説明

カーボネート由来の化合物を除去する工程を含む、プロピオネート及びアセテートを含む発酵産物の製造方法

本発明は、発酵産物に酸を添加して、2.5〜8のpHを有する、プロピオネート及びアセテートを含む酸性化発酵産物を得ること、及び、任意的に、カーボネート関連化合物の除去の為の処理工程により、プロピオネート及びアセテートを含む混合溶液を製造する方法に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵プロセスの産物を改良することによる、プロピオネート、アセテート及び任意的な他の有機酸塩の混合溶液を製造する為の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオネート及びアセテートの混合溶液の製造の為の発酵プロセスの使用は、当技術分野で知られている。
【0003】
米国特許第4676987号明細書は、ホエー発酵プロセスを記載し、ここでホエー培地が、乳酸生成性有機体により発酵されて、乳酸を生成し、水酸化カルシウムにより中和され、滅菌され、そして次に、プロピオン酸生成性有機体により発酵される。
【0004】
欧州特許出願公開第0563451号明細書は、バクテリアSelenomonas ruminantiumを用いたラクテートの発酵によりプロピオン酸の塩を製造する為の方法を記載する。基質は、好ましくは、コーン浸出液である。約5モルのラクテートが、3モルのプロピオネート、1.7モルのアセテート、0.4モルのサクシネート、及び1.7モルの二酸化炭素へと転化されることが述べられている。乳酸が最初に又は発酵の間に、発酵培地へと添加されてよく、0〜5%(w/v)、好ましくは1.3%の濃度を与える。
【0005】
米国特許第4814273号明細書は、乳酸塩を含有する発酵培地を微生物により発酵して、アセテート、プロピオネート、又はブチレートを作る工程、このようにして得られた混合物に発酵可能な炭水化物を添加して第2の発酵培地を得る工程、該第2の発酵培地を発酵してラクテートを生成し及び該第1の工程において作られた該アセテート、プロピオネート、又はブチレートをそれらのそれぞれの酸へと転化する工程、及び該ラクテートを工程1へとリサイクルする工程を含む、酢酸、プロピオン酸、又は酪産の製造を記載する。
【0006】
欧州特許出願公開第141642号明細書は、乳酸、酢酸、及びプロピオン酸の混合物を作る為の、滅菌されたホエーカルチャーのPropionibacterium shermanii及びLactobacillus caseiの混合物による発酵を記載する。
【0007】
国際公開第85/04901号明細書及び米国特許第4794080号明細書は、2段階発酵プロセスを用いる乳酸若しくはその塩及びプロピオン酸及び/又は酢酸若しくはその塩の製造の為の方法であって、第1のバクテリアが炭水化物を乳酸へと発酵し、そして第2のバクテリアが該乳酸を発酵してプロピオン酸及び酢酸を生成するところの前記方法を記載する。発酵後、バクテリアの細胞は取り除かれ、そして透過物が活性炭スラリーにおいて脱色され、フラッシュエバポレーション及びスプレードライが続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に記載された参考文献は、処理液(processing liquid)のアップグレーディング(upgrading)を記載していない。当技術分野において、発酵産物、特には相当な量のカーボネート又はカーボネート関連化合物を含む発酵産物を改良する為の方法についてのニーズがあることがわかった。これは、なぜなら、カーボネート関連化合物の存在は、種々の食料製品及び飲料製品において望ましくないからである。或る食料及び飲料製品におけるカーボネートの存在は、品質及び規制の点で望ましくない。さらに、カーボネートの存在は、沈殿物又は望ましくないガス又は泡の形成などの問題を、これらのカーボネートを含む発酵製品の使用の間に、又は、該カーボネートを含有するこれらの発酵製品が用いられるところの製品、例えば種々の食料及び飲料製品など、の使用の間に、もたらしうる。カーボネートの存在はまた、該液のさらなる処理の間に発生する沈殿又はガス又は泡の形成、特にはさらなる濃厚化処理の間の沈殿をもたらしうる。形成された沈殿は、そのような濃厚化プロセスの為に用いられる装置を詰まらせ、そして、非常に非効率的な濃縮プロセスをつくるであろう。本発明は、そのようなアップグレーディング処理に関する。本発明及び関連する利点により解消されるさらなる問題は、以下の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プロピオネートとアセテートとを含む混合溶液を製造する為、及び、この中のカーボネート関連化合物の含有量を減少する為の方法に関する。
