カーペットの接地構造
【課題】車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供する。
【解決手段】本構造は、車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペットの接地構造1であって、カーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレーム15に電気的に導通されている。
【解決手段】本構造は、車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペットの接地構造1であって、カーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレーム15に電気的に導通されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットの接地構造に関し、さらに詳しくは、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車、ハイブリッド車等では、複数の電池セルを積層してなる電池パック等の車両用電池が用いられている。この車両用電池の被覆構造としては、例えば、図18に示すように、車両用電池103を金属製のロアケース111及びアッパーケース112で被覆して電池組立品113をなし、金属製の各ケース111,112で車両用電池103を電磁波シールドする被覆構造101が一般に知られている。ここで、上記電池組立品113を車両の座席下に搭載する場合、車両ボデー102に電池組立品113及び金属製のシートフレーム114をボルト締めし、車両ボデー102にカーペット105をクリップ止めし、シートフレーム114にシートクッション110を装着し、電池組立品113を構成する金属製のロアケース111を車両ボデー102にボルト締結して接地することが考えられる。
【0003】
また、他の従来の車両用電池の被覆構造として、車両用電池を樹脂製のロアケース及びアッパーケースで被覆して電池組立品をなし、この電池組立品を金属製のカバーで被覆して電磁波シールドするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、金属製のカバーを車両ボデーにボルト締結して接地することが開示されている。
【0004】
しかし、上述の従来の車両用電池の被覆構造では、電磁波シールドのために金属製のアッパーケースやカバーを備える必要があるので、重量が非常に重くなる。また、部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。さらに、金属製のケースやカバーを車両ボデーにボルト締結して接地しているので、ボルト締結箇所を複数設定する必要があり、接地のための部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−294048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、前記シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記シールド層の端部は、クリップ手段により前記シートフレームに固定されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載において、前記クリップ手段は、前記シートフレームに設けられる受け具と、該受け具に前記シールド層の端部とともに圧入されるクリップと、を備えることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3記載において、前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーペットの接地構造によると、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されているので、シールド層により、車両用電池から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層がシートフレームを介して接地される。これにより、従来のようにカーペットとは別個に金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層を容易且つ確実に接地することができる。
【0009】
また、前記シールド層の端部が、クリップ手段により前記シートフレームに固定されている場合は、ボルト締結を用いずにシールド層を更に容易且つ確実に接地できるとともに、カーペットをシートフレームに対して固定して位置決めできる。
【0010】
また、前記クリップ手段が、受け具と、クリップと、を備える場合は、シールド層の端部とともにクリップを受け具に圧入することにより、シールド層の端部がシートフレームに固定される。これにより、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0011】
さらに、前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出している場合は、シールド層の端部のみがクリップ手段によりシートフレームに固定される。これにより、シールド層を更に容易且つ且つ確実に接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図2】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図3】上記カーペットの接地構造で使用されるカーペットの縦断面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】上記カーペットの接地構造の組付方法を説明するための説明図である。
【図6】上記カーペットの成形方法を説明するための説明図である。
【図7】実施例2に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図8】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】上記カーペットの接地構造の組付方法を説明するための説明図である。
【図11】実施例3に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図12】上記カーペットの接地構造の要部縦断面図である。
【図13】その他の形態のカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図14】その他の形態のクリップの斜視図である。
【図15】上記クリップを用いたカーペットの接地構造の要部縦断面図である。
【図16】その他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図17】更にその他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図18】従来のカーペットの接地構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
1.カーペットの接地構造
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造(1、23、27)であって、カーペット(5)は、車両用電池(3)から発生する電磁波を遮蔽するシールド層(8)を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレーム(15)に電気的に導通されていることを特徴とする(例えば、図4、図9及び図12等参照)。
【0015】
上記カーペットは、通常、車両ボデーに敷設される。また、上記シートフレームは、通常、車両ボデーに固定され、シートクッションを支持する機能を有する。なお、上記車両用電池としては、例えば、蓄電池、燃料電池等を挙げることができる。
【0016】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記シールド層の端部は、クリップ手段(19、24、28)によりシートフレームに固定されている形態(例えば、図4、図9及び図12等参照)を挙げることができる。
【0017】
上記クリップ手段としては、例えば、〔1〕シートフレームに設けられる受け具(20)と、受け具にシールド層の端部とともに圧入されるクリップ(21)と、を備える形態(例えば、図4及び図14等参照)、〔2〕シールド層の端部とともにシートフレームを挟持する弾性変形可能な一対の挟持部(25a,25a)を有するクリップ(25)を備える形態(例えば、図9等参照)、〔3〕シートフレームに設けられ且つシールド層の端部を含むカーペットの端部が圧入される受け具(29)を備える形態(例えば、図12等参照)を挙げることができる。これらのうち、接地の確実性といった観点から、上記〔1〕〔2〕形態であることが好ましい。また、部品点数を低減できるといった観点から、上記〔2〕〔3〕形態であることが好ましい。
【0018】
