カーペットの接地構造
【課題】車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供する。
【解決手段】本構造は、車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペットの接地構造1であって、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部20と、車両ボデーに接触する接触部(第1接触部21、第2接触部22)と、を有する。
【解決手段】本構造は、車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペットの接地構造1であって、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部20と、車両ボデーに接触する接触部(第1接触部21、第2接触部22)と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットの接地構造に関し、さらに詳しくは、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車、ハイブリッド車等では、複数の電池セルを積層してなる電池パック等の車両用電池が用いられている。この車両用電池の被覆構造としては、例えば、図12に示すように、車両用電池103を金属製のロアケース111及びアッパーケース112で被覆して電池組立品113をなし、金属製の各ケース111,112で車両用電池103を電磁波シールドする被覆構造101が一般に知られている。ここで、上記電池組立品113を車両の座席下に搭載する場合、車両ボデー102に電池組立品113及び金属製のシートフレーム114をボルト締めし、車両ボデー102にカーペット105をクリップ止めし、シートフレーム114にシートクッション110を装着することが考えられる。そして、電池組立品113を構成する金属製のロアケース111を車両ボデー102にボルト締結して接地することが図られる。
【0003】
また、他の従来の車両用電池の被覆構造として、車両用電池を樹脂製のロアケース及びアッパーケースで被覆して電池組立品をなし、この電池組立品を金属製のカバーで被覆して電磁波シールドするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、金属製のカバーを車両ボデーにボルト締結して接地することが開示されている。
【0004】
しかし、上述の従来の車両用電池の被覆構造では、電磁波シールドのために金属製のアッパーケースやカバーを備える必要があるので、重量が非常に重くなる。また、部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。さらに、金属製のケースやカバーを車両ボデーにボルト締結して接地しているので、ボルト締結箇所を複数設定する必要があり、接地のための部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−294048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、前記シールド層は、前記車両用電池を被覆する被覆部と、前記車両ボデーに接触する接触部と、を有することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記カーペットの前記接触部を含む部位は、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーペットの接地構造によると、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部と、車両ボデーに接触する接触部と、を有するので、シールド層の被覆部により、車両用電池から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層の接触部によりシールド層と車両ボデーとが電気的に導通されて接地される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層を容易且つ確実に接地することができる。
また、前記カーペットの前記接触部を含む部位が、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されている場合は、車両ボデーに対するシールド層の接触部の接触圧が高められ、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。また、カーペットを車両ボデーに対して固定して位置決めすることができる。
さらに、前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側が凹凸状に形成されている場合は、車両ボデーに対するシールド層の接触部の接触圧が高められ、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るカーペットの接地構造の斜視図である。
【図2】上記カーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図3】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図4】図3のIV矢視部分の拡大図である。
【図5】図3のV矢視部分の拡大図である。
【図6】上記カーペットの成形方法を説明するための説明図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図9】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図10】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図11】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図12】従来の車両用電池の被覆構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.カーペットの接地構造
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造は、車両ボデー(2)に搭載された車両用電池(3)を被覆するカーペットの接地構造(1)であって、カーペット(5)は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層(8)を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部(20)と、車両ボデーに接触する接触部(21、22)と、を有することを特徴とする(例えば、図3等参照)。なお、上記車両用電池としては、例えば、蓄電池、燃料電池等を挙げることができる。
