説明

カーペット

【課題】環境負荷が低く弾性回復性やバルキー性に優れたポリトリメチレンテレフタレートを用い、かつ均一性にも優れたカーペットを提供する。
【解決手段】ポリトリメチレンテレフタレートからなる分率60〜80質量%の鞘成分とポリメチレンテレフタレート以外のポリエステルからなる分率20〜40質量%の芯成分とからなり、横断面の異形度が3.0以下である芯鞘複合繊維を含んで構成される捲縮率5〜35%の捲縮糸を含んでなることを特徴とするカーペット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されており、地球規模にて環境に対する意識が高まりつつある。このような背景において、環境負荷の低い材料からなるカーペットが要望されている。
【0003】
環境負荷の低い材料のなかでもポリトリメチレンテレフタレート(PTT)は、弾性回復率、バルキー性に優れており注目されている。例えば特許文献1には、PTTを用いたカーペットが開示されている。しかし、当該技術では、パイル糸に糸斑が発生して均一性をもったカーペットを製造することが困難であった。 一方、PTTの遅延回復を抑える方法として、芯鞘複合繊維とすることが開示されている(特許文献2)。しかしながら、当該芯鞘複合繊維糸をカーペットに適用しようとすると、ボリューム感(バルキー性)のないカーペットになってしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2000−328393号公報
【特許文献2】特開2005−281891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、環境負荷が低く弾性回復性やバルキー性に優れたポリトリメチレンテレフタレートを用い、かつ均一性にも優れたカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートからなる分率60〜80質量%の鞘成分とポリメチレンテレフタレート以外のポリエステルから分率20〜40質量%の芯成分とからなり、横断面の異形度が3.0以下である芯鞘複合繊維を含んで構成される捲縮率5〜35%の捲縮糸を含んでなることを特徴とするカーペットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境負荷が低く弾性回復性やバルキー性に優れたポリトリメチレンテレフタレートを用い、かつ均一性にも優れたカーペットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のカーペットは、その捲縮糸にポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を芯鞘複合繊維の鞘成分として含むことが必要である。そうすることで、環境負荷が低く弾性回復性やバルキー性に優れたカーペットを得ることができる。またPTTは耐摩耗性、耐湿熱老化性にも優れるため、鞘成分に適している。
【0008】
PTTとは、1,3−トリメチレングリコール成分と、テレフタル酸成分から構成される繰り返し単位(トリメチレンテレフタレート単位)を含むポリエステルであり、グリコール成分に炭素数3個のメチレン鎖を有することにより、伸長変形に対して結晶構造自身が伸縮するという特徴を有する。そのため、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)と比べても、極めてモジュラスが低く、弾性回復性が高い特徴を持つ。またPETと対比して、湿熱処理や、アルカリ処理などによる耐久性(強度保持率)は2〜4倍であり、芯鞘複合繊維の鞘成分として好適である。
【0009】
トリメチレンテレフタレート単位を構成する1,3−トリメチレングリコールとしては、バイオマス材料由来のものであることが、低環境負荷の点から好ましい。
【0010】
PTTは、トリメチレンテレフタレート単位以外に、他の成分を共重合していてもよいが、PTTの特徴を活かす上では、トリメチレンテレフタレート単位が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0011】
PTTに共重合される成分として、ジカルボン酸成分としては例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’ジフェニルジカルボン酸、4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分や、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分等を用いることができる。
また、グリコール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。
これらの共重合成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
また、芯鞘複合繊維の鞘成分は、目的に応じて、他のポリマー、粒子、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の添加物を含有していてもよい。
【0013】
芯鞘複合繊維の鞘成分におけるPTTの含有量としては、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0014】