上記〔1〕形態では、例えば、上記受け具(20)は、金属板を折り曲げてなり、シートフレームに固定される固定部(20a)と、固定部に対してシールド層の端部を付勢するバネ部(20b)と、を備えることができる。これにより、バネ部の付勢力でシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。また、上記クリップ(21、30)は、例えば、縦壁(21a、30a)と、縦壁の一端側に連なる横壁(21b、30b)と、を備え、縦断面略L字状又は縦断面略T字状に形成されていることができる。これにより、クリップの縦壁及び横壁でシールド層の端部が折り曲げ状態で受け具に押し付けられ、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0019】
上記〔3〕形態では、通常、上記シールド層は、カーペットの裏面側に露出するように設けられている(例えば、図3等参照)。さらに、上記〔3〕形態では、例えば、上記受け具(29)は、金属板を折り曲げてなり、シートフレームに固定される固定部(29a)と、固定部に対してシールド層の端部を付勢するバネ部(29b)と、を備えることができる。これにより、バネ部の付勢力でシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0020】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの末端側において、シールド層(8)の端部は、カーペットを構成する表皮層(6)及びバッキング層(7)の端部から突出している形態(例えば、図1及び図7等参照)を挙げることができる。
【0021】
本実施形態1.に係る車両用電池の被覆構造としては、例えば、上記カーペットは、表皮層(6)と、表皮層の裏面側に積層されるバッキング層(7)と、バッキング層の裏面側に積層される上記シールド層(8)と、を有し、シールド層は、複数の孔を有するシート材(8a)からなる形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、シート材の複数の孔を介してバッキング層とシールド層とが接着固定され、表皮層、バッキング層及びシールド層の三者を強固に一体化することができる。
【0022】
上記シート材(シールド層)としては、例えば、金属メッシュ、発泡金属、導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などを挙げることができる。これらのうち、金属メッシュ、発泡金属等の金属部材である場合は、シールド性(電磁波遮蔽性)及びカーペットの保形性を高めることができる。この金属部材は、フレキシブル性に優れたた材質であることが好ましい。また、上記布である場合は、加工性を高めることができる。
【0023】
上述の形態では、例えば、上記カーペットは、成形型(12a、12b)内に、表皮層になる表皮材(6a)と、バッキング層になるバッキング材(7a)と、シールド層になるシート材(8a)と、をこの順にセットし、これらセット物を、少なくともバッキング材を加熱した状態でプレス成形(圧縮成形)して得られることができる(例えば、図6等参照)。これにより、表示層、バッキング層及びシールド層の三者を更に強固に一体化することができる。
【0024】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記車両ボデー(2)には、車両用電池を被覆する立上げ壁(2a)が形成されている形態(例えば、図3及び図11等参照)を挙げることができる。これにより、更なる軽量化を図ることができる。
【0025】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記シールド層は、カーペットの裏面側に露出するように設けられ、このシールド層の一部(8b)が車両ボデーに接触している形態(例えば、図2等参照)を挙げることができる。これにより、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を用いて実施例1〜3により本発明を具体的に説明する。
【0027】
<実施例1>
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例1に係るカーペットの接地構造1は、図1及び図2に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0028】
上記車両ボデー2には、車両用電池3の下方に位置するように金属製で縦断面略U字状のロアケース11が配設されている。また、車両ボデー2には、シートクッション10を支持するシートフレーム15が配設されている。このシートフレーム15は、車両前後方向に延びる金属製で略L字状の左右のフレーム16a,16bと、これら左右のフレーム16a,16bの間に架設され且つ車両幅方向に延びる金属製で略棒状の前後のフレーム17a,17bと、を有している。これら左右のフレーム16a,16bのそれぞれは、その一端側がロアケース11に固定され、その他端側が車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aの頂上部に固定されている。また、左右のフレーム16a、16b及び前フレーム17aの間には、カーペット5を介してシートクッション10を実質的に支持する金属製のクッションプレート18が固定されている。
【0029】
上記カーペット5は、図3に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、を有している。この表皮層6は、1層又は2層以上の基布にパイル糸をタフティングしてなるタフト布である。また、バッキング層7は、カーペット5を形状保持する機能と、車室外側からの音を遮蔽する機能と、を有している。また、シールド層8は、複数の孔14を有するシート材8aからなっている。このシート材8aは、金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の金属メッシュである。また、シールド層8の表面は、バッキング層7の裏面側から露出している。さらに、シールド層8の一部8bは車両ボデー2に接触している(図2参照)。
【0030】
上記カーペット5の末端側において、図4に示すように、シールド層8の端部は、表皮層6及びバッキング層7の端部から突出している。このシールド層8の端部は、クリップ手段19によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段19は、フレーム17bに設けられる受け具20と、この受け具20にシールド層8の端部とともに圧入される金属製で縦断面略L字状のクリップ21と、を備えている。この受け具20は、金属板を折り曲げてなり、フレーム17bに固定される縦断面略U字状の固定部20aと、この固定部20aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部20bと、を有している。また、クリップ21は、縦壁21aと、縦壁21aの一端側に連なる横壁21bと、を備え、縦断面略L字状に形成されている。
【0031】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の組立方法について説明する。先ず、上記カーペット5は、図6に示すように、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形して得られる。
【0032】
そして、車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図1参照)、並びに受け具20を備えるシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、図5に示すように、クリップ21でシールド層8の端部を下方に向かって押しつつ受け具20内に挿入する。すると、受け具20内にシールド層8の端部とともにクリップ21が圧入される(図4参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造1が得られる。
【0033】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図2に示すように、シールド層8により、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面が被覆され、上記ロアケース11により、車両用電池3の下面及び車両幅方向の両側面が被覆され、車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aにより、車両用電池3の車両後方側の後面が被覆されている。よって、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。
【0034】
また、受け具20内にシールド層8の端部とともにクリップ21が圧入され、バネ部20bの付勢力でシールド層8の端部が固定部20aに強く押し付けられるとともに、クリップ21の縦壁21a及び横壁21bでシールド層8の端部が折り曲げ状態で固定部20aに押し付けられる。その結果、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0035】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造1によると、カーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層8は、導電性を有するシートフレーム15に電気的に導通されているので、シールド層8により、車両用電池3から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層8がシートフレーム15を介して接地される。これにより、従来のようにカーペットとは別個に金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層8を容易且つ確実に接地することができる。
