説明

カーボンナノチューブの製造方法、及びカーボンナノチューブ生成触媒

【課題】気相成長法により、単層カーボンナノチューブを所定のピッチにて配列した状態で形成させる方法、及びそのような方法で使用されるカーボンナノチューブ生成用触媒を提供すること。
【解決手段】本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなる触媒を基板の表面に付着させる触媒付着工程と、前記触媒の付着した基板の表面に炭素化合物を供給しながら、当該炭素化合物を前記基板の近傍で熱分解させる熱分解工程と、を含む。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒は、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法、及びカーボンナノチューブ生成触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素によって作られる六員環のネットワークが管状に形成された物質であり、近年、特異な電子挙動を示すことや、軽量でありながら鋼鉄の約20倍もの強度を有すること等が注目され、エレクトロニクス分野や構造材料分野等への応用が期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブのエレクトロニクス分野への応用としては、例えば、カーボンナノチューブに電場をかけると電子が放出される特性に基づき、FED(Field Emission Display、電界放出ディスプレイ)、平面蛍光管、冷陰極間のカソードデバイス等への応用が提案されている。これらの用途の場合、高密度かつ均一に電子を放出させることが必要になるので、基板の表面にカーボンナノチューブを均一に整列させる事が必要とされる。
【0004】
基板の表面にカーボンナノチューブを整列して形成させる方法の一つとして、例えば特許文献1には、カーボンナノチューブを形成させる基板の表面に、カーボンナノチューブを形成させるための触媒である塩化鉄を載置し、次いで、基板を加熱しながら炭化水素のガスを供給する化学的気相成長法(CVD法)により、基板の表面にカーボンナノチューブを成長させることが提案されている。この方法では、加熱によって触媒である塩化鉄が基板の表面から昇華により気化し、気化した触媒により気相で生成されたカーボンナノチューブが基板の表面に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−196873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カーボンナノチューブから電子を放出させる際には、基板の表面に形成されたカーボンナノチューブが細ければ細いほど、電界が集中して効率よく電子を放出できることが知られている。このため、理想的には、カーボンナノチューブをナノレベルのピッチで基板の表面に整列させることが好ましいといえる。しかしながら、従来法では、そのように制御された状態でカーボンナノチューブを形成させることができず、カーボンナノチューブのピッチが一定でないことにより複数のカーボンナノチューブが互いに絡み合った状態で形成されたり、カーボンナノチューブの壁部が単層ではなく複層の状態で形成されたりすることも多い。この場合、形成されたカーボンナノチューブは複数本が束になったり、1本1本が太い状態になったりするので、電子の放出能力の点ではやや劣るものになる。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、気相成長法により、単層カーボンナノチューブを所定のピッチにて配列した状態で形成させる方法、及びそのような方法で使用されるカーボンナノチューブ生成用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなる触媒を基板の表面に付着させ、その後、当該基板の表面を加熱しながらこの表面に炭素源を供給することにより、デンドリマー化合物に配位した遷移金属元素がカーボンナノチューブの成長点となり、原子レベルでカーボンナノチューブの成長を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。このようにして作製されたカーボンナノチューブは、それぞれがナノメートルオーダーの大きさを有する触媒から独立して成長しているので、単層かつ1本1本が独立した状態で形成されており、従来法のように、複数本が互いに絡み合った状態になったり、複層になったりした状態で形成されるのを抑制することができる。
【0009】
本発明の第1の態様は、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなる触媒を基板の表面に付着させる触媒付着工程と、前記触媒の付着した基板の表面に炭素化合物を供給しながら、当該炭素化合物を前記基板の近傍で熱分解させる熱分解工程と、を含むカーボンナノチューブの製造方法である。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなるカーボンナノチューブ生成用触媒である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気相成長法により、単層カーボンナノチューブを所定のピッチにて配列した状態で形成させる方法、及びそのような方法で使用されるカーボンナノチューブ生成用触媒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<カーボンナノチューブの製造方法>
