説明

カーボンナノチューブアレイをベースとするスペーサー層を有するスピントロニックデバイス及び該デバイスの製造方法

本発明は、配向されたカーボンナノチューブアレイから形成される層を利用するスピントロニックデバイスと、該デバイスを含むエレクトロニックデバイス(スピンバルブやスピントンネルジャンクション、スピントランジスタ等)とに関する。スピントロニックデバイスは、底部電極と、第一の強磁性層と、CNTアレイと、第二の強磁性層と、上部電極とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向カーボンナノチューブのアレイを含む層を利用するスピントロニックデバイスと、該デバイスを含むエレクトロニックデバイス(スピンバルブやスピントンネルジャンクション、スピントランジスタ等)とに関する。
【0002】
本研究は、米国エネルギー省からの助成(助成金番号DE−FG02−01ER45931)、海軍研究事務所(ONR)を通じての米国高等研究所計画局(DARPA)からの助成(助成金番号N00014−02−1−0593)及び米国陸軍研究事務所(ARO)(助成金番号DAAD19−01−1−0562)からの助成により支援されている。
【背景技術】
【0003】
本願は、2004年3月22日出願の米国仮出願第60/555108号の優先権及びその利益を主張するものであり、該仮出願の全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
技術の背景を述べると、電子スピンを利用して電荷輸送及び発光を制御するマイクロエレクトロニクスの新興分野であるスピントロニクスにおいて、最近、大きな進歩が見られている。従来のエレクトロニクスにスピンの自由度を加えることにより、例えば処理速度の向上や情報密度の高度化、不揮発性データ・ストレージ、消費電力の低減等の性能向上が可能となる(S.A.ウォルフ(Wolf)、D.D.アウシャロム(Awschalom)、R.A.バーマン(Buhrman)、J.M.ダウトン(Daughton)、S.フォン モルナー(von Molnar)、M.L.ルークス(Roukes)、A.Y.チェルカノバ(Chtchelkanova)及びD.M.トレガー(Treger)、スピントロニクス:「スピン・ベースのエレクトロニクスの未来への展望(A Spin-Based Electronics Vision for the Future)」、Science 294、1488〜1495(2001)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。非磁性層(スピンバルブ)で隔てられたスピン偏極強磁性金属層から成る磁性/非磁性ハイブリッドシステムは、スピントロニックデバイスの一例である。磁性半導体ベースのスピンバルブやスピン・トンネル・ジャンクション、加えてこれに関連する発光ダイオードへの展開は、スピントロニクスの有望な具現化である。
【0004】
スピン制御デバイスの機能に対して初めて関心がもたれたのは、ハイブリッドシステムのための巨大磁気抵抗に関する1988年の報告を契機とする(M.N.バイビヒ(Baibich)、J.M.ブロト(Broto)、A.ファート(Fert)、F.ニューエン ファン ダウ(Nguyen Van Dau)及びF.ペトロフ(Petroff)「(001)Fe/(001)Cr磁性超格子構造の巨大磁気抵抗(Giant Magnetoresistance of (001)Fe/(001)Cr Magnetic Superlattices)、Phys.Rev.Lett.61、2472〜2475(1988);及びG.ビナシュ(Binasch)P.グルンバーグ(Grunberg)、F.ザウレンバッハ(Saurenbach)、W.ジン(Zinn)「反強磁性中間層交換を伴う層状磁性構造における向上された磁気抵抗(Enhanced Magnetoresistance in Layered Magnetic Structures with Antiferromagnetic Interlayer Exchange)」、Phys.Rev.B39、4828〜4830(1989)参照、これらの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。これらの先駆的な実験と、それに続く数多くの研究とにより、磁気抵抗において大きな相対的変化を達成できる(100%まで)ことが示された(A.バースレミー(Barthelemy)、A.ファート(Fert)、F.ペトロフ(Petroff)、in:K.H.J.ブッショウ(Buschow)(Ed.)「磁性材料ハンドブック(Handbook of Magnetic Materials)」、vol.12、エルゼビア(Elsevier)、アムステルダム、p.3、1999;及びJ.S.ムーデラ(Moodera)及びG.マトン(Mathon)「強磁性ジャンクションにおけるスピン偏極トンネリング(Spin Polarized Tunneling in Ferromagnetic Junctions)」、J.Magn.Magn.Mater.200、248〜273(1999)参照、これらの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。巨大磁気抵抗は、微視的機構が様々に異なる各種構造において観察される。しかしながら、巨大磁気抵抗を示す構造に共通の特徴は、磁性部分における電子の高度なスピン偏極と、相互作用する磁性成分間で電子が移動する際のスピンコヒーレンスの維持である(M.ツィース(Ziese)、M.J.ソーントン(Thornton)編、「スピンエレクトロニクス(Spin Electronics)」、シュプリンガー(Springer)、ベルリン、2001;及びE.ヒロタ(Hirota)、H.サカキマ(Sakakima)、K.イノマタ(Inomata)「巨大磁気抵抗デバイス(Giant Magneto-Resistance Devices)」、シュプリンガー、ベルリン、2002参照、これらの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。
