説明

カード管理装置および運行管理システム

【課題】タクシーの乗務員が予め定めた労務上の規制に違反して乗務を行うのを事前に阻止する。
【解決手段】タクシーメータ車載器20と、これが乗務員の認証の際に利用する乗務員カード31と、カード管理装置10とでシステムを構成し、カード管理装置10には、乗務員カード31から読み取ったデータに基づいて該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する入庫時刻検出部11と、乗務員カード31に対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも前記入庫時刻検出部が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて運行の可否を自動的に識別する運行可否識別部12と、運行可否識別部12の識別結果に従って運行許可又は運行拒否を表す情報を処理対象の乗務員カード31に書き込む運行許可発行部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーメータの車載器が乗務員の認証の際に利用する乗務員カードを管理するカード管理装置および運行管理システムに関し、特に乗務員の労務管理と関連のある技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、タクシー車両に搭載されているタクシーメータを使用してタクシーで営業を行う際には、データの書き込み及び読み出しが可能なメモリカードがタクシーメータに装着される。従って、営業中にタクシーメータが収集した情報、すなわち営業データや時系列データをメモリカードに記録することができる。また、営業データや時系列データが記録されたメモリカードを乗務員がタクシーメータから取り外して事務所に持ち帰り、メモリカード上のデータを事務所内のコンピュータで読み取って管理することができる。
【0003】
また、タクシーメータに装着されるメモリカードについては、乗務員を管理するためにも利用される。すなわち、乗務員コードを書き込んだメモリカードを正規の乗務員のそれぞれに乗務員カードとして配布しておき、タクシーの乗務を開始する際に、タクシーメータに装着された乗務員カードを用いて認証を行い、認証に成功した乗務員に限りタクシー乗務の制限を解除する。
【0004】
また、例えば特許文献1においては、共通のタクシー車両及びタクシーメータを時間帯の違いに応じて複数の乗務員が交代で使用できるようにする技術が開示されている。すなわち、正規の乗務員に対応した判定情報を事前にタクシーメータ上に登録しておき、乗務員がタクシーメータに装着したカードから読み取ったデータ(乗務員情報や乗務員免許証情報)と前記判定情報とを比較して認証を行う。そして、認証に失敗した時にはタクシーメータの機能を制限し、認証に成功すると機能制限を解除する。
【0005】
また、本発明と多少関連のある従来技術が、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2は、遊戯施設等のアトラクションに入場する客の待ち行列を制御するための技術を提案している。具体的には、未来の時刻に入場するための優先権が付与されたパスを発行し、このパスによって客の入場や待ち行列を制御する。従って、客は所定の時間待ちの後、自分の所持するパスに表示されている指定時刻になると、アトラクションに入場する権利が得られる。パスに付与する未来の入場時刻を制御することで、待ち行列の長さや待ち時間を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−75810号公報
【特許文献2】特表2007−509393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タクシー業界で働く乗務員の労働については、タクシー車両の安全な運行の妨げにならないように、並びに乗務員自身に健康上の問題が生じないように厳しく管理する必要がある。従って、例えば、一人の乗務員の1日の乗務が終了してから、この乗務員が翌日に乗務を開始するまでの間に十分な休憩時間を設けなければならない。また、一般的な会社における労働者に対する労務管理の場合と同様に、1週間毎の労働時間(あるいは拘束時間)、1ヶ月毎の労働時間、1年毎の労働時間、休日などの制限を管理する必要がある。
【0008】
