説明

カーボンで飽和された液体金属を用いてダイヤモンドを処理する方法および装置

ダイヤモンドを処理する方法であって、その方法は、(i)黒鉛析出に関してカーボンで飽和されている液体金属を供給すること、(ii)液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、液体金属の温度を降下させること、(iii)ダイヤモンドを液体金属に浸漬すること、および(iv)金属からダイヤモンドを取り出すことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンドを処理する方法、特に、ダイヤモンドの欠陥を減少させ、および/またはダイヤモンドの光学特性を向上させる方法に関する。本発明は、ダイヤモンドをドープする方法をも提供する。さらに、本発明は、ダイヤモンドの処理に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、広範囲の技術にわたる多くの用途に使用することを可能にする多くの物理的および機械的特性を有する。望ましい特性は、極度の硬度、高い機械的強さ、化学的不活性、超低膨張係数および高い熱伝導率を含む。しかしながら、天然ダイヤモンドは、比較的希少であり、多くの用途に役立つ形態では容易に生じない。研究者の課題は、経済的に現実的なスケールで、関連する特性を有するダイヤモンド基材を作成する方法を開発することである。CVD(化学蒸着析出)およびHPHT(高圧、高温)プロセスに基づくダイヤモンド成長技術における進歩は、そのような基材の増加した可用性につながったが、そのような材料を実質的な欠陥エンジニアリングが必要とされる用途に使用するには、処理上の問題が残されている。このことは、ダイヤモンドを高温で処理することが必要とされる技術において、特に重要である。
【0003】
化学的に攻撃的な環境および高温において黒鉛に復帰しようとするダイヤモンドの傾向は、文献において十分に裏付けられている。この現象は、例えば、ダイヤモンドを半導体装置に使用する処理の際に問題となる。アニーリング欠陥センターまたはイオン注入などの従来の技術は、基材表面に黒鉛層の生成が典型的に付随する。
【0004】
自然に採掘された白い宝石用原石は、色スプレッドシステム(例えば、GIA色グレーディング・スケール)に従い、D(澄んだ氷)からZ(淡い黄色がかった色)までにわたって等級分けされる。「トップの色」のD石および同じ重量のZ石の間での価格差は、しばしば数桁のオーダーである。例えば、1カラット以上の重量の完璧なトップの、ブリリアントカットされたD石は、10000USDを超える小売価格になる可能性があるが、Z色のダイヤモンドはその価格の一部を達成し得るに過ぎない。従って、宝石用原石の向上および処理のために、重要な市場が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイヤモンドは、文献によく記載されているように、かなり多様な格子欠陥を有するが、これらの一部だけが天然および/または人工的に成長したダイヤモンドの色を生じる。CVD成長したダイヤモンドについて、水素−空孔複合体が問題となる傾向がある。これらは、水素はより興味深いドナー/アクセプタ状態の一部を不動態化し得るため、CVD基板を電子用途に使用するために成長させる際に、問題となり得る。
【0006】
自然に採掘されたおよびHPHT生成された石の色を支配する欠陥には、2つの主要なタイプがある。それらは、以下の通りである:
1.空孔。これらの一部は、比較的低い温度(>700℃)できわめて動きやすく、従って、ダイヤモンドが黒鉛に転じる温度を十分に下回る温度で急速にアニールアウト(annealed out)され得る。
2.黄色の色彩に関与する窒素置換/空孔複合体。これらは、通常は、はるかに可動性ではない。理論的研究および実際的な実験は、これらの欠陥の一部は、大部分のダイヤモンドの表面が黒鉛化(graphitise)し始める温度である約1500℃を超えるまで、高温でアニールアウトし得ることを示唆している。
【0007】
高温で欠陥をダイヤモンドからアニールアウトすることができる方法を提供することは、有利である。自然に採掘されたダイヤモンドにおいて、そのような技術は、ダイヤモンドをカラースケール上で上方に移動させることができ、従って、その価値をある程度上昇させることができる。HPHT石については、成長の間に窒素を排除することは、CVDについて行うよりも技術的にかなり困難であって、高温のアニーリング方法は、透明な石を比較的低コストで製造できるようにする可能性がある。
【0008】
高温でのアニーリング・ダイヤモンドは、平凡ではない。上述したように、ダイヤモンドはカーボンの準安定性同素体である。このことによって、ダイヤモンドはカーボンの最も安定な形態(すなわち黒鉛)と比較して実際に不安定であり、正しい状況および十分な時間が与えられて黒鉛に復帰すると推測される。ダイヤモンドの結晶が空気中で800℃を越えて加熱される場合、黒鉛化(graphitisation)が生じるにつれて、表面には黒いパッチが生じ始める。空気中でのより高い温度で、黒鉛化は急速に発生して、結晶全体を2、3分で黒鉛に戻す。
【0009】
真空中では、黒鉛化は1500℃付近で著しく生じる。黒鉛化は1800℃まで急速に進み、数分以内で完了する。黒鉛化は水素プラズマ環境の非常に高い温度(>2000℃)で遅延できること、しかしながら、CVD成長の際に見出されるのと同様のダイヤモンド表面における化学的条件(すなわち、ダイヤモンドが黒鉛化して、平衡プロセスにおいて、ダイヤモンド表面を再度成長させ得ること)を生じさせるので、誤誘導を生じ得ることが示唆されている。従って、実質的な表層黒鉛化は、処理の間に発生する可能性がある。ダイヤモンドの黒鉛化は、内部よりも、結晶表面においてより容易に始まるということは、よく知られている。これは、単純な教義に起因する:黒鉛はダイヤモンドよりも密度が高くなく、従って、ダイヤモンドも内部には、結晶格子を壊すことなく、黒鉛コアが生成しおよび成長する余裕はない。即ち、内部黒鉛化は、周囲のダイヤモンド格子の強さによってある点までは抑制され、従って、付随する体積変化がエネルギー的に拘束される程ではない表面において発生する。
【0010】
ダイヤモンドを処理するための知られている方法の1つは、ダイヤモンドを高圧力高温(HPHT)プレスに入れて、ダイヤモンド格子の中で欠陥を移動させるために圧力および熱を適用することを含む。そのような方法は、ダイヤモンド中の欠陥を拡散によって取り除く程度で機能するのであって、エネルギー的に最も安定な同素体である、HPTP条件にダイヤモンドも保持するので、黒鉛化はあまり問題でないと考えられる。HPHTプロセスに関する課題は、主に経済的なものである。第1に、ダイヤモンドに色の劣化を生じさせる欠陥は、高圧条件ではあまり移動性ではない傾向があり、これは処理時間が比較的長くなることを意味する。第2に、HPHT処理は、設定が高コストであって、従って、ある程度の大きさのある石だけが有効であることを意味する。
【0011】
米国特許第2009/0110626号は、ダイヤモンドの光学特性を向上させる方法を開示する。その方法は、
(i) ダイヤモンドの温度を約1000℃から約2000℃へ上昇させること;
(ii) ダイヤモンドの圧力をダイヤモンド安定領域の外側の約5気圧もしくはそれ以下に制御し、そこで圧力は還元性雰囲気で制御し、そして、ダイヤモンドの端部に隣接するダイヤモンドの側面に熱的接触を形成する、ヒートシンク・ホルダー内にダイヤモンドを保持すること
を含む。
本発明は、従来技術の問題点の少なくとも一部に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1の要旨において、ダイヤモンドを処理する方法であって、
(i) 黒鉛析出に関して、カーボンで飽和された液体金属を供給すること、
(ii) 液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、液体金属の温度を降下させること;
(iii) ダイヤモンドを液体金属に浸漬すること;および
(iv) 金属からダイヤモンドを除去すること
を含む方法を提供する。
【0013】
好ましくは、方法はダイヤモンドの欠陥を減少させる方法である。そして、ステップ(iii)において、ダイヤモンドを液体金属に浸漬して、ダイヤモンドの欠陥を減少させる。好ましくは、方法は、ダイヤモンドの光学特性を向上させおよび/または変える方法である。そして、ステップ(iii)において、ダイヤモンドを液体金属に浸漬して、ダイヤモンドの光学特性を向上させおよび/または変えさせる。
【0014】
本発明は1つの実施例において、ダイヤモンドをドープする方法であって、
(i) 黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を供給すること、
(ii) ダイヤモンド析出に関して液体金属がカーボンで飽和されるように、液体金属の温度を降下させること;
(iii) ダイヤモンドを、ドーパントが存在する液体金属に浸漬して、ダイヤモンドにドーパントをドープさせること;および
(iv)金属からダイヤモンドを取り出すこと
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明のもう1つの要旨において、
液体金属を保持するための開放ベッセル、
少なくとも部分的にカーボンを液体金属に浸漬するためのプランジャー、
少なくとも部分的にダイヤモンドを液体金属に浸漬するためのホルダー、
液体金属の中にプランジャーを動かす手段、
液体金属内にプランジャーを保持するための手段、
原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルを供給するための任意の手段、
液体金属からプランジャーを取り外すための手段、
ダイヤモンドを含むホルダーを液体金属の中に動かす手段、
前記ホルダーを液体中に保持するための手段、
液体金属から、ダイヤモンドを含むホルダーを取り出す手段、
ダイヤモンドを冷却する一方で、液体金属の外へダイヤモンドを保持する手段、および、
開放ベッセルの雰囲気を制御する手段
を有してなる装置が提供される。
【0016】
本明細書に記載する各要旨は、そうでないことが明確に示されない限り、その他の要旨または特徴と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示されたいずれかの特徴は、好ましいまたは有利であると示された他のいずれかの1又はそれ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0017】