【0036】
例えば、従来の車両用電池の被覆構造101(図18参照)では、車両ボデー102及びロアケース111に対するアッパーケース112のボルト締め5点及びナット締め6点と、車両ボデー102に対するシートフレーム114のボルト締め6点と、車両ボデー102に対するカーペット105のクリップ固定2点との合計19点の作業が必要である。これに対して、本実施例の車両用電池の被覆構造1では、車両ボデー2及びロアケース11に対するカバー9のボルト締め6点のみの作業でカーペット5も固定できるので、作業時間を大幅に短縮できる。
【0037】
また、本実施例では、シールド層8の端部を、クリップ手段19によりシートフレーム15に固定するようにしたので、ボルト締結を用いずにシールド層8を更に容易且つ確実に接地できるとともに、カーペット5をシートフレーム15に対して固定して位置決めできる。
【0038】
また、本実施例では、クリップ手段19を、受け具20と、クリップ21と、を備えて構成したので、シールド層8の端部とともにクリップ21を受け具20に圧入することにより、シールド層8の端部がシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0039】
また、本実施例では、受け具20を、金属板を折り曲げてなり、シートフレーム15に固定される固定部20aと、固定部20aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部20bと、を備えて構成したので、バネ部20bの付勢力によりシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0040】
また、本実施例では、クリップ21を、縦壁21a及び横壁21bを備え、縦断面略L字状に形成したので、クリップ21の縦壁21a及び横壁21bでシールド層8の端部が折り曲げ状態で固定部20aに押し付けられる。これにより、シールド層8を更に更に容易且つ確実に接地することができる。
【0041】
また、本実施例では、カーペット5の末端側において、シールド層8の端部を、カーペット5を構成する表皮層6及びバッキング層7の端部から突出させているので、シールド層8の端部のみがクリップ手段19によりシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ且つ確実に接地することができる。
【0042】
また、本実施例では、カーペット5を、表皮層6と、バッキング層7と、シールド層8と、を有して構成し、シールド層8を、複数の孔14を有するシート材8aからなしたので、シート材8aの複数の孔14を介してバッキング層7とシールド層8とが接着固定される。よって、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の三者を強固に一体化することができる。
【0043】
また、本実施例では、シールド層8をなすシート材8aとして金属メッシュを採用したので、シールド性及びカーペット5の保形性を高めることができる。
【0044】
また、本実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形してカーペット5を得るようにしたので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の三者を更に強固に一体化することができる。
【0045】
また、本実施例では、車両ボデー2に、車両用電池3を被覆する立上げ壁2aを形成したので、更なる軽量化を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施例では、シールド層8を、カーペット5の裏面側に露出して配設し、シールド層8の一部8bを車両ボデー3に接触させたので、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0047】
<実施例2>
次に、本実施例2に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例2のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0048】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例2に係るカーペットの接地構造23は、図7及び図8に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0049】
上記カーペット5の末端側において、図9に示すように、シールド層8の端部は、表皮層6及びバッキング層7の端部から突出している。このシールド層8の端部は、クリップ手段24によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段24は、シールド層8の端部とともにフレーム17bを挟持する弾性変形可能な一対の挟持部25a,25aを有する樹脂製のクリップ25を備えている。このクリップ25は、複数(図1中で3つ)が用いられる。
【0050】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造23の組立方法について説明する。車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図7参照)、並びにシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、図10に示すように、シールド層8の端部をクリップ25の一対の挟持部25a,25aで下方に向かって押しつつ、弾性変形をともなって一対の挟持部25a,25aの間でフレーム17bを挟持する。すると、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持される(図9参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造23が得られる。
【0051】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図8に示すように、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持され、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0052】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造23によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、クリップ手段24を、弾性変形可能な一対の挟持部25a,25aを有するクリップ25を備えて構成したので、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。また、クリップ25のみでシールド層8の端部をシートフレーム15に固定でき、部品点数を更に低減できる。
【0053】
<実施例3>
次に、本実施例3に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例3のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0054】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例3に係るカーペットの接地構造27は、図11に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0055】
上記カーペット5の末端側において、図12に示すように、シールド層8の端部と表皮層6及びバッキング層7の端部とは同じ長さに揃えられている。このシールド層8の端部は、クリップ手段28によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段28は、シートフレーム15に設けられ且つシールド層8の端部を含むカーペット5の端部が圧入される受け具29を備えている。この受け具29は、金属板を折り曲げてなり、フレーム17bに固定される縦断面略U字状の固定部29aと、この固定部29aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部29bと、を有している。
【0056】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造27の組立方法について説明する。車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図11参照)、並びに受け具29を備えるシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、シールド層8の端部を含むカーペット5の端部を受け具29内に挿入する(図12参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造27が得られる。