従って、タクシー会社においては、社員として働く各乗務員の申告等に基づいて乗務員毎に乗務時間等を把握し、予め定めた規制に違反しないように労務管理を行っている。しかしながら、各時点で乗務員が乗務を行うか否かの判断については最終的には乗務員自身の判断にゆだねられるので、予め定めた規制に違反して乗務を行うのを事前に阻止することはできないのが実情である。
【0009】
例えば、特許文献1に開示された技術を搭載したタクシーメータやカードを使用する場合であっても、予め登録された正規の乗務員であれば、それまでの労務の状況とは無関係にタクシーメータの機能制限が解除されるので、いつでもタクシーの乗務を開始することができる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タクシーの乗務員が予め定めた規制に違反して乗務を行うのを事前に阻止することが可能なカード管理装置および運行管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係るカード管理装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) タクシーメータの車載器が乗務員の認証の際に利用する所定の乗務員カードを作成し前記乗務員カードの記録内容を管理する前記車載器とは独立したカード管理装置であって、
処理対象の前記乗務員カードから読み取ったデータに基づいて、該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する入庫時刻検出部と、
処理対象の前記乗務員カードに対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも前記入庫時刻検出部が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて、運行の可否を自動的に識別する運行可否識別部と、
前記運行可否識別部の識別結果に従って、運行許可又は運行拒否を表す情報を処理対象の前記乗務員カードに書き込む運行許可発行部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載のカード管理装置であって、
前記運行許可発行部は、前記運行許可を発行する際の現在時刻に応じて定まる時間情報も処理対象の前記乗務員カードに書き込むこと。
(3) 上記(1)に記載のカード管理装置であって、
前記運行可否識別部は、少なくとも検出した入庫時刻から現在時刻までの経過時間が予め定めた閾値以内の場合には運行拒否として識別すること。
【0012】
上記(1)の構成のカード管理装置によれば、該当する乗務員の乗務の状況を反映した運行許可又は運行拒否の情報を前記乗務員カードに書き込むことができる。例えば、前回の乗務終了時から現在までの時間経過に相当する休憩時間が十分か否かに応じて、運行許可又は運行拒否の情報を書き込むことができる。また、この乗務員カードをタクシーメータに装着して認証を行う際に、運行許可又は運行拒否の情報を参照すれば、乗務員が予め定めた規制に違反して乗務を行うのを事前に阻止できる。
上記(2)の構成のカード管理装置によれば、運行許可又は運行拒否の情報に関する有効期間を限定することができる。従って、例えば規制に違反している状況であるにもかかわらず、新たな情報の書き込みを省略し、過去に記録された古い運行許可の情報を利用して不正に乗務を行おうとする行為を防止することが可能である。
上記(3)の構成のカード管理装置によれば、該当する乗務員カードを所持する乗務員が、前回の入庫時刻から次に乗務を開始するまでの休憩時間の最小値を規制することができる。
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、下記(4)を特徴としている。
(4) 乗務員毎に用意される乗務員カードと、装着された乗務員カードの記録内容に基づいて乗務員の認証を行う機能を備えたタクシーメータ車載器と、乗務員毎に前記乗務員カードを作成し前記乗務員カードの記録内容を管理する前記車載器とは独立したカード管理装置とで構成される運行管理システムであって、
前記カード管理装置には、
処理対象の前記乗務員カードから読み取ったデータに基づいて、該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する入庫時刻検出部と、処理対象の前記乗務員カードに対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも前記入庫時刻検出部が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて、運行の可否を自動的に識別する運行可否識別部と、前記運行可否識別部の識別結果に従って、運行許可又は運行拒否を表す情報を処理対象の前記乗務員カードに書き込む運行許可発行部とを備え、