【0005】
スピントロニックデバイスの登場以来、強磁性層の設計及び組成に関して多くの進歩が遂げられた。最初に行われた一改良は、強磁性体の「ピンド」設計(pinned ferromagnet design)の開発であった。この構造では単なる強磁性層にの代りに、強磁性層(例えばコバルト(Co))によって覆われた反強磁性(AFM)層(例えばマンガン鉄(FeMn))を用いるが、ここで強磁性(FM)層は非磁性スペーサー層と直接接している。反強磁性層の作用は、反強磁性層が接する強磁性層の保磁場を増大させることであり、これによりデバイスの有効反転場(effective switching field)が増大する。保磁場の増大は、交換バイアス(exchange bias)として知られる現象に起因する。このタイプの構造は、低抵抗状態と高抵抗状態の間により広い領域を提供できるという点で望ましい。従って、強磁性ピン層(pinned ferromagnetic layer)を用いる通常のスピントロニックデバイスは次の構造:FeMn/Co/Al/Coを有することができる。この例においては、両強磁性層はいずれもコバルトであり、反強磁性層はマンガン鉄、スペーサー層は酸化アルミニウムである。尚、AFM/FM層の順序は、上記効果を確実なものとするため、逆にすることができ、例えば、強磁性ピン層を用いるスピントロニックデバイスは次の構造:Co/Al/Co/FeMnを有することができる。
【0006】
強磁性ピン構造における更なる改良は、合成反強磁性体の利用で見出された。このアーキテクチャでは単なる反強磁性層の代りに、反強磁性層(例えばFeMn)と、第一の強磁性層(例えばCo)と、薄い非磁性スペーサー(例えばルテニウム(Ru))とから成る多層積層体を用いる。次に、この多層構造体に第二の強磁性層が設けられ、該層は、強磁性ピン構造のスペーシング層と、実際のスピントロニックデバイスに含まれるスペーシング層の双方に直接接触する。合成反強磁性構造においてスペーサー層(例えばRu)の厚さは、ピン構造中の2個の強磁性層間における反平行カップリング(antiparallel coupling)を可能とする厚さが選択される。従って、合成反強磁性体を使用した強磁性ピン層を用いる通常のスピントロニックデバイスは次の構造:FeMn/Co/Ru/Co/Al/Coを有することができる。
【0007】
従来のスピントロニックデバイスは、強磁性電極や該電極間のスペーサーとして作用する非磁性層等の無機層から成る。無機非磁性スペーサーとしては、銅や銀、酸化アルミニウム(Al)等を挙げることができる。最近では、強磁性電極間のスペーサーとして有機層使用の可能性が研究されている。有機層は、安価で作製が容易なだけでなく、炭素と他の軽量原子を主成分とするため、スピン−軌道相互作用が弱い。このようにスピン−軌道相互作用が弱いことにより、電流が強磁性電極間を移動する間に電子スピンのコヒーレンスが失われる可能性が低下する。
【0008】
有機スペーサー層に関するこれまでの研究として、α−セクシチオフェン(6T)の有機半導体薄膜(V.デディウ(Dediu)、M.ムルギア(Murgia)、F.C.マタコッタ(Matacotta)及びC.タリアーニ(Taliani)「有機半導体中への室温スピン偏極注入(Room Temperature Spin Polarized Injection in Organic Semiconductor)、Solid State Commun.122、181〜184(2002)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)を室温で作動するスピンバルブ中のスピン輸送層として使用するものがある。6Tのスピンコヒーレンス長は200nmであるとの報告がある。最近になってスピンバルブ効果は別の有機材料、即ちトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)(11Kでスピンコヒーレンス長が45nmである)においても得られた(Z.H.ジョン(Xiong)、D.ウ(Wu)、Z.V.バーデニー(Vardeny)及びJ.シ(Shi)「有機スピンバルブにおける巨大磁気抵抗(Giant Magnetoresistance in Organic Spin-Valve)」、Nature(ロンドン)427、821〜824(2004)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。このようにスピンコヒーレンス長がより低い値(6Tよりも小さい値)であるのは、Al原子が存在することによると考えられる。
【0009】
非磁性スペーサー層の特に魅力的な候補は、カーボンナノチューブ(CNT)をベースとする第三のクラスの材料である(M.S.ドレッセルハウス(Dresselhaus)、G.ドレッセルハウス(Dresselhaus)及びP.アボリス(Avouris)(Eds.)「カーボンナノチューブ」、シュプリンガー、ベルリン、2001参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。CNTは、本明細書中においては特に断りのない限り単層CNTと多層CNTの双方を含む。CNTは多くの理由から極めて長いスピンコヒーレンス長を有するのではないかと考えられている。第一に、CNT格子が非常に高い剛性を有するため、CNTは電子−フォノン散乱が弱い(D.H.コブデン(Cobden)、M.ボックラス(Bockrath)及びP.L.マックエン(McEuen)「カーボンナノチューブにおけるスピン・スプリッティング及びイーブン−オッド効果(Spin Splitting and Even-Odd Effects in Carbon Nanotubes)」、Phys.Rev.Lett.81、681〜684(1998)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。結果として、スピン散乱長の制限因子であるスピン−格子緩和時間が極めて長い。第二に、電子の運動について、大部分のポリマーではホッピング輸送であるのに対し、CNTではコヒーレントである。これは、CNTが非常に剛性でほぼ完全な格子であるからである。第三に、従来の有機材料と同様、CNTはスピン−軌道カップリングが極めて弱い。第四に、C原子の他にH原子等の原子を有する従来の有機材料とは異なり、CNTはC原子のみを有するため超微細相互作用が極めて小さいか或いは全くない(C12の場合、超微細相互作用はゼロであり、炭素が圧倒的重量を占める)。
