説明

カーボンナノチューブに対して結合能を有するペプチド、および当該ペプチドの利用

【課題】カーボンナノチューブに対する結合能を有する新規のペプチドを見出すとともに、当該ペプチドの利用方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−W(X1は0〜1個の任意のアミノ酸である。)を含むペプチドを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブに対して結合能を有するペプチド、および当該ペプチドの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素の結晶構造体としてはダイヤモンドおよびグラファイトなどが古くから知られているが、近年の研究によって、フラーレン、カーボンナノホーンおよびカーボンナノチューブなどの新規な結晶構造体が見出されている。
【0003】
フラーレン、カーボンナノホーンおよびカーボンナノチューブは、炭素原子の6員環または5員環によって形成されており、ナノメートルスケールの微細構造を有することから、ナノ黒鉛構造体と呼ばれている。ナノ黒鉛構造体は種々の性質を有しており、半導体装置、表示装置、燃料電池、化粧品、薬品送達システム、センサーなどを製造するための様々な分野で利用されている。
【0004】
近年、ナノ黒鉛構造体の1つであるカーボンナノチューブ(以下、「CNT(carbon nano tube)」ともいう。)が、アスベストと同様に発癌性を有していることが明らかになった。それ故に、カーボンナノチューブを簡便に検出する方法が求められている。
【0005】
CNTは、単層の外層を有するシングルウオールカーボンナノチューブ(以下、「SWCNT(single wall carbon nano tube)」ともいう。)と、複層の外層を有するマルチウオールカーボンナノチューブ(以下、「MWCNT(multi wall carbon nano tube)」ともいう。)との2つのタイプに大別される。これらのCNTを検出する方法としては、従来から顕微鏡によって検出する方法が用いられてきた。SWCNTは非常に小さいので、電子顕微鏡を用いなければ検出できない。しかしながら、電子顕微鏡による検出方法は、非常に煩雑であるという問題点を抱えていた。
【0006】
このような状況下において、CNTに対して結合能を有するペプチドを用いてCNTを検出する研究が進められている。例えば、特許文献1および非特許文献1には、カーボンナノホーンまたはカーボンナノチューブに結合するペプチドをスクリーニングする方法が開示されているとともに、カーボンナノホーンまたはカーボンナノチューブに結合する、20種類のペプチドの具体的なアミノ酸配列が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−121154号公報(平成18年4月22日公開)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The journal of physical chemistry B (2006), 110, 23623−23627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現在までに見出されているペプチドの種類は少なく、より効果的にCNTを検出するためには、上記ペプチドの種類を増加させる必要がある。
【0010】
本発明は、カーボンナノチューブに対して結合能を有する新規のペプチドを見出すとともに、当該ペプチドの利用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のペプチドは、上記課題を解決するために、50個以下のアミノ酸からなり、アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−W(X1は0〜1個の任意のアミノ酸である。)を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明のペプチドは、アミノ酸配列X2−W−X1−N/T−P/R−W−X3(X1は0〜1個の任意のアミノ酸であり、X2は0〜3個の任意のアミノ酸であり、X3は0〜12個の任意のアミノ酸であり、X2およびX3の少なくとも一方において、1個以上のWが含まれている。)を含むことが好ましく、配列番号1〜15の何れか1つのアミノ酸配列を含むことがより好ましい。
【0013】
本発明のペプチドは、配列番号1〜15のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであっても、配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号7〜15のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
【0014】
また、本発明のペプチドは、配列番号1〜12に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、付加または欠失されたアミノ酸配列からなってもよく、この場合、配列番号13〜15のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0015】
本発明のポリヌクレオチドは、上記ペプチドをコードすることを特徴としている。
【0016】
本発明の組成物は、カーボンナノチューブを標識するために、本発明のペプチドを含有していることを特徴としている。
【0017】
本発明の組成物では、前記ペプチドが標識化合物と結合していてもよい。
【0018】