また、PTTには通常、2つのトリメチレンテレフタレートが環状に連結されたダイマー(以下、「環状ダイマー」と記載する。)が存在しうるが、PTT中の環状ダイマーの含有量としては3質量%以下が好ましく、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。PTT中の環状ダイマーの含有量を3質量%以下に抑えることにより、PTTの耐加水分解性を向上させることができる。環状ダイマーと加水分解性との関係としては、環状ダイマーが加水分解によりトリメチレンテレフタレートモノマーとなり、当該モノマーによる触媒作用により、加水分解が促進されるものであると推測している。
【0015】
PTTの固有粘度としては、0.8〜2dl/gが好ましく、より好ましくは1〜1.8dl/g、さらに好ましくは1.2〜1.6dl/gである。0.8dl/g以上とすることで、PTTの分子配向が向上し、捲縮糸の弾性回復性、および弾性回復の堅牢度が向上する。一方、2dl/g以下とすることで、溶融紡糸時の急激な分子量低下を抑え、ポリマーの溶融流動の不安定化による複合紡糸の不安定化等を抑えることができる。
【0016】
本発明のカーペットは、その捲縮糸にPTT以外のポリエステルを芯鞘複合繊維の芯成分として含むことが必要である。そうすることで、PTTを含む捲縮糸の遅延回復を抑え、均一性に優れたカーペットを得ることができる。
【0017】
ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とから構成される。
芯成分に用いるPTT以外のポリエステルのジカルボン酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’ジフェニルジカルボン酸、4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分や、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分等を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、1種類を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また、グリコール成分としては例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,2−トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。これらのグリコール成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ただし、結晶性が高く、寸法安定性の高いポリエステルほど遅延回復性を抑え易いことから、芯成分のPTT以外のポリエステルの90モル%以上が、1種類のジカルボン酸成分と、1種類のグリコール成分とからなる繰り返し単位で構成されることが好ましく、92モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
芯成分に用いるPTT以外のポリエステルの具体例としては、PET、またはポリ乳酸が、捲縮糸の遅延回復を抑え、均一性に優れたカーペットを得る上で好ましい。
【0019】
芯成分に用いるPETとしては、エチレンテレフタレート単位以外に、他の成分を共重合していることも好ましい。エチレンテレフタレート単位のみからなるPETの融点は254℃とPTTの融点(230℃)よりも高く、PTTとの安定した複合紡糸や複合繊維の形成を達成する上で、PTTの溶融温度領域におけるPETの流動性を高めるためである。かかる共重合成分としては例えば、イソフタル酸やビスフェノールA等を挙げることができる。共重合量としては、PETの流動性を高める上では、0.1モル%以上であることが好ましい。一方、PTTの遅延回復を抑える上では、10モル%以下とすることが好ましい。
【0020】
PETの固有粘度としては、0.4〜0.6dl/gが好ましく、より好ましくは0.43〜0.56dl/g、さらに好ましくは0.46〜0.53dl/gである。0.6dl/g以下とすることで、PTTとの安定した複合紡糸や複合繊維の形成を達成することができる。一方、0.4dl/g以上とすることで、耐熱性、強度、耐加水分解性等を維持することができる。
【0021】
ポリ乳酸は、−(O−CHCH−CO)−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものである。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するが、そのいずれにしても、ポリ乳酸の光学純度が高いほどポリ乳酸の結晶性を高め、融点すなわち耐熱性を向上させるとともにPTTを含む捲縮糸の遅延回復を抑えることができ好ましい。ポリ乳酸の光学純度としては、90%以上が好ましく、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。ポリ乳酸の融点としては、繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましいが、光学純度90%で融点を約150℃、光学純度93%で融点を約160℃、光学純度97%で融点を約170℃とすることができる。
