説明

カード発行装置

【課題】カードに対して所定の処理を施す処理部を複数有するカード発行装置について、設置スペースを省スペース化することである。
【解決手段】 被処理カードに処理を施して処理済カードを発行するカード発行装置において、被処理カードの表面に、文字列及び記号のうち、少なくとも一方を形成する処理を実行する第1処理部、及び、被処理カードが備える記録媒体に情報を記録させる処理を実行する第2処理部を少なくとも含む複数の処理部を有し、複数の処理部の各々が上下方向に並べてカード発行装置本体に据え付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード発行装置に係り、特に、被処理カードに対して処理を施して処理済カードを作成し、当該処理済カードをカード利用者に対して発行するカード発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードやキャッシュカード等のカードは、その利用者が申し込みを行うことにより発行され、従来は、申し込みを行ってから数日後に利用者の元に送付されていた。
一方、近年、カードの即時発行に対するニーズが高まってきており、利用者が窓口で申し込みを行った場合、同窓口にてカードを利用者に手渡すことが可能なシステムの構築が求められている。上記のニーズに対応可能なカード発行システムについては、既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたICカード即時発行システムには、利用者が訪れる店舗に設置されたカード発行機と、店舗とは異なるセンターに設置されたセンターサーバと、により構築されている。そして、店舗内のブースで利用者がカード発行の申し込み(具体的には、顧客データの入力作業)を行うと、当該顧客データがセンターサーバに送られ、センターサーバ側では、上記顧客データに基づいて、カード発行の可否を審査するための処理が行われる。そして、カードの発行を許可する場合、センターサーバ側では、カードを発行するために必要なデータが生成され、当該データが店舗側で受信されると、カード発行機が作動し、上記のデータに基づいて所定の処理を実行することにより、最終的に利用者の申し込み内容に応じたカードを発行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−48630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カードの即時発行を実現するためには、プリンタやエンボッサーのようにカード表面に印字や打刻をする機器、カードに印字された文字列や記号を覆うためにラベルを貼り付ける機器、ICライターやエンコーダーのようにICチップや磁気ストライプ等に情報を書き込む機器等をカード発行機に搭載することになる。すなわち、カードの即時発行が可能なカード発行機は、複数の機能を具備するように、カードに対して所定の処理を施す機器を複数搭載した構成となっている。
【0006】
一方、カード発行機を設置した店舗では、店舗内のスペースを有効利用する上で、カード発行機の設置スペースについて、極力省スペース化する必要があり、特に、カードの即時発行が可能なカード発行機については、上述したように、カードに対して所定の処理を施す機器が複数搭載されるので、設置スペースに関する問題が顕在化することになる。
【0007】
さらに、カード発行機に搭載される機器(カードに対して処理を施す機器)の組み合わせや各機器の配置については、多様なバリエーションがあり、例えば、発行するカードの種類に応じて決定されるものである。つまり、カード発行機の仕様として、カード発行機に搭載される機器の組み合わせや各機器の配置については、カード発行機のユーザが自由に設計できるようにした方が望ましい。また、上記機器の組み合わせの如何によらず、カード発行機内におけるカードの搬送経路が柔軟に対応できるものになっている必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カードに対して所定の処理を施す処理部を複数有するカード発行装置について、設置スペースを省スペース化することである。また、本発明の他の目的は、カードに対して所定の処理を施す処理部を複数有するカード発行装置について、カード発行機のユーザのニーズに応じて、処理部の組み合わせの自由度を向上させると共に、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟に対応できるカードの搬送経路を装置内に備えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明のカード発行装置によれば、被処理カードに処理を施して作成した処理済カードを、カード利用者に対して発行するカード発行装置であって、前記被処理カードの表面に、文字列及び記号のうち、少なくとも一方を形成する処理を実行する第1処理部、及び、前記被処理カードが備える記録媒体に情報を記録させる処理を実行する第2処理部を少なくとも含む複数の処理部を有し、複数の前記処理部の各々が上下方向に並べてカード発行装置本体に据え付けられていることにより解決される。
かかるカード発行装置によれば、複数の処理部の各々が縦並びの状態でカード発行装置本体に据え付けられているので、複数の処理部の各々が横並びの状態で据え付けられる構成に比べて、設置面積を縮小することが可能になる。すなわち、カード発行装置の設置スペースが省スペース化され、もって、カード発行装置が設置された店舗等における内部スペースを有効利用することが可能になる。
【0010】
そして、上記のカード発行装置において、複数の前記処理部の各々は、構成要素がユニットとして一体化されたものであり、前記カード発行装置本体に対して着脱可能であり、前記被処理カードを収納する収納部と、該収納部から前記被処理カードを受け取り、受け取った前記被処理カードを上下方向に搬送して各前記処理部に引き渡す昇降部と、を備え、該昇降部は、複数の前記処理部のうち、一の処理部に前記被処理カードを引き渡し、前記一の処理部による処理の実行後、前記一の処理部から前記被処理カードを再度受け取り、前記一の処理部から受け取った前記被処理カードを他の処理部に引き渡すために上下方向に搬送することにより、処理部の組み合わせの自由度が向上すると共に、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟なカード搬送経路が装置内に備わるようになる。
【0011】
具体的に説明すると、複数の処理部の各々は、その構成要素がユニットとして一体化されているため、カード装置本体に対して容易に据え付けることが可能である。その上、各処理部は、カード発行装置本体に対して着脱可能であるので、処理部の組み合わせを自由に設定することが可能になる。
