説明

カード装置

【課題】無線通信部から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減可能なカード装置を提供する。
【解決手段】実施形態のカード装置は、認証部と無線通信部と制御部とを備える。認証部は、有線通信を介して、外部装置との間で認証処理を行う。無線通信部は、外部装置との間で無線通信を行う。制御部は、認証処理の実行を検出した場合、無線通信部から放射される電波が減少するように、無線通信部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、カード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有線通信を介して外部装置との間で認証処理を行う認証部と、無線通信を行ってデータを送受信する無線通信部とが搭載されたカード装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、無線通信を行う場合は、様々な電子回路が駆動され、これらの電子回路から電磁ノイズ(電波)が放射される。したがって、認証処理の実行中に無線通信が行なわれると、当該無線通信に伴って発生する電磁ノイズの影響により、認証結果に誤りが発生するおそれがある。特に、認証部と無線通信部とが搭載されたカード装置においては、カードという狭い空間の中で、認証部と無線通信部とが近接して配置されるので、無線通信部から放射される電磁ノイズは、認証部が実行する認証処理に対して大きな影響を与える。本発明が解決しようとする課題は、無線通信部から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減可能なカード装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のカード装置は、認証部と無線通信部と制御部とを備える。認証部は、有線通信を介して、外部装置との間で認証処理を行う。無線通信部は、無線通信を行う。制御部は、認証処理の実行を検出した場合、無線通信部から放射される電波が減少するように、無線通信部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態の通信システムの概略構成例を示す図。
【図2】無線通信部の動作を停止する手順の一例を示す図。
【図3】無線通信部の動作を停止する手順の他の例を示す図。
【図4】第2実施形態の通信システムの概略構成例を示す図。
【図5】第2実施形態のカード装置の変形例を示す図。
【図6】第3実施形態のカード装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るカード装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の通信システム100の概略構成例を示すブロック図である。図1に示すように、通信システム100は、カード装置10が搭載された可搬型のデバイス(機器)20と、外部装置30とを含んで構成される。デバイス20の種類は任意であり、例えば携帯電話端末であってもよいし、Suica(登録商標)などのカード型端末であってもよい。外部装置30は、デバイス20と通信可能な装置であり、例えばサーバ装置であってもよいし、デバイス20に搭載されたカード装置10に対してデータの読み取りや書き込みを実行可能なリーダ/ライタ装置であってもよい。なお、図1では、デバイス20と通信可能な外部装置30が1つのみである場合を例示しているが、これに限らず、デバイス20と通信可能な外部装置30の数は任意であり、例えば2つ以上の外部装置30が存在してもよい。
【0009】
カード装置10は、各種の電子部品が搭載された電子機器である。図1に示すように、カード装置10は、認証部40と、無線通信部50と、制御部60とを有する。認証部40は、有線通信を介して、外部装置30との間で認証処理を行う。認証部40は、例えばセキュアエレメントなどで構成されてもよい。図1に示すように、認証部40は、有線通信に用いられる信号線101を介して、デバイス20に設けられたデバイス側無線通信部21と接続される。デバイス側無線通信部21は、無線により外部装置30と通信する。詳細な図示は省略するが、デバイス側無線通信部21は、無線通信を行うための電子回路やアンテナなどを含んで構成される。デバイス側無線通信部21に含まれるアンテナとしては、例えばNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)用のアンテナや3G用のアンテナなどが挙げられるが、これに限らず、採用され得るアンテナの種類は任意である。なお、NFC用のアンテナを採用する場合、この部分をCLF(Contact Less Frontend)と呼ぶこともある。また、上述の「認証処理」とは、カード装置10を認証するための処理を指す。本実施形態では、一例として、カード装置10に割り当てられた識別番号が、予め登録された識別番号と一致するか否かを判定することにより、当該カード装置10の認証が行われる。
【0010】
より具体的には、まず外部装置30は、デバイス20に対して、識別番号の送信を要求するリクエスト信号を送信する。デバイス側無線通信部21で受信されたリクエスト信号は、信号線101を介して認証部40へ送信される。そのリクエスト信号を受信した認証部40は、カード装置10に割り当てられている識別番号を、例えば暗号化したうえで、信号線101およびデバイス側無線通信部21を介して外部装置30へ送信する。そして、外部装置30は、リクエスト信号に対する応答としてデバイス20から送られてきた識別番号を復号し、復号して得られた識別番号が、予め登録された識別番号に一致するか否かを判定することにより、当該デバイス装置20に搭載されたカード装置10の認証を行う。なお、ここでは、認証部40がリクエスト信号を受信する処理や、認証部40が識別番号を送信する処理などが、認証部40が行う認証処理に該当するが、これは一例に過ぎない。認証処理については、公知の様々な方法を採用することができる。
【0011】
無線通信部50は、外部装置30との間で無線通信を行う。詳細な図示は省略するが、無線通信部50は、無線通信を行うための電子回路やアンテナなどを含んで構成される。
【0012】