個々のダイヤモンドの黒鉛化は、活性化障壁を有する物理的方法である。従って、温度は、黒鉛化の開始に影響を及ぼす。また、化学的に攻撃的な媒体をダイヤモンドへ添加すると、多くの場合に、活性化障壁を押し下げおよび/または黒鉛化の速度を上昇させる傾向がある。HPHT研究によって明らかにされたように、圧力の増大は、黒鉛化速度に影響を及ぼすこともあり得る。黒鉛はダイヤモンドと比較して低い密度を有するので、増大した圧力は黒鉛化速度を抑圧する。さらに、指摘されている通り、指標化されたダイヤモンドの種々の表面における黒鉛化の速度および開始には、多くのバリエーションが認められている。
【0018】
発表された研究は、真空中での約45分の処理の後、1500℃で最も低い閾値温度で、ダイヤモンドの(111)表面上に黒鉛化が起こり始めることを示している。
1600℃で45分間のその後の実験は、すべてのサンプルにおいて、(111)表面に、独立したパッチで黒鉛化が生じていることを示した。1700℃の後、黒鉛化速度に劇的な増大が観察され、サンプル質量の半分が45分以内で黒鉛に転化される。この温度で処理されて、その後に清浄化される(111)表面は、塑性変形および応力の著しい徴候を示すということも報告されている。1800℃〜1900℃の範囲において、ダイヤモンドの完全な黒鉛化は、サンプルの大きさに応じて5〜10分以内で観察され、2000℃およびそれ以上では黒鉛化は2〜5分以内に発生する。2000℃を越えると、この温度を越える温度での速度を見積もっている研究が存在するのであるが、大部分の実験はそのような速い速度で黒鉛化が進行し、実際の測定は無意味となることを示している。
【0019】
本発明の発明者らは、ダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和された液体金属の存在下でダイヤモンドを処理することによって、高温(例えば、1500℃以上、または1600℃以上)でかつ低圧(例えば、133kPa未満、または1330kPa未満)でダイヤモンドをアニールして、ダイヤモンドの黒鉛化を実質的に生じさせることなく、欠陥の少なくとも一部を取り除くこと、および/または、ダイヤモンドの色を変えることができるということを見出した。このように、本発明は、ダイヤモンドの品質を向上させる方法を提供する。好ましくは、ダイヤモンドを処理する間、不純物および/または欠陥は、取り除かれるかまたは減少する。好ましくは、処理したダイヤモンドは、未処理のダイヤモンドの特性と比較して、向上した色および/または光学的性質を有する。このことは、目視または宝石顕微鏡下で検査される場合に、石の光学的透明度の向上を生じさせる、イエロー/ブラウンの変色(例えばN3/N2アグレゲート)を生じさせる、欠陥中心の除去および/または密度の減少を伴うことが好ましい。
【0020】
本明細書に記載するように、液体金属という用語は、液体、半液体および/または溶融金属を含む。1種又はそれ以上の金属の混合物を含むこともできる。合金、および1種もしくはそれ以上の合金ならびに/または金属の混合物をも含む。本発明は、ダイヤモンドが、処理後において、処理前と比べて、より高い価格で販売され得るように、ダイヤモンドの品質を改良する方法を提供する。本発明の方法および装置は、操作する上で経済的に現実的であって、その光学的性質を改良するためにダイヤモンドを処理する既知の方法よりも低コストである。本発明は、ダイヤモンドをドープする方法をも提供する。
【0021】
本発明の方法は、ダイヤモンドから、外因性および/もしくは内因性の欠陥を取り除くまたは減らすために用いることができる。本発明の方法は、窒素(例えば、C-窒素センター、A-窒素センター、B-窒素センター、N3窒素センターおよびN3/N2窒素センター)、ホウ素、リン、水素、ニッケルおよびコバルト、シリコン、硫黄、独立したカーボンインタースティシャルズ、格子間複合体、空孔−インタースティシャル(格子間原子、interstitial)複合体、独立した空孔、マルチ空孔複合体、転位、プレートレット、およびボイドなどの欠陥の1又はそれ以上をダイヤモンドから取り除いたりおよび/または低減させたりするために使用することができる。
【0022】
本発明において、使用する金属は、単一の金属元素、または合金、または2種もしくはそれ以上の金属元素および/または合金からなることができる。好ましくは、金属は、鉛、ビスマス、スズ、金、銀、インジウム、ガリウム、アンチモン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、およびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物から選択される。好適な金属には、アルミニウム、ゲルマニウムおよびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物が含まれる。最も好ましくは、金属は、鉛または合金を含む鉛である。好適な合金は、鉛−金、銀−金、鉛−スズ、アルミニウム−スズおよびアルミニウム−鉛合金である。
【0023】
金属は、1500℃、1750℃または2000℃を超える沸点を有することが好ましい。金属が著しい蒸発を受けることなく、ダイヤモンドを高温に加熱するために、金属が高い沸点を有することが望ましい。本明細書において用いる著しい蒸発とは、加熱前の金属の総重量に基づいて、本発明のプロセスの間に、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の金属が蒸発することを意味する。
【0024】
鉛は、ほぼ1750℃の沸点を有する。本発明の発明者らは、ダイヤモンドは、1250℃程度の温度で、鉛の中で首尾良くアニールすることができるということを、見出した。しかしながら、鉛は著しい蒸発を生じることなく、約1600℃の温度まで加熱されることができる。好ましくは、鉛は、アルゴン雰囲気で加熱する。好ましくは、蒸発を減らすために、液体鉛の表面に冷たいアルゴン流を流れさせる。好ましくは、アルゴンは、10℃〜30℃の温度にて反応チャンバーに導入される。
【0025】
ビスマス(1564℃の沸点)およびアンチモン(1587℃の沸点)が、それらの沸点以下の温度にて、ダイヤモンドをアニールするために首尾良く使用することができるということも見出された。金属は、1500以下℃、好ましくは1450以下℃もしくは1000以下℃もしくは500以下℃の融点を有するものが好ましい。金属中でのカーボンの溶解速度は、飽和溶液中に浸漬されたときに、ダイヤモンド表面の浸食が発生するほど高くないことが好ましい。
【0026】
何らかの特定の理論に拘束されることを望む訳ではないが、高温での黒鉛化は本質的に表面現象であるので、黒鉛状炭素との間で形成される場合と対比して、より低い界面エネルギー(energy interfaces)をダイヤモンドと形成する、液体金属にダイヤモンドを高温で浸漬することによって、この効果を抑制したり、低減したりすることができると考えられる。この理論は、以下に更に詳述する。
【0027】
本発明の方法は、不活性雰囲気を含む反応チャンバーにおいて、実施することができる。不活性雰囲気は、貴ガスを含むことが好ましい。不活性雰囲気は、2種以上の貴ガスの混合物を含むことができる。不活性雰囲気は、ヘリウムおよび/もしくはアルゴン含むことが好ましい。不活性雰囲気は、アルゴンを含むことが最も好ましい。
【0028】
不活性雰囲気は、反応チャンバー内のガスの総容積基準で、少なくとも90容量%の貴ガスを含むことが好ましい。不活性雰囲気は、反応チャンバー内のガスの総容積基準で、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9容量%の貴ガスを含むことがより好ましい。貴ガスは、アルゴンであることが最も好ましい。
【0029】
不活性ガスの流れは、金属の表面上を通すことが好ましい。不活性ガスは、反応チャンバー内に10から30℃の範囲の温度で導入することが好ましい。冷たいガスは金属の表面からの蒸発量を減らすことを支援するので、このことは有利である。
【0030】
本発明の方法は、真空において、実施することができる。金属の蒸気圧が金属表面からの蒸発が著しくないようなものである場合には、減圧(vacuum)を使用することもできる。例えば、金属がニッケルおよび/またはコバルトである場合に、減圧を使用することができる。
【0031】
反応チャンバーは、酸素を含まないことが好ましい。雰囲気中の酸素の存在は、黒鉛化の速度を上昇させると考えられる。反応チャンバー内の雰囲気は、反応チャンバー内のガスの総容積基準で、0.1容量%未満の酸素を含むことが好ましい。雰囲気が含む酸素は、反応チャンバー内のガスの総容積基準で、0.05%未満、0.01%未満、0.001容量%未満であることがより好ましい。
【0032】
本発明の方法は、ダイヤモンド安定領域以下の圧力で実施することが好ましい。本発明の方法は、1kPa〜1050kPaの範囲、50kPa〜1050kPaの範囲、50kPa〜150kPaの範囲の雰囲気で実施することがより好ましい。圧力は、102kPa以下であることが好ましい。
【0033】
黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を提供するために、金属は1000〜2500℃の範囲の温度へ加熱され、より好ましくは、液体金属は1000〜2000℃の範囲、1500〜1750℃の範囲、1550〜1750℃の範囲、もしくは1550〜1650℃の範囲の温度まで加熱することが好ましい。
【0034】
黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属の温度は、液体金属の最も低温の部分において、液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、5〜100℃、5〜65℃、または5〜50℃で降下させることが好ましい。温度は、液体金属の最も低温の部分において、液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、20〜60℃で降下させることが好ましく、30〜50℃で降下させることがより好ましい。
【0035】
当然のことながら、関連した状態図データ、またはこのデータが利用できない場合の適当な熱力学的近似を利用することによって、液体金属が黒鉛析出に関していつカーボンで飽和されるか、そして、液体金属がダイヤモンド析出に関していつカーボンで飽和されるかということを計算することができる。
【0036】
