説明

カード用シート

【課題】耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シート、さらにはレーザーマーキング性に優れ、カードの積層工程におけるシートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性などに優れると共に、耐熱性、折り曲げ性、透明性を兼ね備えたカード用シートを提供する。
【解決手段】スキン層の間にコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成され、前記スキン層またはコア層の少なくとも1層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とのポリマーアロイからなり、前記3層シートの全厚さが50〜400μm、前記コア層の厚さが、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が25%以上、85%未満からなる耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種カード、特に接触式及び非接触式ICカード等のプラスチックカードに用いられるカード用シートに関し、特に多層構造からなり、カード用オーバーシートまたはコアシート等として使用され、耐熱性と加熱融着性に優れ、更には、レーザー光エネルギー照射により、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像を得ることができるレーザーマーキング機能を有するカード用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、タグカードなどのプラスチックカードは、まず複数枚のシートを重ねて真空プレス機により各シート間を加熱融着される。融着後、打ち抜き機にて打ち抜きカード状に製造される。これらのシート素材は、従来よりポリ塩化ビニル系樹脂(以下、PVCと略する)が使用されている。このPVCは、焼却時にハロゲンガスが発生し焼却炉を傷めたり、大気中に放出されると環境問題を発生させたりする。そのために、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(以下、PETGと略する)からなるシートも使用され始めている。ところが、PVCやPETGシートを用いたカードは耐熱性が不十分であり、例えば、気候の暑い国にて自動車車室内にこれらのカードを放置したり、自動車車室内に取り付けられたETC車載器にICカードを挿入したままにした場合に、前者はカードがソリ等の変形を生じたり、後者はカードの変形によりETC車載器からカードが取り出せない問題が生じることがある。これらの問題に対して、PETGにポリカーボネート樹脂(以下、PCと略する)を溶融混練にてポリマーアロイ化することにより耐熱性が改善されるが、印刷性、例えば、オフセット印刷性が低下したりする等の問題がある。一方、セキュリテイ問題の高まりからレーザー光エネルギーを照射して文字、画像をマーキングするレーザーマーキング法が特に海外にて広範囲に採用されている。しかし、PVCやPETGシートへのレーザーマーキングは発色性に乏しく、文字や画像の視認性に欠ける問題がある。この問題に対して、上記したように、PETGにPCを溶融混練にてポリマーアロイ化することによりレーザーマーキング性は改善していくが、充分なレーザーマーキング性を発揮するためにはPC比率を多くしなければならず、そうすると、加熱プレス工程においてPVCやPETGと同等温度条件にては充分なシート間の加熱融着性が確保できないので、加熱プレス温度を上げなければならない。そうすると、真空プレス機では常温から設定温度まで上昇、その後加圧したのち、常温まで冷却する1工程のサイクルタイムが長くなり、生産性の低下となり問題である。更に、最近、レーザーマーキングではモノカラー(一般的に黒)であるために、文字はモノカラー、画像はフルカラーの要求がなされることが多くなってきている。そのためには、レーザーマーキング可能なカード用オーバーシートの表面に、昇華型熱転写カラー印刷用のインク受理層コートを施しておくことで部分フルカラー印刷に対応させる。
【0003】
これらの問題に対して、特許文献9には、非レーザーマーキングタイプのカード用コアシート又はオーバーシートとして、スキン層の間にコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートであって、スキン層が実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなり、コア層がポリカーボネート系樹脂組成物からなり、かつ、コア層の全シート中に占める厚さの割合が50%以上、100%未満のシートが開示されている。一方、レーザーマーキングを施すためのシートとして、例えば、特許文献1〜5などがあり、他方、特許文献6では、レーザーマーキングに優れた多層構造物として、透明熱可塑性樹脂のシート、フイルムの裏にエラストマーでラミネートし、ヒートシールした多層シートが好ましいことが記載されている。さらに、特許文献7及び特許文献8にて、コントラストの良好で、かつ平滑性のあるレーザーマーキング性と耐熱性を有するカード用に好適なレーザーマーキング用多層シートが提案されている。
【0004】
さらに、特許文献10では、発色層と、少なくともその一方の表面に接着層を有するカード用シートが記載されている。そして、発色層が、PCと実質的に非結晶性PETGとのポリマーアロイを主成分とし、レーザビームを照射することによって発色する成分からなり、接着層が、実質的に非結晶性PETGからなっている。この発色層形成主成分のガラス転移温度が接着層を形成する樹脂のそれよりも大きく、しかも接着層を形成する樹脂のガラス転移温度が80℃であるカード用シートが提案されている。ここで、ポリマーアロイを構成するPETGとしては、ガラス転移温度が60℃、または80℃の樹脂が使用され、PCとしては、ガラス転移温度が160℃の樹脂が使用されている。そして発色層のポリマーアロイのガラス転移温度が90℃、または130℃で、接着層のガラス転移温度が80℃のカード用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−11771号公報
【特許文献2】特公昭62−59663号公報
【特許文献3】特公昭61−41320号公報
【特許文献4】特開昭61−192737号公報
【特許文献5】特公平2−47314号公報
【特許文献6】特開平7−276575号公報
【特許文献7】特開2002−273832号公報
【特許文献8】特許第3889431号公報
【特許文献9】特許第3876107号公報
【特許文献10】特許第4490639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献9では、スキン層を構成する樹脂として、ガラス転移温度が80℃のPETG(商品名、イーストマンケミカル社製)が例示され、実施例で使用されている。しかしながら、コア層を構成するPC(例えば、実施例で用いられている「ノバレックス7022」、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)は、ガラス転移温度が160℃であり、両者のガラス転移温度の差が、約80℃であることから、共押出法により2種3層の多層共押出成形にて両外層スキン層の均一化が難しい。また、スキン層が耐熱性に乏しいために、他のシートとの真空プレス機による加熱積層工程において金型からの取出し時における離型性に劣るという問題がある。更に、シートの表面に、昇華型熱転写カラー印刷用のインク受理層コートを施す場合に、スキン層樹脂の耐熱性が乏しいために、コート材を塗布した後の乾燥工程においてシートに“シワ”が発生する問題が生じる。