制御部60は、認証部40による認証処理の実行を検出した場合、無線通信部50から放射される電磁ノイズ(電波)が減少するように制御する。以下、具体的な内容を説明する。本実施形態では、制御部60は、信号線101の状態に基づいて、認証処理の実行を検出する。認証部40は、有線通信を介して、外部装置30との間で認証処理を行うので、認証処理が実行される場合は、所定の信号(認証処理に用いられる信号)が信号線101に流れる。より具体的には、信号線101を流れる電流値や電圧値が変化する。有線通信が行われていない場合(つまりは認証処理が実行されていない場合)は、信号線101を流れる電流値や電圧値は変化しないので、信号線101を流れる電流値や電圧値の変化を検出することで、認証処理の実行を検出することができる。
【0013】
以上のようにして認証処理の実行を検出した場合、制御部60は、無線通信部50から放射される電磁ノイズが減少するように制御する。一例として、本実施形態では、認証処理の実行を検出した場合、制御部60は、無線通信部50の動作が停止するように無線通信部50を制御する。無線通信部50の動作を停止させることにより、無線通信部50から放射される電磁ノイズを殆ど無くすことができる。
【0014】
また、例えば制御部60は、無線通信部50のデータ転送速度を低減することもできる。一般的に、データ転送速度が大きいほど電子回路での消費電力が大きくなる傾向が見られ、それに伴って電磁ノイズも大きくなるので、データ転送速度を低減することにより電磁ノイズを低減することができる。
【0015】
また、例えば制御部60は、無線通信部50を間欠的に動作させることもできる。無線通信部50を間欠的に動作させることで、無線通信部50が停止する期間が発生するので、所定の期間における平均的な電磁ノイズの量を低減できる。なお、通常時にも無線通信部50が間欠的に動作する場合は、間欠動作の周期を長くしてもよい。そうすることで、所定の期間における平均的な電磁ノイズの量を低減できる。
【0016】
また、例えば制御部60は、無線通信部50に対する電源の供給を停止することもできる。これにより、無線通信部50から放射される電磁ノイズを完全に無くすことができる。
【0017】
次に、無線通信部50の動作を停止する手順について説明する。例えば図2に示すように、認証処理の実行を検出した場合、制御部60は、無線通信部50の動作が停止するように無線通信部50を制御するとともに、外部装置30が有する外部無線通信部に対して動作を停止することを要求する停止要求を送信するように無線通信部50を制御することもできる。また、例えば外部装置30が、認証処理を実行する外部認証部と、認証処理の実行を検出したときに、外部無線通信部の動作を停止させる外部制御部とを有する構成においては、図3に示すように、認証処理の実行を検出した場合、制御部60は無線通信部50の動作が停止するように無線通信部50を制御する一方、外部制御部は外部無線通信部の動作が停止するように外部無線通信部を制御することもできる。
【0018】
例えば制御部60は、無線通信部50の動作を停止させた後、一定の期間を経過した場合は、無線通信部50の動作を再開させてもよい。また、例えば制御部60は、認証処理の実行を検出しない期間が所定値を超えた場合は、無線通信部50の動作を再開させてもよい。
【0019】
以上は、無線通信部50の動作を停止する場合の手順であるが、例えば無線通信部50のデータ転送速度を下げる場合や無線通信部50を間欠的に動作させる場合などの手順についても同様である。
【0020】
以上に説明したように、本実施形態では、制御部60は、認証処理の実行を検出した場合、無線通信部50から放射される電磁ノイズが減少するように制御するので、無線通信部50から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減できるという有利な効果を奏する。
【0021】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、制御部60は、認証部40に対する電力供給の状態に基づいて認証処理の実行を検出する点で第1実施形態と相違する。以下、具体的な内容を説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、適宜に説明を省略する。
【0022】
図4は、第2実施形態の通信システム100の概略構成例を示すブロック図である。この例では、デバイス20を外部装置30に近接させたとき、外部装置30が発生する磁力線を用いた電磁誘導方式によってデバイス20に対する電力供給が行われる。より具体的には、デバイス側無線通信部21はコイルを含んで構成され、外部装置30から放射された磁力線がデバイス側無線通信部21に含まれるコイルを通過することにより当該コイルに電流が発生する。発生した電流は、デバイス20に設けられた電力供給部22で整流・平滑化され、電源線102を介して認証部40へ供給される。そして、認証部40に対する電力供給が行われて認証部40が起動した後に、認証処理が開始される。
【0023】
本実施形態では、制御部60は、電源線102の状態に基づいて、認証処理の実行を検出する。より具体的には、制御部60は、電源線102を流れる電流値や電圧値から、電源線102に対する電力供給が行われているか否かを検出することができる。そして、制御部60は、電源線102に対する電力供給が行われていることを検出した場合は、認証処理の実行を検出し、第1実施形態と同様に、無線通信部50から放射される電磁ノイズが減少するように制御する。
【0024】
ここで、前述したように、認証部40は、電力供給を受けて起動した後に認証処理を開始するので、電源線102に対する電力供給が開始された時点では、未だ認証処理は行われていない。このため、制御部60は、電源線102に対する電力供給が開始されたことを検出したときに、無線通信部50から放射される電磁ノイズが減少するように制御することが好ましい。これにより、認証処理が開始される前の段階で、無線通信部50から放射されるノイズを低減できるので、認証処理の途中で、無線通信部50から放射されるノイズを低減する構成に比べて、認証結果に誤りが発生することを低減できるという利点がある。
【0025】
