説明

カーペット用基布

【課題】本発明は、カーペットとしての風合いを満足させながら、カーペット表面に触れたときに冷やりとした涼しさを感じることができるカーペット用基布を提供する。
【解決手段】相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着した不織布と、織基布とが、好ましくはニードリングにより絡ませられ積層一体化することで、カーペットとしての風合いを満足させながら、優れた涼感効果を発揮するカーペット用基布とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タフテッドカーペットに用いられる基布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タフテッドカーペット用の基布として、ポリプロピレン等のフラットヤーンからなる織基布が用いられ、該基布にタフティング機によってパイルを植設したカーペット表皮層の裏面に、樹脂又はゴムラテックスを塗布した接着剤層によりパイル糸と基布を固着したタフテッドカーペットはよく知られている。
【0003】
また、出願人は特許文献1において、夏用のカーペットとして、パイル糸と基布からなる表皮層と、バッキング層とを含むカーペットの基布の表面とパイル糸に相転移材料を封入したマイクロカプセル及び尿素系吸湿剤を固着したカーペットを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−222769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このカーペットはカーペット表面に触れたときに冷やりとした涼しさを感じることができるものの、基布としてポリエステル繊維やポリプロピレン繊維、麻、綿等の天然繊維からなる織基布、編基布、不織布等通常使用される基布であって、汎用性があるものの、カーペットとしての風合いを満足させながら、さらに涼感効果を向上させるには限度があった。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、カーペットとしての風合いを満足させながら、カーペット表面に触れたときに冷やりとした涼しさを感じることができるカーペット用基布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着した不織布と、織基布とが積層一体化されていることに特徴のあるカーペット用基布。
【0009】
[2]前記不織布と前記織基布とがニードリングにより絡ませられ積層一体化されている前項1に記載のカーペット用基布。
【0010】
[3]前記不織布の目付量が10〜200g/mである前項1または2に記載のカーペット用基布。
【0011】
[4]前記相転移材料の融点が20〜35℃である前項1〜3のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【0012】
[5]前記吸湿剤は、ポリエーテルポリオール型ウレタン樹脂、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、スクワラン、シルクプロテイン、キシリトール、エリスリトール、コラーゲンのうち少なくとも1種を含有する吸湿剤である前項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【0013】
[6]前記マイクロカプセルには、相転移材料の融点が20〜35℃の範囲のうちの二種類以上の融点を持つ相転移材料が封入された前項1〜5のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【0014】
[7]前記相転移材料を封入したマイクロカプセルが、少なくとも10〜500g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着している前項1〜6のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【0015】
[8]前記吸湿剤が、少なくとも10〜250g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着している前項1〜7のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【0016】
[9]前項1〜8のいずれか1項に記載のカーペット用基布にパイルを植設したカーペット表皮層を用いたことに特徴のあるカーペット。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、織基布と積層一体化不織布に、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着しているので、カーペットとしての風合いを満足させながら、優れた涼感効果を発揮するカーペット用基布とすることができる。
【0018】
[2]の発明では、前記不織布と前記織基布とがニードリングにより絡ませられ積層一体化されているので、重量の増加をまねくことのないカーペット用基布とすることができる。
【0019】
[3]の発明では、前記不織布の目付量が10〜200g/mであるので、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤を不織布に十分固着させることができる。
【0020】
[4]の発明では、前記相転移材料の融点が20〜35℃であるので、相転移材料が融解し融解熱の移動がおこり、カーペット用基布の周辺の熱を奪うことができる。
【0021】
[5]の発明では、前記吸湿剤は、ポリエーテルポリオール型ウレタン樹脂、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、スクワラン、シルクプロテイン、キシリトール、エリスリトール、コラーゲンのうち少なくとも1種を含有する吸湿剤であるので、吸湿剤の作用により吸収された水分に熱が伝導し、カーペット用基布の周辺の熱を奪うことができる。また、相転移材料を封入したメラミン樹脂製のマイクロカプセルから放出される遊離ホルマリンを低減することができる。
【0022】
