説明

カード用シート及びカード

【課題】 レーザービームの照射によって鮮明な文字・画像などの情報を書き込むことが可能で、表面硬度や耐熱性、さらには耐候性に優れ、植物由来の樹脂材料を用いたカード用シート及びカードを提供すること。
【解決手段】 構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザービームを照射することで発色する発色剤又は光吸収剤を含有する層を、少なくとも1層有するカード用シートの作製。


(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプカードや非接触式ICカード等のプラスチックカード、及びカード用シートに関し、特にはレーザービームを照射することでマーキングすることが可能なカード、及びそのカードを作製するためのカード用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ストライプカードや非接触式ICカード等のプラスチックカード表面に、文字やバーコード等を記入する方法として、近年エンボス打刻や印刷に代わって、レーザービームを照射してマーキングする手法が採られるようになってきた。例えばYAGレーザー等を用いてカードに情報を書き込むことにより、摩耗や経時変化で記入した情報が消失することを防ぐことができる。また、当該手法は簡便な工程で実施することができるので、工業的な価値も高く注目を集めている。
【0003】
レーザービームを照射してマーキングを行うことができるカードとして、レーザービームの照射によって容易に脱色または変色する発色剤や光吸収剤を含有するカードが知られている。例えば特許文献1においては、レーザービームを吸収する材料としてカーボンブラックを添加剤として含むレーザービームで書き込み可能な層を有する、多層データキャリヤ、すなわちカードが開示されている。
さらに、前記発色剤のその他の例としては、半導体化した金属酸化物(たとえば特許文献2参照)や熱応答性染料(例えば特許文献3参照)などが開示されている。
【0004】
一方、レーザービームを照射してマーキングを行うことができるカードを作製するためのカード用シートに用いる基材樹脂は、以前は印刷適性、エンボス適性、ラミネート適性等の観点からポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)が専ら用いられてきたが、PVC樹脂にレーザービームを照射すると加熱部から塩素ガスが発生する場合があり、廃棄時も特別に分別回収することが必要となるなど煩雑な課題も多かった。
【0005】
そこで類似な加工特性を有する、PVC樹脂に代わるカード用シートに好適な基材樹脂の検討がなされ、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂や、ビスフェノールAを主たる構成成分とする芳香族ポリカーボネート系樹脂などが提案されるようになった(例えば特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平8−504933号公報
【特許文献2】特開昭49−82340号公報
【特許文献3】特開昭56−45926号公報
【特許文献4】特開2004−148642号公報
【特許文献5】特開2004−243685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂を用いたカード用シートは、表面硬度が十分高くはないため加工時や使用時に傷つくおそれがあったり、耐熱性が高くないため車載用カードなど耐熱性が求められる用途に向かない等の点について改善の余地が残されている。
また、芳香族ポリカーボネート系樹脂を用いたカード用シートは、耐熱性や透明性に優
れるものの、表面硬度が十分高くはなく、屋外で使用する場合に紫外線を吸収して黄変するおそれが少なからずある等の点について改善の余地が残されている。
さらに、これらの樹脂はいずれも化石燃料である石油資源に由来する材料であって、石油資源の枯渇が懸念される現在においては、これらの樹脂を代替することが可能で、石油資源由来ではない材料を用いてカード用シート及びカードを作製することが求められている。
【0008】
そこで本発明の目的は、レーザービームの照射によって鮮明な文字・画像などの情報を書き込むことが可能で、表面硬度や耐熱性、さらには耐候性に優れ、植物由来の樹脂材料を用いたカード用シート及びカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定構造を有するポリカーボネート樹脂を主成分とし、発色剤又は光吸収剤を含有する層を有するカード用シートが、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
なお、本発明において「主成分とする」とは、当該層における対象成分の比率が50質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)であることをいう。
【0011】
第1の発明によれば、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザービームを照射することで発色する発色剤又は光吸収剤を含有する層(以下、「発色層」とも称する)を、少なくとも1層有するカード用シートが提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【0014】
第2の発明によれば、第1の発明において、前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である。
【0015】
【化2】

【0016】
第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記発色剤又は光吸収剤を含有する層が、レーザービームを照射する前に可視光透過性を有する。
【0017】
第4の発明によれば、第1から第3のいずれかの発明において、前記発色層と可視光透過性を有するオーバー層とを積層した構造を有し、前記オーバー層の厚みが50〜100μmである。
【0018】
第5の発明によれば、第1から第3のいずれかの発明において、前記発色層と可視光透過性を有しないコア層とを積層した構造を有し、前記コア層の厚みが50〜700μmである。
【0019】