【0010】
CNT一本毎のスピン依存輸送(STD)を最初に測定したのは、ツカゴシ(Tsukagoshi)で(K.ツカゴシ(Tsukagoshi)、B.W.アルフェナー(Alphenaar)及びH.アゴ(Ago)「強磁性的に接触するカーボンナノチューブにおける電子スピンのコヒーレント輸送(Coherent Transport of Electron Spin in a Ferromagnetically Contacted Carbon Nanotube)」、Nature(ロンドン)401、572〜574(1999)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)、スピン散乱長を少なくとも130nmと推定した。CNTのSDTが初めて測定されて以来、他の研究グループは多層チューブや単層チューブの個々に関する研究を続け、その効果を向上させ且つ使用温度範囲を175Kにまで上昇させた(C.M.シュナイダー(Schneider)、B.ツァオ(Zhao)、R.コツハロバ(Kozhuharova)、S.グロウデバ−ゾトバ(Groudeva-Zotova)、T.ムール(Muhl)、M.リッチェル(Ritschel)、I.モンク(Monch)、H.ビンツェルバーグ(Vinzelberg)、D.エルファント(Elefant)、A.グラフ(Graff)、A.レオハーツ(Leonhardt)及びJ.フィンク(Fink)「分子スピントロニクスへ向けて:カーボンナノチューブをベースとしたシステムにおける磁気輸送及び磁性(Towards Molecular Spintronics: Magnetotransport and Magnetism in Carbon Nanotube-Based Systems)」、Diamond and Related Materials 13、215〜220(2004);B.ツァオ(Zhao)、I.モンク(Monch)、T.ムール(Muhl)、H.ビンツェルバーグ(Vinzelberg)及びC.M.シュナイダー(Schneider)「強磁性的に接触するカーボンナノチューブにおけるスピン−コヒーレント輸送(Spin-Coherent Transport in Ferromagnetically Contacted Carbon Nanotubes)」、Appl.Phys.Lett.80、3144〜3146(2002);B.ツァオ(Zhao)、I.モンク(Monch)、T.ムール(Muhl)、H.ビンツェルバーグ(Vinzelberg)及びC.M.シュナイダー(Schneider)「多層カーボンナノチューブにおけるスピン依存輸送(Spin-Dependent Transport in Multiwalled Carbon Nanotubes)」、J.Appl.Phys.91、7026〜7028(2002);S.チャクラボーティ(Chakraborty)、K.M.ウォルシュ(Walsh)、B.W.アルフェナー(Alphenaar)、L.リウ(Liu)、K.ツカゴシ(Tsukagoshi)「Coと接触する多層カーボンナノチューブにおける磁気抵抗の温度媒介性反転(Temperature-Mediated Switching of Magnetoresistance in Co-Contacted Multiwall Carbon Nanotubes)」、App.Phys.Lett.83、1008〜1010(2003);及びジャエ−リュング キム(Jae-Ryoung Kim)、H.ミ ソ(Mi So)、ジュ−ジン キム(Ju-Jin Kim)及びジンヒー キム(Jinhee Kim)「メゾスコピックにCoと接触する単層カーボンナノチューブスピン依存輸送特性(Spin-Dependent Transport Properties in a Single-Walled Carbon Nanotube with Mesoscopic Co Contacts)」、Phys.Rev.B66、233401−(1−4)(2002)参照、これらの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在、CNTスピントロニックデバイスはいずれも、一本のナノチューブ(単層でも多層でも)を接触させることを利用している。従って、このデバイスは、単層、多層のいずれかに関わらず個々のCNTによって離間された強磁性的コンタクトから成る。そのようなデバイスは、製作の際に各ナノチューブを別々に配置し、別々に接触させなくてはならないため商品化には実際的ではないであろう。大規模生産を行えるように製作・改良されたCNTベースのスピントロニックデバイスの開発が必要とされている。
【0012】