【0010】
本発明に従う方法は、
・プロピオネート、アセテート、及びカーボネート関連化合物を含む発酵産物を用意する工程、及び
・該発酵産物に酸を添加して、2.5〜8未満の範囲のpHを有する酸性化発酵産物を得る工程(本明細書以下において酸性化工程とも呼ばれる)
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により、プロピオネート及びアセテートを含み且つ少ない合計量のカーボネート関連化合物を有する溶液が得られる。カーボネート関連化合物の合計量は、カーボネート、バイカーボネート及び炭酸の合計であり、あるいは言い換えるとΣ(HCO、HCO、CO2−)である。これは、本発明の方法により得られた最終的な溶液におけるmol/lとして表される、カーボネート関連化合物の合計量が、環境温度で最大で0.05mol/lであることを意味する。
【0012】
この低い合計のカーボネート含有量の利点は、さらなる濃厚化工程が、不溶性のカーボネート関連塩の沈殿無しに実施されることができることである。さらなる利点は、該低いカーボネート含有量が、該溶液の使用の間の望ましくない二酸化炭素(CO)生成のリスクを減少することである。
【0013】
いずれの理論にもとらわれずに、仮説は、該酸の添加が、二酸化炭素を含む泡又はガスの形での該発酵産物からのカーボネート関連化合物の除去を結果する。本発明のさらなる実施態様において、該方法は、該カーボネート関連化合物の除去の為又は形成された該泡若しくはガスの除去の為の追加の工程を含む。これは、種々の手段、例えばエバポレーションなど、により、該溶液を他のガスにより通気することにより、形成される該泡若しくはガスの吸引により、その他種々のものにより、行なわれうる。例えば、任意的に該製品が攪拌されながら、さらなるガス若しくは泡形成が視覚的に観察されなくなるまで、一定の時間、該酸性化発酵産物を単に安静に維持することも可能である。
【0014】
好ましい実施態様において、該酸性化工程は、該産物の温度が増大される処理工程と組み合わされる。これは、同時に又はその後に行われうる(すなわち、該温度が、該酸性化工程の間に増大され、該発酵産物の温度が最初に増大され、又は得られた該酸性化発酵産物の温度が増大される)。これは、該二酸化炭素含有ガス又は泡の形にある該カーボネート関連化合物の除去に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従う方法において出発物質として用いられる該発酵産物中のプロピオネートの量は、一般に、0.5〜10重量%(重量に基づく百分率)の範囲、より特には1〜5重量%の範囲にある。
【0016】
該発酵産物中のアセテートの量は、一般に、0.1〜5重量%の範囲、より特には0.5〜2重量%の範囲にある。
【0017】
出発物質として用いられる該発酵産物の直接pHは、一般に、6〜9の範囲、より特には6.5〜8.5の範囲にある。
【0018】
本発明において出発物質として用いられる該発酵産物が得られる方法は、本発明に従う方法に重要でない。
【0019】
1つの実施態様において、出発物質として用いられる該発酵産物は、乳酸含有培地をバクテリアを用いた発酵処理に付すことにより得られうる。適当なバクテリアは、Propionibacteriaceae属のファミリーからのバクテリア、例えばPropionibacterium acidi-propionici、Propionibacterium freudenreichii、Propionibacterium thoeni及び/又はPropionibacterium jenseniiなど、又はSelenomonas属からのバクテリア(例えば、Selenomonas rumantium)を包含する。Propionibacterium freudenreichii subsp. shermaniiの使用が好ましい。
【0020】