前記タクシーメータ車載器には、
乗務員が乗務を終了した時に現在時刻の情報を前記乗務員カードに書き込む入庫時刻書き込み部と、乗務を開始する時に装着された前記乗務員カードに記録されている情報に基づき乗務員の認証を行うと共に運行許可の有無を識別する認証処理部と、運行許可がない場合にタクシーメータの機能を制限する運行制限制御部とを備えたこと。
【0014】
上記(4)の構成の運行管理システムによれば、乗務員の乗務の状況を反映した運行許可又は運行拒否を表す情報が書き込まれた乗務員カードを前記カード管理装置により発行することができる。また、運行許可又は運行拒否を表す情報が書き込まれた乗務員カードを前記タクシーメータ車載器で読み取ることにより、運行の可否を自動的に識別し、タクシーメータの機能制限を制御できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タクシーの乗務員が予め定めた規制に違反して乗務を行うのを事前に阻止するために利用可能な乗務員カードを作成することができる。また、この乗務員カードの内容をタクシーメータ車載器で読み取って乗務可否に関する認証を行うことが可能になる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】運行管理システムの基本的な機能上の構成例を表すブロック図である。
【図2】乗務終了時に実行されるカード管理装置の処理を表すフローチャートである。
【図3】乗務開始前に実行されるカード管理装置の処理を表すフローチャートである。
【図4】タクシーメータ車載器の処理の概要を表すフローチャートである。
【図5】運行管理システムのハードウェアの構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のカード管理装置および運行管理システムに関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
本実施形態の運行管理システムの機能上の基本的な構成が図1に示されている。また、この運行管理システムの実際のハードウェアの構成例が図5に示されている。図1に示すように、この運行管理システムは、カード管理装置10と、タクシーメータ車載器20と、乗務員カード31とで構成されている。
【0020】
乗務員カード31は、データの書き込み及び読み出しが可能な不揮発性のメモリで構成されるメモリカードである。この乗務員カード31は、一般的な乗務員カードと同様にタクシー会社に勤務する多数の乗務員のそれぞれに事前に配布され、営業のためにタクシー車両を運行する際の乗務員の認証や、営業中にタクシーメータ車載器により生成された営業テータおよび各種時系列データを記録するために利用される。
【0021】
タクシー会社が社内で乗務員毎に乗務員カード31を発行したり、乗務員カード31に記録されたデータを管理するためにカード管理装置10が設けてある。このカード管理装置10は、タクシー会社の営業所の事務所内等に設置されるデータ処理装置、すなわちパーソナルコンピュータ等のコンピュータと処理の実行に必要な管理用プログラムとで構成することができる。また、本発明を実施する場合には、特別な労務管理用プログラムも、管理用プログラムに含まれる。
【0022】
各乗務員に対して発行されるそれぞれの乗務員カード31には、少なくとも該当する乗務員を特定する情報である乗務員コードと、カード作成日時の情報が、発行時にカード管理装置10によって書き込まれる。
【0023】
また、本発明を実施する場合には、各乗務員が1日に1回、乗務を開始する前に、労務管理上の観点から乗務が可能であることを表す運行許可を受けてからタクシー車両に乗務することを想定している。すなわち、運行許可を発行するための機能がカード管理装置10に備わっているので、各乗務員は毎日、自分の乗務員カード31をカード管理装置10に装着して運行許可を表す当日の情報を乗務員カード31に書き込んだ後、この乗務員カード31をタクシーメータ車載器20に装着してタクシーの乗務を開始する。
【0024】
