説明

カード用コネクタ

【課題】安価な構成で、十分な強度を確保しつつ、薄型化を図ることができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】カード46の挿入口4が形成され、カード46に接続する接続端子11が埋設されたハウジング2と、カード46の挿入方向に、カード46と共にハウジング2内をスライドするスライド部材6と、カード46の排出方向に、スライド部材6を付勢する排出バネ7と、排出バネ7の付勢力に抗して、ハウジング2内にてスライド部材6を前記カード46の装着位置でロックするロック機構23、24とを備え、ハウジング2には、開口が形成されており、開口にスライド部材が摺接する金属部材21を設ける構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、マイクロSDカード等の薄型カードに対応したカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カードの薄型化に伴い、カード用コネクタの薄型化が求められている。一般にカード用コネクタにおいては、複数の端子を電気的に分離して配置するために樹脂性のハウジングが用いられており、この樹脂製のハウジングの底壁の厚みを薄くすることにより、カード用コネクタの薄型化が図られている。このような樹脂製のハウジングは、溶融させた合成樹脂を金型内に射出し充填して固化させることにより成形されるが、薄肉にしようとすると金型内に樹脂が拡がりきる前に固まるため、薄型のハウジングを成形することが困難となっていた。
【0003】
また、樹脂によりハウジングの底壁を薄く成形できたとしても、十分な強度を得ることができず、例えば、リフロー時にハウジングが変形し易くなるという問題があった。この問題を解決するカード用コネクタとして、ハウジングの底壁全体を薄い金属板で構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカード用コネクタは、複数の接続端子を保持した樹脂ブロックをハウジングの金属製の底板に配置して組み立てることにより、十分な強度を確保しつつ薄型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−217713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来のカード用コネクタにおいては、ハウジングの底壁全体が金属製の底板により形成されるため、複数の接続端子をハウジングに一体化することができず、部品点数が増加すると共に、組立が煩雑となり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、安価な構成で、十分な強度を確保しつつ、薄型化を図ることができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、カードの挿入口が形成され、前記カードに接続する接続端子が埋設されたハウジングと、前記カードの挿入方向に、前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、前記カードの排出方向に、前記スライド部材を付勢する排出バネと、前記排出バネの付勢力に抗して、前記ハウジング内にて前記スライド部材を前記カードの装着位置でロックするロック機構とを備え、前記ハウジングには、開口が形成されており、前記開口に前記スライド部材が摺接する金属部材を設けていることを特徴とする。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材の前記スライド部材が摺接する部分を、前記ハウジングにおいて前記カードが挿入される部分の高さよりも低い位置にしている。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記開口が形成されている部分での厚みと前記金属部材の厚みの差を利用して、前記スライド部材のスライドをガイドする。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材は、折り曲げられた屈曲部を有し、前記金属部材の屈曲部は、前記スライド部材がスライドする方向に沿うように前記ハウジング内に埋設されている。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ハウジングには、前記スライド部材のスライドをガイドする側壁及びガイド壁が設けられ、前記金属部材における前記側壁及び前記ガイド壁に沿う両端部が前記ハウジングに埋設されている。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材は、折り曲げられた屈曲部を有し、前記金属部材の屈曲部は、前記側壁及び/または前記ガイド壁内に埋設されている。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材の屈曲部は、複数の屈曲部である。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材は、前記ハウジングの開口の周囲に埋設されて該開口の周囲を補強する補強部を有する。
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記補強部は、前記金属部材の端部から折り曲げられた屈曲部からなる。