第6の発明によれば、第1から第5のいずれかの発明にかかるカード用シートを用いて製造されたカードが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザービームの照射によって鮮明な文字・画像などの情報を書き込むことが可能で、表面硬度や耐熱性、さらには耐候性に優れ、植物由来の樹脂材料を用いたカード用シート及びカードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
【0023】
【化3】

【0024】
(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記式(1)の部位を少なくとも含むものをいう。
【0025】
構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の主成分としては、分子内に式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物や、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(3)で表されるスピログリコール等で代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。これらのなかでも環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物のなかでも特に式(2)で表されるような無水糖アルコールが好ましい。より具体的には、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。また、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物とし
ては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。)
【0029】
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情によりイソソルビドが最も好適に用いられる。
【0030】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は前記式(1)で表される構造単位以外の構造単位を更に含むこともでき、例えば国際公開第2004/111106号パンフレットに記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位や、国際公開第2007/148604号パンフレットに記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0031】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でもエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールから選択される少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0032】
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも5員環構造又6員環構造を含むことが好ましく、特に6員環構造は共有結合によって椅子型又は舟型に固定されていてもよい。これら構造の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことによって、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高めることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下、好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0033】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、前記パンフレットに記載のものを例示でき、中でもシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカン
ジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールが好ましく、更にはシクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性や耐熱性などから最も好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0034】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、また好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。かかる範囲とすることで、カーボネート構造に起因する着色、生物資源物質を用いる故に微量含有する不純物に起因する着色等を抑制することができ、可視光透過性を有するポリカーボネート樹脂として十分使用することができる。また、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂では達成が困難な、適当な成形加工性や機械強度、耐熱性等の物性バランスを取ることができる。
【0035】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノール−A)等を、少量共重合させたりこれを含むポリカーボネート樹脂等をブレンドさせたりすることが挙げられ、耐熱性や成形加工性を効率よく改善できることが期待できるが、こうした芳香族化合物を用いると、一般に耐候性に不具合が生じる傾向があるため、その使用量を最低限とするか、追加成分として紫外線吸収剤を相当量添加するなどの工夫が必要となる。
【0036】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、通常45℃以上155℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下、更に好ましくは90℃以上130℃以下であり、また通常単一のガラス転移温度を有する。
ガラス転移温度がかかる範囲にあることによって、本発明のカード用シートの発色層に、低融点樹脂やエラストマー成分等をブレンドしたりする工夫も特に必要なく、本発明のカードを作製する際に、他の層と熱融着させるときの加工条件を調節しやすくなり、かつ層間において良好な熱融着性を発現することができる。さらに、本発明のカードに要求される耐熱性を付与させやすくなる。前記ポリカーボネート樹脂の重合組成比を適宜調整することで、かかるガラス転移温度に調整することが可能である。