本発明の組成物は、カーボンナノチューブを標識するために、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有していることを特徴としている。
【0019】
本発明の組成物では、前記カーボンナノチューブがマルチウオールカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0020】
本発明のカーボンナノチューブを標識するためのキットは、本発明のペプチドまたは本発明のポリヌクレオチド、および標識化合物を備えていることを特徴としている。
【0021】
本発明のカーボンナノチューブを標識するためのキットでは、前記カーボンナノチューブがマルチウオールカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0022】
本発明のカーボンナノチューブを標識する方法は、本発明のペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組成物、または本発明のキットを用いることを特徴としている。
【0023】
本発明のカーボンナノチューブを標識する方法は、本発明のペプチドが標識化合物と結合している組成物を、カーボンナノチューブとインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡便かつ高感度にてCNTを検出することができる。
【0025】
本発明によれば、SWCNTおよびMWCNTの両方を簡便かつ高感度にて検出することができるが、両方を比較した場合には、MWCNTをより高感度にて検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】パニング操作のインプット力価およびアウトプット力価の変化を示すグラフである。
【図2】実施例にてスクリーニングされたペプチドのアミノ酸配列を示す模式図である。
【図3】本発明のペプチドのCNT結合能と、公知のペプチドのCNT結合能とを比較したグラフである。
【図4】ペプチドを提示した、蛍光標識されたストレプトアビジンを用いてMWCNTを検出した結果を示す顕微鏡写真である。
【図5】ペプチドを提示した、蛍光標識されたストレプトアビジンを用いてSWCNTを検出した結果を示す顕微鏡写真である。
【図6】パニング操作の各工程を示す模式図である。
【図7】ペプチドを提示した、蛍光標識されたストレプトアビジンの作製方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
〔1.ペプチド〕
本発明のペプチドは、CNTに対して結合能を有するものである。より詳細には、本発明のペプチドは、SWCNTおよびMWCNTの両方に対して極めて高い結合能を有するものである。以下に、具体的な構成について説明する。
【0029】
本発明のペプチドは、アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−W(X1は0〜1個の任意のアミノ酸である。)を含んでいることを特徴としている。X1は、任意のアミノ酸であり得、解離性のアミノ酸(C、Y、H、E、D、KまたはR)であることが好ましく、Rがより好ましい。上記「N/T」にて示されるアミノ酸は、NまたはTである。また、上記「P/R」にて示されるアミノ酸は、PまたはRである。
【0030】
本発明のペプチドは、アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−Wを含みかつCNTに対する結合能が維持されている限り、その長さは特に限定されず、例えば、50個以下、30個以下、20個以下、15個以下、12個以下、10個以下、8個以下、7個以下、6個以下、または5個以下であり得る。
【0031】
本発明のペプチドは、アミノ酸配列X2−W−X1−N/T−P/R−W−X3(X1は0〜1個の任意のアミノ酸であってもよい。本発明のペプチドのアミノ酸の数が30個以下の場合には、例えば、X2およびX3はそれぞれ0〜5個および0〜20個の任意のアミノ酸であり得、あるいは、例えば、X2およびX3はそれぞれ0〜10個および0〜15個の任意のアミノ酸であり得る。また、本発明のペプチドのアミノ酸の数が20個以下の場合には、例えば、例えば、X2およびX3はそれぞれ0〜3個および0〜12個の任意のアミノ酸であり得、あるいは、例えば、X2およびX3はそれぞれ0〜5個および0〜10個の任意のアミノ酸であり得る。本発明のペプチドのアミノ酸の数が15個以下の場合には、X2およびX3はそれぞれ0〜3個および0〜7個の任意のアミノ酸であり得る。
【0032】
本発明のペプチドのアミノ酸の数が20個以下であることが好ましい。具体的には、X2は0〜3個の任意のアミノ酸であり、X3は0〜12個の任意のアミノ酸であり、X2およびX3の少なくとも一方において、1個以上のWが含まれている。)を含むペプチドであることが好ましい。
【0033】
本発明のペプチドにおいて、X2およびX3の少なくとも一方に1個以上のWが含まれている。Wの数は特に限定されないが、3個以下がより好ましく、1個でもよい。なお、X2またはX3に含まれるWは、アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−Wと連続していてもよく、X2またはX3に含まれるWとアミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−Wとの間に1〜3個の任意のアミノ酸が含まれていてもよい。
【0034】