【0012】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位は、車両ボデーと内装部品(23、24)との間に挟持されている形態(例えば、図7等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位の車両幅方向の両端側が車両ボデーと内装部品との間に挟持されていることができる。これにより、カーペットとして比較的広い面域を確保しつつシールド層の接触圧を高め得る。
【0013】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されている形態(例えば、図9〜図11等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、カーペットを構成する後述の表皮層、バッキング層及びシールド層のうちの少なくともシールド層が凹凸状に形成されていることができる。
【0014】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記接触部は、被覆部の車両前方側に連なる第1接触部(21)と、被覆部の車両後方側に連なる第2接触部(22)と、を有する形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、第1及び第2接触部を介してシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0015】
本実施形態1.に係る車両用電池の被覆構造としては、例えば、上記カーペットは、表皮層(6)と、表皮層の裏面側に積層されるバッキング層(7)と、バッキング層の裏面側に積層される上記シールド層(8)と、を有している形態(例えば、図4及び図5等参照)を挙げることができる。これにより、表皮層、バッキング層及びシールド層の3者が一体化された簡易且つ安価な構成のカーペットを採用できる。なお、上記シールド層は、通常、カーペットの裏面側に露出して配設される。
【0016】
上述の形態では、例えば、上記カーペットは、成形型(12a、12b)内に、表皮層になる表皮材(6a)と、バッキング層になるバッキング材(7a)と、シールド層になるシート材(8a)と、をこの順にセットし、これらセット物を、少なくともバッキング材を加熱した状態でプレス成形(圧縮成形)して得られることができる(例えば、図6等参照)。これにより、表示層、バッキング層及びシールド層の3者を強固に一体化できる。
【0017】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記車両ボデー(2)には、車両用電池を被覆する立上げ壁(2a)が形成されている形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、更なる軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0019】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例に係るカーペットの接地構造1は、図1〜図3に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0020】
上記車両ボデー2には、車両用電池3の下方に位置するように金属製で縦断面略U字状のロアケース11が配設されている。また、車両ボデー2には、シートクッション10を支持するシートフレーム15が配設されている。このシートフレーム15は、車両前後方向に延びる金属製で略L字状の左右のフレーム16a,16bと、これら左右のフレーム16a,16bの間に架設され且つ車両幅方向に延びる金属製で略棒状の前後のフレーム17a,17bと、を有している。これら左右のフレーム16a,16bのそれぞれは、その一端側が車両ボデー2に固定され、その他端側が車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aの頂上部に固定されている。また、各フレーム16a、16b、17a、17bには、カーペット5を介してシートクッション10を実質的に支持する金属製のクッションプレート18が固定されている。
【0021】
上記カーペット5は、図4及び図5に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、を有している。
【0022】
上記表皮層6は、1層又は2層以上の基布にパイル糸をタフティングしてなるタフト布である。また、バッキング層7は、カーペット5を形状保持する機能と、車室外側からの音を遮蔽する機能と、を有している。また、シールド層8は、複数の孔14を有するシート材8aからなっている。このシート材8aは、金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の金属メッシュである。また、シールド層8の表面は、バッキング層7の裏面側から露出している。
【0023】
上記シールド層8は、図3に示すように、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面を被覆する被覆部20と、この被覆部20の車両前方側に連なり車両ボデー2の表面に接触する第1接触部21と、被覆部20の車両後方側に連なり車両ボデー2の表面に接触する第2接触部22と、を有している。
【0024】
ここで、図7に示すように、上記カーペット5の第1接触部21を含む部位のうちの車両幅方向の一端側は、車両ボデー2とスカッフ23(本発明に係る「内装部品」として例示する。)との間に挟持されている。また、上記カーペット5の第1接触部21を含む部位のうちの車両幅方向の他端側は、車両ボデー2とセンターコンソール24(本発明に係る「内装部品」として例示する。)との間に挟持されている。
【0025】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の組立方法について説明する。先ず、上記カーペット5は、図6に示すように、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形して得られる。
【0026】
そして、車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図2参照)、並びにシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せると、シールド層8の被覆部20が車両用電池3及び制御部3aを被覆するとともに、シールド層8の第1及び第2接触部21,22が車両ボデー2の表面に接触する。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造1が得られる。