【0008】
この構成によれば、ハウジングの底壁に、接続端子が埋設されると共に、部分的に金属部材が埋設されるため、ハウジングを薄型化した場合であっても、接続端子を別体にすることなく、ハウジングの強度を高めることができる。したがって、部品点数を増加しないため、組立を単純化して製造コストを低減することができる。また、スライド部材やロック機構によってカード用コネクタ全体の厚み方向の寸法が規定される場合には、スライド部材が摺接する部分に金属部材が埋設されるため、薄型の金属部材を使用することにより強度を確保した状態でカード用コネクタを薄型化することができる。さらに、スライド部材が排出バネにより、ハウジングの底壁側に押し下げられつつ排出方向に付勢される場合には、スライド部材の押し下げを金属部材で受けるため、リフロー時の変形を防止することができる。
【0009】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ロック機構は、前記スライド部材または前記ハウジングに形成されたハートカム溝と、前記ハートカム溝を摺動するラッチピンとを有し、前記ハートカム溝と前記ラッチピンとの摺動位置に応じて前記スライド部材のロックおよびロック解除を切り換えるプッシュ−プッシュ式の排出構造を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スライダ部材にハートカム溝を形成可能な厚みを持たせると共に、ラッチピンの収容空間を確保したカード用コネクタを、強度を確保した状態で薄型化することができる。
【0011】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材は、グランド接続部を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、スライドと金属部材との摺接により発生する静電気をグランドに逃がすことができる。また、付勢バネと金属部材とが接触する場合には、付勢バネで発生する静電気を逃がすことができる。
【0013】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記金属部材は、グランド接続部を有し、前記ハウジングには、前記接続端子と前記挿入口との間の領域を通って前記金属部材のグランド接続部に延びる延長部が埋設されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、延長部により挿入口からのノイズを低減し、接続端子を介してカード用コネクタとカードとの信号授受を安定して行うことができる。
【0015】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記延長部は、前記ハウジングの挿入口側で半田付けされる半田付け部を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、半田付け部が半田付けされることにより、カード用コネクタの挿入口側の強度を高めて、カード用コネクタの反りを防止することができる。
【0017】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記延長部は、前記ハウジングの挿入口側で前記挿入口から挿入されるカードに接触する接触子を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、カードの挿入時に、ハウジングの挿入口側でカードと接触子とが接触することにより、カードに帯電した静電気をグランドに逃がし、カードの誤動作を防止することができる。
【0019】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ハウジングには、挿入方向に向かって、前記延長部と、前記接続端子と、前記カードの装着を検出するスイッチとが配置され、前記延長部、前記接続端子、および前記スイッチは、樹脂により区分されたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、延長部、接続端子およびスイッチが樹脂により電気的に区分されるため、カード用コネクタの電気的な誤作動を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プッシュ−プッシュ式の排出構造を備えたカード用コネクタにおいて、安価な構成で、十分な強度を確保しつつ、薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、ハウジングの上面図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、ハウジングに埋設された導体部分の上面図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタに対するカードの装着動作の説明図である。
【図6】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が適用されるカード用コネクタにおいては、カードの薄型化に伴い、薄型化が求められている。このようなカード用コネクタとしては、プッシュ−プッシュ式の排出構造を備えたものが知られている。このカード用コネクタは、カードの挿入/排出方向にカードと共にスライドするスライド部材を有し、このスライド部材に形成されたハートカム溝をラッチピンが摺動することにより、スライド部材を介してカードの挿入位置、排出位置が決定される。