CNTプロセシングの進歩により、垂直方向や水平方向に配向させたナノチューブアレイの製作が可能となった(S.ファング(Huang)、L.ダイ(Dai)及びA.W.H.マウ(Mau)「十分に配向されたカーボンナノチューブ膜のパターン化された成長とコンタクト・トランスファー(Patterned Growth and Contact Transfer of Well-Aligned Carbon Nanotube Films)」、J.Phys.Chem.B103、4223〜4227(1999);及びL.ダイ(Dai)、A.パチル(Patil)、X.ゴング(Gong)、Z.グオ(Guo)、L.リウ(Liu)、Y.リウ(Liu)及びD.ツー(Zhu)「配向ナノチューブ(Aligned Nanotubes)」、Chem.Phys.Chem.4、1150〜1169(2003)参照、これらの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。更に、該チューブを二酸化シリコンマトリックス(silicon dioxide matrix)中に埋込み(embedded)研磨してCNTの先端を露出させると、機械的安定性を向上させることができると共にナノチューブ先端の電気的コンタクトをより良好にする機会が提供されることが示された(J.リ(Li)、R.スティーブンス(Stevens)、L.デルツァイト(Delzeit)、HT.Ng、A.カッセル(Cassell)、J.ハン(Han)及びM.メヤパン(Meyyappan)「埋込み垂直アレイにおける多層カーボンナノチューブの電子的特性(Electronic Properties of Multiwalled Carbon Nanotubes in an Embedded Vertical Array)」、Appl.Phys.Lett.81、910〜912(2002)参照、この全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。更にCNTアレイは、標準的なリソグラフィー技法を用いて微小な造作(small features)を有するようにパターニングすることもできる。アレイの使用によって、CNTベースデバイスの大規模生産が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はその一アスペクトにおいて、非磁性スペーサーとして二以上のCNTから形成されるアレイを含むスピントロニクスデバイスアーキテクチャを提供する。
【0014】
本発明は別のアスペクトにおいて、非磁性スペーサーとして垂直方向に配向された二以上のCNTから形成されるアレイを含むスピントロニクスデバイスアーキテクチャを提供する。
【0015】
本発明は更に別のアスペクトにおいて、室温以上で作動できる、CNTベースのスピントロニックデバイスを提供する。
【0016】
本発明は更に別のアスペクトにおいて、デバイスアーキテクチャの一以上の磁性層として磁性触媒粒子を利用する、CNTベースのスピントロニックデバイスを提供する。
【0017】
本発明は更に別のアスペクトにおいて、a)電気的コンタクトを容易に取れるようにした第一の導電電極と、b)所定のスピン方位を有する電子を注入するためにスピン・ポーラライザとして挙動する、第一の導電電極上に配置された第一の強磁性層と、c)第一の強磁性層上に配置されたカーボンナノチューブ(CNT)のアレイと、d)スピントロニックデバイスの抵抗の高低状態を監視するためにスピンアナライザとして挙動する第二の強磁性層(ここでアレイは第一の強磁性層と第二の強磁性層との間のスペーサー層として作用すると共に注入された電子をスピン方位が完全に失われることなく輸送する)と、e)電気的コンタクトを容易にとれる、第二の強磁性層上に配置された第二の導電電極と、を含むスピントロニックデバイスを提供する。強磁性層は、スピン偏極が100%の強磁性層とスピン偏極が100%未満の強磁性層の両方を含む。
【0018】
更に別のアスペクトにおいては、本発明は、第一の電極の形成と、第一の電極上への第一の強磁性層の形成と、第一の強磁性層上への垂直方向に配向されたカーボンナノチューブアレイの形成と、第二の強磁性層の形成と、第二の強磁性層上への第二の電極の形成と、を含むスピントロニックデバイスの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の各種実施形態は、本発明に係るデバイスの各種部分の構築、配置及び組合せ並びに本発明方法における工程を具現化したものであり、意図する目的は、以下のより十分な記載、請求の範囲における具体的な記述、及び添付図面における図示で示されるようにして達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、多層の磁性体/CNTハイブリッドデバイスに関する。本開示に係る磁性体/CNTハイブリッド多層デバイスは、強磁性的に挙動する層の間に配向CNTアレイを挟んで有し、これらの層はそれぞれスピン・ポーラライザとスピン・アナライザとして作用する。
【0021】
強磁性層は、スピントロニックデバイスに好適に使用されるものであればいかなる強磁性材料でもよい。「強磁性材料」という言葉はまた本明細書における強磁性材料も含むと理解されたい。各強磁性層は、強磁性材料の単層とするか、或いは積層構造である多層(例えば2層、3層、4層又はそれ以上の層)とすることができる。一実施形態においては、強磁性層は、強磁性体として作用する積層型多層とすることができ、例えば、強磁性層に反強磁性層又は合成反強磁性体(反強磁性体/強磁性体/非磁性体の三重層から成る)が積層されたピンド強磁性体(pinned ferromagnet)とすることができる。更に別の実施形態においては、一以上の強磁性層を、好適な組成と厚さとを有するスペーサーによって隔てられた2個の強磁性層を有する合成反強磁性体とすることができ、該磁性体においては、一方の強磁性層が反強磁性層と接して安定性を向上させると共にスピントロニックデバイスの反転場(switching field)を増大させる。他の実施形態においては、各強磁性層はそれぞれ独立に全部又は部分的にスピン偏極させることができる。