説明

カーペットクランプ

【課題】異なる径寸法の被挟持物に対応することができるのみならず、保持する被挟持物の径寸法が小さい場合には、自身の実質的な外形寸法(全高)も小さくすることができ配置スペースの有効利用を図ることが可能になるカーペットクランプを得る。
【解決手段】カーペットクランプ10のクランプ片24の舌部24は、弾性変形することでワイヤーハーネスWの挟持位置を変更可能であり、しかも溝部27によって底壁12の方向へ付勢力(撓み変形力)を発揮されているため、異なる径寸法のワイヤーハーネスWに対応することができる。また、ワイヤーハーネスWの径寸法が小さい場合(φ21)には、クランプ片24の舌部24が弾性変形して挟持位置を変更するため、この小径のワイヤーハーネスWに応じてカーペットクランプ10自身の実質的な外形寸法も小さくなり、ワイヤーハーネスWの径寸法が大きい場合(φ24)と比べて、寸法hだけ実質的な全高が低くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の被挟持物を挟持して所定位置に保持するカーペットクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、種々のワイヤーハーネスが配索され所定箇所に保持されているが、例えば、フロントドア開口部の下部におけるスカッフプレートの内方には、カーペットクランプによってワイヤーハーネスがクランプされて車体に保持されている。
【0003】
図6に示す如く、従来のこの種のカーペットクランプ50は、一対の挟持片52、挟持片54によってワイヤーハーネスを挟み込んで保持する構成であるが、保持するワイヤーハーネスの大きさ(径寸法)の違いにより、異なる車種毎に別々の種類のカーペットクランプを設定する必要があった。すなわち、車両のドア開口部分をできるだけ広くして乗員の乗降性を優先しようとすると、車種毎に径寸法の異なるワイヤーハーネスに対応して、外形(全高)を必要最小限に小さく設定したカーペットクランプ50にする必要があり、複数種類のカーペットクランプ50を設定しておく必要がある。
【0004】
一方、このようなカーペットクランプ50を異なる車種毎に共通して適用しようとすると、径寸法の大きいワイヤーハーネスが用いられた車種に適用するカーペットクランプ50を、他の車種においても適用せざるを得ない問題が生じる。すなわち、径寸法の小さいワイヤーハーネスが用いられた車種であっても(全高が低い形状のカーペットクランプ50で十分な場合であっても)、径寸法の大きいワイヤーハーネスが用いられた車種に適用するカーペットクランプ50(全高が高い形状)を使用することになる。このため、これらのワイヤーハーネス及びカーペットクランプ50を覆い被すように取り付けられるスカッフプレートを、結果的に高位置に取り付けなければならず、車両のドア開口部分が不要に侵食されて乗員の乗降性を阻害する原因となってしまう。
【0005】
このように、従来のカーペットクランプ50は、保持するワイヤーハーネスの径寸法が小さくてもその外形寸法(全高)は変わらないため不要にスペースを侵食する原因となる場合があり、一方、保持するワイヤーハーネスの径寸法が大きい場合には、これに対応してその外形(全高)が大きな別種類のカーペットクランプ50を設定する必要があった。
【0006】
この場合、異なる径寸法のワイヤーハーネスに対応することができるように構成したワイヤーハーネス保持クリップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
前記公報に示されたワイヤーハーネス保持クリップでは、差し込まれたワイヤーハーネスの下部(裏面部)に当接するアーチ状接触部が凸状態から凹状態へと撓み変形することで、異なる径のワイヤーハーネスでも挟持して保持することができるように構成されている。
【0008】
しかしながら、前記公報に示された従来のワイヤーハーネス保持クリップでは、異なる径寸法のワイヤーハーネスにある程度は対応することができるものの、保持するワイヤーハーネスの径寸法の違いを、このワイヤーハーネスの下部(裏面部)に当接するアーチ状接触部の撓み変形によって吸収する構成であるため、大きな径寸法のワイヤーハーネスを保持した場合でも小さな径寸法のワイヤーハーネスを保持した場合でも何れも当該ワイヤーハーネス保持クリップの実質的な外形寸法(全高)は変わらない。