【0024】
プッシュ−プッシュ式のカード用コネクタにおいては、スライド部材またはハウジングのいずれか一方にハートカム溝を形成してラッチピンの一端をカム溝の壁と係合させて選択的にロックし、ラッチピンの他端をハートカム溝が設けられていない他方の部材に軸支する構造を有している。スライド部材とハウジングに掛け渡したラッチピンを介して掛け止めするため、ラッチピンが抜け出ないようにスライド部材にラッチピンの収容空間が必要となる。また、スライド部材にハートカム溝を設けるものでは、高低差のあるハートカム溝を形成可能な厚みをスライド部材に持たせる必要がある。そのため、排出構造に合わせて厚み方向の寸法が設定される。したがって、プッシュ−プッシュ式のカード用コネクタを薄型化する際には、ハウジングの底壁においてスライド部材がスライドするスライド領域の厚みを薄く成形することが重要となる。
【0025】
また、スライド部材は、排出バネにより一部がハウジングの底壁側に押し下げられた状態で、排出方向に付勢されている。この場合、スライド部材の押し下げにより、リフロー時にハウジングの底壁のスライダに摺接する部分が変形し易くなるため、この部分に十分な強度を確保する必要があった。本発明の骨子は、プッシュ−プッシュ式の排出構造を備えたカード用コネクタにおいて、ハウジングの底壁のスライダに摺接する部分を金属薄板により構成することにより、十分な強度を確保しつつ、薄型化を実現することである。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をマイクロSDカード用のカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0027】
まず、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカードについて説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るカードの平面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図を示している。
【0028】
図6(a)、(b)に示すように、カード46は、いわゆるマイクロSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。カード46の一側部は、平面視において、挿入方向の先端側の略半部が後端側の略半部よりも幅狭となる段状に形成されている。また、カード46の一側部には、部分的に切欠部47が形成されており、この切欠部47により後述するスライド部材6に係合する係合部48が形成されている。また、カード46は、先端部から後端部近傍にかけて略一定の厚みであり、後端部において厚みが大きくなる段状に形成されている。
【0029】
カード46の先端部の厚みは、カード用コネクタ1の挿入口4に挿入可能な大きさに形成され、カード46の後端部の厚みは、カード用コネクタ1の挿入口4に挿入不能な大きさに形成されている。したがって、カード46は、先端側から挿入されたときのみ、カード用コネクタ1に装着されるため、カード46の誤挿入が防止される。また、カード46の先端側の背面には、カード用コネクタ1の複数の接続端子11に接触する図示しない複数のパッドが設けられている。
【0030】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの分解斜視図である。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口された合成樹脂製のハウジング2と、ハウジング2の上面の開口に装着されてカードの装着空間を形成する金属製のカバー3とを備え、ハウジング2およびカバー3が組み合わされて挿入口4を有する箱状体をなしている。ハウジング2の底壁2aの中央部分には、複数の接続端子11が設けられている。底壁2aに設けられた各接続端子11は、底壁2aの中央部分から奥壁2bに向かって延在している。
【0032】
ハウジング2の奥壁2bには、カード46の装着検出用のスイッチ5が設けられている。スイッチ5は、奥壁2b側から挿入口4側に折り曲げられたバネ部13と、バネ部13の自由端に設けられたスイッチ頭部14とを有している。スイッチ頭部14の下面には、バネ部13に連なる可動接点部が露出されており、この可動接点部が底壁2aに設けられた固定接点部15に離接可能に構成されている。
【0033】
スイッチ5は、カード46の挿入により奥壁2b側に押し込まれると、スイッチ頭部14が固定接点部15上を乗り上がり、カード46の装着を検出する。この場合、固定接点部15は、挿入口4側から奥壁2b側に向けて高くなるように傾斜しているため、スイッチ5が奥壁2b側に押し込まれるのに伴って、可動接点部との接触性が向上される。
【0034】
ハウジング2の一の側壁2cには、側壁2cに沿ってスライド可能な合成樹脂製のスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁2bに当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。また、ハウジング2の底壁2aには、側壁2cと共にスライド部材6を挿入方向にガイドするガイド壁2eが、上面から僅かに突出して設けられている。