X2に含まれるアミノ酸は任意のアミノ酸であり得、疎水性のアミノ酸を1〜3個含んでいることが好ましい。疎水性のアミノ酸としては、W、I、F、L、M、V、P、AまたはGが挙げられ、W、LまたはPがより好ましい。X3に含まれるアミノ酸もまた任意のアミノ酸であり得、疎水性のアミノ酸(W、I、F、L、M、V、P、AまたはG)を3個以上含んでいることが好ましい。
【0035】
本発明のペプチドが、アミノ酸配列X2−W−X1−N/T−P/R−W−X3を含む場合もまた、CNTに対する結合能が維持されている限り、その長さは特に限定されず、例えば、20個以下、15個以下、12個以下、10個以下、8個以下、7個以下、6個以下、または5個であり得る。
【0036】
本発明のペプチドは、以下に示す配列番号1〜15の何れか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであることがより好ましい。本発明のペプチドは、配列番号3,4,5,6,79,10,11,12および15の何れか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであることがさらに好ましく、配列番号3,4,5および6の何れか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであることがなおさらに好ましい。
【0037】
・LPWWNRWPPVET (配列番号1)
・WWRTPWTEPTPA (配列番号2)
・WWNPWTPQSTPS (配列番号3)
・WNPWNSWSNMRM (配列番号4)
・WNPWWRAPLTGA (配列番号5)
・WNPWAGWTMGHL (配列番号6)
・WWNRW (配列番号7)
・WWRTPW (配列番号8)
・WWNPW (配列番号9)
・WNPWNSW (配列番号10)
・WNPWW (配列番号11)
・WNPWAGW (配列番号12)
・WNRW (配列番号13)
・WRTPW (配列番号14)
・WNPW (配列番号15)
本発明のペプチドは、配列番号1〜15の何れか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、上述したアミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−Wを含みかつCNTに対する結合能が維持されている限り、配列番号1〜12に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、付加または欠失されたアミノ酸配列を含んでいてもよい。本明細書中において。アミノ酸の観点で使用される場合、「1または数個」は、当業者が試行錯誤することなくアミノ酸の置換、付加または欠失を行い得る程度の数が意図され、例えば、1〜30個の範囲内であり得、1〜15個が好ましく、1〜10個が好ましく、1〜7個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましい、1〜3個がなおさらに好ましい。
【0038】
また、本発明のペプチドは、配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列またはその部分配列からなり、配列番号7〜15のアミノ酸配列を含むペプチドであり得る。「配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列またはその部分配列からなり、配列番号7〜15のアミノ酸配列を含むペプチド」は、(1)配列番号1のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号7または13のアミノ酸配列を含むペプチド;(2)配列番号2のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号8または14のアミノ酸配列を含むペプチド;(3)配列番号3のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号9または15のアミノ酸配列を含むペプチド;(4)配列番号4のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号10または15のアミノ酸配列を含むペプチド;(5)配列番号5のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号11または15のアミノ酸配列を含むペプチド;および、(6)配列番号6のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号12または15のアミノ酸配列を含むペプチド、からなる群より選択される。例えば、配列番号1のアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号7のアミノ酸配列を含むペプチドは、WWNRW、WWNRWP、WWNRWPP、WWNRWPPV、WWNRWPPVE、WWNRWPPVET、PWWNRW、PWWNRWP、PWWNRWPP、PWWNRWPPV、PWWNRWPPVE、PWWNRWPPVET、LPWWNRW、LPWWNRWP、LPWWNRWPP、LPWWNRWPPV、LPWWNRWPPVEおよびLPWWNRWPPVETからなる群より選択される。このように、本願明細書を読んだ当業者は、具体的に例示されていなくても、配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列またはその部分配列からなり、配列番号7〜15のアミノ酸配列を含むペプチドを容易に認識し得る。
【0039】
また、本発明のペプチドは、付加的なペプチドを含むものであってもよい。付加的なペプチドとしては特に限定されないが、His、Myc、Flagなどのエピトープ標識ペプチドが挙げられる。