さらに、カード搬送機構として昇降部を備え、当該昇降部が、各処理部にカード(被処理カード)を引き渡すために上下方向にカードを搬送し、各処理部での処理の終了後には再び処理部からカードを受け取る。このように、上記のカード発行装置では、処理部による処理が行われた後には、カードが昇降部に戻され、次の処理工程に向かうように昇降部により搬送される。これにより、処理部の組み合わせを変えた場合であっても、カード搬送経路の見直しが不要であり、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟なカード搬送経路が装置内に備わるようになる。
【0012】
また、上記の構成に加えて、複数の前記処理部には、前記文字列及び前記記号のうち、前記第1処理部により前記被処理カードの表面に形成されたものを覆い隠す覆い部材を前記被処理カードの表面に貼り付ける処理を実行する第3処理部が含まれ、前記昇降部は、前記第1処理部に前記被処理カードを引き渡し、前記第1処理部による処理の実行後、前記第1処理部から前記被処理カードを再度受け取り、前記第1処理部から受け取った前記被処理カードを前記第3処理部に引き渡すために上下方向に搬送すると、好適である。かかる構成であれば、例えば、印字された文字を隠すためにラベルやシールが貼り付けられるカードを発行するカード発行装置について、設置スペースの省スペース化を図ると共に、ユーザニーズに応じて、処理部の組み合わせの自由度を向上させ、更には、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟に対応できるカードの搬送経路が装置内に備えられるようになる。
【0013】
また、上記の構成に加えて、前記カード発行装置は、複数種の前記被処理カードを加工することにより複数種の前記処理済カードを作成することが可能であり、前記収納部が前記被処理カードの種類毎に備えられていると、より好適である。かかる構成であれば、複数種のカードの各々を発行することが可能なカード発行装置について、設置スペースの省スペース化を図ると共に、ユーザニーズに応じて、処理部の組み合わせの自由度を向上させ、更には、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟に対応できるカードの搬送経路が装置内に備えられるようになる。
【0014】
また、上記の構成に加えて、前記カード発行装置本体は、内部に前記処理部を1台だけ格納する格納部を、上下方向に並べた状態で前記処理部の台数以上備え、前記格納部別に設けられた、前記格納部の内部に格納された処理部と接続する接続端子と、前記処理部側に設けられ、前記格納部の内部において前記処理部が前記接続端子に接続されると前記処理部を特定するための信号を出力する信号出力部と、該信号出力部から受信した前記信号に基づいて、各前記格納部に、複数の前記処理部のうち、いずれの前記処理部が格納されているのかを認識するとともに、前記格納部と前記処理部との対応関係に基づいて、上下方向において、前記被処理カードを引き渡す前記処理部が格納された前記格納部の位置まで前記被処理カードが搬送されるように前記昇降部を制御する制御部と、を有すると、より一層好適である。かかる構成であれば、カード発行装置側で格納部と処理部との対応関係が把握されており、当該対応関係に基づいてカード(被処理カード)を適切に搬送することが可能となる。この結果、カードに対して処理部による処理が順序良く行われるように、カードを適切に搬送することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカード発行装置によれば、設置スペースを省スペース化することができ、もって、カード発行装置が設置された店舗等における内部スペースを有効利用することが可能になる。また、カード発行装置に搭載される処理部の組み合わせについて、自由度が向上する。さらに、上記処理部の組み合わせのバリエーションに対して柔軟なカード搬送経路が装置内に備わるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カード発行手続の手順を示す図である。
【図2】本実施形態に係るカード発行装置1の模式斜視図である。
【図3】本実施形態に係るカード発行装置1の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るカード発行装置1内の機構を示す概念図である。
【図5】ラベルLの貼り付けに関する説明図である。
【図6】カード発行プロセスの流れを示す図である。
【図7】カード即時発行システムSの概念図である。
【図8A】カード発行装置1により発行される処理済カードCの一例を示す図である(その1)。
【図8B】カード発行装置1により発行される処理済カードCの一例を示す図である(その2)。
【図9】カードを即時発行する際の処理の流れを示す図である。
【図10】制御端末200の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係るカード発行装置1について、図1〜図10を参照しながら説明する。図1は、カード発行手続の手順を示す図である。図2は、本実施形態に係るカード発行装置1の模式斜視図である。図3は、本実施形態に係るカード発行装置1の構成を示すブロック図である。図4は、本実施形態に係るカード発行装置1内の機構を示す概念図である。図5は、ラベルLの貼り付けに関する説明図である。図6は、カード発行プロセスの流れを示す図である。図7は、カード即時発行システムSの概念図である。図8A及び8Bは、カード発行装置1により発行される処理済カードCの一例を示す図であり、図8Aは、処理済カードCの表側を示しており、図8Bは、処理済カードCの裏側を示している。図9は、カードを即時発行する際の処理の流れを示す図である。図10は、制御端末200の表示画面を示す図である。
【0018】
本実施形態に係るカード発行装置1は、図1に示すように、銀行やクレジットカード会社等のカード発行会社が所有する、カード利用者が申し込んだカードを発行するための装置である。より具体的に説明すると、カード発行装置1は、被処理カードCxに対して後述する各処理機器50による処理を施して処理済カードCを作成し、該処理済カードCをカード利用者に対して発行する。
【0019】
ここで、処理済カードCとは、所定の処理が完了した状態のカードであり、本実施形態においては、カード利用者が利用できる状態(換言すると、カード利用者に手渡すことが可能な状態)にあるカードのことである。また、被処理カードCxとは、処理が未完了状態のカードであり、本実施形態においては、ICチップ100や磁気ストライプ110(図8A及び8B参照)にデータが未だ書き込まれておらず、かつ、カード番号やカード利用者に関する情報を示す文字列や記号がカード表面に印刷又は打刻されていない状態のカードである。
【0020】
また、本実施形態では、被処理カードCxが後述のホッパ20の内部に束状に収納されており(図3参照)、ホッパ20内の残数に応じて適宜補給されることになっている。なお、ホッパ20内に収納された状態の被処理カードCxは、予めカードの種類に応じた図柄やイラストが印刷されており、ICチップ100や磁気ストライプ110等の記録媒体が所定位置に予め取り付けられた状態にある。
【0021】