【0035】
ガイド壁2eと側壁2cとで形成されるスライド部材6のスライド領域には、金属板21が設けられている。金属板21は、スライド部材6のスライド方向に延在しており、カード用コネクタ1の挿入方向における撓みに対する剛性を高めている。金属板21は、ハウジング2の底壁2aの厚みよりも薄く形成されており、底壁2aにおいてカード46が挿入される部分よりも低い位置でスライド部材6をスライド可能としている。金属板21はガイド壁2eと側壁2cとで囲まれたハウジング2の開口を塞ぐように嵌め込んで取り付けることも可能だが、合成樹脂性のハウジング2を形成するときに、金属板21をインサート成形によって一体に埋設することが可能である。
【0036】
また、金属板21は、樹脂材料よりも摩擦抵抗が低いため、樹脂上をスライド部材6にスライドさせる構成と比較して、スライド部材6を円滑にスライドさせることが可能となる。さらに、スライド部材6が、排出バネ7によりハウジング2の底壁2a側に押し下げられた状態で付勢される場合においても、スライド領域の強度が金属板21により確保されるため、リフロー時の変形を防止することが可能となる。
【0037】
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入および排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6の前端側にはハートカム溝23が形成されており、このハートカム溝23と奥壁2bに設けられたラッチピン24によりスライド部材6の位置が規定される。ラッチピン24は、側壁2cに沿って延在し、両端が底壁2aに向かって略直角に屈曲している。ラッチピン24の一端は、奥壁2bに回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝23上に摺動される。
【0038】
ハートカム溝23は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてラッチピン24の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁2b近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン24の他端がハートカム溝23の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ラッチピン24とハートカム溝23との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ラッチピン24とハートカム溝23は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0039】
この場合、スライド部材6にハートカム溝23を形成可能な厚みを持たせると共に、スライド部材6の上方にラッチピン24の収容空間が形成されるため、カード用コネクタ1の設計上、この部分に最大の高さが必要となる。このため、カード用コネクタ1は、スライド領域を基準として厚みが設計されるが、上記したように、金属板21によりスライド部材6が低い位置でスライドされるため、カード用コネクタ1を薄型化することが可能となる。
【0040】
また、スライド部材6の後端側には、カード46の係合部48に係合される係合凹部26が形成されている。この係合凹部26にカード46の係合部48が係合されることで、スライド部材6がカード46と一体的にスライドされる。また、係合凹部26は、ハウジング2の中央に向かって僅かに突出する爪部27を有している。爪部27は、係合凹部26に係合部48が係合されると、カード46の切欠部47に入り込み、カード46の排出方向の抜けを抑制する。
【0041】
カバー3は、金属性の板材を折り曲げて形成されており、上面の一側方にはラッチピン24を押えるピン押え31が形成されている。ピン押え31は、底壁2a側に切り起された片持ちバネであり、ラッチピン24の中間部分を下方に押圧してラッチピン24の他端をハートカム溝23に押し付けている。また、カバー3上面の挿入口4側の略半部には、カード46の飛び出し防止用の一対の制動片32が形成されている。一対の制動片32は、底壁2a側に僅かに切り起された片持ちバネであり、カード46の上面に接触して、カード46の排出時の飛び出しを抑制している。
【0042】
図3および図4を参照して、ハウジングおよびハウジングに埋設された導体部分について詳細に説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るハウジングの上面図である。図4は、本発明の実施の形態に係るハウジングに埋設された導体部分の上面図である。
【0043】
図3に示すように、ハウジング2は、スライド領域に対応して開口が形成されており、この開口に略矩形状の金属板21が露出された状態で埋設されている。金属板21の短手方向の両端部には、上方に折り曲げられた複数の屈曲部34が挿入口4側から奥壁2bとの間を縦断するように整列して複数形成されている(図4参照)。この複数の屈曲部34は、側壁2c内およびガイド壁2e内に埋設されており、ハウジング2の開口の周囲に形成された側壁2cおよびガイド壁2eを補強している。この埋設にあたっては、射出成形機に取り付けられた金型内に金属板21を保持した状態で、溶融された合成樹脂を射出成形して金型内に充填し固化することでハウジング2と一体に成形するインサート成形によって製造することができる。