以下、本発明に係るカーボンナノチューブの製造方法の一実施形態について説明する。本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、触媒付着工程と熱分解工程とを備える。このような工程を経て基板の表面に形成されたカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブが所定のピッチにて配列した状態になる。以下、これらの工程について説明する。
【0013】
[触媒付着工程]
触媒付着工程は、金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなる触媒を基板の表面に付着させる工程である。
【0014】
この工程で使用される触媒は、含窒素デンドリマー化合物を基体とし、この基体に、触媒作用を発現する8、9又は10族の遷移金属元素(以下、単に「金属元素」とも呼ぶ。)を配位させた化合物である。含窒素デンドリマー化合物は、単分子化合物としては比較的大きな分子(直径約4nm程度)であり、分子内に、金属元素が配位することのできる窒素原子を所定の間隔で複数保有する。このため、含窒素デンドリマー化合物は、単分子化合物としては比較的大きな分子サイズの内部に、複数個の金属元素を1原子ずつ規則的に配置することができる。
【0015】
また、含窒素デンドリマー化合物に含まれる窒素原子は、その全てが金属元素に対して同等な配位能を備えているわけではなく、含窒素デンドリマー化合物の中心部に存在する窒素原子ほど高い配位能を備える。このため、含窒素デンドリマー化合物に複数の金属元素が配位する際には、まず含窒素デンドリマー化合物の中心部分に存在する配位箇所から金属元素が埋まっていき、その後、中心部側に存在する配位箇所から外側に存在する配位箇所の順に、金属元素が埋まっていく。このような特性を利用すれば、例えば、含窒素デンドリマー化合物に金属元素を配位させる際に、含窒素デンドリマー化合物と金属元素とのモル比を制御することで、より一層、所望の位置に金属元素を配置することが可能になる。
【0016】
このような含窒素デンドリマー化合物としては、下記一般式(1)で表されるフェニルアゾメチンデンドリマー化合物を好ましく例示することができる。
【0017】
【化1】

【0018】
上記一般式(1)中のAは、フェニルアゾメチンデンドリマーの中核分子基であり、フェニルアゾメチンデンドリマー分子は、この中核分子基を中心として、外側に向かって上記一般式(1)中のBで表される単位の連鎖を成長させる。その結果、成長後のフェニルアゾメチンデンドリマー分子は、上記Aを中心として、上記Bが連鎖して放射状に成長した構造を有する。Bが連鎖する回数を「世代」と呼び、中核分子基Aに隣接する世代を第1世代として、外側に向かって世代数が増加していく。上記一般式(1)中のAは、次式
【化2】

の構造で表され、Rは、置換基を有してもよい芳香族基を表し、pは、Rへの結合数を表す。
【0019】
上記一般式(1)中のBは、上記Aに対して1個のアゾメチン結合を形成させる次式
【化3】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表す。このBは、フェニルアゾメチンデンドリマーの世代を構成し、中核分子基Aに直接結合するBが第1世代となる。
【0020】
上記一般式(1)中のRは、末端基として上記Bにアゾメチン結合を形成する次式
【化4】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表す。Rは、フェニルアゾメチンデンドリマー分子の放射状に伸びた構造の末端に位置することになる。
【0021】
上記一般式(1)において、nは、フェニルアゾメチンデンドリマーの上記Bの構造を介しての世代数を表し、mは、フェニルアゾメチンデンドリマーの末端基Rの数を表し、n=0のときはm=pであり、n≧1のときはm=2pである。
【0022】
置換基を有してもよい芳香族基であるR、R及びRは、それぞれ独立に、その骨格構造として、フェニル基又はその類縁の構造であってよく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ビフェニルアルキレン基、ビフェニルオキシ基、ビフェニルカルボニル基、フェニルアルキル基等の各種のものが挙げられる。これらの骨格は、置換基として、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アルキルチオ基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基等の各種の置換基が例示される。上記骨格は、これらの置換基を、任意に1又は複数有することができる。
【0023】
上記置換基の中でも、メトキシ基、アミノ基のような電子供与性の高い置換基、又はシアノ基、カルボニル基のような電子受容性の高い置換基が好ましい。
【0024】
上記式R(−N=)で表される中核部分において、pとしては、特に限定されないが、例えば1〜4の整数が挙げられる。また、フェニルアゾメチンデンドリマーの世代数nは、0又は1以上の整数であるが、例えば2〜6であることが好ましく例示される。
【0025】
このようなフェニルアゾメチンデンドリマー化合物の一形態として、下記式で表される化合物を挙げることができる。下記式で表される化合物は、世代数が4のフェニルアゾメチンデンドリマー化合物である。