【0040】
本発明のペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているものであればよいが、これに限定されるものではなく、糖鎖やイソプレノイド基などのペプチド以外の構造を含む複合ペプチドであってもよい。アミノ酸の官能基は修飾されていてもよい。アミノ酸はL型であることが好ましいが、これに限定されない。
【0041】
本発明のペプチドは、当該分野において公知の任意の手法に従って容易に作製され得、例えば、組換え発現されても、化学合成されてもよい。すなわち、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内である。化学合成法としては、固相法または液相法を挙げることができる。固相法において、例えば、市販の各種ペプチド合成装置(Model MultiPep RS(Intavis AG)など)を利用することができる。
【0042】
〔2.組成物およびキット〕
本発明の組成物はCNTを標識するための組成物である。より詳細には、本発明の組成物は、SWCNTおよびMWCNTの両方を極めて効果的に標識することができる組成物である。以下に、具体的な構成について説明する。
【0043】
本発明の組成物は、上述したペプチドを含有している。CNTを標識するための第一段階として、標識化合物と結合させるために用いられ、その結果、CNTを高感度かつ簡便に検出することができる。本発明の組成物において、上記ペプチドが標識化合物と結合していてもよい。
【0044】
本発明に利用可能な標識化合物としては特に限定されず、適宜、公知の標識化合物を用いることが可能である。標識化合物としては、例えば、蛍光物質(例えば、FITC、Cy3、Cy5、またはAlexa488)、放射性同位体、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ(例えばHRP)、アルカリホスファターゼなど)、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)を用いることが可能である。
【0045】
ペプチドと標識化合物とを結合させる方法は特に限定されず、適宜、周知の方法を用いることが可能である。また、ペプチドと標識化合物との結合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば、ビオチンと結合したペプチドと、標識化合物と結合したストレプトアビジンとを混合することによって、ペプチドと標識化合物との間接的な結合が可能である(例えば、図7参照)。ストレプトアビジンは4量体を形成しているので、1つの「標識化合物と結合したストレプトアビジン」に対して4つの「ビオチンと結合したペプチド」が結合して複合体を形成する。1つの複合体は、4つのペプチドを介してCNTに結合することができるので、複合体とCNTとの間の結合力が極めて高くなる。当該複合体を用いれば、極めて高感度にてCNTを検出することができる。
【0046】
ビオチンと結合したペプチドを作製する方法は特に限定されない。例えば、ビオチンとペプチドとを直接結合させても間接的に結合させてもよい。ペプチドの構造をできるだけ正常に維持するという観点からは、ビオチンとペプチドとを間接的に結合させることが好ましいといえる。ビオチンとペプチドとを間接的に結合させる場合には、例えば、本発明のペプチドを任意のタンパク質と結合させた後に、ペプチドと結合させたタンパク質に対してビオチンを結合させるか、あるいは、任意のタンパク質にビオチンを結合させた後に、ビオチンと結合させたタンパク質に対して本発明のペプチドを結合させればよい。
【0047】
上述したタンパク質としては特に限定されないが、例えば、N1ドメイン(実施例参照)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)、標識タンパク質(例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、MBP(マルトース結合タンパク質)など)を用いることが可能である。
【0048】
標識化合物と結合したストレプトアビジンを作製する方法は特に限定されない。例えば、標識化合物とストレプトアビジンとを直接結合させてもよく、標識化合物とストレプトアビジンとを間接的に結合させてもよい。適宜、公知の手法に従って、標識化合物と結合したストレプトアビジンを作製すればよい。
【0049】
上述した本発明のペプチドは、SWCNTおよびMWCNTの両方に対して極めて高い結合能を示すが、MWCNTに対してより高い結合能を示す。それ故に、本発明の組成物は、CNTのなかでも特にMWCNTの標識に用いることが好ましいといえる。
【0050】
本発明のキットは、本発明のペプチド、および上述した標識化合物を備えている。本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図されるが、組成物としての一物質中に材料を含有している形態もまた、用語「キット」に包含される。キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましい。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。本発明のキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。
【0051】
本発明のキットは、CNTを標識するためのキットであるが、特にMWCNTを標識するためのキットであり得る。
【0052】
〔3.カーボンナノチューブを標識する方法〕
