説明

カーナビゲーション装置

【課題】外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに記憶して、メモリに記憶された地図データに基づいて経路案内を行うカーナビゲーション装置において、メモリに記憶された地図データの不足による不都合に対処する。
【解決手段】 位置検出器により自車の現在位置を検出し(S100)、検出した現在位置からメモリに記憶された地図データの境界までの距離が所定距離rとなる方向の範囲を決定する(S160)。この範囲は、地図データが少ない範囲であるので、自車がその方向へ走行しているかどうかをさらに判断する(S170)。そして、その方向へ走行しているが、メモリの地図データを更新することができない場合には、自車位置が地図データからもうすぐ外れる可能性があることを知らせる警告を出力する(S190)。これにより、搭乗者は、迅速に、読み取り機に地図データが記憶されたディスクを装着し直す作業をすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置に関し、特に、外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに一時的に記憶し、メモリに記憶されている地図データに基づいて経路案内を行い、また、表示装置に地図表示を行う形式のカーナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーナビゲーション装置において経路案内や表示装置に地図を表示するための地図データは、DVDやCD等の外部記憶装置に記憶されていることが多い。それらの外部記憶装置に地図データが記憶されている場合には、専用の読み取り装置によって外部記憶装置から地図データが読み取られる。
【0003】
そのようなカーナビゲーション装置の中には、外部記憶装置に記憶された地図データをRAMなどのメモリに一時的に記憶し、画面表示や経路案内は、そのメモリに記憶された地図データに基づいて行うようになっているものがある(たとえば、特許文献1)。
【0004】
ただし、通常は、メモリの記憶容量は外部記憶装置に比較して小さいことから、メモリに記憶される地図データは、外部記憶装置に記憶された地図データの一部分のみとなる。
【特許文献1】特開平8−261775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地図データをメモリに一時的に記憶しておき、メモリに記憶された地図データに基づいて画面上の地図表示や経路案内を行うようにすると、一旦、メモリに地図データを読み込んだ後は、外部記憶装置は必要なくなる。そのため、地図データが記憶された外部記憶装置を読み取り装置から取り出し、代わりに、その読み取り装置で音楽CDや映像が記憶されたDVD等を再生することが可能となる。
【0006】
しかし、当初予定していた経路とは別の経路を進行した場合などは、自車位置周辺の地図データがメモリに記憶されていない場合も生じる。そして、自車位置周辺の地図データがメモリに記憶されていない場合、突然、経路案内が中断してしまい、運転者が戸惑うという不都合が生じる。また、画面上の地図表示領域の一部分に地図が表示されないという状況が生じる可能性もある。地図表示領域の一部に地図が表示できない場合に、その地図が表示されない部分に何も表示されないとすると、画面の見栄えがよくないという問題もある。
【0007】
なお、外部記憶装置としては、DVDやCDのように、読み取り装置から取り出し可能なもの以外に、ハードディスクのように地図データが記憶された媒体が読み取り装置と一体となっており、その媒体が取り出し不能のものも知られている。外部記憶装置としてハードディスクが用いられている場合にも、地図データの一部をメモリに記憶すれば、ハードディスク内に記憶された音楽や映像を再生できるようになる一方で、ハードディスク内に記憶された音楽や映像を再生中は、メモリの地図データを更新できない。そのため、外部記憶装置がハードディスクである場合にも、上述の問題が生じる。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、メモリに地図データを記憶して、それに基づいて経路案内或いは画面上の地図表示を行うカーナビゲーション装置において、メモリに記憶された地図データの不足による不都合に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに一時的に記憶し、そのメモリに記憶された地図データに基づいて経路案内を行う形式のカーナビゲーション装置であって、自車位置が前記メモリに一時的に記憶されている地図データから外れる可能性があるか否かを判定する地図データ有無判定手段と、前記地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたことに基づいて所定の警告出力を行う警告出力手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載の発明によれば、自車位置がメモリに記憶された地図データから外れる可能性があることに基づいて、警告出力手段により所定の警告が出力されるので、車両の搭乗者が、迅速に、メモリに記憶されている地図データを更新することができる状態にすることが可能となり、また、搭乗者がその作業をすることができない(或いはする必要がないと判断した)場合であっても、搭乗者は自車位置が地図データから外れる可能性があることを予め知ることができるので、実際に自車位置が地図データから外れてしまっても、そのことによる戸惑いが少ない。