該発酵処理は、一般に、10〜70℃の温度で、特には25〜55℃の範囲の温度で、より特には25〜35℃の範囲の温度で実施される。適切な発酵処理は、例えば導入部で言及された文献などから、当技術分野で知られており、及び、ここでさらなる説明は要求されない。得られた発酵産物は、本発明に従う方法において出発物質として用いられうる。
【0021】
発酵の完了後、該発酵産物は、好ましくは、バクテリア及び種々の不純物を包含するバイオマスの除去によりさらに精製される。もし該バイオマスが除去されるならば、それが、該培地から部分的に又は完全に除去されうる。この(部分的)バイオマス除去処理工程に関する当業者に既知の任意の方法が用いられてよく、例えば限外ろ過、精密ろ過、静的デカンテーション、又は遠心などであるが、これらに限定されない。
【0022】
該バイオマスの該(部分的)除去後に得られた該発酵産物が、好ましくは、本発明に従う方法において出発物質として用いられる。
【0023】
本発明に従う方法の酸性化工程において、酸が該発酵産物に添加されて、2.5〜8未満の範囲のpHを得る。特に、該pHは、3〜7の範囲にあり、及びより特には、3〜約6.6若しくは6.8である。本発明の好ましい実施態様において、該発酵産物が酸性化されて、3〜7のpHを有する酸性化発酵産物を得る。なぜなら、次に、該カーボネート関連化合物の大部分が除去され、及び、該発酵産物を用いることは、食品及び飲料用途の多くにおいて、例えば沈殿又はガス/泡形成の点でさらなる問題を引き起こさないであろうからである。6.8より低いpHまでの該発酵産物の酸性化が最も理想的であり、なぜなら、カーボネート関連化合物の量がさらに減少されさえするからである。
【0024】
添加される酸の量は、該発酵産物のpHに及び/または該発酵産物がさらに処理され若しくは適用される方法に、例えば或る食品若しくは飲料製品に、依存する。添加された酸の終濃度は、一般に、該発酵産物の0.1〜60重量%の範囲、より特には10〜50重量%、及び最も好ましくは25〜50重量%である。
【0025】
pHの値が、本方法の効果を決定するパラメータであることが注目される。酸の量について上記で言及された値は、ガイダンスの為の与えられている。
【0026】
得られた該酸性化産物は一般に、プロピオネートを0.5〜10%重量%の量で、より特には1〜7%重量%の量で含み、アセテートを0.1〜7%重量%、より特には0.5〜2.5%重量%の量で含み、且つ添加された酸を上記で言及されたとおりの終濃度で含む。もし該添加された酸がプロピオン酸及び/又は酢酸を含むならば、これらの成分の濃度範囲は、該夫々の酸について上記で与えられた範囲と、該添加された酸について与えられた範囲とを組み合わせることにより、計算されるべきである。
【0027】
該酸は、有機酸又は無機酸から選ばれうる。適した無機酸は、塩化水素酸、窒素含有酸、硫黄含有酸、及びリン含有酸から選ばれる無機酸を包含する。この群のうち、塩化水素酸又はリン含有酸が好ましい。
【0028】
適した有機酸は、任意的にヒドロキシ基により置換されていてもよい、1〜10の炭素原子を有するカルボン酸から選ばれる酸を包含する。適した酸は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、酢酸(酢の形にあってもよい)、コハク酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び安息香酸を包含する。
【0029】
有機酸の群のうち、乳酸、酢酸、クエン酸及びそれらの混合物の使用が、とりわけそれらの抗菌性の故に、好ましい。アスコルビン酸もまた、その抗酸化特性の故に好ましい。
【0030】
該酸の添加は、二酸化炭素の形での発酵産物からのカーボネート関連化合物の除去を結果する。該系から除去されたカーボネート関連化合物の量は一般に、発酵培地1リットル当たり1〜30グラムCO2(すなわち、CO2として表されたカーボネート関連化合物の合計量)、特には発酵培地1リットル当たり5〜15グラムCO2の範囲にある。
【0031】
添加される酸の量は一般に、二酸化炭素の形で該発酵産物中に存在する該カーボネート関連化合物の少なくとも60%、より特には少なくとも75%、さらにより特には少なくとも90%を除去するのに十分である。95%超さえが、本発明に従う方法により除去されることができることが分かった。
【0032】
