説明

カーナビゲーション装置

【課題】一画面において、自車現在位置の周辺についての詳細な地図情報を表示し、且つ比較的遠いところについても大まかな道路形状や施設等の情報を表示することを可能とし、しかも、地図表示の視認性に優れ、そのための処理を比較的簡単に済ませる。
【解決手段】カーナビゲーションシステム1は、自車位置検出器8〜10、地図データ入力器6、コンビネーションメータ3内に設けられた表示装置15、表示装置15の表示を制御するナビ制御回路2等を備える。ナビ制御回路2は、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成することによって、画面の自車現在位置の近傍部分においては、詳細な(縮尺の比較的小さい)道路地図を表示させ、画面の自車現在位置から遠い部分では、広域の(縮尺のより大きい)道路地図を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の画面に、自車の周辺の道路地図を自車現在位置と共に表示するようにしたカーナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載されるカーナビゲーション装置は、マイコンを備える本体、フルカラー液晶ディスプレイからなる表示装置、GPS受信機を含む位置検出器、DVD等から地図データを読込む地図データ入力器等を備えて構成されている。そして、自車の現在位置を検出し地図に重ね合わせて表示装置に表示するロケーション機能や、ユーザが指定した目的地までの推奨する経路を探索し、案内する経路案内機能などを備えている。
【0003】
このとき、前記表示装置の画面には、例えば1/50000スケールの広域地図や、1/1000スケール(10m図)の詳細地図といった複数段階(例えば10段階)の縮尺での道路地図の表示が可能とされている。表示される地図の縮尺(縮小比率)は、ユーザによる指示により、あるいは自動で変更されるようになっている。
【0004】
ところで、カーナビゲーション装置を使用するユーザにあっては、自車現在位置の周辺についての詳細な地図情報(道路や周辺施設の情報)を得たいが、自車位置から比較的遠いところについても、主要な道路や施設の大体の位置などの情報を知りたいといった要望がある。ところが、従来のカーナビゲーション装置では、表示装置の画面には固定された(複数から選ばれた)縮尺でしか地図が表示されないので、ユーザは画面に詳細地図を表示するか広域地図を表示するかのどちらかを選択せざるを得ず、上記したユーザの要望に応えることはできなかった。
【0005】
これに対し、近年では、表示装置の画面を左右に2分割し、詳細地図と広域地図とを左右に並べて表示する二画面表示を行うものが供されている。また、別の例として、平面の道路地図を曲面状に展開し、それを投影した画像(いわば魚眼レンズを通した如き画像)を表示装置の画面に表示することによって、一画面の中で地図の縮尺が連続的に変化する、つまり部分的に拡大あるいは縮小された地図表示を行うことが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−56400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のうち前者の二画面表示を行うものでは、ユーザが視点を左右に移動させながら詳細地図と広域地図との双方を見るものであるため、視認性に劣り、ユーザにとって地図が理解しにくい問題がある。特に、表示装置の画面が比較的小さいもの(例えば3.5インチ)である場合には、一画面の大きさ自体が小さくなり、ユーザにとって極めて視認しづらいものとなってしまう。
【0007】
また、後者の平面の地図を曲面化し、その曲面を投影した地図画像を画面に表示するものでは、例えば自車現在位置の周辺部分を詳細表示し、遠方に行くに従って広域表示とすることが可能となるが、その表示用のデータを生成するための処理を行う際の負荷量(計算量)が膨大となり、処理に時間がかかって速やかな表示を行えない問題点がある。さらには、表示装置の画面の端部に行くほど地図が歪んで表示されてしまう問題もあり、やはり、特に表示装置の画面が比較的小さい場合に、視認性に劣るものとなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、一画面において、自車現在位置の周辺についての詳細な地図情報を表示し、且つ自車現在位置から比較的遠いところについても大まかな道路形状や施設等の情報を表示することを可能としたものであって、地図表示の視認性に優れると共に、そのための処理を比較的簡単に済ませることができるカーナビゲーション装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のカーナビゲーション装置は、道路地図のデータを取得する地図データ入力手段と、自車の現在位置を検出する自車位置検出手段とを備え、表示装置の画面に、自車の周辺の道路地図を自車現在位置と共に表示するようにしたものにあって、表示装置の画面に道路地図を表示させる際に、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成することによって、画面の自車現在位置の近傍部分においては、詳細な道路地図を表示させ、該画面の自車現在位置から遠い部分では、広域の道路地図を表示させる表示制御手段を設けたところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0010】
