触部のすぐ脇に異物8が堆積し、異物8と接触したままの状態となる。従って、コンタクト端子5は簡単に異物8に乗り上げる可能性があり、それによってカード2の接続端子7とコンタクト端子5の接触が不良になる危険性があるため、カード2のコンタクト端子5の接触部付近には異物8等が無いように綺麗にしておく必要があった。
【0022】
ここで、本発明の概要について説明する。本発明は、メモリーカード等をスライドさせて挿入する構造のカード用コネクタにおいて、カードの端面が突き当たる部分のコネクタ端面にカードを僅かに押し戻すバネを設けたことを特徴とする。これのバネにより、一度コネクタ端面に突き当たったカードがバネの復元力によりカード排出方向に僅かに押し戻ることで、カードの接続端子とコンタクト端子の接触部付近に溜まる異物の位置が接触部から離れることで接点の接触信頼性を向上することが可能となる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る、カード用コネクタ1とカード2を示す図である。図1(a)は、カード用コネクタ1とカード2を上面からみた図であり、図1(b)は、カード用コネクタ1とカード2のE−E線断面図である。
【0024】
カード用コネクタ1は、カード2を挿入するカード挿入口15が前面に開口した箱状のハウジングである。
【0025】
本カード用コネクタ1は、カード2を挿入した場合にカード2の脱落を防止するための板金カバー3、樹脂製のモールド4、挿入したカード2との電気的接続を行うためのコンタクト端子5、挿入したカード2の先端面Aと接触する片持ち板バネ6と、を備えて構成される。
【0026】
板金カバー3は、図示しないプリント配線基板に対する半田付け用の脚部が複数設けられている。
【0027】
コンタクト端子5は、カード2の各接続端子7と電気的に接続する。コンタクト端子5は、金属薄板を打抜き加工及び曲げ加工して、側から見た形状が略「逆へ」の字形に形成された細幅の板バネからなる。コンタクト端子5は、後部がモールド4の底部に固定され、前部がモールド4の底部の上に上下に弾性変位可能に突出されている。
【0028】
本実施形態における片持ち支持の板バネを用いたコンタクト端子5は、後端部に図示しないプリント配線基板に対する半田付け用の脚部13が設けられ、前端部にカード2の接続端子7に弾接触される半月状の接触部が設けられている。
【0029】
片持ち板バネ6は、コネクタ端面Bより凹んだ部分に設けられている。図1に示したように片持ち板バネ6の先端はコネクタ端面Bよりも右に飛び出ている。
【0030】
カード2は、一般的なメモリーカードであり、カード2裏面側には内部のデータを読書きするための接続端子(接触面)7が並設されている。本実施形態においては、一例として端子が下側にくるものとするため破線で記載する。カード2は、例えばSDカード(登録商標)やメモリースティック(登録商標)などの公知のものである。
【0031】
図2は、カード用コネクタ1にカード2を挿入した状態を示す図である。図2(a)は、カード用コネクタ1とカード2を上面からみた図であり、図2(b)は、カード用コネクタ1とカード2のF−F線断面図である。
【0032】
カード用コネクタ1にカード2を挿入した場合、カード先端面Aとコネクタ端面Bが接触し、それ以上カードを挿入できない図2に示す状態になる。この時、片持ち板バネ6はカード先端面Aに押圧され変位した状態になる。
【0033】
また、カード2は接続端子7と接触しているコンタクト端子5に押し上げられて、カード2の上に位置する板金カバー3とに挟み込まれて簡単には脱落しない(抜け出ない)ようになっている。
【0034】
ただし、この構造だけではカードを固定することは出来ないため強い衝撃などによりカード2は脱落する可能性がある。そこで、図示しないコネクタ以外のパーツにて、例えば、壁を立てて脱落しないように固定する。
【0035】
図3は、カード2の先端面Aとカード用コネクタ1の端面Bが接触した時のコンタクト端子5と接続端子7の接触部を示す図である。カード2を挿入する際に接続端子7の表面に付着している異物8は、コンタクト端子5との接触点で擦られてかき集められることになる。
【0036】
図4は、カード2を挿入する力を解除した場合のカード2とカード用コネクタ1の位置関係を示す図である。図4(a)は、カード用コネクタ1とカード2を上面からみた図であり、図4(b)は、カード用コネクタ1とカード2のG−G線断面図である。
【0037】
次に、カード2を挿入して挿そうとする力を解除した場合は、カード2は片持ち板バネ6の復元する力により図2に示した位置からカード挿入口15側に少し押し戻されることになる。そしてこの位置でコンタクト端子5と板金カバー3とによりカード2は固定される。
【0038】
なお、片持ち板バネ6がカード2を押し戻す力を、コンタクト端子5がカード2を押し上げて固定しようとする力よりも強くなるように設定すると良い。
【0039】
上記のカード2を挿入した状態から、カード2を完全に抜き出す時には、カード2の後端を持って引き抜くことで行う。
【0040】
図5は、カード2が片持ち板バネ6により押し戻された時のコンタクト端子5と接続端子7の接触部を示す図である。
【0041】
図3で示した異物8は、コンタクト端子5と接触していたが、カード2が少し押し戻されたことにより、コンタクト端子5と接触しない位置に移動する。この動作によってコンタクト端子5と接続端子7の接触部と異物8とは位置が離れるために接触不良を防止することが出来る。
【0042】
なお、上記の実施形態において、例として、カード中央部に配置したバネの形状を片持ち板バネとして説明したが、これに限定されることではなく、例えばコイルバネやカードを押し戻す反発力を持った弾性体としても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0043】