[6]の発明では、前記マイクロカプセルには、相転移材料の融点が20〜35℃の範囲のうちの二種類以上の融点を持つ相転移材料が封入されているので、気温が一つの相転移材料の融点に達したとしても、他の融点を持つ相転移材料が融解しないで残っているので、さらにカーペット用基布の周辺の熱を奪うことができる。
【0023】
[7]の発明では、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルが、少なくとも10〜500g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着しているので、十分に涼感効果のあるカーペット用基布とすることができる。
【0024】
[8]の発明では、前記吸湿剤が、少なくとも10〜250g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着しているので、吸湿剤の作用により吸収された水分に人体の熱が伝導し、相転移材料を封入したマイクロカプセルの吸熱作用との効果と相俟って、格段に優れる涼感効果を得ることができる。また、相転移材料を封入したメラミン樹脂製のマイクロカプセルから放出する遊離ホルマリンを十分低減することができる。
【0025】
[9]の発明では、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着した不織布と、織基布とが積層一体化された、優れた涼感効果を発揮するカーペット用基布にパイルを植設したカーペット、すなわち涼感カーペットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態に係るカーペット用基布を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るカーペット用基布の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように不織布4の下側に、経糸5−1と横糸5−2で織られた織基布5とが積層一体化されている。不織布4には相転移材料を封入したマイクロカプセル2と吸湿剤3とがバインダー樹脂(図示せず)により固着されている。
【0028】
本発明におけるマイクロカプセル2に封入される相転移材料としては、固相と液相との間で反復転換する材料で、融解、凝固するときに発現する熱を利用して、熱を蓄積、あるいは放出させて、相転移材料周辺の温度を制御するものである。相転移材料としては、パラフィンやワックス等の炭化水素化合物が好適に使用されるが特に限定しない。該相転移材料を封入したマイクロカプセル2は市販されており、大和化学工業株式会社製プレサーモ、三木理研工業株式会社製蓄熱蓄冷マイクロカプセル等を挙げることができ、マイクロカプセル2の組成としても、特に限定されなくて、一般に市販されているものでよい。
【0029】
本発明で使用する相転移材料を封入したマイクロカプセル2は、熱吸収のピーク温度(融点ともいう)または熱放散のピーク温度(凝固点ともいう)が20〜35℃の範囲内であるものが好ましい。人の体温は、36〜37℃であるが、手や足の表面温度はこれよりも低く32〜34℃といわれているので、20〜35℃で熱吸収のピーク温度(融点)となる相転移材料が好ましい。より好ましいピーク温度(融点)は、25〜32℃である。
【0030】
熱吸収のピーク温度が低すぎる場合では、人体が接触する前に既に相転移材料が溶けてしまっており、人体が接触しても涼感効果を得ることはできない。また、熱吸収のピーク温度が高すぎる場合には、人体が接触しても、相転移材料が溶けないため、涼感効果を得ることはできない。
【0031】
本発明における吸湿剤3としては、ポリエーテルポリオール型ウレタン樹脂、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、スクワラン、シルクプロテイン、キシリトール、エリスリトール、コラーゲンのいずれであってもよく、相転移材料を封入したメラミン樹脂製のマイクロカプセル2から放出する遊離ホルマリンを低減することができるとともに、吸湿作用により吸収された水分に人体の熱が伝導し、相転移材料を封入したマイクロカプセル2の吸熱作用との効果と相俟って、格段に優れる涼感効果を得ることができる。
【0032】
バインダー樹脂としては不織布4に相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3を強固に固着することが出来ればよいが、一般的には、例えばウレタン樹脂、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、シリコン樹脂、グリオキザール樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(SBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレート共重合体樹脂等を挙げることができる。
【0033】
本発明における不織布4としては、特に限定されることなくどのようなものも使用でき、例えばサーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ウォーターニードル不織布、スパンボンド不織布などが用いられ、不織布の素材は、特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは、麻、綿、羊毛等の天然繊維等の繊維から構成されるが、中でも、ポリエステル繊維ニードルパンチ不織布が好ましい。
【0034】
前記不織布4の目付量は、10〜200g/mであるのが好ましい。10g/m未満では、相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量を確保するのが難しくなるので、十分な涼感効果が得られなくなる。200g/mを超えると硬くなり、タフトすることが難しくなるおそれがあり、またコスト的にも好ましくない。
【0035】