【0022】
また、ポリ(L乳酸)とポリ(D乳酸)とをブレンドして繊維の芯成分として成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、結晶性を高め、融点を220〜230℃にまで高めることができ、好ましい。この場合のポリ(L乳酸)とポリ(D乳酸)とのブレンド比としては、40/60〜60/40が、ステレオコンプレックス結晶の比率を高めることができ好ましい。
【0023】
また、ポリ乳酸は、乳酸以外の成分を共重合していてもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。なかでも、ポリアルキレンエーテルグリコールが溶融温度領域での流動性をコントロールすることができ好ましい。共重合量としては、PETの流動性を高める上では、0.1モル%以上であることが好ましい。一方、PTTの遅延回復を抑える上では、10モル%以下とすることが好ましい。
【0024】
また、ポリ乳酸中には通常、ラクチド等の低分子量残留物が存在しうるが、ポリ乳酸中の低分子量残留物の量としては1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。ポリ乳酸中の低分子量残留物量を抑えることにより、加水分解を抑え、耐久性を向上させることができる。ポリ乳酸中の低分子量残留物量を低減させる方法としては、重合方法として固相重合を採用することや、ペレットを80℃程度の温水で洗浄することが挙げられる。
【0025】
ポリ乳酸の重量平均分子量としては、PTTとの安定した複合紡糸の点から、10万〜27万が好ましく、より好ましくは12万〜26万、さらに好ましくは14万〜25万、さらに好ましくは16万〜24万である。
【0026】
ポリ乳酸は、粒子、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、架橋剤等の改質剤を含有していてもよい。
【0027】
芯鞘複合繊維におけるPTTからなる鞘成分の分率としては、60質量%以上とすることが重要であり、好ましくは62質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。60質量%以上とすることで、低モジュラス性、弾性回復性、高バルキー性、耐加水分解性といったPTTの特徴を芯鞘複合繊維にも発現させることができる。また、PTTからなる鞘成分とPTT以外のポリエステルからなる芯成分との複合構造を安定して形成することができる。
【0028】
一方、芯鞘複合繊維におけるPTT以外のポリエステルからなる芯成分の分率としては、20質量%以上とすることが重要であり、好ましくは22質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。
20質量%以上とすることで、PTTを含む捲縮糸の遅延回復を抑え、ひいては均一性に優れたカーペットを得ることができる。
【0029】
芯鞘複合の構造としては、単芯構造でもよいし、2芯、3芯といった多芯構造でもよい。
【0030】
芯鞘複合繊維における、残存モノマー及び残存オリゴマーの分も含めた、カルボキシル末端濃度としては、30当量/tonが好ましく、好ましくは20当量/ton以下、より好ましくは10当量/ton以下である。20当量/ton以下とすることで、耐熱性および耐加水分解性を向上させることができる。
【0031】
カルボキシル末端基濃度を抑える方法としては、繊維を構成する成分に、活性水素反応性基等のカルボキシル末端基との反応性に富んだ反応性基を有する末端封鎖剤を含有させる方法が有効である。また、例えば一分子中に二個以上の活性水素反応性基を有する末端封鎖剤を添加することで、当該末端封鎖剤が鞘成分のカルボキシル末端基および芯成分のカルボキシル末端基と反応して結合し、芯鞘複合界面の接着性をさらに向上させることもできる。
【0032】
活性水素反応性基としては例えば、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアナート基、酸無水物基(無水マレイン酸から生成する基(無水マレイン酸基)等)等を挙げることができる。上記反応性基の中でもグリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、無水マレイン酸基を好ましく用いることができ、特に、グリシジル基、カルボジイミド基を好ましく用いることができる。
【0033】
また、末端封鎖剤の具体的な例としては、トリアジン環にグリシジルユニットを二個以上有するものも、耐熱性が高いため好ましい。例えば、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MADGIC)等が好ましく用いられる。
【0034】
芯鞘複合繊維の断面形状としては、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面(三角断面、Y断面、T断面など)や四葉断面(X断面)等の多葉断面、扁平断面、W断面等を採用することが可能である。
【0035】