本発明において、ダイヤモンド析出に関してカーボンで過飽和された金属ではなく、ダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和された金属の中に、ダイヤモンドは浸漬され、または少なくとも部分的に浸漬される。
【0037】
本発明において、液体金属がダイヤモンド析出に関して過飽和状態になる程度まで温度を降下させることはない。これが発生する場合、過飽和状態の金属中にダイヤモンドを浸漬すると、金属中のカーボンは、場合によっては、ダイヤモンド表面に析出して、潜在的にダイヤモンドを拡大させ得る。このことは、本発明の範囲内のものではない。
【0038】
米国特許第3,142,539号は、ダイヤモンドを形成するためのダイヤモンドに関してひどい過飽和状態の溶融媒体を使用することを開示している。そのようなシステムは、過飽和溶液から種ダイヤモンド上に析出するカーボンによって、ダイヤモンドが成長することに依拠している。この文献には、カーボンによって過飽和状態である以外の溶融媒体中でダイヤモンドを処理することについての示唆はない。
【0039】
ダイヤモンドを液体金属に浸漬する時に、液体金属は1000〜2500℃の範囲の温度であることが好ましく、ダイヤモンドを液体金属に浸漬する時に、液体金属が、900〜2495℃の範囲、1000〜2000℃の範囲、900〜1995℃の範囲、1500〜1750℃の範囲、1400〜1745℃の範囲、1550〜1750℃の範囲、1450〜1745℃の範囲、1550〜1650℃の範囲、1450〜1645℃の範囲の温度であることがより好ましい。
【0040】
ダイヤモンドを取り出す前に、液体金属は1500℃未満の温度に冷却されることが好ましい。これは、不活性雰囲気中であるとしても1500℃を超える温度では、ダイヤモンドを金属から取り出す際に、ダイヤモンドの表面において黒鉛化が生じるおそれが増大するためである。ダイヤモンドを取り出す前に、液体金属を1400℃未満の温度に冷却することがより好ましい。当然のことながら、ダイヤモンドが取り出される時に、金属はまだ液体の状態である。
【0041】
ダイヤモンドを取り出す前に、液体金属は、金属の融点から150℃まで高い範囲内に冷却することができる。ダイヤモンドを取り出す前に、液体金属は、金属の融点から100℃、50℃または10℃まで高い範囲内で、冷却することがより好ましい。
【0042】
本発明の1つの態様例では、金属は、ダイヤモンドを取り出す前には冷やされない。この態様例は、ダイヤモンドを含む金属の温度が1500未満℃、もしくは1400℃未満、もしくは1000℃未満である場合における特定の使用であってもよい。別法として、または、加えて、この態様例は、金属が、冷却前に、更に1又はそれ以上のダイヤモンドを処理するために再使用することになっている場合における特定の使用であってもよい。
【0043】
好ましくは、処理前におけるダイヤモンドの黒鉛化のおそれを低減するために、ダイヤモンドは、500℃未満、好ましくは400℃未満、より好ましくは300℃未満の温度に保たれる。これは、金属へ浸漬するまで、主チャンバーの中の耐火性熱シールドの後方で、ダイヤモンドに構造を保たせ続けることによって、反応チャンバーの中で達成することができる。
【0044】
ダイヤモンドを金属に浸漬するときに、ダイヤモンドの全体を金属に浸漬することが好ましい。このことは、1500℃を超える温度である場合に、金属の表面よりも上方または金属の表面にダイヤモンドが保持されると黒鉛化する傾向があるので、好ましい。
【0045】
ダイヤモンドは迅速に金属に浸漬されおよび取り出されることが好ましい。ダイヤモンドは、2mm/s〜1cm/sの速度にて、金属に浸漬されおよび取り出されることが好ましい。ダイヤモンドはホルダーを用いて、金属に浸漬されおよび取り出されることが好ましい。ダイヤモンドを、金属の中へ/から外へ、浸漬する/取り出す速度は、自動化または機械的手段によって制御することができる。
【0046】
黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属は、
(a) ベッセルを供給すること、
(b) ベッセルの中に固体状態の金属を配置すること、
(c) ベッセル内にカーボンを配置すること、
(d) 任意にベッセル内に不活性雰囲気を供給すること、
(e) 加熱して、黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を供給すること
を含む方法によって提供される。当然のことながら、ステップ(a)〜(e)は、いずれか好適な順序で実施することができる。
【0047】
本発明の方法において、液体金属の全体に温度勾配が存在するように液体金属を加熱することが好ましい。液体金属全体における温度勾配は、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、または少なくとも50℃であることが好ましい。
【0048】
これは、金属を含むベッセルに単一の熱源を供給することによって達成できる。ベッセルをその底部で加熱して、ベッセルの底部における内容物を、ベッセルの頂部における内容物と比べてより熱くすることを確実に行うことが好ましい。
【0049】
典型的に、ダイヤモンドは、金属のメニスカスの直ぐ下方にて、金属に浸漬する。ベッセルが5〜20cmの深さを有する場合、ベッセル内の金属のメニスカスの5mm〜0.5mmの範囲内の金属に、ダイヤモンドを十分に浸漬することが好ましい。ベッセル底部において熱源によってベッセルが加熱される場合、金属の表面の方へダイヤモンドを金属に浸漬することによって、ベッセルの頂部の方の金属がダイヤモンドに関してカーボンによって飽和されることが確実に行われる。
【0050】
ダイヤモンドを処理する間、ダイヤモンドは液体の最も冷たい領域に保持されることが好ましい。金属の炭素源は黒鉛であることが好ましい。しかしながら、当然のことながら、炭素質材料のその他のいずれかの好適なソースも使用できる。炭素質材料は、主として天然の黒鉛状材料、例えばガラス質カーボン、圧縮黒鉛またはカーボン・ナノチューブであることが好ましい。炭素源は、プランジャーによって金属に浸漬することが好ましい。プランジャーは、カーボンが金属に溶解する間、ベッセルの底部の方へ炭素源を保持するために用いることができる。
【0051】
本発明の方法は、合成ダイヤモンドおよび/または天然起源のダイヤモンドを処理するために用いることができる。本発明の1つの態様例では、本発明の方法を使用して、イオン注入されたダイヤモンドを液体金属中でアニーリングにより処理して、システムに導入される何らかの欠陥をアニールアウトすることができる。本発明においては、いかなる寸法のダイヤモンドでも使うことができる。典型的には、ダイヤモンドは0.05ct以上のサイズであってよい。尤も、ダイヤモンドは、0.01ct以上、0.05ct以上、または0.1ct以上のサイズであってよい。
【0052】
本明細書に記載するダイヤモンドを処理する方法、例えば、ダイヤモンド中の欠陥を低減させる方法、ダイヤモンドの光学特性を改善しおよび/または変える方法、および/またはダイヤモンドをドープする方法は、実質的にはダイヤモンドの寸法に実質的な変化をもたらさないことが好ましい。ダイヤモンドの重量の変化は、ダイヤモンドの総重量を基準として(処理前のダイヤモンドと処理後のダイヤモンドとを比較して)10%未満、5%未満、2.5%未満および最も好ましくは1%未満の変化であることが好ましい。本発明の方法は、ダイヤモンドの寸法を実質的に変えるためには使用されないことが好ましい。それは、ダイヤモンドの寸法を成長させるためには使用されないことが好ましい。
【0053】
ダイヤモンドは、多結晶および/もしくは単結晶ダイヤモンドであってよい。好ましくは、本発明において使用するダイヤモンドは、大きな内部の介在物(inclusions)または破断(fractures)を有さない。本明細書において使用するように、大きい内部介在物または破断はクラック(crack)または割れ目(flaw)を意味し、1つの平面に沿って更に25%を超えて延びると、ダイヤモンドに破断を生じさせたり、または、ダイヤモンドを構造的に著しく弱くしたりし得る。内部介在物または破断の存在は、顕微鏡を用いて観察することが可能である。大きい内部介在物または破断がダイヤモンドに存在する場合、本発明を用いるダイヤモンドの処理が、介在物または破断を更に大きくしたり、介在物が「破裂」したりする場合には、石の一部が損失することにつながるというおそれがある。
【0054】
汚染物質、例えば、ダイヤモンドの表面上のまたはその近くの黒鉛のしみを、液体および/または溶融金属内でダイヤモンドを処理する前に確実に取り除くことは有利である。汚染物質は、肉眼では検出することができない、 黒鉛の顕微鏡領域へ、取り扱いの間に付着したオイルおよびグリースからのいずれかのものであってもよい。そのような汚染物質がダイヤモンド面に存在する場合、液体および/または溶融金属の中でダイヤモンドの処理する間、汚染された領域周辺で黒鉛化が発生し得る。そのような黒鉛化は、制御(すなわち、本発明の方法を使用して実施されない処理プロセス)と比較して、まだ遅延する。しかしながら、処理の前に取扱われない場合、一旦開始したら、この黒鉛化によって、より高い温度にて重大な問題が生じることになり得る。このように、黒鉛化は防止することが好ましい。ダイヤモンド表面からの汚染物質の除去は、天然ダイヤモンドを処理するときには、典型的に特に重要である、その理由は、その表面にまたはその近くに、黒鉛のピットおよび他のその類の割れ目または汚染物質が存在する可能性が遙かに高いためである。HPHTおよび単結晶CVD生成された基材は、汚染物質を除去するための前処理がない場合であっても、処理の際に遙かに良好である。しかしながら、顕著な表面のまたは表面下の黒鉛の介在物がある場合には、存在する汚染物質の数を減らすかまたは除去するために、前処理を使用することはまだ好ましい。
【0055】
液体および/または溶融金属の中でダイヤモンドを処理する前に、沸騰する酸の中で5〜30分間で、ダイヤモンドを処理することが好ましい。ダイヤモンドを、沸騰する酸の中で、5〜20分間、最も好ましくは10〜20分間で処理することがより好ましい。沸騰する酸は、硫酸および/または硝酸を含むことが好ましい。典型的に、(モル濃度で)2:1の硫酸:硝酸の混合物が用いられる。酸処理は、ダイヤモンドの表面から、何らかの不純物を除去しまたは減らす。
【0056】
