説明

カード

【課題】従来から使用している材料がそのまま使用可能で、カードの側面から蛍光を放出するカードを提供する。
【解決手段】前記課題を解決するために、透明な単層基体からなるカードにおいて、前記カードの表面の少なくとも一部に印刷インキによる集光性蛍光染料印刷部が形成され、カードの表裏何れかの面に磁気記録部,インクリボンによる記録部,昇華転写による記録部,インクジェットによる記録部の何れか,または、前記二以上の記録部を併せ持つカードを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性に優れ、所持することが楽しくなるカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの分野で顧客囲い込みのための会員カードが発行されている。
運動施設や娯楽関連施設等では、カード会員は、例えば、施設を優先的に利用することができ、施設内で販売されている商品を非会員より安い金額で購入することができるようになっている。
商店等で利用される会員カードは、商店内で発行され、カード会員は、ダイレクトメール等でキャンペーン情報を優先的に入手したり、商品を安い会員価格で購入したりすることができる。
ポイントカード等は商品購入時に発行され、カードには商品購入のたびに顧客の買上げ金額に対して定められたポイント情報が記録され、または、書き換えられ、会員は累積された点数に応じたサービスを受けることができる。
また、ギフトカードや、電子マネーのようなプリペイドカードも発行されて、商品やサービスの購入に利用されている。
いずれのカードも、顧客の継続的な来店のため、商品の購入を促すために発行される。
【0003】
前述の会員カードやポイントカードは、施設や商店側の意向により発行されるが、行動範囲が広い顧客はカードを全て財布などに収納することができず、使用頻度が多いカード以外は家に放置し、放置されたカードはその存在すら忘れてしまっていることが多い。
そのため、カード発行者は、顧客に常時携帯してもらえるように、また、頻繁に来店してもらえるようにカードデザインに工夫をこらす。
【0004】
クレジットカードなどは、インターナショナルで使用される必要があるために、ISO(International Organization for Standardization)規格に準拠して作られる。
クレジットカード会社は、不透明なコア材の表裏に透明なオーバーシートを貼り合わせて所定の厚みとし、最表面に磁気ストライプやICモジュールを形成してISO規格に準拠したカードとして発行している。
【0005】
一方、商店などで発行される会員カードやポイントカードは、必ずしもISO規格に準拠している必要がないために、独自の仕様で、目立つデザインで企画され発行される。
例えば、カード基材の一部に蛍光染料を練り込んだカードが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平2−281999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている発明は、材料そのものに蛍光染料を混ぜ合わせ、成型している。そのため、カードメーカーでは、従来から使用している材料の延長上でその材料を使用することができない。
また、カード材料を供給する材料メーカーにとっては、一連の成形装置が蛍光染料で汚染されるために、再び蛍光染料を使用しない材料の製造に戻す場合に、成形装置の掃除に多大な時間をかけなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のカードの第一の態様は、透明な単層基材からなるカードにおいて、前記カードの表面の少なくとも一部に印刷インキによる集光性蛍光染料印刷部が形成されたことを特徴とするものである。
【0009】
また、第二の態様は第一の態様において、透明な単層基材は、非結晶性ポリエステル系樹脂,ポリ乳酸系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂の何れかであることを特徴とするものである。
【0010】
また、第三の態様は、第一または第二の態様において、カードの表裏何れかの面に磁気記録部が形成されたことを特徴とするものである。
【0011】
また、第四の態様は、第一または第二の態様において、カードの表裏何れかの面にインクリボンによる記録部が形成されたことを特徴とするものである。
【0012】
また、第五の態様は、第一または第二の態様において、カードの表裏何れかの面に昇華転写による記録部が形成されたことを特徴とするものである。
【0013】
また、第六の態様は、第一または第二の態様において、カードの表裏何れかの面にインクジェットによる記録部が形成されたことを特徴とするものである。
【0014】
また、第七の態様は、第一または第二の態様において、第三の態様〜第六の態様の特徴を二以上併せ持つことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカードによって、カードメーカー側では、従来から使用している材料がそのまま使用可能で、印刷方式で集光性蛍光染料をカード表面に形成することによって側面から蛍光を放出するカード作製することができる。
その結果、
1)短納期で注文に応じることができる。
2)小ロットでも顧客の要求に対応することができる。
3)顧客が希望するカードを基材の厚さに関係なく自由に供給することができる。
4)上記1)〜3)によってカードを安価に提供することができる。
5)また、従来の材料がそのまま使用できることによって、過去に確立した磁気記録部の形成条件,インクリボンによる記録部の形成条件,昇華転写による記録部の形成条件,インクジェットによる記録部の形成条件、等をそのまま利用することができる。
また、これら記録部を複数設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明のカードについて説明する。