本発明における織基布5としての素材は、どのようなものでもよく、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の熱可塑性繊維、またこれら各繊維の複合化繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、麻、綿等の天然繊維、あるいはこれらの混綿したものが挙げられるが、経糸としてはポリエステル系繊維やポリプロピレン系繊維のテープヤーン(透明)が一般に多く使われていて好ましい。また、横糸として、綿は、吸水性があり、夏向けの薄いカーペットとして好適で、本発明のように涼感効果の向上したカーペットとすることができるカーペット用基布の横糸の素材としては好ましいものである。前記織基布5の目付量は、50〜100g/mであるのが好ましい。
【0036】
不織布4と織基布5との積層一体化するには、ニードリングにより絡ませる方法、合成樹脂又はゴムラテックスで張り合わす方法等のいずれの方法でもよいが、軟らかさ、コスト及び軽量である点からニードリングにより絡ませる方法が好ましい。
【0037】
前記合成樹脂又はゴムラテックスで張り合わす方法は、ロールコーター法、スプレー法等公知の方法で合成樹脂又はゴムラテックスを塗布し張り合わして乾燥すればよく、特に限定するものではないが、タフティング機のニードルの貫通抵抗を極力少なくするように、合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量としては50〜400g/m塗布するのが好ましい。(なお、本発明において合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量は、Wet重量で固形分は50質量%である。)
【0038】
前記合成樹脂又はゴムラテックスとしては、特に限定されないが、例えば合成樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂が挙げられる。ゴムラテックスのゴム成分としてはSBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【0039】
前記ニードリングにより絡ませる方法は、不織布4と織基布5とを重ねて、かぎのついた多数のニードルで不織布4の側から突きさし、繊維を絡ませて不織布4と織基布5とを積層一体かすればよい。この方法によれば、上述の合成樹脂又はゴムラテックス等を使用することがなく、不織布4と織基布5とを積層一体できるので、重量の増加を抑えたカーペット用基布1とすることができるので好ましい。
【0040】
室温の高い部屋で本発明のカーペット用基布1にパイルを植設したカーペットを使用する場合は、二種類以上の融点をもつ相転移材料が有効である。例えば、融点が25℃と32℃の二種類の融点をもつ相転移材料を封入したマイクロカプセル2をカーペット用基布1に固着させた場合、夏の日の朝の室温が20℃のときは、融点25℃の相転移材料が有効に働き涼感効果を得ることができる。午後になって室温が上昇し、30℃となった場合は、融点の低い相転移材料は、既に溶けてしまっており、32℃の融点をもつ相転移材料の効果しか得ることができない。25℃の融点をもつ相転移材料で全てを構成した場合、午前中は、涼感を感じられるが、午後は全く感じられない状況となる。また、32℃の融点をもつ相転移材料で全てを構成した場合は、室温と融点の温度差が大きく、ほとんど涼感効果が得られないが、室温と融点の温度差が小さくなる午後には涼感を感じられるようになる。
【0041】
相転移材料を封入したマイクロカプセル2は、少なくとも10〜500g/mバインダー樹脂に不織布4に固着されるのが好ましい。10g/mを下回ると涼感効果を感じられない。また、500g/mを超えて固着しても、不織布4の風合が硬くなるばかりでなく、徒に材料コストが上昇するので好ましくない。より好ましくは、25〜200g/mの固着量がよい。
【0042】
また相転移材料を封入したマイクロカプセル2の粒径は1〜50μmが好ましい。50μmを超えると、ザラツキ感や硬さが発現し好ましい風合にならない。更に好ましい粒径は、5〜25μmである。
【0043】
吸湿剤3は、少なくとも10〜250g/mバインダー樹脂によって不織布4に固着されるのが好ましい。10g/mを下回ると十分な涼感効果を得られなくなり、250g/mを超えて固着させても、不織布4の風合が硬くなるばかりでなく、徒に材料コストが上昇するので好ましくない。より好ましくは、10〜100g/mの固着量がよい。
【0044】
不織布4に相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3を固着する方法は、バインダー樹脂溶液に浸透剤、相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3等を均一に分散させ、スプレー法やコーティング法など従来からある方法で不織布4の上側から塗布するか、従来法の浸漬法で不織布4全体に付与し、乾燥処理して不織布4に固着する。この時、浸透剤を混入しないと不織布4の表面に処理液が留まってしまうことから、浸透剤を適度に使用することが好ましい。バインダー樹脂の乾燥手段は、加熱処理により乾燥させる方が望ましく、この時の加熱処理温度は、不織布4の素材や規格にもよるが、100〜180℃とするのが好ましい。この温度での加熱処理により不織布4への固着性がより高まり、耐久性が一段と向上する。
【0045】
また、前記相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3と浸透剤とバインダー樹脂とは、水に分散した水分散液として使用することができる。バインダー樹脂については水との間でエマルジョン状態を形成させるのがより好ましい。なお、分散媒としては、水以外にアルコール等も使用し得るが、水が好適である。水に分散させる順序としては、相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3を水に分散させておいてから、浸透剤、バインダー樹脂を分散せしめるのが、相転移材料を封入したマイクロカプセル2及び吸湿剤3とバインダー樹脂をより均一に分散させる観点から好ましい。また、この水分散液に、分散剤、増粘剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0046】