本発明に従う方法のさらなる実施態様において、該発酵産物(部分的に又は完全にバイオマスを有さない又は全くそうでない)は、該酸が添加される前に濃厚化されてもよく、又は該酸は濃厚化の間に添加される。該発酵産物は、沈殿物が該装置を詰まらせること及び該濃厚化プロセスの効率を減少することを回避する為に濃厚化されすぎることはできないが、約20重量%のプロピオネート濃度を有する産物まで、より好ましくは25重量%まで又は30重量%さえまで濃厚化することが可能である。後者よりも高いプロピオネート濃度を有する産物を得る為に、追加の酸性化工程が要求され及び/又はさらなる温度の上昇が要求される。
【0033】
該発酵産物(これは濃厚化されていてもよく又はされていなくてもよい)への該酸の添加後に得られる発酵産物のpHによって、本発明に従う方法の次の工程が、少なくとも5の直接pHを有する産物を得る為に、プロピオネート及びアセテートを含む該得られた酸性化発酵産物への塩基の添加を含みうる(本明細書以下において、塩基添加工程又は中和工程とも呼ばれる)。これはもちろん、この値より低いpHを有する酸性化発酵産物が得られる場合に必要なだけである。
【0034】
より特には、該塩基の添加後のpHは、少なくとも6、及び好ましくは少なくとも6.5でありうる。該pHについての上限は重要でないが、該pHは一般に最大で8であり、及びより特には最大で7.5であろう。5〜8のpHで、例えば濃厚化工程において効率的にさらに処理されることができる産物が得られ、又は、例えば食料及び飲料の製品における直接の用途にとって適する産物が得られる。例えば、肉製品(魚製品及び家禽製品を含む)はより中性なpHを有し、そして従って、約7〜7.5及び最大で8までのpHを有する製品がこの種の食料製品にとってより適するであろうし、一方で本発明の該発酵産物は、もしより一般的な(非肉の)食料又は飲料の製品において用いられるならば、約5〜6のより低いpHを有してもよい。
【0035】
酸性化後に、5超の若しくは上記で記載された好ましい値より高いpHを有する発酵産物(濃縮された又は濃縮されていない)が得られるならば、いずれの塩基の添加も不要であり、そして、該発酵産物はさらに処理され、例えば濃厚化され、及び/又は、例えば食料若しくは飲料製品に、及び特には肉に基づく食料製品に、直接に施与されうる。
【0036】
この工程において用いられる塩基の性質は、本発明に従う方法にとって重要でない。適した塩基は、NaOH、KOH、NH3、Ca(OH)2、Mg(OH)2、及びNH3OHを包含する。もし最終的な産物が食料用途において用いられることになるならば、食品適合性塩基の使用が好ましい。KOH又はNaOHの使用が特に好ましく、なぜならこれらの化合物は高価でなく、容易に入手可能であり、且つ食料に適合するからである。
【0037】
添加される塩基の量は、該発酵産物のpHに依存する。該添加される酸に関して前に述べたとおり、pHの値が、該方法の効果を決定するパラメーターであることが注目される。
【0038】
該塩基添加工程の産物はすなわち、少なくとも5、より特には少なくとも6、さらにより特には少なくとも6.5のpHを有する。該pHは一般的に、最大で8であり、そしてより特には最大で7.5である。より前の工程において濃厚化されていない場合、該塩基添加工程の産物は一般に、プロピオネートを、0.5〜10重量%の範囲、より特には1〜7重量%の量で、アセテートを、0.1〜7重量%、より特には0.5〜3重量%の量で、および、添加された酸を0〜60重量%の量で、特には10〜50重量%の量で、より特には25〜50重量%の量で含む。
【0039】
前に述べられたとおり、該添加された酸は好ましくはクエン酸、酢酸、乳酸、又はそれらの組み合わせを含みうるが、プロピオン酸を任意的に上記言及された他の酸の1又はそれより多くと一緒に含んでもよい。該添加される酸がプロピオン酸及び/又は酢酸を含む場合、これらの成分の範囲は、前記それぞれの酸についての上記で与えられた範囲と該添加された酸について与えられた範囲とを組み合わせることにより計算される。
【0040】
該発酵産物が該酸性化工程の前に濃厚化されない場合、該発酵液体中の種々の有機酸塩の濃度が一般にいくぶん低いとみえる。それゆえに、該塩又はこれらの有機酸のより濃厚化された溶液、特には当技術分野で既知の方法により得られる溶液よりもより濃厚化されたプロピオネート及びアセテートを含む溶液の製造を許す方法についてのニーズがある。
【0041】