図1は、本発明のカードの一例について説明するための図,図2は、図1のA−A線断面について説明するための図,図3は、集光性蛍光染料を含有する印刷インキによる集光性蛍光染料印刷部(以下、単に集光性蛍光染料印刷部という)から吸収した光をカードの側面に放出するメカニズムの一例について説明するための図,図4は、吸収した光を異なる波長の光に変換して放出する集光性蛍光染料の特性の一例について説明するための図,である。
【0017】
図1を参照して、本発明のカードの一例について説明する。
本発明のカード1の基材は、単層基材(以下単層基体ともいう)100で、透明な非結晶性ポリエステル系樹脂,ポリ乳酸系樹脂,塩化ビニル系樹脂の何れかが使用される。前記単層基体の表裏何れかの面には集光性蛍光染料を含有する印刷インキによる集光性蛍光染料印刷部11が形成される。以下の説明では、カード1の表側に形成される例で説明する。
前記集光性蛍光染料印刷部11は、カード全面にわたって形成される場合や、一部の領域に文字,記号等を含むデザインとして形成される場合がある。
上述のほかに、カード1の最表面には磁気材料による磁気記録部13や、インクジェットによる記録部(または、インクリボンによる記録部や昇華転写による記録部)15,表面用図柄印刷部12が形成される。図示しないが、裏面には裏面用図柄印刷部が形成される。
集光性蛍光染料印刷部11や表面用図柄印刷部12を傷や汚れから保護するための保護層(図示せず)を形成することもできる。
【0018】
図2を参照して、図1のA−A線断面について説明する。
図1で説明したように、本発明のカード1の基材は単層基体100で、その表裏何れかの面には集光性蛍光染料印刷部11が形成される。前記集光性蛍光染料印刷部11は、カード全面にわたって形成される場合や、一部の領域に文字,記号を含むデザインとして形成される場合がある。
前記集光性蛍光染料印刷部11は、外部の光を吸収して単層基体の側面(断面)から異なる波長の光として放出するために、形成面積が広いほうが好ましい。
図示しないが、前記集光性蛍光染料印刷部11は、重ならない状態で単層基体100の表面に複数種類形成することもできる。この場合は、カードの上部にAの色(図示せず)を、下部にBの色(図示せず)を印刷してカード上部の側面からはA色の光を、下部の側面からはB色の光を放出するようにすることもできる。前述のカードの上下の代わりにカードの左右に分けて形成することもできる。
単層基体100には、透明な非結晶性ポリエステル系樹脂,ポリ乳酸系樹脂,塩化ビニル系樹脂の何れかが使用される。
【0019】
また、単層基体100の表面には磁気材料による磁気記録部13が形成される。磁気記録部13は印刷によって又は熱転写によって形成される。
さらに、集光性蛍光染料印刷部11や、表面図柄印刷部12を保護するために保護層101が形成される場合もある。カードの裏面の裏面図柄印刷部14を保護するために裏面にも保護層102が形成される。
インクジェットによる記録部(または、インクリボンによる記録部,昇華転写による記録部)15,表面用図柄印刷部12が形成される。
裏面には裏面用図柄印刷部14が形成される。
【0020】
前述のように、最表面に保護層101が形成される場合は、インクジェットによる記録部15(インクリボンによる記録部や昇華転写による記録部についても同様である)は、保護層の表面に形成される。
保護層101が形成されない場合は、インクジェットによる記録部15(インクリボンによる記録部や昇華転写による記録部についても同様である)は単層基体100の表面に直接形成される。
インクジェットによる記録部、インクリボンによる記録部及び昇華転写による記録部には、それぞれの記録材料を受容するための層を形成する。
【0021】
図3を参照して、集光性蛍光染料印刷部11から吸収した光をカードの側面に放出するメカニズムの一例について説明する。
図3は、図2の単層基体100の表面に印刷された集光性蛍光染料印刷部11周辺の断面を示したものである。
集光性蛍光染料印刷部11の表面から矢印の方向に入射した「aの光」は、実線に示すコースを辿って単層基体100の上下面を反射し、単層基体100の側面に到達し、放出される。
また、集光性蛍光染料印刷部11の表面から矢印の方向に入射した「bの光」は、点線に示すコースを辿って単層基体100の上下面を反射し、単層基体100の側面に到達し、放出される。
同様「cの光」は、一点破線に示すコースを辿って単層基体100の上下面を反射し、単層基体100の側面から放出される。
上記の如く、単層基体100に印刷された集光性蛍光染料印刷部11から吸収された光は、異なる波長の光に変換され、さらに、前記吸収された光の光束密度よりは密度の高い状態で側面から放出される。
【0022】
図4を参照して、吸収した光を異なる波長の光に変換して放出する集光性蛍光染料の特性の一例について説明する。
図4に示す例は、BASF社の「LumogenF Red305」を使用した集光性蛍光染料の吸収スペクトルと放出(励起)スペクトルの一例を示している。
「LumogenF Red305」は、最大吸収波長が578nmで、最大放出波長が613nmであるという特性を有することを示している。
即ち、「LumogenF Red305」を使用した集光性蛍光染料印刷部に、波長578nmの光源の光を照射した場合、「無駄なく」その光を吸収して波長613nmの光をカード基体の側面から放出するということを示している。
この染料は、300°Cの耐熱性を有し、カード製造時に付加されるたとえばインキ乾燥のための温度120〜150°Cに十分耐えることができる。
さらに、キセノンランプ2000時間の連続照射後も95%以上の特性を維持する(耐光性を有する)ために、カードを長時間使用しても前述の集光性蛍光染料の吸収/放出特性を実用範囲で維持させることができる。
【0023】