【0007】
また、上記特許文献10でも、発色層の主成分としてのポリマーアロイを構成するPETGのガラス転移温度が、60℃、または80℃であることから、ポリマーアロイのガラス転移温度を高くしようとしても、限界がある。そして、このようなポリマーアロイからなる発色層とガラス転移温度が80℃のようなPETGからなる接着層とを、共押出法により多層共押出して成形した接着層は耐熱性に乏しいために、他のシートとの真空プレス機による加熱積層工程において金型からの取出し時における離型性に劣る。更に、接着層樹脂の耐熱性が乏しいために、乾燥工程等において“シワ”が発生する問題がある。また、印刷性、例えば、オフセット印刷性が低下したりする等の問題もある。
【0008】
一方、上記特許文献1〜5に開示されたレーザーマーキングを考慮した方法をそのまま表面透明表皮層を有したプラスチック多層シートに適用すると、種々の問題点が発生する。すなわち、特許文献6では、透明熱可塑性樹脂のシート、フイルムの裏にエラストマーでラミネートし、ヒートシールした多層シートが好ましいことが記載されているが、この多層シートでは、表皮層と内層との密着性が悪いと、レーザー光エネルギーのエネルギー吸収体である内層へのレーザーマーキングの条件によっては、マーキング時に発生するガスにより透明表皮層が膨れたり、損傷したりする問題がある。
【0009】
この問題に対して、特許文献7及び特許文献8にて、コントラストの良好で、かつ平滑性のあるレーザーマーキング性と耐熱性を有するカード用に好適なレーザーマーキング用多層シートが提案されている。一般にカードの製造に際しては、複数枚のシートを重ねる工程にて真空吸着にてシートを吸引して搬送する。そして所定位置にて負圧を解除してシートを重ねる。ついで、熱プレスでシート間を熱融着した後、打ち抜き刃でカード形状に切断して製造される。これらの製造工程において、上記提案のレーザーマーキング用多層シートをカードのオーバーシートに適用した場合に、シートの搬送工程にて負圧を解除してもシートが搬送機に貼りつく問題がある。また熱プレスでシート間を熱融着する工程にてオーバーシートが金型に貼りつく問題(金型スティック)、更にはコアシートとオーバーシートの界面にてガス抜けが悪くレーザー光エネルギーを照射した場合に、この部分でガス焼けが発生し透明表皮層が膨れたり、損傷したりする問題があり、さらなる改良が求められている。
【0010】
一方、オーバーシート(透明)/コアシート(白)/オーバーシート(透明)を加熱積層した後、打ち抜きを行い、ブランクカード(白)を製造後、カード用印刷機にてカード表面にカラー印刷を施して所定のカードを製造する方法がある。この場合に、カード用印刷方式には大別して、直接熱転写印刷方式と間接熱転写印刷方式があり、前者はインクリボンを直接カード表面に押し当てて加熱することにより昇華型インクがカード表面に印刷される。このときに、オーバーシートがPVCであると問題なく鮮明な印刷が可能である。しかし、PETG/PC/PETG3層シートは昇華型インクがこれらのシートとの“なじみ”が悪く印刷が不鮮明になったり、部分的に印刷が抜けている現象が生じて好ましくない。このために、これらのシート表面に水系、溶剤系の薄膜塗工を施すが、オーバーシートの耐熱性が不十分な場合は、薄膜塗工後、乾燥工程を経て巻き取り工程にて巻き取られるが、この巻き取り時の張力に耐え切れずにシートに“シワ”が入ったり、シートが伸びてしまったりする問題が発生する。
【0011】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、各種カード、特に接触式及び非接触式ICカード等のプラスチックカードに用いられるカード用シートに関し、特に多層構造からなり、耐熱性と加熱融着性に優れ、更には、レーザー光エネルギー照射により、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像を得ことができるレーザーマーキング機能を有するカード用オーバーシートまたはコアシートに関するものである。更に、昇華型熱転写印刷可能な薄膜塗工・乾燥工程にも耐えられる耐熱性を有するプラスチックカード用オーバーシートを提供することにある。
【0012】
本発明に係る多層構造のシートは、上記したようなカードの表面層として使用されるオーバーシート、オーバーシートで挟むようにして用いられるコアシートとして使用に供される。また、IC−CHIP、アンテナを配設したインレットシート用の基材シートに好適に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、以下のカード用シートが提供される。
【0014】
[1]スキン層の間にコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成されるカード用シートであって、前記3層シートの前記スキン層またはコア層の少なくとも1層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とのポリマーアロイからなり、前記3層シートの全厚さが50〜400μm、前記コア層の厚さが、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が25%以上、85%未満からなる耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シート。
【0015】
[2]前記コア層が、ポリカーボネート系樹脂またはガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とのポリマーアロイからなり、前記樹脂またはポリマーアロイ100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収体を、0.0001〜3質量部含有する前記[1]に記載のカード用シート。
【0016】
[3]前記3層シートの両最外層である前記スキン層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂またはガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とからなるポリマーアロイの各々100質量部に対して、白色無機顔料を5質量部以上含有する組成物から構成され、前記3層シートの少なくとも片面が、平均粗さ(Ra)0.1〜10μmのマット加工が施されている前記[1]または[2]に記載のカード用シート。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シートを得ることができる。また、共押出法により積層する場合にも、均一化を容易に行うことができる。さらに他のシートとの真空プレス機による加熱積層工程において、金型からの取出し時における離型性に優れる。また、レーザー光エネルギー吸収体を含むシートは、レーザー光エネルギー照射により、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られる。さらには、シートのスキン層表面に、昇華型熱転写カラー印刷用のインク受理機能を付与するために、コートを施す場合、コート後の乾燥工程で“シワ”が発生することがない。また、昇華型熱転写印刷可能な薄膜塗工・乾燥工程にも耐えられ、各種カード、特に接触式及び非接触式ICカード等のプラスチックカードに用いられるカード用シートを提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のカード用シートを実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるカード用シートを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[1]本発明のカード用シートの構成:
本発明のカード用シートは、スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される。前記3層シートの前記スキン層またはコア層の少なくとも1層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(以下、PCT系樹脂と略する)80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂(以下、PC系樹脂と略する)20〜80質量%とのポリマーアロイ(以下、アロイ系樹脂と略する)からなり、前記3層シートの全厚さが50〜400μm、前記コア層の厚さが、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が25%以上、85%未満からなる、耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シートである。
【0020】
本発明においては、スキン層とコア層のうちの少なくとも1層が、上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成されることが必要である。本発明のカード用シートが、スキン層の間にコア層を配してなる3層構造のシートである場合には、それら3層の全てが上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成されてなるシート、コア層のみが上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成されてなるシート、或いはスキン層の両層または1層が上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成されてなる態様をあげることができる。
【0021】
上記した態様の中でも、コア層が、上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成され、スキン層がPCT系樹脂から構成されるカード用シート、またはコア層が、PC系樹脂から構成され、スキン層が上記した特定の組成からなるアロイ系樹脂から構成されるカード用シートが好ましい。前者のシートは、3層を共押出積層する際の加熱融着性、及び他のシート(例えば、カードを構成するコアシート、中間シート、オーバーシート)と積層する際の加熱融着性、気泡抜け性に優れる。また、他のシートと積層した場合、良好な耐熱性、透明性を有する。さらに、表面光沢が良好で、視認性に優れる。また、後者のシートは、上記したシートに加え、スキン層がアロイ系樹脂から構成されるので、アロイ系樹脂を構成するPCT系樹脂とPC系樹脂の種類、割合などを変えることにより、PCT系樹脂とPC系樹脂の特長を引出すことができ、単独組成では得られ難い効果を付与することができる。
【0022】
[1−1]3層シート:
3層シートは、スキン層とコア層とからなる、少なくとも3層構造のシートとして構成され、共押出法により積層形成される。なお、前述したように、本発明に係る3層シートは、「少なくとも3層」であって、3層構造のシートに限られたものではない。換言すれば、3層以上の構成であれば、5層から構成されても、7層から形成されても、或いは、それ以上の奇数層から構成されていても、本発明の多層シートに含まれる趣旨である。本発明のカード用シートにおいて、「3層シート」と言うのは、説明の便宜を図るものであり、「3層シート」とは、「少なくとも3層以上の層からなるシート」を意味するものであって、「3層」からなるシートに限定する趣旨ではない。ただし、そのような多層から、本発明に係るカード用シートが構成される場合にも、後述するスキン層は、多層から構成されるシートの最も外側の位置にはスキン層が配され、かつ、そのシートの両側に配される。さらに、スキン層に、多層シートが挟まれるように配されることが必要となり、しかも、後述の所定範囲の厚さでなければならない。ここでさらに付言すれば、「それ以上の奇数層」も、本発明の「3層シート」には含まれるものではある。しかしながら、全厚さが規定されているので、あまりにも多層からなるカード用シートでは、配されるスキン層とコア層との一層あたりの層厚が薄くなり過ぎ、カード積層時の加熱プレス工程での金型スティックが発生してしまう。したがって、好ましいのは5層、より好ましいのは3層、から構成されるカード用シートである。
【0023】
前述のように、奇数層から構成される理由は、偶数層からなる多層シートは、必ず奇数層からなる多層シートと同じ構成となるからである。例えば、4層からなる多層シートでは、スキン層(PCT系樹脂)/コア層(アロイ系樹脂)/コア層(アロイ系樹脂)/スキン層(PCT系樹脂)、といった層の配置である。結局のところ、奇数層から構成される多層シートと同様の構成となるからである。
【0024】
たとえば、3層から構成されるカード用シートを例にすると、スキン層(PCT系樹脂)/コア層(アロイ系樹脂)/スキン層(PCT系樹脂)、または、スキン層(アロイ系樹脂)/コア層(PCT系樹脂)/スキン層(アロイ系樹脂)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配される。その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されてカード用シートが形成されることになる。また、5層から構成されるカード用シートを例にすると、スキン層(PCT系樹脂)/コア層(アロイ系樹脂)/スキン層(PCT系樹脂)/コア層(アロイ系樹脂)/スキン層(PCT系樹脂)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、かつ、交互にスキン層とコア層を配列して、カード用シートを形成してもよい。
【0025】
上記したように多層構造を有するカード用シートを形成することにより、例えば、オーバーシート/コアシート/コアシート/オーバーシートからなるカードにおいて、真空プレス機などにおいて加熱積層工程にて各層間にて充分な加熱融着性が確保できる。さらに、加熱プレス後に金型からスムースに取り出すことができる。一方、気候の暑い国において自動車内に設置されたETC車載器にカードが挿入されたまま放置されていたり、また、カードがダッシュボード上に放置されていたりする過酷な環境下においても、カードのソリなどの変形を抑制できる等、耐熱性に優れたカードを提供でき、加熱融着性と耐熱性といった相反する性能を両立させることができる。
【0026】