【0011】
ここで、前記地図データ有無判定手段は、請求項2のように、前記メモリに記憶されている地図データの境界と自車位置との間の距離および自車の進行方向に基づいて、地図データから外れる可能性を判断することが好ましい。
【0012】
自車位置が地図データから外れる可能性があるかどうかの判断は、自車位置と地図データの境界との間の距離のみによって行ってもよいのであるが、請求項2のように、さらに自車位置の進行方向も加えてその判断を行えば、たとえば、自車位置が地図データの境界に近いのであるが、その境界から遠ざかる方向に進行している場合には警告が出力されなくなるので、不要な警告が出力されることが防止される。
【0013】
前記警告出力手段における警告出力としては、請求項3のように、所定の警告音声を出力するものがある。しかし、それ以外に、表示装置に所定の警告メッセージを出力するものであってもよい。
【0014】
また、通常、地図データの一部をメモリに記憶しておき、そのメモリに記憶された地図データに基づいて経路案内を行っている場合、表示装置の地図表示もそのメモリに記憶された地図データに基づいて行うこととなる。この場合、自車位置がメモリに記憶された地図データから外れる前に、表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されない領域が生じる。請求項4は、表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されない状態になった場合に、警告出力として、表示装置に表示された地図の境界部分を不明瞭にするものである。
【0015】
すなわち、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のカーナビゲーション装置であって、前記メモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示する地図表示手段と、前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があるか否かを判断する表示地図データ不足判定手段とをさらに備え、前記警告出力手段は、前記表示地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定され、且つ、前記表示地図データ不足判定手段によって前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があると判定されたことに基づいて、前記警告出力として、前記表示装置に表示されている地図の境界縁部を、その地図の境界線に向かうほど不明瞭に表示することを特徴とする。
【0016】
上記カーナビゲーション装置において、経路案内は、常にメモリに記憶された地図データに基づいて行ってもよく、また、外部記憶装置から地図データが読み出せない状況のときにのみ、メモリに記憶された地図データを用いるようにしてもよい。
【0017】
後者の場合、外部記憶装置から地図データが読み出せるときにメモリに記憶された地図データを逐次更新するようにしてもよいし、音楽や映像の再生の直前に、メモリに記憶された地図データを更新するようにしてもよい。この後者の場合には、自車位置がメモリに記憶された地図データから外れる可能性があっても、搭乗者が音楽や映像の再生を中止するなどの操作を行わない限り、メモリに記憶された地図データを更新することはできないので、メモリに記憶された地図データが更新可能かどうかを判定する必要はない。
【0018】
一方、前者の場合には、自車位置がメモリに記憶された地図データから外れる可能性があるときでも、外部記憶装置から地図データを読み込んで、メモリに記憶された地図データを更新できる可能性がある。
【0019】
そこで、請求項5のように、前記メモリに記憶されている部分とは別の部分の地図データを前記外部記憶装置から読み出して、前記メモリに記憶されている地図データを更新することが可能か否かを判断する更新判定手段をさらに備え、前記警告出力手段は、前記地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたが、前記更新判定手段によって地図データを更新することが不能であると判定された場合に所定の警告を行うようにすることが好ましい。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、このように、更新判定手段を備えている場合に、請求項4に記載の発明と同様に、表示装置に表示されている地図の境界縁部をその地図の境界線に向かうほど不明瞭に表示するものである。
【0021】