一つの実施態様において、酸性化の後の該発酵産物及び/又は該塩基添加工程後の該発酵産物が、プロピオネート及びアセテートを含むより濃厚化された産物を得るために、濃厚化工程に付される。該濃厚化工程は、その目的の為の当技術分野で既知の任意の方法により実施されうる。適切な方法は例えば、エバポレーション、逆浸透、及びスプレードライ並びに/又はそれらの組み合わせを包含する。該濃厚化工程は、溶液を形成するために実施されうるが、例えば押し出し又はスプレードライを介して乾燥した産物を形成することも可能である。該溶液中のカーボネート濃度が減少されたことは、沈殿の形成が防がれうることを確保する。該減少したカーボネート濃度はまた、さらなる処理工程においてカーボネートが引き起こす問題のリスクを減少する。
【0042】
本発明の好ましい実施態様において、酸性化の為に用いられる該酸は乳酸である。その場合、酸及び塩基の添加の後に得られる該濃厚化されていない発酵産物は一般に、ラクテートを30〜50重量%の量で、プロピオネートを0.5〜7重量%の量で、及びアセテートを0.5〜7重量%の量で含む。この産物は、濃厚化されて、ラクテートを60〜95重量%の量で、プロピオネートを1〜14重量%の量で、及びアセテートを1〜14重量%の量で含みうる水性溶液を形成しうる。この産物は、食料及び飲料用途における抗微生物剤として及び味増強剤としてを含む種々の商業的用途において魅力的であると分かった。さらに、保存処理されていない(uncured)肉及び家禽製品における適用に特に適していると分かった。なぜなら、該産物は、該保存処理されていない肉及び家禽製品の感覚特性に積極的な貢献を有する特定の味プロファイルを示すからである。
【0043】
本発明は、より前の段階でのカーボネート又はカーボネート関連化合物の除去により、例えば食料及び飲料製品におけるさらなる処理又は適用において、該プロピオネート及びアセテート含有発酵産物の使用の間のガス又は泡の形成を防ぐ為の手段を提供する。本発明はさらに、濃厚化後のカーボネート又はカーボネート関連化合物の沈殿を防ぐ。それは、すべての発酵された食品成分、例えば嫌気性発酵産物、例えばプロピオネート、アセテート、エタノール、又はこれらの組み合わせなど、を有する天然食料成分の発酵産物など、において濃厚化の前に二酸化炭素の形でのカーボネート関連化合物の除去にとって適している。また、カーボネート関連化合物及びカーボネートは、このようにして、好気性発酵からの任意の産物を含有する自然発酵物から除去されうる。
【0044】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例により説明される。
【0045】
実施例
【実施例1】
【0046】
酸の添加無し
プロピオネート及びアセテートを含む発酵ブロスが製造された。バイオマスが、限外ろ過により除去された。透明な限外ろ過透過物が、85mbar且つ60℃でのエバポレーションの間に、10倍に、約20重量%のプロピオオネートの濃度へと濃縮された。固形物がすぐに底へと沈殿し、そして、二酸化炭素ガスの放出により、pHが約7から約10.5へと増加した。
【実施例2】
【0047】
酸の添加有り
実施例1で製造された発酵ブロスが、今、最初に、乳酸の添加により、約3〜3.5のpHへと酸性化された。該より低いpHが、発泡する二酸化炭素ガスを結果した。該発泡が停止した後、該酸性化発酵ブロスのpHが、水酸化カリウムの添加により、約6.5〜7のpHへと戻された。得られた発酵産物が、3倍濃縮された。沈殿もいずれのガス形成も起こらなかった。
その後、pHが、乳酸/水酸化ナトリウムバッファーの添加により5.7にセットされ、そして、産物が、6月間貯蔵された。これらの6月の間、固形物は沈殿しなかった。
【実施例3】
【0048】
異なる塩基
水酸化カリウムの代わりに、塩基として水酸化ナトリウムが添加されたこと以外は、実施例2が繰り返された。エバポレーションの間又はその後の貯蔵の間に、沈殿もいずれのガス形成も起こらなかった。
【実施例4】
【0049】