【0027】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図3に示すように、シールド層8の被覆部20により、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面が被覆され、上記ロアケース11により、車両用電池3の下面及び車両幅方向の両側面が被覆され、車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aにより、車両用電池3の車両後方側の後面が被覆されている。よって、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、シールド層8の第1及び第2接触部21,22が車両ボデー2に接触して、シールド層8が車両ボデー2に電気的に導通される。
【0028】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造1によると、カーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層8は、車両用電池3を被覆する被覆部20と、車両ボデー2に接触する接触部21,22と、を有するので、シールド層8の被覆部20により、車両用電池3から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層8の接触部21,22によりシールド層8と車両ボデー2とが電気的に導通されて接地される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層8を容易且つ確実に接地することができる。
【0029】
例えば、従来の車両用電池の被覆構造101(図12参照)では、接地のために、車両ボデー102に対するアッパーケース112のボルト締め5点及びナット締め6点の作業が必要である。これに対して、本実施例のカーペットの接地構造1では、車両ボデー2に対してカーペット5を敷設してクリップ止めするのみの作業で接地とともにカーペット5も固定できるので、作業時間を大幅に短縮できる。
【0030】
また、本実施例では、カーペット5の接触部21を含む部位を、車両ボデー2と内装部品23、24との間に挟持させたので、車両ボデー2に対するシールド層8の接触部21の接触圧が高められ、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。また、カーペット5を車両ボデー2に対して固定して位置決めすることができる。特に、本実施例では、カーペット5の接触部21を含む部位の車両幅方向の両端側を挟持させたので、カーペット5として比較的広い面域を確保しつつシールド層8の接触圧を高め得る。
【0031】
また、本実施例では、接触部として、被覆部20の車両前方側に連なる第1接触部21と、被覆部20の車両後方側に連なる第2接触部22と、を有して構成したので、第1及び第2接触部21,22を介してシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0032】
また、本実施例では、カーペット5を、表皮層6と、バッキング層7と、シールド層8と、を有して構成したので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の3者が一体化された簡易且つ安価な構成のカーペット5を採用できる。
【0033】
また、本実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形してカーペット5を得るようにしたので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の3者を強固に一体化できる。
【0034】
さらに、本実施例では、車両ボデー2に、車両用電池3を被覆する立上げ壁2aを形成したので、更なる軽量化を図ることができる。
【0035】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、金属製のシートフレーム15を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、樹脂製のシートフレーム15’を採用してもよい。また、シートフレームとしては、例えば、車両用電池の上面を面で覆う構造(図8参照)を採用したり、車両用電池の上面を面で覆わない枠形状の構造を採用したりしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、裏面側が平面状のカーペット5を例示したが、これに限定されず、裏面側が凹凸状に形成されたカーペットを採用してもよい。この場合、例えば、図9に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の全てが凹凸状に形成されたカーペット5aとしたり、図10に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8のうちのバッキング層7及びシールド層8が凹凸状に形成されたカーペット5bとしたり、図11に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8のうちのシールド層8が凹凸状に形成されたカーペット5cとしたりできる。
【0037】
また、上記実施例において、カーペット5の裏面側の全面が凹凸状に形成されていてもよいし、カーペット5の接触部21、22を含む裏面側の面域のみが凹凸状に形成されていてもよい。
【0038】
また、上記実施例において、車両ボデーの表面側には、カーペット5の接触部21、22が接触する面域が凹凸状に形成されていてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、車両ボデー2の離間した表面部位に接触する複数の接触部21,22を有するシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、車両ボデーの連なる表面部位に接触する単一の接触部を有するシールド層としてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、金属メッシュからなるシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、金属板、金属箔、金属フィルム又は金属コーティング層からなるシールド層8を採用してもよい。また、発泡金属、又は導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などからなるシールド層8を採用してもよい。
【0041】
また、上記実施例では、タフト布からなる表皮層6を例示したが、これに限定されず、例えば、不織布、織物、編物等からなる表皮層6を採用してもよい。また、上記実施例では、1層のみからなるバッキング層7を例示したが、これに限定されず、例えば、複数層からなるバッキング層7を採用してもよい。また、上記実施例では、樹脂製のバッキング層7を例示したが、エラストマー又はゴム等からなるバッキング層7を採用してもよい。