本実施形態に係るカード発行装置1の構成について説明すると、図2及び図3に示すように、カード発行装置本体10と、収納部としてのホッパ20と、昇降部としてのカード昇降機構30と、制御部としてのコントローラ40と、処理部としての処理機器50と、が主な構成要素としてカード発行装置1に備えられている。
【0022】
カード発行装置本体10は、上述した構成要素のうち、カード発行装置本体10以外のもの(具体的にはホッパ20、カード昇降機構30、コントローラ40、及び、処理機器50)を内部に搭載する筐体である。特に、本実施形態に係るカード発生装置本体10には、処理機器50を複数搭載するためのスペースが内部に形成されている。すなわち、本実施形態に係るカード発行装置1は、処理機器50を複数備えており、カード発行装置本体10には、内部に処理機器50を1台だけ格納する格納部としてのチャンバ15が、処理機器50の台数以上備えられている。
【0023】
そして、本実施形態では、処理機器50の台数以上のチャンバ15が、上下方向に並んだ状態で、カード発行装置本体10に備えられている。具体的に説明すると、図2に示すように、カード発行装置本体10の内部空間の奥側には、処理機器50を据え付ける際の基台となるベースプレート14が上下方向に並べて複数設置されており、ベースプレート14によって仕切られた各空間内、すなわち、チャンバ15内に処理機器50が一台ずつ格納されることになる。
【0024】
また、カード発行装置本体10は、図2に示すように、開閉自在な扉を複数有する。具体的に説明すると、カード発行装置本体10の正面パネルには、ホッパ20へのカード補充のために開けられる補充用扉11と、不良カード(例えば、ICチップ100へのデータの書き込みが正常に行われなかったカード)を取り出すために開けられるカード取り出し用扉12が設けられている。また、カード発行装置本体10の側面パネルには、カード昇降機構30の点検等のために開けられる点検用扉13が設けられている。さらに、カード発行装置本体10の上面パネル及び側面パネルには、カード発行装置本体10に対する処理機器50の着脱作業のために開けられる着脱用扉14A、14Bが設けられている。
【0025】
さらに、カード発行装置本体10の上面パネルのうち、正面寄りの部分には、装置内での処理が全て終了して完成されたカード、すなわち、処理済カードCを装置外に排出するための排出口16が形成されている。また、本実施形態において、この排出口16は、免許証等のカード利用者所有の個人情報カードを装置内に取り込んで、当該個人情報カードから個人情報を特定する処理を装置内で行うにあたり、当該個人情報カードを挿入する挿入口としても機能する。
なお、排出口16から装置内に挿入された個人情報カードは、所定の処理が行われた後に、再び排出口16を通じて装置外に排出される。ただし、これに限定されるわけではなく、例えば、不良カードと同様の回収ルート、すなわち、カード取り出し用扉12を開けて装置外に取り出されることとしてもよい。
【0026】
ホッパ20は、被処理カードCxを束状に収納しておくものである。ホッパ20に収納された被処理カードCxは、カード発行プロセスの開始に伴って、引き渡し機構21(図4参照)により、1枚だけ抜き出されて、ホッパ20から後述のキャリッジ31に引き渡される。なお、本実施形態に係る引き渡し機構21は、回転ローラを備え、被処理カードCxの束のうち、最上位置にある被処理カードCxに上記の回転ローラを摺接させて、摩擦力によって当該被処理カードCxを1枚抜き出して引き渡すものであるが、これに限定されるものではなく、被処理カードCxの束から1枚抜き出して引き渡すものである限り、他の構成のものであってもよい。
【0027】
本実施形態に係るカード発行装置1では、図2に示すように、ホッパ20が上下方向に並んで複数備えられている。そして、本実施形態では、複数のホッパ20の中には、互いに種類が異なる被処理カードCxを収納しているホッパ20が存在する。
【0028】
より詳しく説明すると、本実施形態に係るカード発行装置1は、クレジットカード、キャッシュカード、インターネットバンキング用カード等、複数種の処理済カードCを発行することが可能である。すなわち、本実施形態に係るカード発行装置1では、カード利用者の申し込み内容に応じて、発行される処理済カードC(換言すると、加工処理の対象となる被処理カードCx)の種類が切り替えられるように、複数種の被処理カードCxがホッパ20内に収納されている。そして、複数種の被処理カードCxの各々に対して、当該種類に対応する処理を施すことにより、複数種の処理済カードCが作成されることになる。
【0029】
さらに、本実施形態では、ホッパ20が被処理カードCxの種類毎に備えられている。これにより、カード利用者の申し込み内容に応じた種類カード(処理済カードC)を発行するにあたって被処理カードCxをホッパ20から取り出す際には、上記の種類に対応するホッパ20から被処理カードCxを取り出せばよいことになる。
【0030】
カード昇降機構30は、各ホッパ20から被処理カードCxを受け取り、受け取った被処理カードCxを上下方向に搬送して、各処理機器50に引き渡すものである。このカード昇降機構30は、カード発行装置本体10の内部に設置されており、より具体的に説明すると、図2に示すように、カード発行装置本体10の奥行方向において、ホッパ20とチャンバ15との間に設置されている。
【0031】
カード昇降機構30は、図4に示すように、被処理カードCxを保持しながら上下方向に移動するキャリッジ31と、キャリッジ31を上下方向に移動させる不図示の駆動機構と、キャリッジ31上の被処理カードCxを処理機器50に引き渡すために作動する引き渡し機32と、を有する。かかる構成のカード昇降機構30は、ホッパ20から被処理カードCxが1枚取り出されると、キャリッジ31が、その上面にて被処理カードCxを受け取り、以降、被処理カードCxを上面に載置させながら上下移動することにより、上下方向において被処理カードCxを搬送する。そして、上下方向において、搬送先である処理機器50が位置する位置にキャリッジ31が到達した時点で、引き渡し機32が作動し、キャリッジ31上の被処理カードCxが所定の処理機器50に引き渡されるようになる。
【0032】
そして、本実施形態において、カード昇降機構30は、各処理機器50による処理が終了すると、当該各処理機器50から被処理カードCxを再度受け取り、上下方向において、次の処理を担当する処理機器50が位置する位置まで被処理カードCxを搬送する。このように、本実施形態では、カード昇降機構30が複数の処理機器50のうち、一の処理機器50に被処理カードCxを引き渡し、当該一の処理機器50による処理の実行後には、カード昇降機構30が当該一の処理機器50から被処理カードCxを再度受け取り、一の処理機器50から受け取った被処理カードCxを他の処理機器50に引き渡すために(次の処理工程に向かうように)上下方向に再搬送する。最終的に、装置内での全ての処理が終了したカード、すなわち、処理済カードCは、カード昇降機構30に引き渡されて、カード昇降機構30によって搬送経路の一端位置(例えば、上端位置)まで搬送され、その後、不図示の排出機構によって前述の排出口16を通じて装置外に排出される。