【化5】

【0026】
既に説明したように、上記式で表されるフェニルアゾメチンデンドリマー化合物に、金属塩を添加すると、金属元素が、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の窒素元素に配位し、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の内部に取り込まれる。このとき、金属元素は、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の中心部側の窒素原子に優先的に配位するので、中心部側に存在する窒素原子から外側に存在する窒素原子の順に配位する。そのため、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物と金属元素とのモル比を制御することにより、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の所望の位置に金属元素を配置できる。
【0027】
例えば、上記式で表されるフェニルアゾメチンデンドリマー化合物に、金属元素を2等量添加した例と、金属元素を6等量添加した例を下記式で表す。なお、下記式では、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物に配位した金属元素を黒丸で示した。
【0028】
【化6】

【0029】
フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の窒素原子に配位した各金属元素(上記式における各黒丸)は、それぞれがカーボンナノチューブを形成させる触媒活性を有するので、これら各金属元素が存在する箇所を基点としてカーボンナノチューブを成長させることができる。上記のように、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物において金属元素が配位することのできる箇所は特定の箇所に限定されるので、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物に配位した金属元素は、ナノレベルとなる所定のピッチで配置されることになる。このため、金属元素を配位させたフェニルアゾメチンデンドリマー化合物を触媒として使用すれば、ナノレベルとなる所定のピッチでカーボンナノチューブを生成させることができる。また、フェニルアゾメチンデンドリマー化合物の世代数を増減させることにより、1つのフェニルアゾメチンデンドリマー化合物に配位させることのできる金属元素の上限数を任意に変化させることができる。
【0030】
フェニルアゾメチンデンドリマーを合成するには、公知の方法を使用することができる。このような方法として、例えば、ベンゾフェノンとジアミノベンゾフェノンとを、クロロベンゼン溶媒中において、塩化チタン及び塩基の存在下で反応させ、さらに、順次ジアミノベンゾフェノンと反応させて世代数を増加させる方法が挙げられるが、特に限定されない。
【0031】
次に、含窒素デンドリマー化合物に配位させる金属元素について説明する。含窒素デンドリマーに配位させる金属元素は、カーボンナノチューブを生成させるための触媒作用を提供するものであり、8、9又は10族の元素である。このような金属元素としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金等が挙げられるが、中でも、鉄が好ましく使用される。
【0032】
含窒素デンドリマー化合物に金属元素を配位させる方法としては、例えば、有機溶媒に溶解させた含窒素デンドリマー化合物に、塩化第一鉄(FeCl)や塩化第二鉄(FeCl)等のアセトニトリル溶液を添加する方法が挙げられるが、特に限定されない。このとき、含窒素デンドリマー化合物と金属元素とのモル比としては、一例として、含窒素デンドリマー化合物:金属元素=1:1〜30が挙げられるが、所望とするカーボンナノチューブの生成密度等を考慮して適宜設定すればよい。なお、含窒素デンドリマー化合物1モルに対して配位する金属元素のモル数を少なくすると、生成するカーボンナノチューブの直径が小さくなる傾向がある。
【0033】
次に、含窒素デンドリマー化合物に金属元素を配位させて得られた触媒を、カーボンナノチューブを生成させる基板の表面に付着させる。基板としては、特に限定されず、所望とする用途等を考慮して適宜選択すればよい。このような基板としては、例えば、シリコン基板、ガラス基板、高配向性結晶黒鉛(HOPG)基板、窒化珪素基板、石英基板等が挙げられる。
【0034】
触媒を基板の表面に付着させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができる。このような方法の一例としては、触媒を含む溶液を、例えばスピンコート法等の手段により基板の表面に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。
【0035】
所定量の金属元素を配位した含窒素デンドリマーを含む触媒溶液の調製に用いる溶媒の好適な例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、四塩化炭素等の含塩素系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の芳香族系有機溶媒、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、リモネン、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、含塩素系有機溶媒又は芳香族系有機溶媒が好ましく使用され、ジクロロメタン、クロロホルムがより好ましく使用される。これらを溶媒として選択することにより、触媒溶液の均一性が向上し、溶液の塗布及び乾燥後に、良好に分散された状態で触媒を基板表面に配置させやすい。
