説明

カーナビゲーションシステムを用いる車両走行制御装置

【課題】[0047]
近年、駐車場においてアクセルをブレーキと間違えて踏み、建物に突入したり、人身事故を起こしたりする事例が増えている。障害物を検知し自動停止する装置が自動車に実装されつつあるが、そもそもアクセルをブレーキと間違えて深く踏んでしまう事態には十分に対応できない。
【解決手段】[0048]
本発明によれば、駐車場のように建物の近くか内部にあり、人の往来も多い徐行すべき場所では、カーナビゲーションシステムの情報を用いて自動的に徐行になり、アクセルを過度に踏んでも徐行速度以上にはならず、車両自動停止装置が十分有効に機能することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーナビゲーションシステムからの位置情報により車両を徐行状態に変化させる車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害物を検知し、その情報によって車両を障害物に衝突させることなく直前で自動的に停止させる機能が車両に実装されている。
【0003】
更に、カーナビゲーションシステムは低価格化して十分に普及している。
【0004】
カーナビゲーションシステムに用いられている地図には詳細な地点情報が書き込まれており、道路情報はもとより、駐車場、コンビニ、スーパ、レストランなどの情報が取得でき、カーナビゲーションシステムはこの電子地図により車両が徐行すべき領域にあることを示す位置情報を得ることができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−208195号公報
【特許文献2】特開2003−63272号公報
【特許文献3】特開2004−287856号公報
【特許文献4】特開2005−23916号公報
【特許文献5】特開2007−112335号公報
【特許文献6】特開2008−221908号公報
【特許文献7】特開2010−167827号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】天野真家、他著「これで分かったGPS」森北出版2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、高齢者による車両事故として駐車場においてアクセルをブレーキと踏み間違え建物に突入したり、高架道路から鉄道線路に墜落したり、人身事故を起こしたりする状況が珍しくなくなっている。
【0008】
周辺に障害物がある場合、その直前において停止させる装置は実用化されているが、そもそも店舗前の駐車エリアで停止するつもりでブレーキとアクセルを踏み間違えアクセルを一杯に踏みこんだ場合、高速度で建物などの障害物に向かうためレーザ等による自動停止装置だけでは止まりきれない。
【0009】
まして、上記自動停止装置を機能させるためにアクセルから足を離さなければならない装置の場合、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故防止には全く効果がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の問題を解決するために、第一発明は、駐車場内、ビルの中など徐行すべき位置に徐行すべき属性を付加した電子地図を実装したカーナビゲーションシステムである。
【0011】
第二発明は、位置の情報として「徐行領域」など徐行位置を示す直接の属性を含む位置情報を持たない電子地図を実装したカーナビゲーションシステムにおいては、「駐車場」、「建物敷地」、「建物内」などの徐行すべき位置の位置情報を「徐行領域」などの直接位置情報に変換するカーナビゲーションシステムである。
【0012】
第三発明は、第一発明あるいは第二発明により車両が駐車場あるいは建物の周辺などの徐行すべき敷地に入った事をカーナビゲーションシステムからの位置情報により検知すると、アクセル操作情報から推定される車両速度があらかじめ設定してある徐行速度を超えている場合、上記アクセルとブレーキの操作情報を変更して徐行状態になるように車両の走行装置を制御することができる車両走行制御装置である。
【0013】
ここで述べるアクセル操作情報とは、所定の走行速度を維持するために開放するアクセル開度を意味し、アクセル開度とエンジン回転数から得られるエンジン出力に変速比、タイヤ径、平均車両重量などを考慮した駆動力と平均的な走行抵抗から算定する走行速度に1対1で対応している。
【0014】
第四発明は、自律航法装置を実装せず、且つ測位用衛星からの信号だけを用いる他律航法カーナビゲーションシステムの場合、車両が建物の地下など、該衛星信号の受信ができず車両位置が把握できない場所に入り込んだ場合でも、該衛星からの電波が途切れる直前の位置情報が徐行領域である場合、徐行状態を保持することを特徴とする車両走行制御装置である。
【0015】
この機能により、建物の地下、あるいは二階建て駐車場の下層など上記衛星電波が届かず、且つ自律航法によって継続的に位置を把握できないカーナビゲーションシステムの場合でも車両を徐行状態に保持し続けることができると同時に、道路の一部であって徐行すべきではないトンネル内への進入とは区別することができ、トンネル内で自動的に徐行状態になることはないことを特徴とする車両走行制御装置である。