上述のように構成されたカード用シートの全厚さ(総厚さ)は、50〜400μmの厚さに形成される必要がある。前記シートの全厚さが、50μm未満であると、共押出シート成形時にスキン層及びコア層の厚み制御が困難になり、コア層の両側に配置される両側スキン層の厚み均一性が制御できなくなり、厚みの不均一なシート(3層シート)が製造されてしまう。このような両側スキン層の厚みが不均一な、例えば、3層シートではシート成形後にスキン層樹脂とコア層樹脂の膨張係数の差から3層シートのソリが生じることから、カード製造工程において、シート搬送、積層工程においてシートの取り扱いが困難になる問題が生じて好ましくない。また、3層シートの全厚さが400μmを超えると、そのシート1枚において、一般的な接触、非接触式カードの規格である全厚さの最大厚さ800μmの厚みの50%以上を占有することとなり、例えば、オーバーシート/コアシート/コアシート/オーバーシートからなるカードにおいては使用困難となる。さらに後段にて、3層シート全体の総厚さと、スキン層、及びコア層との厚さとの関係について詳述する。
【0027】
[1−2]スキン層:
スキン層は、3層シートの外側に配される両最外層として構成される。すなわち、このスキン層は、後述するコア層の両端面側(外側)から、挟み込むように配される、3層シートの表層(両最外層)としての役割を担っている。
【0028】
ここで、コア層を挟む両最外層に配されるスキン層の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。それぞれ異なる厚さのスキン層から、カード用シートを構成すると、前述したように、シートの共押出成形工程等でシートのソリが生じて好ましくないからである。また、スキン層の厚さは、片側が10〜50μmが好ましく、さらに好ましくは、15〜40μmである。スキン層の厚さがあまりにも薄いと金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じる。他方、スキン層の厚さがあまりにも厚すぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、カード積層後にカードにそりが発生するなどの問題が生じて好ましくないからである。このスキン層を形成する材料(素材)としては、PCT系樹脂やアロイ系樹脂が使用される。
【0029】
[1−3]コア層:
コア層は、3層シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。すなわち、このコア層は、最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。このコア層の厚さは、全シート中に占める厚さの割合が、25%以上、85%未満になるよう形成されることが必要であり、より好ましいのは、50%以上、75%以下である。コア層厚み比率が85%以上となると、オーバーシートの総厚みが50〜200μmと薄いため、相対的にスキン層が薄くなるため、たとえ、スキン層に滑剤が混合されていてもカード積層工程における加熱プレス工程にてオーバーシートが金型に貼りつくという金型スティック問題が発生するので好ましくない。また、コア層厚み比率が25%未満ではカードのプレス工程において、スキン層が厚いため金型スティック問題が発生しないが、耐熱性が乏しいためシートのソリが生じて好ましくないからである。
【0030】
本発明においては、前記したようにスキン層、コア層の少なくとも1層が、PCT系樹脂80〜20質量%とPC系樹脂20〜80質量%とのアロイ系樹脂からなることが必要である。スキン層、コア層の全てが、前記アロイ系樹脂以外の樹脂から構成される場合には、上記で詳述した本発明の顕著な効果を得ることができない。
【0031】
(アロイ系樹脂)
本発明のアロイ系樹脂を構成するPCT系樹脂としては、ガラス転移温度90℃以上、好ましくは、100℃以上のPCT系樹脂が使用される。ガラス転移温度が90℃未満の非結晶性芳香族ポリエステル樹脂では耐熱性に劣るため好ましくない。
【0032】
さらに、このPCT系樹脂としては、例えば、Eastman Tritan copolyester FX100、及びEastman Tritan copolyester FX200(いずれもイーストマンケミカル社製)が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0033】
本発明のアロイ系樹脂を構成する、もう一方の成分であるPC系樹脂としては、好ましくは、透明なPC系樹脂が使用される。使用されるPC系樹脂は特に制限はないが、ISO1133に準じて測定したメルトボリュームレイトが4〜30のものが好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。また、メルトボリュームレイトが30を超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。
【0034】
さらに、このPC系樹脂としては、例えば、商品名「タフロンFN2200A」(出光興産(株)製、ガラス転移温度152℃)が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0035】
前記アロイ系樹脂におけるPCT系樹脂とPC系樹脂の構成割合(混合比率)は、PCT系樹脂80〜20質量%に対してPC系樹脂20〜80質量%とすることが必要であり、PC系樹脂の混合比率が20質量%未満では耐熱性及びタフネス性がるので好ましくない。また、このアロイ系樹脂にレーザー光エネルギー吸収体を配合し、レーザー発色機能を付与する場合には、レーザー発色性に劣るため好ましくない。また、PCT系樹脂が20質量%未満ではカードの加熱積層工程において低温での加熱融着性に劣る。より好ましくはPCT系樹脂70〜30質量%に対してPC系樹脂30〜70質量%である。
【0036】
また、前記アロイ系樹脂は、PCT系樹脂80〜20質量%とPC系樹脂20〜80質量%とを、ミキサー等の混合機で予め均一に混合した後、混練機で加熱溶融させて、溶融下に混練すること等により製造することができる。この製造法については、特に制限がない。
【0037】
また、本発明において、スキン層を構成する、前記したアロイ系樹脂以外の樹脂としては、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を挙げることができる。また、コア層を構成する、前記したアロイ系樹脂以外の樹脂としては、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などを例示することができる。
【0038】
さらに、前記した非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、従来から知られている各種の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂をはじめとし、本発明のアロイ系樹脂を構成するガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を挙げることができる。
【0039】