したがって、保持するワイヤーハーネスの径寸法が小さい場合には、ワイヤーハーネス保持クリップの外形寸法(全高)をもっと小さく設定できるにも拘らずこのワイヤーハーネス保持クリップの外形高さが無駄なものとなってしまい(不必要に大きく)、前述した問題を十分に解決することはできないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−303412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、ワイヤーハーネス等の被挟持物を保持するに当たって、異なる径寸法の被挟持物に対応することができて適用の範囲が拡大するのみならず、保持する被挟持物の径寸法が小さい場合には、自身の実質的な外形寸法(全高)も小さくすることができ配置スペースの有効利用を図ることが可能になるカーペットクランプを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明のカーペットクランプは、車体に固定される本体と、前記本体に連続して一体に形成され、弾性を有すると共に互いに対向し合って舌状に延出する一対の舌部を有し、前記一対の舌部によって一側が開放し被挟持物が嵌入可能な嵌入部が設けられ、前記嵌入部に入り込んだ前記被挟持物を前記一対の舌部によって挟持すると共に、前記一方の舌部が弾性変形することで前記挟持位置を前記被挟持物の嵌入方向に沿って変更可能なクランプ片と、前記クランプ片の前記一方の舌部に設けられ、前記一方の舌部による前記挟持位置が前記被挟持物の嵌入方向奥側となる方向へ前記一方の舌部に付勢力を発揮させる付勢力発揮手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項1記載のカーペットクランプでは、本体に連続して形成されたクランプ片には嵌入部が設けられており、この嵌入部に被挟持物が差し込まれると共に、嵌入部に入り込んだ被挟持物は嵌入部の開放側から一対の舌部によって挟み込まれて保持される。
【0013】
ここで、請求項1記載のカーペットクランプでは、嵌入部に入り込んだ被挟持物を挟み込むクランプ片の一方の舌部は、弾性変形することで被挟持物の挟持位置をこの被挟持物の嵌入方向に沿って変更可能であり、しかもこのクランプ片の一方の舌部は、付勢力発揮手段によって、一方の舌部による挟持位置が被挟持物の嵌入方向奥側となる方向へ付勢力を発揮されているため、異なる径寸法の被挟持物に対応することができる。すなわち、保持する被挟持物の径寸法に違いがあっても、この寸法差をクランプ片の一方の舌部が弾性変形することで吸収することができ、大きな径寸法の被挟持物でも小さな径寸法の被挟持物でも何れも当該被挟持物を保持することができる。
【0014】
このため、保持する被挟持物の大きさ(径寸法)の違いにより異なる車種毎に別々の種類のカーペットクランプを設定する必要がなくなり、カーペットクランプを異なる車種毎に共通して適用することができ、適用の範囲が拡大する。
【0015】
またさらに、保持する被挟持物の径寸法が小さい場合には、付勢力発揮手段によって撓み変形が促進された一方の舌部が、被挟持物の嵌入方向奥側となる方向へ弾性変形して挟持位置を変更するため、小径の被挟持物に応じてカーペットクランプ自身の実質的な外形寸法も小さくなる(全高が低くなる)。したがって、不要に配置スペースを侵食することが無く、例えば車両のドア開口部分が不要に侵食されて乗員の乗降性を阻害する原因となることがない。
【0016】
このように、請求項1記載のカーペットクランプでは、異なる径寸法の被挟持物に対応することができて適用の範囲が拡大し、しかも、保持する被挟持物の径寸法が小さい場合には、自身の実質的な外形寸法(全高)も小さくすることができ配置スペースの有効利用を図ることが可能になる。
【0017】
請求項2に係る発明のカーペットクランプは、請求項1記載のカーペットクランプにおいて、前記クランプ片の少なくとも前記一方の舌部は、樹脂材によって成形され、前記付勢力発揮手段は、前記一方の舌部の前記嵌入部側の内周面に設けられ、前記被挟持物の嵌入方向奥側となる方向への前記一方の舌部の撓み変形を促進する溝部とされる、ことを特徴としている。
【0018】
請求項2記載のカーペットクランプでは、クランプ片の一方の舌部は樹脂材によって成形されており、しかも、この一方の舌部の嵌入部側の内周面には溝部が設けられている。この溝部が設けられることで、樹脂成形された一方の舌部は撓み変形が促進されて、当該溝部を設けない場合に比べてより一層付勢力を発揮する。これにより、前述した請求項1に係る発明のカーペットクランプと同様の作用を奏する。
【0019】
さらに、樹脂成形されるクランプ片の一方の舌部の内周面に溝部を設ける簡単な構成であるため、部品点数やコストあるいは重量が増加することなく容易に実現可能である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明のカーペットクランプは、ワイヤーハーネス等の被挟持物を保持するに当たって、異なる径寸法の被挟持物に対応することができて適用の範囲が拡大するのみならず、保持する被挟持物の径寸法が小さい場合には、自身の実質的な外形寸法(全高)も小さくすることができ配置スペースの有効利用を図ることが可能になるという優れた効果を有している。
【0021】