【0016】
第五発明は、第三発明、第四発明の機能を解除する必要がある場合、マニュアル操作により解除することができることを特徴とする車両走行制御装置である。
【0017】
この発明によって、本来徐行すべき領域であっても高速で走行すべき緊急時などの事態においてはマニュアル操作で上記徐行機能を解除でき人間の意志に従って走行することが可能になる。
【0018】
第六発明は、日本が打ち上げていて、他の測位衛星と区別するための特定の衛星識別記号を持つ準天頂衛星の特徴を利用し、ビル内あるいは天蓋のある駐車場など空が見えない位置に車両がいることを確実に検知して車両が徐行領域内にいると判断することを特徴とするカーナビゲーションシステムである。
【0019】
カーナビゲーションシステムがGPS衛星を捕捉できない場合は、トンネル内、家屋内のような空が見えない場合とは限らない。車両が、両側に高層ビルが林立する街の中の道路にいる場合、空が見えているにもかかわらずGPS衛星が作るコンステレーションの配置に依存して、GPS衛星を捕捉できなくなる場合がある。
【0020】
そのような場合でも、日本が打ち上げる準天頂衛星群はその性質から最低でも一基は天頂付近に必ず存在するために空が見える位置にいるカーナビゲーションシステムはそれを捕捉可能であり、車両が空が見える位置にいることを認識できる。
【0021】
しかし、車両が地下、トンネル、屋根の下、建物の中に居る場合には準天頂衛星といえどもカーナビゲーションシステムは捕捉できず、車両が真に空の見えない領域に居ることが判定できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、徐行すべき領域に車両が進入した時、アクセル操作情報から推定される車両速度が上記徐行速度以上の状態にある場合でも車両走行制御装置が介入するため、車両は上記徐行速度以上には速度が上がらない。
【0023】
この機能により、駐車位置で停止するためにブレーキと間違えてアクセルを一杯に踏み込んでも既に車両の速度は上記徐行速度以下であるため、前方に障害物が存在する場合それを検知して自動的に停止する機能を持つ車両においてはその機能が有効に働き障害物の直前で停止可能になる。
【0024】
また、アクセルオフしなければ自動停止機能が働かない車両、自動停止機能を持たない車両においても、高々徐行速度での衝突の被害に抑えることができる。
【0025】
GPSによる測位精度は民生用のC/Aコードでさえほぼ10m以下の誤差であるので、スーパマーケット、コンビニ、娯楽施設などの店舗の駐車場、駅前の駐車場、民家のカーポートのような場所でこの機能が有効に働き、アクセルをブレーキと踏み間違えても未然に事故を防ぐか、事故の程度を軽減することができる。
【0026】
ビル内地下の駐車場のように空が見えない場所においても、自律航法あるいは第四発明により車両走行制御装置は位置情報あるいは徐行属性を捕捉しており、車両は徐行状態に保持されるので上記と同様に事故を防ぐか程度を軽減できる。
【0027】
また、準天頂衛星という、空が見える位置にあるカーナビゲーションシステムが常時捕捉可能な衛星の性質を利用すれば、空が見えない状況を確実に把握できる。
【0028】
準天頂衛星が捕捉できず、かつすべてのGPS衛星が捕捉できなくなった時点の位置が電子地図上でトンネル内など道路の延長上の一部でないと判断できる場合、地下駐車場などの徐行領域であると判断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態の機能構成を示したものである。
【0030】
カーナビゲーションシステム101は、電子地図102を利用して他律航法あるいは自律航法により現在位置を知り、その位置の電子地図上での位置情報を知ることができる。
【0031】
車両走行制御装置103は、アクセル操作部105からのアクセル操作情報とブレーキ操作部106からのブレーキ操作情報と位置情報使用停止スイッチ107からの使用停止情報とカーナビゲーションシステムからの位置情報から車両の状況を認識し、車両走行装置104を適切な状態に制御する。
【0032】
電子地図102が徐行領域を示す直接の属性を持たない場合、車両走行制御装置103は徐行すべき位置と推定される属性の一覧表を備えて、この表に含まれる属性を徐行領域属性とする。
【0033】
車両走行制御装置は、カーナビケーションシステムからの位置情報が徐行すべきことを示している場合であって、且つアクセル操作情報から推定される速度があらかじめ設定されている徐行速度以上の速度を示している場合、そのアクセル操作情報を無効にし、あらかじめ設定されている徐行速度にブレーキとアクセルの操作情報を設定して車両走行装置を制御する。
【0034】
この機能により、車両が徐行領域に入っていればアクセルを徐行速度以上になる状態に踏んでも徐行速度以上にはならない。
図2は以上の本発明にかかる基本的な車両走行制御の流れ図である。
【0035】
従って、進行方向に建物、人などの障害物がある場合、停止するためにブレーキを踏むつもりが間違えてアクセルを一杯に踏み抜いても、車両自動停止装置が障害物を検知し減速を始めた時には既に十分低速になっているだけでなく、踏んでいるアクセル操作が無効にされるため自動停止装置が有効に働き障害物に衝突することなく停止することが可能である。自動停止のためにアクセルオフが必要な車両あるいは車両自動停止装置を持たない車両であっても高々、徐行速度で衝突する程度の被害にとどめることができる。