本発明のCNTを標識する方法は、標識化合物と結合している本発明のペプチドを、CNTとともにインキュベートする工程を包含すればよく、本発明のペプチドを標識化合物と直接的または間接的に結合させる工程をさらに包含してもよい。すなわち、本発明のCNTを標識する方法は、本発明のペプチド、本発明の組成物、または本発明のキットを用いる方法といえる。
【0053】
上記インキュベートする工程の具体的な構成は特に限定されず、例えば標識化合物と結合している本発明のペプチドをCNTと混合し、目的の標識が行われるまで両者を十分に接触させる工程であり得る。
【0054】
なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中にて参考として援用される。
【0055】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1:MWCNTに結合するペプチドのスクリーニング)
ペプチド提示ファージライブラリーとしては、12残基の直線状ランダムペプチドを提示するPh.D.−12TM Phage Library(New England Biolabs社)を用いた。当該ライブラリーは、2.7×10種類の異なるペプチド配列を含むライブラリーである。
【0057】
500μLの0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝液A(0.1M Tris−HCl(pH8.0)、0.1M NaCl、0.1% Tween−20(登録商標))を用いてペプチド提示ファージライブラリーの原液を希釈し、ファージ力価が1.0×1010となるようにファージ溶液を調製した。
【0058】
ファージ力価は、Ph.D.−12TM Phage Library Peptide Library Kit(New England Biolabs社)に付属のプロトコルに従って測定した。具体的には、以下の手順にてファージ力価を測定した。まず、ファージの希釈溶液の系列を作製した。対数増殖中のER2738菌の培養液200μLに、10μLの上記ファージの希釈系列溶液を添加して混合し、5分間静置した。当該混合溶液の全量を、50℃に保温した3mLのアガローストップ(ペプトン:10g/L、酵母エキス:5g/L、NaCl:5g/L、MgCl・6HO:1g/L、精製寒天粉末:7g/L、オートクレーブ処理済み)に添加して混合した後、LB寒天培地プレート(1.25mg/LのIPTG(isopropyl-β-D-thioglactopyranoside)と、1mg/LのX-gal(5−Bromo−4chloro−3−indolyl−β−D−galactoside)を含有)に加え、その後、室温にて10分間静置した。アガローストップが固まった後で、37℃にて一晩の培養を行なった。プレートに出現した青色のプラークの数を計数することによってファージ数を測定し、当該測定値に基づいてファージ力価を算出した。
【0059】
1mgのMWCNT(直径140nm、長さ7μm、ATR社)を、0.02%ウシ血清アルブミンを含んだ500μLの緩衝液Aに分散させて、MWCNTの分散液を調製した。
【0060】
上記分散液(500μL)と上記ファージ溶液(500μL)とを混合して、室温にて10分間、混合した。遠心分離機による、4℃、5分間、10000rpmの遠心分離操作によってMWCNTを沈殿させた後、上清を取り除いた。沈殿したMWCNTを緩衝液Aにて5回洗浄した。最後の洗浄の後に、500μLの溶出液(6M ウレア)を加え、室温で10分インキュベートして、MWCNTに結合したファージを溶出させた。遠心分離機による4℃、5分間、10000rpmの遠心分離操作によって、MWCNTを沈殿させて、溶出されたファージが含まれる上清を回収した。
【0061】
上記ファージを含んだ上清を、20mLのLB培地中で対数増殖中のER2738菌(F`lacIq△(lacZ)M15proA+B+zzf::Tn10(TetR)fhuA2supEthi△(lac−proAB) △(hsdMS−mcrB)5(rk−mk−Mcr BC−)(New England Biolabs社))に感染させ、振とう培養機を用いて37℃で激しく撹拌しながら4時間30分間培養した。
【0062】
ファージが感染したER2738菌の培養液を遠心チューブ(内容量50mL)に移し、4℃、5分間、10000rpmの遠心分離操作によって、ER2738菌を取り除いた。当該操作を2回行った後に、上清のファージ含有液16mLを別のチューブに移した。ファージ含有液に、2.67mL(1/6量)の20%polyethylene glycol 8000(以下PEG8000、Fluka社)、2.5M NaCl溶液を加えて混和した後、4℃にて一晩静置して、ファージを沈殿させた。
【0063】
沈殿したファージを、遠心分離機による4℃、20分間、10000rpmの遠心分離操作によって回収した。ファージの沈殿物を、更に4000rpm、1分間遠心分離して、残っている上清を完全に取り除いた。得られたファージの沈殿物を、1mLのTBS(50mM Tris-HCl(pH7.5)、150mM NaCl)に懸濁して、当該懸濁液を1.5mLのチューブに移した後に、遠心分離機によって4℃、5分間、10000rpmにて遠心分離した。上清1mLを新しい1.5mlチューブに移して、167uLの20%PEG8000および2.5M NaCl溶液を加えて混合した後、氷上で1時間静置してファージを沈殿させた。次に、遠心分離機によって4℃、10分間、10000rpmにて遠心分離してファージの沈殿物を回収した。得られたファージの沈殿物を200μLのTBSに加えて懸濁させた。懸濁できない残渣を遠心分離機によって4℃、1分間、10000rpmにて遠心分離して取り除いた後、上清に、更に200μLのグリセロールを添加して良く混和して濃縮されたファージ溶液を調製して、当該ファージ溶液のファージ力価を上述した方法によって測定した。