【0042】
なお、上記バッキング層7をなす樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。十分な強度及び柔軟性並びに加工性を有しつつ、優れた遮音性を発揮できる。また、上記バッキング層7をなすエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記バッキング層7をなすゴムとしては、ブダジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、上記実施例では、表皮層6の裏面側にバッキング層7を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、表皮層6の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してバッキング層7を間接的に積層するようにしてもよい。さらに、上記実施例では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッキング層7の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してシールド層8を間接的に積層するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、ロアケース11で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、ロアケース11に替えて又は加えて、カーペット5のシールド層8で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8を一体成形してなるカーペット5を例示したが、これに限定されず、例えば、各層を接着剤等で接合してなるカーペットを採用してもよい。
【0046】
さらに、上記実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、を別々にセットするようにしたが、これに限定されず、例えば、成型型12a,12b内に、表皮層6の裏面側にバッキング層7を一体成形してなる一体物をセットするようにしてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
車両用電池を被覆するカーペットの接地技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などで使用される車両用電池を被覆するカーペットの接地構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1;カーペットの接地構造、2;車両ボデー、3;車両用電池、5、5a〜5c;カーペット、8;シールド層、20;被覆部、21;第1接触部、22;第2接触部、23;スカッフ、24;センターコンソール。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットの接地構造に関し、さらに詳しくは、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車、ハイブリッド車等では、複数の電池セルを積層してなる電池パック等の車両用電池が用いられている。この車両用電池の被覆構造としては、例えば、図12に示すように、車両用電池103を金属製のロアケース111及びアッパーケース112で被覆して電池組立品113をなし、金属製の各ケース111,112で車両用電池103を電磁波シールドする被覆構造101が一般に知られている。ここで、上記電池組立品113を車両の座席下に搭載する場合、車両ボデー102に電池組立品113及び金属製のシートフレーム114をボルト締めし、車両ボデー102にカーペット105をクリップ止めし、シートフレーム114にシートクッション110を装着することが考えられる。そして、電池組立品113を構成する金属製のロアケース111を車両ボデー102にボルト締結して接地することが図られる。
【0003】
また、他の従来の車両用電池の被覆構造として、車両用電池を樹脂製のロアケース及びアッパーケースで被覆して電池組立品をなし、この電池組立品を金属製のカバーで被覆して電磁波シールドするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、金属製のカバーを車両ボデーにボルト締結して接地することが開示されている。
【0004】
しかし、上述の従来の車両用電池の被覆構造では、電磁波シールドのために金属製のアッパーケースやカバーを備える必要があるので、重量が非常に重くなる。また、部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。さらに、金属製のケースやカバーを車両ボデーにボルト締結して接地しているので、ボルト締結箇所を複数設定する必要があり、接地のための部品点数が多く組付け作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−294048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両用電池を電磁波シールドできるとともに、容易且つ確実に接地することができる軽量且つ簡素な構造のカーペットの接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、前記シールド層は、前記車両用電池を被覆する被覆部と、前記車両ボデーに接触する接触部と、を有することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記カーペットの前記接触部を含む部位は、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーペットの接地構造によると、カーペットは、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部と、車両ボデーに接触する接触部と、を有するので、シールド層の被覆部により、車両用電池から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層の接触部によりシールド層と車両ボデーとが電気的に導通されて接地される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層を容易且つ確実に接地することができる。
また、前記カーペットの前記接触部を含む部位が、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されている場合は、車両ボデーに対するシールド層の接触部の接触圧が高められ、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。また、カーペットを車両ボデーに対して固定して位置決めすることができる。