【0036】
ただし、緊急走行の場合のように徐行領域内においても高速で走る必要がある場合の為に位置情報使用停止スイッチ107を設けることができる。
図3は位置情報使用停止スイッチを実装した時の動作を示す流れ図である。
【0037】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、徐行すべき場所において車両は自動的に徐行状態になるため、アクセルをブレーキと間違えて過度に踏んでも速度は徐行速度以上に上がらず未然に事故を防止することができる。
【0038】
また、徐行領域において緊急走行が必要な場合、本発明にかかる徐行機能をドライバーがスイッチで解除可能である。
【0039】
「他の実施形態」
図1は車両自動停止装置を実装しない場合の本発明にかかる機能構成図であるが、車両自動停止装置を実装した場合も本発明が有効であることはいうまでもない。
【0040】
また、本実施形態では徐行領域に対応する速度を一種類の徐行速度としたが、徐行領域を複数種のランクにわけて、各徐行領域毎に、それぞれ異なる徐行速度を設定することも可能である。
【0041】
比較的大きな駐車場、あるいは鉄道駅周辺構内では相対的に速い速度である徐行速度1に、民家やコンビニのような狭い領域ではより遅い速度の徐行速度2というように位置情報に従って徐行の速度設定を変えることを可能にした、カーナビゲーション中の電子地図の位置情報又は及び車両走行制御装置も本発明の範囲に含まれる。
【0042】
本発明は宇宙にある測位衛星だけを用いるとは限らない。地上、あるいは建物等に設置した擬似衛星のような測位のための地上設備を用いる場合も本発明の範囲に含まれる。
【0043】
要するに、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
乗用車を始めとするほぼすべての車両に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかる車両走行系の機能構成図である。
【図2】本発明にかかる基本的な車両走行制御の流れ図である。
【図3】本発明にかかる車両走行制御の実施形態の流れ図である。
【符号の説明】
【0046】
101 カーナビゲーションシステム 102 電子地図
103 車両走行制御装置 104 車両走行装置
105 アクセル操作部 106 ブレーキ操作部
107 位置情報使用停止スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ設定してある速度以上では車両が走行できない徐行領域を示す属性を持つ電子地図を備え、この属性情報を含む位置情報を該電子地図から取得できることを特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項2】
カーナビゲーションシステムの電子地図が請求項1の徐行領域属性を持たない場合、カーナビゲーションシステムから出力される位置情報から請求項1の徐行領域属性に変換するための手段を備えることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2のカーナビゲーションシステムと、加減連操作装置を具備する車両において、カーナビゲーションシステムの示す現在位置の位置情報から得られる属性が上記徐行領域であり、ドライバの加減速操作が該徐行速度以上である場合、車両の走行状態を上記徐行状態に変更させることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項4】
請求項3の車両走行制御装置において、
カーナビゲーションシステムが自律航法システムをもたない場合で、且つGPS衛星からの電波が届かない位置に車両が入っている場合、GPS衛星からの電波が途切れる直前のカーナビゲーションシステムからの位置情報が徐行すべき位置であることを示している場合に限り、上記徐行状態を保持することを特徴とする車両走行制御装置
【請求項5】
請求項3の車両走行制御装置において、
カーナビゲーションシステムからの位置情報による車両走行制御機能をドライバーが任意の時点でスイッチにより解除することができる両走行制御装置。
【請求項6】
他の測位衛星と区別するための特定の衛星識別記号を持つ測位用衛星からの信号を受信できない場合で、かつすべてのGPS衛星による測位ができなくなった時点の位置が電子地図上で道路の延長上の一部であると判断できない場合、徐行領域であると判断することを特徴とするカーナビゲーションシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−113841(P2013−113841A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272729(P2011−272729)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(511252590)
【出願人】(399125285)
【出願人】(511252615)
【出願人】(511252626)
【出願人】(511304202)
【Fターム(参考)】