この非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、Eastar コポリエステル6763、Eastman Tritan copolyester FX100、FX200(いずれもイーストマンケミカル社製)が商業的に入手可能なものとして挙げられる。これらの中でもTritanは、ガラス転移温度が90℃以上であることから、耐熱性、タフネス性、カード加熱積層工程における加熱融着性に優れる。
【0040】
また、本発明において、コア層を構成する、前記したアロイ系樹脂以外の樹脂で、かつ上記した非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂以外のものとしては、PC系樹脂を挙げることができ、透明なPC系樹脂が使用される。使用されるPC系樹脂は特に制限はないが、前記したようにISO1133に準じて測定したメルトボリュームレイトが4〜30cm/分のものが好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4cm/分未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。また、メルトボリュームレイトが30cm/分を超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。
【0041】
(レーザー光エネルギー吸収体)
また、本発明においては、前記コア層が、PC系樹脂、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂またはアロイ系樹脂からなり、前記樹脂100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収体を、0.0001〜3質量部、好ましくは0.001〜1質量部含有することが好適である。このようにコア層にレーザー光エネルギー吸収体を含有させることにより、このコア層にレーザーマーキングによる文字、画像等を形成することができる。そして、このレーザーマーキングによる文字、画像等は、コアシートに描写され、両面にスキン層が積層された構成とされているので、擦ったりしても容易に消えたりすることがない。それ故、このようなカード用シートを含むプラスチックICカード等は、セキュリティ面にも優れる。
【0042】
さらに、上記レーザー光エネルギー吸収体の配合量も3質量部を超えるとオーバーシートの透明性が低下すると共に、吸収エネルギー量が多すぎ樹脂を劣化させてしまい充分なコントラストが得られない。他方、レーザー光エネルギー吸収体の添加量が0.0001質量部未満では充分なコントラストが得られず好ましくない。
【0043】
レーザー光エネルギー吸収体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属酸化物、複合金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩及び、近赤外線吸収色素の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
上記金属酸化物としては、酸化物を形成する金属として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、銅、マンガン、コバルト、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、白金などが挙げられる。複合金属酸化物としてはインジウムと錫(ITO)、インジウムとアンチモン(ATO)等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0045】
さらに、金属硫化物としては、硫化亜鉛、硫化カドミニウムなどが挙げられ、金属炭酸塩としては炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、金属ケイ酸塩としては、ケイ酸アルミナ、鉄を含むケイ酸アルミナ(マイカ)、含水ケイ酸アルミナ(カオリン)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0046】
また、近赤外線吸収色素としては、ポリメチン系色素、金属錯体系色素、スクアリウム系色素、シアニン系色素、インドアニリン系色素、ジイモニウム系色素等が挙げられる。
【0047】
これらレーザー光エネルギー吸収体としては、カーボンブラックが好適に用いられる。また、カーボンブラックと平均粒子径200nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物も好ましく用いられる。
【0048】
また、カーボンブラックと他の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物をレーザー光エネルギー吸収体として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩の平均粒子径が少なくとも200nm未満、好ましくは100nm未満、更に好ましくは50nm未満である。これらレーザー光エネルギー吸収体の平均粒子径が200nmを超えるとオーバーシートの透明性が低下して好ましくない。
【0049】
レーザー光エネルギー吸収体は、前記3層シートを構成する前記コア層のみ、または、スキン層及びコア層に配合される。前記エネルギー吸収体の添加量(配合量)は、コア層樹脂または/及びスキン層樹脂100質量部に対して、0.0001〜3質量部、好ましくは0.001〜1質量部である。前記3層シートをオーバーシートに使用した場合は、前記エネルギー吸収体は、前記3層シートを構成する前記コア層のみに配合した方が好ましい。前記3層シートにおいて、前記エネルギー吸収体を配合したコア層がレーザー光エネルギー照射により発色するが、スキン層はこのコア層発色層の保護層、例えば、耐擦傷性、耐磨耗性、耐薬品性等の保護機能として好ましい。
【0050】
(白色無機顔料)
さらに、前記スキン層が、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(PCT系樹脂を含む)、アロイ系樹脂の各々100質量部に対して、白色無機顔料を5質量部以上含有する組成物から構成されていることが好ましい。
【0051】
一般的なプラスチックカードの基本的な構成は、(1)オーバーシート/(2)コアシート/(3)コアシート/(4)オーバーシートからなり、コアシートの片面にオフセット印刷、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷(カラー印刷)を施した上で、透明なオーバーシートを積層して真空加熱プレスにより積層体を形成する。この場合に、コアシートは白色を呈することにより印刷(カラー印刷)の鮮明性に優れる。この目的のために、スキン層を形成する樹脂100質量部に対して白色無機顔料を5質量%以上配合する。白色無機顔料が5質量%未満では印刷性が劣るために好ましくなく、また、配合量の上限は30質量%とすることが好ましい。30質量%を超えると、シートのタフネス性が劣るために好ましくない。
【0052】
さらに、白色無機顔料は特に制限はなく、一般的には酸化チタンが好適に使用できる。また、酸化チタンに他の有機顔料、染料及び蛍光増白剤などを配合して色調を調整することもできる。
【0053】
(マット加工)