すなわち、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のカーナビゲーション装置であって、前記メモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示する地図表示手段と、前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があるか否かを判断する表示地図データ不足判定手段とをさらに備え、前記警告出力手段は、前記表示地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたが、前記更新判定手段によって地図データを更新することが不能であると判定され、且つ、前記表示地図データ不足判定手段によって前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があると判定された場合に、前記警告出力として、前記表示装置に表示されている地図の境界縁部を、その地図の境界線に向かうほど不明瞭に表示するものである。
【0022】
請求項7および8記載の発明も請求項4および6記載の発明と同様に、表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されない場合に関する発明である。
【0023】
請求項7記載の発明は、外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに一時的に記憶し、そのメモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示するカーナビゲーション装置であって、前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域がある場合には、その地図が表示されていない領域に、所定の風景画像を表示する風景画像表示手段を含むことを特徴とする。
【0024】
このように、表示装置の地図表示領域の全部に地図が表示できない場合でも、その表示できない部分に所定の風景画像を表示すれば、地図表示領域の一部に何も表示されていない状態に比較して見栄えが向上する。
【0025】
ここで、好ましくは、請求項8記載のように、前記外部記憶装置から自車位置周辺の地図データを前記メモリに一時的に記憶させる際に、そのメモリに記憶される地図データの周囲の地図データに基づいて、予め記憶された複数の風景画像の中から、そのメモリに記憶される地図データの領域外の風景画像を、そのメモリに記憶される地図データの周囲全部に亘って選択する領域外風景画像選択手段と、前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域がある場合に、その地図が表示されていない領域が、前記領域外風景画像選択手段によってどの風景画像が選択されているかに基づいて、その地図が表示されていない領域に表示する風景画像を決定する表示画像決定手段とをさらに備え、前記風景画像表示手段は、前記所定の風景画像として、上記表示画像決定手段によって決定された風景画像を表示するようにする。
【0026】
このようにすれば、画面の地図表示領域の全部に地図が表示できない場合における見栄えが一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用されたカーナビゲーションシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0028】
図1において、カーナビゲーションシステムは、位置検出器1、ディスク読み取り機6、操作スイッチ群7、メモリ9、表示装置10、送受信機11、音声コントローラ12、スピーカ13、音声認識装置14、マイク15、リモコンセンサ16、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)17と、これら各装置が接続された制御装置8を備えている。
【0029】
制御装置8は、通常のコンピュータであり、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するためのバスラインを備えている。ROMには、制御装置8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0030】
位置検出器1は、車両の絶対方位を検出するための地磁気センサ2、車両の相対方位を検出するためのジャイロスコープ3、車両の走行距離を検出する距離センサ4、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するグローバルポジショニングシステム(GPS)のためのGPS受信機5を有しているおり、これらのセンサ等2、3、4、5は、いずれも周知のものである。これらのセンサ等2、3、4、5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサ等2、3、4、5により各々を補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては、上述したうちの一部で位置検出器1を構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。
【0031】