液体および/または溶融金属中でダイヤモンドを処理する前に、ダイヤモンドを酸性エッチング・ステップに付することが好ましい。液体および/または溶融金属中でダイヤモンドを処理する前に、ダイヤモンドをクロム酸にさらすことが好ましい。クロム酸は、重クロム酸ソーダを濃硫酸に溶かすことによって調製することが好ましい。ダイヤモンドは、沸騰するクロム酸の中に、少なくとも10分間、少なくとも20分間、または少なくとも30分間浸漬することが好ましい。ダイヤモンドは、沸騰するクロム酸の中に、15分〜2時間、好ましくは30分〜1.5時間、最も好ましくは約1時間浸漬することが好ましい。クロム酸は黒鉛をエッチングすることができる少ない試薬のうちの1つであること、および、このタイプの製剤はダイヤモンドから外側の黒鉛の特徴をはぎとるために使用されることが見出された。天然ダイヤモンドにおいて、表面の下で黒鉛の介在物に至る微少なクラックがしばしばある所で、この酸性のエッチングは時々これらの特徴を取り除くことができて、その結果、後の高温処理の結果を改善できる。このクロム酸ステップが終わった後、ダイヤモンドは脱イオン水(好ましくは超音波浴内で)ですすいだ後、乾燥させられることが好ましい。最も好ましくは、ダイヤモンドはその後、上記の通りの、沸騰する硫酸:硝酸の中に入れられる。
【0057】
好ましくは、ダイヤモンドは、原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルにさらされる。好ましくは、ダイヤモンドを液体および/または溶融金属の浸漬する前に、ダイヤモンドは原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルにさらされる。このことは、ダイヤモンド表面における、既存の顕微鏡的黒鉛の特徴、および、例えば酸エッチング処理後に残るものを除去し得る環境を提供する。好ましくは、このことは、高温で処理する間、処理の結果を改善して、これらの顕微鏡的領域における黒鉛のホモエピタキシャル成長の可能性を止めるかまたは減らすことが好ましい。
【0058】
ダイヤモンドを液体および/または溶融金属に浸漬する前に、ダイヤモンドは、沸騰する硫酸および/または硝酸内で処理し、その後クロム酸で処理し、その後、原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルにさらされることが好ましい。
【0059】
加えて、および/または別法として、液体および/または溶融金属内でのダイヤモンドの処理する間、液体および/または溶融金属は原子状水素プラズマにおよび/または原子状水素ラジカルにさらされることが好ましい。原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカル源は、液体および/または溶融金属のメニスカスの直ぐ上に保たれることが好ましい。好ましくは、ラジカルの最もエネルギー的な領域は、メニスカスの上方の、10cm〜2mm、より好ましくは7cm〜5mmまでに保たれることが好ましい。何らかの特定の理論に拘束されることを望む訳ではないが、原子状水素が液体および/または溶融金属の中に高温で拡散して、処理操作の間に析出し得る、顕微鏡提供する黒鉛核の少なくとも少し、そして好ましくはすべてが除去されると、金属メニスカス表面にて成長する黒鉛核を生じ得るということが考えられる。さらに、原子状水素プラズマに対するおよび/または原子状水素ラジカルに対する露出は、浸漬したダイヤモンドの表面に留まるかまたは形成される、処理中に析出する黒鉛粒子を防止したり、その数を減らしたりする処理の間中、続けることができる。このように、典型的に液体および/または溶融金属中でダイヤモンドを処理する間に、液体および/または溶融金属を原子状水素プラズマにおよび/または原子状水素ラジカルにさらすことは、向上したおよびより信頼性が高い結果(特に高温で)に至る。例えば、方法が原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルが存在しない場合に実行される場合に、ダイヤモンドのより多くの欠陥は取り除かれるかおよび/またはダイヤモンドの光学特性は改善される。
【0060】
使用する原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルのフラックスは、金属メニスカスにおいて、1×1015原子/cm/秒であることが好ましい。それは、金属メニスカスにおいて、1×1016原子/cm/秒より大きいことがより好ましい。
【0061】
原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルは、マイクロ波、熱フィラメント、アーク・ジェットまたは炎方法によって、発生させることが好ましい。そのような方法は従来技術において知られている。原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルを供給する他のいかなる好適な方法でも用いることができる。好ましくは、原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルの供給源は、ダイヤモンドの処理する間中、液体および/または溶融金属上に保持されることが好ましい。好ましくは、本発明において使用するプラズマまたはラジカル源は、水素原子のみを含み、他の原子は含まないことが好ましい。
【0062】
典型的に、水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルは、金属メニスカスより上方にプラズマの小さい(ほぼ5cmの直径)柱を形成する、約400Wで作動する「遠隔プラズマ源装置」を使用して生成される。 このように、低出力を使用して、ほぼ5〜20W/cmの密度で動作する。「分解された(cracked)」水素ガス(すなわち、1原子の水素ラジカル)およびリフォームされた水素ガスの形態での、約80kPaの水素で動作するチャンバー圧が、差動排気の使用によって形成される。最初に高真空までポンピングダウンする前に、最初にチャンバーの中にフラッシュする間、および、チャンバーを開ける圧力までチャンバーが戻される場合の処理プロセスの終わりに、アルゴンのみを使用することができる。
【0063】
本発明を使用して、ダイヤモンドの色の改良にアクセスするために、処理の前に、標準見本に対するダイヤモンドの色を記録することができる。この技術は、技術の実践者にはよく知られている。ダイヤモンドは、それから、液体金属への浸漬およびそこからの取り出しを行うことができる、ホルダーに取り付けられることが好ましい。
【0064】
本発明の方法を使用するダイヤモンドの処理の後、ダイヤモンドは沸騰する酸の中に再び置かれることが好ましい。ダイヤモンドを沸騰する酸の中で5〜30分間処理することが好ましい。ダイヤモンドを沸騰する酸の中で5〜20分間、最も好ましくは約10分間処理することがより好ましい。沸騰する酸は、硫酸および/または硝酸を含むことが好ましい。典型的に、硫酸:硝酸の2:1混合物(モル濃度による)が使用される。酸処理によって、処理したダイヤモンドの表面から不純物が除去または減少される。
処理後、標準見本に対するダイヤモンドの色が記録されるが、外観上のいかなる変化であっても記録することができる。
【0065】
ダイヤモンドに生じた変化を求めるために、電子常磁性共鳴(EPR)およびラマン・赤外線(Ir)スペクトルの研究を用いることもできるダイヤモンドを調べるために電子常磁性共鳴(EPR)およびラマン・赤外線(Ir)スペクトル研究を用いる方法は、従来技術においてよく知られている。処理によって、アニールされおよび/または変えられた欠陥の正確な性質を調べるために、ラマン・赤外スペクトルの変化を用いることができる。ダイヤモンド構造の変化を分析するために、顕微鏡写真および/または高分解能透過型電子顕微鏡を用いることもできる。
【0066】
ダイヤモンドを金属に浸漬するときに、ダイヤモンドをアニールすることが好ましい。液体金属中にダイヤモンドを浸漬するアニーリングによって、欠陥の少なくとも一部が取り除かれおよび/またはダイヤモンドの色が変えられる。周囲に金属を存在させることによって、例えば、減圧下で可能であった場合よりも遙かに高い温度でアニールを行うことができ、一方で、ダイヤモンドの黒鉛化を最小にすることができる。
【0067】
金属中へのダイヤモンドの浸漬は、1分〜10時間、10分〜3時間、または30分〜1時間で行うことができる。当然のことながら、時間の長さは反応条件および所望の結果に応じて変化させることができる。ダイヤモンドを金属中に保持することを、実質的な溶解または望ましくない表面の欠陥が生じるのに十分な時間で行わないことが好ましい。
【0068】
本発明の処理の後、ダイヤモンドの黒鉛化が発生しないことが好ましい。処理の間に黒鉛化するのは、ダイヤモンドの本来の総重量基準で、ダイヤモンドの10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0069】
ダイヤモンドの黒鉛化の測定は、ダイヤモンドの質量を測定し、濃クロム酸中で1時間まで沸騰させ、石を脱イオン水(好ましくは超音波浴中で)で洗浄し、そして最後に再測定して取り除かれた黒鉛の量を求めることによって行うことができる。この技術は、当業者にはよく知られている。
【0070】
本発明の1つの態様例において、鉛を、黒鉛の存在下、1600℃〜1700℃の範囲の温度まで加熱して、黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体鉛を形成する。鉛をその後ほぼ50℃まで冷却して、ダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和された液体鉛が形成される。ダイヤモンドをアニールするために、その後ほぼ30分間、ダイヤモンドを鉛の中に浸漬する。その後、ダイヤモンドは取り出される。
【0071】
何らかの特定の理論に拘束されることを望む訳ではないが、本発明の発明者らは、ダイヤモンド表面の黒鉛化を生じさせることなくまたは生じても最小限としながら、本発明の金属がダイヤモンドのアニールを高温で行うことができる理由は、ダイヤモンドおよび黒鉛の液体金属による湿潤性(wettability)に関連するという仮説を立てた。
【0072】
固体上での液体の濡れ角(wetting angle)は、形成される界面の界面エネルギー(surface energy)に直接的に関連する。従って、本発明の発明者らは、金属系において、ダイヤモンドと黒鉛との間に観察される濡れ角の違いが、いくつかの重要な意味を有すると理解した。それらは、以下の通りである:
- 液体金属が黒鉛表面の範囲よりもダイヤモンド表面の範囲についてより低い界面エネルギーを形成する場合、黒鉛表面よりもそのような流体に浸漬されるときに、ダイヤモンド表面はエネルギー的により安定である。
- ダイヤモンドの黒鉛化が主としてダイヤモンド表面で発生すると仮定すれば、高温で上記の基準に従う流体中に浸漬したダイヤモンドにおいては、この現象をエネルギー的に抑制することができる。
【0073】
「濡れ角」の用語は、当業者にはよく知られている。液相と固相との間での界面の形成は、その系における自由エネルギーに変化を生じさせる。液滴法の実験において、真空下で保たれる平面固体面上に、液体のしずくを滴下することができる。液滴のメニスカスが固体表面とで形成する角度は、写真により測定することができ、この角が濡れ角[θ]と正式に称される。
【0074】
濡れ角は、古典的関係:
【数1】

(1)
[式中、θは濡れ角であり、σSVは固体表面Sと気相Vとの間の界面エネルギーであり、σSLは固体表面Sと液滴Lとの間の界面エネルギーであり、σLVは液滴Lと気相Vとの間の界面エネルギーである。]
によって界面の形成に必要とされるエネルギー変化を決定するために使用することができる。本明細書で使用する「界面エネルギー(interfacial energy)」という用語は、表面の特定の自由エネルギーを意味する。この式は、[θ]が平衡値であり、関連する表面は平坦(すなわち、原子的に滑らか)で均質であり、液滴に対して不活性であることを前提としている。Wa(付着仕事)は、新たな界面を形成する間のエネルギー変化として規定される。
【0075】
液滴法実験の場合、このことは、固体−液体界面の形成を意味し、
【数2】

(2)
と示される。
【0076】
このことは、Young方程式(1)と組み合わせて、Young-Dupre 式:

(3)
として、付着仕事と濡れ角との関係が示される。
【0077】
真空中の金属メルトについては多くの既存のσLVデータがあるので、
式:

(4)
[式中、σ'LVはdσ'LV/dTの実験的測定値であり、TFは金属の融点である(すべての温度はKelvin単位で測定されていることに注意)]
を用いて種々の温度で得られる濡れのデータからWaを計算することができる。式(3)は所定のシステムについての2σLVの最大の付着仕事を示しているので、この最大値を、湿潤データのいずれかのグラフ的解析についての基準として、温度に対してプロットすることができる。
【0078】
下の表は、
ダイヤモンドおよび黒鉛に対する、いくつかの第IIIA族から第VA族元素およびその合金についての液滴法実験の検討を示している。
【表1】

表は、ダイヤモンドおよび黒鉛に対する元素およびそれらの合金についての液滴法検討から選択されたデータを示す。
【0079】
上の表に示す金属の全ては、黒鉛に対してよりもダイヤモンドに対してより低い界面エネルギーを有する(すなわち、表面をよりよく濡らす)。
好ましくは、本発明において使用する金属は、黒鉛表面に対してよりもダイヤモンド表面に対して、より低い界面エネルギーを形成する。界面エネルギーは、それからダイヤモンドおよび黒鉛表面の性質についての理論的仮定および湿潤データから推定することもできるし、または、可能であれば、実験的に決定することもできる。
【0080】
本発明において使用する金属は、カーボンと反応して安定なカーバイドを形成しないことが好ましい。仮にそのようなことが発生すると、浸漬の際にダイヤモンドが破断される可能性が高くなる。
【0081】
本発明は1つの要旨において、ダイヤモンドをドープする方法を提供する。その方法は、
(i) 黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を供給すること、
(ii) 液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、液体金属の温度を降下させること、
(iii) ドーパントの存在下で、ダイヤモンドを液体金属に浸漬して、ダイヤモンドにドーパントをドープさせること、および
(iv) 金属からダイヤモンドを取り出すこと
を含む。
【0082】
ダイヤモンドの光学特性を向上させることおよび/もしくはダイヤモンドの欠陥を低減させることに関して記載する本発明の好ましい特徴は、本明細書に記載するダイヤモンドのドーピング方法についても同様に当てはまる。ドーパントは、ホウ素、リン、硫黄、リチウム、アルミニウムおよびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物から選択することができる。ドーパントは、ダイヤモンドの浸漬の前に、液体金属中に供給することができる。ドーパントは、ダイヤモンドの表面にコーティングしたり塗布したりすることもできる。液体金属中でのダイヤモンドの浸漬およびアニーリングを行うと、ドーパントはダイヤモンドの格子の中に拡散する。
【0083】
本明細書に記載するダイヤモンドをドープする方法は、大きなドーパント原子、例えばリンおよび硫黄を用いてダイヤモンドにドーピングを行うために特に有用である。このサイズのドーパント原子は、ダイヤモンドの成長の間に容易に組み込むには大き過ぎるため、イオン注入に用いるにはしばしば破壊的である。アニーリングの際に、大部分のドーパントを使用するイオン注入を用いる従来技術の試みは、表層の黒鉛化の進行によって必然的に妨げられる。本発明の方法は、ダイヤモンドをアニーリングおよびドーピングするために高温を使用する一方で、ダイヤモンドの黒鉛化を最小にすることができる方法を提供する。このことは、液体金属の中にダイヤモンドを浸漬して、黒鉛に対してよりもダイヤモンドに対してより低い界面エネルギーを形成することによって達成することができる。
【0084】
本発明は、もう1つの態様において、
液体金属を保持するための開放ベッセル、
液体金属の中にカーボンを少なくとも部分的に浸漬するためのプランジャー;
液体金属の中にカーボンを少なくとも部分的に浸漬するためのホルダー;
液体金属の中にプランジャーを移動させる手段;
液体金属の中にプランジャーを保つための手段;
液体金属からプランジャーを取り出すための手段;
原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルを供給するための、任意の手段;
液体金属の中にダイヤモンドを含むホルダーを移動させる手段;
液体金属の中にホルダーを保持する手段、
液体金属からダイヤモンドを含むホルダーを取り外す手段;
ダイヤモンドを冷却する一方で、液体金属の外へダイヤモンドを保持する手段、
そして、開放ベッセルの雰囲気を制御する手段
を有する装置を提供する。
【0085】
ベッセル、金属の中にカーボンを少なくとも部分的に浸漬するためのホルダー、および液体の中にカーボンを少なくとも部分的に浸漬するためのプランジャーは、(しばしば約1500℃を越える)高温および苛酷な反応条件に耐えることができる、好適な材料によって形成することができる。
【0086】
プランジャーおよびホルダーは、高温での熱衝撃に耐え得る材料で形成されていることが必要である。窒化ホウ素が好適な材料であることが判明している。しかしながら、それは、高価であって、ダイヤモンド・ホルダーに必要とされる複雑な構造に成形することは困難であり得る。本発明の発明者らは、高温アルミナ・パーツを熱衝撃耐性アルミナセメントでコーティングすることによって、好適なプランジャーおよびホルダーを製造し得ることを見出した。ダイヤモンド・ホルダーの例を図5に示す。プランジャーの例を図6に示す。
【0087】
本発明の発明者らは、高純度アルミナ、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、クロム―アルミナ、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、または1800℃までの温度に耐え得るその他のセラミックのいずれかから形成される標準的ルツボが、液体金属を含ませるベッセルとして用いるのに有用であるということを見出した。ルツボは、使用後に固化した金属スラグの取り出しを容易にするため、テーパー壁構造を有することが好ましい。ルツボは、溶融した金属によって湿潤化されない材料で形成することが好ましい。
【0088】
装置は、原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルを供給するための手段を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
以下、図面を参照しながら、実施例によって本発明をより詳細に説明する。
【図1】図1は、安定化流体の中にダイヤモンドを浸漬する前および間で、原子状水素ラジカルを使用するダイヤモンド処理ランの間での、加熱エレメントの典型的温度プロファイルを示す簡略図であって、ルツボの図と共に、時間に対するヒーター温度のプロットを示している。ルツボの図は、各段階における、プランジャー、ダイヤモンド・ホルダー、およびプラズマ源の典型的相対位置を示しており、黒鉛を黒色で示し、金属を斜線(固体)または波状線(液体)で示している。
【図2】図2は、水素ラジカルおよび/もしくはプラズマ源を存在させない、ダイヤモンド処理ランの間の、加熱エレメントの典型的温度プロファイルを示す簡略図であって、ルツボの図と共に、時間に対するヒーター温度のプロットを示している。ルツボの図は、各段階における、プランジャーおよびダイヤモンド・ホルダーの典型的相対位置を示しており、黒鉛を黒色で示し、金属を斜線(固体)または波状線(液体)で示している。
【図3】図3は、種々の固体面上における流体の湿潤化挙動についての簡略説明を示している。
【図4】図4は、本発明のプロセスを実施するための基本的な装置の模式図を示している。
【図5】図5は、統合された特徴を示すセラミック・ダイヤモンド・ホルダーの模式的断面図を示している。
【図6】図6は、統合された特徴を示すセラミック・プランジャーの模式的断面図を示している。
【符号の説明】
【0090】
100 脱気、
105 溶融
110 溶解
115 プラズマ開始
120 エッチング
125 浸漬
130 取り出し
135 冷却
140 融点
145 水素を使用するダイヤモンド処理プロセス
200 脱気、
205 溶融
210 溶解
225 浸漬
235 冷却
240 融点
250 シャットダウン
300(a) 非濡れ性 θ>90度
305(b) 濡れ性θ<90度

500 外径6.35mmの高純度アルミナ管
505 高力アルミナセメント
510 レーザーカットされた高純度アルミナ・プレート
515 アルミナ熱電対スリーブ
520 タイプC熱電対
525 ダイヤモンド
600 外径6.35mmの高純度アルミナ管