スペーサーの好適な組成としては、例えば単層(single-wall)CNTアレイや多層(multiwall)CNTアレイ、単層CNTと多層CNTの双方を含むアレイを挙げることができるが、これらに限定されない。単層CNTは金属性又は半導電性である。多層CNTを構成する各CNT同軸層はそれぞれ独立に金属性又は半導電性を示す。スペーサーの厚さは、特定の目的に応じて望ましい厚さを選択することができる。CNTアレイスペーサーの厚さは一般に、約数百nm〜約数mmとすることができる。更に強磁性層は薄膜状である必要はなく、CNTアレイの合成に用いられる強磁性粒子を含むことができる。別の実施形態においては強磁性粒子を、カーボンナノチューブを成長させるための触媒とすることができる。更に別の実施形態においては、磁性層(一層以上)は磁性電極ごとにパターニングしたグリッド(patterned grid)を含むことができ、これによりデバイスは、各種磁気的履歴下で抵抗を異ならせることができると共に様々な反転場を有することができる。また、第一の強磁性層と第二の強磁性層の内の一以上の層は、強磁性的挙動を示すものであると共に組成(例えばニッケル、クロム、コバルト又はそれらの合金)を異とする島(islands)のパターニングしたグリッドを含むことができる。この場合、これらの島から成長するCNTとの強磁性コンタクトが各種磁場において切換わり、電子、ホール又はこれらの両方を移動させる。更に、磁性層は無機材料ではなく有機材料、例えばバナジウムテトラエチレン(V(TCNE)−2)又はTCNE(V1−X(TCNE)−2)で表されるバナジウム−金属組成物(ここでMとしては、FeやCo、Ni、Cr、Mn等を挙げることができるが、これらに限定されない)から形成することができる。
【0022】
本発明の磁性体/CNTハイブリッド多層デバイスに対する電気的コンタクトは、任意の好適な材料を使用した電極によって達成される。好適な材料としては、i)無機金属(例えばAuやCu、Ag、Al)を含む好適な導電性電極、ii)導電性ポリマー(例えばカンファースルホン酸ドープポリアニリン(PANi−CSA)又はポリスチレンスルホン酸ドープポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)、iii)ドープ半導体(例えばp−ドープシリコン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0023】
従って、本開示に係るデバイスは、底部導電電極と、スピン・ポーラライザ(所定のスピン方位を有する電子を注入する)としての使用に適した強磁性層と、非磁性スペーシング層(注入された電子を、スピン方位を完全に失うことなく輸送する(例えば99%又は95%という高率でスピン方位を保持することができるし、或いは、例えば50%、10%又は1%という、より低い率でスピン方位を保持することもできる))としてのCNTアレイと、スピンアナライザ(スピントロニックデバイスの抵抗の高低状態を監視する)としての使用に適した強磁性層と、上部導電電極と、を含む多層構造体である。
【0024】
本発明のタイプのアーキテクチャでCNTアレイを使用するに当たり更に考慮すべき点は、CNTアレイと、これに先行又は後続する層との間の電気的コンタクトを作り出す方法についてである。本発明によれば、CNTアレイは第一の強磁性層と第二の強磁性層の内の一方と電気的に結合させることができ、この結合は、圧力による接触(pressure contact)、ラミネーションによる接触(laminated contact)、強磁性層をCNTアレイ上に直接的に堆積させる等の手段によって行われるが、これらに限定されない。また、本明細書中ではそのような接触を機械的接触ともいう。一実施形態においては、図1に示すように、圧力による接触を用いて各層を加熱し結合性を高めることができる。別の実施形態においては、CNTとこれに先行する層又は後続する層との間の電気的コンタクトはラミネーションによる接触であり、この接触ではCNTアレイに結合されるべき層を好適なエラストマーに堆積させるが、エラストマーの粘着性により前記層がCNTアレイとの間に原子レベルの接触を提供するので、緊密且つ安定な接触が維持される。ラミネーションによる接触を生成するのに好適なエラストマーの一例としてPDMSを挙げることができる。ラミネーションによる接触を生成するのに好適な他の例としては、バイトン(Viton)やネオプレン(Neoprene)等を挙げることができるが、これらに限定されない。更に別の実施形態(これが最良の方法と考えられる)においては、CNTアレイ上に、先行層又は後続層のいずれかを直接堆積させることにより電気的コンタクトが得られる。直接的な堆積を利用できるか否かは、いくつかの要素、例えばCNTアレイに先立つべき層の上にCNTアレイを十分成長させることができるかどうかやナノチューブ堆積後のアレイのナノチューブ充填密度(これは後続する層が堆積され得るかどうかを決める)によって決まる。
【0025】
ナノチューブの密度が不十分な場合、上述の機械的接触を行うか、或いは、アレイを別の絶縁材料に埋込んでボイドを満たすことができ(ボイドは、CNTアレイの上部で堆積が行われる場合にショートの原因となる)、これにより機械的に安定となると共に電気的コンタクトが向上する。絶縁層材料(または絶縁体ともいう)は、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を選択することができる。好適な絶縁材料としては、SiOやAl等を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、アレイを埋込む方法の一例については、SiO等の好適な無機絶縁材料に埋込む例を挙げて既に述べた。この方法においては、アレイ全体をSiOで被覆し、次に機械的研磨工程を経てチューブ先端を露出させる。このようにして、アレイ中のCNTの各先端への電気的コンタクトを可能とした堅固な層(solid layer)が形成される。同様に別の実施形態においては、Alを無機絶縁体として用いることができる。或いは、アレイを有機絶縁体(例えばペンタセンやAlqを挙げることができるが、これらに限定されない)に埋込んで低速アニーリングプロセスによってチューブを露出させることができる。このプロセスは、ボイド内部からではなく露出させるべき先端から優先的に有機絶縁体を除去するものでなくてはならない。