これによれば、表示制御手段により、表示装置の画面には、自車現在位置の周辺について、縮尺の比較的小さい道路地図データに基づいて詳細な地図情報が表示され自車現在位置から遠い部分について、縮尺のより大きい道路地図データに基づいて広域の道路地図が表示される。従って、ユーザは、自車現在位置の周辺に関して詳細な地図情報を得ることができると共に、自車位置から比較的遠いところについても、大まかな道路形状や施設等の情報を知ることができる。
【0011】
そして、それら道路地図は、表示装置の一画面において分割されることなく表示されると共に、曲面を投影したものと異なり、大きく歪むこともないので、ユーザにとって視認性に優れるものとなる。しかも、縮尺の異なる地図を合成するだけで済むので、演算処理の負荷量が少なく、そのための処理を比較的簡単に済ませることができる。
【0012】
このとき、前記表示制御手段を、自車現在位置の近傍部分においては、ユーザにより選択された縮尺の道路地図を表示させるように構成することができる(請求項2の発明)。これにより、ユーザが、自車現在位置の周辺に関して所望の縮尺で地図情報を得ることができる。
【0013】
上記表示制御手段を、詳細な道路地図の表示領域を、自車の進行方向前方に長く設定するように構成することができ(請求項3の発明)、これにより、自車の進行方向前方に関しての詳細な地図情報を広い範囲にわたって表示することができ、より効果的となる。
【0014】
ここで、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成する場合、地図が不連続的に表示されることになり、本来は連続している道路がうまく繋がらずにずれたり、道路が途中で切れたりしてユーザに違和感を与えてしまうことが考えられる。このような不具合は、縮尺が徐々に変化するように多数の道路地図データを合成することにより、ある程度解消できるので、表示制御手段を、表示装置の画面に、3段階以上の縮尺の道路地図を表示させるように構成すれば(請求項4の発明)、上記のような違和感を抑制することができる。
【0015】
前記表示制御手段を、表示装置の画面における縮尺の境界部分に境界線を表示させるように構成しても良く(請求項5の発明)、ユーザが縮尺の境界部分が判ることによって、地図が不連続であることによる違和感を解消することができる。
【0016】
また、上記地図データ入力手段により取得できる道路地図データは、一般に、間欠的な複数段階の縮尺のものとされるが、いずれかの縮尺の道路地図データを縮小又は拡大することにより、任意の縮尺の表示用道路地図データを生成する表示地図データ生成手段を設けるようにすれば(請求項6の発明)、縮尺の存在しない地図データをいわば補完することができ、縮尺が徐々に変化するように道路地図を表示させる際により効果的となる。
【0017】
そして、表示制御手段により合成される複数の道路地図データの縮尺の決め方として、表示装置の画面上に、自車現在位置を原点とし自車進行方向をY軸方向としたXY座標系を設定し、Y軸方向及びX軸方向の縮尺Sy及びSxを、夫々次の式により設定するように構成することができる(請求項7の発明)。
【0018】
Sy=b×Y2 +S0
Sx=a×X2 +S0
但し、b、aは任意定数、S0は自車現在位置の近傍部分における縮尺である。これにより、表示装置の画面の位置に応じ、縮尺が徐々に変化するように道路地図を表示させるのに適した縮尺を容易に求めることができる。
【0019】
前記表示制御手段は、前記表示装置の画面のうち自車現在位置から遠い部分に広域の道路地図を表示させる際に、表示する道路やランドマークの数を減少させるように構成することができる(請求項8の発明)。これにより、広域の道路地図を縮小して表示するような場合に、地図表示が煩雑となることを防止することができる。
【0020】
前記表示制御手段を、目的地までの経路を探索し案内する経路案内機能による経路案内時においては、目的地までの経路を基準とし該経路に沿って縮尺を変更するように構成することができる(請求項9の発明)。これによれば、自車が走行する経路を基準として、縮尺を変更した表示が行われるので、所期の目的を達成しながらも、自車が走行しようとする道路について、ずれが生ずることなく分かりやすい表示を行うことができる。