上記カード用シートの両面には、マット加工が施されていることが好ましい。そのマット加工による平均表面粗さ(Ra)は、0.1〜10μmが好ましく、更に、0.5〜5μmが好ましい。マット加工の平均表面粗さが0.1μm未満ではカード構成がオーバーシート/コアシート/オーバーシートである場合、各シート間の空気が抜けにくくなり、気泡がカード内に残存するためにカード表面にフクレが生じたり、また、レーザー光エネルギーを照射してレーザー発色をさせる工程でガス焼けが発生し、カードの変色及びレーザーマーク印字性の低下をするといった欠陥が生じるため、好ましくない。他方、マット加工の平均表面粗さ(Ra)が10μmを超えると、カード積層工程においてカード最表層の平滑性が劣るため、表面光沢が劣り、更に、印刷した画像、文字などの鮮鋭性が劣るため好ましくない。
【0054】
(滑剤)
本発明においては、スキン層、コア層には、滑剤を配合することが好ましい。ここで用いられる滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩などを挙げることができ、これらの1種もしくは2種以上が配合される。この滑剤の添加量は、スキン層、コア層を構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部である。0.01質量部未満では加熱プレス時にプレス板に融着してしまい、3質量部を超えるとカードの熱融着性に問題が生じるため好ましくない。
【0055】
脂肪酸エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、セチルパルミレート、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、モンタンワックス酸のエステル、ロウエステル、ジカルボン酸エステル、複合エステル等が挙げられる。また、脂肪酸アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリルアマイド等が挙げられる。さらに、脂肪酸金属塩系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミウム、ステアリン酸バリウム等が挙げられる。
【0056】
(酸化防止剤及び又は着色防止剤)
さらに、成形加工時における分子量や色相をより安定化させる為、フェノール系酸化防止剤や亜燐酸エステル系着色防止剤が使用される。
【0057】
(酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤の例としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]イソシアヌレート、およびテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンなどが例示される。
【0058】
上記したフェノール系酸化防止剤の中でも、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが好適であり、特にn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0059】
(着色防止剤)
着色防止剤としては、例えば、亜燐酸エステル系着色防止剤を挙げることができる。この亜燐酸エステル系着色防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0060】
更に他のホスファイト化合物としては、二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0061】
上記ホスファイト化合物の中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。亜燐酸エステル系着色防止剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。また、フェノール系酸化防止剤と併用してもよい。
【0062】
さらに、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、その他の添加剤などを配合することもできる。
【0063】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を添加(配合)してカードの耐光劣化性を抑制する紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
【0064】
また、上記以外の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。更に紫外線吸収剤としては例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などの環状イミノエステル系化合物を挙げることができる。
【0065】
(光安定剤)
また光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系のものも含むことができる。かかる光安定剤は前記紫外線吸収剤や場合によっては各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0066】
(その他の添加剤)
本発明において、シートの各層に必要に応じて着色剤、フィラー、難燃剤等の添加剤を添加(配合)したり、物性を改良するために異種のポリマーがブレンドしたりしても構わない。
【0067】
[2]カード用シートの成形方法:
本発明において、3層のカード用シートを得るには、例えば、各層の樹脂組成物を共押出して積層する共押出法、各層をフィルム状に形成し、これをラミネートする方法、2層を共押出法で形成し、これに別途形成したフィルムをラミネートする方法等があるが、生産性、コストの面から共押出法により積層することが好ましい。具体的には、各層の樹脂組成物をそれぞれ配合し、あるいは必要に応じてペレット状にして、Tダイを共有連結した3層Tダイ押出機の各ホッパーにそれぞれ投入する。温度200℃〜280℃の範囲で溶融して3層Tダイ共押出し、冷却ロール等で冷却固化して、3層積層体を形成することができる。なお、本発明のカード用シートは、上記方法に限定されることなく、公知の方法により形成することができ、例えば、特開平10−71763号第(6)〜(7)頁の記載に従って得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における「部」および「%」は特に断りのない限り、「質量部」および「質量%」を意味する。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0069】
[1]カード用多層シート(オーバーシート/コアシート/コアシート/オーバーシートからなる積層構成)積層加熱プレス成形後の離型性:
実施例1〜3、比較例1〜3の構成となるように積層したシートを2枚のクロムメッキ鋼板(金型)で挟み、プレス温度160℃、圧力3.923MPa(40Kgf/cm)にて10分間保持(加熱加圧)した。その後、室温まで冷却した後、クロムメッキ鋼板で挟んだ試料をクロムメッキ鋼板ごと取り出した。取り出した試料からクロムメッキ鋼板を引き剥がした際の金型からの離型性を評価した。
○:金型から容易に剥離可、離型性が良好である。
△:金型にわずかに付着し、剥がすことは可能であるが、オーバーシート表面に傷が生じて使用不可、離型性に問題がある。
×:金型に付着、目的とする積層体(プラスチックカード)を得ることができない。
【0070】
[2]気泡抜け性及び熱融着性:
a)気泡抜け性・・・前記のように加熱プレス成形後の積層体中の残存気泡状態を観察して、気泡抜け性を評価した。
○:積層体中に気泡なし、極めて優れる。
×:積層体中に気泡残存、不具合が生じる。
b)熱融着性・・・前記のように加熱プレス成形後の積層体を構成するシート間にカッター刃を軽く差し入れることにより密着力を観察した。
○:剥離なし、熱融着性が良好である。
×:剥離が一部、又は全面にわたって発生、熱融着性に問題がある。
【0071】
[3]カード積層体表面光沢:
前記のように加熱プレス成形後のカード積層体表面の光沢状態を目視観察し、以下の判定基準で評価した。
○:光沢良好、視認性に優れる。
△:やや光沢劣る、視認性が良好である。
×:光沢不足(劣る)、視認性に劣る。
【0072】
[4]レーザー印字性:
前記のように加熱プレス成形後のカード積層体表面に、Nd・YVOレーザー(レーザーテクノロジー社製 LT−100SA及びロフィンシナール社製 RSM103D)を使用して以下の方法によりレーザーマーク性を評価した。レーザーマーク性は、400mm/secのレーザー照射速度にてマーキングを行い、コントラストの良否、表面層破壊など異常の有無から判定した。
○:コントラスト比3以上、表面層破壊、樹脂焼けなし、レーザー印字性に優れる。
△:コントラスト比2〜3未満、表面層破壊、樹脂焼けなし、レーザー印字性良好。
×:コントラスト比2未満及び又は表面層破壊、樹脂焼けあり、レーザー印字性に劣る。
【0073】
[5]オーバーシートの透明性:
オーバーシートの全光線透過率をマクベス社分光光度計EYE7000により測定し、以下の判定基準で評価した。
○:全光線透過率80%以上、透明性に優れる。
△:全光線透過率60%以上80%未満、透明性が良好。
×:全光線透過率60%未満、透明性に劣る。
【0074】
[6]オーバーシートの耐熱性:
グラビアコーターを用いて、オーバーシートに縦ジワの入らない最高温度(限界温度)を求めて、以下の判定基準で評価した。
○:限界温度110℃以上、耐熱性に優れる。
△:限界温度90〜110℃未満、耐熱性が良好。
×:限界温度90℃未満、耐熱性に劣る。
【0075】
(製造例1)オーバーシートA:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」 イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)を、コア層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=30/70)を用い、かつ、スキン層PCT100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、コア層アロイ系樹脂100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層アロイ系樹脂100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラック0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートAを得た。
【0076】
(製造例2)オーバーシートB:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=70/30)を用い、かつ、スキン層アロイ系樹脂100部に、滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。コア層として、前記PCを用いて、コア層PC100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層PC100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラックを0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートBを得た。
【0077】
(製造例3)オーバーシートC:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX100」 イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=110℃)(PCTと略する)を、コア層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=30/70)を用い、かつ、スキン層PCT100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、コア層アロイ系樹脂100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層アロイ系樹脂100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラック0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートCを得た。
【0078】
(製造例4)オーバーシートP:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)を、コア層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=90/10)を用い、かつ、スキン層PCT100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、コア層アロイ系樹脂100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層ポリマーアロイ100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラックを0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートPを得た。
【0079】
(製造例5)オーバーシートQ:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=10/90)を用い、かつ、スキン層ポリマーアロイ100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。コア層として前記PCを用いて、コア層PC100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層PC100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラック0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートQを得た。
【0080】