さらに、前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側が凹凸状に形成されている場合は、車両ボデーに対するシールド層の接触部の接触圧が高められ、シールド層を更に容易且つ確実に接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るカーペットの接地構造の斜視図である。
【図2】上記カーペットの接地構造の分解斜視図である。
【図3】上記カーペットの接地構造の縦断面図である。
【図4】図3のIV矢視部分の拡大図である。
【図5】図3のV矢視部分の拡大図である。
【図6】上記カーペットの成形方法を説明するための説明図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図9】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図10】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図11】更にその他の形態のカーペットの接地構造を説明するための説明図である。
【図12】従来の車両用電池の被覆構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.カーペットの接地構造
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造は、車両ボデー(2)に搭載された車両用電池(3)を被覆するカーペットの接地構造(1)であって、カーペット(5)は、車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層(8)を有し、シールド層は、車両用電池を被覆する被覆部(20)と、車両ボデーに接触する接触部(21、22)と、を有することを特徴とする(例えば、図3等参照)。なお、上記車両用電池としては、例えば、蓄電池、燃料電池等を挙げることができる。
【0012】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位は、車両ボデーと内装部品(23、24)との間に挟持されている形態(例えば、図7等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位の車両幅方向の両端側が車両ボデーと内装部品との間に挟持されていることができる。これにより、カーペットとして比較的広い面域を確保しつつシールド層の接触圧を高め得る。
【0013】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記カーペットの接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されている形態(例えば、図9〜図11等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、カーペットを構成する後述の表皮層、バッキング層及びシールド層のうちの少なくともシールド層が凹凸状に形成されていることができる。
【0014】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記接触部は、被覆部の車両前方側に連なる第1接触部(21)と、被覆部の車両後方側に連なる第2接触部(22)と、を有する形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、第1及び第2接触部を介してシールド層を更に容易且つ確実に接地できる。
【0015】
本実施形態1.に係る車両用電池の被覆構造としては、例えば、上記カーペットは、表皮層(6)と、表皮層の裏面側に積層されるバッキング層(7)と、バッキング層の裏面側に積層される上記シールド層(8)と、を有している形態(例えば、図4及び図5等参照)を挙げることができる。これにより、表皮層、バッキング層及びシールド層の3者が一体化された簡易且つ安価な構成のカーペットを採用できる。なお、上記シールド層は、通常、カーペットの裏面側に露出して配設される。
【0016】
上述の形態では、例えば、上記カーペットは、成形型(12a、12b)内に、表皮層になる表皮材(6a)と、バッキング層になるバッキング材(7a)と、シールド層になるシート材(8a)と、をこの順にセットし、これらセット物を、少なくともバッキング材を加熱した状態でプレス成形(圧縮成形)して得られることができる(例えば、図6等参照)。これにより、表示層、バッキング層及びシールド層の3者を強固に一体化できる。
【0017】
本実施形態1.に係るカーペットの接地構造としては、例えば、上記車両ボデー(2)には、車両用電池を被覆する立上げ壁(2a)が形成されている形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、更なる軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0019】
(1)カーペットの接地構造の構成
本実施例に係るカーペットの接地構造1は、図1〜図3に示すように、金属製の車両ボデー2に搭載された車両用電池3を被覆するカーペット5を備えている。このカーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有している。
【0020】
上記車両ボデー2には、車両用電池3の下方に位置するように金属製で縦断面略U字状のロアケース11が配設されている。また、車両ボデー2には、シートクッション10を支持するシートフレーム15が配設されている。このシートフレーム15は、車両前後方向に延びる金属製で略L字状の左右のフレーム16a,16bと、これら左右のフレーム16a,16bの間に架設され且つ車両幅方向に延びる金属製で略棒状の前後のフレーム17a,17bと、を有している。これら左右のフレーム16a,16bのそれぞれは、その一端側が車両ボデー2に固定され、その他端側が車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aの頂上部に固定されている。また、各フレーム16a、16b、17a、17bには、カーペット5を介してシートクッション10を実質的に支持する金属製のクッションプレート18が固定されている。
【0021】
上記カーペット5は、図4及び図5に示すように、車室内装面を形成する表皮層6と、この表皮層6の裏面側に積層される熱可塑性樹脂製のバッキング層7と、このバッキング層7の裏面側に積層される上記シールド層8と、を有している。
【0022】
上記表皮層6は、1層又は2層以上の基布にパイル糸をタフティングしてなるタフト布である。また、バッキング層7は、カーペット5を形状保持する機能と、車室外側からの音を遮蔽する機能と、を有している。また、シールド層8は、複数の孔14を有するシート材8aからなっている。このシート材8aは、金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の金属メッシュである。また、シールド層8の表面は、バッキング層7の裏面側から露出している。