45g/lの乳酸ナトリウムを含む培地が、プロピオン酸(2.3%(w/w))及び酢酸(0.9%(w/w))を含む発酵産物へと発酵された。温度は30℃に維持された。pHは、NaOH(10%(w/v))の添加により6.5で制御された。最初に、該発酵産物が、加熱工程に付され、そして、温度が75℃に増加させられた。二酸化炭素流量計により、該発酵産物からの二酸化炭素除去の明らかな増加が、このより高い温度で観察された。乳酸の添加によりpHを5.5へと減少することが、除去された二酸化炭素のより高い流量を結果した。最後に、この発酵産物が、7倍濃縮された。(沈殿した又は浮いている)カーボネート粒子は、該発酵産物中に又は最終的な濃縮された発酵産物中にも見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオネート及びアセテートを含む混合溶液の製造方法であって、
プロピオネート、アセテート、及びカーボネート関連化合物を含む発酵産物を用意する工程、
該発酵産物に酸を添加して、2.5〜8未満のpHを有する、プロピオネート及びアセテートを含有する酸性化発酵産物を得る工程、
を含む前記方法。
【請求項2】
該方法が、カーボネート関連化合物を除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2.5〜5のpHを有する酸性化発酵産物が得られ、そして、塩基が該酸性化発酵産物に添加されて、少なくとも5のpHを有する中和された発酵産物を得る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該発酵産物が、該酸の添加の前に又は該酸の添加と同時に、及び/又は、該塩基の添加の前に又は該塩基の添加と同時に、及び/又は、該塩基の添加の後に、加熱工程に付される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該発酵産物が、該酸を添加する前に、及び/又は、該塩基を添加する前に、及び/又は該塩基の添加の後に、濃厚化工程に付される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
プロピオネート、アセテート、及びカーボネート関連化合物を含む該発酵産物が、水性培地中のラクテート及び/又は炭水化物を、バクテリアを用いた発酵工程に付し、次に該バクテリアの部分的な又は完全な除去が行われることにより用意される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該酸が添加されて、6〜7.5のpHが得られる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該添加された酸が乳酸を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該酸が、乳酸、酢酸、クエン酸、又はこれらの混合物から選ばれたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該濃厚化工程が、該塩基の添加の後に適用され、そして、30〜50重量%の量のラクテート、0.5〜7重量%の量のプロピオネート、及び0.5〜7重量%の量のアセテートを含む溶液が濃厚化されて、60〜95重量%の量のラクテート、1〜14重量%の量のプロピオネート、及び1〜14重量%の量のアセテートを含む溶液を形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
30〜50重量%の量のラクテート、0.5〜7重量%の量のプロピオネート、及び0.5〜7重量%の量のアセテートを含む水性溶液。
【請求項12】
60〜95重量%の量のラクテート、1〜14重量%の量のプロピオネート、及び1〜14重量%の量のアセテートを含む水性溶液。
【請求項13】
環境温度で最大で0.05mol/lのカーボネート関連化合物の合計量を有する、請求項11又は12の水性溶液。
【請求項14】
食料、肉、又は飲料の製品において添加剤として又は味増強剤として、請求項11、12、又は13の溶液を使用する方法。
【請求項15】
保存処理されていない肉及び家禽の製品から選ばれる肉製品において味増強剤として請求項11、12、又は13の溶液を使用する方法。

【公表番号】特表2012−518396(P2012−518396A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550587(P2011−550587)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052198
【国際公開番号】WO2010/097362
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】