各乗務員がタクシー車両に乗務して営業を行っている時には、タクシーメータ車載器20によって様々な営業データや運行状況を表す時系列データが順次に生成される。1日の営業が終了しタクシーの乗務を終了する時に、乗務員がタクシーメータ車載器20に備わっている書き込みボタンを操作すると、それまでにタクシーメータ車載器20内に蓄積された1日の営業データや時系列データが乗務員カード31に書き込まれる。また、この時の現在時刻が入庫時刻として乗務員カード31に書き込まれる。
【0025】
各乗務員は、1日の営業が終了した後でタクシーメータ車載器20から取り外した自分の乗務員カード31を事務所に持ち帰り、事務所内のカード管理装置10に装着する。この状態で、乗務員カード31に記録されている当日の営業データや時系列データをカード管理装置10が読み取り、カード管理装置10が管理するデータベースにこのデータを追加する。従って、各乗務員の毎日の営業状態等を把握するためのデータの管理を行うことができる。
【0026】
図5に示すように、タクシーメータ車載器20の本体内部には、メモリカードI/O部24、表示部25、操作部26、営業データ格納部(RAM)27、設定データ格納部(ROM)28、外部インタフェース29、および演算部(CPU)30が備わっている。
【0027】
メモリカードI/O部24は、乗務員カード31を装着するための装着部を有している。メモリカードI/O部24に装着された乗務員カード31は乗務員の操作により必要に応じて取り外すことができる。
【0028】
表示部25は、乗務員の操作に必要な文字情報を表示したり、乗客の運賃などを表す数値の情報を表示するための機能を有している。
【0029】
操作部26は、乗務員の様々な入力操作を受け付けるために必要な各種のボタンを備えている。具体的には、一般的なタクシーメータの場合と同様に、「実車」、「空車」、「支払い」、「高速」、「書き込み」等のボタンが備わっている。
【0030】
営業データ格納部27は、データの読み書きが自在なメモリ(RAM)で構成されており、営業中にタクシーメータによって生成される様々な営業データや時系列データを一時的に(営業が終了してデータの保存が完了するまで)保持するために利用される。
【0031】
設定データ格納部28は、読み出し専用メモリ(ROM)で構成されている。設定データ格納部28上には、事前に決定された様々な定数データが予め書き込んである。例えば、乗客の運賃を算出する際に利用する料金制のデータも設定データ格納部28に保持されている。
【0032】
演算部30は、マイクロコンピュータ(CPU)で構成されており、予め内蔵されているプログラムを実行することにより、タクシーメータの制御に必要な様々な機能を実現する。また、演算部30は、メモリカードI/O部24に装着された乗務員カード31から必要な情報を読み取って乗務員の認証等の処理を行い、その結果を反映するようにタクシーメータを制御する。
【0033】
外部インタフェース29には、領収書発行器41およびウインドサイン42が接続されている。領収書発行器41は、紙の領収書を発行するためのプリンタであり、タクシーメータ車載器20内の演算部30が算出した運賃等の情報を紙に印刷する。ウインドサイン42は、タクシー車両の現在の状況を表す「実車」、「空車」等の文字を車両の窓の外から見えるように表示する表示器である。ウインドサイン42の表示内容は、タクシーメータの状態に応じて切り替わる。
【0034】
また、図1に示すように、タクシーメータ車載器20には入庫時刻書き込み部21、認証処理部22、および運行制限制御部23の各機能が備わっている。これらの機能は演算部30の処理によって実現する。
【0035】
入庫時刻書き込み部21は、1日の乗務が終了し、乗務員がタクシーメータの操作部26の「書き込み」ボタン押下した時に、それを入庫状態として検出し、この時に取得した現在時刻のデータを入庫時刻として乗務員カード31に書き込む。
【0036】
認証処理部22は、メモリカードI/O部24に乗務員カード31が装着された時に、すなわち乗務員が当日の乗務を開始しようとする時に、乗務員カード31に保持されているデータに基づいて正規の乗務員かどうかを識別したり、有効な乗務許可が得られているかどうかを識別する。
【0037】
運行制限制御部23は、メモリカードI/O部24に乗務員カード31が装着されていない場合や、乗務員の認証に失敗した場合や、乗務員カード31から有効な乗務許可が検出できない場合に、タクシーメータの動作を制限するための制御を行う。その場合、例えば所定のボタンが操作されても、「空車」状態から「実車」状態への切り替えを行わない。これにより、タクシーメータの不正な使用を防止したり、正規の乗務員が予め定められた労務の規定に違反して乗務を開始するのを防止できる。