請求項2に係る発明のカーペットクランプは、請求項1に係る発明のカーペットクランプが有する優れた効果に加えて、簡単な構造により実現可能であるという優れた効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るカーペットクランプの構成を示し、ワイヤーハーネスの保持状態における一部破断した正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカーペットクランプの構成を示し、クランプ片の開放状態における一部破断した正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカーペットクランプが適用された車両のフロントドア開口部周辺の構成を示す概略的な斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカーペットクランプによる径寸法の異なるワイヤーハーネスの保持状態を対比して示す図1に対応した一部破断した正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るカーペットクランプによって小径のワイヤーハーネスを保持した場合のスカッフプレートの取付け位置を対比して示す図3に対応した一部破断した正面図である。
【図6】従来のカーペットクランプの構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1乃至図5を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図3には、本発明の実施形態に係るカーペットクランプ10が適用された車両のフロントドア開口部周辺の構成が概略的な斜視図にて示されている。
【0025】
このフロントドア開口部においては、ロッカー40に沿って被挟持物としてのワイヤーハーネスWが配索されており、所定の間隔でカーペットクランプ10によって挟持され、さらに、これらのカーペットクランプ10が係止孔42に係止されてワイヤーハーネスWが車体に保持された構成となっている。さらに、これらのワイヤーハーネスW及びカーペットクランプ10の外方には、スカッフプレート44が取り付けられてこれらを被覆している。
【0026】
ここで、図1及び図2には、カーペットクランプ10の全体構成が正面図にて示されている。
【0027】
カーペットクランプ10は、樹脂材によって成形されており、底壁12、側壁14及び側壁16によって全体としてU字形に形成された本体18を備えている。
【0028】
また、本体18の内方には、クランプ片20が連続して一体に形成されている。このクランプ片20は、互いに対向し合って舌状に延出する一対の舌部24及び舌部25によって、一側が開放する円弧状に形成されており、さらに、一方の舌部24の略中間部分が、薄肉に形成された連結ヒンジ部26によって側壁16の上端に一体に連結されている。クランプ片20(舌部24及び舌部25)によって囲まれる内腔が嵌入部22とされており、嵌入部22にはワイヤーハーネスWが差し込まれて嵌入可能となっている。
【0029】
このクランプ片20(舌部24及び舌部25)は所定の弾性を有しており、嵌入部22に差し込まれたワイヤーハーネスWの上縁に当接して挟持できるようになっている。
【0030】
さらに、クランプ片20の一方の舌部24には、付勢力発揮手段としての溝部27が設けられている。溝部27は、舌部24の連結ヒンジ部26近傍における嵌入部22の側の内周面に設けられ、断面V字状(所謂ノッチ状)に成形されている。すなわち、この溝部27が設けられることで、樹脂成形された一方の舌部24は成形過程において撓み変形が促進されて、当該溝部27を設けない場合に比べてより一層付勢力を発揮するように構成されている。これにより、クランプ片20の舌部24は、底壁12の方向(すなわち、舌部24によるワイヤーハーネスWの当接挟持位置がこのワイヤーハーネスWの嵌入方向奥側となる方向)への付勢力(撓み変形力)が促進された構成となっている。
【0031】
一方、クランプ片20の他方の舌部25の略中間部分には、係止孔29が形成されている。この係止孔29は、本体18の側壁14先端に形成された係止爪31に対応しており、互いに嵌合し合うようになっている。すなわち、図1に示す如く、係止孔29に係止爪31が嵌合した状態では、クランプ片20が本体18に一体に連結保持され、また、図2に示す如く、係止孔29と係止爪31の嵌合が解除されて互いに離脱することで、連結ヒンジ部26を回転中心としてクランプ片20が開閉移動することができるようになっている。
【0032】
この場合、係止孔29と係止爪31の嵌合が解除されてクランプ片20が開放した状態では、車両のカーペットK(図5参照)に設けられた透孔Lが、本体18の側壁14に嵌まり込むことができ、これによりカーペットKがカーペットクランプ10に係止されるように構成されている。
【0033】
さらに、クランプ片20の他方の舌部25の略中間部分(すなわち、係止孔29の近傍)の外周側(嵌入部22と反対側)には、U字形の舌片28が一体に延出して設けられており、図示を省略した他の部材の入込み部分となっている。
【0034】
また、本体18の側壁16の外周側(嵌入部22と反対側)下部には、L字形の舌片30が一体に延出して設けられており、図示を省略した他の部材(例えば、オープナーケーブル等)の入込み部分となっている。さらに舌片30の上方には、U字形の舌片32が側壁16と一体に延出して設けられており、図示を省略した他の部材の入込み部分となっている。