【0033】
処理機器50は、処理済カードCを作成するために被処理カードCxに対して所定の処理を実行する機器であり、前述したように、本実施形態ではカード発行装置本体10内に複数搭載されている。以下、処理機器50としてカード発行装置本体10内に搭載され得る機器について説明する。
【0034】
第1の処理機器50としては、プリンタ、エンボッサー及びインデンター等、被処理カードCxの表面に、文字列及び記号のうち、少なくとも一方を形成する処理を実行する機器が挙げられる。これらの機器は、第1処理部に相当し、後述する制御端末200からの送信データに従って、カード番号、カードの有効期限、カード利用者の氏名等を示す文字列や記号をカード表面に形成する。
【0035】
なお、プリンタは、インクやトナー等によりカード表面に文字列や記号を印字するものであり、エンボッサーは、エンボスにてカード表面に文字列や記号を打刻するものであり、インデンターは、インデントにてカード表面に文字列や記号を打刻印字するものである。第1の処理機器50として上述した機器のうち、いずれの機器を用いるかについては、発行するカード(処理済カードC)の種類や、カード表面に形成される文字列や記号が示す内容等によって決定され、例えば、クレジットカードを発行する場合には必ずインデンターが使用される。
【0036】
第2の処理機器50としては、ICライターやエンコーダー等、ICチップ100や磁気ストライプ110のような被処理カードCxが備える記録媒体に情報を記録させる処理を実行する機器が挙げられる。これらの機器は、第2処理部に相当し、後述する制御端末200からの送信データに従って、データ化されたカード番号、カードの有効期限、暗証番号等の情報(データ)を記録媒体に書き込む。なお、第2の処理機器50として上述した機器のうち、いずれの機器を用いるかについては、カードに取り付けられた記録媒体の種類等によって決定され、例えば、非接触ICカードを発行する際には、非接触ICカード専用のライターが使用される。また、ICライター及びエンコーダーの双方の機能を備えた複合機を用いることとしてもよい。
【0037】
第3の処理機器50としては、ラベラーやシーラー等、被処理カードCxのカード表面に形成された文字列及び記号のうち、上記の第1の処理機器(具体的には、プリンタ)によって形成されたものを覆い隠すラベルL(例えば、図5参照)やシールを被処理カードCxの表面に貼り付ける処理を実行する機器が挙げられる。これらの機器は、第3処理部に相当し、例えば、プリンタが所定の文字列を印字した場合に、セキュリティのために、その文字列を覆い隠す覆い部材としてのラベルL等をカード表面のうち、上記の文字列が形成された範囲の上に貼り付ける。ここで、ラベルL等によって覆い隠される文字列としては、例えば、インターネットバンキング用カードに印字される暗証番号(インターネットバンキング利用時のパスワード)を示す文字列である。
【0038】
なお、通常、第3の処理機器50がカード表面に貼り付けるラベルLとしては、裏面全体に接着剤が塗布された接着紙が用いられる。ただし、ラベルLは、最終的にカード利用者にカードが手渡された後にカード利用者によって剥離され、それまで覆い隠された文字列や記号がカード利用者によって視認されるようになる。このため、本実施形態では、通常のラベル貼り付けとは異なり、図5に示すように、ラベルL等をカード表面に貼り付けるために使用される接着剤(例えば、ホットメルト剤)を、ラベルL等にて覆い隠される文字列や記号の形成位置を外れた位置にドット状に塗布することとしている。このような接着剤の塗布方法により、ラベルLの剥離に伴って文字列や記号(特に、印刷により形成された文字列や記号)が掠れてしまうのを防止することができる。かかる点において、本実施形態にて採用されているラベルLの貼り付け方法は、通常の方法よりも好適である。
【0039】
第4の処理機器50としては、被処理カードCxの姿勢を転換する処理を実行する機構が挙げられる。ここで、被処理カードCxの姿勢を転換するとは、装置内において被処理カードCxを表裏反転させたり、上下反転させたりすることである。
【0040】
被処理カードCxの表裏反転は、例えば、被処理カードCxの表側表面に印字を行った後で裏側表面にも印字を行う場合に行われる。つまり、上記のプリンタによる印字処理を実行した後に、被処理カードCxの表裏反転を行って、上記のプリンタによる印字処理を再び実行すれば、被処理カードCxの両面印刷が可能になる。
【0041】
被処理カードCxの上下反転は、例えば、裏側表面の上端部と下端部の双方に磁気ストライプ110が取り付けられている被処理カードCxに対して、各々の磁気ストライプ110にデータを書き込む処理を実行する場合に行われる。つまり、上記のエンコーダーによって一方の磁気ストライプ110にデータを書き込む処理を実行した後に、被処理カードCxの上下反転を行ってから再度エンコーダーによる処理を実行すると、他方の磁気ストライプ110にもデータが書き込まれるようになる。この結果、上下の磁気ストライプ110に対して個別にエンコーダーを設ける必要がなくなり、1台のエンコーダーのみで上下の磁気ストライプ110の各々にデータを書き込むことが可能になる。
【0042】
なお、被処理カードCxの姿勢を転換する処理を実行する機器については、当該機器単独でカード発行装置本体10に取り付けられる構成が考えられるが、これ以外の構成であってもよく、例えば、姿勢転換機器がプリンタやエンコーダー内に一構成要素として取り付けられている構成であってもよい。すなわち、上述した第1の処理機器50や第2の処理機器50の内部に、被処理カードCxの姿勢を転換する機構が組み込まれていることとしてもよい。
【0043】
第5の処理機器50としては、画像処理機器や検証処理機器等、不良なカードを選別するための点検処理を実行する機器が挙げられる。これらの機器は、画像処理や検証処理を除く全ての処理が完了したカードについて、外観上の欠陥(特に、印字や打刻のミス)や記録媒体へのデータの書き込み異常の有無を確認する。そして、正常と判断されたカード(処理済カードC)については、カード昇降機構30に引き渡された後に所定位置(搬送経路の一端位置)まで搬送され、その後、前述の排出口16を通じて装置外に排出される。他方、不良と判断されたカードについては、不図示の回収機構によってリジェクトボックス60に回収される。リジェクトボックス60に回収された不良カードは、前述のカード取り出し用扉12から装置外に取り出され、最終的に廃棄される。
【0044】
なお、第5の処理機器50としての画像処理機器については、カード発行装置1内で作成されたカードの印刷状態を点検する他、排出口16から装置内に挿入されたカード利用者所有の個人情報カードを読み込んで、カード利用者の個人情報を取得する処理を実行するものであってもよい。
【0045】
本実施形態において、以上までに説明してきた処理機器50は、いずれも、その構成要素がユニットとして一体化されており、さらに、カード発行装置本体10に対して着脱可能となっている。つまり、本実施形態において、各処理機器50は、一モジュールとして構成されており、ボルト又はビスにより着脱自在にカード発行装置本体10に据え付けることが可能である。これにより、カード発行装置本体10に対する各処理機器50の取り付けや取り外しが、容易に行われるようになる。