【0038】
一方、カード管理装置10側には、入庫時刻検出部11、運行可否識別部12、運行許可発行部13の各機能が備わっている。これらの機能は、カード管理装置10のコンピュータが所定の労務管理プログラムを実行することにより実現される。
【0039】
入庫時刻検出部11は、カード管理装置10のメモリカードI/O部14に装着された処理対象の乗務員カード31から読み取ったデータに基づいて、該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する。
【0040】
すなわち、1日の乗務が終了した乗務員が、当日の営業データ、時系列データ、入庫時刻が書き込まれた乗務員カード31を事務所に持ち帰り、これをカード管理装置10に装着した時に、入庫時刻検出部11が乗務員カード31から入庫時刻のデータを読み取る。
【0041】
運行可否識別部12は、カード管理装置10のメモリカードI/O部14に装着された処理対象の乗務員カード31に対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも入庫時刻検出部11が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて、運行の可否を自動的に識別する。
【0042】
例えば、毎日乗務する乗務員が、前日の乗務終了時から当日の乗務開始時までの経過時間が短い場合には、その間の乗務員の休憩時間が短いことになるので、過労になる可能性が高い。また、例えば過去1週間、あるいは1ヶ月等の一定期間における乗務員の拘束時間(当日の乗務開始から乗務終了までの時間、あるいは出社時刻から退社時刻までの時間)の累積値や平均値等が長すぎる場合も過労になる可能性が高い。
【0043】
従って、このような過労の状態が生じないように、事前に決定した社内の労務管理の規則と実際の乗務の履歴とに基づいて、運行可否識別部12が該当する乗務員の運行の可否を識別する。
【0044】
運行許可発行部13は、運行可否識別部12の識別結果に従って、運行許可又は運行拒否を表す情報を、メモリカードI/O部14に装着されている乗務員カード31に書き込む。また、今回運行許可を発行した日時、あるいは今回発行した運行許可の有効期間を表す日時に関する時刻情報も乗務員カード31に書き込む。
【0045】
次に、図1および図5に示したカード管理装置10およびタクシーメータ車載器20の具体的な動作について説明する。乗務終了時に実行されるカード管理装置10の処理の概要が図2に示されている。また、乗務開始前に実行されるカード管理装置10の処理の概要が図3に示されている。更に、タクシーメータ車載器20の処理の概要が図4に示されている。
【0046】
各乗務員は、1日の営業が終了した後でタクシーメータ車載器20から取り外した自分の乗務員カード31を事務所に持ち帰り、事務所内のカード管理装置10に装着する。この状態で、カード管理装置10が図2に示す処理を実行する。
【0047】
カード管理装置10のコンピュータは、メモリカードI/O部14に乗務員カード31が装着されたことを検出すると、ステップS11からS12の処理に進み、乗務員カード31から当日に記録された営業データや時系列データを読み取る。そして、乗務員カード31から読み取ったデータをカード管理装置10内部の記憶装置上に設けられた乗務員管理DB(データベース)32上に保存する。
【0048】
乗務員管理DB32上のデータは、乗務員コードに対応付けて乗務員毎に区別して管理されている。従って、乗務員管理DB32に保存されているデータにより、各乗務員の毎日の営業状態等を把握するためのデータの管理を行うことができる。
【0049】
次のステップS13では、カード管理装置10のコンピュータが乗務員カード31から当日の入庫時刻(最後に書き込みボタンが押下された時刻)のデータを読み取り、このデータを乗務員管理DB32に保存する。
【0050】
ステップS14では、カード管理装置10のコンピュータが乗務員管理DB32に保存されているデータに基づいて各乗務員の拘束時間を管理する。例えば、毎日の乗務開始時刻又は出勤時刻から乗務終了時刻(入庫時刻)又は退社時刻までの拘束時間の長さの情報を乗務員管理DB32上に記録しておき、過去のデータを集計することにより、過去1週間における拘束時間の累積値や平均値を算出したり、過去1ヶ月間における拘束時間の累積値や平均値を算出する。