ただし、芯鞘複合繊維の横断面の異形度は3.0以下であることが必要であり、好ましくは2.5以下である。異形度を3.0以下とすることで、表面の平滑性に優れ、ソフトタッチで低刺激性のカーペットを得ることができる。また、耐摩耗性も向上する。一方、バルキー性を得る上では、1.1以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。ここで、異形度は、断面における内接円の径に対する外接円の径の比で表される。また外接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面を包含する円の内で直径が最小のものである。また内接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面に包含される円の内で直径が最大のものである。
【0036】
芯鞘複合繊維の単繊維繊度としては、10〜30dtexが好ましい。10dtex以上とすることで、カーペット使用時のへたりを抑えることができる。また30dtex以下とすることで、風合いが硬くなるのを抑えることができる。
【0037】
また、そして本発明のカーペットで用いる捲縮糸は、芯鞘複合繊維の単繊維繊度斑としては、CV%で5%以下であることが好ましく、より好ましくは4%以下である。CV%を5%以下に抑えることで、均染性に優れ、ソフトタッチなカーペットを得ることができる。
【0038】
本発明のカーペットは、前述のような芯鞘複合繊維を含んで構成される捲縮糸を含んでなる。捲縮を有することで、単繊維の屈曲や、単繊維同士の絡み合いによって嵩高性を得ることができる。
【0039】
捲縮糸の捲縮の種類としては、仮撚加工糸、機械捲縮糸、BCFヤーン等を採用することができる。
【0040】
捲縮糸の捲縮率としては、5%以上とすることが必要である。5%以上とすることで、バルキー性に富むカーペットを得ることができる。一方、捲縮率は35%以下とすることが好ましく、より好ましくは25%以下である。35%以下とすることで、強すぎるクリンプにより風合いがかたくなるのを防ぐことができる。また、繊維の強度低下を抑制し、工程通過性、使用耐久性に優れたカーペット製品を得ることが可能となる。
【0041】
捲縮糸の強度としては、1.0cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは1.3cN/dtex以上である。1.0cN/dtex以上とすることで、実用に供しうるレベルの強度を有するカーペットを得ることができる。一方。糸の強度は4.0cN/dtexもあれば十分である。
【0042】
捲縮糸の沸騰水収縮率としては、2〜20%が好ましく、より好ましくは3〜16%、さらに好ましくは4〜12%である。沸騰水収縮率が高いほど、染色工程や、スチーム処理などにおいて、バルキー性が発現し易くなるため好ましい。
【0043】
捲縮糸は、複数本を合糸して撚りをかけた撚糸とすることも、カーペットの意匠性、風合い、手触り等の点で良い。撚りの回数としては、50〜250回/mが好ましく、より好ましくは80〜200回/mである。かかる範囲内とすることで、タフト後の意匠性、風合い、手触り等に優れた特徴を発現する。また、撚りをかけた後に、形態を保持させる為に熱セットを施すことが好ましい。その熱セット温度としては、80〜150℃が撚糸後の糸の形態安定性を良好なものとする上で好ましい。
【0044】
捲縮糸には、染色処理を施すことも好ましい。本発明で採用する芯鞘複合繊維は均染性にも優れているため、染色処理にも好適である。染色処理を施すことにより、その湿熱処理において捲縮糸のバルキー性を十分に顕在化させることもできる。染色処理は、チーズ染色機やウインス染色機等の染色機にて、チーズ状、反物状等の捲縮糸に施すことができる。
【0045】
捲縮糸を非染色で用いる場合には、沸水処理やスチーム処理によりバルキー性を顕在化させることも好ましい。
【0046】
本発明のカーペットは、上記捲縮糸以外の繊維をパイル部に含んでいてもよい。混繊の具体的な態様としては例えば、片撚りや諸撚り、インターミングル機による混繊などを挙げることができる。ただし、弾性回復性やバルキー性を活かすために、カーペットのパイル部における上記捲縮糸の含有量としては、50質量%以上とすることが好ましい。
【0047】
カーペットの加工形態としては例えば、段通、ウイルトン、ダブルフェイス、アキスミンター等の織りカーペットや、タフティング、フックドラグ等の刺繍カーペットや、ボンデッド、電着、コード等の接着カーペット、あるいはその組み合わせを用いることができる。
【0048】
本発明のカーペットの耐摩耗性としては、JIS L 1096に規定されるテーバ形法に準じて後述のように定義される等級が3級以上(3〜5級)であることが好ましい。3級以上とすることで、自動車内装用のように特定箇所に摩擦が集中する用途にも問題なく使用することができる。
【実施例】
【0049】
[測定方法]
(1)環状ダイマーの含有量
高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
試料300mgを秤量し三角フラスコに投入し、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムとを同容積量同士均一に混合したて溶液を10ml添加した。そして室温にて三角フラスコを5時間振り混ぜて試料を溶解させた。その後クロロホルムを5ml加えて混合し、さらにアセトニトリル80mlを徐々に加えた。この混合溶液をガラスフィルターで吸引濾過し、濾液を200mlメスフラスコに入れて、アセトニトリルを加えて200mlの溶液とした。そしてこの溶液を孔径0.45μmのディスクフィルターで濾過し、測定溶液を調整した。