ディスク読み取り機6は、外部記憶装置であるDVDおよびCD(いずれも不図示)を読み取り可能な装置であり、それらDVDまたはCDが一枚のみ装着可能とされている。このディスク読み取り機6に地図データが記憶されたディスクが装着されると、読み取り機6によってそのディスクから地図データが読み取られて、制御装置8へ供給される。なお、上記地図データが記憶されたディスクには、複数の風景画像が記憶されており、また、上記地図データにはその風景画像に対応する複数の風景区分が含まれる。これら風景画像および風景区分については後述する。また、このディスクに、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、目印データ等がさらに記憶されていてもよい。
【0032】
上記ディスク読み取り機6に、地図データが記憶されたディスクに代えて、音楽CDが装着された場合には、制御装置8へそのCD内のデータが供給されることにより音楽が再生され、また、映像が記憶されたDVDが装着された場合には、制御装置8へそのDVD内のデータが供給されることにより映像およびそれに付随する音が再生される。
【0033】
操作スイッチ群7は、たとえば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくは表示装置10の周辺に設けられるメカニカルなスイッチ等からなり、表示装置10に表示された地図の縮尺変更、メニュー表示選択、目的地設定、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、表示画面変更、音量調整等の各種入力に使用される。また、リモコン17には、図示しない複数の操作スイッチが設けられ、その操作スイッチの操作により操作スイッチ群7と同様の入力操作が行える。リモコン17に入力された入力操作を表す信号は、リモコンセンサ16を介して制御装置8へ供給される。
【0034】
リモコン17を介してリモコンセンサ16から、或いは操作スイッチ群7により目的地が設定されると、制御装置8は、位置検出器1により検出された現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に探索して誘導経路を設定し表示する。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。
【0035】
また、誘導経路が設定されると、地図データが記憶されたディスクから、ディスク読み取り機6によってその誘導経路を基準とする所定領域の地図データ(すなわちディスクに記憶された地図データの一部分)がメモリ9へ一時的に記憶され、目的地まで移動する間の地図表示および経路案内は、そのメモリに記憶された地図データに基づいて行われる。従って、一旦、目的地までの誘導経路が設定されると、地図データを記憶したディスクをディスク読み取り機6から取り出し、代わりに、音楽CDや映像が記憶されたDVDをディスク読み取り機6に装着して、再生することができる。
【0036】
メモリ9は、本実施形態では、RAMを用いている。このRAMは、ディスク読み取り機6に装着されるディスクに対して記憶容量が小さく、そのために、ディスクに記憶された地図データの一部しか記憶できない。なお、RAM以外にも、書き換え可能な記憶装置であって、専用の読み取り装置を用いないで制御装置8から直接読み書きが可能な記憶装置(たとえば、EPROMなどのRAM以外の半導体記憶装置)であればメモリとして用いることができる。
【0037】
表示装置10は、たとえば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイによって構成され、その表示装置10の所定の地図表示領域には、車両の現在位置に対応する自車位置マークが地図データによって生成された車両周辺の道路地図上に重畳表示される。また、表示装置10には、その他に、現在時刻、渋滞情報などの他の情報表示を付加的に表示することもできる。
【0038】
送受信機11は、外部との通信接続をするための通信機であり、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)センタから提供される道路交通情報、気象情報、施設情報、広告情報を受信するVICSセンサと接続され、この道路交通情報等を制御装置8へ送信する。また、上記制御装置8で処理した情報を送受信機11から出力することもできる。
【0039】
スピーカ13は、音声コントローラ12から入力された音声出力信号に基づき所定の音声(案内のための音声や画面操作の説明、音声認識結果等)を外部に出力する。
【0040】
マイク15は、操作者が発声した音声を電気信号として音声認識装置14に入力する。音声認識装置14は、マイク15から入力された操作者の入力音声と、内部に記憶する認識辞書(不図示)中の語彙データ(比較対照パターン)とを照合し、最も一致度の高いものを認識結果として音声コントローラ12に入力する。
【0041】
音声コントローラ12は、音声認識装置14を制御するとともに、音声入力のあった操作者に対し、スピーカ13を通じてトークバック出力制御(音声出力)する。また、音声認識装置14の認識結果を制御装置8に入力する処理も行う。
【0042】