図4に示す集光性蛍光染料の他に、最大吸収波長が476nmで最大放出波長が490nmの染料,最大吸収波長が524nmで最大放出波長が539nmの染料,最大吸収波長が378nmで最大放出波長が413nmの染料,最大吸収波長が377nmで最大放出波長が411nmの染料等があり、何れも「LumogenF Red305」と同等の耐熱性、耐光性を有する。
【0024】
図1〜図4を参照して、本発明のカードの使用方法と特徴について説明する。
カード1の表面を太陽光、室内光、または、近くの光源に向ける。
その結果、カード1は表面用図柄印刷部12又は裏面用図柄印刷部14を透過させて、または、その隙間を通過させて照射された光を集光性蛍光染料印刷部11の印刷層で吸収し、単層基体100の側面から集光性蛍光染料の種類に応じた波長の光を放出する。
単層基体100の側面から放出される光は、カード1に印刷された集光性蛍光染料印刷部11とは異なる波長の光であるために、デザイン効果はもとより、偽造対策としても大きな効果を発揮する。
【0025】
(材料)
図2を参照して、本発明のカードに使用される材料の一例について説明する。
単層基体100には、厚さ180〜350μmの透明な非結晶性ポリエステル系樹脂, 透明なポリ乳酸系樹脂,透明なポリ塩化ビニル系樹脂の何れかを使用する。
非結晶性ポリエステル系樹脂は、一般的には芳香族ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合体であって、共重合ポリエステルの中でも特に結晶性が低い非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂からなる。ジカルボン酸としてはテレフタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,ナフタレンジカルボン酸等があり、ジオールとしてはエチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等がある。ジカルボン酸成分とジオール成分の組合せは適宜行われる。
前記非結晶性ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した商品(商品名「PETG」)がイーストマンケミカル社から市販されており、これらを使用することができる。
ポリ乳酸系樹脂は、例えば、ポリ3−ヒドロキシアルカノエート、或いは3又は4−ヒドロキシアルカノエートの共重合体、又はこれらの混合物と、ジカルボン酸とグリコールを重縮合して成る脂肪族ポリエステル、又は/及び、乳酸を原料としてこれを直接又は二量体の開環重合してなるポリ乳酸を、二種又は三種ブレンドして使用する。
ポリ塩化ビニル系樹脂については市販の塩化ビニル樹脂または、酢酸ビニルとの共重合樹脂を使用する。
【0026】
集光性蛍光染料印刷部11に使用されるインキは、例えば、セイコーアドバンス社製「ACT800メジューム」に0.4質量%以下となるようにBASF社製「ルモゲンF」を配合し作製する。
スクリーン方式で印刷する場合は、乾燥後の印刷皮膜が2〜5μmとなるように条件を設定し印刷する。
その他、表面用図柄印刷部,裏面用図柄印刷部の印刷には、紫外線硬化型のオフセットインキを使用し、オフセット方式で印刷する。
インクジェットによる記録部には、インクの左右へのにじみ防止材料を形成する。
インクリボンによる記録部には、表面を祖にし、さらにインクを固化する材料を形成する。昇華転写による記録部には、消化性の染料を固着させる受容層を形成する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のカードは、会員カード、ポイントカード、ギフトカード、電子マネーカードなどに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のカードの一例について説明するための図である。
【図2】図1のA−A線断面について説明するための図である。
【図3】集光性蛍光染料印刷部から吸収した光をカードの側面に放出するメカニズムの一例について説明するための図である。
【図4】吸収した光を異なる波長の光に変換して放出する集光性蛍光染料の特性の一例について説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カード
11 表面用図柄印刷部
12 集光性蛍光染料印刷部
13 磁気記録部
14 裏面用図柄印刷部
15 記録部
100 単層基体
101,102 保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な単層基材からなるカードにおいて、
前記カードの表面の少なくとも一部に印刷インキによる集光性蛍光染料印刷部が形成されたことを特徴とするカード。
【請求項2】
請求項1に記載のカードにおいて、
透明な単層基材は、非結晶性ポリエステル系樹脂,ポリ乳酸系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂の何れかであることを特徴とするカード。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカードにおいて、
カードの表裏何れかの面に磁気記録部が形成されたことを特徴とするカード。
【請求項4】
請求項1または2に記載のカードにおいて、
カードの表裏何れかの面にインクリボンによる記録部が形成されたことを特徴とするカード。
【請求項5】
請求項1または2に記載のカードにおいて、
カードの表裏何れかの面に昇華転写による記録部が形成されたことを特徴とするカード。
【請求項6】
請求項1または2に記載のカードにおいて、
カードの表裏何れかの面にインクジェットによる記録部が形成されたことを特徴とするカード。
【請求項7】
請求項1または2に記載のカードにおいて、
請求項3〜6に記載の特徴を二以上併せ持つことを特徴とするカード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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