605 アルミナ熱電対アセンブリ
610 高力アルミナセメント
615 レーザーカットされた高純度アルミナ・プレート
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1は、安定化流体へのダイヤモンドの浸漬の前に周囲水素プラズマエッチング・ステップの追加、および処理中のプラズマ水素ソースの維持を伴う典型的ダイヤモンド処理を示している。時刻0で、固体金属(斜線で示す)および黒鉛ブロック(黒の実線で示される)がルツボ内に置かれる。その後、ルツボを金属の融点以上に加熱して、液体金属(波状線で示す)および黒鉛を供給する。黒鉛は、プランジャーによって、液体メニスカスの直ぐ下へ押されることが好ましい。遠隔プラズマ源装置、マイクロ波発振器、直流アーク・ジェットまたは他の手段のいずれかによって、水素プラズマをメニスカスの上方へ直接的にとどめる。プランジャーは、液体金属内に黒鉛を保持し、一方、カーボンを少なくとも部分的に金属中に溶解させて、黒鉛に関してカーボンで飽和され、および低濃度の原子状水素を含む金属を供給する。プランジャーを徐々に動かして、好ましくはルツボの底部における液体の最も熱い部分へ、黒鉛ブロックを液体の中を下方に通して移動させる。その後、液体金属がダイヤモンドに関してカーボンで飽和されるまで、金属の温度を降下させる。
【0092】
ホルダーに取り付けられるかまたは保持されるダイヤモンドをそれから降下させて、プラズマの柱のちょうど内側の位置へ回転させ、10分までで、黒鉛の表面のいずれかの顕微鏡的特徴(feature)をエッチング除去する。それからダイヤモンドは液体金属に浸漬する。ダイヤモンドは、アニーリングに十分な長さの時間で金属の中に保持される。ダイヤモンドをアニーリングすることによって、ダイヤモンドから欠陥の少なくとも一部が取り除かれ、および/またはダイヤモンドの色が変えられることになる。この間、水素プラズマは、メニスカスの上側において低濃度で維持される。その後、金属は、その金属の融点よりもまだ高い温度であるが、好ましくは1500℃未満の温度へ冷却される。ダイヤモンドを含むホルダーはその後ゆっくりと金属からプラズマの柱の中へ取り出される。ダイヤモンドおよびホルダーはそれからプラズマから外側へ、そしてチャンバーの頂部へ移される。プラズマをオフにして、装置を室温まで冷却する。当然のことながら、各ダイヤモンドの処理の後に、金属を室温まで冷却したり、またはプラズマをオンにしたりオフにしたりすることは、必ずしも必要ではない。その代わりに、液体金属を使用して、多数のダイヤモンドを逐次的にまたは同時に処理することができる。
【0093】
図2は、システムの水素プラズマを用いない、典型的ダイヤモンド処理を示す。時刻0で、固体金属(斜線で示す)および黒鉛ブロック(黒の実線で示される)がルツボ内に置かれる。その後、ルツボを金属の融点以上に加熱して、液体金属(波状線で示す)および黒鉛を供給する。黒鉛は、プランジャーによって、ルツボの底部へ押されることが好ましい。プランジャーは、液体金属内に黒鉛を保持し、一方、カーボンを少なくとも部分的に金属中に溶解させて、黒鉛に関してカーボンで飽和された金属を供給する。その後、液体金属がダイヤモンドに関してカーボンで飽和されるまで、金属の温度を降下させる。ホルダーに取り付けられるかまたは保持されるダイヤモンドをそれから液体金属の中に浸漬する。ダイヤモンドは、アニーリングに十分な長さの時間で金属の中に保持される。
【0094】
ダイヤモンドをアニーリングすることによって、ダイヤモンドから欠陥の少なくとも一部が取り除かれ、および/またはダイヤモンドの色が変えられることになる。その後、金属は、その金属の融点よりもまだ高い温度であるが、好ましくは1500℃未満の温度へ冷却される。ダイヤモンドを含むホルダーはその後金属から取り出され、装置を室温まで冷却する。当然のことながら、各ダイヤモンドの処理の後に、金属を室温まで冷却することは、必ずしも必要ではない。その代わりに、液体金属を使用して、多数のダイヤモンドを逐次的にまたは同時に処理することができる。
【0095】
本明細書に記載するプロセスを実施するのに適する基本的な装置を、図4に示す。遭遇し得る高温に耐える材料で形成された支持ステージ構造(3)の上の高温加熱エレメント(2)を収容するように、標準的水冷真空槽(1)を使用する。これは、高温セラミック材料から、または、好ましい場合には、被覆黒鉛から好適に形成することができる。電力は、チャンバー(5)の外側に向って延びる電力フィードスルーに連絡する導電部(4)を用いて加熱エレメント(2)へ供給される。高温熱電対(6)を用いて、電力送出ソースにフィードバック制御を送る。本発明のもう1つの態様において、非接触式温度センサ、例えば赤外パイロメーターを使用して、電力送出ソースにフィードバック制御を送ることもできる。ルツボ(7)を加熱エレメント(8)より上方に配置して、そのプロセスで使用する溶融金属または合金を収容する。理想的には、凝固する金属または合金の取り出しを容易にし、および、異なる金属または合金系をその装置で反復使用できるように、ルツボはテーパー壁を有すべきである。ルツボは、溶融材料の底部と頂部との間において少なくとも50℃の温度勾配を確保するため、適当な高さを有することが好ましい。
【0096】
チャンバーの頂部に取り付けられた線形および回転マニピュレータ(9)、(10)を用いて、プランジャー(11)およびダイヤモンド・ホルダー(12)がルツボ内の溶融材料の内外へ動かされる。プランジャーおよびウェーハは、ルツボ内の溶融材料およびカーボンに対して不活性な、高温耐熱材料で形成されることが好ましい。プランジャーおよびダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、熱電対(13)が内側に配置される中空管構造を有しており、実験の間、各部品の末端での温度データを収集する。これらは、チャンバーの最頂部から引き出されるフィードスルーに接続されている(図示せず)。耐火性セラミックから造られる場合、プランジャーおよびダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、これらのパーツが溶融材料の内外に動かされる際の高熱衝撃条件に耐えるように、硬化セラミックセメントの薄い適用で被覆される。プランジャーは、ルツボ内の材料の(一旦それが溶解した)最も熱い部分に黒鉛のピース(14)を押し込むために使用される。溶融材料がカーボンで飽和されて、過剰部分を利用することを確保するため、十分な黒鉛を使用する必要がある。必要とされる黒鉛の最小量は、文献において広く利用可能な相平衡データから算出される。
【0097】
ソースおよびそれによって生成するプラズマの柱は、プランジャーを安定化液体の内外に動かすために使用するものと同様の単軸線形マニピュレータ(20)を使用して、メニスカスの上方で昇降させることができる。リーク弁またはマス・フロー・コントローラ(図示せず)によって、純粋な水素ガスをプラズマ発生装置内に供給して、安定化流体中に浸漬する前に、ダイヤモンド表面上の何らかの顕微鏡的黒鉛領域のエッチングおよび除去に使用する。処理の持続時間が長くなるにつれてメニスカス上もしくはその近くに生じ得る何らかの黒鉛核をエッチング除去するため、処理プロセスの間中、プラズマを点火状態に維持し、流体メニスカスの上方に保持する。流体からの最終的に除去する際、除去の間に表面に付着し得る何らかの逸脱した材料もしくは表面のスラグをエッチング除去するため、ダイヤモンドを短時間、プラズマの中に保持することができる。本発明の他の態様例においては、他と異なってポンプ送りされる遠隔プラズマ源についてよりも遙かに高い圧力(即ち、50kPa以上)で、メニスカスより上方にプラズマを容易に当てることができるという追加の利点を伴って、直流アーク・ジェットを用いることができる。本発明のさらにもう1つの態様例において、ルツボの直ぐ上方に取り付けられた標準2.45GHzのマイクロ波発振器を用いて、液体金属のメニスカスの上方に水素プラズマを発生させることができる。本発明の別の態様例において、水素プラズマは、これも流体メニスカスの上方に位置される高温のフィラメント構造上に水素ガスを通過させることによって水素プラズマを発生させることができる。
【0098】
加熱エレメントを包囲している装置のホットゾーンは、関連する高温に耐え得る耐熱性材料で形成された同心状の耐熱性シールディング(15)によって囲まれている。ホットゾーン(16)よりも上方の更なる熱シールドは、ルツボの温度変化(ramping)の間、ダイヤモンド保持構造(12)およびその内容物の高温に対する待避領域(refuge area)を提供するように使用される。装置の頂部(17)での冷たい不活性ガスの導入、および装置の底部(18)でのそれに続く排出によって、高温へのランの間にダイヤモンド上でのある程度の冷たい流れを確保し、そして、ダイヤモンドの処理の準備ができるまで、400℃未満の温度に留めることを確実に行う。この流れは、(18)で接続される絞り弁を使用して調整され、動作の間、設定圧力が維持される。水素プラズマを使用しない本発明の態様例において、不活性ガスのこのバックグラウンド圧は、ルツボ内の溶融材料の表面からの蒸発を最小とするために、周囲圧力近くに維持される。水素プラズマを使用する本発明の態様例において、ダイヤモンドを冷却するために用いられる不活性ガスフィードは、必要に応じて、バックグラウンド圧を維持するためにチャンバー内に供給することができる純粋な水素フィードと置き換えられる。チャンバー正面(図示せず)に接続されている更なるゲート制御された高真空ポンプによって、プロセスの初期段階の間に0.001Pa以下の圧力に脱気して、処理プロセスに有害な酸素およびその他の反応性ガスがシステムから完全に除去されることを確保することができる。システムの範囲内の条件の精密な制御は、当業者に知られている方法で、監視ソフトウェアおよびハードウェアシステムを使用して構成される。
【実施例】
【0099】
本発明を、以下の実施例を参照して更に説明するが、これに限定される訳ではない。
(実施例1)