【0035】
また、本体18の底壁12の裏面側には、軸部34が一体に突出して形成されている。この軸部34の周縁にはスカート部36が形成されると共に、軸部34の先端には差込み係止片38が一体に形成されている。この軸部34の差込み係止片38が車体の係止孔42に差し込まれることで、差込み係止片38が係止孔42の裏面側周縁部分に引っ掛かり、さらに、スカート部36が係止孔42の表面側周縁部分に密着し、これによりカーペットクランプ10が車体に係止される構成となっている。
【0036】
以下に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
上記構成のカーペットクランプ10では、本体18にはクランプ片20が連続して一体に形成されており、このクランプ片20によって嵌入部22が構成されている。カーペットクランプ10によってワイヤーハーネスW及びカーペットKを保持する際には、先ず、図2に示す如く、クランプ片20の舌部25の係止孔29と本体18の側壁14の係止爪31との嵌合を解除してクランプ片20が開放した状態とする。さらに、車両のカーペットK(図5参照)に設けられた透孔Lを本体18の側壁14に嵌まり込ませてカーペットKをカーペットクランプ10に係止する。さらに、再び係止孔29に係止爪31を嵌合させてクランプ片20を本体18に一体に連結保持させる。
【0038】
次いで、クランプ片20の嵌入部22にワイヤーハーネスWを差し込む。嵌入部22にワイヤーハーネスWが差し込まれると共に、嵌入部22に入り込んだワイヤーハーネスWはその上縁部からクランプ片20(舌部24及び舌部25)によって挟み込まれてクランプされる。
【0039】
さらに、カーペットクランプ10の軸部34が車体の係止孔42に差し込まれることで、差込み係止片38が係止孔42の裏面側周縁部分に引っ掛かり、これによりカーペットクランプ10と共にワイヤーハーネスW及びカーペットKが車体に保持される。
【0040】
なお、前述した組み付け手順は、相互に前後入れ替えて作業することもできる。すなわち、カーペットクランプ10を車体に保持し、しかる後にカーペットKやワイヤーハーネスWをカーペットクランプ10に保持させるようにしてもよい。
【0041】
ここで、本実施形態に係るカーペットクランプ10では、嵌入部22に入り込んだワイヤーハーネスWを挟み込むクランプ片20は、その舌部24が、弾性変形することでワイヤーハーネスWの挟持位置をこのワイヤーハーネスWの嵌入方向に沿って変更可能である。しかも、この舌部24には、断面V字状に形成された溝部27が設けられており、樹脂成形された舌部24は成形過程において撓み変形が促進されて、当該溝部27を設けない場合に比べてより一層付勢力を発揮するように構成されている。このため、クランプ片20の舌部24は、底壁12の方向(すなわち、舌部24によるワイヤーハーネスWの当接挟持位置がこのワイヤーハーネスWの嵌入方向奥側となる方向)への付勢力(撓み変形力)が促進された構成となっているため、異なる径寸法のワイヤーハーネスWに対応することができる。
【0042】
すなわち、保持するワイヤーハーネスWの径寸法に違いがあっても、この寸法差をクランプ片20の舌部24が弾性変形することで吸収することができ、大きな径寸法のワイヤーハーネスWでも小さな径寸法のワイヤーハーネスWでも何れも当該ワイヤーハーネスWを保持することができる。
【0043】
例えば、図4には、異なる径寸法のワイヤーハーネスWを保持したカーペットクランプ10が示されており、左方側には大径(φ24)のワイヤーハーネスWAを保持した状態で示され、右方側には小径(φ21)のワイヤーハーネスWBを保持した状態で示されている。
【0044】
この図4にて明らかな如く、保持するワイヤーハーネスWの径寸法に違いがあっても、この寸法差をクランプ片20の舌部24が弾性変形することで吸収することで確実に保持することができ、何れの場合にも対応することができる。
【0045】
このため、保持するワイヤーハーネスWの大きさ(径寸法)の違いにより異なる車種毎に別々の種類のカーペットクランプ10を設定する必要がなくなり、カーペットクランプ10を異なる車種毎に共通して適用することができ、適用の範囲が拡大する。
【0046】
またさらに、図4に示す如く、保持するワイヤーハーネスWの径寸法が小さい場合(φ21)には、溝部27が設けられて撓み変形が促進されたクランプ片20の舌部24が、ワイヤーハーネスWの嵌入方向奥側となる方向へ弾性変形して挟持位置を変更するため、この小径のワイヤーハーネスWに応じてカーペットクランプ10自身の実質的な外形寸法も小さくなり、保持するワイヤーハーネスWの径寸法が大きい場合(φ24)と比べて、寸法hだけ実質的な全高が低くなる。
【0047】