【0026】
図1を参照すると、本出願に係る典型的なスピントロニック多層デバイス10が図示されている。図1に図示したデバイス及びそれに関する記述及び構成は単なる例示であって、該デバイスの他にも各種の具現化が可能であることを理解されたい。図示されるように、デバイス10は、底部電極(BEとしても示される)としてクロム(Cr)/金(Au)から成る二重層12と、第一の強磁性層(FM1としても示される)として鉄(Fe)コバルト(Co)二元合金(FeCo)層14と、非磁性スペーサー16(SPACERとしても示される)として垂直方向に配向された多層カーボンナノチューブのアレイと、第二の強磁性層18(FM2としても示される)として埋込まれた触媒Feナノ粒子(この粒子はCNTアレイ堆積後に残存する)と、上部電極として金層20(TEとしても示される)とを含む。具体的には示さないが当業者であれば勿論、電気的コンタクトを容易にとれるようにした上部及び底部電極は、適切な技法又は手段を用いて適切に電子的駆動乃至測定回路に接続できることが理解されよう。端末(termination)であるFM1とFM2は勿論相互交換可能であり、FM1で示される層をFM2とみなすことができるし、FM2で示される層をFM1とみなすこともできる。
【0027】
CNTアレイは、カーボンナノチューブを形成することができ、且つ注入された電子をスピン方位が完全に失われることなく輸送できる好適な任意の材料から生成することができる。CNTアレイのCNTを生成するのに好適な材料としては、鉄(II)フタロシアニン、鉄の薄層上でのエチレンの熱分解、ニッケル又は鉄ナノ粒子被覆物のホットフィラメント・プラズマ・エンハンスト化学気相成長析出物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0028】
一実施形態においては、CNTアレイは多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることができる。或いは、別の実施形態においては、CNTアレイは単層CNT(SWCNT)から形成することができる。更に別の実施形態においては、CNTアレイは多層CNTと単層CNTの両方を含むことができる。
【0029】
更に、CNTアレイは導電性CNTのみ或いは半導電性CNTのみを含むことができ、また導電性CNTと半導電性CNTの両方を含むこともできることを理解されたい。一実施形態においては、CNTアレイは約90%超の導電性CNTと約10%未満の半導電性CNTとを含むことができる。別の実施形態においては、CNTアレイは約90%超の半導電性CNTと約10%未満の導電性CNTとを含むことができる。
【0030】
更に、CNTアレイは各種プロセスによって形成されるCNTの垂直又は非垂直アレイの形態とすることができることを理解されたい。例えば、CNTアレイは鉄(II)フタロシアニンの熱分解によって生成されるCNTの垂直アレイとすることができる。垂直アレイはまた、ナノ多孔質テンプレートを用いて形成することができる。更に、垂直アレイはアセチレンその他炭素ベースガスのCVDによって強磁性膜上に形成することができる。
【0031】
スピントロニックデバイスは、第一の電極の形成と、該電極上への第一の強磁性層の形成と、第一の強磁性層上へのCNTアレイの形成と、第二の強磁性層の形成と、第二の強磁性層上への第二の電極の形成とによって作製することができる。第一の電極は、電極として選択した材料に適した任意の堆積方法(例えば熱蒸着)によって形成することができる。CNTアレイは、例えば、基板上で鉄(II)フタロシアニンを熱分解させることにより形成できる。CNTの堆積条件は、堆積後において、埋込まれた鉄触媒粒子が所望の位置(例えば上部或いは底部)となるよう制御する。次に、スパッタリング等の利用可能な堆積技法によって上部電極を適用する。
【0032】
図1に示す実施形態の構成を有するスピントロニックデバイスを次のように調製した。金属層(12及び14)を熱蒸着技法を用いて生成した。10nmのCr層をガラス基板上に堆積させた。このガラス基板は、引き続いて行う蒸着操作のための接着層として機能するものである。このCr層に続きAuを厚さ35nmで堆積させ電気的コンタクトが十分となるようにした。次に形成される層はFeCo合金を含む第一の強磁性層であり、該層は、測定器具との電気的コンタクトが直接Auと(より不安定なFeCoとではなく)得られるようにAu部分の上に堆積させた。FeCo層の厚さは8nmとし、合金はFe(99.9+%、アルドリッチ(Aldrich))とCo(99.9+%、アルドリッチ)を堆積速度0.12nm/秒で共堆積(co-deposition)させて得た。
【0033】
垂直方向に配向されたCNTアレイ(16)は、アルゴン/水素下、石英基板上に800〜1000℃で鉄(II)フタロシアニンを熱分解させて生成させた。得られたアレイは半導電性多層CNTと導電性多層CNTとの混合物であった。CNTの長さは約1μm〜10μm超に制御でき、図1に示したデバイスにおけるCNTの長さは約7μmである。堆積条件は、堆積後において、埋込まれたFe触媒粒子が上部(チューブ端は石英基板から最も離れた所)にあるように設定し、こうして第二の強磁性層(18)を設けた。CNTアレイ堆積後、Auの上部電極(20)をスパッタリング技法によって堆積させた。該電極の厚さは大きくして、取り外し後に機械的強度を有するようにした。Auの堆積後、石英基板をフッ化水素酸/水の混合液に浸漬した(約10〜20秒間)。この酸によりCNT/Au膜が石英基板から素早く除かれ、独立したフィルム(free standing film)が得られた。