【0057】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造27の作用について説明する。図11に示すように、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、受け具29内にシールド層8の端部を含むカーペット5の端部が圧入されるとともに、バネ部29bの付勢力でシールド層8の端部が固定部29aに強く押し付けられ、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0058】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造27によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、クリップ手段28を、受け具29を備えて構成したので、シールド層8の端部を含むカーペット5の端部を受け具29に圧入することにより、シールド層8の端部がシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0059】
さらに、本実施例では、受け具29を、金属板を折り曲げてなり、シートフレーム15に固定される固定部29aと、固定部29aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部29bと、を備えて構成したので、バネ部29bの付勢によりシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。また、受け具29のみでシールド層8の端部をシートフレーム15に固定でき、部品点数を更に低減できる。
【0060】
尚、本発明においては、上記実施例1〜3に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1〜3では、金属製のフレーム17b(シートフレーム15)を例示したが、これに限定されず、例えば、導電性樹脂からなるフレームを採用してもよい。
【0061】
また、上記実施例1〜3では、カーペットの車両前後方向の末端側でシールド層8の端部を突出させ、このシールド層8の端部をフレーム17bに固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、図13に示すように、カーペットの車両前後方向の末端側に替えて又は加えて、カーペットの車両幅方向の末端側でシールド層8の端部を突出させ、このシールド層8の端部をフレーム16a,16bに固定するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施例1〜3では、シートフレーム15を構成するフレームにシールド層8の端部を固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、シートフレーム15を構成するクッションプレート18にシールド層8の端部を固定するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施例1では、縦断面略L字状のクリップ21を例示したが、これに限定されず、例えば、図14及び図15に示すように、縦壁30a及び縦壁30aの一端側に連なる横壁30bを備える縦断面略T字状のクリップ30を採用してもよい。この場合、クリップ30の縦壁30a及び横壁30bの一端側によりシールド層8の端部が折り曲げ状態で受け具20の固定部20aに押し付けられて接地されるとともに、クリップ30の横壁30bの他端側により受け具20と車両ボデー2の立ち上げ壁2aとの隙間が塞がれ、車両用電池3の密閉性を高めることができる。
【0064】
また、上記実施例1〜3では、金属メッシュからなるシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、金属板、金属箔、金属フィルム又は金属コーティング層からなるシールド層8を採用してもよい。また、発泡金属、又は導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などからなるシールド層8を採用してもよい。
【0065】
また、上記実施例1〜3では、タフト布からなる表皮層6を例示したが、これに限定されず、例えば、不織布、織物、編物等からなる表皮層6を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、1層のみからなるバッキング層7を例示したが、これに限定されず、例えば、複数層からなるバッキング層7を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、樹脂製のバッキング層7を例示したが、エラストマー又はゴム等からなるバッキング層7を採用してもよい。
【0066】
なお、上記バッキング層7をなす樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。十分な強度及び柔軟性並びに加工性を有しつつ、優れた遮音性を発揮できる。また、上記バッキング層7をなすエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記バッキング層7をなすゴムとしては、ブダジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、上記実施例1〜3では、表皮層6の裏面側にバッキング層7を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、表皮層6の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してバッキング層7を間接的に積層するようにしてもよい。さらに、上記実施例1〜3では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッキング層7の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してシールド層8を間接的に積層するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施例1〜3では、ロアケース11で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆する形態を例示したが、これに限定されず、ロアケース11に替えて又は加えて、カーペット5のシールド層8で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施例1〜3では、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8を一体成形してなるカーペット5を例示したが、これに限定されず、例えば、各層を接着剤等で接合してなるカーペットを採用してもよい。
【0070】
また、上記実施例1〜3では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、を別々にセットするようにしたが、これに限定されず、例えば、成型型12a,12b内に、表皮層6の裏面側にバッキング層7を一体成形してなる一体物をセットするようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施例1及び2では、バッキング層7の裏面側に露出するシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、バッキング層7の裏面側に埋設されたシールド層8としてもよい。
【0072】
また、上記実施例1及び2では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、図17に示すように、バッキング層7の表面側にシールド層8を配設したり、バッキング層7の表裏方向の中央側にシールド層8を配設したりしてもよい。
【0073】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0074】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
車両用電池を被覆する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などで使用される車両用電池の被覆構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1,23,27;カーペットの接地構造、2;車両ボデー、3;車両用電池、5;カーペット、8;シールド層、15;シートフレーム、19,24,28;クリップ手段、20;受け具、21,30;クリップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットの接地構造に関し、さらに詳しくは、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車、ハイブリッド車等では、複数の電池セルを積層してなる電池パック等の車両用電池が用いられている。この車両用電池の被覆構造としては、例えば、図18に示すように、車両用電池103を金属製のロアケース111及びアッパーケース112で被覆して電池組立品113をなし、金属製の各ケース111,112で車両用電池103を電磁波シールドする被覆構造101が一般に知られている。ここで、上記電池組立品113を車両の座席下に搭載する場合、車両ボデー102に電池組立品113及び金属製のシートフレーム114をボルト締めし、車両ボデー102にカーペット105をクリップ止めし、シートフレーム114にシートクッション110を装着し、電池組立品113を構成する金属製のロアケース111を車両ボデー102にボルト締結して接地することが考えられる。