【0023】
上記シールド層8は、図3に示すように、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面を被覆する被覆部20と、この被覆部20の車両前方側に連なり車両ボデー2の表面に接触する第1接触部21と、被覆部20の車両後方側に連なり車両ボデー2の表面に接触する第2接触部22と、を有している。
【0024】
ここで、図7に示すように、上記カーペット5の第1接触部21を含む部位のうちの車両幅方向の一端側は、車両ボデー2とスカッフ23(本発明に係る「内装部品」として例示する。)との間に挟持されている。また、上記カーペット5の第1接触部21を含む部位のうちの車両幅方向の他端側は、車両ボデー2とセンターコンソール24(本発明に係る「内装部品」として例示する。)との間に挟持されている。
【0025】
(2)カーペットの接地構造の組立方法
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の組立方法について説明する。先ず、上記カーペット5は、図6に示すように、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形して得られる。
【0026】
そして、車両ボデー2に対してロアケース11、車両用電池3及びその制御部3a(図2参照)、並びにシートフレーム15を組み付ける。次に、それらの上方からカーペット5を被せると、シールド層8の被覆部20が車両用電池3及び制御部3aを被覆するとともに、シールド層8の第1及び第2接触部21,22が車両ボデー2の表面に接触する。その後、カーペット5上にシートクッション10を配設すれば、上記カーペットの接地構造1が得られる。
【0027】
(3)カーペットの接地構造の作用
次に、上記構成のカーペットの接地構造1の作用について説明する。図3に示すように、シールド層8の被覆部20により、車両用電池3の上面及び車両前方側の前面が被覆され、上記ロアケース11により、車両用電池3の下面及び車両幅方向の両側面が被覆され、車両ボデー2に形成された立ち上げ壁2aにより、車両用電池3の車両後方側の後面が被覆されている。よって、カーペット5のシールド層8、ロアケース11及び車両ボデー2の立ち上げ壁2aにより車両用電池3は電磁波シールドされる。また、シールド層8の第1及び第2接触部21,22が車両ボデー2に接触して、シールド層8が車両ボデー2に電気的に導通される。
【0028】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のカーペットの接地構造1によると、カーペット5は、車両用電池3から発生する電磁波を遮蔽するシールド層8を有し、シールド層8は、車両用電池3を被覆する被覆部20と、車両ボデー2に接触する接触部21,22と、を有するので、シールド層8の被覆部20により、車両用電池3から発生する電磁波が遮蔽されるとともに、シールド層8の接触部21,22によりシールド層8と車両ボデー2とが電気的に導通されて接地される。そのため、従来のようにカーペットとは別個の金属製のアッパーケースやカバーを備えるものに比べて、軽量化を図り得るとともに、部品点数を低減して組付け作業性を向上させることができる。また、シールド層8を容易且つ確実に接地することができる。
【0029】
例えば、従来の車両用電池の被覆構造101(図12参照)では、接地のために、車両ボデー102に対するアッパーケース112のボルト締め5点及びナット締め6点の作業が必要である。これに対して、本実施例のカーペットの接地構造1では、車両ボデー2に対してカーペット5を敷設してクリップ止めするのみの作業で接地とともにカーペット5も固定できるので、作業時間を大幅に短縮できる。
【0030】
また、本実施例では、カーペット5の接触部21を含む部位を、車両ボデー2と内装部品23、24との間に挟持させたので、車両ボデー2に対するシールド層8の接触部21の接触圧が高められ、シールド層8を更に容易且つ確実に接地することができる。また、カーペット5を車両ボデー2に対して固定して位置決めすることができる。特に、本実施例では、カーペット5の接触部21を含む部位の車両幅方向の両端側を挟持させたので、カーペット5として比較的広い面域を確保しつつシールド層8の接触圧を高め得る。
【0031】
また、本実施例では、接触部として、被覆部20の車両前方側に連なる第1接触部21と、被覆部20の車両後方側に連なる第2接触部22と、を有して構成したので、第1及び第2接触部21,22を介してシールド層8を更に容易且つ確実に接地できる。
【0032】
また、本実施例では、カーペット5を、表皮層6と、バッキング層7と、シールド層8と、を有して構成したので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の3者が一体化された簡易且つ安価な構成のカーペット5を採用できる。
【0033】
また、本実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、シールド層8になるシート材8aと、をこの順にセットし、これらセット物をプレス成形してカーペット5を得るようにしたので、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の3者を強固に一体化できる。
【0034】
さらに、本実施例では、車両ボデー2に、車両用電池3を被覆する立上げ壁2aを形成したので、更なる軽量化を図ることができる。
【0035】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、金属製のシートフレーム15を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、樹脂製のシートフレーム15’を採用してもよい。また、シートフレームとしては、例えば、車両用電池の上面を面で覆う構造(図8参照)を採用したり、車両用電池の上面を面で覆わない枠形状の構造を採用したりしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、裏面側が平面状のカーペット5を例示したが、これに限定されず、裏面側が凹凸状に形成されたカーペットを採用してもよい。この場合、例えば、図9に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8の全てが凹凸状に形成されたカーペット5aとしたり、図10に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8のうちのバッキング層7及びシールド層8が凹凸状に形成されたカーペット5bとしたり、図11に示すように、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8のうちのシールド層8が凹凸状に形成されたカーペット5cとしたりできる。