(製造例6)オーバーシートR:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastar コポリエステル6763」 イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=80℃)(PETGと略する)を、コア層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastar コポリエステル6763」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=80℃)(PETGと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PETG/PC=30/70)を用い、かつ、スキン層PETG100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、コア層アロイ系樹脂100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層アロイ系樹脂100部に、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラックを0.001部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用透明オーバーシートを得た。シートの総厚さは、100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(12.5μm)/コア層(75μm)/スキン層(12.5μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層オーバーシートRを得た。
【0081】
(製造例7)コアシートE:
スキン層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastar コポリエステル6763」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=80℃)(PETGと略する)を、コア層として非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「Eastman Tritan copolyester FX200」イーストマンケミカル社製、ガラス転移温度=119℃)(PCTと略する)とポリカーボネート(商品名「タフロンFN2200A」 出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm/10min.)(PCと略する)のポリマーアロイ(ブレンド比率=PCT/PC=30/70)を用い、かつ、スキン層PETG100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、コア層アロイ系樹脂100部に滑剤として脂肪酸モノグリセライド(リケマールS−100、理研ビタミン社製)0.2部、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)0.2部を配合した。さらに、上記コア層ポリマーアロイ100部に、酸化チタンを20部を配合した。Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用白色コアシートを得た。シートの総厚さは、200μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(25μm)/コア層(150μm)/スキン層(25μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を75%にした。さらに、平均表面粗さ(Ra)は1〜3μmになるよう両面マット加工が施された3層コアシートEを得た。
【0082】
上述の製造例1〜6で得たオーバーシートA〜C、P〜Rと、製造例7で得たコアシートEとを、表1に示す構成により、実施例1〜3、及び比較例1〜3として、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
(考察)
表1に示すように、実施例1〜3は、いずれもオーバーシートの透明性と耐熱性に優れ、更に、加熱積層工程における金型からの離型性、気泡抜け性に優れ、かつ、各層間との加熱融着性と表面光沢及びレーザー印字性に優れるものであった。これに対して、比較例1は、オーバーシートPのコア層ポリマーアロイは、H−PETG/PC=90/10を使用したために、レーザー印字性(発色性)が悪く、耐熱性にも劣るものであった。
【0085】
また、比較例2は、オーバーシートQのスキン層ポリマーアロイはPCT/PC=10/90を使用したために、カード積層工程において通常の加熱プレス温度(160℃)においては層間加熱融着性に問題があり、また光沢不足(劣る)で視認性に劣るものであった。更に比較例3は、オーバーシートRのスキン層をPETG、コア層をPETG/PC=30/70を使用したために、レーザー発色性とシートの耐熱性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のカード用シートは、非PVC系のカード用シートであり、カード用オーバーシートに用いた場合は、優れたレーザーマーキング性、耐熱性と透明性に優れ、非接触式、接触式カード用オーバーシートとして好適に使用できる。また、カード用コアシートに用いた場合は、白色性、印刷性及び耐熱性に優れ、カードの積層、加熱プレス工程においても、シートの搬送性、積層性、加熱によるシートの変形“ソリ”もなく耐熱性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキン層の間にコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成されるカード用シートであって、
前記3層シートの前記スキン層またはコア層の少なくとも1層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とのポリマーアロイからなり、前記3層シートの全厚さが50〜400μm、前記コア層の厚さが、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が25%以上、85%未満からなる耐熱性と加熱融着性に優れたカード用シート。
【請求項2】
前記コア層が、ポリカーボネート系樹脂またはガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とのポリマーアロイからなり、前記樹脂またはポリマーアロイ100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収体を、0.0001〜3質量部含有する請求項1に記載のカード用シート。
【請求項3】
前記3層シートの両最外層である前記スキン層が、ガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂またはガラス転移温度が90℃以上の非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂80〜20質量%とポリカーボネート系樹脂20〜80質量%とからなるポリマーアロイの各々100質量部に対して、白色無機顔料を5質量部以上含有する組成物から構成され、前記3層シートの少なくとも片面が、平均粗さ(Ra)0.1〜10μmのマット加工が施されている請求項1または2に記載のカード用シート。

【公開番号】特開2013−1090(P2013−1090A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137861(P2011−137861)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】