【0003】
また、他の従来の車両用電池の被覆構造として、車両用電池を樹脂製のロアケース及びアッパーケースで被覆して電池組立品をなし、この電池組立品を金属製のカバーで被覆して電磁波シールドするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、金属製のカバーを車両ボデーにボルト締結して接地することが開示されている。
【0004】
しかし、上述の従来の車両用電池の被覆構造では、電磁波シールドのために金属製のアッパーケースやカバーを備える必要があるので、重量が非常に重くなる。また、部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。さらに、金属製のケースやカバーを車両ボデーにボルト締結して接地しているので、ボルト締結箇所を複数設定する必要があり、接地のための部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−294048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、前記シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記シールド層の端部は、クリップ手段により前記シートフレームに固定されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載において、前記クリップ手段は、前記シートフレームに設けられる受け具と、該受け具に前記シールド層の端部とともに圧入されるクリップと、を備えることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3記載において、前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーペットの接地構造によると、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されているので、シールド層により、車両用電池から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層がシートフレームを介して接地される。これにより、従来のようにカーペットとは別個に金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層を容易且つ確実に接地することができる。
【0009】
また、前記シールド層の端部が、クリップ手段により前記シートフレームに固定されている場合は、ボルト締結を用いずにシールド層を更に容易且つ確実に接地できるとともに、カーペットをシートフレームに対して固定して位置決めできる。
【0010】
また、前記クリップ手段が、受け具と、クリップと、を備える場合は、シールド層の端部とともにクリップを受け具に圧入することにより、シールド層の端部がシートフレームに固定される。これにより、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0011】
さらに、前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出している場合は、シールド層の端部のみがクリップ手段によりシートフレームに固定される。これにより、シールド層を更に容易且つ且つ確実に接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図2】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図3】上記カーペットの接地構造で使用されるカーペットの縦断面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】上記カーペットの接地構造の組付方法を説明するための説明図である。
【図6】上記カーペットの成形方法を説明するための説明図である。
【図7】実施例2に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図8】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】上記カーペットの接地構造の組付方法を説明するための説明図である。
【図11】実施例3に係るカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図12】上記カーペットの接地構造の要部縦断面図である。
【図13】その他の形態のカーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図14】その他の形態のクリップの斜視図である。
【図15】上記クリップを用いたカーペットの接地構造の要部縦断面図である。
【図16】その他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図17】更にその他の形態のカーペットの縦断面図である。
【図18】従来のカーペットの接地構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
1.カーペットの接地構造
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造(1、23、27)であって、カーペット(5)は、車両用電池(3)から発生する電磁波を遮蔽するシールド層(8)を有し、シールド層は、導電性を有するシートフレーム(15)に電気的に導通されていることを特徴とする(例えば、図4、図9及び図12等参照)。
【0015】
上記カーペットは、通常、車両ボデーに敷設される。また、上記シートフレームは、通常、車両ボデーに固定され、シートクッションを支持する機能を有する。なお、上記車両用電池としては、例えば、蓄電池、燃料電池等を挙げることができる。
【0016】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記シールド層の端部は、クリップ手段(19、24、28)によりシートフレームに固定されている形態(例えば、図4、図9及び図12等参照)を挙げることができる。
【0017】
上記クリップ手段としては、例えば、〔1〕シートフレームに設けられる受け具(20)と、受け具にシールド層の端部とともに圧入されるクリップ(21)と、を備える形態(例えば、図4及び図14等参照)、〔2〕シールド層の端部とともにシートフレームを挟持する弾性変形可能な一対の挟持部(25a,25a)を有するクリップ(25)を備える形態(例えば、図9等参照)、〔3〕シートフレームに設けられ且つシールド層の端部を含むカーペットの端部が圧入される受け具(29)を備える形態(例えば、図12等参照)を挙げることができる。これらのうち、接地の確実性といった観点から、上記〔1〕〔2〕形態であることが好ましい。また、部品点数を低減できるといった観点から、上記〔2〕〔3〕形態であることが好ましい。
【0018】
上記〔1〕形態では、例えば、上記受け具(20)は、金属板を折り曲げてなり、シートフレームに固定される固定部(20a)と、固定部に対してシールド層の端部を付勢するバネ部(20b)と、を備えることができる。これにより、バネ部の付勢力でシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。また、上記クリップ(21、30)は、例えば、縦壁(21a、30a)と、縦壁の一端側に連なる横壁(21b、30b)と、を備え、縦断面略L字状又は縦断面略T字状に形成されていることができる。これにより、クリップの縦壁及び横壁でシールド層の端部が折り曲げ状態で受け具に押し付けられ、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0019】
上記〔3〕形態では、通常、上記シールド層は、カーペットの裏面側に露出するように設けられている(例えば、図3等参照)。さらに、上記〔3〕形態では、例えば、上記受け具(29)は、金属板を折り曲げてなり、シートフレームに固定される固定部(29a)と、固定部に対してシールド層の端部を付勢するバネ部(29b)と、を備えることができる。これにより、バネ部の付勢力でシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0020】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの末端側において、シールド層(8)の端部は、カーペットを構成する表皮層(6)及びバッキング層(7)の端部から突出している形態(例えば、図1及び図7等参照)を挙げることができる。
【0021】
本実施形態1.に係る車両用電池の被覆構造としては、例えば、上記カーペットは、表皮層(6)と、表皮層の裏面側に積層されるバッキング層(7)と、バッキング層の裏面側に積層される上記シールド層(8)と、を有し、シールド層は、複数の孔を有するシート材(8a)からなる形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、シート材の複数の孔を介してバッキング層とシールド層とが接着固定され、表皮層、バッキング層及びシールド層の三者を強固に一体化することができる。