【0021】
さらには、前記表示制御手段を、自車が走行している道路の種別、走行地域、走行速度、目的地までの距離などの条件に応じて、表示すべき道路地図の縮尺を変更するように構成することができる(請求項10の発明)。これによれば、例えば、高速道路走行時には一般道路走行時よりも、広域の道路地図を表示する度合を大きくする、市街地では郡部よりも詳細の度合を大きくする、走行速度が大きい場合の方が広域の度合をより大きくする、目的地近傍では詳細の度合を大きくする、というように、各条件に応じた、より適切な表示を行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明においては、前記表示装置の画面全体に1種類の縮尺の道路地図を表示するモードと、前記表示制御手段による表示装置の画面に複数段階の縮尺の道路地図を表示するモードとを切替えるモード切替手段を設けることができる(請求項11の発明)。これによれば、モード切替手段によって地図表示のモードが切替えられることにより、その場に適したモードでの地図表示を行うことが可能となり、或いはユーザの選んだモードでの地図表示を行うことが可能となり、利便性を高めることができる。
【0023】
ところで、この種のカーナビゲーション装置の表示装置は、インストルメントパネルの中央部(センタコンソール部分)に埋め込むように設けたり、インストルメントパネル上に載置状に設けたりすることが一般的であった。これに対し、本発明においては、表示装置を、運転席のコンビネーションメータ内に配設する構成とすることができる(請求項12の発明)。これにより、ドライバの視線移動を小さく済ませることができる。このとき、表示装置をコンビネーションメータ内に配設する場合、画面が比較的小さくなる事情があるが、上述のように、ドライバにとって見やすい表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。まず、図1は、本実施例に係るカーナビゲーション装置を含んだカーナビゲーションシステム1の全体の電気的構成を概略的に示している。
【0025】
このカーナビゲーションシステム1は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなるマイコンを主体として構成されたナビ制御回路2に、コンビネーションメータ3(図2参照)を制御するメータ制御回路4、メモリ装置5、地図データ入力手段としての地図データ入力器6、自車の現在位置を検出するための自車位置検出器、図示しない操作スイッチ部などを接続して構成されている。また、ナビ制御回路2は、自車両に搭載された複数のシステム(各々の制御コンピュータ)間でのネットワークを形成する車内ネットワーク(車内LAN)7に接続されている。前記メータ制御回路4もこの車内ネットワーク7に接続されている。
【0026】
前記自車位置検出器は、GPS受信機8、ジャイロセンサ9、Gセンサ10等からなり、これらからの信号に基づいて、自車の現在位置、進行方向等を高精度で検出するようになっており、自車位置検出手段として機能する。前記地図データ入力器6は、道路地図データや、それに付随する目的地データ(施設データベース)等の各種データを記憶した記憶媒体からデータを入力するためのドライブ装置からなり、その記憶媒体として、例えばCD−ROMやDVD、ハードディスク等の大容量記憶媒体が用いられる。
【0027】
前記道路地図データは、道路形状、道路幅、道路名、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むと共に、その道路地図を後述する表示装置の画面上に再生するためのデータを含んで構成されている。このとき、道路地図データは、表示装置の画面上に、例えば1/50000スケールの広域地図や、1/1000スケール(10m図)の詳細地図といった複数段階(例えば10段階)の縮尺で道路地図を表示させるためのデータを含んでいる。
【0028】
また、前記目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの住所や電話番号、緯度及び経度等のデータが含まれると共に、施設を示すランドマーク等を、表示装置の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0029】
図2は、前記コンビネーションメータ3の外観を概略的に示しており、このコンビネーションメータ3は、インストルメントパネル(図示せず)の運転席側に埋め込まれるようにして設けられている。このコンビネーションメータ3には、左右に位置して、円形状をなすスピードメータ11及びタコメータ12が設けられ、これと共に、図示はしないが、水温計、燃料計などの各種メータや、時計(時刻表示部)等が設けられている。更に、詳しく図示はしないが、シフトポジションの表示器やウインカー表示器、各種ワーニングランプ等が設けられており、これらは、図1に示す、下部LED群13及び上部LED群14を光源とするようになっている。