【0037】
また、上記実施例において、カーペット5の裏面側の全面が凹凸状に形成されていてもよいし、カーペット5の接触部21、22を含む裏面側の面域のみが凹凸状に形成されていてもよい。
【0038】
また、上記実施例において、車両ボデーの表面側には、カーペット5の接触部21、22が接触する面域が凹凸状に形成されていてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、車両ボデー2の離間した表面部位に接触する複数の接触部21,22を有するシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、車両ボデーの連なる表面部位に接触する単一の接触部を有するシールド層としてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、金属メッシュからなるシールド層8を例示したが、これに限定されず、例えば、金属板、金属箔、金属フィルム又は金属コーティング層からなるシールド層8を採用してもよい。また、発泡金属、又は導電性繊維を用いてなる布(例えば、不織布、織物、編物等)などからなるシールド層8を採用してもよい。
【0041】
また、上記実施例では、タフト布からなる表皮層6を例示したが、これに限定されず、例えば、不織布、織物、編物等からなる表皮層6を採用してもよい。また、上記実施例では、1層のみからなるバッキング層7を例示したが、これに限定されず、例えば、複数層からなるバッキング層7を採用してもよい。また、上記実施例では、樹脂製のバッキング層7を例示したが、エラストマー又はゴム等からなるバッキング層7を採用してもよい。
【0042】
なお、上記バッキング層7をなす樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。十分な強度及び柔軟性並びに加工性を有しつつ、優れた遮音性を発揮できる。また、上記バッキング層7をなすエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記バッキング層7をなすゴムとしては、ブダジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、上記実施例では、表皮層6の裏面側にバッキング層7を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、表皮層6の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してバッキング層7を間接的に積層するようにしてもよい。さらに、上記実施例では、バッキング層7の裏面側にシールド層8を直接的に積層するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッキング層7の裏面側に他の部材(例えば、防音材、吸音材、接着層等)を介してシールド層8を間接的に積層するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、ロアケース11で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、ロアケース11に替えて又は加えて、カーペット5のシールド層8で車両用電池3の車幅方向の側面を被覆するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、表皮層6、バッキング層7及びシールド層8を一体成形してなるカーペット5を例示したが、これに限定されず、例えば、各層を接着剤等で接合してなるカーペットを採用してもよい。
【0046】
さらに、上記実施例では、成形型12a,12b内に、表皮層6になる表皮材6aと、バッキング層7になる加熱処理されたバッキング材7aと、を別々にセットするようにしたが、これに限定されず、例えば、成型型12a,12b内に、表皮層6の裏面側にバッキング層7を一体成形してなる一体物をセットするようにしてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
車両用電池を被覆するカーペットの接地技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などで使用される車両用電池を被覆するカーペットの接地構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1;カーペットの接地構造、2;車両ボデー、3;車両用電池、5、5a〜5c;カーペット、8;シールド層、20;被覆部、21;第1接触部、22;第2接触部、23;スカッフ、24;センターコンソール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、
前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、
前記シールド層は、前記車両用電池を被覆する被覆部と、前記車両ボデーに接触する接触部と、を有することを特徴とするカーペットの接地構造。
【請求項2】
前記カーペットの前記接触部を含む部位は、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されている請求項1記載のカーペットの接地構造。
【請求項3】
前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されている請求項1又は2に記載のカーペットの接地構造。
【請求項1】
車両ボデーに搭載された車両用電池を被覆するカーペットの接地構造であって、
前記カーペットは、前記車両用電池から発生する電磁波を遮蔽するシールド層を有し、
前記シールド層は、前記車両用電池を被覆する被覆部と、前記車両ボデーに接触する接触部と、を有することを特徴とするカーペットの接地構造。
【請求項2】
前記カーペットの前記接触部を含む部位は、前記車両ボデーと内装部品との間に挟持されている請求項1記載のカーペットの接地構造。
【請求項3】
前記カーペットの前記接触部を含む部位の裏面側は凹凸状に形成されている請求項1又は2に記載のカーペットの接地構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162158(P2012−162158A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23332(P2011−23332)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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