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製 LC−10AD)にカラム(ジーエルサイエンス社製“イナートシル”ODS−3 3.0×250mm)を設置し、カラム温度を45℃に保った。
移動相としてアセトニトリル70体積%および水30体積%の混合液を流速0.7ml/分でカラムに流し、上記測定溶液を5μl導入して、波長242nmに対する吸収ピークを測定した。得られたクロマトグラムにおける環状ダイマーに帰属するピークの面積Aを求めた。
また、標準試料として、純度95%の環状ダイマーを10.7mg秤量し、クロロホルム25mlに定容したものを標準原液とした(純度100%相当の環状ダイマーの液中濃度は409μg/ml)。そして該標準溶液にアセトニトリルを加えて、純度100%相当の環状ダイマーの液中濃度が、80μg/ml、40μg/ml、20μg/ml、10μg/mlの4種類の希釈標準溶液を作製した。そしてそれぞれの希釈標準溶液について、HPLC測定を行い、環状ダイマーの液中濃度と、ピーク面積との関係から、回帰式を得た。
そして前記試料のピークの面積Aを回帰式にあてはめて環状ダイマーの液中濃度を求め、さらに次式から環状ダイマーの含有量を算出した。
環状ダイマーの含有量(質量%)=環状ダイマーの液中濃度(mg/l)×0.2(l)/300(mg)×100 。
【0050】
(2)固有粘度
試料0.8gに、o−クロロフェノール(以下OCPと略記する)10mlを添加し、160℃、30分間で溶解した後、徐冷し測定溶液を得た。当該測定溶液について、25℃にてオストワルド粘度計を用いて、相対粘度ηを次式により求め、固有粘度を次々式により算出した。
η=η/η=(t×d)/(t×d
固有粘度=0.0242η+0.2634
ここに、η:測定溶液の粘度
η:OCPの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:OCPの落下時間(秒)
:OCPの密度(g/cm)。
【0051】
(3)ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)
試料(ポリ乳酸)濃度を10mg/4mlになるようになるようにクロロホルムに溶解し、ディスクフィルタ(東ソー社製“マイショリディスク”0.5μ)にて濾過した溶液を測定溶液とした。これをゲルパーミエイションクロマトグラフィー装置(島津製作所社製)を用いて測定した。カラムには昭和電工社製“shodex”K805を2本連結したものを用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはクロロホルム(和光社製、HPLC用)を用い、流速1mL/分にて測定した。示差屈折計には島津製作所社製RID−10Aを用い、得られたピークからポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。測定数は5回とし、その平均値を算出した。
【0052】
(4)融点
試料を約10mg秤量し、示差走査熱量測定装置(Perkin Elmer社製DSC−7)にて、昇温速度16℃/分で昇温し、2nd runで融点を測定した。
【0053】
(5)カルボキシル基末端濃度
精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。この時、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
【0054】
(6)異形度
繊維を包埋材で固定して切片を切り出し、脱包埋後、光学顕微鏡で拡大して写真撮影した。その画像をデジタル化した後、画像解析ソフト(三谷商事社 “WinROOF”ver5.0)を用い、繊維の横断面の外接円の直径Dと、単繊維の横断面の内接円の直径Dを計測した。そして次式により単繊維の異形度を求めた。マルチフィラメントを構成する全ての単繊維のうち、異形度の大きいものから10個を選択し、平均値を少数第1位まで算出した。
異形度=D/D
【0055】
(7)鞘成分、芯成分の重量分率(質量比)
溶融紡糸における鞘成分の吐出量(g/分)と、芯成分の吐出量(g/分)とを別々に計量し、芯成分/鞘成分の吐出量を、芯成分の吐出量と鞘成分の吐出量との和によって除した後、100倍することで芯成分/鞘成分の質量分率を算出した。
【0056】
また、紡糸後の繊維からの測定方法としては、芯鞘複合繊維の断面写真から、
画像解析ソフト(三谷商事社“WinROOF”ver5.0)にて鞘成分の面積A、芯成分の面積Aを求め、鞘成分の比重ρと、芯成分の比重ρを用いて、次式により算出することができる。
芯成分の分率(%)={Aρ/(Aρ+Aρ)}×100
鞘成分の分率(%)={Aρ/(Aρ+Aρ)}×100
なお、密度ρとして、PTTは1.30g/m程度、PETは1.38g/m程度、ポリ乳酸は1.26g/m程度である。
【0057】
(8)総繊度および単繊維繊度
検尺機にて100mの糸をかせ状にとり、その質量を測定し、当該質量を100倍して総繊度(dtex)を求め、n数3の平均値を算出した。
また、総繊度をフィラメント数で除することにより、単繊維繊度(dtex)を算出した。
【0058】