【0037】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、一般に行われる重合方法で製造することができ、ホスゲン法、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。中でも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物とその他のジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法が好ましい。エステル交換法は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル、塩基性触媒、該触媒を中和させる酸性物質を混合し、エステル交換反応を行う重合方法である。
【0038】
炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が例示でき、中でもジフェニルカーボネートが好適に用いられる。
このようにして得られた、本発明で用いる構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.30dL/g以上であることによって、本発明のカード用シートに十分な機械的強度を付与することができ、1.20dL/g以下であることによって、成形する際の流動性が十分であるため、生産性や成形性を低下させることがなく好ましい。
還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
【0039】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、可視光〜近紫外波長領域において光吸収が殆ど起こらず、受光による黄変劣化に関して耐候性が優れるため、該樹脂自体の黄変劣化を抑制するための紫外線吸収剤を添加する必要がない。よって前述の例のように別種の樹脂を配合する場合や、本発明のポリカーボネート樹脂からなる樹脂層で印刷層やコアシート等内部層の黄変劣化を抑制させたい場合は、必要最低限の紫外線吸収剤を添加すればよい。
この場合、本発明における前記発色層を構成する全樹脂100質量%に対する紫外線吸収剤の添加量は0.001質量%以上、10質量%以下の範囲であることが好ましい。また、0.005質量%以上、8質量%以下の割合で使用することがより好ましく、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で配合することが特に好ましい。0.001質量%以上であれば紫外線吸収の性能を十分に発現することができ、また10質量%以下であれば、樹脂の着色を抑制できたり、原料コストの低減を図ることができたりする。更に、かかる範囲で紫外線吸収剤の量を調節することにより、本発明のカード用シートの表面への紫外線吸収剤のブリードアウトや、本発明のカードの表面硬度の低下を生じることなく、本発明のカード用シート及びカードの耐候性を向上することができる。
【0040】
<紫外線吸収剤>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂に必要に応じて添加する紫外線吸収剤は、各種市販のものを使用できるが、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加用に専ら用いられるものを好適に用いることができる。一例としては例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブ
チル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)などのベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃ 以上の紫外線吸収剤を使
用すると、カード用シート表面のガスによる曇りが減少し改善される。
より具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビ
ス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2
−イル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−(4,6−ジフェニル−1,3,5
−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が使用され、これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フ
ェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<発色層>
本発明のカード用シートは、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザービームを照射することで発色する発色剤又は光吸収剤を含有する層、すなわち発色層を少なくとも1層有することが必要である。レーザービームの照射により発色するメカニズムは特に限定されないが、例えば後述する発色剤がレーザービームを吸収して光熱変換により発熱し、その結果黒色や青色、緑色等の有色を呈し、それにより本発明のカードに文字や画像が鮮明に記録される。なお、発色剤と光吸収剤は各々単独で含有しても良く、併用しても構わない。
【0042】
なお、使用するレーザービームとしては各種公知のものを任意に選択することができ、特に限定されるものではないが、具体的には、He−Ne、Arレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザーなどを例示することが可能であり、レーザーマーキング用としてはCO2レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどが好ましく用いられる。
【0043】
本発明に用いる発色剤は、レーザービームを吸収し発色するものであれば限定されるものではないが、光熱変換による発熱によって有色を呈する金属酸化物が好適であり、中でも黒色系金属酸化物であることが好ましい。黒色系金属酸化物を形成する金属としては例えば、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、鉛、クロム、コバルト、スズ、タリウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ビスマス、パラジウム、銀、白金、金等が挙げられる。これらの金属酸化物は、1種のみ使用しても良く、2種以上を混合して使用しても構わない。