Qmaxは、一定面積、一定質量の純銅板(熱容量0.41855j/℃)に熱を蓄え、これが試料表面に接触した直後に、蓄えられた熱量が低温側の試料物体に移動する熱量のピーク値を測定した値をいうもので、Qmaxが大きいほど接触したときに冷たく感じ、小さいほど温かく感じる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明の実施例として使用したカーペット用基布の材質、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤の種類、涼感性能測定試験および判定方法は次の通りである。なお、基布への固着量及び、判定結果を表1に示す。
【0048】
<使用材料>
基布・・・目付100g/mポリプロピレンテープヤーン織布(14×13)に目付80g/mポリエステル不織布をニードリングにより積層一体化
相転移材料を封入したマイクロカプセル・・・プレサーモ(大和化学工業株式会社製)融点25℃と融点31℃の二種類
吸湿剤・・・ポリエーテルポリオール型ウレタン樹脂
浸透剤・・・「ペレックスOT−P」(花王株式会社製)
【0049】
<涼感性能測定試験>
Qmax・・・カトーテック株式会社製THERMO LABO II TYPEを用い、純銅板の初期温度36℃、接触圧0.98kPaで測定した。基布温度28℃で、Qmaxが0.105j/cm・secより大きいものを合格とした。但し基布は、予め3.92MPa、温度60℃で2分間プレスを行い、基布表面を整え、測定環境に2時間以上放置してから測定を行った。
官能評価・・・相転移材料を封入したマイクロカプセルを固着していない基布を基準に冷たいと感じるかどうかを一対比較法で評価し、被験者数を10人とし、80%以上の人が冷たいと感じたものを合格で「○」とし、それ以外を不合格で「×」とした。(気温20℃湿度65%の標準室内にて評価)
【0050】
<実施例1>
水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を60重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を30重量部分散した水溶液をスプレーにて基布の不織布側から250g/m塗布し、120℃、10分間乾燥処理して、基布の不織布に相転移材料を封入したマイクロカプセルを100g/m及び吸湿剤を50g/m固着したカーペット用基布を得た。涼感性能測定試験でQmaxは0.112j/cm・secで、官能評価においては9人の人が冷たいと感じていた。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を60重量部と相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点31℃、固形分40%)を30重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を30重量部分散した水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は150g/m、吸湿剤の固着量は50g/mであった。Qmaxは0.12j/cm・secで、官能評価においては9人の人が冷たいと感じていた。
【0052】
<実施例3>
実施例2において、目付100g/mポリプロピレンテープヤーン織布(14×13)に、ロールコーターを用いてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を50g/m塗布した後、目付80g/mポリエステル不織布を張り合わせて、120℃で10分乾燥し、積層一体化した基布を用いた以外は実施例2と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は150g/m、吸湿剤の固着量は50g/mであった。Qmaxは0.118j/cm・secで、官能評価においては9人の人が冷たいと感じていた。
【0053】
<実施例4>
実施例2において、目付100g/mの綿の織布(14×13)を用いた以外は実施例2と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は150g/m、吸湿剤の固着量は50g/mであった。Qmaxは0.118j/cm・secで、官能評価においては9人の人が冷たいと感じていた。
【0054】
<実施例5>
実施例4において、目付80g/mポリプロピレン不織布を用いた以外は実施例4と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は150g/m、吸湿剤の固着量は50g/mであった。Qmaxは0.118j/cm・secで、官能評価においては9人の人が冷たいと感じていた。
【0055】
<実施例6>
実施例2において、目付30g/mポリエステル不織布を用い、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を24重量部と相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点31℃、固形分40%)を12重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を12重量部分散した水溶液を用いた以外は実施例2と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は60g/m、吸湿剤の固着量は20g/mであった。Qmaxは0.11j/cm・secで、官能評価においては8人の人が冷たいと感じていた。
【0056】
<実施例7>
実施例2において、目付120g/mポリエステル不織布を用い、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を120重量部と相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点31℃、固形分40%)を60重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を60重量部分散した水溶液を用いた以外は実施例2と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は300g/m、吸湿剤の固着量は100g/mであった。Qmaxは0.125j/cm・secで、官能評価においては10人の人が冷たいと感じていた。