【0022】
上記シート材(シールド層)としては、例えば、金属メッシュ、発泡金属、導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などを挙げることができる。これらのうち、金属メッシュ、発泡金属等の金属部材である場合は、シールド性(電磁波遮蔽性)及びカーペットの保形性を高めることができる。この金属部材は、フレキシブル性に優れたた材質であることが好ましい。また、上記布である場合は、加工性を高めることができる。
【0023】
上述の形態では、例えば、上記カーペットは、成形型(12a、12b)内に、表皮層になる表皮材(6a)と、バッキング層になるバッキング材(7a)と、シールド層になるシート材(8a)と、をこの順にセットし、これらセット物を、少なくともバッキング材を加熱した状態でプレス成形(圧縮成形)して得られることができる(例えば、図6等参照)。これにより、表示層、バッキング層及びシールド層の三者を更に強固に一体化することができる。
【0024】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記車両ボデー(2)には、車両用電池を被覆する立上げ壁(2a)が形成されている形態(例えば、図3及び図11等参照)を挙げることができる。これにより、更なる軽量化を図ることができる。
【0025】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記シールド層は、カーペットの裏面側に露出するように設けられ、このシールド層の一部(8b)が車両ボデーに接触している形態(例えば、図2等参照)を挙げることができる。これにより、シールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を用いて実施例1〜3により本発明を具体的に説明する。
【0027】
<実施例1>
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例1に係るカーペットの接地構造1は、図1及び図2に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0028】
上記車両ボデー2には、車両用電池3の下方に位置するように金属製で縦断面略U字状のロアケース11が配設されている。また、車両ボデー2には、シートクッション10を支持するシートフレーム15が配設されている。このシートフレーム15は、車両前後方向に延びる金属製で略L字状の左右のフレーム16a,16bと、これら左右のフレーム16a,16bの間に架設され且つ車両幅方向に延びる金属製で略棒状の前後のフレーム17a,17bと、を有している。これら左右のフレーム16a,16bのそれぞれは、その一端側がロアケース11に固定され、その他端側が車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aの頂上部に固定されている。また、左右のフレーム16a、16b及び前フレーム17aの間には、カーペット5を介してシートクッション10を実質的に支持する金属製のクッションプレート18が固定されている。
【0029】
上記カーペット5は、図3に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、を有している。この表皮層6は、1層又は2層以上の基布にパイル糸をタフティングしてなるタフト布である。また、バッキング層7は、カーペット5を形状保持する機能と、車室外側からの音を遮蔽する機能と、を有している。また、シールド層8は、複数の孔14を有するシート材8aからなっている。このシート材8aは、金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の金属メッシュである。また、シールド層8の表面は、バッキング層7の裏面側から露出している。さらに、シールド層8の一部8bは車両ボデー2に接触している(図2参照)。
【0030】
上記カーペット5の末端側において、図4に示すように、シールド層8の端部は、表皮層6及びバッキング層7の端部から突出している。このシールド層8の端部は、クリップ手段19によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段19は、フレーム17bに設けられる受け具20と、この受け具20にシールド層8の端部とともに圧入される金属製で縦断面略L字状のクリップ21と、を備えている。この受け具20は、金属板を折り曲げてなり、フレーム17bに固定される縦断面略U字状の固定部20aと、この固定部20aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部20bと、を有している。また、クリップ21は、縦壁21aと、縦壁21aの一端側に連なる横壁21bと、を備え、縦断面略L字状に形成されている。
【0031】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の組立方法について説明する。先ず、上記カーペット5は、図6に示すように、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形して得られる。
【0032】
そして、車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図1参照)、並びに受け具20を備えるシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、図5に示すように、クリップ21でシールド層8の端部を下方に向かって押しつつ受け具20内に挿入する。すると、受け具20内にシールド層8の端部とともにクリップ21が圧入される(図4参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造1が得られる。
【0033】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図2に示すように、シールド層8により、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面が被覆され、上記ロアケース11により、車両用電池3の下面及び車両幅方向の両側面が被覆され、車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aにより、車両用電池3の車両後方側の後面が被覆されている。よって、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。
【0034】
また、受け具20内にシールド層8の端部とともにクリップ21が圧入され、バネ部20bの付勢力でシールド層8の端部が固定部20aに強く押し付けられるとともに、クリップ21の縦壁21a及び横壁21bでシールド層8の端部が折り曲げ状態で固定部20aに押し付けられる。その結果、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0035】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造1によると、カーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層8は、導電性を有するシートフレーム15に電気的に導通されているので、シールド層8により、車両用電池3から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層8がシートフレーム15を介して接地される。これにより、従来のようにカーペットとは別個に金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層8を容易且つ確実に接地することができる。
【0036】
例えば、従来の車両用電池の被覆構造101(図18参照)では、車両ボデー102及びロアケース111に対するアッパーケース112のボルト締め5点及びナット締め6点と、車両ボデー102に対するシートフレーム114のボルト締め6点と、車両ボデー102に対するカーペット105のクリップ固定2点との合計19点の作業が必要である。これに対して、本実施例の車両用電池の被覆構造1では、車両ボデー2及びロアケース11に対するカバー9のボルト締め6点のみの作業でカーペット5も固定できるので、作業時間を大幅に短縮できる。
【0037】
また、本実施例では、シールド層8の端部を、クリップ手段19によりシートフレーム15に固定するようにしたので、ボルト締結を用いずにシールド層8を更に容易且つ確実に接地できるとともに、カーペット5をシートフレーム15に対して固定して位置決めできる。
【0038】
また、本実施例では、クリップ手段19を、受け具20と、クリップ21と、を備えて構成したので、シールド層8の端部とともにクリップ21を受け具20に圧入することにより、シールド層8の端部がシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0039】