【0064】
上述したような標的分子(具体的には、MWCNT)へのファージの結合、洗浄、回収(溶出)、大腸菌によるファージの増殖といった一連の作業は、パニング操作(ファージディスプレイサイクル)と呼ばれている(図6参照)。パニング操作を繰り返すことによって、標的分子へ特異的に強く結合するファージクローンを濃縮していくことが可能である。
【0065】
本実施例においても、一回目のパニング操作の後、大腸菌で増殖させたファージを用いてパニング操作を複数回繰り返した。
【0066】
MWCNTへより強く結合するファージを取得するために、各パニング操作における結合条件をより厳しくした。具体的には、2回目以降のパニング操作では、緩衝液に含まれるウシ血清アルブミン(BSA)の濃度を0.02%から0.1%へ増やし、4回目以降のパニング操作では、標的分子であるMWCNTの量を1.0mgから0.1mgへ減らし、5回目以降のパニング操作では、緩衝液に含まれるTween−20を0.1%から0.5%へ増やした。D12ライブラリーを用いたパニング操作のインプット力価(MWCNTへ加えたファージ力価)とアウトプット力価(洗浄後のMWCNTから溶出されたファージ力価)の値の変化を図1に示す。
【0067】
7回目のパニング操作の後に得られたファージをクローン化し、当該ファージが提示するペプチドの塩基配列を決定した。塩基配列の決定には提示ペプチド領域から96塩基下流に位置する塩基配列の相補鎖に相当するプライマー(−96gIIIシーケンスプライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’(配列番号16)、New England Biolab社)を用いて、ダイデオキシターミネイト法によって決定した(CEQ DTCS Quick start kit、ベックマン社)。反応産物の泳動とデータ解析にはキャピラリーシーケンサー(CEQ8000、ベックマン社)を用いた。決定した塩基配列にコードされるペプチド配列を図2に示す。
【0068】
(実施例2:ファージクローンのMWCNTへの結合能の評価)
実施例1で得られたファージクローンについて、MWCNTに対する結合能力を以下の実験によって評価した。
【0069】
クローン化したファージを500μLの0.1%ウシ血清アルブミンを含む緩衝液B(0.1M Tris-HCl(pH8.0)、0.1M NaCl、0.5% Tween−20)に希釈し、ファージ力価が1.0×1010となるようにファージ溶液を調製した。
【0070】
0.1mgのMWCNT(直径140nm、長さ7μm、ATR社)または0.1mgのSWCNT(直径1〜2nm、長さ5〜30μm、ATR社)を500μLの0.1%ウシ血清アルブミンを含んだ緩衝液Bに分散させて、MWCNTまたはSWCNTの分散液を調製した。各分散液(500μL)とファージ溶液(500μL)とを混合して、室温にて10分間混和した。当該混合溶液を、遠心分離機によって4℃、5分間、10000rpmにて遠心分離して、MWCNTまたはSWCNTを沈殿させるとともに、上清を取り除いた。沈殿したMWCNTまたはSWCNTを緩衝液Bにて5回洗浄した。最後の洗浄の後に、沈殿したMWCNTまたはSWCNTに対して500μLの溶出液(6M ウレア)を加えて室温にて10分インキュベートした。これによって、MWCNTまたはSWCNTに結合したファージを溶出させた。
【0071】
遠心分離機によって、4℃、5分間、10000rpmにて遠心分離してMWCNTまたはSWCNTを沈殿させて、溶出したファージが含まれる上清を回収した。回収した上清についてファージ力価を測定した。なお、ファージ力価の測定は、上述した方法にしたがった。結果を図3に示す。
【0072】
ペプチド:LLADTTHHRPWT(配列番号17)は、すでにSWCNTに結合するペプチドとして報告されている(The journal of physical chemistry B(2006),110,23623-23627参照)。
【0073】
今回新たに見いだしたペプチド:LPWWNRWPPVET、ペプチド:WWRTPWTEPTPA、ペプチド:WWNPWTPQSTPS、ペプチド:WNPWNSWSNMRM、ペプチド:WNPWWRAPLTGA、および、ペプチド:WNPWAGWTMGHLを提示したファージクローンは、ペプチド:LLADTTHHRPWTを提示したファージクローンと比べて非常に強くCNTに結合することが明らかになった。
【0074】
具体的には、ペプチド:LPWWNRWPPVETを提示したファージクローンは、ペプチド:LLADTTHHRPWTを提示したファージクローンと比べて、SWCNTでは110倍、MWCNTでは2200倍も多く結合した。ペプチド:WWRTPWTEPTPAを提示したファージクローンは、ペプチド:LLADTTHHRPWTを提示したファージクローンと比べて、SWCNTでは190倍、MWCNTでは5200倍も多く結合した。最も強い結合を示した、ペプチド:WWNPWTPQSTPSを提示したファージクローンは、ペプチド:LLADTTHHRPWTを提示したファージクローンと比べて、SWCNTでは1500倍、MWCNTでは22000倍も多く結合した。今回新たに見いだしたその他のペプチドも、略同程度の結合能力を示した。以上の事から、今回新たに得られたペプチドは、周知のペプチドよりも、非常に強くCNTへ結合することが明らかになった。また、今回新たに得られたペプチドは、SWCNTよりもMWCNTに対して、より強い結合能力を有することが明らかになった。