【0030】
そして、このコンビネーションメータ3の中央部(前記スピードメータ11とタコメータ12との間)には、表示装置15が設けられている。この表示装置15は、例えばTFTカラー液晶ディスプレイからなり、やや縦長の比較的小型の画面(例えば3.5インチ)を有して構成されている。詳しくは後述するように、この表示装置15の画面には、自車の現在地周辺の道路地図等のナビゲーション画面が表示されるようになっている。尚、ユーザが操作スイッチ部を操作することにより、表示装置15に表示させる道路地図の種類(縮尺)を選択できるようになっている。
【0031】
図1に示すように、前記メータ制御回路4は、コンビネーションメータ3の、スピードメータ11及びタコメータ12などの各種メータや下部LED群13及び上部LED群14を制御するようになっている。このとき、メータ制御回路4には、例えば、イグニッションのオン・オフ情報や、エンジン回転数センサ、車速センサ、シフトポジションセンサ、水温センサ、フューエルセンサ等の各種センサの検出に基づく情報等が、車内ネットワーク7を介して入力されるようになっている。
【0032】
そして、このメータ制御回路4は、前記ナビ制御回路2から与えられる表示データに基づいて、前記表示装置15の表示を制御するようになっている。さらに、メータ制御回路4は、オーディオI/F16を介してスピーカ17を制御するようになっている。スピーカ17からは、図示しないオーディオ装置による音声データ(再生音声)が出力されたり、ナビゲーションにおける音声案内等の合成音声が出力されたりするようになっている。尚、このメータ制御回路4には、前記メモリ装置5も接続されている。
【0033】
さて、前記ナビ制御回路2は、そのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、自車の現在位置を知らせるロケーション機能を実現すると共に、指定された目的地までの経路を探索し、案内する経路案内機能を実現するようになっている。そのうち、ロケーション機能は、前記地図データ入力器6から取得した道路地図データに基づいて、表示装置15に道路地図を表示させると共に、上記した自車位置検出器8〜10の検出に基づいて自車の現在位置及び進行方向を示す現在地マークM(図5、図6参照)をその道路地図に重ね合せて表示させるものである。
【0034】
また、前記経路案内機能は、自車の出発地(現在地)からユーザにより指定された目的地までの推奨する走行経路(ルート)を、例えば周知のダイクストラ法を用いて自動的に計算し、求められた目的地までの経路を案内するものである。この経路案内においては、表示装置15の画面に、上記道路地図及び現在地マークMに加え、走行すべき経路Rが目立つ色で表示され(図6では便宜上破線で示す)、これと併せて、前記スピーカ17から案内音声を所要のタイミングで出力させるものである。画面内に目的地が存在する場合には、目的地マーク(図示せず)も表示される。
【0035】
本実施例では、表示装置15の画面に、道路地図及び現在地マークMなどを表示させるにあたって、画面ほぼ全域に道路地図が表示されるのであるが、現在地マークMは、例えば、図6に示すように、表示装置15の画面の左右方向中央で、上下方向の下寄り部位に表示され、道路地図は自車の進行方向を上向きにして表示される(いわゆるヘッディングアップ方式)。自車の走行に伴って現在地マークMの表示が地図上を相対的に移動すると共に、地図がスクロール表示されるようになる。またこのとき、自車現在位置を道路上にのせるマップマッチングが行なわれるようになっている。
【0036】
そして、後の作用説明でも述べるように、本実施例では、ナビ制御回路2は、そのソフトウエア構成により、表示装置15の画面に道路地図を表示させる際に、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成することによって、画面の自車現在位置の近傍部分においては、詳細な(縮尺の比較的小さい)道路地図を表示させ、画面の自車現在位置から遠い部分では、広域の(縮尺のより大きい)道路地図を表示させるようになっている。従って、ナビ制御回路2が、表示制御手段として機能するようになっている。
【0037】
より具体的には、ナビ制御回路2は、表示装置15の画面上に、自車現在位置を原点(0,0)とし自車進行方向をY軸方向としたXY座標系を設定し、Y軸方向及びX軸方向の縮尺Sy及びSxを、夫々次の式により設定する。
【0038】
Sy=b×Y2 +S0 ‥(1)