【0036】
触媒溶液における、金属元素を配位した含窒素デンドリマーの濃度は特に限定されないが、5.0μmol/L以下が好ましく、1.0×10−1μmol以下がさらに好ましく、1.0×10−2μmol以下が特に好ましく、1.0×10−7μmol/L以下が最も好ましい。
【0037】
なお、触媒を基板の表面に付着させる際に、予め基板の表面にパターン化されたマスクを形成させておいてもよい。このようなマスクは、基板の表面のうち、カーボンナノチューブを形成させない箇所を覆う一方で、カーボンナノチューブを形成させる箇所を覆わないように形成される。パターン化されたマスクを形成させる方法としては、特に限定されず、カーボンナノチューブを形成させる箇所に孔を設けた板を用いる方法や、公知のレジスト組成物を基板の表面に塗布してフォトリソグラフィ法によりパターニングする方法等を例示することができる。
【0038】
[熱分解工程]
次に、熱分解工程について説明する。この工程は、上記触媒の付着した基板の表面に炭素化合物を供給しながら、当該炭素化合物を基板の近傍で熱分解させ、気相成長法によりカーボンナノチューブを形成させる工程である。この工程を経ることにより、基板の表面のうち、上記触媒に含まれる金属元素が存在する箇所にカーボンナノチューブが生成する。すなわち、熱分解された炭素化合物は、上記触媒に含まれる金属元素に接触することにより、カーボンナノチューブに転換される。
【0039】
炭素化合物としては、気化させることのできるものであれば特に限定されない。このような炭素化合物としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン等の環状炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン、シクロヘキサン等のケトン類等が例示される。これらの中でも、アルコールが好ましく例示され、エタノールが特に好ましく例示される。
【0040】
熱分解工程では、チャンバーの中に載置された基板を加熱しながら、気化した炭素化合物を加熱された基板に接触させる。炭素化合物を基板に接触させる際は、気化した炭素化合物自体を基板に接触させてもよいし、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスをキャリアとして、気化した炭素化合物とキャリアとの混合気体を基板に接触させてもよい。いずれの場合であっても、炭素化合物は、基板の表面のうち、触媒を付着させた側の面に接触させることが必要である。基板に接触した炭素化合物は、基板の熱により基板の近傍で熱分解され、上記触媒に含まれる金属元素によりカーボンナノチューブに転換される。
【0041】
熱分解工程における基板の温度は、500〜1000℃であることが好ましく、600〜900℃であることがより好ましい。また、基板を加熱する手段については特に限定されず、ヒータと基板とを直接接触させる方法や、高周波コイルを使用して基板を誘導加熱する方法や、基板に赤外線を照射して加熱する方法等が例示できる。なお、基板の周囲に存在する大気の影響を軽減させるために、チャンバーの内部を減圧にすることが好ましい。
【0042】
熱分解工程を経ることにより、基板の表面にカーボンナノチューブが形成される。このカーボンナノチューブは、含窒素デンドリマー化合物によりナノレベルのピッチで配置された金属元素を基点として形成されるので、1本1本のカーボンナノチューブがナノレベルのピッチで配列した状態で形成される。
【0043】
<カーボンナノチューブ生成用触媒>
上記で説明したように、含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物は、カーボンナノチューブを生成させるための触媒として有用である。このようなカーボンナノチューブ生成用触媒もまた本発明の一つである。カーボンナノチューブ生成用触媒については、上記で説明したとおりであるので、ここでの説明は割愛する。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を示して本発明のカーボンナノチューブの製造方法及びカーボンナノチューブ生成用触媒を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、含窒素デンドリマー化合物としてフェニルアゾメチンデンドリマー化合物を挙げて説明したが、他の含窒素デンドリマー化合物を使用してもよい。このような含窒素デンドリマー化合物としては、ポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)、カルバゾールデンドリマー等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
[フェニルアゾメチンデンドリマーの合成]
・2世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G2on)の合成