【0044】
側壁2cの挿入口4側の略半部には、スライド部材6の揺動を許容する凹状の逃げ部35が形成されている。この逃げ部35によってスライド部材6の揺動が許容されることにより、排出位置におけるカード46の抜き出しが許容され、装着位置におけるカード46の抜き出しが禁止される。なお、スライド部材6の揺動動作の詳細については、後述する。
【0045】
ハウジング2の奥壁2bには、排出バネ7の一端を支持する凸部36が設けられている。この凸部36の下方は、金属板21を避けるように開口37が形成されている。この開口37には、ハウジング2の成形時に、奥壁2bに凸部36を形成するための金型が設置される。
【0046】
また、図3および図4に示すように、ハウジング2には、金属板21の挿入口4側から幅方向に延びる第1の延長部41と、第1の延長部41の先端側から奥壁2bに向かって延びる第2の延長部42とが埋設されている。第1の延長部41は、複数の接続端子11と挿入口4との間の領域に配置され、第2の延長部42は、複数の接続端子11の側方に配置される。
【0047】
すなわち、第1、第2の延長部41、42は、金属板21と共に、複数の接続端子11の三方を囲うように延在している。この構成により、カード用コネクタ1の挿入方向および幅方向の撓みに対する剛性を高めると共に、挿入口4側からのノイズを低減し、複数の接続端子11を介してカード用コネクタ1とカード46との信号授受を安定させることが可能となる。
【0048】
第1の延長部41には、延在方向の途中部分から、ハウジング2の挿入口4側に形成された開口39に向けて突出する一対の半田付け部43が設けられている。一対の半田付け部43は、グランドに接続され、カード用コネクタ1内で発生する静電気をグランドに逃がしている。また、半田付け部43の半田付けにより、カード用コネクタ1の挿入口4側の幅方向の撓みに対する剛性を高めて、カード用コネクタ1の反りを防止することが可能となる。
【0049】
また、第1の延長部41は、挿入口4に対して露出されており、延在方向の途中部分から挿入口4に向けて延びる一対の接触子44が設けられている。一対の接触子44は、カード46の挿入時に、幅方向に延在する第1の延長部41と共にカード46の先端部分に接触してカード46に帯電した静電気を、半田付け部43を介してグランドに逃がしている。この場合、一対の接触子44および第1の延長部41により2段階でカード46が除電されるため、高い除電効果を得ることが可能となる。よって、カード46に帯電した静電気によるカード46の誤動作を防止することが可能となる。
【0050】
さらに、第1の延長部41は、金属板21およびグランド間を接続しているため、金属板21とスライド部材6との間で発生する静電気を、半田付け部43を介してグランドに逃がしている。また、金属板21には、排出バネ7も接触されているため、排出バネ7の伸縮によって発生する静電気も、半田付け部43を介してグランドに逃がされる。このように、カード用コネクタ1に帯電する静電気もグランドに逃がされるため、カード用コネクタ1の帯電した静電気によるカード46の誤動作を防止することが可能となる。
【0051】
このように構成されたハウジング2において、カード46およびカード用コネクタ1を除電する第1の延長部41、カード46のパッドに接続する複数の接続端子11、カード46の装着を検出するスイッチ5を構成する各導体部分は、絶縁性の樹脂により区分されている。したがって、第1の延長部41、接続端子11およびスイッチ5を構成する導体部分が電気的に区分されるため、カード用コネクタの電気的な誤作動を防止することが可能となる。
【0052】
図5を参照して、カード用コネクタに対するカードの装着動作について説明する。図5は、本実施の形態に係るカード用コネクタに対するカードの装着動作の説明図である。
【0053】
図5(a)に示すように、カード用コネクタ1にカード46が挿入されると、カード46の一側部に形成された係合部48によりスライド部材6の爪部27が側方に押圧される。カード46の係合部48によりスライド部材6の爪部27が押圧されると、スライド部材6がラッチピン24の他端を支点として、ハウジング2の側壁2cに形成された逃げ部35に向けて揺動される。
【0054】
図5(a)の状態から、さらにカード46が押し込まれると、図5(b)に示すように、排出位置においてカード46の係合部48がスライド部材6の係合凹部26に係合される。この場合、スライド部材6の爪部27がカード46の切欠部47に入り込み、カード46の係合部48によるスライド部材6の爪部27に対する押圧が解除されるため、スライド部材6がラッチピン24の他端を支点として、逃げ部35から元の位置に揺動される。
【0055】
この排出位置においては、逃げ部35によりスライド部材6が揺動可能なため、カード46の抜き出しが許容される。具体的には、カード46に対し排出方向に力を加えると、ラッチピン24の他端を支点として、スライド部材6が逃げ部35に向かって揺動される。このスライド部材6の揺動により、カード46の切欠部47からスライド部材6が外れ、カード46の抜き出しが許容される。
【0056】
図5(b)の状態から、さらにカード46が押し込まれると、図5(c)に示すように、ラッチピン24の他端がハートカム溝23の係止部分に係止され、カード46がスライド部材6と共に装着位置に保持される。このとき、スライド部材6は、側壁2cおよびガイド壁2eにより揺動を規制した状態で挿入方向にガイドされる。カード46が装着位置まで挿入されると、スイッチ5が押し込まれて、カード46の装着が検出される。