【0034】
次に、このCNT/Au膜を適切なサイズにカットし、CNTが直接FeCo層と接するようにガラス基板上に載置した。この基板を真空オーブン中にて1時間、約150℃まで加熱することにより電気的コンタクトを向上させた。次に、Au電極との電気的コンタクトをとり、デバイスを保護のためポリフッ化エチレンテープでカプセル状に包んだ。
【0035】
図1の実施形態におけるCNTの磁気データは、カンタムデザイン(Quantum Design)MPMS−5SQUID磁気計を用いて測定を行った。結果(図2、3)から分かるように、CNTアレイ先端に存在するFe触媒粒子は室温(300K)では強磁性であり、より低温(例えば4.5K)では相当な大きさのヒステリシスを示す。
【0036】
図4は、前述した図1のデバイスの4.5Kにおける磁気抵抗を示す。データはカンタムデザインPPMS−9測定システムを用いて得た。抵抗データは、バイアス電圧を95mV、磁場範囲を1テスラ〜−1テスラとして両方向に(+1から−1及び−1から+1)測定して得た。結果は、スピンバルブ型構造に典型的なヒステリシス効果(hysteretic effect)を示す。磁場が+1Tから0Tを横切った後は、FeCo膜の磁化方向の符号が正から負へと切換わると共に抵抗は増大する。次いで、CNTアレイに埋込まれたFeナノ粒子の磁化方向の符号が正から負へと切換わると、抵抗が減少し500mT付近で(図3の磁気データから観察される値と一致する)前の低い値となる。磁場が−1Tから+1Tへと掃引される際にも同様の効果が見られる。
【0037】
本発明は、スピンバルブやスピントンネルジャンクション、スピン発光ダイオード、GMR抵抗エレメント、MRAMデバイス等のスピントロニックデバイスに関するものであることは当業者によって理解されよう。よって本発明は、そのような環境で作動するスピントロニックデバイスに適用することができる。
【0038】
本開示に係るスピントロニックデバイスについて、例示的な実施形態や実施例を参照し記載した。しかしながら、ここに示したもの以外の構成に変更することも可能である。本発明の精神から逸脱せずに、各構成要素を結び付ける様々な手段を用いることができる。
【0039】
従って、本発明を例示的な実施形態と特定の実施例とを参照しつつ具体的に開示してきたが、サイズや形状に関する設計変更については当業者には明らかであり、そのような修正及び変更は開示された発明及び添付した請求の範囲の等価物でありまたその範囲内であるとみなすべきであることが理解されよう。
【0040】
本発明について例示的な実施形態と実施例とを参照して具体的に開示したが、実験的設計(experimental design)に対する修正も当業者には明らかであり、そのような修正及び変更は本発明の範囲内及び添付した請求の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0041】
また、上の記載に包含されるものはいずれも限定的にではなく例示的なものとして解釈されるものであり、本発明の範囲は、上の記載によってではなく添付の請求の範囲によって示されるものである。従って、請求の範囲の意味及び同等の範囲に入る変更はいずれもその範囲内に包含されるものとする。即ち、次の請求の範囲が本明細書に記載した発明の包括的特徴及び特定的特徴の両方及び文言上これらの間にある本発明の範囲の全記述とを包含することを意図する。更に請求の範囲において、単数形で記載された成分又は化合物は、合理的に解釈される限りそのような複数の成分と相溶性のある混合物をも含むことが意図されていると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態の説明図である。
【図2】本発明の実施の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
10 スピントロニックデバイス
12 第一の導電電極
14 第一の強磁性層
16 カーボンナノチューブアレイ
18 第二の強磁性層
20 第二の導電電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)電気的コンタクトを容易にとれる第一の導電電極(12)と、
b)所定のスピン方位を有する電子を注入するためにスピン・ポーラライザとして挙動する、第一の導電電極上に配置された第一の強磁性層(14)と、
c)第一の強磁性層(14)上に配置されたカーボンナノチューブ(CNT)のアレイ(16)と、
d)スピントロニックデバイスの抵抗の高低状態を監視するためにスピンアナライザとして挙動する第二の強磁性層(18)、ここでアレイは第一の強磁性層と第二の強磁性層との間のスペーサー層として作用すると共に注入された電子をスピン方位が完全に失われることなく輸送する、と、
e)電気的コンタクトを容易にとれる、第二の強磁性層(18)上に配置された第二の導電電極(20)と、を含むスピントロニックデバイス(10)。
【請求項2】
第一の強磁性層と第二の強磁性層の少なくとも一層が、CNTアレイ堆積後に残存する埋込まれた強磁性触媒粒子を含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項3】
機械的安定性と電気的コンタクトを向上させるために、CNTアレイは好適な無機絶縁体に埋込まれている、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項4】
機械的安定性と電気的コンタクトを向上させるために、CNTアレイは好適な有機絶縁体に埋込まれている、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項5】
CNTアレイは多層CNTを含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項6】