100mL三口フラスコに、ベンゾフェノン(4.62g、25.3mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(2.5g、12.6mmol)、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(8.49g、75.7mmol)を秤取り、セプタムをつけて閉鎖系にし、内部を窒素置換した。これにクロロベンゼン50mLを加え、オイルバス(125℃)により加熱を行いながら撹拌し、原料を溶解させた。滴下ロートからクロロベンゼン(2mL)に溶解させた四塩化チタン(2.01mL、1.84mL)を滴下し、残った四塩化チタンを2mLのクロロベンゼンで洗い流した。その後、内容液を4時間反応させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認した後、三口フラスコを開放系にした状態で数時間撹拌することで四塩化チタンを失活させた。内容物をセライトで濾過することにより失活した四塩化チタンを除去し、セライトをクロロベンゼンで洗い流した後、回収した濾液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=4:4:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製し、溶媒を留去して目的物である2世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G2on)を得た。
【0048】
・2世代フェニルアゾメチンデンドロン(G2on)の合成
ナスフラスコに、Pre−G2on(2.17g、3.98mmol)、過マンガン酸カリウム(1.19g、7.5mmol)、及び臭化テトラn−ブチルアンモニウム(2.42g、7.5mmol)を秤取り、容器を水浴につけた状態でジクロロエタン(25mL)を加えて撹拌した。1時間後、水浴を取り除き、2日間反応させた。反応終了後、飽和NaHSO水溶液を加えて過マンガン酸カリウムを失活させ、2重量%のトリエチルアミンを加えた飽和食塩水で分液を行い、臭化テトラn−ブチルアンモニウムを取り除いた。分液後、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=4:4:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製し、溶媒を留去して目的物である2世代フェニルアゾメチンデンドロン(G2on)を得た。
【0049】
・3世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G3on)の合成
100mL三口フラスコに、G2on(5.161g、9.55mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.901g、4.54mmol)、及びDABCO(8.49g、7.57mmol)を秤取り、セプタムをつけて閉鎖系にし、内部を窒素置換した。これにクロロベンゼン50mLを加え、オイルバス(125℃)により加熱を行いながら撹拌し、原料を溶解させた。滴下ロートからクロロベンゼン(2mL)に溶解させた四塩化チタン(2.01mL、1.84mL)を滴下し、残った四塩化チタンを2mLのクロロベンゼンで洗い流した。その後、内容液を4時間反応させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認した後、三口フラスコを開放系にした状態で数時間撹拌することで四塩化チタンを失活させた。内容物をセライトで濾過することにより失活した四塩化チタンを除去し、セライトをクロロベンゼンで洗い流した後、回収した濾液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=3:3:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製し、溶媒を留去して目的物である3世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G3on)を得た。
【0050】
・3世代フェニルアゾメチンデンドロン(G3on)の合成
ナスフラスコに、Pre−G3on(1.27g、1.02mmol)、過マンガン酸カリウム(0.95g、6.0mmol)、及び臭化テトラn−ブチルアンモニウム(1.95g、6.1mmol)を秤取り、容器を水浴につけた状態でジクロロエタン(25mL)を加えて撹拌した。1時間後、水浴を取り除き、3日間反応させた。反応終了後、飽和NaHSO水溶液を加えて過マンガン酸カリウムを失活させ、2質量%のトリエチルアミンを加えた飽和食塩水で分液を行い、臭化テトラn−ブチルアンモニウムを取り除いた。分液後、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=3:3:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製し、溶媒を留去して目的物である3世代フェニルアゾメチンデンドロン(G3on)を得た。
【0051】
・4世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G4on)の合成