(9)引張強度、引張伸度
JIS L 1013:1999 8.5.1に拠って測定した。
試料を緩く張った状態で、引張試験機(オリエンテック社製“テンシロン”(登録商標)UCT−100)のつかみにつかみ間隔20cmで取り付け、引張速度20cm/分の定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引っ張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強さ(引張強度)及び伸び率(引張伸度)を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
=SD/F
ここに、T:引張強さ
SD:切断時の強さ
:試料の正量繊度
伸び率(%)=[(E−E)/(L+E)]×100
ここに、E:緩み(mm)
:切断時の伸び(mm)
L:つかみ間隔(mm)。
【0059】
(10)湿熱処理後の捲縮糸の強度(耐加水分解性)
100回巻のかせの試料を、温度70℃、湿度95%Rhに設定した恒温恒湿槽(ナガノ科学機械製作所社製、LH−20−11M)の槽内に投入し、168時間(7日)放置した。
当該恒温恒湿処理後のかせを取り出し、上記(9)と同様にして糸の引張強さを求めた。
【0060】
(11)捲縮伸張率
捲縮糸のパッケージを、室温30±5℃、相対湿度50〜75%の雰囲気中に20時間以上放置した後、当該パッケージから捲縮糸を解舒し、これを無荷重状態で30分間沸騰水に浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥した。これを長さ50cm強に切り取り、試料とした。この試料糸に2mg/dtex(0.0196mN/dtex)の初荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点からの長さ50cm(L)の位置にマーキングをした。次いで、同試料に100mg/dtex(0.98mN/dtex)の定荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点から先のマーキング位置までの長さ(L2)を測定した。下記式により、捲縮伸張率を求めた。
捲縮伸張率(%)=[(L−L)/L]×100 。
【0061】
(12)繊度CV%
マルチフィラメントを構成する全ての単繊維について、断面写真から画像解析ソフト(三谷商事社“WinROOF”ver5.0)にて断面積Aを測定し、その平均値および標準偏差を算出した。そして標準偏差を平均値で除して100倍した値を小数第1位まで求め、繊度CV%とした。
【0062】
(13)パイル糸の目付
タフト前の基布およびタフト後のカーペットをそれぞれ50cm角に切り取り、それぞれの質量を測定し、それぞれについて、単位面積(1m)あたりの質量(目付け)に換算した。そして両者の目付けの差をとり、パイル糸の目付として算出した。
【0063】
(14)カーペットの摩耗性
JIS L 1096:1999 8.17.3 テーバー形法に準じて、H−18摩耗輪を使用し、左右一対のそれぞれの摩耗輪に1kgf(9.8N)の荷重をかけて300回転してカーペットを摩耗させ、以下の基準にて外観変化を級判定した。
5級:全く変化が認められない。
4級:僅かに変化が見られるが、ほとんど変化がない。
3級:変化が見られるが、目立たない。
2級:変化が激しい。
1級:変化がかなり激しい。
【0064】
(15)湿熱処理後のカーペットの摩耗性
カーペットを、恒温恒湿槽(ナガノ科学機械製作所社製、型式LH−20−11M)にて槽内温度70℃、相対湿度95%で、7日間処理した後、25℃、相対湿度65%の雰囲気下にて24時間乾燥したカーペットを試料とした。そして上記(14)と同様にして、摩耗性を測定・評価した。
【0065】
(16)カーペットの品位評価
カーペットの手触り感や品位について、以下の基準にて評価を行った。
◎:手触り感、品位非常に優れる。
○:手触り感に優れ、品位が優れる。
△:手触り感がやや劣り、品位がやや悪い。
×:手触り感が悪く、品位が悪い。
【0066】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
(捲縮糸)
(鞘成分)
固有粘度1.5g/dl、Tg48℃、融点230℃、環状ダイマーの含有量2.6質量%、カルボキシル基末端濃度12eq/tonであり、平均2次粒子径0.4μmの酸化チタンを0.3質量%含有したPTTを150℃で10時間真空乾燥し、鞘成分として用いた。
【0067】
(芯成分)
固有粘度0.5g/dl、Tg70℃、融点254℃、カルボキシル基末端濃度25eq/tonのPETを150℃で10時間真空乾燥し、芯成分として用いた。
【0068】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表1に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、紡糸温度270℃で、口金内で単芯の芯鞘構造に複合させ、三角型の口金孔から繊維状に吐出させた。
吐出させた繊維状のポリマーをチムニー風により冷却固化し、油剤液を付与し、ロール回転速度700m/分、ロール温度65℃で引いた。
糸条を巻き取ることなく引き続いて、ロール回転速度600m/分、ロール温度120℃で第1延伸を行い、引き続いて、ロール回転速度1800m/分、ロール温度180℃で第2延伸を行った。