Sx=a×X2 +S0 ‥(2)
但し、b、aは任意の定数、S0は自車現在位置の近傍部分における縮尺である。
【0039】
この場合、定数b、aに関しては、固定された値としても良いし、例えば自車の現在の走行速度に応じて、走行速度が高いほど大きな値とするようにしても良い。また、本実施例では、縮尺S0については、一般道路の走行中は、ユーザにより選択された縮尺とされ、高速道路走行時においては、広域の(比較的大きい)縮尺とされるようになっている。さらには、走行地域により、郡部では市街地よりも定数b、aの値を大きくしたり、縮尺S0を大きくしたり(より広域とする)しても良い。
【0040】
図4は、上記(1)式及び(2)式に基づいて設定される、Y軸方向及びX軸方向における位置と縮尺との関係(縮尺マップと称する)を示すものである。図4(a)がX座標と縮尺(Sx)との関係、(b)がY座標と縮尺(Sy)との関係、(c)がそれらを合成したもので、XY座標と縮尺(S)との関係を夫々示している。これにより、例えば図5に示すように縮尺が決定される。このとき、詳細な道路地図の表示領域が、自車の進行方向前方(Y軸方向+方向)に長く設定されるようになる。また、図4では滑らかな曲線で示しているが、実際には、縮尺は段階的に設定され、表示装置15の画面には3段階以上の縮尺の道路地図が表示されるようになる。さらには、経路案内時においては、目的地までの経路を基準とし該経路に沿って縮尺が変更されるようになっている。
【0041】
そしてこのとき、上記のように、地図データ入力器6により取得できる地図データは、予め10段階のものに固定されているので、ナビ制御回路2は、存在しない縮尺の地図を表示させる際には、目的とする縮尺に近いいずれかの地図データを縮小又は拡大することにより、任意の縮尺の表示用道路地図データを生成するようになっている。従って、ナビ制御回路2は、表示地図データ生成手段としても機能する。また、前記表示装置15の画面のうち自車現在位置から遠い部分に広域の道路地図を表示させる際には、表示する道路やランドマークの数を減少(主要となる道路やランドマークのみを表示して他を省略)させるようになっている。更に、本実施例では、前記表示装置15の画面における縮尺の境界部分に境界線Bが表示されるようになっている。
【0042】
次に、上記構成の作用について、図3ないし図6も参照して述べる。図3のフローチャートは、表示装置15の画面に道路地図を表示させるにあたっての、ナビ制御回路2が実行する処理の手順を示している。尚、ここでは、経路案内機能により、目的地までの経路案内を実行している場合を例としている。
【0043】
即ち、まずステップS1では、上記した自車位置検出器8〜10の検出に基づいて自車の現在位置及び進行方向が検出される。次のステップS2では、目的地までの経路計算の処理が行われる。そして、ステップS3では、上記した(1)式及び(2)式により、表示装置15の画面上に設定されるXY座標と表示させるべき道路地図の縮尺との関係を示す縮尺マップ(図4参照)を作成する処理が実行される。ステップS4では、その縮尺マップを元に、どの縮尺の地図が必要となるかの決定がなされる。
【0044】
縮尺マップの作成にあたっては、上記のように、自車現在位置が原点(0,0)とされ、経路に沿う進行方向がY軸方向+方向とされる。このとき、図4(a)に示すように、X軸方向(進行方向に対し横方向)については、X=0つまり自車現在位置が、比較的小さい(詳細)縮尺とされ、左右方向に離れるにつれ、縮尺が次第に大きくなる(広域)ように設定される。Y軸方向(進行方向)の進行方向前方に関しては、Y=0つまり自車現在位置からある程度の範囲では、小さい縮尺(詳細)とされ、それを越えると縮尺が次第に大きくなるように設定される。
【0045】
図5には、地図の縮尺とその範囲の具体例を示しており、現在地マークMの位置を現在位置として、案内経路Rに沿って走行しているものとする。この場合、縮尺の境界部分を境界線Bで示しており、案内経路Rに沿って、現在地マークMを含む最も内側の境界線Bの内側の比較的縦長の範囲が、10m図(1/1000スケール)に設定される。その外側の領域が、50m図(1/5000スケール)に設定され、更にその外側が100m図1/10000スケール)に設定される。
【0046】
図3に戻って、ステップS5では、地図データ入力器6により必要な縮尺及び地域の地図データを取得する処理が実行される。このとき、上述のように、存在しない縮尺の地図が必要となっている場合には、目的とする縮尺に近いいずれかの地図データを縮小又は拡大することにより、任意の縮尺の表示用道路地図データが生成される。次のステップS6では、地図データの編集処理が行われる。この編集処理は、上記縮尺マップに従って、複数の縮尺の地図データから必要な部位を切り出して合成する、いわば切り貼りすることが行われる。