100mL三口フラスコに、G3on(4.90g、3.9mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.387g、1.95mmol)、及びDABCO(1.31g、11.7mmol)を秤取り、セプタムをつけて閉鎖系にし、内部を窒素置換した。これにクロロベンゼン20mLを加え、オイルバス(125℃)により加熱を行いながら撹拌し、原料を溶解させた。滴下ロートからクロロベンゼン(2mL)に溶解させた四塩化チタン(0.32mL、2.93mL)を滴下し、残った四塩化チタンを2mLのクロロベンゼンで洗い流した。その後、内容液を4時間反応させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認した後、三口フラスコを開放系にした状態で数時間撹拌することで四塩化チタンを失活させた。内容物をセライトで濾過することにより失活した四塩化チタンを除去し、セライトをクロロベンゼンで洗い流した後、回収した濾液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=2:2:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製し、溶媒を留去して目的物である4世代フェニルアゾメチンデンドロン前駆体(Pre−G4on)を得た。
【0052】
・4世代フェニルアゾメチンデンドロン(G4on)の合成
ナスフラスコに、Pre−G4on(4.62g、3.67mmol)、過マンガン酸カリウム(3.33g、21mmol)、及び臭化テトラn−ブチルアンモニウム(6.78g、21mmol)を秤取り、容器を水浴につけた状態でジクロロエタン(25mL)を加えて撹拌した。1時間後、水浴を取り除き、7日間反応させた。反応終了後、飽和NaHSO水溶液を加えて過マンガン酸カリウムを失活させ、2質量%のトリエチルアミンを加えた飽和食塩水で分液を行い、臭化テトラn−ブチルアンモニウムを取り除いた。分液後、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=3:3:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製してから溶媒を留去し、得られた固体をクロロホルム溶液(10質量%)としてからHPLCにより精製し、溶媒を留去した。得られた固体をクロロホルム溶液(10質量%)とし、10倍希釈量のエタノール存在下で再沈殿を行い、得られた固体を減圧濾過により回収して目的物である4世代フェニルアゾメチンデンドロン(G4on)を得た。
【0053】
・4世代フェニルアゾメチンデンドリマー(DPAG4er)の合成
p−フェニレンジアニリン(10.2mg)、G4on(500mg)、及びDABCO(245.5mg)を反応容器に秤取り、真空脱気後、容器にセプタムをつけて閉鎖系にし、内部を窒素置換した。これにクロロベンゼン20mLを加え、オイルバス(125℃)により加熱を行いながら撹拌し、原料を溶解させた。滴下ロートからクロロベンゼン(2mL)に溶解させた四塩化チタン(0.06mL、0.547mL)を滴下し、残った四塩化チタンを2mLのクロロベンゼンで洗い流した。その後、内容液を4時間反応させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認した後、三口フラスコを開放系にした状態で数時間撹拌することで四塩化チタンを失活させた。内容物をセライトで濾過することにより失活した四塩化チタンを除去し、セライトをクロロベンゼンで洗い流した後、回収した濾液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、クロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=2:2:1の混合溶媒にトリエチルアミンを2質量%添加したものを使用した。)で精製してから溶媒を留去し、得られた固体をクロロホルム溶液(10質量%)としてからHPLCにより精製し、溶媒を留去した。得られた固体をクロロホルム溶液(10質量%)とし、10倍希釈量のメタノール存在下で再沈殿を行い、得られた固体を減圧濾過により回収して目的物である4世代フェニルアゾメチンデンドリマー(DPAG4er)を得た。
【0054】
[触媒溶液の調製]
・4世代フェニルアゾメチンデンドリマー鉄14当量錯体(DPAG4er+14Fe)の合成(濃度1μmol/L)
DPAG4erを0.2725mg秤量し、10mLメスフラスコに入れ、脱水クロロホルム/アセトニトリル混合溶媒(混合比1:1(容積比))でメスインし、溶液を調製した。以下、この溶液をD液と呼ぶ。別途、FeCl(脱水)を4.9mg秤量し、5mLメスフラスコに入れ、脱水アセトニトリルでメスインし、溶液を調整した。以下、この溶液を鉄溶液と呼ぶ。D液の3mLをUVセルに移し、鉄溶液を1当量分(2.5μL)ずつ滴下し、滴下の都度、溶液のUVスペクトルを測定しながら、鉄溶液を合計14当量分滴下した。1個のDPAG4er分子当たり鉄原子が14個入っていることは、上記UVスペクトル測定における等吸収点の存在により確認した。その後、溶液から溶媒を留去し、得られた固体(DPAG4er+14Fe)に脱水クロロホルムを加え、5μM溶液を調製した。濾過により不純物を濾過した後、溶液が1μmol/Lとなるようにクロロホルムを加えて希釈した。希釈後、再び濾過を行うことにより、DPAG4er+14Feのクロロホルム溶液を得た。この溶液を触媒溶液として、実施例1で使用した。
【0055】
・4世代フェニルアゾメチンデンドリマー鉄14当量錯体(DPAG4er+14Fe)の合成(濃度5.0×10−8μmol/L)