また、本実施例では、受け具20を、金属板を折り曲げてなり、シートフレーム15に固定される固定部20aと、固定部20aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部20bと、を備えて構成したので、バネ部20bの付勢力によりシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0040】
また、本実施例では、クリップ21を、縦壁21a及び横壁21bを備え、縦断面略L字状に形成したので、クリップ21の縦壁21a及び横壁21bでシールド層8の端部が折り曲げ状態で固定部20aに押し付けられる。これにより、シールド層8を更に更に容易且つ確実に接地することができる。
【0041】
また、本実施例では、カーペット5の末端側において、シールド層8の端部を、カーペット5を構成する表皮層6及びバッキング層7の端部から突出させているので、シールド層8の端部のみがクリップ手段19によりシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ且つ確実に接地することができる。
【0042】
また、本実施例では、カーペット5を、表皮層6と、バッキング層7と、シールド層8と、を有して構成し、シールド層8を、複数の孔14を有するシート材8aからなしたので、シート材8aの複数の孔14を介してバッキング層7とシールド層8とが接着固定される。よって、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の三者を強固に一体化することができる。
【0043】
また、本実施例では、シールド層8をなすシート材8aとして金属メッシュを採用したので、シールド性及びカーペット5の保形性を高めることができる。
【0044】
また、本実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形してカーペット5を得るようにしたので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の三者を更に強固に一体化することができる。
【0045】
また、本実施例では、車両ボデー2に、車両用電池3を被覆する立上げ壁2aを形成したので、更なる軽量化を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施例では、シールド層8を、カーペット5の裏面側に露出して配設し、シールド層8の一部8bを車両ボデー3に接触させたので、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0047】
<実施例2>
次に、本実施例2に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例2のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0048】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例2に係るカーペットの接地構造23は、図7及び図8に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0049】
上記カーペット5の末端側において、図9に示すように、シールド層8の端部は、表皮層6及びバッキング層7の端部から突出している。このシールド層8の端部は、クリップ手段24によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段24は、シールド層8の端部とともにフレーム17bを挟持する弾性変形可能な一対の挟持部25a,25aを有する樹脂製のクリップ25を備えている。このクリップ25は、複数(図1中で3つ)が用いられる。
【0050】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造23の組立方法について説明する。車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図7参照)、並びにシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、図10に示すように、シールド層8の端部をクリップ25の一対の挟持部25a,25aで下方に向かって押しつつ、弾性変形をともなって一対の挟持部25a,25aの間でフレーム17bを挟持する。すると、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持される(図9参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造23が得られる。
【0051】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図8に示すように、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持され、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0052】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造23によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、クリップ手段24を、弾性変形可能な一対の挟持部25a,25aを有するクリップ25を備えて構成したので、シールド層8の端部はフレーム17bに巻き付けられた状態でクリップ25で挟持される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。また、クリップ25のみでシールド層8の端部をシートフレーム15に固定でき、部品点数を更に低減できる。
【0053】
<実施例3>
次に、本実施例3に係るカーペットの接地構造の構成について説明する。なお、本実施例3のカーペットの接地構造では、上記実施例1に係るカーペットの接地構造1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0054】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例3に係るカーペットの接地構造27は、図11に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0055】
上記カーペット5の末端側において、図12に示すように、シールド層8の端部と表皮層6及びバッキング層7の端部とは同じ長さに揃えられている。このシールド層8の端部は、クリップ手段28によりシートフレーム15に固定されている。このクリップ手段28は、シートフレーム15に設けられ且つシールド層8の端部を含むカーペット5の端部が圧入される受け具29を備えている。この受け具29は、金属板を折り曲げてなり、フレーム17bに固定される縦断面略U字状の固定部29aと、この固定部29aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部29bと、を有している。
【0056】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造27の組立方法について説明する。車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図11参照)、並びに受け具29を備えるシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せて、シールド層8で車両用電池3及び制御部3aを被覆する。次いで、シールド層8の端部を含むカーペット5の端部を受け具29内に挿入する(図12参照)。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造27が得られる。
【0057】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造27の作用について説明する。図11に示すように、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、受け具29内にシールド層8の端部を含むカーペット5の端部が圧入されるとともに、バネ部29bの付勢力でシールド層8の端部が固定部29aに強く押し付けられ、シールド層8がシートフレーム15に電気的に導通される。
【0058】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造27によると、実施例1のカーペットの接地構造1と略同様の作用効果を奏することに加えて、クリップ手段28を、受け具29を備えて構成したので、シールド層8の端部を含むカーペット5の端部を受け具29に圧入することにより、シールド層8の端部がシートフレーム15に固定される。これにより、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。
【0059】
さらに、本実施例では、受け具29を、金属板を折り曲げてなり、シートフレーム15に固定される固定部29aと、固定部29aに対してシールド層8の端部を付勢するバネ部29bと、を備えて構成したので、バネ部29bの付勢によりシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。また、受け具29のみでシールド層8の端部をシートフレーム15に固定でき、部品点数を更に低減できる。