次に、糸条を巻き取ることなく引き続いて、延伸糸条を捲縮加工装置に導き、230℃の加熱蒸気によって捲縮加工を施し、回転移送装置上に噴出させ、冷却した。次いで、プラグ状の糸の塊を2個1対のセパレートロールにてストレッチをかけ、塊を解した。糸に交絡処理を施し、チーズ状に巻き取り、フィラメント数54、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0069】
(合撚糸)
上記捲縮糸に下撚りとしてS撚りを210回/mかけ、2本合糸し、上撚りとしてZ撚りを210回/mかけ、105℃にて熱セットを施し、合撚糸を得た。
【0070】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸を、チーズ巻きの状態で、分散染料(Dystar社製“Dianix”Blue AC−E)0.3%owf、分散剤(日華化学社製“ニッカサンソルト”7000)を含有し、pH調整剤として酢酸/酢酸ナトリウムによりpHを5に調整した高圧釜中の染液に浴比(糸と染液との質量比)1:20で浸し、120℃で45分間染色した。
次いで、液温80℃で20分間、還元洗浄を行った。
【0071】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、目付け100g/mのPET基布に、1/10ゲージ、ステッチ8.7個/mmでタフトし、パイル目付1100g/mのレベルカット品カーペットを得た。
【0072】
実施例1〜3で得られたカーペットは、ソフトタッチを持ち手触り感に優れ、染めムラによるタテスジもなく品位は非常に良好で、摩耗性及び耐加水分解性も良好であった。
比較例1で得られたカーペットは、繊度CV%が大きく、染色時に染めムラが発生し、タフト後のカーペットにタテスジが発生し、品位が悪いマットとなった。
比較例2で得られたカーペットは、PTTの分率が低いため、弾性回復性やバルキー性に劣り、手触り感が劣るカーペットであった。また、安定した複合構造が得られず、繊度CV%が大きいため染色時に染めムラが発生し、摩耗性テストにおいても芯鞘剥離が発生して劣っていた。
【0073】
[比較例3]
(捲縮糸)
(鞘成分)
実施例1〜3で用いたのと同様のPTTを鞘成分として用いた。
【0074】
(芯成分)
実施例1〜3で用いたのと同様のPETを芯成分として用いた。
【0075】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表1に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、Y型孔を有する口金を用いた以外は実施例1と同様にして、異形度3.2、フィラメント数54、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0076】
(合撚糸)
上記捲縮糸を用い、実施例1〜3と同様にして合撚糸を得た。
【0077】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸に対し、実施例1〜3と同様にして染色・還元洗浄を行った。
【0078】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、実施例1〜3と同様にしてカーペットを得た。
【0079】
比較例3で得られたカーペットは、パイル糸を構成する繊維の横断面の異形度が高いために、ソフトタッチな品位を持ったカーペットにならず手触り感が悪かった。また、摩耗性テストにおいても、鞘成分が裂ける現象が発生し劣っていた。
【0080】
[実施例4]
(捲縮糸)
(鞘成分)
実施例1〜3で用いたのと同様のPTTを鞘成分として用いた。
【0081】
(芯成分)
L乳酸の光学純度99.5%、重量平均分子量16万、低分子量残留物(ラクチド)量0.10質量%、Tg58℃、融点は170℃のポリ乳酸(PLA)を150℃で10時間真空乾燥し、芯成分として用いた。
【0082】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表2に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、紡糸温度を255℃とした以外は実施例1〜3と同様にして、フィラメント数54、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0083】
(合撚糸)
上記捲縮糸を用い、実施例1〜3と同様にして合撚糸を得た。
【0084】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸に対し、実施例1〜3と同様にして染色・還元洗浄を行った。
【0085】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、実施例1〜3と同様にしてカーペットを得た。
【0086】
実施例4で得られたカーペットは、染めムラによるタテスジもなく品位は良好で、摩耗性及び耐加水分解性も良好であった。
【0087】
[比較例4]
(捲縮糸)
(鞘成分)
実施例1〜3,4で用いたのと同様のPTTを鞘成分として用いた。
【0088】
(芯成分)
実施例4で用いたのと同様のPLAを芯成分として用いた。