【0057】
<実施例8>
実施例2において、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を12重量部と相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点31℃、固形分40%)を24重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を18重量部分散した水溶液を用いた以外は実施例2と同様にしてカーペット用基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は60g/m、吸湿剤の固着量は30g/mであった。Qmaxは0.108j/cm・secで、比較例1との官能評価においては8人の人が冷たいと感じていた。
【0058】
<比較例1>
目付100g/mポリプロピレンテープヤーン織布(14×13)を用意した(不織布は積層されていない)。相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤を固着させなかった。Qmaxは0.08j/cm・secであった。なお、比較例1を官能評価の基準とした。
【0059】
<比較例2>
実施例1において、不織布を積層していない目付100g/mの綿の織布(14×13)を用いて、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液(パラフィン封入、融点25℃、固形分40%)を6重量部分散させておいてから、浸透剤を0.5重量部、バインダー樹脂を10重量部及び吸湿剤を3重量部分散した水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は10g/m、吸湿剤の固着量は5g/mであった。Qmaxは0.085j/cm・secで、官能評価においては3人の人が冷たいと感じていた。
【0060】
<比較例3>
実施例1において、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤を固着させる前の基布を用意した。Qmaxは0.075j/cm・secで、官能評価において誰も冷たいと感じなかった。
【0061】
<比較例4>
実施例1において、水1重量部に吸湿剤を分散させなかった以外は、実施例1と同様にして基布を得た。相転移材料を封入したマイクロカプセルの固着量は100g/mであった。Qmaxは0.1j/cm・secで、官能評価においては6人の人が冷たいと感じていた。
【0062】
<比較例5>
実施例1において、水1重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセルを分散させなかった以外は、実施例1と同様にして基布を得た。吸湿剤の固着量は50g/mであった。Qmaxは0.095j/cm・secで、官能評価においては5人の人が冷たいと感じていた。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によるカーペット用基布は、優れた涼感効果を発揮するので、例えば、夏用のカーペットに好適な基布として用いられる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・カーペット用基布
2・・・相転移材料を封入したマイクロカプセル
3・・・吸湿剤
4・・・不織布
5・・・織基布
5−1・・・経糸
5−2・・・横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着した不織布と、織基布とが積層一体化されていることに特徴のあるカーペット用基布。
【請求項2】
前記不織布と前記織基布とがニードリングにより絡ませられ積層一体化されている請求項1に記載のカーペット用基布。
【請求項3】
前記不織布の目付量が10〜200g/mである請求項1または2に記載のカーペット用基布。
【請求項4】
前記相転移材料の融点が20〜35℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【請求項5】
前記吸湿剤は、ポリエーテルポリオール型ウレタン樹脂、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、スクワラン、シルクプロテイン、キシリトール、エリスリトール、コラーゲンのうち少なくとも1種を含有する吸湿剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【請求項6】
前記マイクロカプセルには、相転移材料の融点が20〜35℃の範囲のうちの二種類以上の融点を持つ相転移材料が封入された請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【請求項7】
前記相転移材料を封入したマイクロカプセルが、少なくとも10〜500g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着している請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【請求項8】
前記吸湿剤が、少なくとも10〜250g/mバインダー樹脂によって前記不織布に固着している請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーペット用基布。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーペット用基布にパイルを植設したカーペット表皮層を用いたことに特徴のある涼感カーペット。

【図1】
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【公開番号】特開2013−78392(P2013−78392A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218611(P2011−218611)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】