このため、図5に示す如く、これらのワイヤーハーネスW及びカーペットクランプ10を覆い被すように取り付けられるスカッフプレート44を、結果的に寸法hだけ低い位置に取り付けることができる(スカッフプレート44の面位置を下げることができる)。なお、図5においては、保持するワイヤーハーネスWの径寸法が大きい場合(φ24)のスカッフプレート44の取り付け位置を実線で示しており、保持するワイヤーハーネスWの径寸法が小さい場合(φ21)のスカッフプレート44の取り付け位置を二点鎖線で示してある。
【0048】
したがって、径寸法が小さい(φ21)ワイヤーハーネスWを使用する場合に、これらのワイヤーハーネスWおよびカーペットクランプ10が不要に配置スペースを侵食することが無くなり、例えば車両のドア開口部分が不要に侵食されることを防止することができる(ドア開口部分を広げることができる)。これにより、乗員の乗降性が大幅に向上し、乗員は乗り降りし易くなる。
【0049】
またさらに、このカーペットクランプ10では、樹脂成形されるクランプ片20の一方の舌部24の内周面に溝部27を設ける簡単な構成であるため、部品点数やコストあるいは重量が増加することなく容易に実現可能である。
【0050】
以上の如く、本実施形態に係るカーペットクランプ10では、異なる径寸法のワイヤーハーネスWに対応することができて適用の範囲が拡大し、しかも、保持するワイヤーハーネスWの径寸法が小さい場合には、自身の実質的な外形寸法も小さくすることができ(全高を低くすることができ)配置スペースの有効利用を図ることが可能になり、しかも、簡単な構成により実現することができる。
【0051】
なお、前述した実施形態においては、付勢力発揮手段として、樹脂成形されるクランプ片20の一方の舌部24の内周面に溝部27を設けた構成を説明したが、この溝部27の形状や大きさは、クランプ片20に付与する付勢力の強さに応じて、すなわち嵌入部22に嵌入するワイヤーハーネスWの径寸法や形状に応じて適宜設定することができる。
【0052】
また、前述した実施形態においては、付勢力発揮手段として、クランプ片20の舌部24の内周面に溝部27を成形した構成を説明したが、付勢力発揮手段としてはこれに限らず、クランプ片20の舌部24を嵌入部22の奥側方向(底壁12の方向)へ付勢するものであれば他の構成であってもよい。例えば、クランプ片20の舌部24と本体18の側壁16との間に介在する板バネ等であってもよい。この場合であっても、前述した実施形態に係るカーペットクランプ10と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
さらに、前述した実施形態においては、被挟持物としてワイヤーハーネスWを適用した例を説明したが、カーペットクランプ10が挟持して保持する被挟持物としてはこれに限らず、例えばケーブルやパイプ等の長尺体であっても適用可能である。
【0054】
またさらに、前述した実施形態においては、カーペットクランプ10がフロントドア開口部に配索されたワイヤーハーネスWを保持する例を説明したが、カーペットクランプ10が適用される箇所としてはこれに限らず、他の部位であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 カーペットクランプ
12 底壁
14 側壁
16 側壁
18 本体
20 クランプ片
22 嵌入部
24 舌部
25 舌部
26 連結ヒンジ部
27 溝部(付勢力発揮手段)
42 係止孔
44 スカッフプレート
W ワイヤーハーネス(被挟持物)
K カーペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される本体と、
前記本体に連続して一体に形成され、弾性を有すると共に互いに対向し合って舌状に延出する一対の舌部を有し、前記一対の舌部によって一側が開放し被挟持物が嵌入可能な嵌入部が設けられ、前記嵌入部に入り込んだ前記被挟持物を前記一対の舌部によって挟持すると共に、前記一方の舌部が弾性変形することで前記挟持位置を前記被挟持物の嵌入方向に沿って変更可能なクランプ片と、
前記クランプ片の前記一方の舌部に設けられ、前記一方の舌部による前記挟持位置が前記被挟持物の嵌入方向奥側となる方向へ前記一方の舌部に付勢力を発揮させる付勢力発揮手段と、
を備えたことを特徴とするカーペットクランプ。
【請求項2】
前記クランプ片の少なくとも前記一方の舌部は、樹脂材によって成形され、
前記付勢力発揮手段は、前記一方の舌部の前記嵌入部側の内周面に設けられ、前記被挟持物の嵌入方向奥側となる方向への前記一方の舌部の撓み変形を促進する溝部とされる、
ことを特徴とする請求項1記載のカーペットクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230593(P2011−230593A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101008(P2010−101008)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】