【0089】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表2に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、第2延伸におけるロール温度を130℃とした以外は実施例1〜3,4と同様にして、捲縮伸張率3%、フィラメント数54、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0090】
(合撚糸)
上記捲縮糸を用い、実施例1〜3,4と同様にして合撚糸を得た。
【0091】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸に対し、実施例1〜3,4と同様にして染色・還元洗浄を行った。
【0092】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、実施例1〜3,4と同様にしてカーペットを得た。
【0093】
比較例4で得られたカーペットは、パイル糸の捲縮率が低いために、パイル糸のバルキー性がなくカーペットとしてのボリューム感がなく品位が悪かった。また、バルキー性がないためにカーペットのカバーリング性が低く耐摩耗性に劣っていた。
【0094】
[比較例5]
(捲縮糸)
(鞘成分)
実施例1〜3,4で用いたのと同様のPTTを鞘成分として用いた。
【0095】
(芯成分)
実施例4で用いたのと同様のPLAを芯成分として用いた。
【0096】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表2に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、捲縮加工における加熱蒸気の温度を250℃とした以外は実施例1〜3,4と同様にして、捲縮伸張率40%、フィラメント数54、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0097】
(合撚糸)
上記捲縮糸を用い、実施例1〜3,4と同様にして合撚糸を得た。
【0098】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸に対し、実施例1〜3,4と同様にして染色・還元洗浄を行った。
【0099】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、実施例1〜3,4と同様にしてカーペットを得た。
【0100】
比較例5で得られたカーペットは、捲縮伸長率が高すぎるため、強すぎるクリンプにより手触り感がやや劣っていた。また、引張強度が低く耐摩耗性に劣っていた。
【0101】
[実施例5]
(捲縮糸)
(鞘成分)
実施例1〜3,4で用いたのと同様のPTTを鞘成分として用いた。
【0102】
(芯成分)
実施例4で用いたのと同様のPLAを芯成分として用いた。
【0103】
(複合紡糸・捲縮加工)
上記鞘成分および上記芯成分を表2に記載の分率で溶融紡糸機に供給し、丸型孔を60個有する口金を用いた以外は実施例1〜3,4と同様にして、異形度1.1、フィラメント数60、総繊度1450dtexの捲縮糸を得た。
【0104】
(合撚糸)
上記捲縮糸を用い、実施例1〜3,4と同様にして合撚糸を得た。
【0105】
(染色・還元洗浄)
上記合撚糸に対し、実施例1〜3,4と同様にして染色・還元洗浄を行った。
【0106】
(カーペット)
上記染色・還元洗浄した合撚糸をパイル糸として、目付け100g/mのPET基布に、1/10ゲージ、ステッチ6.9個/mmでタフトし、パイル目付900g/mの自動車向けループカーペットを得た。
【0107】
実施例5で得られたカーペットは、染めムラによるタテスジもなく品位は良好で、摩耗性及び耐加水分解性も良好であった。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のカーペットの用途としては、住居用、商業用、自動車用等、特に限定されないが、長期耐久性や耐摩耗性等が求められる自動車内装用で用いるのに特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートからなる分率60〜80質量%の鞘成分とポリメチレンテレフタレート以外のポリエステルからなる分率20〜40質量%の芯成分とからなり、横断面の異形度が3.0以下である芯鞘複合繊維を含んで構成される捲縮率5〜35%の捲縮糸を含んでなることを特徴とするカーペット。
【請求項2】
前記芯成分のポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記芯成分のポリエステルがポリ乳酸である請求項1に記載のカーペット。
【請求項4】
前記芯鞘複合繊維の単繊維繊度が10〜30dtexである、請求項1〜3のいずれかに記載のカーペット。
【請求項5】
自動車内装用である請求項1〜4のいずれかに記載のカーペット。

【公開番号】特開2009−72257(P2009−72257A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241981(P2007−241981)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】