【0044】
本発明に用いる光吸収剤は、レーザービームの波長領域の光を吸収するものであれば、限定されるものではないが、例えばカーボンブラック、シアニン系色素、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等を好適に使用することができる。これらの光吸収剤は1種のみ使用しても良く、2種以上を混合して使用しても構わない。
光吸収剤を含有することによって、レーザービームの被照射部の樹脂を発熱により炭化させ黒色を呈色させたり、発泡させ白色を呈色させたりすることができる。
【0045】
本発明における発色層はレーザービーム照射前において可視光透過性を有することが好ましい。ここで可視光透過性とは、当該層が無色透明または淡色透明であって着色された下層を視認することができる状態をいい、通常JIS K7105に準じて測定した全光線透過率が80%以上であり、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
さらに、レーザービームが照射された部位のみが発色し、レーザービーム照射後も発色層のその他の部位が可視光透過性を有することがなお好適である。
【0046】
本発明に用いる発色剤又は光吸収剤は、前記発色層中で微細粒子の状態で均一に分散していることが好ましい。このような発色剤又は光吸収剤の粒径は、通常100μm以下、
好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下である。
発色剤又は光吸収剤が微細粒子の状態で分散していることによって、前記発色層がレーザービーム照射前において可視光透過性を有することが可能となる上、前記発色層の全光線透過率を更に高めることができ、ひいてはレーザービームの照射によって鮮明な文字や画像を記録することができる。さらには微細な文字のマーキングにも対応することができ、マイクロ文字の印字によるセキュリティ付与も実現することができる。
また、微細粒子を前記発色層中に均一に分散させることで、前記発色層自体が凝集破壊したり脆性破壊したりすることを防止できるので、本発明のカード用シート、及びカードを剛性などの強度に優れたものとすることができる。
【0047】
また、本発明のカード用シートにおける発色層を構成する全樹脂100質量%に対する前記の発色剤又は光吸収剤の添加量は特段の制限はないが、前述のように発色層の可視光透過性を維持する観点から上限範囲としては通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。また、必要な発色応答の鋭敏さを生じさせる観点から下限範囲としては、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。
【0048】
本発明のカード用シートにおける発色層の厚さは、好ましくは5μm以上、50μm以下の範囲であり、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であって、またより好ましくは45μm以下、更に好ましくは40μm以下である。5μm以上とすることによって、レーザービームの照射により十分な発色が得られ、50μm以下とすることによって、発色させるために過剰にレーザービームを照射する必要がなく、その結果としてカードが変形したりビーム焦点がぼやけたりする不具合が生じることがない。
【0049】
<その他の成分>
本発明のカード用シートにおける発色層には、さらにその他の成分として、前記ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂や、耐熱安定剤、耐光安定剤、着色剤の各種添加剤等を、表面硬度や耐熱性、耐候性等の本発明の特徴を損なわない範囲で添加してもよい。
【0050】
<カード用シート>
本発明のカード用シートは、前記発色層の単層のみから構成されるシートとしても良く、これに他の層を1層以上積層して構成されるシートとすることもできる。なお、前記発色層を本明細書に記載の厚みの範囲においてなるべく薄く形成する場合は、これを単層のみのシートとしては取り扱いにくくなるおそれがあるため、前記発色層を支持するための他の層を1層以上積層してカード用シートを構成することが好ましい。
前記発色層に積層する他の層としては、本発明のカードを構成するオーバー層又はコア層、さらには防汚層、保護層、印刷層、着色層などを例示することができる。このうち、前述の通り前記発色層をなるべく薄く形成する場合には、これを支持する効果を有するオーバー層又はコア層を積層することが好ましい。
【0051】
本発明のカード用シートを、前記発色層単層で構成する場合、当該発色層は可視光透過性を有し、また耐熱性、耐候性、表面硬度に優れることから、本発明のカードを製造する際のオーバーシートとして適用することが好ましい。
【0052】
前記発色層に積層するオーバー層は本発明のカードにおいて発色層より外側で、実質的にカードの表層に位置するものであって、レーザービームによって前記発色層に記録した情報が鮮明に視認できるという観点から、可視光透過性を有する層であることが好ましく、また前記発色層との層間接着性の観点から、樹脂層であることが好ましい。この時、オーバー層に使用することができる樹脂としては、可視光透過性を有していれば特に限定されないが、前記発色層との層間接着性や、本発明のカード用シートを共押出法によって製
造する場合の流動性、成形性が良好であることから、前記発色層の主成分である前記ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
オーバー層の厚みは、本発明のカードの厚みやその製造方法等により任意に設定されるが、50〜100μmの範囲であることが好ましい。50μm以上であることによって、本発明のカード用シートの総厚みが薄くなることなく、ハンドリング性に優れるため好ましい。また100μm以下であることによってレーザービームを照射した際に鋭敏なマーキング応答が得られ、また本発明のカードを製造する際に別途積層するコアシートを極端に薄くする必要がないため好ましい。