次に、第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0044】
図6は、カード2を押し戻すために、両持ち板バネ10を側面方向に設置した状態を示す図である。また図7は、カード用コネクタ1にカード2を最奥部まで挿入した後、挿そうとする力を解除した場合のカード2とカード用コネクタ1の位置関係を示す図である。
【0045】
本実施形態においては、カード2を押し戻すために上から見た形状が略「へ」の字形に形成された両持ち板バネ10を側面に設けた。カード先端面Aがカード用コネクタ1の最奥部まで挿入された場合、カード2の先端部にてバネ10は押圧されて変位した状態になる。
【0046】
その後、カード2を挿入する力を解除した場合は、両持ち板バネ10が元に戻ろうとする力でカード2を引き抜く方向(カード挿入口15側)に少しだけ押し戻すことで、コンタクト端子5と接続端子7の接触部に存在する異物8はコンタクト端子5と接触しない位置に移動する。
【0047】
この動作によってコンタクト端子5と接続端子7の接触部と異物8とは位置が離れるために接触不良を防止することが出来る。
【0048】
次に、第3の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0049】
図8は、カード2に切欠き凹部11を設け、カード用コネクタ1にカード2固定用の両持ち板バネ12を設けた図である。また図9は、カード用コネクタ1にカード2を最奥部まで挿入した後、挿そうとする力を解除した場合のカード2とカード用コネクタ1の位置関係を示す図である。
【0050】
図6及び図7と相違するのは、さらにカード2に切欠き凹部11を設けて、カード用コネクタ1には、切欠き凹部11がくる位置に両持ち板バネ12を設置することで、カード2が抜ける(脱落する)ことを防止する効果が得られる。
【0051】
すなわち、両持ち板バネ10によりカード2が、図7に示した少し押し戻された位置に切欠き凹部11と嵌合う両持ち板バネ12を設けることで、カード2がカード挿入口15側に抜け出ることを防止できる。
【0052】
また、カード2を挿入する力を解除した場合は、両持ち板バネ10が元に戻ろうとする力でカード2を引き抜く方向(カード挿入口15側)に少しだけ押し戻すことで、コンタクト端子5と接続端子7の接触部に存在する異物8はコンタクト端子5と接触しない位置に移動する。
【0053】
この動作によってコンタクト端子5と接続端子7の接触部と異物8とは位置が離れるために接触不良を防止することが出来る。
【0054】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定するものではなく、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【0055】
本発明に係るカード用コネクタのバネは、ハウジングの最奥部の中央の凹んだ部分に設けられていることを特徴とする。
【0056】
また本発明に係るカード用コネクタのバネは、片持ちの板バネであることを特徴とする。
【0057】
また本発明に係るカード用コネクタのバネは、ハウジングの最奥部の側面に設けられている両持ちの板バネであることを特徴とする。
【0058】
また本発明に係るカード用コネクタのカードは、挿入方向に対して側面に切欠き凹部を有し、ハウジングは、挿入したカードの切欠き凹部と嵌合ってカードを固定する板バネを備えることを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、カード用コネクタなどの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 カード用コネクタ
2 カード
3 板金カバー
4 モールド
5 コンタクト端子
6 片持ち板バネ
7 接続端子
8 異物
9 従来のカード用コネクタ
10 両持ち板バネ
11 切欠き凹部
12 両持ち板バネ
13 脚部
15 カード挿入口
A カード先端面
B コネクタ端面
C 従来のコネクタ端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを挿入するカード挿入口が前面に開口した箱状のハウジングと、
前記ハウジングに設けられ挿入した前記カードの接続端子との電気的接続を行うための複数のコンタクト端子と、
前記ハウジングに設けられ挿入した前記カードの先端面と接触し、挿入する押圧力を解除した場合に前記カードを排出する方向に僅かだけ押し戻すためのバネと、
を有することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記バネは、前記ハウジングの最奥部の中央の凹んだ部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記バネは、片持ちの板バネであることを特徴とする請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記バネは、前記ハウジングの最奥部の側面に設けられている山形状の両持ちの板バネであることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記カードは、挿入方向に対して側面に切欠き凹部を有し、
前記ハウジングは、挿入した前記カードの切欠き凹部と嵌合ってカードを固定する山形状の板バネを備えることを特徴とする請求項4に記載のカード用コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−96479(P2011−96479A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248602(P2009−248602)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】