【0046】
さらに、前述したように、カード発行装置本体10には、各処理機器50を格納するチャンバ15が上下方向に並んで複数備えられている。したがって、本実施形態に係るカード発行装置1では、複数の処理機器50の各々が上下方向に並べてカード発行装置本体10に据え付けられていることになる。つまり、本実施形態では、複数の処理機器50の各々が縦並びの状態でカード発行装置本体10に据え付けられているので、複数の処理機器50の各々が横並びの状態で据え付けられる構成に比べて、設置面積を縮小することが可能になる。すなわち、カード発行装置1の設置スペースが省スペース化され、もって、カード発行装置1が設置された店舗等における内部スペースを有効利用することが可能になる。
【0047】
ところで、カード発行装置1に備えられる処理機器50の組み合わせについては、発行するカード(処理済カードC)の種類や、カード発行装置1自体の仕様によって様々である。一方、前述した処理機器50のうち、プリンタ、エンボッサー及びインデンター等の処理機器50(すなわち、第1処理部に相当する処理機器50)と、ICライターやエンコーダー等の処理機器(すなわち、第2処理部に相当する処理機器50)とは、カード発行装置1に必須の処理機器50である。つまり、カード発行装置1に備えられる処理機器50の組み合わせとして、上述した各種の処理機器50のうち、いずれを装置内に搭載するかについては、少なくとも必須の処理機器50(すなわち、第1処理部及び第2処理部)を含むものである限り、装置ユーザであるカード発行会社のニーズに応じて自由に設計可能である。換言すると、本実施形態に係るカード発行装置1の構成により、従来の装置に比較して、処理機器50の組み合わせの自由度が向上することになる。
【0048】
さらに、上述したように、本実施形態では、カード発行装置本体10に対する各処理機器50の取り付けや取り外しを容易に行うことができるので、カード発行装置1の設置後に処理機器50の組み合わせを変更する場合であっても容易に対応することが可能である。
【0049】
また、上述したように、各処理機器50は、カード昇降機構30から被処理カードCxを受け取って、当該被処理カードCxに対して各自の処理を実行した後に、再びカード昇降機構30に処理後のカードを引き渡す。
【0050】
各処理機器50におけるカードの移動について、図4を参照しながら説明すると、カード昇降機構30から処理機器50に受け渡された被処理カードCxは、処理機器50内に設けられた搬送機構51により、処理機器50内に形成された搬送経路に沿って、処理機器50において処理を実行する実行部52に向けて搬送される。そして、被処理カードCxが実行部52の下部を通過する際に所定の処理が被処理カードCxに施され、処理後のカードは、引き続き搬送経路に沿って搬送され、図4に示すように、カード昇降機構30から処理機器50へカードが引き渡された地点まで戻ってくるようになる。そして、当該地点において、処理後のカードは、再びカード昇降機構30に引き渡されるようになる。
【0051】
以上のように、本実施形態では、カード昇降機構30が、複数の処理機器50のうち、一の処理機器50に被処理カードCxを引き渡し、その一の処理機器50による処理の実行後、一の処理部から被処理カードCxを再度受け取る。そして、カード昇降機構30は、上記の一の処理機器50から受け取った被処理カードCxを、他の処理機器50に引き渡すために上下方向に搬送する。つまり、本実施形態に係るカード発行装置1では、各処理機器50による処理が行われた後には、被処理カードCxがカード昇降機構30に戻され、次の処理工程に向かうようにカード昇降機構30により搬送される。これにより、処理機器50の組み合わせを変えた場合であっても、カード搬送経路を見直す必要がなく、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟なカード搬送経路が装置内に備わるようになる。
【0052】
なお、複数の処理機器50の中にラベラーやシーラー等の処理機器50(第3処理部に相当する処理機器50であり、以下、ラベラー等)が含まれる場合、カード昇降機構30は、プリンタ等の処理機器50(第1処理部に相当する処理機器50であり、以下、プリンタ等)に被処理カードCxを引き渡し、プリンタ等による処理の実行後、プリンタ等から被処理カードCxを再度受け取る。そして、カード昇降機構30は、プリンタ等から受け取った被処理カードCxをラベラー等に引き渡すために上下方向に搬送する。これにより、例えば、印字された文字列を隠すためにラベルLやシールが貼り付けられたカード(処理済カードC)を発行するカード発行装置1について、設置スペースの省スペース化を図ると共に、ユーザニーズに応じて、処理機器50の組み合わせの自由度を向上させ、更には、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟に対応できるカードの搬送経路が装置内に備えられるようになる。
【0053】
コントローラ40は、カード発行装置1各部(特に、ホッパ20内の引き渡し機構21、カード昇降機構30及び各処理機器50)を制御して、カード発行プロセスを実施するものである。このコントローラ40は、図3に示すように、CPU41、メモリ42及び制御回路43により構成されている。メモリ42には、制御用のプログラム(すなわち、デバイスドライバ)がインストールされている。また、コントローラ40は、不図示の通信用インターフェースを介して、制御端末200と通信可能である。そして、コントローラ40は、制御端末200から送信されるカード発行命令及びカード作成用データを受信すると、制御回路43を通じてカード発行装置1各部を制御して、カード発行プロセスを実施する。
【0054】
より具体的に説明すると、カード発行装置1は不図示の電源に接続されており、当該電源の電力が、制御回路43を通じて、カード発行装置1各部に供給される。また、制御回路43には、処理機器50と接続する接続端子44を備えている。この接続端子44は、チャンバ15別に設けられており、チャンバ15の内部に格納された処理機器50が接続端子44に接続されることにより、当該処理機器50と制御回路43とが、接続端子44を介して電気的に接続されることになる(すなわち、処理機器50に電力を供給することが可能になる)。
【0055】
一方、各処理機器50側には、チャンバ15の内部において接続端子44に接続されると、処理機器50を特定するための信号を出力する信号出力部53が備えられている。そして、コントローラ40は、信号出力部53からの信号を受信すると、受信した信号に基づいて、各チャンバ15に、複数の処理機器50のうち、いずれの処理機器50が格納されているのかを認識できるようになる。かかる認識処理は、内部に処理機器50が格納されたチャンバ15毎に実行される。これにより、コントローラ40は、チャンバ15とチャンバ15内に格納された処理機器50との対応関係を把握するようになる。