本実施形態では、認証部40は、電力供給を受けた後に認証処理を実行するので、電源線102の状態に基づいて認証処理の実行を検出する方式の方が、信号線101の状態に基づいて認証処理の実行を検出する方式に比べて、より早いタイミングで認証処理の実行を検出することができるという利点がある。
【0026】
また、上述の電磁誘導方式によってデバイス20に対する電力供給が行われるのではなく、図5に示すように、例えばバッテリなどを含んで構成される電源部70がカード装置10に設けられる構成であってもよい。電源部70からの電力は、電源線71を介して認証部40へ供給される。制御部60は、認証処理に用いられる信号が信号線101に出力されたことを検出したときに、認証部40に対する電力の供給を実行するように電源部70を制御することもできる。このような構成においても、制御部60は、電源線71に対する電力供給が行われていることを検出することで、認証処理の実行を検出することができる。
【0027】
以上に説明した構成であっても、無線通信部50から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減できる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、認証部40は、認証処理を実行する場合、認証処理を実行中であることを示す信号(以下、「インジケータ信号」と呼ぶ)を制御部60へ出力し、制御部60は、そのインジケータ信号を受信した場合に、認証処理の実行を検出する点で第1実施形態と相違する。以下、具体的な内容を説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、適宜に説明を省略する。
【0029】
図6は、第3実施形態のカード装置10の構成例を示す図である。図6に示すように、認証部40と制御部60とを接続するインジケータ線103をさらに備える点で第1実施形態と相違する。本実施形態では、認証部40は、認証処理を実行する場合、インジケータ信号を出力する。そのインジケータ信号は、インジケータ線103を介して制御部60へ送信される。制御部60は、インジケータ信号を受信した場合、認証処理の実行を検出し、第1実施形態と同様に、無線通信部50から放射される電磁ノイズが減少するように制御する。この構成であっても、無線通信部50から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えばカード装置10の種類は任意であり、SDカードや、マイクロSDカードや、SIMカードや、ICカードなどであってもよい。
【0031】
また、例えば制御部60は、認証処理の実行を検出した場合、認証処理の後に通信する装置と接続する接続処理のみを行い、データの送受信は行わないように無線通信部50を制御することもできる。認証処理の後に通信する装置は、当該認証処理を実行した外部装置30であってもよいし、他の外部装置30であってもよい。ここで、無線通信によってデータの送受信を行う場合は、その前の段階で接続処理を行う必要があるが、一般的には、接続処理の方がデータの送受信に比べて処理が少ないので、無線通信部50から放射される電磁ノイズの量も少なくなる傾向がある。また、認証処理が完了した後に、所定の外部装置30との間でデータの送受信を行う場合は、認証処理の実行中において、当該所定の外部装置30との接続処理を実行しておくことで、認証処理の後のデータの送受信を速やかに開始できる。したがって、上記構成によれば、無線通信部50から放射される電磁ノイズの影響によって認証結果に誤りが発生することを低減しつつ、認証処理の後のデータの送受信を速やかに開始できるという有利な効果を奏する。なお、外部装置30との接続処理とは、外部装置30と通信可能な状態にするための処理を指す。
【符号の説明】
【0032】
10 カード装置
20 デバイス
21 デバイス側無線通信部
22 電力供給部
30 外部装置
40 認証部
50 無線通信部
60 制御部
70 電源部
71 電源線
100 通信システム
101 信号線
102 電源線
103 インジケータ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に搭載されるカード装置であって、
有線通信を介して、外部装置との間で認証処理を行う認証部と、
無線通信を行う無線通信部と、
前記認証処理の実行を検出した場合、前記無線通信部から放射される電波が減少するように制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするカード装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記認証処理の実行を検出した場合、前記認証処理の後に通信する装置と接続する接続処理のみを行い、データの送受信は行わないように前記無線通信部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカード装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記有線通信に用いられる信号線の状態に基づいて、前記認証処理の実行を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカード装置。
【請求項4】
前記認証部に接続され、前記認証部に対する電力供給に用いられる電源線をさらに備え、
前記制御部は、前記電源線の状態に基づいて、前記認証処理の実行を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカード装置。
【請求項5】
前記認証部は、前記認証処理を実行する場合、前記認証処理を実行中であることを示す信号を前記制御部へ出力し、
前記制御部は、前記信号を受信した場合、前記認証処理の実行を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカード装置。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20592(P2013−20592A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155893(P2011−155893)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】