制御装置8は、音声認識装置14からの情報に基づき、操作者の発声に対する所定の処理および操作スイッチ群7あるいはリモコン17の入力操作に対する所定の処理(たとえば、メモリ9への地図データの記憶処理、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等)を実行する。また、制御装置8で処理された経路案内音声情報等は、音声コントローラ12を介してスピーカ13から適宜報知される。さらに、位置検出器1によって検出された自車の現在位置が、メモリ9に記憶された地図データから外れそうになっているが、メモリ9に記憶された地図データが更新できない場合には、所定の警告出力を行い、また、表示装置10の所定の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域がある場合には、その地図が表示されていない領域に所定の風景画像を表示する。
【0043】
図2は、上記制御装置8において出発時に実行される初期処理、すなわち、出発地点から目的地までの誘導経路を決定する処理の要部を示すフローチャートである。なお、図2に示す処理は、ディスク読み取り機6に地図データが記憶されたディスクが装着された状態で実行するものである。
【0044】
図2において、まず、ステップS10では、リモコン17或いは操作スイッチ群7の操作により、またはマイク15を介した音声の入力により、目的地を決定する。そして、続くステップS20では、位置検出器1からの信号に基づいて自車の現在位置を検出する。
【0045】
続くステップS30では、ダイクストラ法等の公知の手法により、上記ステップS20で検出した自車の現在位置(出発地)からステップS10で決定した目的地までの誘導経路を決定する。そして、ステップS40では、上記ステップS30で決定した誘導経路を基準とする所定の範囲の地図データをメモリ9へ記憶する。図3に示す地図データ領域20(境界線22によって囲まれる領域)は、このステップS40でメモリ9へ記憶された地図データの一例を示すものであり、地図データ領域20は、ステップS30で決定された誘導経路を示す誘導経路線24までの最短距離が所定距離にある範囲となっている。
【0046】
続くステップS50は、領域外風景画像選択手段に相当するものであり、予め地図データとともにディスクに記憶された複数の風景画像の中から、上記ステップS40で記憶した地図データの領域外の風景画像を、ステップS40で記憶した地図データの周囲全部に亘って選択する。ディスクに記憶された地図データには、図3に示すように、所定の風景(図3では、山、町、平野、海の4つ)に分類された風景区分も地図データに重畳的に記憶されており、ステップS50では、ステップS40でメモリ9へ記憶した地図データ領域20の境界線22が上記風景区分のどの区分上に位置しているかに基づいて風景画像を選択する。図3に示す例の場合には、A点からB点までは領域外の風景画像として山を選択し、B点からC点までは領域外の風景画像として町を選択し、C点からD点までは平野を選択し、D点からE点は町を選択し、E点からF点までは海を選択し、F点からA点までは町を選択する。なお、A〜F点は、メモリ9に記憶される地図データ領域20の境界線22と、風景区分の境界線との交点である。
【0047】
図4は、出発地から目的地までの運転中に制御装置8が実行する処理のうち、経路案内に必要な地図データの有無を判断する処理および地図表示に関する処理の要部を示すフローチャートであり、図2の初期処理を実行した後、目的地に到着するまで繰り返し実行する。
【0048】
図4では、まず、地図表示手段に相当するステップS100乃至S110を実行する。ステップS100では、位置検出器1からの信号に基づいて自車の現在位置を検出する。そして、ステップS110では、上記ステップS100で決定した現在位置を中心として、表示装置10に表示されている地図の縮尺に基づいて定まる所定の矩形範囲の地図データをメモリ9から読み出して、表示装置10の地図表示領域に表示する。
【0049】
続くステップS120は表示地図データ不足判定手段に相当するものであり、上記ステップS110で表示装置10の地図表示領域の全部に地図が表示できたか、すなわち、表示装置10の地図表示領域全部に対応する地図データがメモリ9に記憶されていたか否かを判断する。このステップS120の判断が肯定された場合には、後述するステップS160以降を直接的に実行する。
【0050】
一方、ステップS120の判断が否定された場合には、続くステップS130において、メモリ9に記憶された地図データの更新が可能か否かを判断する。すなわち、ディスク読み取り機6に地図データが記憶されたディスクが装着されており、ディスク読み取り機6によりそのディスクから地図データが読み込めるか否かを判断する。この判断が肯定された場合、すなわち、地図データが読み取り可能な場合にも、後述するステップS160以降を直接的に実行する。
【0051】
一方、ディスク読み取り機6に音楽CDや映像が記憶されたDVDが装着されている場合には、上記ステップS130の判断が否定される。ステップS130の判断が否定された場合には、表示画像決定手段に相当するステップS140を実行して、表示装置10の地図表示領域において地図が表示されていない部分に表示する風景画像を決定する。
【0052】
前述のステップS120の判断が否定されてステップS140が実行される場合は、表示装置10の地図表示領域内に、メモリ9に記憶されている地図データ領域20の境界線22が位置する場合である。そこで、ステップS140では、表示装置10の地図表示領域内に位置する地図データ領域20の境界線22が、図2のステップS50におけるどの点間の境界線22であるか(すなわち、図3の例の場合、A−B間、B−C間、C−D間、D−E間、E−F間、F−A間のいずれであるか)に基づいて風景画像を決定する。