前記発色層とオーバー層を積層する場合には、オーバー層の片面に前記発色層を設けて本発明のカード用シートを構成することが好ましいが、この態様に限定されるものではない。このようにして構成した本発明のカード用シートは可視光透過性を有し、また耐熱性、耐候性、表面硬度に優れることから、本発明のカードを製造する際のオーバーシートとして適用することが好ましい。なお必要に応じて、オーバーシートの前記発色層と反対側(すなわち本発明のカードの最表面側)防汚層、保護層、印刷層、着色層等のその他の層を、本発明のカードの特徴を損なわない範囲において更に積層した構造であってもよい。
【0053】
前記発色層に積層するコア層は本発明のカードにおいて発色層より内側に位置するものであって、レーザービームによって前記発色層に記録した情報が鮮明に視認できるという観点から、着色されており可視光透過性を有しない層であることが好ましく、中でも白色に隠蔽されていることが好ましい。また前記発色層との層間接着性の観点から、樹脂層であることが好ましい。この時、コア層に使用することができる樹脂としては特に限定されないが、前記発色層との層間接着性や、本発明のカード用シートを共押出法によって製造する場合の流動性、成形性が良好であることから、前記発色層の主成分である前記ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。また、コア層を着色するための着色剤としては特に限定されず、例えば白色であれば二酸化チタンや硫酸バリウム等の従来公知の顔料を好適に使用することが出来る。
コア層の厚みは、前記オーバー層と同様に任意に設定されるが、50〜700μmの範囲であることが好ましい。50μm以上であることによって隠蔽効果を十分発現することが可能となり、700μm以下であることによって本発明のカードを製造する際に別途積層するオーバーシートを極端に薄くする必要があったり、カードの厚みが過剰になったり等の不具合が生じにくいため好ましい。
前記発色層と前記コア層を積層する場合、コア層の片面のみに発色層を設けても良く、両面に発色層を設けて本発明のカード用シートを構成することもできる。このようにして構成した本発明のカード用シートは、それ自体を加工することによって本発明のカードを製造してもよく、本発明のカードを製造する際のコアシートとして適用することもできる。
【0054】
本発明のカード用シートを製造する方法については、特に限定されるものではなく、例えばTダイキャスト法やカレンダー法など、従来公知の製膜方法を採用することができる。
また、本発明のカード用シートにおいて、前記発色層と前記オーバー層や前記コア層を積層する方法については、特に限定されるものではなく、共押出法や、少なくとも一方の層を単独で製膜した上での熱ラミネーション法や押出ラミネーション法などを採用することができる。
【0055】
本発明のカード用シートは、少なくとも一方の表面の10点平均粗さ(1994年版JIS B0601に準拠し測定したRz)が3μm以上30μm以下の範囲であることが好ましく、特には10μm以上、20μm以下が好ましい。10点平均粗さを3μm以上とすることで、該シートと他のシートとを積層して熱間プレス融着し、本発明のカードを製造する時に、該シートとプレス盤との間やシート同士の間の空気を効率良く排出できる
ので、本発明のカードがボイドを含んだり変形したりすることが無い。またシートの滑り性がよくなるため、製膜時の巻き取り等のハンドリングが改善される。一方30μm以下とすることで、熱間プレス融着後におけるシート間の密着が十分なものとなる。例えば該シートの表面にマット加工を施すことにより、係る範囲の10点平均粗さを付与することができる。
【0056】
前記のマット加工の方法は、鏡面のシートを製膜してから、別途マットロール等を用いて表面にマット加工を施してもよいし、キャストロールをマットロールに変更してシートを製膜しながらマット加工を施してもよい。
【0057】
<カード>
本発明のカードは、本発明のカード用シートを用いて製造するものである。この時、本発明のカード用シートが前記発色層単層で構成される場合には、他のオーバーシートやコアシートと共に積層して、本発明のカードを製造することができる。
また、本発明のカード用シートをオーバーシートとして用いる場合には、他のコアシートを積層して本発明のカードを製造することができるし、本発明のカード用シートをコアシートとして用いる場合には、他のオーバーシートを積層して本発明のカードを製造することができる。
もちろん前述の通り、本発明のカード用シートをそのままカード状に加工して、本発明のカードを製造することもできる。
【0058】
さらに本発明のカードは、本発明の本質を損なわない限りで他の層を積層して製造してもよい。例えば、ICチップやアンテナ回路を有するインレットシート、印刷層、接着層等が挙げられる。
すなわち本発明のカードの構成としては、例えば、コアシートの表裏両側にオーバーシートを重ねる構成や、コアシート間にインレットシートを挟みこみ、さらにその表裏両側にオーバーシートを重ねる構成など、オーバーシートが最表層にあれば、その他は任意の構成を取ることが出来る。
【0059】
本発明のカードの製造方法としては、例えば、オーバーシート、コアシート、必要に応じて前記の他の層を所定の積層順に重ね、プレス機にて加熱下で圧力をかけて熱融着させてシート間を貼り合わせ、室温まで冷却後、カード状に打ち抜くことによって製造することができる。また、このような加熱プレス法のほか、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法などの公知の積層方法を採用することもできる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
<構成材料>
発色層の基材を構成する樹脂として、以下の材料を用いた。
(A−1)ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=50:50(モル%)となるように溶融重合法により得た、還元粘度0.61dl/gのポリカーボネート樹脂。
(A−2)ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いて重合して得た、芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7022」)。
(A−3)テレフタル酸と、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いて重合して得た、非結晶性芳香族ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製