【0047】
ステップS7では、編集処理された地図データを、表示装置15の画面に表示する処理が行われる。ステップS8では、表示装置15の画面にその地図に重ね合わせて自車現在位置(現在地マークM)を表示する処理が行われ、ステップS9では、案内すべき経路を表示する処理が行われる。以上の処理により、表示装置15にナビゲーション画面が表示され、自車の進行に伴って上記処理が繰返されることにより、順次画面が更新されていく。尚、図示はしないが、目的地に近づいた場合には、目的地マークが表示されると共に、全体が詳細な画面に切替えられるようになっている。
【0048】
図6は、上記処理による表示例を示している。ここでは、便宜上、案内経路Rを太い破線で示している。表示装置15の画面には、その中央やや下寄り部分に進行方向を上向きにして自車現在位置(現在地マークM)が表示され、その近傍部分(進行方向前方に長い楕円の内側部分)においては、詳細な道路地図が表示される。そして、表示装置15の画面には、そこから離れる(自車現在位置から遠くなる)に従って、次第に(複数段階に)縮尺が大きくなっていき、同じ画面において徐々に広域の地図が表示されるようになるのである。
【0049】
尚、このとき、縮尺が大きくなるほど、主要な道路(高速道路や国道など)や施設のみが表示され、些細な部分は表示されなくなるので、広域での表示地図が煩雑となることを防止することができる。異なる縮尺の地図をいわば切り貼りしているので、地図が不連続的となり、案内経路R以外の側方や後方に位置される道路に関しては、本来連続している道路がうまくつながっていなかったり、途切れたりすることがあるが、案内経路Rについては、ずれたり途切れたりすることなく判りやすく表示される。また、縮尺の境界となる境界線Bが併せて表示される。
【0050】
この場合、ユーザ(ドライバ)は、表示装置15の画面を見ることにより、自車現在位置の周辺に関しての道路や施設等の詳細な地図情報を得ることができる。一般道路走行時には、ユーザの所望の縮尺での地図情報を得ることができる。自車の進行方向前方に関しては、後方や側方に比べて広い範囲で詳細地図が表示されるので、より使いやすくなる。一方、自車現在位置から遠い部分に関しては、広域の地図が表示されているので、大まかな道路形状や施設等の情報を知ることができる。
【0051】
このように本実施例によれば、表示装置15の画面に道路地図を表示させる際に、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成するようにしたので、一画面において、自車現在位置の周辺についての詳細な地図情報を表示し、且つ自車現在位置から比較的遠いところについても大まかな道路形状や施設等の情報を表示することが可能となる。このとき、表示装置15は、コンビネーションメータ3内に設けられる比較的小型のものであるが、道路地図は、表示装置15の一画面において分割されることなく表示されると共に、曲面を投影したものと異なり、大きく歪むこともないので、ユーザにとって視認性に優れるものとなる。しかも、縮尺の異なる地図を合成するだけで済むので、演算処理の負荷量が少なく、そのための処理を比較的簡単に済ませることができるものである。
【0052】
尚、本発明においては、前記表示装置15の画面全体に1種類の縮尺の道路地図を表示するモードと、表示装置15の画面に上記のように複数段階の縮尺の道路地図を表示するモードとを、ユーザの指示或いは自動で切替えるモード切替手段を設けることができる。これによれば、モード切替手段によって地図表示のモードが切替えられることにより、その場に適したモードでの地図表示を行うことが可能となり、或いはユーザの選んだモードでの地図表示を行うことが可能となり、利便性を高めることができる。
【0053】
また、上記実施例では、経路案内を行っている場合を例としたが、経路案内を行っていない場合でも同様に実施することができ、このとき、自車の進行方向を常にY軸方向とすることができる。自車の進行方向を上向きとして地図を表示するヘディングアップ方式に限らず、方位の北を常に上向きとして表示する場合(いわゆるノースアップ)にも、本発明を適用することができる。
【0054】
そして、上記実施例では、コンビネーションメータ3内に表示装置15を設けるようにしたが、比較的大形(例えば7インチ)の表示装置を、インストルメントパネルの中央部(センタコンソール部分)に埋め込むように設けたり、インストルメントパネル上に載置状に設けたりする場合でも同様に実施することができる。液晶表示器に限らず、ELパネル等を採用しても良い。その他、縮尺の変更は2段階に行うようにしても良く、また予め記憶されている縮尺の地図のみを用いるようにしても良く、更には全体のハードウエア構成についても種々の変更が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、カーナビゲーションシステムの全体構成を概略的に示すブロック図