【0053】
そして、ステップS140において風景画像を決定したら、続くステップS150において、表示装置10の地図表示領域において地図が表示されていない部分に、ステップS140で決定した風景画像を表示する。このステップS150が風景画像表示手段に相当する。図5は、地図表示領域の地図が表示されていない部分に「山」の風景画像26が表示されている例を示す図であり、図6は、地図表示領域の地図が表示されていない部分に「海」の風景画像28が表示されている例を示す図である。
【0054】
上記ステップS150を実行した場合、前述のステップS120の判断が肯定された場合、およびステップS130の判断が否定された場合には、ステップS160以下を実行する。ステップS160およびS170は地図データ有無判定手段に相当するものである。
【0055】
ステップS160では、ステップS100で検出された自車の現在位置からメモリ9に記憶された地図データ領域20の境界線22までの距離が所定距離r以下となる方向の範囲を決定する。たとえば、自車位置Oと、地図データ領域20の境界線22との関係が図7に示すような関係にある場合、O→G方向からO→H方向までの範囲が、地図データ領域20の境界線22までの距離が所定距離r以下となる方向の範囲である。この範囲は、地図データが少ない範囲であることを意味している。なお、点Gおよび点Hは、自車位置Oを中心とする所定距離rの円と境界線22との交点である。
【0056】
続くステップS170では、位置検出器1によって逐次検出される自車位置の軌跡に基づいて自車の進行方向を決定して、上記決定ステップS160で決定した範囲へ走行しているか否かを判断する。この判断が肯定された場合には、近く地図データが不足する、すなわち、自車位置が地図データから外れる可能性がある。
【0057】
そこで、続くステップS180において、メモリ9に記憶されている地図データの更新が可能か否かをさらに判断する。このステップS180が更新判定手段に相当する。なお、ステップS170の判断が否定された場合には、地図データの更新の必要がないので、本ルーチンを一旦終了して、前述のステップS100以下を繰り返す。
【0058】
ディスク読み取り機6に地図データが記憶されたディスクが装着されている場合にはステップS180の判断が肯定され、図示しないステップにおいて、地図データが更新されることになる。一方、ステップS180の判断が否定された場合には、地図データの更新をする必要があるが、その更新ができない場合であるので、警告出力手段に相当するステップS190において、自車位置が地図データからもうすぐ外れる可能性があることを知らせるメッセージを表示装置10に表示するとともに、そのことを知らせる所定の警告音声をスピーカ13から出力させる。
【0059】
そして、ステップS190を実行した後は、前述のステップS100以下を繰り返し実行するので、条件が満たされる場合には、連続的にステップS190における警告出力を実行することになる。
【0060】
以上、説明した本実施形態によれば、自車位置がメモリ9に記憶された地図データから外れる可能性があるか否かが判断され(S160、S170)、その可能性があるが、ディスクから地図データを読み込み直してメモリ9に記憶された地図データを更新することができない場合には、所定の警告が出力されるので(S190)、車両の搭乗者が、迅速に、ディスク読み取り機6に地図データが記憶されたディスクを装着し直す作業をすることが可能となり、また、搭乗者がその作業をすることができない(或いはする必要がないと判断した)場合であっても、搭乗者は自車位置が地図データから外れる可能性があることを予め知ることができるので、実際に自車位置が地図データから外れてしまっても、そのことによる戸惑いが少ない。
【0061】
また、本実施形態によれば、自車位置がメモリ9に記憶された地図データ領域20から外れる可能性があるか否かは、自車位置とメモリ9に記憶された地図データ領域20の境界線22との間の距離だけでなく、自車位置の進行方向も加えて判断しているので、たとえば、自車位置が地図データ領域20の境界線22に近いのであるが、その境界線22から遠ざかる方向に進行している場合には警告が出力されなくなるので、不要な警告が出力されることが防止される。
【0062】
また、本実施形態によれば、表示装置10の地図表示領域の全部に地図が表示できない場合でも、その表示できない部分に所定の風景画像が表示されるので(S150)、地図表示領域の一部に何も表示されていない状態に比較して見栄えが向上する。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0064】
たとえば、前述の実施形態では、警告出力として、所定のメッセージを表示装置10に表示するとともに、所定の警告音声をスピーカ13から出力していたが、その警告出力に加えて、警告を出力する状態において表示装置10の地図表示領域に地図が表示されていない領域がある場合には、警告出力として、地図表示領域に表示されている地図の境界縁部を、その地図の境界線に向かうほど不明瞭にしてもよい。
【0065】