【0051】
ステップS15では、カード管理装置10のコンピュータは、乗務員カード31から読み出して乗務員管理DB32上に既に保存した当日の営業データや時系列データを乗務員カード31上から消去する。これにより、次回乗務する際にデータを記録するための空き領域を乗務員カード31上に確保する。
【0052】
各乗務員は、毎日の乗務を開始する前(通常は乗務の直前)に、当日の乗務許可を発行してもらうために、自分の乗務員カード31をカード管理装置10に装着し、図3に示す処理をカード管理装置10のコンピュータで実行する。
【0053】
カード管理装置10のコンピュータは、メモリカードI/O部14に乗務員カード31が装着されたことを検出すると、ステップS21からS22の処理に進み、乗務員カード31に記録されている乗務員コードを読み取って該当する乗務員を特定する。
【0054】
ステップS23では、乗務員管理DB32上に保持されている該当する乗務員のデータにアクセスし、この乗務員の前回乗務終了時刻(入庫時刻)および拘束時間の情報を取得する。また、次のステップS24では、カード管理装置10のコンピュータに内蔵されている時計回路から現在時刻の情報を取得する。
【0055】
ステップS25では、ステップS23で取得した前回乗務終了時刻からステップS24の現在時刻までの経過時間の長さを休憩時間としてカード管理装置10のコンピュータが算出する。
【0056】
ステップS26では、ステップS25で算出した休憩時間の長さを予め定めた閾値th1と比較し、「休憩時間>th1」の条件を満たす場合はステップS27に進み、条件を満たさない場合はステップS28に進む。
【0057】
ステップS27では、ステップS23で取得した拘束時間(一定期間の累積値又は平均値)の長さを予め定めた閾値th2と比較し、「拘束時間>th2」の条件を満たす場合はステップS29に進み、条件を満たさない場合はステップS28に進む。
【0058】
なお、閾値th1、th2のそれぞれについては、タクシー会社の社内等で予め定めた労務管理の規則に基づき、この規則に違反しないような値に決定される。
【0059】
ステップS28では、予め定めた「乗務拒否」コードおよび現在時刻のデータを、メモリカードI/O部14に装着されている乗務員カード31にカード管理装置10のコンピュータが書き込む。つまり、該当する乗務員の現在までの休憩時間又は拘束時間が労務管理上の規定に違反する状態であるため、乗務許可は発行しない。
【0060】
ステップS29では、予め定めた「乗務許可」コードおよび現在時刻のデータを、メモリカードI/O部14に装着されている乗務員カード31にカード管理装置10のコンピュータが書き込む。つまり、該当する乗務員の現在までの休憩時間および拘束時間が労務管理上の規定に適合する状態であるため、この乗務員カード31に対して乗務許可を発行する。
【0061】
なお、図3に示した例では、ステップS29で乗務許可を発行した時の現在時刻(発行時刻)を乗務員カード31に書き込んでいるが、現在時刻の代わりにこの乗務許可の有効な期間あるいは効力が消滅する時刻を表す情報を書き込んでも良い。
【0062】
各乗務員は、毎日、タクシーに乗務する前に、カード管理装置10が行う図3に示した処理により当日の乗務許可の発行を受ける。そして、乗務許可の情報が書き込まれた自分の乗務員カード31を所持した状態でタクシー車両に乗り込み、乗務員カード31をタクシーメータ車載器20のメモリカードI/O部24に装着する。この状態で、タクシーメータ車載器20の演算部30は所定のプログラムを実行し、図4に示す処理を行う。
【0063】
タクシーメータ車載器20の演算部30は、メモリカードI/O部24に乗務員カード31が装着されたことを検出すると、ステップS31からS32の処理に進み、乗務員カード31に記録されているデータを読み取る。
【0064】
ステップS33では、演算部30は乗務員カード31から取得した乗務員コードに基づいて該当する乗務員を特定し、この乗務員が正規の乗務員か否かについて認証処理を行う。例えば、タクシーメータ車載器20上に予め登録されている既知の乗務員コードと、乗務員カード31から取得した乗務員コードとが一致するか否かで認証を行うことができる。認証に成功すると次のステップS34に進み、認証に失敗するとステップS36に進む。
【0065】