【図2】コンビネーションメータの正面図
【図3】ナビ制御回路が実行する表示制御の処理手順を示すフローチャート
【図4】縮尺マップの例を示す図
【図5】設定される地図の縮尺とその範囲の具体例を示す図
【図6】ナビゲーション画面の表示例を示す図
【符号の説明】
【0056】
図面中、1はカーナビゲーションシステム、2はナビ制御回路(表示制御手段、補湯時地図データ生成手段)、3はコンビネーションメータ、6は地図データ入力器(地図データ入力手段)、15は表示装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図のデータを取得する地図データ入力手段と、自車の現在位置を検出する自車位置検出手段とを備え、表示装置の画面に、自車の周辺の道路地図を自車現在位置と共に表示するようにしたカーナビゲーション装置において、
前記表示装置の画面に道路地図を表示させる際に、縮尺の異なる複数の道路地図データを一画面に合成することによって、前記画面の自車現在位置の近傍部分においては、詳細な道路地図を表示させ、該画面の自車現在位置から遠い部分では、広域の道路地図を表示させる表示制御手段を設けたことを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、自車現在位置の近傍部分においては、ユーザにより選択された縮尺の道路地図を表示させることを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、詳細な道路地図の表示領域を、自車の進行方向前方に長く設定することを特徴とする請求項1又は2記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記表示装置の画面に、3段階以上の縮尺の道路地図を表示させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記表示装置の画面における縮尺の境界部分に境界線を表示させることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項6】
前記地図データ入力手段は、複数段階の縮尺の道路地図データの取得が可能とされていると共に、
いずれかの縮尺の道路地図データを縮小又は拡大することにより、任意の縮尺の表示用道路地図データを生成する表示地図データ生成手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、表示装置の画面上に、自車現在位置を原点とし自車進行方向をY軸方向としたXY座標系を設定し、Y軸方向及びX軸方向の縮尺Sy及びSxを、夫々次の式により設定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
Sy=b×Y2 +S0
Sx=a×X2 +S0
但し、b、aは任意定数、S0は自車現在位置の近傍部分における縮尺である。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記表示装置の画面のうち自車現在位置から遠い部分に広域の道路地図を表示させる際に、表示する道路やランドマークの数を減少させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項9】
目的地までの経路を探索し案内する経路案内機能を備え、前記表示制御手段は、経路案内時においては、目的地までの経路を基準とし該経路に沿って縮尺を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、自車が走行している道路の種別、走行地域、走行速度、目的地までの距離などの条件に応じて、表示すべき道路地図の縮尺を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項11】
前記表示装置の画面全体に1種類の縮尺の道路地図を表示するモードと、前記表示制御手段による表示装置の画面に複数段階の縮尺の道路地図を表示するモードとを切替えるモード切替手段を備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項12】
前記表示装置は、運転席のコンビネーションメータ内に配設されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−121525(P2007−121525A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311319(P2005−311319)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】