【0060】
尚、本発明においては、上記実施例1〜3に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1〜3では、金属製のフレーム17b(シートフレーム15)を例示したが、これに限定されず、例えば、導電性樹脂からなるフレームを採用してもよい。
【0061】
また、上記実施例1〜3では、カーペットの車両前後方向の末端側でシールド層8の端部を突出させ、このシールド層8の端部をフレーム17bに固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、図13に示すように、カーペットの車両前後方向の末端側に替えて又は加えて、カーペットの車両幅方向の末端側でシールド層8の端部を突出させ、このシールド層8の端部をフレーム16a,16bに固定するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施例1〜3では、シートフレーム15を構成するフレームにシールド層8の端部を固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、シートフレーム15を構成するクッションプレート18にシールド層8の端部を固定するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施例1では、縦断面略L字状のクリップ21を例示したが、これに限定されず、例えば、図14及び図15に示すように、縦壁30a及び縦壁30aの一端側に連なる横壁30bを備える縦断面略T字状のクリップ30を採用してもよい。この場合、クリップ30の縦壁30a及び横壁30bの一端側によりシールド層8の端部が折り曲げ状態で受け具20の固定部20aに押し付けられて接地されるとともに、クリップ30の横壁30bの他端側により受け具20と車両ボデー2の立ち上げ壁2aとの隙間が塞がれ、車両用電池3の密閉性を高めることができる。
【0064】
また、上記実施例1〜3では、金属メッシュからなるシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、金属板、金属箔、金属フィルム又は金属コーティング層からなるシールド層8を採用してもよい。また、発泡金属、又は導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などからなるシールド層8を採用してもよい。
【0065】
また、上記実施例1〜3では、タフト布からなる表皮層6を例示したが、これに限定されず、例えば、不織布、織物、編物等からなる表皮層6を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、1層のみからなるバッキング層7を例示したが、これに限定されず、例えば、複数層からなるバッキング層7を採用してもよい。また、上記実施例1〜3では、樹脂製のバッキング層7を例示したが、エラストマー又はゴム等からなるバッキング層7を採用してもよい。
【0066】
なお、上記バッキング層7をなす樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。十分な強度及び柔軟性並びに加工性を有しつつ、優れた遮音性を発揮できる。また、上記バッキング層7をなすエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記バッキング層7をなすゴムとしては、ブダジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、上記実施例1〜3では、表皮層6の裏面側にバッキング層7を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、表皮層6の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してバッキング層7を間接的に積層するようにしてもよい。さらに、上記実施例1〜3では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッキング層7の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してシールド層8を間接的に積層するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施例1〜3では、ロアケース11で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆する形態を例示したが、これに限定されず、ロアケース11に替えて又は加えて、カーペット5のシールド層8で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施例1〜3では、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8を一体成形してなるカーペット5を例示したが、これに限定されず、例えば、各層を接着剤等で接合してなるカーペットを採用してもよい。
【0070】
また、上記実施例1〜3では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、を別々にセットするようにしたが、これに限定されず、例えば、成型型12a,12b内に、表皮層6の裏面側にバッキング層7を一体成形してなる一体物をセットするようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施例1及び2では、バッキング層7の裏面側に露出するシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、バッキング層7の裏面側に埋設されたシールド層8としてもよい。
【0072】
また、上記実施例1及び2では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、図17に示すように、バッキング層7の表面側にシールド層8を配設したり、バッキング層7の表裏方向の中央側にシールド層8を配設したりしてもよい。
【0073】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0074】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
車両用電池を被覆する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などで使用される車両用電池の被覆構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1,23,27;カーペットの接地構造、2;車両ボデー、3;車両用電池、5;カーペット、8;シールド層、15;シートフレーム、19,24,28;クリップ手段、20;受け具、21,30;クリップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、
前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、
前記シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されていることを特徴とするカーペットの接地構造。
【請求項2】
前記シールド層の端部は、クリップ手段により前記シートフレームに固定されている請求項1記載のカーペットの接地構造。
【請求項3】
前記クリップ手段は、前記シートフレームに設けられる受け具と、該受け具に前記シールド層の端部とともに圧入されるクリップと、を備える請求項2記載のカーペットの接地構造。
【請求項4】
前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出している請求項2又は3に記載のカーペットの接地構造。
【請求項1】
車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、
前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、
前記シールド層は、導電性を有するシートフレームに電気的に導通されていることを特徴とするカーペットの接地構造。
【請求項2】
前記シールド層の端部は、クリップ手段により前記シートフレームに固定されている請求項1記載のカーペットの接地構造。
【請求項3】
前記クリップ手段は、前記シートフレームに設けられる受け具と、該受け具に前記シールド層の端部とともに圧入されるクリップと、を備える請求項2記載のカーペットの接地構造。
【請求項4】
前記カーペットの末端側において、前記シールド層の端部は、該カーペットを構成する表皮層及びバッキング層の端部から突出している請求項2又は3に記載のカーペットの接地構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−162156(P2012−162156A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23330(P2011−23330)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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