【0075】
(実施例3:蛍光顕微鏡によるCNTの検出)
<A:ペプチドが結合されたN1タンパク質の調製>
今回新たに得られた12残基のペプチド:LPWWNRWPPVETが、N1ドメインのN末端に結合しているLPWWNRWPPVET-N1タンパク質(配列番号20)を作製した。なお、gIIIタンパク質(Accession number:V00604, Protein ID: CAA23862.1)は、N末端側からN1、N2、C1という順序で3つのドメインを有しており、今回新たに得られた12残基のペプチドは、当該gIIIタンパク質のN1ドメインのN末端に結合している。以下に、作製方法について説明する。
【0076】
上記ペプチドおよびN1ドメインの融合タンパク質をコードする遺伝子をPCRによって増幅した。上記ペプチドを提示しているファージのDNAを鋳型にして、オリゴヌクレオチドプライマーP1(5’−CCCATATGCTGCCTTGGTGGAATCGGTG−3’(配列番号18))とP2(5’−GTTGGATCCAAGCACTCATTTTCAGGGATAGCAAG−3’(配列番号19))を用いてPCRを行なった。
【0077】
PCR反応は、KOD−plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)を用い同社のプロトコルに従って行なった。PCRの増幅産物および発現ベクターpET21−b(Novagen社)を、制限酵素NdeIおよびBamHIを用いて37℃で1時間処理した後、アガロースゲル電気泳動を行った。ゲルから切り出されたDNA断片を、Ligation High(TOYOBO社)を用いて16℃、30分間、pET21−b(Novagen社)へライゲーションし、当該ベクターにて大腸菌JM109株を形質転換した。得られたコロニーから目的のDNA断片が挿入されたプラスミドを抽出し、これを「pET−LPW−N1」と命名した。
【0078】
pET-LPW-N1にて形質転換したRosettaTM(DE3)pLysS(Novagen社)を2×YT培地で37℃一晩培養し、新しい2×YT培地に1%(v/v)植菌した。OD600が0.6になるまで37℃で培養した後、終濃度が0.5mMになるようにIPTG(isopropyl-β-D-thioglactopyranoside)を添加し、更に28℃で4時間培養を行なった。
【0079】
培養液を遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体に10mLの緩衝液C(0.1M Tris-HCl(pH7.5)、0.05M NaCl、10% glycerol)を加えて懸濁し、超音波によって菌体を破砕した。得られた破砕液をHistrap FF column (GE Healthcare Bioscience)に供し、C末端にヒスチジンを有するLPWWNRWPPVET-N1タンパク質を当該カラムに吸着させた後、緩衝液D(0.1M Tris-HCl(pH7.5)、0.05M NaCl、10% glycerol、 0.5M イミダゾール)を用いて、LPWWNRWPPVET-N1タンパク質を溶出させた。取得したLPWWNRWPPVET-N1タンパク質についてポリアクリルアミド電気泳動により精製度を確認したところ、純度は95%以上であった。
【0080】
<B:ペプチド(LPWWNRWPPVET)を提示した蛍光標識されたストレプトアビジンの作製>
本実施例では、ビオチンとストレプトアビジンとの間の相互作用を用いて、蛍光標識されたストレプトアビジンと、ビオチンにて修飾されたLPWWNRWPPVET-N1タンパク質とを結合させた。ストレプトアビジンは4量体のタンパク質であるため、ストレプトアビジン1分子に対して4分子のLPWWNRWPPVET-N1タンパク質を提示した複合体を作製することが可能になる(図7参照)。つまり、当該複合体であれば、複合体とCNTとの結合力を増加させることができるので、CNTの検出感度を飛躍的に上昇させることができる。
【0081】
まず、LPWWNRWPPVET-N1タンパク質をビオチンにて修飾した。23nmolのLPWWNRWPPVET-N1タンパク質を10000μlの0.2M Tris-HCl緩衝液(pH7.5)に溶解した。当該溶液に83μLの2.5mg/mlビオチン−マレイミド/ジメチルフォルミアミドを添加した後、室温にて2時間静置した。反応後の溶液をゲルろ過して、未結合のビオチンーマレイミドを除去するとともに、ビオチンにて修飾されたLPWWNRWPPVET-N1タンパク質を精製した。
【0082】
次いで、ビオチンにて修飾されたLPWWNRWPPVET-N1タンパク質(10μM)を含む溶液45μLと、5μLの蛍光標識されたストレプトアビジン(17μM)とを混合し、室温で1時間インキュベートし、これによって、蛍光標識されたストレプトアビジンに、ビオチンにて修飾されたLPWWNRWPPVET-N1タンパク質を結合させた。この操作により作製された複合体を、蛍光色素フルオロセイン(FITC)で標識したストレプトアビジン(和光純薬社)を使用した場合には、LPW-Streptavidin-FITCと命名し、蛍光色素Cy3で標識したストレプトアビジン(invitrogen社)を使用した場合には、LPW-Streptavidin-Cy3と命名した。
【0083】
<C:ペプチドを提示した蛍光標識されたストレプトアビジンを用いたMWCNTの蛍光検出>
5μLのLPW-Streptavidin-FITC(1.7μM)と、2μlのMWCNT(直径140nm、長さ7μm、 ATR社)懸濁液(1mg/ml 0.1%Tween−20)と、10μLの緩衝液(0.01M Tris-HCl(pH8.0)、0.5%Tween−20)とを混合した。