ステップS34では、演算部30は予め定めた乗務許可コードが乗務員カード31に保持されているか否かを識別する。乗務許可コードを検出した場合は次のステップS35に進み、乗務許可コードが検出されないか、もしくは乗務拒否コードが検出された場合はステップS36に進む。
【0066】
ステップS35では、演算部30はステップS34で検出された乗務許可コードが時間的に有効か否かを識別する。例えば、カード管理装置10が乗務員カード31に乗務許可コードを書き込んだ時刻(発行時刻)が乗務員カード31に記録されている場合には、この発行時刻から現在時刻までの経過時間が規定時間(例えば2時間)以内であれば有効期間内の乗務許可コードであると認識できる。また、例えば乗務許可コードの有効期間が期限切れになる時刻(期限時刻)が乗務員カード31に記録されている場合には、現在時刻がこの期限時刻より前であれば有効期間内の乗務許可コードであると認識できる。有効期間内の乗務許可コードであると認識した場合は次のステップS37に進み、期限切れの場合はステップS36に進む。
【0067】
ステップS36では、演算部30は出庫エラーの発生を認識し、タクシーメータの機能を制限する。すなわち、乗務員が登録された正規の乗務員でない状態、当日の乗務許可を受けていない乗務員である状態、発行された乗務許可の期限が切れている状態等に該当するので、この乗務員の営業のための乗務を禁止するためにタクシーメータを使用できない状態に制御する。
【0068】
具体的には、タクシーメータの「空車」モードから「実車」モードへの切り替えを禁止して出庫不可能な状態にする。従って、この場合には乗務員が「実車」ボタンを操作しても「実車」モードに切り替わることはなく、このタクシーメータを使用して営業活動を行うことはできない。
【0069】
ステップS37では、演算部30はタクシーメータの機能制限を解除して出庫動作を許可する。従って、これ以降、例えば乗務員が「実車」ボタンを操作すると「実車」モードに切り替わり、乗客の運賃の計算や運賃等の表示の動作を行うことができる。
【0070】
ステップS38では、一般的なタクシーメータの場合と同様の出庫後の動作を行う。すなわち、乗務員の各種ボタン操作に従って、「空車」、「実車」、「支払い」、「高速」等の状態を切り替え、「実車」モードにおいては乗客の運賃の計算や運賃の表示等の処理を行う。また、出庫後の営業活動に伴ってタクシーメータの内部で生成される営業データや時系列データが営業データ格納部27上に一時的に記録される。
【0071】
当日の営業活動が終了すると、入庫状態に移行するために、乗務員はタクシーメータ車載器20の操作部26に備わっている「書き込み」ボタンを押下する。演算部30が「書き込み」ボタンの押下を検出すると、ステップS39からS40に進む。
【0072】
ステップS40では、演算部30はこれに内蔵された時計回路から現在時刻(日付も含む)の情報を取得し、この時刻を当日の入庫時刻の情報として乗務員カード31に書き込む。
【0073】
ステップS41では、演算部30は営業データ格納部27に保持されている当日の営業データや時系列データを読み出して、これらのデータ全てを乗務員カード31上に書き込み保存する。
【0074】
ステップS41の後で、乗務員は自分の乗務員カード31をタクシーメータ車載器20から取り外して事務所に持ち帰ることができる。この乗務員カード31を事務所にあるカード管理装置10に装着することにより、図2に示した処理を実行し、乗務員カード31に記録されている当日の営業活動の営業データや時系列データをカード管理装置10で読み取って保存し管理することができる。
【0075】
図1および図5に示した上述の運行管理システムを利用することにより、タクシー乗務員の労務管理を厳格に行うことが可能になり、各乗務員が事前に定めた規制に違反してタクシーに乗務するのを未然に防止できる。例えば、前日に乗務を終了してから十分な長さの休憩を取ることなく翌日の乗務を開始しようと試みる乗務員に対しては、当日の乗務開始前に、乗務員カード31をカード管理装置10に装着しても、カード管理装置10が当日の乗務許可を発行しない。また、この乗務員が当日の乗務許可が発行されていない乗務員カード31をタクシーメータ車載器20に装着しても、タクシーメータ車載器20がタクシーメータの機能を制限するので営業活動を開始することはできない。
【0076】