【0057】
この装着位置においては、側壁2cおよびガイド壁2eによりスライド部材6の揺動が規制されるため、カード46の抜き出しが禁止される。具体的には、カード46に対し排出方向に力を加えても、スライド部材6の揺動が規制されるため、爪部27がカード46の切欠部47から外れず、カード46の抜き出しが禁止される。この場合、側壁2cは、金属板21の複数の屈曲部34により補強されているため、側壁2cの変形が強く抑えられる。したがって、スライド部材6の揺動が強く規制され、装着位置におけるカード46の強引な抜き出しが禁止される。
【0058】
そして、図5(c)の状態から、さらにカード46が押し込まれると、ラッチピン24とハートカム溝23との係止状態が解除されて、スライド部材6が排出バネ7により排出位置に押し戻される。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、樹脂製のハウジング2の底壁2aに、接続端子11が埋設されると共に、部分的に金属板21が埋設されるため、ハウジング2を薄型化した場合であっても、接続端子11を別体にすることなく、ハウジング2の強度を高めることができる。したがって、部品点数を増加しないため、組立を単純化して製造コストを低減することが可能となる。また、スライド部材6やラッチピン24によってカード用コネクタ1全体の厚み方向の寸法が規定される場合には、スライド部材6のスライド領域に金属板21が埋設されるため、強度を確保した状態でカード用コネクタ1を薄型化することが可能となる。
【0060】
なお、上記した実施の形態においては、本発明をマイクロSDカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。マイクロSDカード以外にカードに対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態においては、本発明を1種類のカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。2種類以上のカードに対応可能なコンバイン型のカード用コネクタや、3種類以上のカードに対応可能なカード用コネクタに適用してもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、スライド部材のハートカム溝とラッチピンとによりロック機構を構成したが、この構成に限定されるものではない。スライド部材にラッチピンの支点を設けてハウジングにハートカム溝を設ける構成としてもよい。スライダ部材をカードの装着位置にロック可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0063】
また、上記した実施の形態においては、排出バネによりスライド部材をハウジングの底壁側に押し下げつつ排出方向に付勢する構成としたが、この構成に限定されるものではない。排出バネによりスライド部材を排出方向に付勢する構成であればよく、スライド部材を押し下げない構成としてもよい。
【0064】
また、上記した実施の形態においては、金属板に延長部を設ける構成としたが、この構成に限定されるものではない。金属板により、十分な強度を確保しつつ薄型化を図ることができる構成であればよく、延長部を設けない構成としてもよい。
【0065】
また、上記した実施の形態においては、延長部に接触子を設け、延長部と接触子とによりカードを除電する構成としたが、この構成に限定されるものではない。接触子を設けずに延長部だけでカードを除電する構成としてもよいし、接触子のみを露出させて接触子だけでカードを除電する構成としてもよい。
【0066】
また、上記した実施の形態においては、金属板が延長部を介してグランドに接地される構成としたが、この構成に限定されるものではない。金属板がグランドに接地されていればよく、例えば、金属板が直にグランドに接地される構成としてもよい。
【0067】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、安価な構成で、十分な強度を確保しつつ、薄型化を図ることができるという効果を有し、特に、マイクロSDカード等の薄型カードに対応したカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 カード用コネクタ
2 ハウジング
3 カバー
4 挿入口
6 スライド部材
7 排出バネ
11 接続端子
21 金属板
23 ハートカム溝(ロック機構)
24 ラッチピン(ロック機構)
26 係合凹部
27 爪部
34 屈曲部
35 逃げ部
41 第1の延長部(延長部)
42 第2の延長部(延長部)
43 半田付け部
44 接触子
46 カード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの挿入口が形成され、前記カードに接続する接続端子が埋設されたハウジングと、
前記カードの挿入方向に、前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、
前記カードの排出方向に、前記スライド部材を付勢する排出バネと、
前記排出バネの付勢力に抗して、前記ハウジング内にて前記スライド部材を前記カードの装着位置でロックするロック機構とを備え、