「イースター6763」)。
【0062】
発色剤として、以下の材料を用いた。
(B−1)15μm以下の雲母に、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アンチモンをドープさせた酸化スズを被覆したもの。(メルク社製「レーザーフレア820」)。
【0063】
<サンプル作製>
(1)単層シート
表1に記載の、支持層のみの単層シートは、押出機で構成する樹脂を加熱溶融させ、Tダイを用いて押出し、冷却ロールに接触させ、所定厚みのシートを得た後、一対のマットロールを通過させて両面マット処理を行った。表面の10点平均粗さ(1994年版JIS B0601に準拠し測定したRz)は15μmだった。
【0064】
(2)発色層積層シート
表1に記載の、支持層及び発色層を有する積層シートは、2台の押出機で各層を構成する樹脂を加熱溶融させ、Tダイを用いて2種2層となるよう押出し、冷却ロールに接触させ、所定厚みのシートを得た後、一対のマットロールを通過させて両面マット処理を行った。表面の10点平均粗さ(1994年版JIS B0601に準拠し測定したRz)は、支持層側が15μm、発色層側が5μmであった。
【0065】
(3)カード
表1に記載の各実施例・比較例の組み合わせで、前述の(1)と(2)で作製したオーバーシートとコアシートを、オーバーシート/コアシート/コアシート/オーバーシートの順で、かつ、発色層がオーバーシートとコアシートの接触面に配置されるように重ねてクロムメッキ板で挟み、130℃で10分間、シートの面圧9.8×10Paでプレスして熱融着し、カード形状に打ち抜いてカードを作製した。
【0066】
<試験及び評価>
1)耐熱性
磁気ストライプ付きクレジットカード規格JIS X6310に準拠して、60℃の温水中に5分間浸漬した時の、カード表面の変化と収縮性を観察した。合わせて80℃でも同様の試験を行った。何れの温度でも表面変化と収縮が認められなかったものを「○」、80℃でのみ表面変化または収縮が認められたものを「△」、60℃で表
面変化または収縮が認められたものを「×」と判定した。
【0067】
2)鉛筆硬度
JIS K5400に準拠して、カード表面に45°の角度を保ちつつ1kgの荷重を掛けた状態で線引きができる治具を使用して線引きを行い、該部分の樹脂シートの面状態を目視観察した。傷が観察されない最も高い硬度のものが、F以上のものを実用上全く問題ないとして「○」、HB〜2Bものを実用上許容されるが改善の余地があるとして「△」、3B以下を「×」とした。
【0068】
3)全光線透過率
発色層の基材に用いた樹脂を射出成形して、幅60mm×長さ60mm×厚さ3mmの平板状試験片を作製し、JIS K7105に準拠して全光線透過率を測定した。90%以上のものを「○」、80%以上90%未満のものを「△」、80%未満のものを「×」とした。
【0069】
4)耐候性(色差)
試験機として岩崎電気製アイスーパUVテスターSUV−W151を用いて、UV照射強
度:75mW/cm 照射温度:63℃、照射湿度:50%の条件により、各カードをサンプルとしてUVを照射した。全く黄変や白濁が生じていないものを「○」、実用上許容されるものを「△」、著しく黄変または白濁が生じているものを「×」とした。
【0070】
5)マーキング応答
カード表層から波長1.06μmのマーキング用YAGレーザービームを照射し、所定の画像パターンのマーキングを行った。照射パワーを固定して挿引速度を変化させて行い、発色した画像の濃度を、マクベス反射濃度計を用いて測定した。最大発色濃度が得られた最適条件について、発色感度、コントラスト、解像度、膨れについて下記基準に基づいて評価した。
(発色感度)挿引速度が早くても最大発色濃度になるものを「○」、実用上許容されるものを「△」、十分に遅くしないと最大発色濃度に至らないものを「×」とした。
(コントラスト)照射部の着色部と非照射部の白色背景とのコントラストが明瞭なものを「○」、実用上許容されるものを「△」、不明瞭なものを「×」とした。
(解像度)照射部の着色部と非照射部の白色背景との境界が明確な線状に視認できるものを「○」、実用上許容されるものを「△」、ぼやけているものを「×」とした。
(膨れ)照射部近傍でシートの膨れ、変形、発泡等の不具合が生じていないものを「○」、いずれかの不具合が生じているものを「×」とした。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかである通り、実施例に示した本発明のカード用シートを用いて作製したカードはいずれも要求特性を満足している。一方、比較例に示した本発明のカード用シートを用いていないカードは何れかの要求特性を満足していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザービームを照射することで発色する発色剤又は光吸収剤を含有する層を、少なくとも1層有するカード用シート。
【化1】

(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【請求項2】
前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である、請求項1に記載のカード用シート。
【化2】

【請求項3】
前記発色剤又は光吸収剤を含有する層が、レーザービームを照射する前に可視光透過性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のカード用シート。
【請求項4】
前記発色剤又は光吸収剤を含有する層と可視光透過性を有するオーバー層とを積層した構造を有し、前記オーバー層の厚みが50〜100μmである請求項1から3のいずれか1項に記載のカード用シート。
【請求項5】
前記発色剤又は光吸収剤を含有する層と可視光透過性を有しないコア層とを積層した構造を有し、前記コア層の厚みが50〜700μmである請求項1から3のいずれか1項に記載のカード用シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のカード用シートを用いて製造されたカード。

【公開番号】特開2012−143872(P2012−143872A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1416(P2011−1416)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】