なお、乗務員が乗務員カード31に記録された過去の乗務許可を流用し、労務管理のための当日の乗務許可の発行(乗務員カード31のカード管理装置10への装着)を省略しようと試みる可能性も考えられる。しかし、上述の運行管理システムの場合には乗務員カード31に記録される乗務許可に有効期限があるので、古くなった乗務許可をタクシーメータ車載器20上で利用することはできない。従って、各乗務員は最新の乗務許可を発行してもらうために、毎日、乗務を開始する前に、乗務員カード31をカード管理装置10に装着して所定の操作を行う必要がある。
【0077】
以上のように、本発明のカード管理装置および運行管理システムは、タクシー車両に乗務する乗務員の労務管理を行うために利用することができ、予め定めた労務管理の規制に違反して乗務を行うのを未然に防止するために役立てることができる。また、タクシーメータと連動して入庫時刻等の時間を管理することにより、厳格に労務管理することが可能になる。
【符号の説明】
【0078】
10 カード管理装置
11 入庫時刻検出部
12 運行可否識別部
13 運行許可発行部
14 メモリカードI/O部
20 タクシーメータ車載器
21 入庫時刻書き込み部
22 認証処理部
23 運行制限制御部
24 メモリカードI/O部
25 表示部
26 操作部
27 営業データ格納部
28 設定データ格納部
29 外部インタフェース
30 演算部
31 乗務員カード
32 乗務員管理DB
41 領収書発行器
42 ウインドサイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクシーメータの車載器が乗務員の認証の際に利用する所定の乗務員カードを作成し前記乗務員カードの記録内容を管理する前記車載器とは独立したカード管理装置であって、
処理対象の前記乗務員カードから読み取ったデータに基づいて、該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する入庫時刻検出部と、
処理対象の前記乗務員カードに対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも前記入庫時刻検出部が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて、運行の可否を自動的に識別する運行可否識別部と、
前記運行可否識別部の識別結果に従って、運行許可又は運行拒否を表す情報を処理対象の前記乗務員カードに書き込む運行許可発行部と
を備えることを特徴とするカード管理装置。
【請求項2】
前記運行許可発行部は、前記運行許可を発行する際の現在時刻に応じて定まる時間情報も処理対象の前記乗務員カードに書き込む
ことを特徴とする請求項1に記載のカード管理装置。
【請求項3】
前記運行可否識別部は、少なくとも検出した入庫時刻から現在時刻までの経過時間が予め定めた閾値以内の場合には運行拒否として識別する
ことを特徴とする請求項1に記載のカード管理装置。
【請求項4】
乗務員毎に用意される乗務員カードと、装着された乗務員カードの記録内容に基づいて乗務員の認証を行う機能を備えたタクシーメータ車載器と、乗務員毎に前記乗務員カードを作成し前記乗務員カードの記録内容を管理する前記車載器とは独立したカード管理装置とで構成される運行管理システムであって、
前記カード管理装置には、
処理対象の前記乗務員カードから読み取ったデータに基づいて、該当する乗務員が前回乗務を終了した時刻を入庫時刻として検出する入庫時刻検出部と、処理対象の前記乗務員カードに対して新たな運行許可を発行する際に、少なくとも前記入庫時刻検出部が検出した入庫時刻と現在時刻とに基づいて、運行の可否を自動的に識別する運行可否識別部と、前記運行可否識別部の識別結果に従って、運行許可又は運行拒否を表す情報を処理対象の前記乗務員カードに書き込む運行許可発行部とを備え、
前記タクシーメータ車載器には、
乗務員が乗務を終了した時に現在時刻の情報を前記乗務員カードに書き込む入庫時刻書き込み部と、乗務を開始する時に装着された前記乗務員カードに記録されている情報に基づき乗務員の認証を行うと共に運行許可の有無を識別する認証処理部と、運行許可がない場合にタクシーメータの機能を制限する運行制限制御部とを備えた
ことを特徴とする運行管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−113626(P2012−113626A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263836(P2010−263836)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】