以下の例では、1種の中の欠陥をアニールするための方法を用いる天然ダイヤモンドの処理を説明する。最終結果は石の黄色の色彩の強度を低下させることであり、これはGIAカラーグレーディングスケールなどの工業規格のグレーディングシステムによって等級付けされる明度(colour value)を向上させる。処理のために選択されるダイヤモンドは、最初に、過剰の硫酸および硝酸中で10分間煮沸して、いずれかの表面不純物が除去される。それは次いで、超音波浴中の蒸留水で洗われて、乾燥させられる。ダイヤモンドは、0.017gに秤量される。ダイヤモンドはそれから、同様の色見本の石と一緒に、顕微鏡下で検査され、制御された照明条件下で写真撮影される。通常、GIAグレードL〜Zの天然石または合成石を、プロセスのアニーリング作用を示すために使用することができる。この場合、GIAカラーV(淡黄色)のダイヤモンドが選択される。次に、ダイヤモンドを注意深くダイヤモンド・ホルダーのセラミック・プレートの間に置き、そして少量の高温アルミナセラミック・ペーストを用いて、それらのパーツを一緒に固定する。ホルダーと接触する裸の部分が最小になることを確保するように、ダイヤモンドを保持することが好ましい。ホルダーは、それからメインチャンバーにおいて所定位置に設置される。ここで、ダイヤモンド・ホルダーは、完全に格納されており、複数層の熱シールドによって、炉のメインホットゾーンからはシールドされている。3kgの高純度(99.999+%)の鉛金属をそれから高純度アルミナルツボに加える。これとともに、それぞれ17g以上の重量の3個の純粋な(99.9999+%)黒鉛ブロックを加えて、溶解の間に大過剰に存在することを確保する。ルツボをヒーター・ステージ上に置いて、チャンバーをシールする。
【0100】
チャンバーは、最初に、付属の高真空ポンプを使用して、高真空(0.001Pa未満の)圧へ脱気され、高純度のOおよびHOゲッターされたアルゴンを用いてフラッシュした。それから電力を加熱エレメントに供給して、システムを300℃で平衡化および脱ガスする。1時間後、システムをアルゴンによって更に2回フラッシュする。絞り弁のソフトウェア、マス・フロー・コントローラ、および粗い減圧ポンプの制御によって、圧力を200sccmの流量のアルゴンの80kPa〜87kPaに維持する。ここで、電力を注意深くヒーターに適用して、エレメントを1650℃を超える温度へ上昇させる。一旦材料がルツボに溶けると、プランジャーを動作させてグラファイトブロックを底部へ押し込み、処理の間中、それらをそこに留まらせる。ヒーター・プログラムがピーク温度に達すると、15分間保持して、黒鉛がサイクルにおいて最も熱い位置で平衡レベルまで溶けることを確保する。それからヒーター出力をピークの50℃下まで下げ、メルトの底部での温度の示度が等しくなるまで残す。それから、ダイヤモンド・ホルダーを熱シールドの後方から急速に移動させ、溶融材料の頂部に浸漬し、そこで1500℃を越える温度にて最低10分間、保持する。
【0101】
この段階では、
1) ヒーターに印加される電力は、溶融鉛の内部温度がプランジャーのところで400℃で記録されるように、それから穏やかに下げられる。
ダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、それから取り外されて、熱シールドの後方に配置される。ルツボの底部に黒鉛ブロックを保持しているプランジャーは、開始位置へと退避させられる。
または、
2) ヒーターに印加される電力は、溶融鉛がプランジャーのところで1400℃で記録されるまで、それから穏やかに下げられる。ダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、それから取り外されて、熱シールドの後方に配置される。ヒーター電力は、プランジャーの温度が400℃を記録するまで、それから穏やかに傾斜をつけて降下させられる。プランジャーは、それから、ルツボから開始位置へと退避させられる。
【0102】
装置は、冷却され、大気圧まで戻され、そして、ダイヤモンド・ホルダーが取り出される。一旦ホルダーから取り出して、ダイヤモンドを硝酸および硫酸で10分間再び煮沸していずれかの表面汚染を除去して、それから顕微鏡下で検査する。それから、ダイヤモンドを色見本の石およびGIAカラーグレードチャートと対比して、色0であることが認められる。次いで、ダイヤモンドを再計量して、前回と同様の0.017gの重量であることが認められ、著しい質量変化が起こらなかったことが示される。重要なことに、黒鉛化または溶解による表面分解は、観察されない。
【0103】
(実施例2)
GIAグレーディング・スケールで装飾的な淡黄色であると級付けされる主な(111)および(100)表面を示す、磨かれたHPHT生成されたダイヤモンドを使用して、実施例1に記載した手法を実施する。ダイヤモンドを、最初に、2:1の比の濃硫酸および硝酸の過剰の混合物中で10分間煮沸する。次いで、超音波浴内で蒸留水で洗浄し、乾燥される。それからダイヤモンドを、同様の色見本の石と一緒に、顕微鏡下で検査し、制御された照明条件下で写真撮影する。ダイヤモンドは、0.026gに秤量される。ダイヤモンドを注意深くダイヤモンド・ホルダーのセラミック・プレートの間に置き、そして少量の高温アルミナセラミック・ペーストを用いて、それらのパーツを一緒に固定する。ホルダーと接触する裸の部分が最小になることを確保するように、ダイヤモンドを保持することが好ましい。ホルダーは、それからメインチャンバーにおいて所定位置に設置される。ここで、ダイヤモンド・ホルダーは、完全に格納されて、複数層の熱シールドによって、炉のメインホットゾーンからはシールドされている。3kgの高純度(99.999+%)の鉛をそれから高純度アルミナルツボに加える。これとともに、それぞれ17g以上の重量の3個の純粋な(99.9999+%)黒鉛ブロックを加えて、溶解の間に大過剰に存在することを確保する。ルツボをヒーター・ステージ上に置いて、チャンバーをシールする。
【0104】
プロセスは、実施例1に記載の手法と同様に続けられる。しかしながら、この場合には、ダイヤモンドを溶融鉛の中に浸漬するのは、実施例1では10分であるのに対して、1時間である。実験終了後にダイヤモンドを回収し、表層破片を取り除くために過剰の濃硝酸および硫酸中で煮沸する。それから超音波浴内で蒸留水で洗浄し、乾燥させる。ダイヤモンドはそれから、同様の色見本の石と一緒に、顕微鏡下で検査され、制御された照明条件下で写真撮影される。ダイヤモンドを再計量して、識別可能な質量減少を伴うことなく、0.026gの重量であることが認められる。ダイヤモンドは、GIAグレーディング・スケールで色P〜Qであると認定される。さらにまた、いずれの研摩表面においても、識別可能な可視浸食および/または黒鉛化はない。
【0105】
(実施例3)
この実施例では、透明な天然ダイヤモンドを、高温で、溶融材料の中にダイヤモンドと共に入れられるホウ素を用いて、ドープする。透明な単結晶CVD成長ダイヤモンド断片を採取し、硫酸:硝酸の2:1混合物中で10分間煮沸する。ダイヤモンドはそれから超音波浴内で蒸留水で洗浄し、乾燥させる。ダイヤモンドは、0.021gに秤量される。ダイヤモンドはそれから、同様の色見本の石と一緒に、顕微鏡下で検査され、制御された照明条件下で写真撮影される。これは、同じダイヤモンドの断片であっても、同じ条件下で成長させたダイヤモンドであっても好ましい。この場合、ダイヤモンドは、GIAスケールで本質的に無色(D〜G級)であると記録される。厚さ3mmの99.6%の純粋な元素ホウ素を切り出し、アセトンで、次いで蒸留水で洗浄し、乾燥させる。これを、実施例1と同様に、セラミック・ダイヤモンド・ホルダーの中に、直接接触しないようにダイヤモンドと並べて配置し、高温アルミナセラミック・ペーストを用いて固定する。この操作は、その後の処理工程において、ダイヤモンドの最大可能表面積が溶融材料にさらされるように行うことが好ましい。
【0106】
ホルダーは、それからメインチャンバーにおいて所定位置に設置される。ここで、ダイヤモンド・ホルダーは、完全に格納されて、複数層の熱シールドによって、炉のメインホットゾーンからはシールドされている。2.1kgの純粋な(99.99)スズ金属をそれから高純度アルミナルツボに加える。これとともに、それぞれ17g以上の重量の3個の純粋な(99.9999+%)黒鉛ブロックを加えて、溶解の間に大過剰に存在することを確保する。ルツボをヒーター・ステージ上に置いて、チャンバーをシールする。プロセスは、実施例1に記載の手法と同様に続けられる。しかしながら、この場合には、ダイヤモンドを溶融スズの中に浸漬するのは、実施例1では10分であるのに対して、1500℃で15分間である。
【0107】
ダイヤモンドは、実験終了後回収される。表層破片を取り除くために、過剰の濃硝酸および硫酸中で煮沸する。次いで、濃硫酸中で調製される過剰のクロム酸を用いて1時間煮沸される。最後に、ダイヤモンドはそれから超音波浴内で蒸留水で洗浄し、乾燥させる。ダイヤモンドはそれから、顕微鏡下で検査され、制御された照明条件下で写真撮影され、淡い青色を帯びていると認められる。ダイヤモンドを再計量して、1mgの質量を失って、0.020gの重量であると認められる。これは、炭化ホウ素の形成が生じた表面エロージョンによるものである。
【0108】
(実施例4)
以下の例では、石の内部の欠陥をアニールする方法を用いて、粗天然ダイヤモンドを処理ことを説明する。最終結果は石の黄色の色彩の強度を低下させることであり、これはGIAカラーグレーディングスケールなどの工業規格のグレーディングシステムによって等級付けされる明度(colour value)を向上させる。処理のために選択されるダイヤモンドは、最初に、過剰の硫酸および硝酸中で10分間煮沸して、いずれかの表面不純物が除去される。それから濃硫酸と共にクロム酸中で1時間煮沸して、表面の破片または埋設黒鉛のいずれかの領域を除去する。最後に、それから超音波浴内で蒸留水で洗浄し、乾燥させる。
【0109】
ダイヤモンドは、0.105gと秤量される。ダイヤモンドはそれから、顕微鏡下で検査され、制御された照明条件下で写真撮影され、内部に幅広い黄変の領域があると認められる。次に、ダイヤモンドを注意深くダイヤモンド・ホルダーのセラミック・プレートの間に置き、そして少量の高温アルミナセラミック・ペーストを用いて、それらのパーツを一緒に固定する。ホルダーと接触する裸の部分が最小になることを確保するように、ダイヤモンドを保持することが好ましい。ホルダーは、それからメインチャンバーにおいて所定位置に設置される。ここで、ダイヤモンド・ホルダーは、完全に格納されており、複数層の熱シールドによって、炉のメインホットゾーンからはシールドされている。2kgの高純度(99.9999%)スズ金属をそれから熱分解窒化ホウ素ルツボに加える。これとともに、それぞれ17g以上の重量の3個の純粋な(99.9999+%)黒鉛ブロックを加えて、溶解の間に大過剰に存在することを確保する。ルツボは、ヒーター・ステージおよびチャンバー溶封に配置される。
【0110】