CNTアレイは単層CNTを含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項7】
CNTアレイは、鉄(II)フタロシアニンの熱分解により形成される垂直方向のCNTアレイである、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項8】
CNTアレイは、ナノ多孔質テンプレートを用いて形成される垂直方向のCNTアレイである、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項9】
CNTアレイは、強磁性膜上にてアセチレン又は炭素をベースとするガスのCVDにより形成される垂直方向のCNTアレイ、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項10】
CNTアレイは導電性CNTと半導電性CNTの混合物を含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項11】
CNTアレイは、90%超の導電性CNTと10%未満の半導電性CNTとを含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項12】
CNTアレイは、90%超の半導電性CNTと10%未満の導電性CNTとを含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項13】
第一の強磁性層と第二の強磁性層の少なくとも一層は、交換バイアスによってピン留めされた強磁性層を形成する、反強磁性層と強磁性層を含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項14】
第一の強磁性層と第二の強磁性層の少なくとも一層は、適切な組成と厚さとを有するスペーサーによって隔てられた2層の強磁性層を有する合成反強磁性体を含み、該強磁性体において強磁性層の一方は反強磁性層と接触し安定性を向上させると共にスピントロニックデバイスの反転場を増大させる、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項15】
第一の強磁性層と第二の強磁性層の少なくとも一層は、強磁性的に挙動する層のパターニングしたグリッドを含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項16】
第一の強磁性層と第二の強磁性層の少なくとも一層は、異なる組成の強磁性的に挙動する島のパターニングしたグリッドを含み、これらの島から成長する任意のCNTとの強磁性接触が各種磁場において切換わる、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項17】
デバイスはスピンバルブとして作動する、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項18】
デバイスはスピントンネルジャンクションとして作動する、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項19】
デバイスはスピンLEDとして作動する、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項20】
デバイスはGMR抵抗エレメントとして作動する、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項21】
デバイスはMRAMの構成要素として作動する、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項22】
第一の強磁性層をCNTアレイと、CNTアレイを第二の強磁性層とそれぞれ電気的に結合する手段を更に含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項23】
結合手段は圧力による接触を含む、請求項22に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項24】
結合手段は、PDMS等の好適なエラストマーを用いるラミネーションによる接触を含む、請求項22に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項25】
結合手段はCNTアレイに直接堆積することを含む、請求項22に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項26】
第一導電電極と第二導電電極をエレクトロニックドライビングと測定回路の少なくとも一方に結合させる手段を更に含む、請求項1に記載のスピントロニックデバイス。
【請求項27】
第一の電極(12)の形成と、第一の電極(12)上への第一の強磁性層(14)の形成と、第一の強磁性層(14)上への垂直方向に配向されたカーボンナノチューブアレイ(16)の形成と、第二の強磁性層(18)の形成と、第二の強磁性層(18)上への第二の電極(20)の形成と、を含むスピントロニックデバイス(10)の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−531278(P2007−531278A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505086(P2007−505086)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009454
【国際公開番号】WO2006/022859
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502071023)ジ・オハイオ・ステート・ユニバーシティ (12)
【Fターム(参考)】