【0056】
そして、コントローラ40は、上記の対応関係に基づいて、上下方向において、被処理カードCxを引き渡す処理機器50が格納されたチャンバ15の位置まで被処理カードCxが搬送されるようにカード昇降機構30を制御する。以上のように、カード発行装置1内では、コントローラ40の制御により、チャンバ15と処理機器50との対応関係に基づいてカード(被処理カードCx)を適切に搬送することが可能となる。この結果、カードに対して処理が順序良く施されるように、カードが適切に搬送されるようになる。
【0057】
つまり、本実施形態では、前述したように、処理機器50の組み合わせを自由に設定することができ、さらに、各処理機器50を格納するチャンバ15についても自由に選定することができる。一方で、チャンバ15内で処理機器50が接続端子44に接続されると、当該処理機器50を特定するための信号が処理機器50側からコントローラ40に向けて送信される。上記の信号を受信したコントローラ40は、当該信号に基づいて、各チャンバ15に、いずれの処理機器50が格納されているのかを認識する。これにより、コントローラ40は、上下方向における各処理機器50の位置(設置位置)を把握し、カード昇降機構30は、コントローラ40による制御の下、各処理機器50に順序良く被処理カードCxを引き渡せるように、被処理カードCxを適切に搬送することが可能になる。
【0058】
次に、上記コントローラ40の制御によって実施されるカード発行プロセスについて、図6を参照しながら説明する。
カード発行プロセスの実施に先立ち、コントローラ40は、前述したように、チャンバ15と処理機器50との対応関係(つまり、どのチャンバ15にどの処理機器50が格納されているか)を把握する(S001)。
【0059】
その後、コントローラ40が制御端末200からカード発行命令及びカード作成用データを受信すると、カード発行プロセスが開始される(S002)。コントローラ40は、カード作成用データを解析し、カード発行装置1の各部を制御する。先ず、コントローラ40は、カード作成用データから発行すべきカードの種類を特定し、当該種類に対応したホッパ20から被処理カードCxを、引き渡し機構21によって1枚取り出してカード昇降機構30に引き渡す(S003)。
【0060】
次に、コントローラ40は、カード昇降機構30を制御して、1番目の処理を実行する処理機器50が格納されたチャンバ15の位置まで、被処理カードCxを昇降移動させる(S004)。そして、上記の位置にキャリッジ31が到達した時点で、カード昇降機構30から1番目の処理を実行する処理機器50へ被処理カードCxが引き渡される。その後、コントローラ40が、1番目の処理を実行する処理機器50を制御することにより、1番目の処理が被処理カードCxに対して実行される(S005)。
【0061】
1番目の処理の実行後、被処理カードCxは、処理機器50の搬送機構51によって再びカード昇降機構30に戻される。以降、コントローラ40は、全ての処理が完了するまで、カード作成用データに基づいて、カード昇降機構30による搬送動作と、処理機器50による処理実行動作とを交互に繰り返す(S006)。そして、コントローラ40は、全ての処理が完了した時点でカード完成の判断をする(S007)。なお、カード発行プロセスにおいて最後に実行される処理として、カードの異常の有無を点検する点検処理が実行され、不良なカードについてはリジェクトボックス60に回収される。これに対し、正常なカードについては、下記の手順により処理される。
【0062】
コントローラ40は、全ての処理が完了した後、完成したカード(処理済カードC)を搬送経路の一端(上端)までカード昇降機構30に搬送させてから、不図示の排出機構により前述の排出口16を通じて処理済カードCを装置外に排出する(S008)。そして、処理済カードCの排出動作の終了を以って、カード発行プロセスが終了する。
【0063】
<<本実施形態に係るカード発行システムについて>>
次に、以上までに説明してきたカード発行装置1を構成要素として有するカード発行システムの一実施形態について、図7〜図10を参照しながら説明する。
本実施形態に係るカード発行システムは、カード利用者の申し込みがあった場合に即時にカードを発行すること可能なシステム(以下、カード即時発行システムS)である。より具体的に説明すると、カード即時発行システムSは、例えば、図8A及び8Bに図示された処理済カードC(以下、ICカード)、及び、図5に図示された処理済カードC(暗証番号が記載されたカードであり、以下、暗証番号用カード)を、カード利用者の申し込みに応じて即時に発行することが可能である。
【0064】
ICカードは、図8A及び8Bに示すように、表側表面にICチップ100を有し、裏側表面に磁気ストライプ110を有する。磁気ストライプ110については、上端側に1個備えられている構成に限らず、上端側及び下端側にそれぞれ備えられている構成であっても良い。また、ICカードの表側表面には、プリンタによって、カード番号やカードの有効期限、カード利用者の氏名を示す印刷文字列120が形成されている。但し、これらの文字情報については、プリンタの印字によって形成されるものに限らず、エンボッサーの打刻によって形成されるもの、或いは、インデンターの打刻印字によって形成されるものであってもよい。なお、ICカードについては、複数の図柄のものが用意されており、カード利用者は、カード申し込み時に、これら複数種のカードの中から発行対象のカードを選択することが可能である。
【0065】
暗証番号用カードは、上記ICカードの発行に付随して発行されるものであり、その裏側表面には、図5に示すように、暗証番号を示す印刷文字列121が形成されており、さらに当該印刷文字列121を覆い隠すラベルLが貼り付けられている。なお、暗証番号用カードについても、複数の図柄のものが用意されており、カード利用者は、カード申し込み時に、これら複数種のカードの中から発行対象のカードを選択することが可能である。
【0066】
上記2つのカードを即時発行するための構成として、カード即時発行システムSは、図7に示すように、カード発行装置1と、制御端末200と、システムサーバ300と、によって構成されている。カード発行装置1は、前述したように、カード発行会社の店舗に設置されている。
【0067】
制御端末200は、カード発行装置1と同様に、カード発行会社の店舗に設置されている。制御端末200は、カード発行装置1との間で通信可能であり、カード利用者の申し込みに応じてカード発行命令やカード作成用データを生成し、これらのデータをカード発行装置1に向けて送信する。
【0068】
具体的に説明すると、カード発行会社の店舗にてカード利用者がカード発行の申し込み手続を行う際に、制御端末200の表示画面を見ながら、申し込み内容に応じた入力作業を行う。例えば、制御端末200の表示画面には、図10に示すように、選択可能なICカード及び暗証番号用カードの種類が提示され、カード利用者は、制御端末200にて希望のカード種類を選択する。なお、上記の入力作業については、カード利用者の代わりに、カード発行会社の従業員が行うこととしてもよい。