図8は、上記処理を示すフローチャートであり、前述のステップS180が否定された場合には、ステップS182において、前述のステップS120と同様に、地図表示領域全部の地図データが有るか否かを判断する。この判断が否定された場合には、図9に示すように、地図表示領域に表示された地図の境界縁部30を、地図の境界側ほど不明瞭にする。なお、図9では、境界側ほど色を薄くすることによって境界側ほど不明瞭になるようにしているが、その他に、境界側ほど暗くしたり、境界側ほどモザイクの程度を大きくしたりすることによって、境界側ほど不明瞭となるようにしてもよい。
【0066】
さらに、警告出力としては、それ以外に、ベルやチャイムなどの擬音を出力するものであってもよいし、また、経路案内の音声を小さくするものであってもよい。なお、これらの警告出力は、自車位置が境界線22に接近するに従って、内容が変更されるようになっていてもよい。たとえば、経路案内の音声を小さくするものにおいては、境界線22に近づくほどその音声を小さくするようにしてもよい。
【0067】
また、前述の実施形態では、表示装置10の地図表示領域に地図が表示されていない領域がある場合にはその領域に風景画像を表示しており、且つ、自車位置がメモリ9に記憶された地図データから外れる可能性があるが、その地図データが更新できない場合には、所定の警告出力を行っていたが、前者および後者のいずれか一方のみを実行してもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、経路案内および表示装置10への地図表示は、常にメモリ9に記憶された地図データに基づいて行われていたが、ディスク読み取り装置6を用いて外部記憶装置から地図データが読み取り可能な状態では、その外部記憶装置に記憶された地図データを用いて経路案内および地図表示を行うようにしてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、表示装置10に表示される風景画像は複数の風景画像から選択されていたが、風景画像は一種類のみが用意されていてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、風景画像は、地図データとともにディスクに記憶されていたが、カーナビゲーション装置にROMが設けられ、そのROMに風景画像が記憶されていてもよい。また、前述のメモリ9に風景画像が記憶されていてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、複数の風景画像から適切な風景画像を選択するための風景区分が地図データに含まれていたが、メモリ9に記憶される地図データの周囲の地名を用いて複数の風景画像から適切な風景画像を選択するこもとできるので、風景区分は必ずしも必要ではない。たとえば、メモリ9に記憶される地図データの領域外において、「〜市」である部分には風景画像として「町」を選択し、その地図データの領域外が山である部分には風景画像として「山」を選択するなどすれば、風景区分は必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明が適用されたカーナビゲーションシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置8において出発時に実行される初期処理の要部を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS40でメモリ9へ記憶された地図データの一例を示す図である。
【図4】制御装置8が実行する処理のうち、経路案内に必要な地図データの有無を判断する処理および地図表示に関する処理の要部を示すフローチャートである。
【図5】地図表示領域の地図が表示されていない部分に「山」の風景画像26が表示されている例を示す図である。
【図6】地図表示領域の地図が表示されていない部分に「海」の風景画像28が表示されている例を示す図である。
【図7】自車位置Oから、メモリ9に記憶された地図データ領域20の境界線22までの距離が所定距離r以下となる方向の範囲を例示する図である。
【図8】制御装置8が実行する処理のうち、経路案内に必要な地図データの有無を判断する処理の要部を示すフローチャートであって、図4とは別の処理を示す図である。
【図9】図8のステップS185が実行されて、表示装置10の地図表示領域に表示された地図の境界縁部30が境界側ほど不明瞭とされた状態を例示する図である。
【符号の説明】
【0073】
9:メモリ
10:表示装置
30:境界縁部
S50:領域外風景画像選択手段
S100、S110:地図表示手段
S120:表示地図データ不足判定手段
S140:表示画像決定手段
S150:風景画像表示手段
S160、S170:地図データ有無判定手段
S180:更新判定手段
S190:警告出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに一時的に記憶し、そのメモリに記憶された地図データに基づいて経路案内を行う形式のカーナビゲーション装置であって、
自車位置が前記メモリに一時的に記憶されている地図データから外れる可能性があるか否かを判定する地図データ有無判定手段と、