【0084】
室温で10分間インキュベートした後、3μLの溶液をスライドグラス(MATSUNAMI製、MICRO SLIDE GLASS 白縁磨 1mm厚)にスポットして、蛍光顕微鏡(落射蛍光顕微鏡BX-60、オリンパス社製)および位相差顕微鏡にて観察した。蛍光観察にはU-NIBAキューブ(ダイクロイックミラー:DM505、励起フィルター:BP470-490、吸収フィルター:BA515-550)を用い、画像の取り込みには顕微鏡デジタルカメラDP-70(オリンパス社製)を使用した。観察結果を図4に示す。図4に示すように、MWCNTを蛍光にて検出することができた。
【0085】
<D:ペプチドを提示した蛍光標識されたストレプトアビジンを用いたSWCNTの蛍光検出>
2μLのLPW-Streptavidin-Cy3(1.7μM)と、2μLのSWCNT(直径1−2nm、長さ5−30μm、ATR社)懸濁液(1mg/ml 0.1%Tween-20)と、10μLの緩衝液(0.01M Tris-HCl(pH8.0)、0.5%Tween−20)とを混合した。
【0086】
室温で10分間インキュベートした後、3μLの溶液をスライドグラス(MATSUNAMI製、MICRO SLIDE GLASS 白縁磨 1mm厚)にスポットして、蛍光顕微鏡(落射蛍光顕微鏡BX-60、オリンパス社製)および位相差顕微鏡にて観察した。蛍光観察にはU-MNGキューブ(ダイクロイックミラー:DM570、励起フィルター:BP530-550、吸収フィルター:BA590)を用い、画像の取り込みには顕微鏡デジタルカメラDP-70(オリンパス社製)を使用した。観察結果を図5に示す。図5に示すように、SWCNTを蛍光にて検出することができた。
【0087】
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、半導体装置、表示装置、燃料電池、化粧品、薬品送達システム、センサー、または、CNT検出剤などを製造する分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50個以下のアミノ酸からなり、アミノ酸配列W−X1−N/T−P/R−W(X1は0〜1個の任意のアミノ酸である。)を含み、かつカーボンナノチューブに対する結合能を有する、ペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列X2−W−X1−N/T−P/R−W−X3(X1は0〜1個の任意のアミノ酸であり、X2は0〜3個の任意のアミノ酸であり、X3は0〜12個の任意のアミノ酸であり、X2およびX3の少なくとも一方において、1個以上のWが含まれている。)を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1〜15のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項2に記載のペプチドであって、
(a) 配列番号1〜15のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチド;または
(b) 配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列の部分配列からなり、配列番号7〜15のアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項5】
配列番号1〜12に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、付加または欠失されたアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号13〜15のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチドを含有している、カーボンナノチューブを標識するための組成物。
【請求項9】
前記ペプチドが標識化合物と結合している、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブがマルチウオールカーボンナノチューブである、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか1項に記載のペプチド、または請求項7に記載のポリヌクレオチド、および標識化合物を備えている、カーボンナノチューブを標識するためのキット。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブがマルチウオールカーボンナノチューブである、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
請求項1〜6の何れか1項に記載のペプチド、請求項7に記載のポリヌクレオチド、請求項8〜10の何れか1項に記載の組成物、あるいは請求項11または12に記載のキットを用いる、カーボンナノチューブを標識する方法。
【請求項14】
請求項9に記載の組成物をカーボンナノチューブとインキュベートする工程を包含する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135259(P2012−135259A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289904(P2010−289904)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】