濃度1μmol/LのDPAG4er+14Feを含む触媒溶液の調製例と同様にして、濃度5μMのDPAG4er+14Feの脱水クロロホルム溶液を調製した。得られた濃度5μMのDPAG4er+14Feの脱水クロロホルム溶液を、クロロホルムにより希釈して、濃度5.0×10−8μmol/LのDPAG4er+14Feのクロロホルム溶液を得た。この溶液を触媒溶液として、実施例2で使用した。
【0056】
・4世代フェニルアゾメチンデンドリマー鉄2当量錯体(DPAG4er+2Fe)の合成(濃度5.0×10−8μmol/L)
FeCl(脱水)の脱水アセトニトリル溶液のD液への滴下量を、DPAG4erに対して2当量分にすることの他は、濃度5.0×10−8μmol/LでDPAG4er+14Feを含む触媒溶液と同様にして、濃度5.0×10−8μmol/LのDPAG4er+2Feのクロロホルム溶液を得た。この溶液を触媒溶液として、実施例3で使用した。
【0057】
[実施例1]
ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)で疎水化処理したシリコン基板の表面に、上記方法により調製された濃度1μmol/LでDPAG4er+14Feを含む触媒溶液をスピンコート法により塗布した後、クロロホルムを蒸発させ、シリコン基板の表面に触媒膜を形成させた。このシリコン基板を、触媒膜を形成させた面が上側となるように、卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)の内部に載置し、排気ポンプを作動させてチャンバー内部の圧力を50Torrとした。次いで、ヒータで基板を820℃に加熱しながら、基板の下方に載置したエタノール(約50mL)を1000℃に加熱して気化させた。この状態を10〜15分間維持し、チャンバーの内部から基板を取り出し、基板の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、基板の表面に単層カーボンナノチューブが生成しているのを確認した。
【0058】
[比較例1]
HMDSで疎水化処理したシリコン基板を、そのまま卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)の内部に載置し、排気ポンプを作動させてチャンバー内部の圧力を7Torrとした。次いで、チャンバーの内部にアセチレンガスを流量47sccmで導入しながら、ヒータで基板を820℃に加熱した。この状態を10〜15分間維持し、チャンバーの内部から基板を取り出したが、基板の表面には何も付着しておらず、生成物を確認することができなかった。
【0059】
[比較例2]
HMDSで疎水化処理したシリコン基板の表面にパウダー状の塩化第1鉄(約20g)を載置した上で、当該シリコン基板を、塩化第一鉄を載置した面が上側となるように、卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)の内部に載置し、排気ポンプを作動させてチャンバー内部の圧力を15〜20Torrとした。次いで、チャンバーの内部にアセチレンガスを流量47sccmで導入しながら、ヒータで基板を820℃に加熱した。この加熱により、基板の表面に載置した塩化第1鉄は昇華により気化した。この状態を10〜15分間維持し、チャンバーの内部から基板を取り出した。得られた基板の表面には付着物が観察されたものの、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、当該付着物はカーボンナノチューブではなかった。
【0060】
[比較例3]
HMDSで疎水化処理したシリコン基板の表面にパウダー状の塩化第1鉄(約20g)を載置した上で、当該シリコン基板を、塩化第一鉄を載置した面が上側となるように、卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)の内部に載置し、排気ポンプを作動させてチャンバー内部の圧力を50Torrとした。次いで、ヒータで基板を820℃に加熱しながら、基板の下方に載置したエタノール(約50mL)を1000℃に加熱して気化させた。この状態を10〜15分間維持し、チャンバーの内部から基板を取り出した。得られた基板の表面には付着物が確認されたものの、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、当該付着物はカーボンナノチューブではなかった。なお、この比較例3は、基板の表面に本発明の触媒膜を形成させる代わりに塩化第1鉄を載置したことを除いて、実施例1と同様の手順で試験を行った結果である。
【0061】
以上述べたことからも明らかなように、本発明における触媒を使用することにより、基板の表面に単層のカーボンナノチューブを生成できることが理解される。また、鉄化合物(塩化鉄)を使用した比較例2及び3ではカーボンナノチューブが生成されていないことから、カーボンナノチューブの生成が単に金属元素そのものの効果ではなく、本発明の触媒の効果であることがわかる。また、金属元素を内包する窒素含有デンドリマー化合物からなる本発明における触媒は、上記のように、ナノレベルのピッチで配置されているので、基板の表面に、単層のカーボンナノチューブをナノレベルのピッチで生成させることができる。
【0062】
[実施例2]