【0069】
そして、全ての入力作業が完了した後、制御端末200は、カード利用者に対して個人情報カードの提示を、表示画面を通じて要求する。当該要求を受けたカード利用者は、表示画面に表示された指示に従って、個人情報カードを所定のカード読み取り機に投入する。なお、本実施形態では、カード発行装置1内に、個人情報カードを読み取ってカード利用者の個人情報を取得する機器が設けられており、カード利用者は、個人情報カードを排出口16(図2参照)を通じて装置内に投入する。カード発行装置1内において個人情報カードが読み取られると、個人情報を示す電子データが生成されるようになり、当該電子データは、カード発行装置1から制御端末200に送信される。制御端末200は、上記の電子データを受信すると、当該受信データと、カード利用者が表示画面を見ながら入力した入力事項と、に基づいてカード作成用データを生成する。
【0070】
システムサーバ300は、カード発行会社の店舗とは異なるセンター内に設置されており、インターネットを通じて制御端末200と通信可能である。システムサーバ300は、制御端末200がカード発行装置1から受信したカード利用者の個人情報を示すデータを、制御端末200から受信し、当該データに基づいて、カード発行の可否を審査する。そして、システムサーバ300は、カード発行を許可する査定を行った場合、カード番号を採番し、採番されたカード番号を示すデータを制御端末200に送信する。当該データを受信した制御端末200側では、カード作成用データ生成の際、カード番号を示すデータをカード作成用データに組み込む。
【0071】
なお、本実施形態では、制御端末200側でカード作成用データが生成されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、制御端末200でカード利用者の入力操作が受け付けられた後、当該入力事項を示すデータ、及び、カード発行装置1内において個人情報カードが読み取って取得した個人情報を示すデータに基づき、システムサーバ300側でカード作成用データが生成されることとしてもよい。
【0072】
次に、上記のように構成されたカード即時発行システムSにおいて、カードを即時発行する手順について、カード発行装置1内において各処理機器50の処理が実行される順序を説明する。なお、以下では、カードの種類別に説明するものとする。
【0073】
ICカードを即時発行する手順について説明すると(すなわち、図9中、S011でカード種類として“ICカード”を選んだ場合)、ホッパ20からICカードに対応する被処理カードCxが供給された後に、当該被処理カードCxに対し、最初の処理として、ICチップ100や磁気ストライプ110へのデータの書き込み処理が実行される(S012)。ここで、磁気ストライプ110が被処理カードCxの上下端の各々に取り付けられている場合には(S013でYes)、上記の書き込み処理(具体的には、エンコーダーによる書き込み処理)を実行した後、被処理カードCxを上下反転させてから(S014)、再び書き込み処理を実行する(S015)。
【0074】
書き込み処理が終了した被処理カードCxに対しては、次に、カード番号等を示す文字列や記号をカード表面に形成する処理が実行される(S016)。ここで、被処理カードCxの表側表面及び裏側表面の両面に上記の文字列や記号を形成する場合には(S017でYes)、上記の文字等形成処理を実行した後、被処理カードCxを表裏反転させてから(S018)、再び文字等形成処理を実行する(S019)。なお、エンボッサーの打刻速度はプリンタの印字速度よりも遅いので、処理速度を重視するカード即時発行のプロセスでは、プリンタによって文字等形成処理を実行した方が好適である。
【0075】
データの書き込み処理と文字等形成処理がいずれも終了した被処理カードCxに対しては、次に、カードの異常の有無を点検する点検処理が実行される(S020)。当該点検処理において異常が無いと判断されたカード(すなわち、処理済カードC)については、正常品として装置外に排出されてカード利用者に手渡される。一方、異常が有ると判断されたカードについては不良品としてリジェクトボックス60に回収される。以上までに説明してきた手順により、ICカードの即時発行が実現される。
【0076】
次に、暗証番号用カードを即時発行する手順について説明すると(すなわち、図9中、S011でカード種類として“暗証番号用カード”を選んだ場合)、ホッパ20から暗証番号用カードに対応する被処理カードCxが供給された後に、当該被処理カードCxに対し、最初の処理として、暗証番号を示す文字列をカード表面に形成する処理が実行される(S021)。なお、当該文字列は次の処理にてラベルLにて覆い隠されるものであり、隠匿性の観点から考えれば、プリンタによって上記の文字列が印字されること(すなわち、印刷文字列121が形成されること)が好適である。但し、これに限定されるわけではなく、エンボッサーやインデンター等によって暗証番号を示す文字列を形成することとしてもよい。
【0077】
暗証番号を示す文字列が形成された被処理カードCxに対しては、次に、当該文字列が形成された部分を覆い隠すためにラベルLをカード表面に貼り付ける処理が実行される(S022)。その後、ICカードの場合と同様、カードの異常の有無を点検する点検処理が実行される(S020)。当該点検処理において異常が無いと判断されたカード(すなわち、処理済カードC)については、正常品として装置外に排出されてカード利用者に手渡される。一方、異常が有ると判断されたカードについては不良品としてリジェクトボックス60に回収される。以上までに説明してきた手順により、暗証番号用カードの即時発行が実現される。
【0078】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態には、主として本発明のカード発行装置1について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0079】
特に、カード発行手順に関し、上記の実施形態において説明した、各処理機器50による処理の実行順序については、あくまでも一例であり、上述の順序と異なる順序であってもよく、また、一部の処理については実行を省略することとしてもよい。さらに、上述した処理機器50(第1の処理機器50〜第5の処理機器50)以外の機能を有する処理機器50、例えば、カードの所定部位に生体認証情報を記録させる処理機器50等がカード発行装置1内に設けられていることとしてもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、複数種のカードを発行可能なカード発行装置1について説明した。つまり、上記の実施形態では、複数種のカードの各々を発行することが可能なカード発行装置1について、設置スペースの省スペース化を図ると共に、ユーザニーズに応じて、処理機器50の組み合わせの自由度を向上させ、更には、当該組み合わせのバリエーションに対して柔軟に対応できるカードの搬送経路を装置内に備えた構成を説明した。ただし、これに限定されるものではなく、単一の種類のカードを発行するカード発行装置1であっても、本発明は適用可能である。