前記地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたことに基づいて所定の警告出力を行う警告出力手段とを含むことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記地図データ有無判定手段は、前記メモリに記憶されている地図データの境界と自車位置との間の距離および自車の進行方向に基づいて、地図データから外れる可能性を判断するものである
ことを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記警告出力手段は、警告出力として、所定の警告音声を出力することを特徴とする請求項1または2記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカーナビゲーション装置であって、
前記メモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示する地図表示手段と、
前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があるか否かを判断する表示地図データ不足判定手段とをさらに備え、
前記警告出力手段は、前記表示地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定され、且つ、前記表示地図データ不足判定手段によって前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があると判定されたことに基づいて、前記警告出力として、前記表示装置に表示されている地図の境界縁部を、その地図の境界線に向かうほど不明瞭に表示する
ことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカーナビゲーション装置であって、
前記メモリに記憶されている部分とは別の部分の地図データを前記外部記憶装置から読み出して、前記メモリに記憶されている地図データを更新することが可能か否かを判断する更新判定手段をさらに備え、
前記警告出力手段は、前記地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたが、前記更新判定手段によって地図データを更新することが不能であると判定された場合に所定の警告を行うものである
ことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項5に記載のカーナビゲーション装置であって、
前記メモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示する地図表示手段と、
前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があるか否かを判断する表示地図データ不足判定手段とをさらに備え、
前記警告出力手段は、前記表示地図データ有無判定手段によって自車位置が地図データから外れる可能性があると判定されたが、前記更新判定手段によって地図データを更新することが不能であると判定され、且つ、前記表示地図データ不足判定手段によって前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域があると判定された場合に、前記警告出力として、前記表示装置に表示されている地図の境界縁部を、その地図の境界線に向かうほど不明瞭に表示する
ことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項7】
外部記憶装置に記憶された地図データの一部をメモリに一時的に記憶し、そのメモリに記憶された地図データに基づいて、表示装置の所定の地図表示領域に自車位置周辺の地図を表示するカーナビゲーション装置であって、
前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域がある場合には、その地図が表示されていない領域に、所定の風景画像を表示する風景画像表示手段
を含むことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項8】
前記外部記憶装置から自車位置周辺の地図データを前記メモリに一時的に記憶させる際に、そのメモリに記憶される地図データの周囲の地図データに基づいて、予め記憶された複数の風景画像の中から、そのメモリに記憶される地図データの領域外の風景画像を、そのメモリに記憶される地図データの周囲全部に亘って選択する領域外風景画像選択手段と、
前記表示装置の地図表示領域の一部に地図が表示されていない領域がある場合に、その地図が表示されていない領域が、前記領域外風景画像選択手段によってどの風景画像が選択されているかに基づいて、その地図が表示されていない領域に表示する風景画像を決定する表示画像決定手段とをさらに備え、
前記風景画像表示手段は、前記所定の風景画像として、上記表示画像決定手段によって決定された風景画像を表示するものである
ことを特徴とする請求項7に記載のカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−343199(P2006−343199A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168628(P2005−168628)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】