HMDSで疎水化処理したシリコン基板の表面に、上記方法により調製された濃度5.0×10−8μmol/LでDPAG4er+14Feを含む触媒溶液をスピンコート法により塗布した後、クロロホルムを蒸発させ、シリコン基板の表面に触媒膜を形成させた。このシリコン基板を、触媒膜を形成させた面が上側となるように、卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)の内部に載置し、排気ポンプを作動させてチャンバー内部の圧力を50Torrとした。次いで、ヒータで基板を820℃に加熱しながら、基板の下方に載置したエタノール(約50mL)を1000℃に加熱して気化させた。この状態を10〜15分間維持し、チャンバーの内部から基板を取り出し、基板の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、基板の表面に単層カーボンナノチューブが生成しているのを確認した。SEM観察画像により測定したカーボンナノチューブの直径は19nmであった。
【0063】
[実施例3]
濃度5.0×10−8μmol/LでDPAG4er+14Feを含む触媒溶液を、上記方法で調製された濃度5.0×10−8μmol/LでDPAG4er+2Feを含む触媒溶液に変更することの他は、実施例2と同様にして、卓上型カーボンナノチューブ生成装置(株式会社マイクロフェーズ製、商品名MPCNT−Basic)による基板の処理を行った。チャンバーの内部から基板を取り出し、基板の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、基板の表面に単層カーボンナノチューブが生成しているのを確認した。SEM観察画像により測定したカーボンナノチューブの直径は8nmであった。
【0064】
実施例2と実施例3とによれば、含窒素デンドリマー化合物に対する金属元素の配位数を減らすことにより、生成するカーボンナノチューブの直径を小さくできることが分かる。つまり、実施例2と実施例3とによれば、含窒素デンドリマー化合物に対する金属元素の配位数を調整することにより、生成するカーボンナノチューブの直径を調整できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなる触媒を基板の表面に付着させる触媒付着工程と、
前記触媒の付着した基板の表面に炭素化合物を供給しながら、当該炭素化合物を前記基板の近傍で熱分解させる熱分解工程と、
を含むカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記含窒素デンドリマー化合物が、下記一般式(1)で表されるフェニルアゾメチンデンドリマー化合物である請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【化1】

(上記一般式(1)中のAは、フェニルアゾメチンデンドリマーの中核分子基であり、次式
【化2】

の構造で表され、Rは、置換基を有してもよい芳香族基を表し、pは、Rへの結合数を表し;
上記一般式(1)中のBは、前記Aに対して1個のアゾメチン結合を形成する次式
【化3】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表し;
上記一般式(1)中のRは、末端基として前記Bにアゾメチン結合を形成する次式
【化4】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表し;
nは、フェニルアゾメチンデンドリマーの前記Bの構造を介しての世代数を表し;
mは、フェニルアゾメチンデンドリマーの末端基Rの数を表し、n=0のときはm=pであり、n≧1のときはm=2pである。)
【請求項3】
含窒素デンドリマー化合物に配位される金属元素が鉄である請求項1又は2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記炭素化合物がアルコールである請求項1〜3のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
金属元素が配位することのできる窒素原子を少なくとも1つ有する含窒素デンドリマー化合物に8、9又は10族の遷移金属元素を配位させた化合物からなるカーボンナノチューブ生成用触媒。
【請求項6】
前記含窒素デンドリマー化合物が、下記一般式(1)で表されるフェニルアゾメチンデンドリマー化合物である請求項5記載のカーボンナノチューブ生成用触媒。
【化5】

(上記一般式(1)中のAは、フェニルアゾメチンデンドリマーの中核分子基であり、次式
【化6】

の構造で表され、Rは、置換基を有してもよい芳香族基を表し、pは、Rへの結合数を表し;
上記一般式(1)中のBは、前記Aに対して1個のアゾメチン結合を形成する次式
【化7】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表し;
上記一般式(1)中のRは、末端基として前記Bにアゾメチン結合を形成する次式
【化8】

の構造で表され、Rは、同一又は異なって置換基を有してもよい芳香族基を表し;
nは、フェニルアゾメチンデンドリマーの前記Bの構造を介しての世代数を表し;
mは、フェニルアゾメチンデンドリマーの末端基Rの数を表し、n=0のときはm=pであり、n≧1のときはm=2pである。)
【請求項7】
含窒素デンドリマー化合物に配位される金属元素が鉄である請求項5又は6記載のカーボンナノチューブ生成用触媒。

【公開番号】特開2013−10683(P2013−10683A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89152(P2012−89152)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】