【0081】
また、上記の実施形態では、カード発行装置1内に、カード利用者が所有する個人情報カードを読み取ってカード利用者の個人情報を取得する機器が設けられていることとしたが、これに限定されるものではなく、個人情報カードを読み取ってカード利用者の個人情報を取得する装置が、カード発行装置1とは別の装置として存在することとしてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、カード昇降機構30への被処理カードCxの供給(引き渡し)はホッパ20からのみ行われることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ホッパ20からの供給に加え、被処理カードCxを前述の排出口16を通じて手差し供給することが可能な構成であってもよい。
【0083】
また、上記の実施形態では、カード利用者の申し込みに応じて新たにカードを発行するケースについて説明した。つまり、上記の実施形態では、ICチップ100や磁気ストライプ110にデータが未だ書き込まれておらず、かつ、カード表面に印刷又は打刻されていない状態のカードを被処理カードCxとして、所定の処理を実行して処理済カードCを発行するカード発行装置1について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、カード利用者が所有するICカードに対して、ICチップ100へのデータの上書きや更新等の処理を施す装置、カード利用者が所有するカードに対して、ICチップ100や磁気ストライプ110等の記録媒体を取り付けて当該記録媒体に情報を記録させる処理を施す装置のように、既存のカードを被処理カードとして所定の処理を施すカード発行装置についても、本発明を適用することが可能である。
【0084】
また、上記の実施形態では、カード表側表面にICチップ100を、カード裏側表面に磁気ストライプ110を、それぞれ備えるカード(ICカード)、及び、カード裏側表面に暗証番号を示す文字列が形成されたカード(暗唱番号用カード)を発行するカード発行装置1を例に挙げて説明した。ただし、上述したカードの種類は、カード発行装置1が発行するカードの種類の一例に過ぎず、他の種類のカードであってもよい。例えば、カード裏側表面、又はカード表裏両面に磁気ストライプ110が取り付けられているICカード、カード表側表面、又はカードの表裏両面に磁気ストライプ110が取り付けられているICカード、カード表面、又はカードの表裏両面に暗証番号を示す文字列が形成された暗証番号用カードであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 カード発行装置、
10 カード発行装置本体、11 補充用扉、
12 カード取り出し用扉、13 点検用扉、14A,14B 着脱用扉、
14 ベースプレート、15 チャンバ、16 排出口、
20 ホッパ、21 引き渡し機構、
30 カード昇降機構、31 キャリッジ、32 引き渡し機、
40 コントローラ、41 CPU、42 メモリ、
43 制御回路、44 接続端子、
50 処理機器、51 搬送機構、52 実行部、53 信号出力部、
60 リジェクトボックス、
100 ICチップ、110 磁気ストライプ、120,121 印刷文字列、
200 制御端末、300 システムサーバ、
C 処理済カード、Cx 被処理カード、
L ラベル、S カード即時発行システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理カードに処理を施して作成した処理済カードを、カード利用者に対して発行するカード発行装置であって、
前記被処理カードの表面に、文字列及び記号のうち、少なくとも一方を形成する処理を実行する第1処理部、及び、前記被処理カードが備える記録媒体に情報を記録させる処理を実行する第2処理部を少なくとも含む複数の処理部を有し、
複数の前記処理部の各々が上下方向に並べてカード発行装置本体に据え付けられていることを特徴とするカード発行装置。
【請求項2】
複数の前記処理部の各々は、構成要素がユニットとして一体化されたものであり、前記カード発行装置本体に対して着脱可能であり、
前記被処理カードを収納する収納部と、
該収納部から前記被処理カードを受け取り、受け取った前記被処理カードを上下方向に搬送して各前記処理部に引き渡す昇降部と、を備え、
該昇降部は、複数の前記処理部のうち、一の処理部に前記被処理カードを引き渡し、前記一の処理部による処理の実行後、前記一の処理部から前記被処理カードを再度受け取り、前記一の処理部から受け取った前記被処理カードを他の処理部に引き渡すために上下方向に搬送することを特徴とする請求項1に記載のカード発行装置。
【請求項3】
複数の前記処理部には、前記文字列及び前記記号のうち、前記第1処理部により前記被処理カードの表面に形成されたものを覆い隠す覆い部材を前記被処理カードの表面に貼り付ける処理を実行する第3処理部が含まれ、
前記昇降部は、前記第1処理部に前記被処理カードを引き渡し、前記第1処理部による処理の実行後、前記第1処理部から前記被処理カードを再度受け取り、前記第1処理部から受け取った前記被処理カードを前記第3処理部に引き渡すために上下方向に搬送することを特徴とする請求項2に記載のカード発行装置。
【請求項4】
前記カード発行装置は、複数種の前記被処理カードを加工することにより複数種の前記処理済カードを作成することが可能であり、
前記収納部が前記被処理カードの種類毎に備えられていることを特徴とする請求項3に記載のカード発行装置。
【請求項5】
前記カード発行装置本体は、内部に前記処理部を1台だけ格納する格納部を、上下方向に並べた状態で前記処理部の台数以上備え、
前記格納部別に設けられた、前記格納部の内部に格納された処理部と接続する接続端子と、
前記処理部側に設けられ、前記格納部の内部において前記処理部が前記接続端子に接続されると前記処理部を特定するための信号を出力する信号出力部と、
該信号出力部から受信した前記信号に基づいて、各前記格納部に、複数の前記処理部のうち、いずれの前記処理部が格納されているのかを認識するとともに、前記格納部と前記処理部との対応関係に基づいて、上下方向において、前記被処理カードを引き渡す前記処理部が格納された前記格納部の位置まで前記被処理カードが搬送されるように前記昇降部を制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のカード発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−243154(P2012−243154A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113939(P2011−113939)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(596179988)株式会社ドッドウエル ビー・エム・エス (13)
【Fターム(参考)】