チャンバーは、最初に、付属のターボモレキュラ真空ポンプを使用して、高真空(0.001Pa未満の)圧へ脱気され、高純度のOおよびHOゲッターされたアルゴンを用いてフラッシュした。それから電力を加熱エレメントに供給して、システムを300℃で平衡化および脱ガスする。1時間後、システムをアルゴンによって更に2回フラッシュする。その後、ターボモレキュラポンプを使用して高真空(すなわち、0.001Pa未満)圧まで戻される。ここで、電力を注意深くヒーターに適用して、エレメントを1800℃を超える温度へ数時間上昇させる。
【0111】
一旦システムが高温で安定化されると、プランジャーアセンブリを液体金属の中まで降下させて、金属表面の直ぐ下方に黒鉛ブロックを保持するために用いる。遠隔プラズマ源装置の高さを制御する線形マニピュレータを、プラズマ源装置のアパーチャが溶融金属のメニスカスの10cm上方に保たれるように移動させる。遠隔プラズマ源装置の本体部に水素を10sccmの流量で供給して、電力装置を起動させる。システムは、ブロックから現れる黒鉛の顕微鏡的断片を金属メニスカスの頂部に浮かせて、エッチング除去されるように、10〜60分の間放置される。金属メニスカスの表面を過剰に加熱しないように水素プラズマの出力密度を10W/cm以下に保ち、材料の望ましくない反応や隣接した領域の外側のエッチングが最低限に保たれる。この間、プランジャーは黒鉛ブロックを、溶融金属の中を通して、ルツボ底部における金属の最も熱い領域の方へゆっくり押し下げる。それからヒーター温度を1750℃まで降下させて15分間そのままにして、溶融金属がダイヤモンドに関してカーボンで飽和されることを確実にする。
【0112】
それからダイヤモンド・ホルダーを降下させて、プラズマ源装置の経路の中へ回転させ、10分間そのままにして、処理前の酸洗浄の間に除去しきれなかった可能性がある顕微鏡的黒鉛特徴をエッチング除去する。それからダイヤモンドを溶融金属メニスカスの直ぐ下方へ1時間以上浸漬して、アニーリングを行う。この間に、水素プラズマ源装置を金属メニスカスの6cm上方へ移させ、メニスカス上もしくはその近くに生じ得る黒鉛核をエッチング除去する手段を提供する。これらは処理中のダイヤモンドの中またはその近くに生成すると問題となり得るため、表面に原子状水素を存在させることによってこの問題が起こることを防止する。
【0113】
一旦処理が完了すると、プラズマ源装置を金属メニスカスから離して上へ移動させる。この段階では、
1) ヒーターに印加される電力は、溶融スズの内部温度がプランジャーのところで500℃で記録されるように、それから穏やかに下げられる。ダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、それから取り外されて、プラズマの前に5分間保持された後、退避させて熱シールドの後方に配置される。ルツボの底部に黒鉛ブロックを保持しているプランジャーは、開始位置へと退避させられる。
または、
2) ヒーターに印加される電力は、溶融スズがプランジャーのところで1400℃で記録されるまで、それから穏やかに下げられる。ダイヤモンド・ホルダーアセンブリは、それから取り外されて、プラズマの前に5分間保持された後、退避させて熱シールドの後方に配置される。ヒーター電力は、プランジャーの温度が500℃を記録するまで、それから穏やかに傾斜をつけて降下させられる。プランジャーは、それから、ルツボから開始位置へと退避させられる。
【0114】
装置は、冷却され、アルゴンガスを使用して大気圧まで戻され、そして、ダイヤモンド・ホルダーが取り出される。一旦ホルダーから取り出して、ダイヤモンドを硝酸および硫酸で10分間再び煮沸していずれかの表面汚染を除去して、それから顕微鏡下で検査する。ダイヤモンドは、それから前処理の写真と同一の制御された条件および位置にて、撮影される。ダイヤモンドは、黄変の密度および変色領域のサイズが減少したことが認められる。次いで、ダイヤモンドを再計量して、0.104gの重量であることが認められ、著しい質量変化が起こらなかったことが示される。重要なことに、黒鉛化または溶解による相当な表面分解は、観察されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドを処理する方法であって、
(i)黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を供給すること、
(ii)液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、液体金属の温度を降下させること;
(iii)ダイヤモンドを液体金属に浸漬すること;および
(iv)金属からダイヤモンドを除去すること
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(iii)において、ダイヤモンドを液体金属に浸漬して、ダイヤモンドの欠陥を減少させおよび/またはダイヤモンドの光学特性を向上させて、ダイヤモンドの欠陥を減少させおよび/またはダイヤモンドの光学特性を向上させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iii)において、ダイヤモンドをドーパントが存在する液体金属に浸漬して、ダイヤモンドにドーパントをドープさせて、ダイヤモンドをドープする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ドーパントが、ホウ素、硫黄、リン、リチウム、アルミニウムおよびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属が、単一の金属元素、合金、および/または2種もしくはそれ以上の金属元素を含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
金属が、鉛、ビスマス、スズ、金、銀、インジウム、ガリウム、アンチモン、ニッケル、コバルト、アルミニウムおよびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
金属が鉛である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
方法が、不活性雰囲気を含む反応チャンバーにおいて実施される請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ダイヤモンドが原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルにさらされる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ダイヤモンドを液体金属に浸漬する時に、液体金属は1000〜2000℃の範囲の温度である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ダイヤモンドを液体金属に浸漬する時に、液体金属は1550〜1750℃の範囲の温度である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ダイヤモンドを取り出す前に、液体金属は1500℃未満の温度に冷却される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
方法を、1Pa〜133kPaの範囲の圧力で実施する請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(a)ベッセルを供給すること、
(b)ベッセルの中に固体状態の金属を配置すること、
(c)ベッセル内にカーボンを配置すること、
(d)任意にベッセル内に不活性雰囲気を供給すること、
(e)加熱して、黒鉛析出に関してカーボンで飽和された液体金属を供給すること
を含む方法を実施することによってステップ(i)を実施する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
液体金属の全体に温度勾配が存在するように液体金属を加熱する請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
液体金属の中の温度勾配は、液体、好ましくはベッセル内の液体の底部からメニスカスへ少なくとも10℃である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属の炭素源が黒鉛である請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ダイヤモンドが合成ダイヤモンドである請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ステップ(ii)において、液体金属がダイヤモンド析出に関してカーボンで飽和されるように、温度を10〜50℃で降下させる請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
液体金属を保持するための開放ベッセル、
少なくとも部分的にカーボンを液体金属に浸漬するためのプランジャー、
少なくとも部分的にダイヤモンドを液体金属に浸漬するためのホルダー、
液体金属の中にプランジャーを動かす手段、
液体金属内にプランジャーを保持するための手段、
原子状水素プラズマおよび/または原子状水素ラジカルを供給するための任意の手段、
液体金属からプランジャーを取り外すための手段、
ダイヤモンドを含むホルダーを液体金属の中に動かす手段、
前記ホルダーを液体中に保持するための手段、
液体金属から、ダイヤモンドを含むホルダーを取り出す手段、
ダイヤモンドを冷却する一方で、液体金属の外へダイヤモンドを保持する手段、および
開放ベッセルの雰囲気を制御する手段を有してなる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533502(P2012−533502A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520095(P2012−520095)
【出願日】平成22年7月19日(2010.7.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001368
【国際公開番号】WO2011/007156
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512012654)デザインド・マテリアルズ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DESIGNED MATERIALS LIMITED
【Fターム(参考)】