前記ハウジングには、開口が形成されており、
前記開口に前記スライド部材が摺接する金属部材を設けていることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記金属部材の前記スライド部材が摺接する部分を、前記ハウジングにおいて前記カードが挿入される部分の高さよりも低い位置にしたことを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記開口が形成されている部分での厚みと前記金属部材の厚みの差を利用して、前記スライド部材のスライドをガイドすることを特徴とする請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記金属部材は、折り曲げられた屈曲部を有し、
前記金属部材の屈曲部は、前記スライド部材がスライドする方向に沿うように前記ハウジング内に埋設されていることを特徴とする請求項3に記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記金属部材の屈曲部は、複数の屈曲部であることを特徴とする請求項4に記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記スライド部材のスライドをガイドする側壁及びガイド壁が設けられ、
前記金属部材における前記側壁及び前記ガイド壁に沿う両端部が前記ハウジングに埋設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項7】
前記金属部材は、折り曲げられた屈曲部を有し、
前記金属部材の屈曲部は、前記側壁及び/または前記ガイド壁内に埋設されていることを特徴とする請求項6に記載のカード用コネクタ。
【請求項8】
前記金属部材の屈曲部は、複数の屈曲部であることを特徴とする請求項7に記載のカード用コネクタ。
【請求項9】
前記金属部材は、グランド接続部を有し、前記ハウジングには、前記接続端子と前記挿入口との間の領域を通って前記金属部材のグランド接続部に延びる延長部が埋設されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項10】
前記延長部は、前記ハウジングの挿入口側で半田付けされる半田付け部を有することを特徴とする請求項9に記載のカード用コネクタ。
【請求項11】
前記延長部は、前記ハウジングの挿入口側で前記挿入口から挿入されるカードに接触する接触子を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のカード用コネクタ。
【請求項12】
前記ハウジングには、挿入方向に向かって、前記延長部と、前記接続端子と、前記カードの装着を検出するスイッチとが配置され、前記延長部、前記接続端子、および前記スイッチは、樹脂により区分されたことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項13】
前記金属部材は、前記ハウジングの開口の周囲に埋設されて該開口の周囲を補強する補強部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項14】
前記補強部は、前記金属部材の端部から折り曲げられた屈曲部からなることを特徴とする請求項13に記載のカード用コネクタ。
【請求項15】
前記ロック機構は、前記スライド部材または前記ハウジングに形成されたハートカム溝と、前記ハートカム溝を摺動するラッチピンとを有し、前記ハートカム溝と前記ラッチピンとの摺動位置に応じて前記スライド部材のロックおよびロック解除を切り換えるプッシュ−プッシュ式の排出構造を有することを特徴とする請求項2から請求項14のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項16】
カードの挿入口が形成され、前記カードに接続する接続端子が埋設されたハウジングと、
前記カードの挿入方向に、前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、
前記カードの排出方向に、前記スライド部材を付勢する排出バネと、
前記排出バネの付勢力に抗して、前記ハウジング内にて前記スライド部材を前記カードの装着位置でロックするロック機構とを備え、
前記ハウジングには、開口が形成されており、
前記開口に前記スライド部材が摺接する金属部材を設け、
前記金属部材の前記スライド部材が摺接する部分を、前記ハウジングにおいて前記カードが挿入される部分の高さよりも低い位置にし、
前記開口が形成されている部分での厚みと前記金属部材の厚みの差を利用して、前記スライド部材のスライドをガイドすることを特徴とするカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−4137(P2012−4137A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206343(P2011−206343)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【分割の表示】特願2009−180556(P2009−180556)の分割
【原出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】